JP2017083129A - グロープラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】グロープラグの耐久性と急速昇温性とを確保する。【解決手段】軸線方向に延びる側面部と、側面部の先端側に接続され、側面部の先端側を閉じてなるシース管と、シース管内に軸線方向に延びるように配置され、自身の先端部がシース管の先端部と接続された発熱コイルと、を備えるグロープラグ。発熱コイルの先端部は、シース管の先端部に取り囲まれつつ埋め込まれてなり、シース管の先端部と発熱コイルとの間のシース管を構成する金属と発熱コイルを構成する金属との合金からなる合金部の厚さは10(μm)以下であり、軸線方向において、発熱コイルが配置された部位に対応するシース管の側面部の厚さのうち、最小の厚さAと、シース管の先端から発熱コイルの先端までの軸線方向における距離Bと、シース管の先端部の軸線方向における最大の厚さCと、は、B>A、及び、C/A≦2.5の関係を満たす。【選択図】図3

Description

本発明は、グロープラグに関する。
軸線方向に延びるシース管と、シース管内に配置され、先端がシース管の先端部に接続された発熱コイルと、を備えるグロープラグが知られている(特許文献1)。
国際公開第2014/206847号公報 特開平4−119号公報
しかし、発熱コイルの先端と、シース管の先端と、の距離が短い場合には、シース管の先端が劣化した際に、シース管の先端から発熱コイルの先端が露出して、グロープラグの耐久性が確保できない場合があった。一方、距離が長い場合には、シース管の先端部の熱容量が大きくなるために、比較的短時間で所望の温度にまでグロープラグを昇温させる、急速昇温性を確保することが困難な場合があった。そのため、このようなグロープラグにおいて、耐久性と急速昇温性とを確保可能な技術が求められていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、軸線方向に延びる側面部と、前記側面部の先端側に接続され、前記側面部の先端側を閉じてなるシース管と、前記シース管内に前記軸線方向に延びるように配置され、自身の先端部が前記シース管の先端部と接続された発熱コイルと、を備えるグロープラグが提供される。このグロープラグでは、前記発熱コイルの先端部は、前記シース管の先端部に取り囲まれつつ埋め込まれてなり;前記シース管の先端部と前記発熱コイルとの間の前記シース管を構成する金属と前記発熱コイルを構成する金属との合金からなる合金部の厚さは10(μm)以下であり;前記軸線方向において、前記発熱コイルが配置された部位に対応する前記シース管の側面部の厚さのうち、最小の厚さAと;前記シース管の先端から前記発熱コイルの先端までの前記軸線方向における距離Bと;前記シース管の先端部の前記軸線方向ODにおける最大の厚さCと、は、
B>A・・・式(1)
C/A≦2.5・・・式(2)
の関係を満たすことを特徴とする。このような形態のグロープラグであれば、グロープラグの耐久性と急速昇温性とを確保することができる。
(2)上記形態のグロープラグにおいて、前記発熱コイルの先端部は、直線状であってもよい。このような形態のグロープラグであれば、先端部の長さを調整しやすいので、上述の式(1)、式(2)の関係を満たしながら、厚さCの値を小さくすることができる。そのため、シース管先端部の熱容量を小さくすることができるので、急速昇温に適したグロープラグを提供することができる。
(3)上記形態のグロープラグにおいて、前記発熱コイルの先端部は、螺旋状であってもよい。このような形態のグロープラグであれば、発熱コイルの先端部とシース管の先端部とをより強固に接続することができる。
本発明は、上述したグロープラグとしての形態以外にも、例えば、グロープラグの製造方法や、シースヒータ、グロープラグを備える制御装置など、種々の形態で実現することが可能である。
本発明の一実施形態としてのグロープラグ制御装置を示すブロック図。 グロープラグ制御装置の備えるグロープラグを示す図。 シースヒータの詳細な構成を示す断面図。 シース管の先端部付近の断面図。 グロープラグの製造方法を示すフローチャート。 ステップS20における溶接工程を示す説明図。 実験の結果を示す図。 第2実施形態におけるグロープラグのシース管の先端部付近の断面図。 第2実施形態における溶接工程を示す説明図。
A.第1実施形態:
A1.グロープラグ制御装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態としてのグロープラグ制御装置21を示すブロック図である。グロープラグ制御装置21は、グロープラグ10と、制御部32と、スイッチ33と、を備えている。なお、図1では、グロープラグ10を1つのみ示しているが、実際のエンジンには複数の気筒が設けられており、各気筒に対応してグロープラグ10やスイッチ33が設けられる。
制御部32は、CPUやROM、RAM等を有するマイクロコンピュータとして構成されている。制御部32はPWM(Pulse Width Modulation)制御によりグロープラグ10への通電を制御する。制御部32は、入力された電圧に基づいてグロープラグ10からの印加電圧を算出することができる。スイッチ33は、制御部32からの指示に従い、バッテリVAからグロープラグ10に対する通電のオン・オフを切り替える。スイッチ33は、電流検知機能を有するFET(Field Effect Transistor)を、NPN型トランジスタ等を介して動作させるように構成されており、制御部32は、印加電圧と、スイッチ33によって測定されるグロープラグ10に流れる電流と、から、グロープラグ10の抵抗値を得る。さらに、本実施形態では、制御部32は、エンジンキーがオンされた際に、グロープラグ10を急速昇温させるプリグロー通電と、プリグロー通電の後に、グロープラグ10を所定時間に亘って所定温度において維持するアフターグロー通電と、を行うことが可能である。
プリグロー通電では、制御部32は、グロープラグ10に11Vの電圧を印加することにより、印加開始から3秒以内で、グロープラグ10のシース管の先端(後述)から軸線方向ODの後端側に2mmの位置における表面温度を1000℃以上に到達させる、急速昇温を行う。このプリグロー通電では、制御部32は、グロープラグ10に投入する電力と経過時間との関係を示す曲線を、予め作成した基準となる曲線に一致させることで、グロープラグ10を急速に目標温度まで昇温させる。具体的には、予め定めた基準とする曲線を示す関係式又はテーブルを用い、通電開始からの経過時間に応じた各時点においての投入すべき電力を求める。制御部32は、グロープラグ10に流れる電流と、その時点においての投入すべき電力の値との関係から、グロープラグ10に印加すべき電圧を求め、PWM制御により、グロープラグ10に印加する電圧を制御する。これにより、基準とする曲線と同じカーブを描くようにして電力の投入が行われ、昇温過程の各時点までに投入された電力の積算量に応じ、グロープラグ10が発熱する。したがって、基準とする曲線に沿った電力の投入が完了すれば、グロープラグ10は基準曲線通りの時間で目標温度に到達する。
また、アフターグロー通電においては、比較的長期間(例えば、180秒程度)の間、グロープラグ10のシース管の表面温度が1000℃以上になるように、グロープラグ10に対する供給電力が調節される。このアフターグロー通電では、制御部32は、グロープラグ10の抵抗値が、グロープラグ10を目標の温度とした際の抵抗値(目標抵抗値)と一致するように、グロープラグ10に対する通電を制御する。具体的には、制御部32は、グロープラグ10の現在の抵抗値と目標抵抗値との差分から、例えば、PI(Proportional-Integral)制御により、グロープラグ10に印加すべき実行電圧を算出し、算出された実行電圧に基づいてパルス幅をパルス周期で割ったデューティ比を設定して、通電を制御する。
A2.グロープラグの構成:
図2は、グロープラグ制御装置21の備えるグロープラグ10を示す図である。グロープラグ10は、熱を発生させるシースヒータ(発熱装置)800を備え、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関(図示せず)の始動時における点火を補助する熱源として機能する。グロープラグ10は、シースヒータ800の他、中軸200と、主体金具500とを備える。これらグロープラグ10を構成する部材は、グロープラグ10の軸線方向ODに沿って組み付けられている。図2では、軸線Oから紙面右側に外観構成を図示し、軸線Oから紙面左側に断面構成を図示した。なお、本明細書では、グロープラグ10におけるシースヒータ800側を「先端側」と呼び、係合部材100側を「後端側」と呼ぶ。
主体金具500は、炭素鋼を筒状に成形した部材である。主体金具500は、先端側の端部においてシースヒータ800を保持する。また、主体金具500は、後端側の端部において絶縁部材410及びO(オー)リング460を介して中軸200を保持する。絶縁部材410の軸線Oに沿った位置は、絶縁部材410の後端に接するリング300が中軸200に加締められることで固定される。さらに、主体金具500の軸孔510内には、絶縁部材410からシースヒータ800に至る中軸200の部位が配置される。軸孔510は、軸線Oに沿って形成された貫通孔であり、中軸200よりも大きな径を有する。軸孔510に中軸200が位置決めされた状態で、軸孔510と中軸200との間には、両者を電気的に絶縁する空隙が形成される。また、軸孔510の先端側には、シースヒータ800が圧入されて接合されている。さらに、主体金具500は、工具係合部520と、雄ネジ部540とを備える。主体金具500の工具係合部520は、グロープラグ10の取り付け及び取り外しに用いられる工具(図示せず)に係合する。雄ネジ部540は、内燃機関(図示せず)に形成された雌ネジに嵌り合う。
中軸200は、導電材料で円柱状(棒状)に成形された部材である。中軸200は、主体金具500の軸孔510に挿入された状態で軸線Oに沿って組み付けられる。中軸200は、先端側に形成された先端部210と、後端側に設けられた雄ネジ部290とを備える。先端部210は、シースヒータ800の内部に挿入される。雄ネジ部290は、主体金具500から後端側に突出している。雄ネジ部290には、係合部材100が嵌り合う。
図3は、シースヒータ800の詳細な構成を示す断面図である。シースヒータ800は、シースヒータ800の内部に中軸200の先端部210が挿入された状態で、主体金具500の軸孔510内に圧入され接合されている。シースヒータ800は、シース管810と、発熱コイル820と、後端コイル830と、絶縁体870とを備える。発熱コイル820のことを「先端コイル」とも呼ぶ。
シース管810は、軸線方向ODに延び、先端が閉じられた筒状部材である。シース管810は、発熱コイル820と、後端コイル830と、絶縁体870と、を内包する。シース管810は、軸線方向ODに延びる側面部814と、側面部814の先端側に接続し、外側に向けて丸く形成された先端部813と、先端部813とは反対側に開口した端部である後端部819とを備える。この後端部819からシース管810の内部に中軸200の先端部210が挿入されている。シース管810は、パッキン600及び絶縁体870によって中軸200と電気的に絶縁される。一方、シース管810は、主体金具500と接触して電気的に接続されている。シース管810は、例えば、鉄(Fe)とクロム(Cr)と炭素(C)とを含有するオーステナイト系ステンレス材料や、インコネル601(「INCONEL」は登録商標)、Alloy602(ドイツ工業規格(DIN)で規定されたDIN2.4633合金に相当)といったニッケル(Ni)基合金によって形成されている。
絶縁体870は、電気絶縁性を有する絶縁材料の粉末により形成されている。絶縁体870としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)の粉末が用いられる。絶縁体870は、シース管810が中軸200、発熱コイル820、及び後端コイル830を内包することによって、シース管810内に形成された隙間に充填(配置)され、その隙間を電気的に絶縁する。
発熱コイル820は、シース管810の内側に軸線方向ODに沿って配置され、通電によって発熱する。発熱コイル820は、先端側のコイル端部である先端部822と、後端側のコイル端部である後端部829とを備える。先端部822は、シース管810の先端部813内に位置しており、シース管810と電気的に接続される。後端部829は、発熱コイル820と後端コイル830とが溶接されることによって形成された接続部840を介して、後端コイル830と電気的に接続される。発熱コイル820の主成分は、タングステン(W)や、モリブデン(Mo)であることが好ましい。なお、主成分とは、含有率(質量%)が50質量%以上の物質をいう。また、発熱コイル820の主成分は、タングステン(W)であり、発熱コイル820におけるタングステン(W)の含有率は、99質量%以上であることがより好ましい。本実施形態では、発熱コイル820の主成分は、タングステン(W)であり、発熱コイル820におけるタングステン(W)の含有率は、99質量%以上である。
後端コイル830は、先端側のコイル端部である先端部831と、後端側のコイル端部である後端部839とを備える。先端部831は、発熱コイル820の後端部829に溶接されることにより発熱コイル820と電気的に接続される。後端部839は、中軸200の先端部210に接合されることにより中軸200と電気的に接続される。後端コイル830は、例えば、ニッケル(Ni)−クロム(Cr)合金や、鉄(Fe)−クロム(Cr)−アルミニウム(Al)合金により形成されている。
なお、急速昇温性を確保する観点から、グロープラグ10の20℃における抵抗値R20は、0.6(Ω)以下であることが好ましい。グロープラグ10の20℃における抵抗値R20とは、本実施形態では、発熱コイル820の20℃における抵抗値と、後端コイル830の20℃における抵抗値との合計値である。本実施形態では、グロープラグ10の20℃における抵抗値R20は、0.4(Ω)である。また、本実施形態では、発熱コイル820の20℃での抵抗値R120に対する1000℃での抵抗値R11000の比である抵抗比R1と、後端コイル830の20℃での抵抗値R220に対する1000℃での抵抗値R21000の比である抵抗比R2とは、R1>R2の関係にある。
図4は、シース管810の先端部813付近の断面図である。図4の断面は、軸線Oを通る位置でシースヒータ800を切断した断面であり、軸線Oを通る位置において切断された発熱コイル820の螺旋部分823及び先端部822と、シース管810と、絶縁体870と、が示されている。本実施形態では、発熱コイル820の先端部822は、軸線O上において、軸線Oに沿った直線状である。図4に示すように、発熱コイル820の先端部822は、シース管810の先端811とシース管810の先端側内壁面812との間に位置しており、発熱コイル820の先端部822は、シース管810の先端部813に取り囲まれつつ埋め込まれている。また、シース管810の先端部813と発熱コイル820の先端部822との間に、シース管810を構成する金属と発熱コイル820を構成する金属との合金が形成された場合、その合金からなる合金部の厚さは10(μm)以下である。合金部は、発熱コイル820の先端部822とシース管810の先端部813との境界付近を例えばEPMA(Electron Probe Micro Analyser)などによって分析することにより検出して、厚さを算出することができる。なお、本実施形態のグロープラグ10には、合金部は形成されていない。そのため、図4には合金部は示されていない。
図4には、さらに、厚さAと、距離Bと、厚さCと、が示されている。厚さAは、軸線方向ODにおいて、発熱コイル820が配置された部位に対応するシース管810の側面部814の厚さのうち、最小の厚さである。距離Bは、シース管810の先端811から発熱コイル820の先端821までの軸線方向ODにおける距離である。厚さCは、シース管810の先端部813の軸線方向ODにおける最大の厚さである。なお、側面部814の厚さAは、グロープラグ10に対する通電のオンとオフとを1サイクルとして通電を繰り返した場合に、シース管810(側面部814)が例えば酸化などにより消耗した場合であっても、少なくとも所望のサイクル数までグロープラグ10を使用可能なように、あらかじめ定められた厚さである。厚さAと、距離Bと、厚さCとは、以下の式(1)、(2)を満たしている。以下、厚さCと厚さAとの比「C/A」のことを、「厚さ比」という。
B>A・・・式(1)
C/A≦2.5・・・式(2)
なお、グロープラグ10に対する通電を繰り返した場合における、シース管810(側面部814)の消耗を考慮すると、厚さAは、0.4(mm)以上であることが好ましい。厚さAが0.4(mm)以上であれば、グロープラグ10を十分なサイクル数まで使用することができる。また、グロープラグ10の急速昇温性を考慮すると、厚さAは、0.7(mm)以下であることが好ましい。厚さAが0.7(mm)以下であれば、シース管810の内壁から表面までの距離が長くなりすぎないため、グロープラグ10の急速昇温性を確保することができる。
A3.グロープラグ10の製造方法:
図5は、グロープラグ10の製造方法を示すフローチャートである。グロープラグ10の製造では、まず、発熱コイル820と中軸200と、が溶接される(ステップS10)。具体的には発熱コイル820と後端コイル830とが溶接され、さらに、後端コイル830の後端部839と、中軸200の先端部210と、が溶接される。次に、発熱コイル820の先端部822と、シース管810の先端部813と、が溶接される(ステップS20)。ステップS20を「溶接工程」とも呼ぶ。
図6は、ステップS20における溶接工程を示す説明図である。この工程では、まず、開口815を有する先端部813pを備え、この開口815に向かって次第に縮径する形状に成形されたシース管810pを用意する。用意されたシース管810pの先端部813p内(開口815内)に、発熱コイル820の先端部822を挿入して配置する(図6(a))。次に、先端部813pの外側から、例えばアーク溶接によって先端部813pを溶融して凝固させることにより開口815を閉塞させつつ、発熱コイル820の先端部822とシース管810の先端部813とを溶接する(図6(b))。こうすることにより、発熱コイル820の先端部822がシース管810の先端部813に取り囲まれて埋め込まれる。溶接工程では、用意されるシース管810pの先端部813pの体積や、開口815内に配置される発熱コイル820の長さ(先端部822の長さ)や、溶接機器の出力や、溶接時間などを調整することにより、厚さAと、距離Bと、厚さCと、が上述の式(1)及び(2)を満たすようにする。また、溶接工程において、発熱コイル820の融点より低く、シース管810の融点より高い温度で発熱コイル820とシース管810とが溶接されるように、溶接機器の出力や、溶接時間などを調整することにより、合金部の厚さが10(μm)以下となるようにする。
ステップS20における溶接工程が完了すると、次に、シース管810の内に絶縁体870が充填される(ステップS30)。絶縁体870が、発熱コイル820と、後端コイル830と、中軸200とを内包することによってシース管810内に形成された空隙に充填されて、シースヒータ800の組み立てが完了する。
シースヒータ800が組み立てられると、シースヒータ800に対し、スウェージング加工が施される(ステップS40)。スウェージング加工とは、シースヒータ800に対して打撃力を加えてシースヒータ800を縮径させ、シース管810内に充填した絶縁体870を緻密化させる加工である。スウェージングに伴ってシースヒータ800に打撃力が加えられると、打撃力がシースヒータ800内部に伝えられることにより、絶縁体870が緻密化される。
シースヒータ800にスウェージング加工が施されると、シースヒータ800と主体金具500とが組み付けられて、グロープラグ10が組み立てられ(ステップS50)、グロープラグ10が完成する。具体的には、中軸200が一体化されたシースヒータ800を主体金具500の軸孔510に圧入して固定すると共に、主体金具500の後端部分において、オーリング110や絶縁部材120を中軸200に嵌め込み、係合部材140を主体金具500の後端に設けられた中軸200の雄ネジ部290に締め付ける。また、ステップS50では、グロープラグ10に対してエージング処理が施される。具体的には、組み立てられたグロープラグ10に通電することによって、シースヒータ800を発熱させて、シースヒータ800の外表面に酸化膜を形成させる。
以上のように構成された本実施形態のグロープラグ10によれば、厚さAと距離Bとが上述の式(1)を満たすため、グロープラグ10を所望のサイクル数まで使用した場合であっても、発熱コイル820の先端821がシース管810の先端部813から露出することを抑制できるので、グロープラグ10の耐久性を確保することができる。
また、厚さAと厚さCとは、上述の式(2)を満たすため、グロープラグ10の急速昇温性を確保することができる。
また、合金部の厚さは10(μm)以下であるため、合金部が厚く形成されることによって距離Bが短くなることを抑制することができる。そのため、グロープラグ10の耐久性の低下を抑制することができる。
さらに、発熱コイル820の先端部822は直線状であるため、シース管810の先端部813内における発熱コイル820の長さ(先端部822の長さ)を短くすることができるので、上述の式(1)及び式(2)の関係を満たしながら、厚さCの値を小さくすることができる。そのため、シース管810の先端部813の熱容量を小さくすることができるので、急速昇温に適したグロープラグ10を提供することができる。
以下では、上述の式(2)を満たすようにすることでグロープラグ10の急速昇温性を確保することができる根拠について、実験結果に基づいて説明する。
B.実験内容及びその実験結果:
図7は、厚さ比の最適な範囲を求めるために行った実験の結果を示す図である。図7には、厚さAと、厚さCと、厚さ比(C/A)と、急速昇温性の判定と、が示されている。この実験では、厚さAと、厚さCと、の組合せが異なるサンプル1〜9を用意した。なお、いずれのサンプルにおいても、厚さAと距離Bとが上述の式(1)を満たし、かつ、合金部の厚さが10(μm)以下となるようにシースヒータ800を作製した。本実験では、発熱コイル820としてタングステン(W)を用い、後端コイル830として鉄(Fe)-クロム(Cr)-アルミニウム(Al)合金を用いた。
本実験では、厚さ比による急速昇温性を評価するために、サンプル1〜9に11Vの電圧を印加して、シース管810の先端811から軸線方向OD後端側に2mmの位置におけるシース管810の表面温度が、印加を開始してから1000℃に到達するまでの時間を測定した。シース管810の表面温度は、熱電対により測定した。急速昇温性は、以下の基準により判定した。なお、印加を開始した温度は、常温(約20℃)である。印加開始から3秒以内で1000℃に到達するサンプル(判定が「◎」又は「○」のサンプル)では、十分な急速昇温性が確保されているといえる。
急速昇温性◎:印加開始から、2秒以内で1000℃に到達
急速昇温性○:印加開始から、2秒より長く3秒以内で1000℃に到達
急速昇温性△:印加開始から、3秒より長く3.5秒以内で1000℃に到達
急速昇温性×:印加開始から、3.5秒より長い時間で1000℃に到達
実験の結果、厚さ比が2.5以下のサンプル1〜6では、急速昇温性の判定が「○」又は「◎」であり、十分な急速昇温性が確保されていた。特に、厚さ比が1.9以下であるサンプル1、2では、急速昇温性の判定が「◎」であり、より急速に昇温が可能であった。
以上の実験結果より、上述の式(2)を満たすようにすることでグロープラグ10の急速昇温性を確保することができることが示された。発熱コイル820の先端821がシース管810の先端部813から露出することによる耐久性の低下を抑制するためには、距離Bを長くすればよいが、距離Bが長くなるとシース管810の先端部813の熱容量が大きくなるためにグロープラグ10の急速昇温性が低下する。しかし、厚さCと厚さAとが上述の式(2)を満たすようにすることで、すなわち厚さCの上限を厚さAの2.5倍とすることで、耐久性と急速昇温性とを確保することができると考えられる。
C.第2実施形態:
C1.グロープラグ10aの構成:
図8は、第2実施形態におけるグロープラグ10aのシース管810先端部813付近の断面図である。図8の断面は、軸線Oを通る位置でシースヒータ800を切断した断面であり、軸線Oを通る位置において切断された発熱コイル820aの螺旋部分823aと先端部822aと、シース管810と、絶縁体870と、が示されている。本実施形態では、発熱コイル820aの先端部822aは、螺旋状である。図8に示す破線Sは、シース管810の先端部813と発熱コイル820aの先端部822aとの間に合金部860が形成された場合における、発熱コイル820の先端部822の一部を、拡大して模式的に示している。図8には、さらに、厚さAと、距離Bと、厚さCと、が示されている。厚さAは、軸線方向ODにおいて、発熱コイル820aが配置された部位に対応するシース管810の側面部814の厚さのうち、最小の厚さである。距離Bは、シース管810の先端811から発熱コイル820aの先端821aまでの軸線方向ODにおける距離である。厚さCは、シース管810の先端部813のODにおける最大の厚さである。本実施形態においても、厚さAと距離Bとは上述の式(1)を満たし、厚さAと厚さCとは上述の式(2)を満たす。本実施形態におけるグロープラグ10aのその他の構成は、上述の第1実施形態におけるグロープラグ10の構成と同様であるため、説明を省略する。
C2.グロープラグ10aの製造方法
本実施形態におけるグロープラグ10aの製造方法では、まず、螺旋状の先端部822aを有する発熱コイル820が用意されて、発熱コイル820aと中軸200と、が溶接される(図5、ステップS10)。次に、上述の第1実施形態と同様に、発熱コイル820aとシース管810aとが溶接される溶接工程が実施される(図5、ステップS20)。
図9は、第2実施形態における溶接工程を示す説明図である。溶接工程では、シース管810pの先端部813p内(開口815内)に、発熱コイル820aの螺旋状の先端部822aを挿入して配置する(図9(a))。次に、先端部813pの外側から、例えばアーク溶接によって先端部813pを溶融して凝固させることにより開口815を閉塞させつつ、発熱コイル820aの螺旋状の先端部822aとシース管810の先端部813とを溶接する(図9(b))。こうすることにより、発熱コイル820aの先端部822aは、シース管810の先端部813に取り囲まれつつ埋め込まれる。本実施形態におけるその他のグロープラグ10aの製造方法は、上述の第1実施形態におけるグロープラグ10の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
以上のように構成された本実施形態のグロープラグ10aによれば、合金部860の厚さDが10(μm)以下であり、厚さAと距離Bとが上述の式(1)を満たし、厚さAと厚さ(C)とが上述の式(2)を満たすため、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、発熱コイル820aの先端部822aは螺旋状であるため、発熱コイル820の先端部822が直線状の場合と比較して、シース管810の先端部813内に取り囲まれる発熱コイル820aの先端部822aの表面積(体積)が大きい。そのため、シース管810の先端部813と発熱コイル820aの先端部822aとをより強固に接続することができる。
D.変形例:
・変形例1:
上述の第1実施形態では、発熱コイル820の先端部822は軸線O上において、軸線Oに沿った直線状である。これに対し、直線状の先端部822は、軸線O上に位置していなくともよく、また、軸線Oと交差していてもよい。さらに、発熱コイルの先端部822,822aは、直線状や、螺旋状以外の形状であってもよい。
・変形例2:
上述の種々の実施形態では、グロープラグ10、10aは、発熱コイル820、820aと後端コイル830とを備えている。これに対し、グロープラグ10、10aは、発熱コイル820、820aの後端部819が中軸200の先端部210に接続された、1つのコイルにより構成されていてもよい。また、グロープラグ10、10aの後端コイル830は、複数のコイルが接続されることにより構成されていてもよい。
・変形例3:
上述の種々の実施形態では、シース管の先端部813pと発熱コイルの先端部822,822aとの溶接工程において、アーク溶接を用いている。これに対し、溶接工程では、レーザ溶接など、他の溶接方法を用いてもよい。
・変形例4:
上述の実施形態では、グロープラグ制御装置21は、グロープラグ10と、制御部32と、スイッチ33と、を備えている。これに対し、グロープラグ制御装置21は、グロープラグ10と、制御部32と、を備える構成であってもよい。
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10、10a…グロープラグ
21…グロープラグ制御装置
32…制御部
33…スイッチ
100…係合部材
110…オーリング
120…絶縁部材
140…係合部材
200…中軸
210…先端部
290…雄ネジ部
300…リング
410…絶縁部材
460…リング
500…主体金具
510…軸孔
520…工具係合部
540…雄ネジ部
600…インコネル
800…シースヒータ
810、810a…シース管
810p…シース管
811…先端
812…先端側内壁面
813、813a…先端部
813p…先端部
814…側面部
815…開口
819…後端部
820、820a…発熱コイル
821、821a…先端
822、822a…先端部
823、823a…螺旋部分
829…後端部
830…後端コイル
831…先端部
839…後端部
840…接続部
860…合金部
870…絶縁体
O…軸線
OD…軸線方向
VA…バッテリ

Claims (3)

  1. 軸線方向に延びる側面部と、前記側面部の先端側に接続され、前記側面部の先端側を閉じてなるシース管と、
    前記シース管内に前記軸線方向に延びるように配置され、自身の先端部が前記シース管の先端部と接続された発熱コイルと、を備えるグロープラグであって、
    前記発熱コイルの先端部は、前記シース管の先端部に取り囲まれつつ埋め込まれてなり、
    前記シース管の先端部と前記発熱コイルとの間の前記シース管を構成する金属と前記発熱コイルを構成する金属との合金からなる合金部の厚さは10(μm)以下であり、
    前記軸線方向において、前記発熱コイルが配置された部位に対応する前記シース管の側面部の厚さのうち、最小の厚さAと、
    前記シース管の先端から前記発熱コイルの先端までの前記軸線方向における距離Bと、
    前記シース管の先端部の前記軸線方向における最大の厚さCと、は、
    B>A
    C/A≦2.5
    の関係を満たすことを特徴とする、
    グロープラグ。
  2. 請求項1に記載のグロープラグであって、
    前記発熱コイルの先端部は、直線状であることを特徴とする、グロープラグ。
  3. 請求項1に記載のグロープラグであって、
    前記発熱コイルの先端部は、螺旋状であることを特徴とする、グロープラグ。
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