JP2017083289A - ガスセンサ素子及びガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】応答性をより一層向上させたガスセンサ素子及びガスセンサを提供する。【解決手段】固体電解質体105該固体電解質体に配置された検知電極106及び基準電極104とを有する検知部を含む板状又は筒状の素子本体300と;素子本体のうち、検知部が位置する先端部の周囲を少なくとも取り囲む多孔質保護層20と;を備えるガスセンサ素子100において、固体電解質体はジルコニアを主成分とし、ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアであり、検知電極はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含み、多孔質保護層のうち、少なくとも検知電極を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなる。【選択図】図3

Description

本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中に含まれる特定ガスのガス濃度を検出するのに好適に用いられるガスセンサ素子及びガスセンサに関する。
従来から、内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのガスセンサが用いられている。このガスセンサは、自身の内部にガスセンサ素子を有している。ガスセンサ素子は、固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とを有する検知部を含む板状又は筒状をなしている。
ところで、例えば自動車に搭載した内燃機関の排気系統から排出される排気ガスは、未燃焼ガス成分を含むことが多い。このため、この排気ガス中の未燃焼ガス成分に対する濃度規制が年々厳しくなってきている。
特に、未燃焼ガスの濃度は、内燃機関の始動時において高くなる傾向があることから、この内燃機関の始動時における未燃焼ガス成分の排出を低減したいという要請が強い。このため、未燃焼ガスを検出するためのガスセンサとしては、この要請に応えるように、特に低温における応答性を高めることが要求されている。
そこで、検知電極として、触媒金属(Pt)と単斜晶ZrOを含む厚み8μm以上のサーメット電極を用い、応答性を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第5001214号公報
ところで、内燃機関の始動時における未燃焼ガスは、低温でかつ流速の速い環境で生じるため、かかる未燃焼ガス成分の排出をより一層低減するためには、より低温で、かつガス流速の速い環境下でのガスセンサの応答性を向上させることが必要になる。
そこで、本発明は、応答性をより一層向上させたガスセンサ素子及びガスセンサの提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサ素子は、固体電解質体と該固体電解質体に配置された検知電極及び基準電極とを有する検知部を含む板状又は筒状の素子本体と;該素子本体のうち、前記検知部が位置する先端部の周囲を少なくとも取り囲む多孔質保護層と;を備えるガスセンサ素子において、前記固体電解質体はジルコニアを主成分とし、前記ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアであり、前記検知電極はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含み、前記多孔質保護層のうち、少なくとも前記検知電極を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなることを特徴とする。
このガスセンサ素子によれば、被毒物質を捕捉したり、水滴がガスセンサ素子に直接接触することを抑制するための多孔質保護層に貴金属成分を担持させることで、多孔質保護層を触媒層として機能させる。これにより、電極の活性が低い低温下で、かつガス流速の速い環境下でも電極反応をより速やかに平衡状態に到達させることができ、ガスセンサの応答性を向上させることができる。
又、検知電極に単斜晶ジルコニアを含ませることで、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させることができる。
さらに、固体電解質体が所定割合の正方晶ジルコニアを含むことで、固体電解質体の強度とイオン導電性(電気抵抗)を両立することができる。このため、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させつつ、低温状態から高温の燃焼ガスに曝される状態になった時に固体電解質体に熱衝撃が加わっても固体電解質体が破損し難く、ガスセンサ素子の強度を保つことができる。又、ヒータを有するガスセンサの場合には、低温状態からヒータによる急速加熱を行っても固体電解質体が破損し難いので、早期活性を実現できる。
本発明のガスセンサは、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を保持するハウジングとを備えるガスセンサにおいて、前記センサ素子は、前記ガスセンサ素子を用いることを特徴とする。
この発明によれば、応答性をより一層向上させたガスセンサ素子及びガスセンサが得られる。
本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)の長手方向に沿う断面図である。 ガスセンサ素子の模式分解斜視図である。 ガスセンサ素子の先端側の部分拡大断面図である。 ガスセンサ素子の軸線方向に直交する模式断面図である。 ガス流速の速い環境下で、多孔質保護層を通った未燃焼ガスが検知電極上で燃焼する電極反応を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)の長手方向に沿う断面図である。 ガスセンサ素子の長手方向に沿う断面図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、実施例1のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、実施例2のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、実施例3のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、比較例1のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、比較例2のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 リッチからリーン雰囲気に切り替えたときの、比較例3のガスセンサ素子の出力(起電力)を示す図である。 固体電解質試料中の正方晶ジルコニアの割合と3点曲げ強度との関係を示す図である。 固体電解質試料中の正方晶ジルコニアの割合と電気抵抗率(600℃)との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1の長手方向(軸線L方向)に沿う断面図、図2はガスセンサ素子100の模式分解斜視図、図3は多孔質保護層20を含むガスセンサ素子100の軸線L方向に沿う断面図、図4は多孔質保護層20を含むガスセンサ素子100の軸線L方向に直交する模式断面図である。
である。
図1に示すように、ガスセンサ1は、ガスセンサ素子100、ガスセンサ素子100等を内部に保持する主体金具(特許請求の範囲の「ハウジング」に相当)30、主体金具30の先端部に装着されるプロテクタ24等を有している。ガスセンサ素子100は軸線L方向に延びるように配置されている。
図2に示すように、ガスセンサ素子100は、固体電解質体105と、固体電解質105の両面に形成された基準電極104及び検知電極106とからなる酸素濃度検出セル130を備える。基準電極104は、基準電極部104aと、基準電極部104aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びる基準リード部104Lとから形成されている。検知電極106は、検知電極部106aと、検知電極部106aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びる検知リード部106Lとから形成されている。
酸素濃度検出セル130が特許請求の範囲の「検知部」に相当する。
なお、図2では多孔質保護層20の図示を省略している。
保護層111は、固体電解質体105との間で検知電極部106aを挟み込むようにして、検知電極部106aを被毒から防御するための多孔質の電極保護部113aと、検知リード部106Lを挟み込むようにして、固体電解質体105を保護するための補強部112とからなる。なお、本実施の形態のガスセンサ素子100は、酸素濃度検出セル130の電極間に生じる電圧(起電力)の値を用いて酸素濃度を検出することができる、いわゆる酸素濃淡起電力式のガスセンサ(λセンサ)を構成する。
一方、固体電解質体105との間で基準電極104を挟み込むようにして、基準電極104の下面に下面層103及び大気導入孔層107が積層されている。大気導入孔層107は後端側が開口する略コ字状に形成され、固体電解質体105、大気導入孔層107及び下面層103で囲まれた内部空間が大気導入孔107hを構成している。そして、この大気導入孔107hに導入される大気(基準ガス)に基準電極104が晒されるようになっている。
下面層103、大気導入孔層107、基準電極104、固体電解質体105、検知電極106及び保護層111が積層された積層体が素子本体300を構成する。本実施形態では、素子本体300は板状をなしている。
そして、基準リード部104Lの端末は、固体電解質体105に設けられるスルーホール105aに形成される導体を介して、固体電解質体105上の検出素子側パッド121と電気的に接続する。一方、保護層111は検知リード部106Lの端末よりも軸線L方向に短く、保護層111の後端から検知リード部106Lの端末が上面に表出し、外部回路接続用の外部端子(図示せず)と接続される。
図1に戻り、主体金具30は、SUS430製のものであり、ガスセンサを排気管に取り付けるための雄ねじ部31と、取り付け時に取り付け工具をあてがう六角部32とを有している。また、主体金具30には、径方向内側に向かって突出する金具側段部33が設けられており、この金具側段部33はガスセンサ素子100を保持するための金属ホルダ34を支持している。そしてこの金属ホルダ34の内側にはセラミックホルダ35、滑石36が先端側から順に配置されている。この滑石36は金属ホルダ34内に配置される第1滑石37と金属ホルダ34の後端に渡って配置される第2滑石38とからなる。金属ホルダ34内で第1滑石37が圧縮充填されることによって、ガスセンサ素子100は金属ホルダ34に対して固定される。また、主体金具30内で第2滑石38が圧縮充填されることによって、ガスセンサ素子100の外面と主体金具30の内面との間のシール性が確保される。そして第2滑石38の後端側には、アルミナ製のスリーブ39が配置されている。このスリーブ39は多段の円筒状に形成されており、軸線に沿うように軸孔39aが設けられ、内部にガスセンサ素子100を挿通している。そして、主体金具30の後端側の加締め部30aが内側に折り曲げられており、ステンレス製のリング部材40を介してスリーブ39が主体金具30の先端側に押圧されている。
また、主体金具30の先端側外周には、主体金具30の先端から突出するガスセンサ素子100の先端部を覆うと共に、複数のガス取り入れ孔24aを有する金属製のプロテクタ24が溶接によって取り付けられている。このプロテクタ24は、二重構造をなしており、外側には一様な外径を有する有底円筒状の外側プロテクタ41、内側には後端部42aの外径が先端部42bの外径よりも大きく形成された有底円筒状の内側プロテクタ42が配置されている。
一方、主体金具30の後端側には、SUS430製の外筒25の先端側が挿入されている。この外筒25は先端側の拡径した先端部25aを主体金具30にレーザ溶接等により固定している。外筒25の後端側内部には、セパレータ50が配置され、セパレータ50と外筒25の隙間に保持部材51が介在している。この保持部材51は、後述するセパレータ50の突出部50aに係合し、外筒25を加締めることにより外筒25とセパレータ50とにより固定されている。
また、セパレータ50には、ガスセンサ素子100用のリード線11、12(図1では、リード線12はリード線11の奥に重なるので表示していない)を挿入するための挿通孔50bが先端側から後端側にかけて貫設されている。挿通孔50b内には、リード線11〜12と、ガスセンサ素子100の検出素子側パッド121とを接続する接続端子16が収容されている。各リード線11〜12は、外部において、図示しないコネクタに接続されるようになっている。このコネクタを介してECU等の外部機器と各リード線11〜12とは電気信号の入出力が行われることになる。また、各リード線11〜12は詳細に図示しないが、導線を樹脂からなる絶縁皮膜にて披覆した構造を有している。
さらに、セパレータ50の後端側には、外筒25の後端側の開口部25bを閉塞するための略円柱状のゴムキャップ52が配置されている。このゴムキャップ52は、外筒25の後端内に装着された状態で、外筒25の外周を径方向内側に向かって加締めることにより、外筒25に固着されている。ゴムキャップ52にも、リード線11〜15をそれぞれ挿入するための挿通孔52aが先端側から後端側にかけて貫設されている。
次に、多孔質保護層20について説明する。図1に示すように、多孔質保護層20は、ガスセンサ素子100(素子本体300)の先端側の全周を覆って設けられている。
図3は、図1のガスセンサ素子100の先端側の部分拡大断面図である。多孔質保護層20は、ガスセンサ素子100(素子本体300)の先端面を含み、軸線L方向に沿って後端側に延びるように形成され、かつ図4に示すようにガスセンサ素子100(素子本体300)の表裏面及び両側面の4面を完全に囲んで形成されている。又、軸線L方向に見て、多孔質保護層20がガスセンサ素子100(素子本体300)の少なくとも基準電極部104a、及び検知電極部106aを包含する領域(この領域が検知部を構成する)を覆い、さらにこの領域より後端まで延びている。
ガスセンサ素子100には排気ガス中に含まれるシリコンやリンなどの被毒物質に晒されたり、排気ガス中の水滴が付着することがある。そこで、ガスセンサ素子100の外表面に多孔質保護層20を被覆することで、被毒物質を捕捉したり、水滴がガスセンサ素子100に直接接触することを抑制できる。
次に、本発明の特徴部分である、固体電解質体、検知電極及び多孔質保護層の成分組成について説明する。
(1)固体電解質体105は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。そして、固体電解質体105は、ジルコニアを主成分とし、該ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアである。
(2)検知電極106はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。さらに、検知電極106はセラミック成分を含有してもよい。
(3)又、多孔質保護層20のうち、少なくとも検知電極106を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなる。
なお、「主成分」とは、対象となる部位(固体電解質体105や検知電極106)を構成する全成分に対し、50質量%を超える成分をいう。又、多孔質保護層20のうち、少なくとも検知電極106を覆う部位とは、ガスセンサ素子100の積層方向に検知電極106と重なる部位をいう。
まず、検知電極106を上記(2)の組成とすることで、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させることができる。検知電極106中のPt100質量部に対し、単斜晶ジルコニアの割合が5〜25質量部であることが好ましい。単斜晶ジルコニアの割合が5質量部未満であると、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を十分に向上させることが困難な場合がある。単斜晶ジルコニアの割合が25質量部を超えると、検知電極106中のPtの割合が低くなり、電極としての導電性や活性が低下する場合がある。
又、検知電極106はPtを50質量%を超え、95質量%以下含有すると好ましい。
検知電極106の平均厚みは、8〜130μmであることが好ましい。
さらに、多孔質保護層20中に上記(3)の貴金属成分を担持させることで、ガス流速の速い環境下でのガスセンサの応答性を向上させることができる。これについて図5を参照して説明する。低温下ではもともと電極の活性が低いため、特にガス流速が速くなると、多孔質保護層200を通って検知電極106に到達する未燃焼ガスGが検知電極106上で燃焼する電極反応が十分に平衡状態にならず、未燃焼ガスGが多孔質保護層20の内部に残ってしまう(図5(a)の矢印)。そして、電極反応が平衡状態に向かうにつれて、多孔質保護層200の内部に残っている例えば未燃焼ガスGの1種であるCOガスが、順次検知電極106に到達して反応してしまうので、この時点での実際のガス検出雰囲気よりもリッチであると誤検知し、実際のガス濃度を反映しないことがある。
そこで、図5(b)に示すように、貴金属21を担持させた多孔質保護層20を用いることで、多孔質保護層20中で未燃焼ガスGの一部が貴金属21と反応して燃焼する。このため、電極反応が平衡状態に向かうにつれて、多孔質保護層20の内部に残っている未燃焼ガスGが検知電極106に到達する度合が少なくなり、この時点での実際のガス濃度を反映した検知を行うことができ、ひいてはガス流速の速い環境下でのガスセンサの応答性を向上させることができる。
つまり、多孔質保護層20を触媒層として機能させることにより、電極反応をより速やかに平衡状態に到達させることができる。
多孔質保護層20の平均厚みが30〜300μmであることが好ましい。又、多孔質保護層20中の上記貴金属成分の合計の担持量が0.01〜1質量%であることが好ましい。
さらに、固体電解質体105を上記(1)の組成とすることで、固体電解質体105の強度とイオン導電性(電気抵抗)を両立することができる。このため、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させつつ、低温状態から高温の燃焼ガスに曝される状態になった時に固体電解質体105に熱衝撃が加わっても固体電解質体105が破損し難く、ガスセンサ素子100の強度を保つことができる。なお、本実施形態のガスセンサはいわゆるヒータレスのガスセンサであり、ガスセンサ素子100(固体電解質体105)は、高温の燃焼ガスに曝されて加熱されるが、ヒータを有するガスセンサの場合、低温状態からヒータによる急速加熱を行っても固体電解質体105が破損し難いので、早期活性を実現できる。
固体電解質体105中のジルコニアに対する正方晶ジルコニアの割合が50質量%未満であると、固体電解質体105の3点曲げ強度が500MPa未満となって強度が低下する。これは、正方晶ジルコニアの割合が少なくなるほど、強度の低い立方晶ジルコニアの割合が多くなるためである。
一方、上述の正方晶ジルコニアの割合が83.3質量%を超えると、600℃での固体電解質体105の電気抵抗率が100Ωを超えるため、さらに低温(300℃)ではより抵抗値が高くなり、、酸素濃度検出セル130の起電力を正確に検出することが困難になる。これは、正方晶ジルコニアの割合が多くなるほど、イオン導電率の高い立方晶ジルコニアの割合が少なくなるためである。なお、600℃における電気抵抗率は、燃焼ガスに曝されたガスセンサの使用温度を想定している。
3点曲げ強度は、厚み3mm幅4mmの試験片をスパン30mmでJIS-R1602に従って測定する。又、固体電解質体105の電気抵抗率は、厚み1mmの円柱状の固体電解質体105の試料を作製し、試料の両面にPt電極(電極面積がそれぞれ42mm)を印刷して焼付を行い、測定温度600℃にて交流インピーダンス法により固体電解質体の抵抗を測定する。
なお、固体電解質体105中の正方晶ジルコニアの割合は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤として添加するイットリア(Y)又はカルシア(CaO)の量、及び固体電解質体105の焼成温度を調整することにより制御できる。ジルコニア中の安定化剤の量が多いほど正方晶ジルコニアの割合が減少する傾向にある。
又、固体電解質体105中のジルコニアのうち、正方晶ジルコニア以外のものは単斜晶ジルコニア及び立方晶ジルコニアである。
一方、基準電極104は、白金族元素で形成することができる。これらを形成する好適な白金族元素としては、Pt、Rh、Pd等を挙げることができ、これらはその一種を単独で使用することもできるし、又二種以上を併用することもできる。もっとも、基準電極104は、耐熱性及び耐酸化性を考慮するとPtを主体にして形成することがより一層好ましい。さらに、基準電極104は、主体となる白金族元素の他にセラミック成分を含有することが好ましい。このセラミック成分は、固体電解質体105の主体となる成分であることが好ましい。
下面層103、保護層111、大気導入孔層107は、固体電解質体105と同じ組成とすることができる。電極保護部113aはジルコニアを主体とする多孔質体とし、後述する多孔質保護層20は、アルミナからなる多孔質体とすることができる。これら多孔質体は、例えばアルミナ、スピネル、ジルコニア、ムライト、ジルコン及びコージェライトの群から選ばれる1種以上のセラミック粒子を焼成等により結合して形成することができる。これらの粒子を含むスラリーを焼結することで、セラミック粒子間の隙間や、スラリー中の有機又は無機バインダが焼失する際に、皮膜の骨格中に気孔が形成される。
次に、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサについて説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1Bの長手方向(軸線L方向)に沿う断面図、図7はガスセンサ素子100Bの軸線L方向に沿う断面図である。
なお、第2の実施形態に係るガスセンサ1Bは、ガスセンサ素子100Bの形状が筒状で、プロテクタ24Bが一重プロテクタで、基準電極104Bがセンサボディでアースを取っているためにリード線が1本のリード線11Bであること以外は、実質的に第1の実施形態に係るガスセンサ1と同様であり、ハウジングや外筒等の構成部材も形状が若干異なる以外は実質的に同様である。そこで、第1の実施形態に係るガスセンサ1に対応する構成部材(例えばハウジング)には、符号に「B」を付して対応関係を明示し、詳しい説明を省略する。
図6に示すように、ガスセンサ1Bは、ガスセンサ素子100B、ガスセンサ素子100B等を内部に保持する主体金具(特許請求の範囲の「ハウジング」に相当)30B、主体金具30Bの先端部に装着されるプロテクタ24B等を有している。ガスセンサ素子100Bは軸線O方向に延びるように配置されている。
図7に示すように、ガスセンサ素子100Bは、固体電解質体105Bと、固体電解質105Bの内面及び外面にそれぞれ形成された基準電極104B及び検知電極106Bとからなる酸素濃度検出セル130Bを備える。
さらに、検知電極106Bの外面には、溶射により多孔質の下地層22が形成され、下地層22の外面に多孔質保護層20Bが形成されている。下地層22は検知電極106Bと多孔質保護層20Bとの密着性を向上させる。
基準電極104B、固体電解質体105B、検知電極106B、下地層22が素子本体300Bを構成する。本実施形態では、素子本体は先端側が閉じた筒状をなしている。
なお、基準電極104Bから後端側に向かって基準リード部(図示せず)が延び、検知電極106Bから後端側に向かって検知リード部(図示せず)が延びている。基準リード部の後端は、外部回路接続用の外部端子である接続端子16B1(図6参照)と接続される。一方、検知リード部は、ガスセンサ素子100Bの鍔部101(図7参照)の下面側に環状に形成された環状リード部(図示せず)に接続され、環状リード部が主体金具30Bの金具側段部33B(図7参照)に接することで、センサボディでアースを取っている。
図6に戻り、主体金具30Bは、雄ねじ部31Bと六角部32Bとを有している。また、主体金具30Bには、径方向内側に向かって突出する金具側段部33Bが設けられている。
一方、ガスセンサ素子100Bの中央側に鍔部101が設けられ、ガスセンサ素子100Bが主体金具30Bの内側に挿通され、金具側段部33Bに後端側からガスセンサ素子100Bの鍔部101が当接している。
さらに、鍔部101の後端側におけるガスセンサ素子100Bと主体金具30Bとの径方向の隙間に、筒状の滑石36B、及びアルミナ製筒状のスリーブ39Bが配置されている。
主体金具30Bの先端側外周には、金属製で、複数のガス取り入れ孔を有する一重のプロテクタ24Bが取り付けられている。
一方、主体金具30Bの後端側には、スリーブ39Bの後端側に接するようにして、外筒25Bの先端側のフランジ部25fが挿入され、フランジ部25fの後端側にリング部材40Bが配置されている。そして、主体金具30B後端部を内側に屈曲して加締め部30Baを形成することにより、外筒25Bが加締め部30Baとスリーブ39Bの間に挟まれて固定されると共に、スリーブ39Bが先端側に押し付けられる。これにより滑石36Bを押し潰し、スリーブ39B及び滑石36Bが加締め固定されるとともに、ガスセンサ素子100Bと主体金具30Bの隙間がシールされている。
外筒25Bの後端側内部には、ガスセンサ素子100Bの後端側に接するようにして、セパレータ50Bが配置されている。セパレータ50Bとガスセンサ素子100Bの間に、接続端子16B1の後端から径方向外側に拡がるフランジ部16fが挟まれ、これにより、接続端子16B1が外筒25Bとガスセンサ素子100Bとにより固定されている。
また、セパレータ50Bには、ガスセンサ素子100B用のリード線11Bを挿入するための挿通孔50hが先端側から後端側にかけて貫設されている。リード線11Bは、図示しないコネクタを介してECU等の外部機器と接続される。
さらに、セパレータ50Bの後端側には、外筒25Bの後端側の開口部を閉塞するための略円柱状のゴムキャップ52Bが配置されている。そして、外筒25Bの後端側の外周には、撥水性の通気フィルタ140を介して略筒状の保護外筒80が配置され、保護外筒80の外周を径方向内側に向かって加締めることにより、ゴムキャップ52Bが外筒25Bに固着されると共に、ゴムキャップ52Bが外筒25Bをガスセンサ素子100B側に押圧している。ゴムキャップ52Bにも、リード線11Bを挿入するための挿通孔52xが先端側から後端側にかけて貫設されている。
なお、外筒25Bの側面には通気孔25hが貫通し、保護外筒80には通気孔25hと対応する位置に通気孔81が貫通している。そして、保護外筒80を加締めると、外筒25Bと保護外筒80との間で通気フィルタ140が挟み込まれて保持され、通気孔25h、81を介して通気フィルタ140が外部の水を通さずにガスセンサ素子100Bの内部空間に基準ガス(大気)を導入するようになっている。
第2の実施形態においても、(1)固体電解質体105Bは、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。そして、固体電解質体105は、ジルコニアを主成分とし、該ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアである。
(2)検知電極106BはPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。
(3)又、多孔質保護層20Bのうち、少なくとも検知電極106Bを覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなる。
このため、低温でかつ流速の速い環境下でもガスセンサの応答性を向上させることができる。又、低温状態から高温の燃焼ガスに曝される状態になった時に熱衝撃が加わっても固体電解質体105が破損し難く、ガスセンサ素子100Bの強度を保つことができる。さらに、ヒータを有するガスセンサの場合、早期活性を実現できる。
本発明は上記実施形態に限定されず、固体電解質体と検知電極及び基準電極とを有する検知部(酸素濃度検出セル)を有するあらゆるガスセンサ(ガスセンサ素子)に適用可能であり、本実施の形態の酸素センサ(酸素センサ素子)に適用することができるが、これらの用途に限られず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、検知部に加えて酸素ポンプセルを有する全領域酸素センサ、被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ(NOxセンサ素子)や、HC濃度を検出するHCセンサ(HCセンサ素子)等に本発明を適用してもよい。
又、ガスセンサは、通電により発熱するヒータを有していても良い。
<ガスセンサの応答性評価>
図1、図2に示す板状のガスセンサ素子(酸素センサ素子)100を製造した。
まず、実施例1〜3及び比較例1(表1参照)として、単斜晶ZrOを、白金粉末100質量部に対して15質量部(外配合で15質量%)混合し、粉末総量に対して0.1質量部の分散材、10質量部のエトセル、20質量部のブチルカルビトールとともに混合、混練して検知電極ペーストを得た。
又、比較例2,3として、単斜晶ZrOを0とし、正方晶および立方晶が混在したZrO2を白金粉末100質量部に対して15質量部(外配合で15質量%)混合したこと以外は、上記と同様にして検知電極ペーストを得た。又、すべての実施例、比較例の基準電極として、比較例2,3の検知電極ペーストと同じものを用いた。
次に、これらの検知電極ペースト及び基準電極ペーストをスクリーン印刷により、固体電解質シートにそれぞれ10μmの厚みになるよう印刷し、1350℃で焼成することによってガスセンサ素子(素子本体)を得た。
なお、固体電解質体は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)を5mol%添加し、さらに全体に対して0.4質量%のアルミナ粉末を添加して上記温度で焼結した。固体電解質体中のジルコニアの53質量%が正方晶ジルコニアであった。
次に、検知部を含むガスセンサ素子(素子本体)の先端側の表面(表裏面及び両側面)に、多孔質保護層となる下記のスラリーを適当な粘度になるように調整し、ディップ(浸漬)法で200μmの厚みになるよう塗布した。その後、スラリー中の余分な有機溶剤を揮発させるため、200℃に設定した乾燥機で数時間乾燥し、大気中、1100℃で3時間の条件で焼成した。
多孔質保護層用のスラリー:スピネル粉末60vol%、アルミナ粉末40vol%を秤量し、さらにエタノールを添加して攪拌して調製した。次に、乾燥によりエタノールを蒸発させ、得られた混合粉末をそれぞれ表1に示す貴金属を含有する水溶液(具体的には、それぞれ塩化Pt酸溶液、硝酸Pd溶液、硝酸Rh溶液)に浸漬し、粉末と水溶液を分離するために吸引ろ過した。このものを大気中、600℃で3時間の条件で乾燥し、貴金属成分を金属化し、貴金属を含んだスピネル/アルミナ混合粉末を得た。その後、この混合粉末にバインダーとエタノールを添加して多孔質保護層用のスラリーとした。
なお、多孔質保護層中の貴金属の担持量を測定するの溶液サンプルを作製した。具体的には、上述の多孔質保護層用のスラリーの作製方法に従い、600℃で3時間の条件で乾燥し、同様に貴金属成分を金属化してスピネル/アルミナ混合粉末を得た。この混合粉末を更に1100℃で3時間の条件で焼成し、その後粉砕し、王水処理・アルカリ溶解処理をして粉末を溶かした溶液を作製した。この溶液を用いて多孔質保護層中の貴金属の担持量をICP(誘導結合プラズマ)法で測定したところ、0.1質量%であった。
次に、上記ガスセンサ素子100をガスセンサ1に組み付け、公知のバーナー測定装置に取り付け、バーナー測定法により応答性を評価した。この応答性評価では、メインプロパンガス及びメイン空気でもって、理論空燃比、即ち空燃比λ=1の雰囲気を生成し、上記バーナー測定装置内に供給した。このような状態から、バイパスプロパン及びバイパス空気でもって、空燃比λ=0.9(リッチ)及びλ=1.1(リーン)に0.5Hz毎に切り替えた。又、ガスの流速をそれぞれ1m/secと7m/secとした。
上記の条件のもと、上記バーナー測定装置内の燃焼ガス雰囲気を約300℃としてガスセンサ素子100に晒し、ガスセンサ素子100の起電力を測定することで、応答性評価を行った。具体的には、リッチからリーン雰囲気に切り替えたときのガスセンサ素子の出力(起電力)が200mV未満であれば応答性が良好(○)とみなし、200mV以上であれば応答性が悪い(×)とみなした。
得られた結果を表1、図8〜図13に示す。
Figure 2017083289
表1、図8〜図13から明らかなように、検知電極がPtを主成分とし単斜晶ジルコニアを含み、さらに多孔質保護層がPt,Pd又はRhを担持してなる実施例1〜3の場合、300℃の低温でかつ流速の速い(7m/sec)環境下でもガスセンサの応答性が向上した。
一方、多孔質保護層がPt,Pd又はRhを担持しない比較例1,2の場合、及び検知電極が単斜晶ジルコニアを含まない比較例3の場合、いずれも300℃の低温でかつ流速の速い(7m/sec)環境下でガスセンサの応答性が低下した。
<固体電解質体の強度と電気抵抗率>
ジルコニア(ZrO)粉末に、イットリア(Y)の割合を変えて添加し、さらに全体に対して0.4質量%のアルミナ粉末を添加し、この混合粉末原料を金型成形した後、150MPaでCIP(冷間静水圧加圧)成形し、1350℃で焼成した。得られた各焼結体を厚み1mmの円柱状の試料となるようにカットし、XRDにより正方晶と単斜晶ジルコニアの割合をそれぞれ測定した。
試料中の正方晶ジルコニアの割合は、XRDの測定範囲71°〜77°、管電圧50KV、管電流300mAとし、得られたチャートから固有のピークである、[T(004)面積+T(220)面積]/[T(004)面積+T(220)面積+C(400)面積]より算出した。この面積比は、質量%に相当する。なお、Tは正方晶(テトラゴナル)ジルコニア、Cは立方晶(キュービック)ジルコニアを表す。
同様に、試料中の単斜晶ジルコニアの割合は、XRDの測定範囲26°〜33°、管電圧50KV、管電流300mAとし、得られたチャートから、固有のピークである、 [M(-111)面積+M(111)面積]/[M(-111)面積+M(111)面積+C(111)orT(101)面積]より算出した。なお、Mは単斜晶(モノクリニック)ジルコニアを表す。
このようにして正方晶ジルコニアの割合を変えた複数の試料につき、それぞれ3点曲げ強度及び電気抵抗率(600℃)を測定した。
3点曲げ強度は、厚さ3mm幅4mmの試験片につき、スパン30mmでJIS-R1602に従って測定した。電気抵抗率は、試料の両面にそれぞれPt電極(電極面積がそれぞれ42mm)を印刷して焼付を行い、測定温度600℃にて交流インピーダンス法により固体電解質体の抵抗を測定した。
得られた結果を図14、図15に示す。
図14より、試料中の正方晶ジルコニアの割合が50質量%以上であれば、3点曲げ強度が500MPa以上となり、強度が向上することがわかった。
又、図15より、試料中の正方晶ジルコニアの割合が83.3質量%以下であれば、電気抵抗率(600℃)が100Ω以下となることがわかった。なお、「83.3質量%」の数値は、図15の各試料の正方晶ジルコニアの割合と電気抵抗率の値から、最小二乗方で求めた直線と電気抵抗率100Ωとの交点から求めた正方晶ジルコニアの割合である。
1、1B ガスセンサ
20、20B 多孔質保護層
30 ハウジング
104、104B 基準電極
106、106B 検知電極
105、105B 固体電解質体
100、100B ガスセンサ素子
300、300B 素子本体

Claims (2)

  1. 固体電解質体と該固体電解質体に配置された検知電極及び基準電極とを有する検知部を含む板状又は筒状の素子本体と;該素子本体のうち、前記検知部が位置する先端部の周囲を少なくとも取り囲む多孔質保護層と;を備えるガスセンサ素子において、
    前記固体電解質体はジルコニアを主成分とし、前記ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアであり、
    前記検知電極はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含み、
    前記多孔質保護層のうち、少なくとも前記検知電極を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなることを特徴とするガスセンサ素子。
  2. 被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を保持するハウジングとを備えるガスセンサにおいて、
    前記センサ素子は、請求項1に記載のガスセンサ素子を用いることを特徴とするガスセンサ。
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