以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る燃料電池車両の水素希釈装置の一実施形態が適用された電動二輪車を示す左側面図である。図2は、図1の電動二輪車の外装等を外した状態を示す左側面図である。図3は、図1の電動二輪車の外装等を外した状態を示す斜視図である。本実施形態において、上下、左右、前後の表現は、電動二輪車に搭乗した運転者を基準にしたものである。また、図1〜図3において、矢印Fは電動二輪車1の前方を示し、矢印Rは電動二輪車1の後方を示す。
[第1の実施形態]
(電動二輪車)
図1〜図3は、第1の実施形態に係る燃料電池車両の水素希釈装置を備えた電動二輪車1を示すものである。電動二輪車1は、燃料電池ユニットを構成する燃料電池2で発電した電力によって電動機としてのモータ3を駆動させて走行する車両である。また、電動二輪車1は、スクータ型の自動二輪車である。電動二輪車1は、前後に延びる車体5と、操舵輪としての前輪6と、前輪6を操舵自在に支えるステアリング機構7と、駆動輪としての後輪8と、後輪8を上下方向へ揺動自在に支えるスイングアーム9と、後輪8を駆動するモータ3と、を備えている。
車体5は、車両の前後に延びる車体フレームとしてのフレーム11と、フレーム11を覆う外装12と、フレーム11後半部の上方に配置されるシート13と、を備えている。また、車体5は、電力を発生させ、この電力を供給する燃料電池2と、燃料電池2にて発電に使用される燃料としての水素の高圧ガスを貯蔵する燃料タンク15と、燃料電池2の電力を補助する二次電池16と、燃料電池2の出力電圧の調整と燃料電池2および二次電池16の電力の分配を制御する電力管理装置17と、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換すると共に、その交流電力の周波数を変更してモータ3へ給電してモータ3の回転数を調整するインバータ18と、これらを統括的に管理する車両コントローラ19と、を備えている。
電動二輪車1のパワートレインは、燃料電池2および二次電池16を有し、車両の走行状態、燃料電池2の発電状態、二次電池16の蓄電状態によって各電池の電力を適宜に使うシステムである。ここで、電動二輪車1は、減速する際にモータ3で回生電力を発生させる。また、車両の電源である二次電池16および燃料電池2は、インバータ18に並列に接続されてモータ3へ電力を供給する。二次電池16は、電動二輪車1が減速する際にモータ3で発生する回生電力および燃料電池2が発電する余剰電力を蓄える。
フレーム11は、複数の鋼鉄製中空管を一体に組み合わせたものである。フレーム11は、前端上部に配置されるヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21の中央部から後ろ下がりに傾斜して延びる上部ダウンフレーム22と、ヘッドパイプ21の下方に配置され、後ろ下がりに傾斜して延びる下部ダウンフレーム23と、左右一対の下部フレーム24と、左右一対の上部フレーム25と、ピボット軸26と、上ブリッジフレーム27と、下ブリッジフレーム28と、ガードフレーム29と、搭載機器保護フレーム30と、を備えている。ヘッドパイプ21は、ステアリング機構7を操舵自在、つまり車両の左右方向へ揺動自在に支持している。
左右一対の下部フレーム24は、下部ダウンフレーム23の左右に配設されて、ヘッドパイプ21の下部に接続されている。また、左右一対の下部フレーム24は、ヘッドパイプ21との接続部分から下部ダウンフレーム23に沿って略平行に、かつ後ろ下がりに傾斜して延びる前側傾斜部分と、この前側傾斜部分の下端で後方に向かって湾曲する前側湾曲部分と、この前側湾曲部分の後端から略水平に車体5の後方へ向かって車体5の中央部分(車両の前後方向で中央部分)に達するまで直線状に延びる直線部分と、を有している。さらに、左右一対の下部フレーム24は、直線部分の後端部から後上方に向けて湾曲する後側湾曲部分と、この後側湾曲部分の上端部から後ろ上がりに傾斜して延びる後側傾斜部分を経て上部フレーム25に接続される上下フレーム接合部と、を有している。なお、左右の下部フレーム24の車両幅方向(左右方向)の間隔は、上部フレーム25の同方向の間隔よりも広い。
また、左右それぞれの下部フレーム24は、前側湾曲部分の外側に搭乗者が足を置くフットボード31を下方から支持するフットレストブラケット31aを備えている。
車体5の左側に配置される下部フレーム24は、サイドスタンドブラケット(図示省略)を備えている。サイドスタンドブラケット(図示省略)には、電動二輪車1を左側へ傾けた状態で自立させるサイドスタンド(図示省略)が設けられている。このサイドスタンドは、電動二輪車1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
左右一対の上部フレーム25は、車体5の前半部において下部フレーム24の前側傾斜部分の上下方向中央部に接続されている。左右一対の上部フレーム25は、下部フレーム24の前側傾斜部分との接続部分から車体5の後方に向かって略水平に延びる水平部分と、左右一対の上部フレーム25の水平部分の後端であって、車体5の後半部、かつ後輪8の上方部分において後ろ上がりに大きく傾斜し、車体5の左右方向内側へ湾曲して後輪8の太さ(幅寸法)程度に接近する後端部と、を有している。
ピボット軸26は、車体5の後半部において左右の上部フレーム25間に架設されている。つまり、ピボット軸26は、左右の上部フレーム25の下側、かつ上部フレーム25と下部フレーム24との合流部分(上下フレーム接合部)よりも後方であって、左右の上部フレーム25の水平部分と左右の下部フレーム24の後側傾斜部分とに接続される左右のブラケット26a間に架設されている。
上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の前端部に架設されている。この上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の上部フレーム25を連結する。
下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の前側湾曲部分に架設されている。この下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の下部フレーム24を連結する。
ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24の後側湾曲部分に架設されている。このガードフレーム29は、左右の下部フレーム24との接続部分から後下方に延びると共に、フレーム11の内部空間を拡大するように後ろ下がりのU字形状に延びている。また、このガードフレーム29には、電動二輪車1を直立状態で自立させるセンタースタンド33が設けられている。このセンタースタンド33は、電動二輪車1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
上部ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21と上ブリッジフレーム27との間に架設されている。また、下部ダウンフレーム23は、左右の下部フレーム24の上部の間で実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて架設されるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム34の左右方向中央部に接続される上端部と、下ブリッジフレーム28の左右方向中央部に接続される下端部とを有している。
搭載機器保護フレーム30は、上部フレーム25の後半部の上部に設けられて、燃料電池2を電動二輪車1の車体に支持している。また、搭載機器保護フレーム30は、その一部が上部フレーム25に着脱可能に設けられる。
シート13は、フレーム11の後半部上方を覆って前後に延びている。このシート13はタンデム式であり、搭乗者を着座させる前半部13aと、同乗者を着座させる後半部13bとを一体的に備える。また、シート13は、前半部13aと後半部13bとの間に傾斜部13cを備えている。
ここで、左右の上部フレーム25および左右の下部フレーム24で囲まれる空間をセンタートンネル領域35と呼び、また、上部フレーム25の後半部、外装12およびシート13で囲まれる空間を機器搭載領域36と呼び、さらに、センタートンネル領域35の後方かつ機器搭載領域36の下方の空間をタイヤハウス領域37と呼ぶ。
センタートンネル領域35は、燃料タンク15を収容している。本実施形態に係るスクータ型の電動二輪車1では、センタートンネル領域35は、搭乗者が足を乗せる左右のフットボード31の間に、車両の前後方向に沿って設けられ、フットボード31の足載せ領域を左右に分断するようにフットボード31から上方へ膨出した領域となっている。換言すると、センタートンネル領域35の左右には、足載せ領域となるフットボード31が配置され、左右のフットボード31の間に燃料タンク15が配置される。
機器搭載領域36には、車体5の前側から順に二次電池16、電力管理装置17、燃料電池2が収容される。この機器搭載領域36は、搭載機器保護フレーム30によって前端部、中央部、後端部、および中央部から後端部に渡る側部が保護されている。
搭載機器保護フレーム30は機器搭載領域36を囲んで、この機器搭載領域36に搭載される機器を保護している。搭載機器保護フレーム30は、機器搭載領域36の前端部に設けられて、左右の上部フレーム25の間で上に凸のアーチ状に架設された前保護フレーム30aと、機器搭載領域36の中央部であって上部フレーム25と下部フレーム24との合流箇所よりも後側に設けられて、左右の上部フレーム25の間で上に凸のアーチ状に架設される中央保護フレーム30bと、機器搭載領域36の後端部に設けられて、左右それぞれの上部フレーム25が内側に湾曲する部分に接続され、この湾曲部分から後ろ斜め上方へ延びる左右一対の後保護フレーム30cと、中央保護フレーム30bの左右それぞれから後方へ延びて後保護フレーム30cの上端部に接続され、さらに車体5の後端部へ到達する左右一対の側部保護フレーム30dと、左右の側部保護フレーム30dの後端部に架設されるブラケット30eと、を備えている。
左右の上部フレーム25は、前保護フレーム30aの下端が接合される箇所で屈曲して車両の後方に向かって間隔を拡げ、中央保護フレーム30bの下端が接合される箇所で屈曲して車両の後方に延びている。このため、中央保護フレーム30bは、前保護フレーム30aよりも幅が広く、高さも高い。後保護フレーム30cおよび左右一対の側部保護フレーム30dは一体化されている。また、後保護フレーム30cおよび左右一対の側部保護フレーム30dは、中央保護フレーム30bおよび上部フレーム25に着脱自在に連結されて燃料電池2を支持している。
タイヤハウス領域37には後輪8が配置されている。また、機器搭載領域36とタイヤハウス領域37との間には、それぞれの領域を分断する隔壁部材(図示省略)が設けられている。
外装12は、車体5の前半部を覆うフロントレッグシールドカバー41と、車体5の中央上部に配置されてセンタートンネル領域35などの上部フレーム25の上方を覆うフロントフレームカバー42と、車体5の後半部に配置されて機器搭載領域36などの車体5の側面のうちシート13の下方部分を覆うフレームカバー43と、を備えている。
フレームカバー43は、シート13と共に機器搭載領域36を囲んでいる。機器搭載領域36は、シート13、フレームカバー43および隔壁部材に囲まれる閉鎖的な空間である。機器搭載領域36は、フレームカバー43、もしくは隔壁部材の適宜の箇所に設けられる通気孔(図示省略)によって、燃料電池2への空気の流れを容易、かつ確実に制御し、また冷却が必要な装置へ冷却風としての空気の流れを容易、かつ確実に制御している。機器搭載領域36は、各カバー(フロントフレームカバー42、フレームカバー43等)の継ぎ目などからも空気が入り込むことを許容する。
前記ステアリング機構7は、車体5の前方に配置されて、フレーム11のヘッドパイプ21を中心に左右方向へ揺動し前輪6の操舵を可能にする。このステアリング機構7は、頂部に設けられるハンドル45と、このハンドル45と前輪6とを連結して上下に若干傾斜して延びる左右一対のフロントフォーク46と、を備える。左右のフロントフォーク46は、弾性的に伸縮自在なテレスコピック構造を備える。この左右のフロントフォーク46の下端部には、従動輪としての前輪6を回転自在に支持する車軸(図示省略)が架設されている。前輪6の上方にはフロントフェンダ47が配置されている。このフロントフェンダ47は、左右のフロントフォーク46の間にあって、フロントフォーク46に固定されている。
前記スイングアーム9は、車体5の左右方向に延びるピボット軸26を中心に上下方向へ揺動する。このスイングアーム9は、車体5の左右で前後方向に延びる一対のアーム部の間に後輪8を回転自在に支持している。フレーム11とスイングアーム9との間には、リアサスペンション48が架設されている。このリアサスペンション48の上端部は、上部フレーム25の後端部に揺動自在に支持される。また、リアサスペンション48の下端部は、スイングアーム9の後端部に揺動自在に取り付けられる。このリアサスペンション48は、スイングアーム9の揺動を緩衝する。後輪8の上方にはリヤフェンダ49が配置されている。
また、スイングアーム9は、後輪8を回転駆動させるモータ3と、燃料電池2から供給される直流電力を交流電力に変換等してモータ3へ供給するインバータ18と、を収容している。モータ3は、燃料電池2または二次電池16から供給される電力によって後輪8を回転駆動させる。また、モータ3は、スイングアーム9の後部に収容されて、後輪8の車軸と同軸に配置されている。さらに、モータ3は、スイングアーム9に一体的に組み付けられて、ユニットスイング式スイングアームを構成している。インバータ18は、スイングアーム9の前部に収容されて、ピボット軸26とモータ3との間に配置されている。後輪8は、モータ3から駆動力が伝達される車軸(図示省略)によって支持される駆動輪である。
(燃料供給システム)
燃料電池車両としての電動二輪車1は、車体5内部に燃料供給システム50を備える。燃料供給システム50は、燃料電池2にて発電に使用される燃料の水素を高圧ガス状態で貯蔵する燃料タンク15を有する。この燃料タンク15は、図4および図5に示すように、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製容器あるいはアルミライナ製複合容器である圧力容器55と、燃料充填口56を有する燃料充填部材57と、燃料充填元弁58および燃料供給元弁59を内蔵した弁装置としてのタンクバルブ63と、二次減圧弁64と、を備える。
圧力容器55は、燃料電池2の燃料としての水素ガス、例えば約70MPaの水素ガスを貯蔵する。この圧力容器55は、円筒形状の胴部55aと、この胴部55aの前後の端面に一体に設けられたドーム状の鏡板55bとを有し、胴部55aの中心線を車体5の前後方向へ沿わせてセンタートンネル領域35内に配置されている。つまり、図2および図3に示すように、圧力容器55は、一対の上部フレーム25、一対の下部フレーム24、下ブリッジフレーム28、およびガードフレーム29に周囲を囲まれて、電動二輪車1の転倒や衝突による負荷に対して堅牢に保護されている。
また、圧力容器55は、車体5の一方側、例えば車体5の右側に配置される上部フレーム25と、車体5の他方側、例えば車体5の左側に配置される下部フレーム24との間に架設されるクランプバンド61によって、センタートンネル領域35に支持されている。詳細には、圧力容器55は、右側の上部フレーム25と左側の下部フレーム24との間に架設される下クランプバンド(クランプバンド61の下半部)に載置され、上クランプバンド(クランプバンド61の上半部)で締め付けられて挟持される。なお、クランプバンド61は、車体5の左側に配置される上部フレーム25と、車体5の右側に配置される下部フレーム24との間に架設されていても良い。
燃料充填部材57は、センタートンネル領域35の外側、詳しくはセンタートンネル領域35の後ろ上方であって、機器搭載領域36の前端部に配置されている。この燃料充填部材57は、二次電池16よりも上方、あるいは真上に配置されている。また、燃料充填部材57は、搭載機器保護フレーム30の前保護フレーム30aの上部と中央保護フレーム30bの上部との間に架設される充填用ブラケット30fに固定されている。さらに、燃料充填部材57は、燃料充填時に設備側の燃料供給部材(図示省略)を車体の上方かつ左側から差し込めるよう、車体5の上方かつやや左側に向かって延び、シート13の前端部に設けられる燃料充填口用リッド62(図1)によって覆い隠される。この燃料充填口用リッド62は、ヒンジ機構(図示省略)を介してシート13に開閉自在に支持されている。燃料充填部材57は、燃料としての水素の高圧ガスを燃料タンク15に導き入れる入口としての燃料充填口56を有している。
燃料充填口56は、燃料充填部材57の頂部に設けられ、車体5の左上方を向いている。燃料タンク15の圧力容器55内に燃料を充填する際に、燃料充填口用リッド62を開放した状態において、燃料充填口56の上方は雰囲気に開放される。したがって、燃料としての高圧燃料ガス(水素ガス)を燃料タンク15の圧力容器55に充填する際に、仮に高圧燃料ガス(水素ガス)が漏洩しても、漏洩燃料は滞留することなく電動二輪車1の上方へ拡散される。
燃料充填元弁58および燃料供給元弁59を内蔵する水素系部品の主止弁アッセンブリとしてのタンクバルブ63は、図2、図4および図5に示すように、圧力容器55の後方側の鏡板55bの頂部に設置されて、センタートンネル領域35の後部にガードフレーム29で囲まれた空間に配置される。燃料供給元弁59は、共に図示しない遮断弁および一次減圧弁を備える。この燃料供給元弁59の遮断弁と燃料充填元弁58は、電磁弁を用いた開閉弁である。また、燃料供給元弁59の一次減圧弁と二次減圧弁64は、圧力容器55からの高圧燃料ガスの圧力を順次減圧して調整する。タンクバルブ63および二次減圧弁64は、燃料電池2の燃料ガスを供給する燃料供給システム50の水素系部品を構成している。
図2および図3に示すように、電動二輪車1の二次電池16は、箱状のリチウムイオン電池である。この二次電池16は、機器搭載領域36の前端部であって、圧力容器55の胴部55aの後半部および後方側の鏡板55bと、シート13の前半部13aとの間に配置されている。
なお、電動二輪車1は、二次電池16の他に、メータ類(図示省略)やランプ類(図示省略)用の電源として、例えば12V系の電力を供給する第2二次電池(図示省略)を備える。この第2二次電池はヘッドパイプ21の周囲、例えばヘッドパイプ21の右側の側方に配置されている。
電動二輪車1の電力管理装置17は、機器搭載領域36内で二次電池16と燃料電池2との間に配置され、フレーム11に固定されている。なお、電力管理装置17は二次電池16と同じ防水ケース内に配置されていても良い。電動二輪車1は、二次電池16、電力管理装置17、および燃料電池2を上述のように配置することによって、電気的な接続関係が隣り合う装置を極力近接する位置に配置することが可能となり、装置間の配線長を短く、配線に係る重量を軽くすることが可能になる。
また、電動二輪車1の車両コントローラ19は、電動二輪車1内で比較的に高所となるヘッドパイプ21の周囲、例えば、12V系の電力を供給する第2二次電池の反対側にあたるヘッドパイプ21の左側の側方に配置されている。
ところで、前述の燃料タンク15では、図4および図5に示すように、圧力容器55の後側の鏡板55bに水素系部品の主止弁アッセンブリのタンクバルブ63が設置される。このタンクバルブ63の燃料充填元弁58は、燃料充填配管65により燃料充填部材57に接続される。つまり、燃料充填配管65には、車外の燃料供給装置から供給された高圧の燃料ガスがタンクバルブ63を経て燃料タンク15の圧力容器55に導入される。また、タンクバルブ63の燃料供給元弁59(遮断弁、一次減圧弁)は、第1燃料供給配管66により二次減圧弁64アッセンブリに接続され、この二次減圧弁64が第2燃料供給配管67により燃料電池2に接続される。
燃料充填部材57から燃料充填配管65を経て導入された高圧の燃料ガス(水素ガス)は、タンクバルブ63の燃料充填元弁58を経て圧力容器55内に供給されて充填される。この圧力容器55内の高圧燃料ガスは、水素系部品のタンクバルブ63の燃料供給元弁59(特に一次減圧弁)で減圧され、第1燃料供給配管66を経て二次減圧弁64で再度減圧された後、第2燃料供給配管67、供給側配管継手68を経て燃料電池2へ供給される。
図6〜図8に示すように、左右一対の上部フレーム25における車両前後方向略中央位置にはクロスメンバ70が架け渡されて固着され、このクロスメンバ70の下方(直下)に水素系部品のタンクバルブ63が配置される。また、クロスメンバ70の後方には、左右のブラケット26a間に、スイングアーム9を揺動自在に支持するピボット軸26が架設されている。つまり、タンクバルブ63の上方にはクロスメンバ70が車両の左右方向に沿って配位置され、タンクバルブ63の後上方にはピボット軸26(スイングアーム9の前端部)が車両の左右方向に沿って配置されている。
水素系部品を構成するタンクバルブ63の上部切欠段部71の側面に、タンクバルブ63に燃料充填配管65を接続するための充填側配管継手73が取り付けられる。充填側配管継手73に接続される燃料充填配管65は、充填側配管継手73から充填側配管継手73の軸方向に延びており、その先端を充填側配管継手73の軸方向に締め込む取付ナット76によって充填側配管継手73の先端(左側端部)に取り付けられている。充填側配管継手73に燃料充填配管65を取り付ける取付ナット76は、タンクバルブ63の上部に位置している。
従って、この充填側配管継手73は、車両上下方向において、上部フレーム25に設置のクロスメンバ70とタンクバルブ63の上部切欠段部71との間に配置される。つまり、充填側配管継手73の上方にはクロスメンバ70が配置され、充填側配管継手73の下方には上部切欠段部71の上面が配置される。これにより、充填側配管継手73に対して車両上方および下方から工具を係合させることができず、充填側配管継手73への工具の不正なアクセスが防止されて充填側配管継手73が保護される。
尚、車両の組立作業は、スイングアーム9をピボット軸26に取り付ける前の状態で充填側配管継手73と燃料充填配管65の接続作業(取付ナット76の締め付け作業)を行なう。つまり、スイングアーム9が存在しない状態では、車両の後方側から充填側配管継手73に工具を係合させることが可能であって、さらに取付ナット76の締め付け作業である工具の揺動が、クロスメンバ70と上部切欠段部71との間で可能となっており、燃料充填配管65の接続作業を容易に行なうことが可能となっている。また、タンクバルブ63に第1燃料供給配管66を接続するための供給側配管継手74は、タンクバルブ63の下部切欠段部75の傾斜面に取り付けられている。
また、クロスメンバ70の後方に架設されたピボット軸26を中心に揺動するスイングアーム9は、充填側配管継手73の後方に配置される。さらに、このスイングアーム9の前端部9aは、図4,図5および図7に示すように、車両前後方向から見て充填側配管継手73と重なるように位置づけられる。つまり、スイングアーム9の前端部9aの前方に、上部切欠段部71、充填側配管継手73、クロスメンバ70が配置され、車両の左右方向では充填側配管継手73よりもスイングアーム9の前端部9aの方が車両の側方(左方)に位置している。従って、タンクバルブ63の上部切欠段部71の側面に充填側配管継手73を取り付けることで燃料充填配管65をタンクバルブ3に接続した後、スイングアーム9をピボット軸26に取り付けることで、このスイングアーム9によって、充填側配管継手73に対し車両後方から工具を係合させることができず、充填側配管継手73への工具の不正なアクセスが防止されて充填側配管継手73が保護される。
その他、充填側配管継手73に対し、車両の右側にはタンクバルブ63が位置しているので車両の右側から充填側配管継手73に工具を係合させることができない。また、充填側配管継手73に対し、車両の左側には燃料充填配管65が車両の幅方向に突出すると共にブラケット26aが位置しているので、車両の左側から充填側配管継手73に工具を係合させることができない。さらに、充填側配管継手73に対し、車両の前方側には燃料タンク15が位置しているので、車両の前側から充填側配管継手73に工具を係合させることや工具を揺動させることができない。
(燃料電池システム)
ところで、電動二輪車1に搭載される燃料電池2は、燃料として高圧ガス、例えば水素ガスと、酸化剤として空気中の酸素とを電気化学反応させて発電し、空気を用いて冷却する燃料電池ユニットを備えた空冷式燃料電池システムである。この燃料電池ユニットとしての燃料電池2は、機器搭載領域36の後半側に配置されている。さらに具体的には、燃料電池2は、シート13の前半部13aと後半部13bとの間の傾斜部13cから後半部13bの下方に渡って配置されている。つまり、車両の側面視で、燃料電池2は、同乗者を着座させるシート13の後半部13bと後輪8やスイングアーム9との間に配置されている。
また、燃料電池ユニットを構成する燃料電池2は、図9に示すように、車体5の前後方向に延びる長辺を有する直方体形状であって、吸気口2aが配置される正面を前斜め下方へ向け、排気口2bが配置される背面を後ろ斜め上方へ向ける傾斜姿勢で機器搭載領域36の後部に配置されている。つまり、燃料電池2は、前方側が後方側よりも下方に位置する前傾姿勢でフレーム11に固定されている。詳細には、燃料電池2の上部は搭載機器保護フレーム30に固定され、燃料電池2の下部は上部フレーム25に固定されている。
燃料電池2は、図10に示すように、正面側から背面側へ向かって連結される扁平な複数のモジュールを含んでいる。具体的には、燃料電池2は、正面側から順に積層状態に重ねられて連結されるフィルタ80、吸気シャッタ81、多数のセルからなる燃料電池スタック82、ファン83、排気シャッタ84を有している。
燃料電池ユニットとしての燃料電池2の天面には燃料電池制御部86が設けられる。燃料電池制御部86は、燃料電池用コントローラやパワーコントローラ、DC/DCコンバータ等の電装部品で構成される。
吸気シャッタ81は、開閉自在な空気の吸気口2aを有し、吸気口2aを開閉して燃料電池スタック82への空気の導入量を制御すると共に、吸気口2aを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成する。排気シャッタ84は、開閉自在な空気の排気口2bを有し、排気口2bを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成する。換言すると、燃料電池2は、正面に開閉可能な吸気口2aを有し、背面に開閉可能な排気口2bを有し、吸気口2aと排気口2bを閉じることで燃料電池2内の空気を循環させる。
燃料電池スタック82は、吸気口2aから吸い込まれる空気に含まれる酸素と、燃料タンク15から供給される燃料の水素とを電気化学反応させて発電し、発電後に湿潤な余剰ガスを生成している。ファン83は、機器搭載領域36内の空気を吸気口2aから燃料電池2内に吸い込むための吸込負圧を発生させる一方で、燃料電池スタック82から余剰ガスを吸い出して排気口2bから排出している。ファン83が流動させる空気の流れは、燃料電池スタック82で発電に用いられる他に、燃料電池2の冷却に利用される。
燃料電池2の後方には、排気ダクト52が設けられている。燃料電池2のファン83は、余剰ガスを燃料電池スタック82から吸い出してパージ水素を排気ダクト52へ排出している。排気ダクト52の前端部は、燃料電池2の箱体(即ち排気シャッタの枠体)に気密に接続されている。排気ダクト52は、車体5の後端で後下方と後上方とに向かって開口される排気口52a,52bを有する。排気ダクト52は、燃料電池2のファン83から吐出される排気(余剰ガス)を、排気口52a,52bへ導いて車体5の後方へ排出する。
排気ダクト52の排気口52aは、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方であって、望ましくは排気ダクト52の後方上端部に設けられる。詳細には、燃料電池2の排気口よりも高い位置に排気口52aの上縁部が配置される。排気ダクト52は、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方に配置される排気口52aを有することによって、未反応の水素ガスを含む湿潤な余剰ガスを排気口52aに導いて車体5から確実に排気する。
また、センタートンネル領域35の後部に燃料元弁アッセンブリのタンクバルブ63や二次減圧弁64の水素系部品が集中的に配設され、これらの水素系部品63,64は、燃料電池車両の車体前後方向に横置きされた燃料タンク15の後方側に位置している。燃料供給システム50の水素系部品63,64は、燃料タンク15の後部側に集中的に設けられ、水素系部品63,64の斜め後上方に燃料電池ユニットを構成する燃料電池2が斜設状態で設置される。
(燃料電池車両の水素希釈装置)
機器搭載領域36の後部に設けられた燃料電池2は、燃料供給システム50の水素系部品63,64の斜め後上方に設けられる。燃料電池2の上面とシート12の底板88と左右両側のフレームカバー(車体外装)43とで囲まれたスペース89が希釈用吸気流路として構成される。シート底板88は、燃料電池ユニットを構成する燃料電池2全体の上方を覆うカバー90を兼ねることができる。シート底板88は、車両の後方側が高くなるように構成されると共に、その前方部分が燃料供給システム50の水素系部品63,64の上方まで達している。カバー90はシート底板88を兼ねることなく、別部材で構成してもよい。カバー90は、燃料電池2前側のシート前半部13aの後側から燃料電池2後方のシート後半部13bの後部にかけて、車両後方側に延設され、燃料電池2全体を上方から滑らかに覆う弧状あるいは傘状、逆椀状に構成される。カバー90の下部は下向きに開放されて、下端が開口された希釈用吸気ダクトを構成している。なお、カバー90は、車両の後方側が高くなるように構成されると共に、その前方部分が燃料供給システム50の水素系部品63,64の上方まで達していてもよい。
一方、燃料電池2の天面に配置される燃料電池制御部86は、燃料電池用コントローラやパワーコントローラ、DC/DCコンバータ等の電装部品で構成される。電装部品の中には、燃料電池用コントローラやDC/DCコンバータのような発熱部品が含まれる。燃料電池用コントローラ等の電装部品が異常加熱されると、コントローラが停止してしまう虞がある。
本実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置91は、燃料電池用制御部86の発熱問題を考慮して、カバー90下の希釈用吸気通路(スペース)89は、冷却に有利なレイアウト構造に構成される。カバー90下の前方は燃料供給システム50の水素系部品63,64および燃料電池2の前端部側に向けて開口しており、カバー90下の吸気通路89の車体後部側に希釈ファン92が設置される。カバー90下の吸気通路89は、燃料電池ユニットの上面を覆う大きさで、下方に開放されており、前後方向中央部が上方に膨出する傘状、逆椀状あるいは弧状の吸気流路形状に構成されている。燃料電池制御部86の上部は、カバー90下の吸気通路89内に配置されている。
希釈ファン92は、排気ダクト52とシート底板12bとの間に配置され、排気ダクト52の入口側天板部(燃料電池2側の上部)に設けられる。希釈ファン92は、水素を捕集され易いカバー90内高所の空気を強制的に吸引して、排気ダクト52内に送風するように配置される。本実施形態では、スペースを構成する吸気通路89の後部であって、排気ダクト52のダクト流入側頂部(天板部)に希釈ファン92を設けることにより、カバー90下の吸気通路89は捕集された水素を排気ダクト52内に強制的に送り込む希釈用空気流路を形成している。なお、カバー90下の吸気通路89の天井部、例えば水素が溜り易い部分に水素検出センサ(図示省略)を設け、水素検出センサが基準濃度、例えば4%以上の水素濃度を検出したとき、警報を発報させたり、燃料供給システムや燃料電池を停止させるようにしてもよい。
カバー90下の流路形状の吸気通路89は、燃料電池ユニットの上方を覆うように下方に開放されており、燃料電池ユニットエリアから漏出した水素を捕集し易い形状に構成され、水素捕集空間を形成している。燃料電池2および燃料供給システム50の水素系部品63,64の燃料電池ユニットエリアから漏出した水素は上昇してカバー90下の吸気通路89に捕集される。捕集された水素はカバー90下面の高位置に集まり希釈ファン92のファン駆動により、流路形状の吸気通路89に吸気される外気と共に吸引されて、排気ダクト52内に送風される。
また、本実施形態では、燃料電池制御部86を構成する燃料電池用コントローラやDC/DCコンバータの電装部品はカバー90下のスペースに配置される。そして、カバー90内後部の希釈ファン92のファン作動により、電装部品の周囲の空気は流路形状の吸気通路89内に吸引され、排気ダクト52内に撹拌されて送風される。
カバー90内の流路形状の吸気通路89は、希釈ファン92が巻き起こす風により、燃料電池制御部86の各電装部品を外気で積極的に冷却することができる。したがって、燃料電池制御部86の各電装部品を冷却する専用の冷却ファンが不要となり、部品点数を減少させ、配置スペースの削減を図ることができる。
本実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置では、排気ダクト52の入口側上面に開口を形成し、排気ダクト52の入口側頂部の開口に希釈ファン92が取り付けられる。そして、この希釈ファン92の上方を覆うカバー90は、車両後方に延設されるシート底板12bで兼用とすることができる。したがって、燃料電池車両の漏洩水素の希釈構造を簡単に構成でき、漏洩水素Bの撹拌・希釈を確実に行なうことができる。燃料電池ユニットエリアから漏洩した水素を、希釈ファン92が巻き起こす風による巻込みを利用して電装部品の周囲に配置された開口からカバー90下の流路形状の吸気通路89内に吸引し、排気ダクト52内に撹拌して送風させることができる。
[第1実施形態の効果]
第1実施形態においては、燃料電池ユニットエリアから漏出した漏洩水素Bをカバー90内の流路形状の吸気通路89に捕集する。吸気通路89は排気ダクト52に接続され、吸気通路89と排気ダクト52の接続部に希釈ファン92が配置され、この希釈ファン92により捕集された水素を外気とともに吸引して排気ダクト52内に送風し、排気ダクト52内で撹拌・希釈して外部に放出することができる。希釈ファン92が巻き起こす風で、流路形状の吸気通路89内に外気を積極的に吸引し、燃料電池2上に設置された電装部品を積極的に冷却することができる。なお、希釈ファン92は、排気ダクト52内に吸気通路89内の空気を吸引する様に配置してもよく、吸気通路89を構成するカバー90に取付け配置されていてもよい。
第1実施形態では、燃料電池ユニットエリアから漏出した水素を、シート13下のカバー90内のスペースに捕集することができる。カバー90内に広い流入口を有する流路形状の吸気通路89を形成したので、吸気通路89をシート下方の比較的確保し易い位置に大きな自由度を持って構成することができる。さらに、電装部品の周囲に配置された開口から、漏洩水素Bをカバー90下の流路形状の吸気通路89内に確実に捕集及び吸引することができる。
第1実施形態では、希釈ファン92が巻き起こす風による吸引力を利用して、電装部品の周囲に外気を流動させて燃料電池2の天面上に配置した電装部品を積極的に冷却することができ、電装部品専用の各冷却ファンが不要となって、部品点数の減少と配置スペースの削減を図ることができる。
第1実施形態では、排気ダクト52の入口側上面の開口部に希釈ファン92を取り付け、希釈ファン92上方を覆うカバー90を車両後方に延設されるシート底板12bで兼用させることができ、漏出水素の捕集・希釈構造を簡素化でき、しかも、希釈ファン92が巻き起こす巻込み風を利用して、漏出水素を排気ダクト52内で希釈・拡散させることを確実にできる。
[第2の実施形態]
次に、燃料電池車両の水素希釈装置の第2の実施形態を図11ないし図14を参照して説明する。
第2の実施形態に係る燃料電池車両の水素希釈装置100は、第1の実施形態の水素希釈装置91と同様、電動二輪車に適用されるもので、その構成は図1ないし図8に示される第1の実施形態の電動二輪車1の構成と異ならないので、同じ構成には同一符号を付し、重複する説明を省略あるいは簡略化する。
第2の実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置100は、レイアウト関係が図11の原理的な説明図に示すように構成される。燃料電池ユニットを構成する燃料電池2Aには、送風ファン101により冷却風の外気Aが導入される構成となっている。燃料電池2Aは、燃料供給システム50の水素系部品63,64から燃料ガスである水素と外気Aから酸化剤ガスである空気が供給され、電気化学反応により直流電力が発電される。燃料電池2Aからの排気水素Bは背側から排気ダクト52に排出され、排気流路を通って排気口52a,52bから外部に放出される。
一方、燃料電池2Aの後部上方には、燃料電池2Aを上方から覆うカバーを構成する希釈用吸気ダクト102が設置される。この吸気ダクト102は傘形状あるいは逆椀状、弧状に構成され、ダクト内部に希釈用吸気流路が形成される一方、下方は広く開放された外気導入口が備えられる。
希釈用吸気ダクト102内には、燃料電池用コントローラ86aやDC/DCコンバータ86b等の燃料電池制御部86の電装部品が設置される。吸気ダクト102の車両後方の下流側に希釈ファン92が設けられる。希釈用吸気ダクト102は希釈ファン92を経て排気ダクト52の排気水素希釈ボックス103(スペース)内に開口している。このため、電装部品86は発熱する放熱部が希釈用吸気ダクト102の吸気流路に晒されており、電装部品86の冷却機能を向上させている。
燃料電池車両の水素希釈装置100は、具体的には、図12に示すように構成される。図12は、図10に示された第1の実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置91と同様な側断面構造を有する。
第2の実施形態の燃料電池車両1は、機器搭載領域36の後部に燃料電池ユニットを構成する矩形ボックス状の燃料電池2Aが斜設状態で設置される。燃料電池2Aは燃料供給システム50の水素系部品63,64の斜め後上方に配設される。燃料電池2Aの天面上には燃料電池コントローラ等の電装部品86が設置され、燃料電池制御部86の電装部品上方を覆うように希釈用吸気ダクト102が設けられる。この吸気ダクト102は、電装部品86の上方を覆う傘状あるいは逆椀状に湾曲したカバーを構成しており、ダクト下方が広く開放されて外気導入口が形成される。希釈用吸気ダクト102内に外気導入口からの外気Aや燃料電池ユニットエリアから漏れ出した漏洩水素Cが捕集される。希釈用吸気ダクト102内吸気流路の上方部分は、漏洩水素Cの滞留が予想されるエリアDを構成している。
また、希釈用吸気ダクト102の後部下流側に希釈ファン92が設置され、吸気ダクト102内に形成される希釈用吸気流路は、図12に示すように、燃料電池2A背側で排気ダクト52内に連通される。排気ダクト52は燃料電池2Aから排気水素Bが排出されるスペース(排気水素希釈ボックス)を備えると共に、このスペース内に漏洩水素Cと外気Aを導入する希釈ファン92と開口が設けられる。排気ダクト52上方の開口を通して希釈用吸気ダクト102が連通される。
さらに、希釈用吸気ダクト102の吸気流路に電装部品である燃料電池制御部86の放熱部が晒されている。電装部品86は希釈用吸気ダクト102内に吸引される外気に晒されて積極的に冷却されるようになっている。したがって、吸気ダクト102内に電装部品86を設置することで、電装部品86専用の冷却システムの必要がなくなり、電装部品冷却用システムの消費電力や騒音を減少させることができる。
ところで、燃料電池車両の水素希釈装置100は、燃料電池ユニットを構成する燃料電池2Aの前下方に、燃料供給システム50の水素系部品63,64が設けられる。各水素系部品63,64の損傷や破損により漏れ出した水素や燃料電池ユニットからの漏洩水素Cは、燃料電池ユニットエリアを上昇する。燃料電池ユニットエリアからの漏洩水素Cは、上昇してカバーである希釈用吸気ダクト102内に外気Aと共に吸引され、捕集される。
燃料電池2Aの上方を覆うカバー形状の希釈用吸気ダクト102は、シート13の底板88に重なるように設置される。希釈用吸気ダクト102は、シート前半部13aの後側からシート後半部13bの中程にかけて、車両後方側に延びており、吸気ダクト102内には吸気流路が構成される。
希釈用吸気ダクト102は、図14に示すように、傘形状あるいは逆椀状のカバー部が電装部品86の放熱部と対向しており、電装部品の放熱部とカバー部との隙間に外気Aを通すことにより、電装部品を積極的に冷却させることができる。希釈用吸気ダクト102の外気導入口部は、水素が滞留する隔壁最上部より所要高さ分、例えば10cm程度以内に設けられる。これにより、希釈用吸収ダクト102内に捕集される漏洩水素Cは希釈ファン92の吸引力により、排気ダクト52内に積極的に吸引され、排気ダクト52のスペースに送風されて、このスペース内で希釈・撹拌されて排気口52a,52bから外部に確実に放出される。
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置100においては、第1の実施形態に記載の水素希釈装置91と同様、作用効果を奏する他、燃料電池2A上に設置される燃料電池制御部86の電装部品を覆うように傘形状あるいは逆椀形状の希釈用吸気ダクト102が設けられる。この吸気ダクト102の下部は広く開放されており、吸気ダクト102の吸気通路内に、燃料電池ユニットエリアから漏れ出した漏洩水素Cを外気Aと共に捕集される。捕集された漏洩水素Cは、希釈ファン92により巻き込まれて排気ダクト52内に送風され、排気ダクト52内のスペースにて希釈・撹拌されて外部に確実に放出している。したがって、燃料電池ユニットからの漏洩水素Cが車体内に滞留させることなく確実に車体外部に放出される。
その際、希釈用吸気ダクト102に設けられた希釈ファン92により、外気Aの冷却された空気が、電装部品86の放熱部とカバー部との間の隙間を通って強制的に吸い込まれ、電装部品86の放熱部を積極的に冷却している。したがって、電装部品専用の冷却システムが不要となり、電装部品冷却用システムの消費電力や騒音を減少させることができる。
第2の実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置100では、漏洩水素Cの滞留防止を確実に図ることができる。このため、燃料電池2A上に設置される電装部品86のレイアウト上の自由度向上を図ることができる。
[第3の実施形態]
図15は、燃料電池車両の水素希釈装置の第3の実施形態を示す簡略的な平断面図である。
第3の実施形態に係る燃料電池車両の水素希釈装置110を説明するに当り、第2の実施形態の水素希釈装置100と同じ構成には、同一符号を付して重複説明を省略する。
第3の実施形態の燃料電池車両の水素希釈装置110は、カバーを構成する希釈用吸気ダクト102Aの入口側に希釈ファン92を設けたものである。希釈用吸気ダクト102Aは、下部が広く開放されており、燃料電池ユニットの燃料電池2A上に設置される燃料電池制御部86の電装部品を上方から覆うように設置される。希釈用吸気ダクト102Aは燃料電池2Aの上方から車体後方側にかけて吸気流路幅が縮小するように延設され、ダクト後端部は、開口113を通して排気ダクト52のスペース(排気水素希釈ボックス)内に連通されている。
第3の実施形態の水素希釈装置110は、希釈用吸気ダクト102Aの吸気流路内に燃料電池ユニットエリアから上方に漏れ出る漏洩水素Cを捕集すると共に、捕集された漏洩水素Cは、希釈ファン92に吸引される外気Aと吸気流路内で混合して希釈され、ダクト後端部の開口113を通過して排気ダクト52内に送風される。排気ダクト52に送風された漏洩水素Cは排気ダクト52のスペース内で再度撹拌・希釈されて排気口52a,52bから外部に放出される。
第3の実施形態の水素希釈装置110においても、希釈用吸気ダクト102A内に強制的に吸引される外気Aにより燃料電池制御部86の電装部品の放熱部が積極的に冷却されるので、第3の実施形態は、第2の実施形態と同等の作用効果を奏する。
以上に述べたように、本発明の実施形態は、燃料電池車両の水素希釈装置91,100,110が電動二輪車に適用された例を示したが、燃料電池車両の水素希釈装置は電動二輪車両に限定されず、前二輪または後二輪の電動三輪車に適用することもできる。
また、本発明の各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。