JP6560099B2 - ガスセンサ素子及びガスセンサ - Google Patents
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特に、未燃焼ガスの濃度は、内燃機関の始動時において高くなる傾向があることから、この内燃機関の始動時における未燃焼ガス成分の排出を低減したいという要請が強い。このため、未燃焼ガスを検出するためのガスセンサとしては、この要請に応えるように、特に低温における応答性を高めることが要求されている。
そこで、検知電極として、触媒金属(Pt)と単斜晶ZrO2を含む厚み8μm以上のサーメット電極を用い、応答性を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
そこで、本発明は、応答性をより一層向上させたガスセンサ素子及びガスセンサの提供を目的とする。
このガスセンサ素子によれば、被毒物質を捕捉したり、水滴がガスセンサ素子に直接接触することを抑制するための多孔質保護層に貴金属成分を担持させることで、多孔質保護層を触媒層として機能させる。これにより、電極の活性が低い低温下で、かつガス流速の速い環境下でも電極反応をより速やかに平衡状態に到達させることができ、ガスセンサの応答性を向上させることができる。
又、検知電極に単斜晶ジルコニアを含ませることで、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させることができる。
さらに、固体電解質体が所定割合の正方晶ジルコニアを含むことで、固体電解質体の強度とイオン導電性(電気抵抗)を両立することができる。このため、低温(特に300℃以下)でのガスセンサの応答性を向上させつつ、低温状態から高温の燃焼ガスに曝される状態になった時に固体電解質体に熱衝撃が加わっても固体電解質体が破損し難く、ガスセンサ素子の強度を保つことができる。又、ヒータを有するガスセンサの場合には、低温状態からヒータによる急速加熱を行っても固体電解質体が破損し難いので、早期活性を実現できる。
図1は本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1の長手方向(軸線L方向)に沿う断面図、図2はガスセンサ素子100の模式分解斜視図、図3は多孔質保護層20を含むガスセンサ素子100の軸線L方向に沿う断面図、図4は多孔質保護層20を含むガスセンサ素子100の軸線L方向に直交する模式断面図である。
である。
酸素濃度検出セル130が特許請求の範囲の「検知部」に相当する。
なお、図2では多孔質保護層20の図示を省略している。
一方、固体電解質体105との間で基準電極104を挟み込むようにして、基準電極104の下面に下面層103及び大気導入孔層107が積層されている。大気導入孔層107は後端側が開口する略コ字状に形成され、固体電解質体105、大気導入孔層107及び下面層103で囲まれた内部空間が大気導入孔107hを構成している。そして、この大気導入孔107hに導入される大気(基準ガス)に基準電極104が晒されるようになっている。
下面層103、大気導入孔層107、基準電極104、固体電解質体105、検知電極106及び保護層111が積層された積層体が素子本体300を構成する。本実施形態では、素子本体300は板状をなしている。
図3は、図1のガスセンサ素子100の先端側の部分拡大断面図である。多孔質保護層20は、ガスセンサ素子100(素子本体300)の先端面を含み、軸線L方向に沿って後端側に延びるように形成され、かつ図4に示すようにガスセンサ素子100(素子本体300)の表裏面及び両側面の4面を完全に囲んで形成されている。又、軸線L方向に見て、多孔質保護層20がガスセンサ素子100(素子本体300)の少なくとも基準電極部104a、及び検知電極部106aを包含する領域(この領域が検知部を構成する)を覆い、さらにこの領域より後端まで延びている。
ガスセンサ素子100には排気ガス中に含まれるシリコンやリンなどの被毒物質に晒されたり、排気ガス中の水滴が付着することがある。そこで、ガスセンサ素子100の外表面に多孔質保護層20を被覆することで、被毒物質を捕捉したり、水滴がガスセンサ素子100に直接接触することを抑制できる。
(1)固体電解質体105は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O3)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。そして、固体電解質体105は、ジルコニアを主成分とし、該ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアである。
(2)検知電極106はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。さらに、検知電極106はセラミック成分を含有してもよい。
(3)又、多孔質保護層20のうち、少なくとも検知電極106を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなる。
なお、「主成分」とは、対象となる部位(固体電解質体105や検知電極106)を構成する全成分に対し、50質量%を超える成分をいう。又、多孔質保護層20のうち、少なくとも検知電極106を覆う部位とは、ガスセンサ素子100の積層方向に検知電極106と重なる部位をいう。
又、検知電極106はPtを50質量%を超え、95質量%以下含有すると好ましい。
検知電極106の平均厚みは、8〜130μmであることが好ましい。
そこで、図5(b)に示すように、貴金属21を担持させた多孔質保護層20を用いることで、多孔質保護層20中で未燃焼ガスGの一部が貴金属21と反応して燃焼する。このため、電極反応が平衡状態に向かうにつれて、多孔質保護層20の内部に残っている未燃焼ガスGが検知電極106に到達する度合が少なくなり、この時点での実際のガス濃度を反映した検知を行うことができ、ひいてはガス流速の速い環境下でのガスセンサの応答性を向上させることができる。
つまり、多孔質保護層20を触媒層として機能させることにより、電極反応をより速やかに平衡状態に到達させることができる。
多孔質保護層20の平均厚みが30〜300μmであることが好ましい。又、多孔質保護層20中の上記貴金属成分の合計の担持量が0.01〜1質量%であることが好ましい。
一方、上述の正方晶ジルコニアの割合が83.3質量%を超えると、600℃での固体電解質体105の電気抵抗率が100Ωを超えるため、さらに低温(300℃)ではより抵抗値が高くなり、、酸素濃度検出セル130の起電力を正確に検出することが困難になる。これは、正方晶ジルコニアの割合が多くなるほど、イオン導電率の高い立方晶ジルコニアの割合が少なくなるためである。なお、600℃における電気抵抗率は、燃焼ガスに曝されたガスセンサの使用温度を想定している。
なお、固体電解質体105中の正方晶ジルコニアの割合は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤として添加するイットリア(Y2O3)又はカルシア(CaO)の量、及び固体電解質体105の焼成温度を調整することにより制御できる。ジルコニア中の安定化剤の量が多いほど正方晶ジルコニアの割合が減少する傾向にある。
又、固体電解質体105中のジルコニアのうち、正方晶ジルコニア以外のものは単斜晶ジルコニア及び立方晶ジルコニアである。
下面層103、保護層111、大気導入孔層107は、固体電解質体105と同じ組成とすることができる。電極保護部113aはジルコニアを主体とする多孔質体とし、後述する多孔質保護層20は、アルミナからなる多孔質体とすることができる。これら多孔質体は、例えばアルミナ、スピネル、ジルコニア、ムライト、ジルコン及びコージェライトの群から選ばれる1種以上のセラミック粒子を焼成等により結合して形成することができる。これらの粒子を含むスラリーを焼結することで、セラミック粒子間の隙間や、スラリー中の有機又は無機バインダが焼失する際に、皮膜の骨格中に気孔が形成される。
図6は本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1Bの長手方向(軸線L方向)に沿う断面図、図7はガスセンサ素子100Bの軸線L方向に沿う断面図である。
なお、第2の実施形態に係るガスセンサ1Bは、ガスセンサ素子100Bの形状が筒状で、プロテクタ24Bが一重プロテクタで、基準電極104Bがセンサボディでアースを取っているためにリード線が1本のリード線11Bであること以外は、実質的に第1の実施形態に係るガスセンサ1と同様であり、ハウジングや外筒等の構成部材も形状が若干異なる以外は実質的に同様である。そこで、第1の実施形態に係るガスセンサ1に対応する構成部材(例えばハウジング)には、符号に「B」を付して対応関係を明示し、詳しい説明を省略する。
さらに、検知電極106Bの外面には、溶射により多孔質の下地層22が形成され、下地層22の外面に多孔質保護層20Bが形成されている。下地層22は検知電極106Bと多孔質保護層20Bとの密着性を向上させる。
基準電極104B、固体電解質体105B、検知電極106B、下地層22が素子本体300Bを構成する。本実施形態では、素子本体は先端側が閉じた筒状をなしている。
なお、基準電極104Bから後端側に向かって基準リード部(図示せず)が延び、検知電極106Bから後端側に向かって検知リード部(図示せず)が延びている。基準リード部の後端は、外部回路接続用の外部端子である接続端子16B1(図6参照)と接続される。一方、検知リード部は、ガスセンサ素子100Bの鍔部101(図7参照)の下面側に環状に形成された環状リード部(図示せず)に接続され、環状リード部が主体金具30Bの金具側段部33B(図7参照)に接することで、センサボディでアースを取っている。
一方、ガスセンサ素子100Bの中央側に鍔部101が設けられ、ガスセンサ素子100Bが主体金具30Bの内側に挿通され、金具側段部33Bに後端側からガスセンサ素子100Bの鍔部101が当接している。
さらに、鍔部101の後端側におけるガスセンサ素子100Bと主体金具30Bとの径方向の隙間に、筒状の滑石36B、及びアルミナ製筒状のスリーブ39Bが配置されている。
一方、主体金具30Bの後端側には、スリーブ39Bの後端側に接するようにして、外筒25Bの先端側のフランジ部25fが挿入され、フランジ部25fの後端側にリング部材40Bが配置されている。そして、主体金具30B後端部を内側に屈曲して加締め部30Baを形成することにより、外筒25Bが加締め部30Baとスリーブ39Bの間に挟まれて固定されると共に、スリーブ39Bが先端側に押し付けられる。これにより滑石36Bを押し潰し、スリーブ39B及び滑石36Bが加締め固定されるとともに、ガスセンサ素子100Bと主体金具30Bの隙間がシールされている。
外筒25Bの後端側内部には、ガスセンサ素子100Bの後端側に接するようにして、セパレータ50Bが配置されている。セパレータ50Bとガスセンサ素子100Bの間に、接続端子16B1の後端から径方向外側に拡がるフランジ部16fが挟まれ、これにより、接続端子16B1が外筒25Bとガスセンサ素子100Bとにより固定されている。
なお、外筒25Bの側面には通気孔25hが貫通し、保護外筒80には通気孔25hと対応する位置に通気孔81が貫通している。そして、保護外筒80を加締めると、外筒25Bと保護外筒80との間で通気フィルタ140が挟み込まれて保持され、通気孔25h、81を介して通気フィルタ140が外部の水を通さずにガスセンサ素子100Bの内部空間に基準ガス(大気)を導入するようになっている。
(2)検知電極106BはPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。
(3)又、多孔質保護層20Bのうち、少なくとも検知電極106Bを覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなる。
このため、低温でかつ流速の速い環境下でもガスセンサの応答性を向上させることができる。又、低温状態から高温の燃焼ガスに曝される状態になった時に熱衝撃が加わっても固体電解質体105が破損し難く、ガスセンサ素子100Bの強度を保つことができる。さらに、ヒータを有するガスセンサの場合、早期活性を実現できる。
又、ガスセンサは、通電により発熱するヒータを有していても良い。
図1、図2に示す板状のガスセンサ素子(酸素センサ素子)100を製造した。
まず、実施例1〜3及び比較例1(表1参照)として、単斜晶ZrO2を、白金粉末100質量部に対して15質量部(外配合で15質量%)混合し、粉末総量に対して0.1質量部の分散材、10質量部のエトセル、20質量部のブチルカルビトールとともに混合、混練して検知電極ペーストを得た。
又、比較例2,3として、単斜晶ZrO2を0とし、正方晶および立方晶が混在したZrO22を白金粉末100質量部に対して15質量部(外配合で15質量%)混合したこと以外は、上記と同様にして検知電極ペーストを得た。又、すべての実施例、比較例の基準電極として、比較例2,3の検知電極ペーストと同じものを用いた。
次に、これらの検知電極ペースト及び基準電極ペーストをスクリーン印刷により、固体電解質シートにそれぞれ10μmの厚みになるよう印刷し、1350℃で焼成することによってガスセンサ素子(素子本体)を得た。
なお、固体電解質体は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O3)を5mol%添加し、さらに全体に対して0.4質量%のアルミナ粉末を添加して上記温度で焼結した。固体電解質体中のジルコニアの53質量%が正方晶ジルコニアであった。
多孔質保護層用のスラリー:スピネル粉末60vol%、アルミナ粉末40vol%を秤量し、さらにエタノールを添加して攪拌して調製した。次に、乾燥によりエタノールを蒸発させ、得られた混合粉末をそれぞれ表1に示す貴金属を含有する水溶液(具体的には、それぞれ塩化Pt酸溶液、硝酸Pd溶液、硝酸Rh溶液)に浸漬し、粉末と水溶液を分離するために吸引ろ過した。このものを大気中、600℃で3時間の条件で乾燥し、貴金属成分を金属化し、貴金属を含んだスピネル/アルミナ混合粉末を得た。その後、この混合粉末にバインダーとエタノールを添加して多孔質保護層用のスラリーとした。
上記の条件のもと、上記バーナー測定装置内の燃焼ガス雰囲気を約300℃としてガスセンサ素子100に晒し、ガスセンサ素子100の起電力を測定することで、応答性評価を行った。具体的には、リッチからリーン雰囲気に切り替えたときのガスセンサ素子の出力(起電力)が200mV未満であれば応答性が良好(○)とみなし、200mV以上であれば応答性が悪い(×)とみなした。
得られた結果を表1、図8〜図13に示す。
一方、多孔質保護層がPt,Pd又はRhを担持しない比較例1,2の場合、及び検知電極が単斜晶ジルコニアを含まない比較例3の場合、いずれも300℃の低温でかつ流速の速い(7m/sec)環境下でガスセンサの応答性が低下した。
ジルコニア(ZrO2)粉末に、イットリア(Y2O3)の割合を変えて添加し、さらに全体に対して0.4質量%のアルミナ粉末を添加し、この混合粉末原料を金型成形した後、150MPaでCIP(冷間静水圧加圧)成形し、1350℃で焼成した。得られた各焼結体を厚み1mmの円柱状の試料となるようにカットし、XRDにより正方晶と単斜晶ジルコニアの割合をそれぞれ測定した。
試料中の正方晶ジルコニアの割合は、XRDの測定範囲71°〜77°、管電圧50KV、管電流300mAとし、得られたチャートから固有のピークである、[T(004)面積+T(220)面積]/[T(004)面積+T(220)面積+C(400)面積]より算出した。この面積比は、質量%に相当する。なお、Tは正方晶(テトラゴナル)ジルコニア、Cは立方晶(キュービック)ジルコニアを表す。
同様に、試料中の単斜晶ジルコニアの割合は、XRDの測定範囲26°〜33°、管電圧50KV、管電流300mAとし、得られたチャートから、固有のピークである、 [M(-111)面積+M(111)面積]/[M(-111)面積+M(111)面積+C(111)orT(101)面積]より算出した。なお、Mは単斜晶(モノクリニック)ジルコニアを表す。
3点曲げ強度は、厚さ3mm幅4mmの試験片につき、スパン30mmでJIS-R1602に従って測定した。電気抵抗率は、試料の両面にそれぞれPt電極(電極面積がそれぞれ42mm2)を印刷して焼付を行い、測定温度600℃にて交流インピーダンス法により固体電解質体の抵抗を測定した。
図14より、試料中の正方晶ジルコニアの割合が50質量%以上であれば、3点曲げ強度が500MPa以上となり、強度が向上することがわかった。
又、図15より、試料中の正方晶ジルコニアの割合が83.3質量%以下であれば、電気抵抗率(600℃)が100Ω以下となることがわかった。なお、「83.3質量%」の数値は、図15の各試料の正方晶ジルコニアの割合と電気抵抗率の値から、最小二乗方で求めた直線と電気抵抗率100Ωとの交点から求めた正方晶ジルコニアの割合である。
20、20B 多孔質保護層
30 ハウジング
104、104B 基準電極
106、106B 検知電極
105、105B 固体電解質体
100、100B ガスセンサ素子
300、300B 素子本体
Claims (2)
- 固体電解質体と該固体電解質体に配置された検知電極及び基準電極とを有する検知部を含む板状又は筒状の素子本体と;該素子本体のうち、前記検知部が位置する先端部の周囲を少なくとも取り囲む多孔質保護層と;を備えるガスセンサ素子において、
前記固体電解質体はジルコニアを主成分とし、前記ジルコニアの60質量%を超え83.3質量%以下が正方晶ジルコニアであり、
前記検知電極はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含み、
前記多孔質保護層のうち、少なくとも前記検知電極を覆う部位は、Pt,Pd,及びRhの群から選ばれる1種以上の貴金属を担持してなることを特徴とするガスセンサ素子。 - 被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を保持するハウジングとを備えるガスセンサにおいて、
前記センサ素子は、請求項1に記載のガスセンサ素子を用いることを特徴とするガスセンサ。
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