以下、本発明の実施の形態について、図1から図11を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動二輪車としての燃料電池二輪車の左側面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池二輪車の外装(カバーやシート)等を取り外した状態を示す左側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池二輪車の外装(カバーやシート)等を外した状態を示す左前方からの斜視図である。
なお、本実施形態における前後上下左右の表現は、燃料電池二輪車1の運転者を基準にする。図1から図3中の実線矢印Fは燃料電池二輪車1の前方を表し、実線矢印Rは燃料電池二輪車1の後方を表している。
図1から図3に示すように、電動二輪車としての燃料電池二輪車1は、燃料電池2で発電し、この電力でモータ3を駆動させて走行する車両である。また、例示された燃料電池二輪車1は、スクータ型の自動二輪車である。
燃料電池二輪車1は、前後に延びる車体5と、操舵輪としての前輪6と、前輪6を操舵自在に支えるステアリング機構7と、駆動輪としての後輪8と、後輪8を上下方向へ揺動自在に支えるスイングアーム9と、後輪8の駆動力を発生させるモータ3と、を備えている。
車体5は、車両の前後に延びるフレーム11と、フレーム11を覆う外装12と、フレーム11後半部の上方に配置されるシート13と、を備えている。
また、車体5は、燃料電池2と、燃料電池2で発電に使用される燃料としての水素の高圧ガスを貯蔵する燃料タンク15と、燃料電池2の電力を補助する二次電池16と、燃料電池2の出力電圧の調整と燃料電池2および二次電池16の電力の分配を制御する電力管理装置17と、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換してモータ3へ出力し、モータ3を運転するインバータ18と、これらを統括的に管理する車両コントローラ19と、を備えている。
燃料電池二輪車1のパワートレインは、燃料電池2および二次電池16を有し、車両の走行状態、燃料電池2の発電状態、二次電池16の蓄電状態によって各電池の電力を適宜に使うシステムである。また、燃料電池二輪車1は、減速する際にモータ3で回生電力を発生させる。車両の電源である二次電池16および燃料電池2は、インバータ18に並列に接続されてモータ3へ電力を供給する。二次電池16は、燃料電池二輪車1が減速する際にモータ3で発生する回生電力および燃料電池2が発電する電力を蓄える。
フレーム11は、複数の鋼鉄製やアルミニウム製の中空管を一体に組み合わせたものである。フレーム11は、前端上部に配置されるヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21の中央部から後ろ下がりに傾斜して延びる上部ダウンフレーム22と、ヘッドパイプ21の下方に配置され、後ろ下がりに傾斜して延びる下部ダウンフレーム23と、左右一対の下部フレーム24と、左右一対の上部フレーム25と、ピボット軸26と、上ブリッジフレーム27と、下ブリッジフレーム28と、ガードフレーム29と、搭載機器保護フレーム30と等を備えている。
ヘッドパイプ21は、ステアリング機構7をハンドル32にて車両の左右方向に操舵自在に支持している。
左右一対の下部フレーム24は、下部ダウンフレーム23の左右に配置され、ヘッドパイプ21の下部に接続されている。また、左右一対の下部フレーム24は、ヘッドパイプ21との接続部分から下部ダウンフレーム23に沿って略平行に、かつ後ろ下がりに傾斜して延びる前側傾斜部分と、傾斜部分の下端で後方に向かって湾曲する前側の湾曲部分と、前側の湾曲部分の後端から略水平に車体5の後方へ向かって車体5の中央部分(車両の前後方向で中央部分)に達するまで直線状に延びる直線部分と、を有している。さらに、左右一対の下部フレーム24は、直線部分の後端部から後上方に向けて湾曲する後ろ側の湾曲部分と、この後ろ側の湾曲部分の上端部から後ろ上がりに傾斜して延び、上部フレーム25に接続される上下フレーム接合部と、を有している。なお、左右の下部フレーム24の間隔は、上部フレーム25の間隔よりも広い。
また、左右それぞれの下部フレーム24は、前側の湾曲部分の車幅方向両外側に運転者が足を置くフットボード31を下方から支持するフットレストブラケット31aを備えている。
車体5の左側に配置される下部フレーム24は、サイドスタンドブラケット(図示省略)を備えている。サイドスタンドブラケットには、燃料電池二輪車1を左側へ傾けた状態で自立させるサイドスタンドが設けられている。サイドスタンド32は、燃料電池二輪車1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
左右一対の上部フレーム25は、車体5の前半部において下部フレーム24の前側の傾斜部分の上下方向の中央部に接続されている。左右一対の上部フレーム25は、下部フレーム24の前側の傾斜部分との接続部分から車体5の後方に向かって略水平に延びる水平部分と、左右一対の上部フレーム25の水平部分の後端であって、車体5の後半部、かつ後輪8の上方部分において後ろ上がりに大きく傾斜し、車体5の左右方向内側へ湾曲して後輪8の太さ(幅寸法)程度に接近する後端部と、を有している。
ピボット軸26は、車体5の後半部において左右の上部フレーム25間に架設されている。また、ピボット軸26は、上部フレーム25の下側、かつ上部フレーム25と下部フレーム24との合流部分(上下フレーム接合部)よりも後方であって、上部フレーム25の水平部分と下部フレーム24の後側傾斜部分とに接続されるブラケット26aに配置されている。
上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の前端部に架設されている。上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の上部フレーム25を連結し、補強している。
下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の前側の屈曲部分に架設されている。下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の下部フレーム24を連結し、補強している。
ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24の後側の湾曲部分に架設されている。ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24との接続部分から後下方に延びるとともに、フレーム11の内部空間を拡大するように後ろ下がりのU字形状に延びている。ガードフレーム29には、燃料電池二輪車1を直立状態で自立させるセンタースタンド33が設けられている。センタースタンド33は、燃料電池二輪車1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
上部ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21と上ブリッジフレーム27との間に架設されている。
下部ダウンフレーム23は、左右の下部フレーム24の上部の間で実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて架設されるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム34の車両の左右方向中央部に接続される上端部と、下ブリッジフレーム28の車両の左右方向中央部に接続される下端部とを有している。
搭載機器保護フレーム30は、上部フレーム25の後半部の上部に設けられている。搭載機器保護フレーム30は、燃料電池2を燃料電池二輪車1の車体に支持している。また、搭載機器保護フレーム30は、その一部を上部フレーム25に着脱できる。
シート13は、フレーム11の後半部上方を覆って前後に延びている。シート13はタンデム式であり、運転者を着座させる前半部13aと、同乗者を着座させる後半部13bとを一体的に備えている。また、シート13は、前半部13aと後半部13bとの間に傾斜部13cを備えている。
ここで、左右の上部フレーム25および左右の下部フレーム24で囲まれる空間をセンタートンネル領域35と呼び、上部フレーム25の後半部、外装12およびシート13で囲まれる空間を機器搭載領域36と呼び、センタートンネル領域35の後方かつ機器搭載領域36の後下方の空間をタイヤハウス領域37と呼ぶ。
センタートンネル領域35は、燃料タンク15を収容している。本実施形態に係るスクータ型の燃料電池二輪車1では、センタートンネル領域35は、運転者が足を乗せる左右のフットボード31の間で、車両の前後方向に沿って配置され、フットボード31の足載せ領域を左右に分断するようにフットボード31から上方に隆起している。換言すると、センタートンネル領域35の左右には、足載せ領域となるフットボード31が配置され、左右のフットボード31の間に燃料タンク15が配置されている。
機器搭載領域36は、車体5の前側から順に二次電池16、電力管理装置17、燃料電池2を収容している。機器搭載領域36は、搭載機器保護フレーム30によって前端部、中央部、後端部、および中央部から後端部に渡る側部を保護されている。
搭載機器保護フレーム30は、機器搭載領域36を囲んで機器搭載領域36に搭載される機器を保護している。搭載機器保護フレーム30は、機器搭載領域36の前端部に配置されて左右の上部フレーム25の間で上に凸のアーチ状に架設される前保護フレーム30aと、機器搭載領域36の中央部であって、上部フレーム25と下部フレーム24との合流箇所よりも後ろ側に配置されて左右の上部フレーム25の間で上に凸のアーチ状に架設される中央保護フレーム30bと、機器搭載領域36の後端部に配置されて左右それぞれの上部フレーム25が内側に湾曲する部分に接続され、この湾曲部分から後ろ斜め上方へ延びる左右一対の後保護フレーム30cと、中央保護フレーム30bの左右それぞれから後方へ延びて後保護フレーム30cの上端部に接続され、さらに車体5の後端部へ到達する左右一対の側部保護フレーム30dと、左右の側部保護フレーム30dの後端部に架設されるブラケット30eと、を備えている。
左右の上部フレーム25は、前保護フレーム30aの下端が接合される箇所で屈曲して車両の後方に向かって間隔を拡げ、中央保護フレーム30bの下端が接合される箇所付近で屈曲して車両の後方に延びている。このため、中央保護フレーム30bは、前保護フレーム30aよりも幅が広く、高さも高い。後保護フレーム30cおよび左右一対の側部保護フレーム30dは、中央保護フレーム30bまたは左右の上部フレーム25の後端部と一体化されている。また、後保護フレーム30cおよび左右一対の側部保護フレーム30dは、中央保護フレーム30bおよび上部フレーム25に着脱自在に連結されて燃料電池2を支持している。
タイヤハウス領域37には後輪8が配置されている。
機器搭載領域36とタイヤハウス領域37との間には、それぞれの領域を分断する隔壁部材(リアフェンダ、図示省略)が設けられている。
外装12は、車体5の前半部を覆う前部ボディカバー41と、車体5の中央上部に配置されてセンタートンネル領域35などの上部フレーム25の上方を覆う中央ボディカバー42と、車体5の後半部に配置されて機器搭載領域36などの車体5の側面のうちシート13の下方部分を覆う後部ボディカバー43と、を備えている。
後部ボディカバー43は、シート13とともに機器搭載領域36を囲んでいる。機器搭載領域36は、シート13、後部ボディカバー43および隔壁部材に囲まれる閉鎖的な空間である。機器搭載領域36は、後部ボディカバー43、もしくは隔壁部材の適宜の箇所に設けられる通気孔(図示省略)によって、燃料電池2への空気の流れを容易、かつ確実に制御し、また冷却が必要な装置へ冷却風としての空気の流れを容易、かつ確実に制御している。なお、機器搭載領域36は、各カバーの継ぎ目などから空気が入り込むことを許容する。
ステアリング機構7は、車体5の前方に配置されて、フレーム11のヘッドパイプ21を中心に左右方向へ揺動し前輪6の操舵を可能にする。ステアリング機構7は、頂部に設けられるハンドル32と、ハンドル32と前輪6とを連結し、若干後傾して上下に延びる左右一対のフロントフォーク46と、を備えている。左右のフロントフォーク46は、弾性的に伸縮自在なテレスコピック構造を備えている。左右のフロントフォーク46の下端部には、前輪6を回転自在に支持する車軸(図示省略)が架設されている。前輪6の上方には、フロントフェンダ47が配置されている。フロントフェンダ47は、左右のフロントフォーク46の間にあって、フロントフォーク46に固定されている。
前輪6は、左右のフロントフォーク46の下端部に架設されている車軸の周りに回転自在な従動輪である。
スイングアーム9は、車体5の左右へ延びている回転中心としてのピボット軸26の周りに上下方向へ揺動する。スイングアーム9は、車体5の左右で前後方向に延びる一対のアーム部の間に後輪8を回転自在に支持している。フレーム11とスイングアーム9との間には、リアサスペンション48が架設されている。リアサスペンション48の上端部は、上部フレーム25の後端部に揺動自在に支持されている。リアサスペンション48の下端部は、スイングアーム9の後端部に揺動自在に取り付けられている。リアサスペンション48は、スイングアーム9の揺動を緩衝する。
またスイングアーム9は、後輪8を回転駆動させるモータ3と、燃料電池2から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3へ供給するインバータ18と、を収容している。
モータ3は、燃料電池2または二次電池16から供給される電力によって後輪8を回転駆動させる。モータ3は、スイングアーム9の後部に収容されて、後輪8の車軸と同軸に配置されている。モータ3はスイングアーム9に一体的に組み付けられてユニットスイング式スイングアームを構成している。
インバータ18は、スイングアーム9の前部に収容されて、ピボット軸26とモータ3との間に配置されている。
後輪8は、モータ3から駆動力が伝達される車軸(図示省略)によって支えられる駆動輪である。
[燃料電池]
燃料電池2は、燃料と酸化剤とを反応させて発電する。燃料電池2は、燃料として高圧ガス、例えば水素ガスを使用し、酸化剤として空気中の酸素を使用して発電し、空気を用いて冷却する空冷式燃料電池システムである。
燃料電池2は、機器搭載領域36の車両後半側に配置されている。さらに具体的には、燃料電池2は、シート13の前半部13aと後半部13bとの間の傾斜部から後半部13bの下方に渡って配置されている。つまり、車両の側面視で、燃料電池2は、同乗者を着座させるシート13の後半部13bと後輪8やスイングアーム9との間に配置されている。
燃料電池2は、車体5の前後方向に延びる長辺を有する直方体形状であって、吸気口2aが配置される正面を前斜め下方へ向け、排気口2bが配置される背面を後ろ斜め上方へ向ける姿勢で機器搭載領域36に配置されている。つまり、燃料電池2は、前方側が後方側よりも下方に位置する前傾姿勢でフレーム11に固定されている。詳細には、燃料電池2の上部は搭載機器保護フレーム30に固定され、燃料電池2の下部は上部フレーム25に固定されている。
燃料電池2は、正面側から背面側へ向かって連結される扁平な複数のモジュールを含んでいる。具体的には、燃料電池2は、正面側から順に積層状態に重ねられて連結されるフィルタ(図示省略)、吸気シャッタ(図示省略)、燃料電池スタック(図示省略)、ファン(図示省略)、排気シャッタ(図示省略)を有している。燃料電池2の天面には、燃料電池用制御部(図示省略)が設けられている。
吸気シャッタは、開閉自在な空気の吸気口2aを有し、吸気口2aを開閉して燃料電池スタックへの空気の導入量を制御することができるとともに、吸気口2aを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成することができる。排気シャッタは、開閉自在な空気の排気口2bを有し、排気口2bを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成することができる。換言すると、燃料電池2は、正面に開閉可能な吸気口2aを有し、背面に開閉可能な排気口2bを有し、吸気口2aと排気口2bを閉じることで燃料電池2内の空気を循環させることができる。
燃料電池スタックは、吸気口から吸い込まれる空気に含まれる酸素と燃料タンク15から供給される水素とを電気化学反応させて発電し、発電後に湿潤な余剰ガスを生成する。
ファンは、機器搭載領域36内の空気を吸気口から燃料電池2内に吸い込むための吸込負圧を発生させる一方で、燃料電池スタックから余剰ガスを吸い出して排気口から排気する。ファンが流動させる空気の流れは、燃料電池スタックで発電に用いられる他に、燃料電池2の冷却に利用される。
燃料電池2の後方には、排気ダクト52が設けられている。燃料電池2のファンは、余剰ガスを燃料電池スタックから吸い出して排気ダクト52へ排気する。排気ダクト52の前端部は、燃料電池2の箱体(詳細には、排気シャッタの枠体)に気密に接続されている。排気ダクト52は、車体5の後端で後下方と後上方に向かって開口される排気口52aを有している。排気ダクト52は、燃料電池2のファンから吐出される排気(余剰ガス)を、排気口52aへ導いて車体5の後方へ排出する。
排気ダクト52の排気口52aは、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方であって、望ましくは排気ダクト52の後方上端部に配置されている。詳細には、燃料電池2の排気口よりも高い位置に排気口52aの上縁部が配置されている。排気ダクト52は、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方に配置される排気口52aを有することによって、未反応の水素ガスを含む湿潤な余剰ガスを排気口52aに導いて車体5から確実に排気することができる。
[燃料タンク]
燃料タンク15は高圧圧縮水素貯蔵システムである。燃料タンク15は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の、あるいはアルミライナ製複合容器である圧力容器55と、燃料充填口56を有する燃料充填用継手57と、燃料充填元弁58と、遮断弁(図示省略)とレギュレータ(図示省略)とを一体的に有する燃料供給元弁59と、を備えている。
圧力容器55は、燃料電池2の燃料としての水素ガスを貯蔵するアルミライナ製複合容器である。燃料タンク15は、例えば約70MPaの水素ガスを貯蔵する。圧力容器55は、円筒形状の胴部と、胴部の前後の端面にドーム状の鏡板と、を有している。圧力容器55は、円筒胴の中心線を車体5の前後方向へ沿わせてセンタートンネル領域35内に配置されている。圧力容器55は、一対の上部フレーム25、一対の下部フレーム24、下ブリッジフレーム28、およびガードフレーム29に周囲を囲まれて、燃料電池二輪車1の転倒や衝突による負荷に対して堅牢に保護されている。
また、圧力容器55は、車体5の一方側の側部に配置される上部フレーム25、例えば車体5の右側に配置される上部フレーム25と、車体5の他方側の側部に配置される下部フレーム24、例えば車体5の左側に配置される下部フレーム24との間に架設されるクランプバンド61によってセンタートンネル領域35に支持されている。圧力容器55は、右側の上部フレーム25と左側の下部フレーム24との間に横臥状態で架設され、クランプバンド61,61により、締め付け挟持されている。なお、クランプバンド61は、車体5の左側に配置される上部フレーム25と、車体5の右側に配置される下部フレーム24との間に架設されていても良い。
燃料充填用継手57は、センタートンネル領域35の外側、詳しくは後ろ上方であって、機器搭載領域36の前端部に配置されている。燃料充填用継手57は、二次電池16よりも上方、あるいは真上に配置されている。燃料充填用継手57は、搭載機器保護フレーム30の前保護フレーム30aの上部と中央保護フレーム30bの上部との間に架設される継手用ブラケット30fに固定されている。燃料充填用継手57は、燃料充填時に設備側の継手を車体の上方、かつ左側から差し込めるよう、車体5の上方、かつやや左側に向かって延びている。燃料充填用継手57は、シート13の前端部に設けられる燃料充填口用リッド62によって覆い隠されている。燃料充填口用リッド62は、ヒンジ機構(図示省略)を介してシート13に支持されており、揺動することで開閉できる。燃料充填用継手57は、燃料としての水素の高圧ガスを燃料タンク15に導き入れる入口としての燃料充填口56を有している。
燃料充填口56は、燃料充填用継手57の頂部に配置されている。また、燃料充填口56は、車体5の左上方を向いている。燃料タンク15に燃料を充填する際、燃料充填口用リッド62を開放した状態において、燃料充填口56の上方は、雰囲気に開放されている。したがって、高圧ガス(燃料、水素ガス)を燃料タンク15に充填する際、仮に高圧ガス(燃料、水素ガス)が漏洩しても、漏洩燃料は滞留することなく燃料電池二輪車1の上方へ拡散する。
燃料充填元弁58および燃料供給元弁59は、一体化されて圧力容器55の後方側の鏡板の頂部に設けられているタンクバルブ63に内蔵されている。燃料供給元弁59の遮断弁は、電磁弁を用いた開閉弁である。タンクバルブ63は、ガードフレーム29で囲まれた空間に配置されている。
また、仮に燃料充填口56から燃料としての水素ガスが漏洩しても、空気より軽い水素ガスは上昇して、車内に滞留することなく車外に拡散する。また、仮に燃料充填元弁58または燃料供給元弁59から燃料としての水素ガスが漏洩しても、水素ガスはタイヤハウス領域37に向かって移動して、車内に滞留することなく車外に拡散する。
[バッテリシステム]
電動二輪車1では、図2および図3に示すように、電動車両駆動用のバッテリシステム70が機器搭載領域36の車両前半側に配置されている。バッテリシステム70は、燃料電池2近くの車両前方側に設けられる二次電池16を有する。二次電池16は、例えばボックス状のリチウムイオン電池あるいは鉛蓄電池である。二次電池16は、機器搭載領域36の前端部であって、燃料タンク15の圧力容器55の後半部と、シート13の前半部13aとの間に配置される。
二次電池16は、ボックス状のバッテリケース(電槽)を構成するバッテリパック71が図4および図5、図6に示すように構成される。図4において、二次電池16のバッテリパック71の左側には安全プラグとしてのサービスプラグ72が一体的に付設される。バッテリパック71は、左右一対の上部フレーム25,25上の取付ブラケット73およびブリッジフレーム74の取付ブラケット75上に締付手段76、例えば4個の締付ねじあるいはボルトにより浮上状態に固定される。図7は、図4のVII−VII線に沿う断面図を示すもので、端子ボックス77の左側方に突出する取付ブラケット77aを利用して、ブリッジフレーム74上の取付ブラケット75に締付手段76で固定したものである。符号77bはフローティングクッション、符号77cはスペーサである。ブリッジフレーム73は機器搭載領域36で左右一対の上部フレーム25間に車両後方側に間隔をおいて架設され、左右一対の上部フレーム25には複数のブリッジフレームが順次掛け渡されて連結され、補強される。
二次電池16は、バッテリパック71の一側である後端部に矩形状の端子ボックス77が備えられる。端子ボックス77は、バッテリパック71のケース本体78の後端部に一体に設けられる。二次電池16のバッテリパック71はケース本体78とケースカバー79とにより分割可能なボックス構造に構成される。バッテリパック71のケース本体78にバッテリモジュール80を収納する高電圧部屋81と、接続端子を収納し端子ボックス77を構成する端子台部屋82とが仕切壁で区画して設けられる。端子台部屋82は、高電圧部屋81の車両後方側に隣接して形成され、高電圧部屋81と端子台部屋82とはそれぞれ別の蓋部材で閉じられる。このうち、高電圧部屋81はケース本体78の周縁部上にOリング等のシール部材を介してケースカバー79が設けられ、水密(液密)構造に構成される。具体的には、ケース本体78の周縁部上にケースカバー79がシール部材を介して被せられ、ケースカバー79の外周フランジに沿って多数の締付ねじあるいはボルト等の締付手段83で締め付けられ、高電圧部屋81は水密(液密)構造に設けられる。
高電圧部屋81にはバッテリモジュール80が収納される。高電圧部屋81は、バッテリモジュール80を構成するセルのプラス極板とマイナス極板がセパレータを介して配設されるが、プラス極板とマイナス極板との極板間が近いため、水の侵入による漏電や不純物による短絡を防止すべく、高電圧部屋81はOリング等のシール部材で完全防水構造に構成される。
また、バッテリパック71の高電圧部屋81に隣接して車両後方側に端子台部屋82が一体に配設される。高電圧部屋81の一側の後端部に配設される端子台部屋82にはプラス端子およびマイナス端子の端子類が後端部側に集中して設けられる。端子台部屋82は端子カバーを構成する単一の金属製プレート84で閉じられ、金属カバーの蓋部材は締付ねじ等の締付手段83で締め付けられ、固定される。
端子台部屋82は、矩形状の端子ボックス77内に構成されており、図8および図9に示すように、プラス端子とマイナス端子との両端子間に、プラス端子側とマイナス端子側とを分断する縦壁部85が絶縁壁として底面から立設されている。端子台部屋82には、プラス端子側およびマイナス端子側の各端子台に被接続端子部材の端子プレート86a,86bがそれぞれ設置され、これら端子プレート86a,86bに電圧ケーブル87a,87bの先端に設けられたプラス端子88aおよびマイナス端子88bを止着する接続端子88が止めねじ等の止着手段89で圧着され、接続される。
端子台部屋82には、プラス端子88aあるいはマイナス端子88bの上方を覆うように樹脂製カバー90a,90bが配置される。樹脂製カバー90a,90bは、金属製プレート84の下方に配置され、金属製プレート84と接続端子88(プラス端子88aあるいはマイナス端子88b)との接触を防止している。また、樹脂製カバー90a,90bは金属製プレート84の隙間から侵入した水が、プラス端子88aあるいはマイナス端子88bに掛かるのを抑制することができる。
電圧ケーブル87a,87bは、端子ボックス77の後壁に固定された各ケーブルガイドホルダ91を通して端子台部屋82にそれぞれ挿入され、端子台部屋82内で挿入先端側の接続端子88(88a,88b)は、(被接続端子部材である)端子プレート86a,86bに止着手段89で圧着されて接続される。端子台部屋82は蓋部材の金属製プレート84で上方から閉じられるが、端子カバーである金属製プレート84はOリング等のシール部材で水密(液密)構造に構成されていない。このため、端子台部屋82はOリング溝を形成する必要がなく、その分周囲の壁の上部の厚みが端子台部屋82には不要となって、バッテリパック71の省スペース化、コンパクト化を図ることができる。
二次電池16のバッテリパック71は、バッテリモジュール80を収納する高電圧部屋81とプラス端子88aやマイナス端子88bの接続端子88を収納する端子台部屋82とを分けることで、必要な箇所のみを防水構造とし、防水レベルを変えている。端子台部屋82は水が侵入した場合でも短絡性の危険性がない構造とし、Oリング等のシール部材の装着を不要として、省スペース化、コンパクト化を図り、バッテリパック71の小型化に寄与している。高電圧部屋81にはOリング等のシール部材を設け、このシール部材を介してロアケースであるケース本体78にケースカバー79を密封してアッパケースとして取り付けることで、水密(液密)化を図り、完全防水構造としている。
このように端子台部屋82では、接続端子88類を構成するプラス端子88aとマイナス端子88bの上方が樹脂製カバー90a,90bで簡易的に独立して覆われる。樹脂製カバー90a,90bは、カバー止着手段93(止着ボルト93a、止着ナット93b)により端子台部屋82内で固定される。したがって、プラス端子88aやマイナス端子88bが蓋部材である金属製プレート84に直接接触するのを確実に防止することができる。
また、端子台部屋82では、プラス端子86aを設けた端子台やマイナス端子86bを設けた端子台毎に独立した樹脂製カバー90a,90bで上方から覆われる。しかも、バッテリパック71の各端子台は単一の金属製プレート84が接続端子88と接触することがない。したがって、単一の金属製プレート84は、プラス端子88aとマイナス端子88bとを同時に短絡させる危険性無しに覆うことができる。なお、図8において、符号106はヒューズである。
バッテリパック71の小型化・コンパクト化を図る端子台部屋82には、水抜き孔(図示省略)が設けられ、端子台部屋82に侵入した水は水抜き孔から排出される。端子台部屋82では端子台が水没した場合でも、プラス端子88aとマイナス端子88bとの各端子間に絶縁壁を構成する縦壁部85が端子台部屋82の前壁と後壁を連結するように底壁から立設されているので、端子台部屋82をプラス端子88a側とマイナス端子88b側とに分断することができるとともに、各端子間の距離を長くとることができ、水を導体として漏電や短絡する危険性を回避することができる。
また、バッテリパック71の端子台部屋82では、プラス端子88a側とマイナス端子88b側とを分断し、仕切る縦壁部85が、部屋底面から上方に膨出したトンネル形状に構成され、端子台部屋82の内部を分断するように横切るトンネル内に高電圧部屋81の内部部品と接続されるケーブル95が挿通される。ケーブル95は、完全防水対応のケーブルグランド96を通してバッテリ監視装置97の信号線を高電圧部屋81に配索することができる。なお、図4,図5および図10において、符号98はケースグランド(GND)ケーブルであり、符号99はバッテリパック71のケーブルである。
バッテリ監視装置97は、高電圧部屋81に収納されたバッテリモジュール80のバッテリ状態(充電状態や放電状態)および過充電や充放電の繰返し状態を監視している。
ところで、端子台部屋82に設置された端子台およびプラス端子88a、マイナス端子88bは絶縁のため、それぞれ独立した樹脂製カバー90a,90bで覆われる。端子台等を樹脂製カバー90a,90bで覆うのは、燃料電池二輪車1の走行中に止着手段89の止めボルトや止めねじが緩んだ場合でも、(高)電圧ケーブル87a,87bが端子ボックス77や金属製プレート43に接触し、漏電するのを防ぐためである。また、樹脂製カバー90a,90bは、少量の水が端子台部屋82に侵入した場合でも、端子ボックス77内を筐体壁面に沿って伝わるだけで、接続端子88a,88b側の端子部に接触しないように構成したり、水抜き孔から排水される場合でも、極力端子部に接触しないようにレイアウトされる。
また、端子台部屋82を覆う金属製プレート84は、プラス端子88aとマイナス端子88bとを単一の金属製プレートで同時に覆うことができる。この金属製プレート84は、図7および図8に示すように、全体として逆L字状に形成され、金属製プレート84の側方に突出した延長窓部84aはサービスプラグ72のプラグカバー100のベースを兼ねている。
サービスプラグ72は、安全プラグを構成しており、矩形ボックス状のプラグ収納ボックス101に収容された状態で二次電池16の電気回路を構成する。サービスプラグ72の下部は、金属製プレート84の延長窓部84aに形成された挿通窓を貫通してプラグ収納ボックス101に差し込まれる。サービスプラグ72の上部は、挿通窓よりも大きく形成され、挿通窓を通過することができない。また、サービスプラグ72、および、サービスプラグ72を収容したプラグ収納ボックス101は金属製プレート84の延長窓部84aを設置した上からプラグカバー100で覆われる。プラグカバー100は、金属製プレート84の延長窓部84aを中(ベース)にしてプラグ収納ボックス101にプラグボルトあるいはプラグねじ等のプラグ締付手段102でスペーサ103を介して締着される。
このように、端子台部屋82を覆う金属製プレート84の延長窓部84aは、サービスプラグ72を覆うプラグカバー100のベースを兼ねており、延長窓部84aの先端部はプラグ収納ボックス101の取付ブラケット104に止めボルトや止めねじ等の止着手段105で固定されるとともに、サービスプラグ72が貫通配置される。したがって、端子台を覆う金属製プレート84は、安全プラグであるサービスプラグ72を抜かないと取り外すことができない金属カバー構造に構成される。
端子台部屋82内で端子台を覆う金属製プレート84は、安全プラグとしてのサービスプラグ72を抜かないと、端子台部屋82から取り外すことができない。このため、サービスプラグ72を抜いて、金属製プレート84を取り外して初めてメンテナンス等で接続端子(プラス端子88a、マイナス端子88b)88にアクセスすることができる。つまり、メンテナンス等で接続端子88a,88bを取り外すサービス時には、安全プラグであるサービスプラグ72を抜き、二次電池16の電気回路を物理的に開回路とした後に、初めて金属製プレート84を取り外すことができ、メンテナンス等の作業の安全性を図ることができる。
燃料電池二輪車1のバッテリシステム70では、図4ないし図8に示された二次電池16のバッテリパック71にレイアウトされた高電圧部屋81が、ケースカバー79で水密(液密)の完全防水構造に構成される。したがって、バッテリシステム70の二次電池16は完全クローズの状態で運搬や電動車両への組付けが可能となり、バッテリパック71の高電圧部屋81内の高電圧部品に工具等が接触することなく、短絡を防止できる。
また、完全防水構造ではないバッテリパック71の端子台部屋82は、バッテリ監視装置97の信号線を通すトンネルを構成した縦壁部85により、端子台上でプラス端子88a側とマイナス端子88b側とが分断され、両端子間の距離を長くとることができる。端子台部屋82に水が侵入しても、短絡を防止する安全構造とすることができる。
さらに、バッテリパック71の端子台部屋82を覆う金属製プレート84は、端子台や接続端子を覆う金属カバーである。金属製プレート84は安全プラグであるサービスプラグのプラグカバーのベースを構成する延長窓部84aが一体に設けられる。金属製プレート84はサービスプラグ72を抜き取らないと、端子台部屋82を開放させることができない構造となっている。端子台部屋82には信号線配索用トンネルを備えた縦壁部85と接続端子88を絶縁するための樹脂製カバー90a,90bとを設けたため、プラス端子88aとマイナス端子88bの各端子を単一の1枚の金属製プレート84で非接触状態に覆うことができる。このため、バッテリパック71は安全性を確保することができ、構造の簡素化・コンパクト化を図ることができる。
つまり、本実施形態の電動二輪車1のバッテリシステム70では、端子台部屋82の金属製プレート84とプラス端子88aおよびマイナス端子88bとの間にプラス端子88aおよびマイナス端子88b毎に独立した樹脂製カバー90a,90bをそれぞれ設けたので、バッテリパック端子台の各接続端子88類を単一の一枚の金属製プレート84で覆うことができる。その際、一枚の金属製プレート84でプラス端子88aとマイナス端子88bの各端子類を互いに接触することなく、端子台部屋82内に水が侵入した場合にも、導体である水を介してプラス端子88aとマイナス端子88bとが短絡するのを防止できる。
その上、金属製プレート84は、安全プラグであるサービスプラグ72が挿入されているときは、金属製プレート84を取り外すことができない。つまり、サービスプラグ72を抜かないと金属製プレート84を取り外すことができず、端子台部屋82の接続端子88類にアクセスすることができない。
二次電池16のバッテリパック71では、サービスプラグ72を抜いて初めて金属製プレート84を取り外すことができ、サービスパック端子台の各接続端子88にアクセスすることができる構造となっている。したがって、メンテナンス時の安全性を図ることができ、感電防止を図ることができる。
本実施形態では、バッテリシステム70を構成する二次電池16は、高電圧部屋81と端子台部屋82との防水レベルを変えて、省スペース化・コンパクト化を図っている。その上、高電圧部屋81から電池外に配索されるバッテリ監視装置(BMU)97の信号線は、端子台部屋82の端子台部のトンネル内を通される。しかも、バッテリ監視装置97の信号線(ケーブル95)が配索されるトンネルは、端子台部屋82内でプラス端子88aとマイナス端子88bとを区別する絶縁壁の縦壁部85内に構成され、完全防水を確保したケーブル95の配索構造が構成される。したがって、端子台部屋82内に水が侵入した場合でも、接続端子88の各端子が短絡する危険性がない。しかも、端子台部屋82にOリング等のシール部材を設置して水密の完全防水構造とする必要がなく、省スペースでコンパクトな設計にすることができる。
また、端子台部屋82から導出されるプラス側と(高)電圧ケーブル87aとマイナス側の(高)電圧ケーブル87bは、図9に示すようにクランプ107により束ねられてブリッジフレーム74に支持され、インバータ18やコンバータ(図示省略)に接続される。
なお、燃料電池二輪車1は、モータ3の駆動用の二次電池16の他に、メータ類(図示省略)、ランプ類(図示省略)用の電源として、例えば12V系の電力を供給する第2二次電池(図示省略)を備えている。第2二次電池は、ヘッドパイプ21の周囲、例えば、ヘッドパイプ21の右側の側方に配置されている。
電力管理装置17は、機器搭載領域36内で二次電池16と燃料電池2との間に配置され、フレーム11に固定されている。なお、電力管理装置17は二次電池16と同じ防水ケースを共用するように配置されていても良い。
燃料電池二輪車1は、二次電池16、電力管理装置17、および燃料電池2を上述のように配置することによって、電気的な接続関係が隣り合う装置を極力近接する位置に配置することが可能であり、装置間の配線長を短く、配線に掛かる重量を軽くすることができる。
車両コントローラ19は、燃料電池二輪車1内で比較的に高所となるヘッドパイプ21の周囲、例えば、12V系の電力を供給する第2二次電池の反対側にあたるヘッドパイプ21の左側の側方に配置されている。
[実施形態の効果]
電動二輪車のバッテリシステム70では、バッテリパック71内にバッテリモジュール80を収納する完全防水構造の高電圧部屋81と接続端子88を収納する端子台部屋82とを設けたので、防水レベルを変えて必要最低限の防水構造とすることができる。
高電圧部屋81は、Oリング等のシール部材を介してケースカバー79の取付けで完全防水構造に構成されたので、バッテリ16の運搬時や車体組付け時には高電圧部屋81はケースカバー79のアッパケースによって覆われ、ボルトを落として短絡させたり、工具が接触して感電する危険性を確実に防止することができる。
端子台部屋82は、プラス端子88a側とマイナス端子88b側とを分断(区別)する絶縁壁の縦壁部85を立設させたので、水が侵入した場合でも、短絡する危険性がなく、端子台部屋82にOリング等のシール部材の設置が不要となり、省スペースで設計でき、バッテリパック71の小型化・コンパクト化を図ることができる。
バッテリパック71の端子台部屋82内の端子台上のプラス端子88aとマイナス端子88bは絶縁壁の縦壁部85で分断(区分け)することができ、端子台部屋82に侵入した水による短絡を防止することができる。
端子台部屋82のプラス端子88aとマイナス端子88bの接続端子88に関し、端子カバーである単一の金属製プレート84との間に、プラス端子88aを覆う絶縁性の樹脂製カバー90aと、マイナス端子88bを覆う絶縁性の樹脂製カバー90bとを介在させたので、水が侵入して侵入した水が接続端子88に接触しても、金属製プレート84を介するプラス端子88aとマイナス端子88bの短絡の危険性がなく、コストダウンを図ることができる。
端子台部屋82を覆う端子カバーの金属製プレート84は、安全プラグであるサービスプラグを覆うプラグカバー100のベースを構成しており、プラグカバー100を取り外し、サービスプラグ72を引き抜いて初めて金属製プレート84を取り外すことができ、端子台部屋82内のプラス端子88aおよびマイナス端子88bにアクセスすることができる。したがって、バッテリ16の電源回路をサービスプラグ72を引き抜いて物理的に開回路を形成した後に、端子台部屋82の接続端子88にアクセスしてメンテナンス作業等を実施することができ、作業の安全性が図れ、危険性を排除することができる。
また、端子台部屋82の金属製プレート84は、安全プラグであるサービスプラグ72を抜かないと取り外せない構造に設定されており、バッテリ監視装置97の信号線(ケーブル95)配索のトンネルを形成した縦壁部85と端子台に絶縁のための樹脂製カバー90a,90bとのおかげで、プラス端子88aとマイナス端子88bとを一枚の単一な金属製プレート84で覆うことができ、バッテリ16は安全性を確保しながら構造の簡素化を図ることができる。
バッテリ16のバッテリパック71は、燃料電池側の一側に端子台部屋82を配設することができ、端子台部屋82のプラス端子88aやマイナス端子88bの各接続端子88に電圧ケーブル87a,87bを集中的に配索することができる。各電圧ケーブル87a,87bを集中的に配索しても、プラス端子88aとマイナス端子88bの各接続端子88の極間の短絡を防止することができ、各電圧ケーブルの短縮化が図れるので、重量軽減に寄与できる。
[その他]
本実施形態では、バッテリシステム70を電動二輪車1に適用した例を示したが、電動二輪車だけでなく、前二輪または後二輪の電動三輪車やバギー車両等の四輪車両に適用することができる。
また、電動二輪車1のバッテリシステム70では、燃料電池2で充電されるバッテリ16を備えた電動二輪車の例を示したが、燃料電池2を搭載した電動車両に代えて、プラグイン方式で家庭用電源で充電されるバッテリを備えた電動二輪車であってもよい。
以上、本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、三輪の車両や四輪の車両に適用することができ、様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。