JP6771985B2 - グロープラグ - Google Patents
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Description
この形態のグロープラグによれば、先端コイルの温度変化による抵抗値の変化R1が後端コイルの温度変化による抵抗値の変化R2よりも大きいために、先端コイルの温度変化を制御回路へ正確に伝達することができる。また、先端コイルの主成分は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であるため、高温制御が行われた場合における先端コイルの溶損を抑制することができる。また、先端コイルの抵抗比R1を5.0以上とし、後端コイルの抵抗比R2は0.80以上1.2以下とすれば、グロープラグの先端側の温度が変化すると、先端コイルの抵抗値が大きく変化する一方、グロープラグの後端側の温度が変化しても、後端コイルの抵抗値変化は小さい。そのため、後端コイルの及ぼす影響を抑制しつつ、グロープラグの先端側の温度変化を制御回路へ適切(正確)に伝達することができる。
A1.グロープラグ制御装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態としてのグロープラグ制御装置21を示すブロック図である。グロープラグ制御装置21は、グロープラグ10と、制御部32と、スイッチ33と、を備えている。なお、図1では、グロープラグ10を1つのみ示しているが、実際のエンジンには複数の気筒が設けられており、各気筒に対応してグロープラグ10やスイッチ33が設けられる。
図2は、グロープラグ10を示す説明図である。グロープラグ10は、熱を発生させるシースヒータ(発熱装置)800を備え、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関(図示せず)の始動時における点火を補助する熱源として機能する。グロープラグ10は、シースヒータ800の他、中軸200と、主体金具500とを備える。これらグロープラグ10を構成する部材は、グロープラグ10の軸線方向ODに沿って組み付けられている。図2では、軸線Oから紙面右側に外観構成を図示し、軸線Oから紙面左側に断面構成を図示した。なお、本明細書では、グロープラグ10におけるシースヒータ800側を「先端側」と呼び、係合部材100側を「後端側」と呼ぶ。
以下、式(1)を満たしており、先端コイル820の主成分がタングステン(W)又はモリブデン(Mo)であるグロープラグ10の仕様を、「仕様1」とも呼ぶ。
先端コイル820の20℃における抵抗値R120と後端コイル830の20℃における抵抗値R220の合計値(R120+R220)は、0.275(Ω)より大きい。
先端コイル820の20℃における抵抗値と後端コイル830の20℃における抵抗値の合計値は、0.600(Ω)以下である。
後端コイル830の20℃における抵抗値は、先端コイル820の20℃における抵抗値よりも大きい。
後端コイル830の20℃における抵抗値は、先端コイル820の20℃における抵抗値の6倍以下であってもよい。
先端コイル820の抵抗比R1は5.0以上であり、後端コイル830の抵抗比R2は0.80以上1.2以下である。
後端コイル830は、鉄(Fe)とクロム(Cr)とアルミニウム(Al)とを含む合金または、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)とを含む合金からなる。
後端コイル830の線径は、先端コイル820の線径よりも大きい。
図3には、先端コイル820における、シース管810の先端側内壁面812から後端コイル830との接続部840までの軸線Oに沿った長さL1と、後端コイル830における、先端コイル820との接続部840から中軸200の先端面211までの軸線Oに沿った長さL2と、が示されている。長さL1と長さL2とは、以下の式(2)を満たす。
先端コイル820の螺旋部分の平均ピッチP1と、後端コイル830の螺旋部分の平均ピッチP2とは、以下の式(3)の関係を満たしている。なお、ピッチとは、コイルの螺旋部分の間隔(例えば、先端コイル820では図3に示す間隔p1、後端コイル830では図3に示す間隔p2)をいう。平均ピッチとは、コイルの螺旋部分の間隔が安定している箇所における、間隔の平均値である。本実施形態では、先端コイル820の平均ピッチP1は、シース管810の先端側内壁面812から後端側に3巻き分の螺旋部分と、接続部840から先端811側に3巻き分の螺旋部分と、を除いた、図3にT1で示す部分における、螺旋部分の間隔を平均することにより求められる。後端コイル830の平均ピッチP2は、接続部840から後端側に1巻き分の螺旋部分と、中軸200の先端面211から先端側に1巻き分の螺旋部分と、を除いた、図3にT2で示す部分における螺旋部分の間隔を平均することにより求められる。
先端コイル820の1000℃を超えた所定温度における抵抗値は、後端コイル830の1000℃を超えた前記所定温度における抵抗値よりも高い。
先端コイル820の長さL1は、6.0mm以下である。
B1.実験1の内容及びその結果:
図4は、実験1の結果を示す図である。図4には、先端コイル820の材質と、後端コイル830の材質と、先端コイル820の20℃での抵抗値に対する1000℃での抵抗値の比である抵抗比R1と、後端コイル830の20℃での抵抗値に対する1000℃での抵抗値の比である抵抗比R2との関係(大小関係)と、判定結果と、が示されている。この実験では、先端コイル820の材質と後端コイル830の材質の組合せを異ならせたグロープラグ10のサンプル1〜6を作製し、コイルの材質がコイルの溶損に与える影響を調査した。なお、サンプル1〜6は、いずれも上述の式(1)の関係を満たしている。
先端コイルの線径:直径0.20(mm)
後端コイルの線径:直径0.40(mm)
<コイル長さL1、L2>
先端コイルの長さ:L1=7(mm)
後端コイルの長さ:L2=12(mm)
<平均ピッチ及びピッチ比>
先端コイルの平均ピッチP1:0.30(mm)
後端コイルの平均ピッチP2:2.5(mm)
平均ピッチ比P2/P1=8.33
(工程1):各サンプルに11Vの電圧を印加することによって、シースヒータ800(シース管810)の先端811から軸線方向OD後端側に2mmの位置におけるシース管810の表面温度を、印加開始から2秒後に1000℃とした後、シース管810の表面温度を1100℃に維持。印加開始から180秒後に電圧の印加を停止。印加を開始した温度は、常温(約20℃)である。
(工程2):電圧の印加を停止した後、送風によってシースヒータ800を120秒間冷却。
○:先端コイルが断線しておらず、かつ、先端コイルにおける試験後の線径の最小値が試験前の線径の0.8倍以下には至っておらず、かつ、先端コイルにおける試験後の抵抗値が試験前の抵抗値の0.9倍以下には至っていない。
△:先端コイルが断線しておらず、かつ、先端コイルにおける試験後の線径の最小値が試験前の線径の0.8倍以下である、又は、先端コイルが断線しておらず、かつ、先端コイルにおける試験後の抵抗値が試験前の抵抗値の0.9倍以下である。
×:6000サイクルに至る前に先端コイルが断線。
図5は、実験2の結果を示す図である。図5には、先端コイル820の20℃における抵抗値R120と後端コイル830の20℃における抵抗値R220の合計値(合計値(R120+R220))と、急速昇温性の判定結果と、突入電流(インラッシュカレント、inrush current)の判定結果と、総合判定結果と、が示されている。この実験では、合計値(R120+R220)が、急速昇温性と突入電流に与える影響を調査した。なお、サンプル7〜10は、いずれも上述の式(1)の関係を満たしており、また、以下に示すように、サンプル7〜10の先端コイル820の材質はタングステン(W)であることから、サンプル7〜10は上述の仕様1を満たしている。
先端コイルの材質:タングステン(W)
後端コイルの材質:鉄(Fe)−クロム(Cr)−アルミニウム(Al)合金
<コイル長さL1、L2>
先端コイルの長さ:L1=7(mm)
後端コイルの長さ:L2=12(mm)
<平均ピッチ及びピッチ比>
先端コイルの平均ピッチP1:0.30(mm)
後端コイルの平均ピッチP2:2.5(mm)
平均ピッチ比P2/P1=8.33
○:印加開始から、1.9秒以内で1000℃に到達。
△:印加開始から、1.9秒より長く3秒以内で1000℃に到達。
×:印加開始から、3秒より長い時間で1000℃に到達。
○:急速昇温が行われた場合に制御回路に流れる電流が40(A)未満。
×:急速昇温が行われた場合に制御回路に流れる電流が40(A)以上。
○:急速昇温性の判定結果が「○」であり、かつ、突入電流の判定結果が「○」である。
×:急速昇温性の判定結果と突入電流の判定結果の少なくとも一方が「△」又は「×」である。
図6は、実験3の結果を示す図である。図6には、先端コイル820の線径d1と、後端コイル830の線径d2と、先端コイル820の線径d1と後端コイル830の線径d2の大小関係と、判定結果と、が示されている。この実験3では、先端コイル820の線径d1と後端コイル830の線径d2の大小関係が急速昇温性に与える影響を調査した。なお、サンプル11〜13は、いずれも上述の式(1)の関係を満たしており、以下に示すように、サンプル11〜13の先端コイル820の材質はタングステン(W)であることから、サンプル11〜13は上述の仕様1を満たしている。
先端コイルの材質:タングステン(W)
後端コイルの材質:ニッケル(Ni)−クロム(Cr)合金
<先端コイルの20℃における抵抗値R120と後端コイルの20℃における抵抗値R220の合計値>
合計値(R120+R220)=0.35(Ω)
<コイル長さL1、L2>
先端コイルの長さ:L1=7(mm)
後端コイルの長さ:L2=12(mm)
○:印加開始から、1.8秒以内で1000℃に到達
△:印加開始から、1.8秒より長く3秒以内で1000℃に到達
×:印加開始から、3秒より長い時間で1000℃に到達
図7は、実験4の結果を示す図である。図7には、先端コイル820の平均ピッチP1(mm)と、後端コイル830の平均ピッチP2(mm)と、平均ピッチP1と平均ピッチP2との比P2/P1と、先端コイル820の長さL1と後端コイル830の長さL2との関係(長短関係)と、判定結果と、が示されている。この実験では、同じピッチ比を有し、コイルの長さL1とL2との長短関係が異なるサンプル15とサンプル26とを用いて、コイルの長さの長短関係が消費電力に与える影響を調査した。また、コイルの長さL1がコイルの長さL2よりも長く、比P2/P1がそれぞれ異なるサンプル14〜25を用いて、比P2/P1が消費電力に与える影響を調査した。なお、サンプル14〜26は、いずれも上述の式(1)の関係を満たしており、以下に示すように、サンプル14〜26の先端コイル820の材質はタングステン(W)であることから、サンプル14〜26は上述の仕様1を満たしている。また、サンプル14〜25において、先端コイル820の20℃における抵抗値R120は、0.08(Ω)以上0.15(Ω)以下であり、後端コイル830の20℃における抵抗値R220は、0.22(Ω)以上0.45(Ω)以下である。すなわち、サンプル14〜25は、上述の仕様2〜5を満たしている。
先端コイルの材質:タングステン(W)
先端コイルの線径:直径0.20(mm)
後端コイルの材質:鉄(Fe)−クロム(Cr)−アルミニウム(Al)合金
後端コイルの線径:直径0.40(mm)
<コイル長さL1、L2>
サンプル1〜12:L1=5(mm)、L2=18(mm)
サンプル13:L1=18(mm)、L2=5(mm)
○:消費電力が28(W)より大きく、かつ33W未満(急速昇温が可能である一般的なグロープラグと比較して、消費電力が低減)
×:消費電力が33(W)以上(急速昇温が可能である一般的なグロープラグと比較して、消費電力が同等)
同じピッチ比を有するサンプル15とサンプル26との実験の結果、先端コイル820の長さL1が後端コイル830の長さL2よりも短いサンプル15では、消費電力が28W以下であった。そのためサンプル15は「◎」と判定した。一方、先端コイル820の長さL1が後端コイル830の長さL2よりも長いサンプル26では、消費電力が33W以上であった。そのため、サンプル13は「×」と判定した。サンプル26では、先端コイル820の長さL1が後端コイル830の長さL2よりも長いために、先端コイル820を発熱させてシース管810表面の温度を1000℃まで到達させるまでに、多くの電力が消費されたと考えられる。
コイルの長さL1がコイルの長さL2よりも長く、平均ピッチの比P2/P1がそれぞれ異なるサンプル14〜25の実験の結果、平均ピッチの比P2/P1の値が3.5以上であるサンプル14〜25では、消費電力が33W未満であった。その中でも、平均ピッチの比P2/P1の値が4.0以上であるサンプル14〜22では、消費電力が28W以下であった。サンプル14〜22は、「◎」と判定し、サンプル23、24は「○」と判定した。
・変形例1:
上述の実施形態では、先端コイル820の抵抗比R1は5.0以上であり、後端コイル830の抵抗比R2は0.80以上1.2以下である。これに対し、抵抗比R1と抵抗比R2とが上述の式(1)を満たしていれば、先端コイル820の抵抗比R1と、後端コイル830の抵抗比R2とは、他の値であってもよい。例えば、抵抗比R1は、4.0、3.5であってもよく、抵抗比R2は、0.7、2.0であってもよい。なお、抵抗比R2が、1.0である場合には、グロープラグ10の先端側の温度変化を制御回路へ伝達するにあたり、後端コイル830の抵抗値変化が与える影響を、いっそう抑制することができる。
後端コイル830は、抵抗比R1と抵抗比R2とが上述の式(1)を満たす材料により構成されていれば、ニッケル(Ni)−クロム(Cr)合金や、鉄(Fe)−クロム(Cr)−アルミニウム(Al)合金以外の合金や金属から構成されていてもよい。
後端コイル830の線径は、先端コイル820の線径よりも小さくてもよい。
先端コイル820の長さL1は、6.0mmより長くてもよい。
上述の実施形態では、グロープラグ10の後端コイル830は、1つのコイルにより構成されている。これに対し、グロープラグ10の後端コイル830は、複数のコイルが接続されることにより構成されていてもよい。この場合、上述の式(1)の関係を満たすように、複数のコイルにより後端コイル830を構成すれば、上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、先端コイル820との接続部840から中軸200の先端面211までの軸線Oに沿った複数の後端コイル830の合計長さL2とが上述の式(2)を満たすように構成すれば、グロープラグ10の消費電力を低減することができる。なお、コイルの平均ピッチP2/P1とが、上述の式(3)の関係を満たすように、複数のコイルにより後端コイル830を構成しても、グロープラグ10の消費電力を低減することができる。
21…グロープラグ制御装置
32…制御部
33…スイッチ
100…係合部材
200…中軸
210…先端部
211…先端面
290…雄ネジ部
300…リング
410…絶縁部材
460…Oリング
500…主体金具
510…軸孔
520…工具係合部
540…雄ネジ部
800…シースヒータ
810…シース管
811…先端
812…内壁面
813…先端部
819…後端部
820…先端コイル
821…先端部
829…後端部
830…後端コイル
831…先端部
839…後端部
840…接続部
870…絶縁体
O…軸線
OD…軸線方向
VA…バッテリ
Claims (10)
- 軸線方向に延び、先端が閉じられたシース管と、
前記シース管の内部に挿入された棒状の中軸と、
前記シース管内に配置され、前記シース管の先端側内壁面に接続された螺旋状の先端コイルと、
前記シース管内に配置され、前記先端コイルの後端部と前記中軸の先端部との間に接続された螺旋状の後端コイルと、を備えるグロープラグであって、
前記先端コイルの20℃での抵抗値に対する1000℃での抵抗値の比である抵抗比R1と、前記後端コイルの20℃での抵抗値に対する1000℃での抵抗値の比である抵抗比R2とは、R1>R2の関係を満たし、
前記先端コイルの主成分は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であり、
前記先端コイルの前記抵抗比R1は5.0以上であり、
前記後端コイルの前記抵抗比R2は0.80以上1.2以下であることを特徴とする、
グロープラグ。 - 請求項1に記載のグロープラグであって、
前記先端コイルの20℃における抵抗値と前記後端コイルの20℃における抵抗値の合計値は、0.275(Ω)よりも大きいことを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項2に記載のグロープラグであって、
前記先端コイルの20℃における抵抗値と前記後端コイルの20℃における抵抗値の合計値は、0.600(Ω)以下であることを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記後端コイルの20℃における抵抗値は、前記先端コイルの20℃における抵抗値よりも大きいことを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項4に記載のグロープラグであって、
前記後端コイルの20℃における抵抗値は、前記先端コイルの20℃における抵抗値の6倍以下であることを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記後端コイルは、鉄(Fe)とクロム(Cr)とアルミニウム(Al)とを含む合金または、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)とを含む合金からなることを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記後端コイルの線径は、前記先端コイルの線径よりも大きいことを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記先端コイルにおける、前記シース管の前記先端側内壁面から前記後端コイルとの接続部までの前記軸線に沿った長さL1と、前記後端コイルにおける、前記先端コイルとの接続部から前記中軸の先端面までの前記軸線に沿った長さL2とは、L1<L2の関係を満たすことを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記先端コイルの螺旋部分の平均ピッチP1と、前記後端コイルの螺旋部分の平均ピッチP2とは、P2/P1≧3.5の関係を満たすことを特徴とする、グロープラグ。 - 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のグロープラグであって、
前記先端コイルの1000℃を超えた所定温度における抵抗値は、前記後端コイルの1000℃を超えた前記所定温度における抵抗値よりも高いことを特徴とする、グロープラグ。
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