以下、本発明に係る燃料電池車両の実施の形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の左側面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両であって、外装等(カバーやシート)が外された状態の左側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両であって、外装等(カバーやシート)が外された状態の斜視図である。
なお、本実施形態における前後上下左右の表現は、燃料電池車両1の搭乗者を基準にする。
図1から図3に示すように、本実施形態に係る燃料電池車両1は、燃料電池2で発電し、この電力でモータ3を駆動させ、モータ3の駆動力で走行する。また、燃料電池車両1は、スクータ型の自動二輪車であり、燃料電池2の電力で走行する燃料電池二輪車である。なお、燃料電池車両1は、三輪車であっても良いし、四輪バギーであっても良いし、自動車であっても良い。
燃料電池車両1は、前後に延びる車体5と、操舵輪としての前輪6と、前輪6を操舵自在に支えるステアリング機構7と、駆動輪としての後輪8と、後輪8を上下方向へ揺動自在に支えるスイングアーム9と、後輪8の駆動力を発生させるモータ3と、を備えている。
車体5は、車両の前後に延びるフレーム11と、フレーム11を覆う外装12と、フレーム11後半部の上方に配置されるシート13と、を備えている。
また、車体5は、燃料と空気中の酸素とを反応させて発電する燃料電池2と、燃料電池2で発電に使用される燃料を貯蔵する貯槽としての燃料タンク15と、燃料電池2の電力を補助する二次電池16と、燃料電池2の出力電圧の調整と燃料電池2および二次電池16の電力の分配を制御する電力管理装置17と、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換してモータ3へ出力するインバータ18と、これらを統括的に管理する車両コントローラ19と、を備えている。
燃料電池車両1のパワートレインは、燃料電池2および二次電池16を含んでいる。燃料電池車両1は、車両の走行状態、燃料電池2の発電状態、二次電池16の蓄電状態によって各電池の電力を適宜に消費する。二次電池16および燃料電池2は、インバータ18に並列に接続されている。二次電池16が蓄える電力、および燃料電池2が発電する電力は、インバータ18を経てモータ3へ供給される。また、燃料電池車両1は、減速する際、モータ3で回生電力を発生させる。二次電池16は、燃料電池車両1が減速する際にモータ3で発生する回生電力、および燃料電池2が発電する電力を蓄える。
フレーム11は、複数の鋼鉄製中空管を一体に組み合わせたものである。フレーム11は、前端上部に配置されるヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21の中央部から後ろ下がりに傾斜して延びる上部ダウンフレーム22と、ヘッドパイプ21の下方に配置され、後ろ下がりに傾斜して延びる下部ダウンフレーム23と、左右一対の下部フレーム24と、左右一対の上部フレーム25と、ピボット軸26と、上ブリッジフレーム27と、下ブリッジフレーム28と、ガードフレーム29と、搭載機器保護フレーム30と、を備えている。
ヘッドパイプ21は、ステアリング機構7を操舵自在、つまり車両の左右方向へ揺動自在に支持している。
左右一対の下部フレーム24は、下部ダウンフレーム23の左右に配置され、ヘッドパイプ21の下部に接続されている。また、左右一対の下部フレーム24は、ヘッドパイプ21との接続部分から下部ダウンフレーム23に沿って略平行に、かつ後ろ下がりに傾斜して延びる前側傾斜部分と、前側傾斜部分の下端で後方に向かって湾曲する前側湾曲部分と、前側湾曲部分の後端から略水平に車体5の後方へ向かって車体5の中央部分(車両の前後方向で中央部分)に達するまで直線状に延びる直線部分と、を有している。さらに、左右一対の下部フレーム24は、直線部分の後端部から後上方に向けて湾曲する後ろ側湾曲部分と、この後ろ側湾曲部分の上端部から後ろ上がりに傾斜して延びる後側傾斜部分と、後側傾斜部分を上部フレーム25に接続する上下フレーム接合部と、を有している。なお、左右の下部フレーム24の間隔は、左右の上部フレーム25の間隔よりも広い。
左右の下部フレーム24の上部の間には、実質的に車両の左右方向へ直線状に延びるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム31が架設されている。また、左右それぞれの下部フレーム24は、フットレストブラケット32aを備えている。フットレストブラケット32aは、前側湾曲部分の外側に配置されるフットボード32を下方から支持している。搭乗者は、フットボード32に足を置くことができる。
車体5の左側に配置される下部フレーム24は、サイドスタンドブラケット33を備えている。サイドスタンドブラケット33には、燃料電池車両1を左側へ傾けた状態で自立させるサイドスタンド34が設けられている。サイドスタンド34は、起立位置と格納位置との間で揺動可能である。起立位置のサイドスタンド34は、燃料電池車両1を自立させる。格納位置のサイドスタンド34は、走行の妨げとならないよう車体5に添う。
左右一対の上部フレーム25は、車体5の前半部において下部フレーム24の前側傾斜部分の上下方向の中央部に接続されている。左右一対の上部フレーム25は、下部フレーム24の前側傾斜部分との接続部分から車体5の後方に向かって略水平に延びる水平部分と、左右一対の上部フレーム25の水平部分の後端であって、車体5の後半部、かつ後輪8の上方部分において後ろ上がりに大きく傾斜し、車体5の幅方向内側へ湾曲して後輪8の太さ(幅寸法)程度に接近する後端部と、を有している。
ピボット軸26は、車体5の後半部において左右の上部フレーム25の間に架設されている。また、ピボット軸26は、上部フレーム25の下側、かつ上部フレーム25と下部フレーム24との合流部分(上下フレーム接合部)よりも後方であって、上部フレーム25の水平部分と下部フレーム24の後側傾斜部分とに接続されるブラケット26aに配置されている。ブラケット26aは、左右に一対ある。
上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の前端部に架設されている。上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の上部フレーム25を連結している。
下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の前側湾曲部分に架設されている。下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の間を実質的に車両の幅方向へ直線状に延びて、左右の下部フレーム24を連結している。
ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24の後ろ側湾曲部分に架設されている。ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24との接続部分から後下方に延びるとともに、フレーム11の内部空間を拡大するように後ろ下がりのU字形状に延びている。ガードフレーム29には、燃料電池車両1を直立状態で自立させるセンタースタンド35が設けられている。センタースタンド35は、起立位置と格納位置との間で揺動可能である。起立位置のセンタースタンド35は、燃料電池車両1を自立させる。格納位置のセンタースタンド35は、走行の妨げとならないよう車体5に添う。
上部ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21と上ブリッジフレーム27との間に架設されている。
下部ダウンフレーム23の上端部は、左右の下部フレーム24に架設されるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム31の車両の左右方向中央部に接続される上端部と、下ブリッジフレーム28の車両の左右方向中央部に接続される下端部と、を有している。
搭載機器保護フレーム30は、上部フレーム25の後半部の上部に設けられている。搭載機器保護フレーム30は、燃料電池2を燃料電池車両1の車体に支持している。また、搭載機器保護フレーム30は、その一部を上部フレーム25に着脱できる。
シート13は、フレーム11の後半部上方を覆って前後に延びている。シート13はタンデム式であり、搭乗者を着座させる前半部13aと、同乗者を着座させる後半部13bとを一体的に備えている。また、シート13は、前半部13aと後半部13bとの間に傾斜部13cを備えている。
ここで、左右の上部フレーム25および左右の下部フレーム24で囲まれる空間をセンタートンネル領域36と呼び、上部フレーム25の後半部、外装12およびシート13で囲まれる空間を機器搭載領域37と呼び、センタートンネル領域36の後方かつ機器搭載領域37の下方の空間をタイヤハウス領域38と呼ぶ。
センタートンネル領域36は、燃料タンク15を収容している。本実施形態に係るスクータ型の燃料電池車両1では、センタートンネル領域36は、車両の前後方向に沿って搭乗者が足を乗せる左右のフットボード32の間に配置されている。また、センタートンネル領域36は、フットボード32の足載せ領域を左右に分断するようにフットボード32よりも上方に隆起している。換言すると、センタートンネル領域36の左右には、足載せ領域となるフットボード32が配置されている。左右のフットボード32の間には、燃料タンク15が配置されている。
機器搭載領域37には、車体5の前側から順に二次電池16、電力管理装置17、燃料電池2を収容されている。機器搭載領域37の前端部、中央部、後端部、および中央部から後端部に渡る側部は、搭載機器保護フレーム30によって保護されている。
搭載機器保護フレーム30は、機器搭載領域37を囲んで機器搭載領域37に搭載される機器を保護している。
タイヤハウス領域38には後輪8が配置されている。
機器搭載領域37とタイヤハウス領域38との間には、それぞれの領域を分断する隔壁部材としてのリアフェンダ39が設けられている。
外装12は、車体5の前半部を覆うフロントレッグシールドカバー41と、車体5の中央上部に配置されてセンタートンネル領域36などの上部フレーム25の上方を覆うフロントフレームカバー42と、車体5の後半部に配置されて機器搭載領域37などの車体5の側面のうちシート13の下方部分を覆うフレームカバー43と、を備えている。
フレームカバー43は、シート13とともに機器搭載領域37を囲んでいる。機器搭載領域37は、シート13、フレームカバー43およびリアフェンダ39に囲まれる閉鎖的な空間である。フレームカバー43、もしくはリアフェンダ39の適宜の箇所には、通気孔(図示省略)が設けられている。この通気口は、燃料電池2への空気の流れを容易、かつ確実に制御し、また冷却が必要な装置へ冷却風としての空気の流れを容易、かつ確実に制御している。なお、機器搭載領域37は、各カバー(フロントフレームカバー42、フレームカバー43など)の継ぎ目などから空気が入り込むことを許容する。
ステアリング機構7は、車体5の前方に配置されている。ステアリング機構7は、フレーム11のヘッドパイプ21を中心に左右方向へ揺動する。ステアリング機構7は、前輪6の操舵を可能にする。ステアリング機構7は、頂部に設けられるハンドル45と、ハンドル45と前輪6とを連結し、若干後ろに傾斜して上下に延びる左右一対のフロントフォーク46と、を備えている。左右のフロントフォーク46は、弾性的に伸縮自在なテレスコピック構造を備えている。左右のフロントフォーク46の下端部には、前輪6を回転自在に支持する車軸(図示省略)が架設されている。前輪6の上方には、フロントフェンダ47が配置されている。フロントフェンダ47は、左右のフロントフォーク46の間にあって、フロントフォーク46に固定されている。
前輪6は、左右のフロントフォーク46の下端部に架設されている車軸によって回転可能に支えられている。前輪6は、従動輪である。
スイングアーム9は、車体5の左右方向に延びている回転中心としてのピボット軸26によって上下方向へ揺動可能に支えられている。スイングアーム9は、車体5の左右それぞれに配置され、車体の前後方向に延びる一対のアーム部を有している。スイングアーム9は、この一対のアーム部の間に後輪8を回転可能に支えている。フレーム11とスイングアーム9との間には、リアサスペンション48が架設されている。リアサスペンション48の上端部は、上部フレーム25の後端部に揺動可能に接続されている。リアサスペンション48の下端部は、スイングアーム9の後端部に揺動可能に接続されている。リアサスペンション48は、スイングアーム9の揺動を緩衝する。
また、スイングアーム9は、後輪8を回転駆動させるモータ3と、燃料電池2または二次電池16から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3へ供給するインバータ18と、を収容している。
モータ3は、燃料電池2または二次電池16から供給される電力によって後輪8を回転駆動させる。燃料電池車両1は、回転駆動される後輪8によって推進力を得る。モータ3は、スイングアーム9の後部に収容され、後輪8の車軸の同軸上に配置されている。モータ3は、スイングアーム9に一体的に組み付けられてユニットスイング式スイングアームを構成している。
インバータ18は、スイングアーム9の前部に収容され、ピボット軸26とモータ3との間に配置されている。インバータ18は、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換し、その交流電力の周波数を変更してモータ3の回転数を調整する。
後輪8は、モータ3から駆動力が伝達される車軸(図示省略)によって支えられている。後輪8は駆動輪である。
燃料電池2は、燃料と酸化剤とを反応させて発電する。燃料電池2は、燃料として高圧ガス、例えば水素ガスを使用し、酸化剤として空気中の酸素を使用して発電する。燃料電池2は、空気で冷却される空冷式燃料電池システムである。
燃料電池2は、機器搭載領域37の後半側に配置されている。燃料電池2は、シート13の前半部13aと後半部13bとの間の傾斜部から後半部13bの下方に渡って配置されている。車両の側面視において、燃料電池2は、同乗者を着座させるシート13の後半部13bと後輪8やスイングアーム9との間に配置されている。
燃料電池2は、車体5の前後方向に延びる長辺を有する直方体形である。燃料電池2は、吸気口2aが配置される正面を前斜め下方へ向け、排気口2bが配置される背面を後ろ斜め上方へ向ける姿勢で機器搭載領域37に配置されている。換言すると、燃料電池2は、後方側よりも前方側が下方に位置する前傾姿勢でフレーム11に固定されている。燃料電池2の上部は搭載機器保護フレーム30に固定され、燃料電池2の下部は上部フレーム25に固定されている。
燃料電池2は、正面側から背面側へ向かって連結される扁平な複数のモジュールを含んでいる。具体的には、燃料電池2は、正面側から順に積層状態に重ねられて連結されるフィルタ(図示省略)、吸気シャッタ(図示省略)、セルスタック51、ファン(図示省略)、排気シャッタ(図示省略)を有している。燃料電池2の天面には、燃料電池制御装置52が設けられている。
吸気シャッタは、開閉可能な空気の吸気口2aを有している。吸気シャッタは、吸気口2aを開閉してセルスタックへの空気の導入量を制御する一方、吸気口2aを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成する。排気シャッタは、開閉可能な空気の排気口2bを有し、排気口2bを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成する。換言すると、燃料電池2は、正面に開閉可能な吸気口2aを有し、背面に開閉可能な排気口2bを有している。燃料電池2は、吸気口2aおよび排気口2bを閉じて燃料電池2内の空気を循環させる。
セルスタック51は、吸気口2aから吸い込まれる空気に含まれる酸素と燃料タンク15から供給される燃料(水素)とを電気化学反応させて発電し、発電後に湿潤な余剰ガスを生成する。
ファンは、機器搭載領域37内の空気を吸気口2aから燃料電池2内に吸い込むための吸込負圧を発生させる一方で、セルスタックから余剰ガスを吸い出して排気口2bから排気する。ファンが流動させる空気の流れは、セルスタック51で発電に用いられる他に、燃料電池2の冷却に利用される。
燃料電池2の後方には、排気ダクト53が設けられている。燃料電池2のファンは、セルスタック51から余剰ガスを吸い出して排気ダクト53へ排気する。排気ダクト53の前端部は、燃料電池2の箱体(詳細には、排気シャッタの枠体)に気密に接続されている。排気ダクト53は、車体5の後端で後下方に向かって開口される排気口53aと、後上方に向かって開口される排気口53bと、を有している。排気ダクト53は、燃料電池2のファンから吐出される排気(余剰ガス)を、排気口53aへ導いて車体5の後方へ排出する。
排気ダクト53の排気口53aは、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方であって、望ましくは排気ダクト53の後方上端部に配置されている。換言すると、排気口53aの上縁部は、燃料電池2の排気口よりも高い位置に配置されている。排気ダクト53は、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方に配置される排気口53aを有することによって、未反応の水素ガスを含む湿潤な余剰ガスを排気口53aに導いて車体5から確実に排気することができる。
燃料タンク15は高圧圧縮水素貯蔵システムである。燃料タンク15は、圧力容器55と、燃料充填口56を有する燃料充填用継手57と、燃料充填元弁58と、遮断弁(図示省略)とレギュレータ(図示省略)とを一体的に有する燃料供給元弁59と、二次減圧弁(図示省略)と、を備えている。
圧力容器55は、燃料電池2の燃料としての水素ガスを貯蔵するアルミライナ製複合容器である。燃料タンク15は、例えば約70MPaの水素ガスを貯蔵する。圧力容器55は、円筒形状の胴部と、胴部の前後の端面に設けられるドーム状の鏡板と、を有している。圧力容器55は、センタートンネル領域36内に配置されている。圧力容器55は、円筒胴の中心線を車体5の前後方向へ向けている。圧力容器55は、一対の上部フレーム25、一対の下部フレーム24、下ブリッジフレーム28、およびガードフレーム29に周囲を囲まれている。これにより、圧力容器55は、燃料電池車両1の転倒や衝突による負荷に対して堅牢に保護されている。
また、圧力容器55は、車体5の一方側の側部に配置される上部フレーム25、例えば車体5の右側に配置される上部フレーム25と、車体5の他方側の側部に配置される下部フレーム24、例えば車体5の左側に配置される下部フレーム24との間に架設されるクランプバンド61によってセンタートンネル領域36に支持されている。圧力容器55は、右側の上部フレーム25と左側の下部フレーム24との間に架設される下クランプバンド(クランプバンド61の下半部)に載置され、上クランプバンド(クランプバンド61の上半部)で締め付けられ、下クランプバンドと上クランプバンドとで挟持されている。なお、クランプバンド61は、車体5の左側に配置される上部フレーム25と車体5の右側に配置される下部フレーム24との間に架設されていても良い。
燃料充填用継手57は、センタートンネル領域36の外側、詳しくはセンタートンネル領域36の後ろ上方であって、機器搭載領域37の前端部に配置されている。燃料充填用継手57は、二次電池16よりも上方、あるいは真上に配置されている。燃料充填用継手57は、搭載機器保護フレーム30の継手用ブラケット30fに固定されている。燃料充填用継手57は、燃料充填時に設備側の継手を車体の上方、かつ左側から差し込めるよう、車体5の上方、かつやや左側に向かって延びている。燃料充填用継手57は、シート13の前端部に設けられる燃料充填口用リッド62によって覆い隠されている。燃料充填口用リッド62は、ヒンジ機構(図示省略)を介してシート13に揺動可能に支持されている。燃料充填口用リッド62は、揺動することによって開閉される。燃料充填用継手57は、燃料を燃料タンク15に導き入れる燃料充填口56を有している。
燃料充填口56は、燃料充填用継手57の頂部に配置されている。また、燃料充填口56は、車体5の左上方を向いている。燃料タンク15に燃料を充填する際、燃料充填口用リッド62を開放した状態において、燃料充填口56の上方は、雰囲気に開放されている。したがって、高圧ガス(燃料、水素ガス)を燃料タンク15に充填する際、仮に高圧ガス(燃料、水素ガス)が漏洩しても、漏洩燃料は滞留することなく燃料電池車両1の上方へ拡散する。
燃料充填元弁58および燃料供給元弁59は、一体化されてタンクバルブ63に内蔵されている。タンクバルブ63は、圧力容器55の後方側の鏡板の頂部、換言すると圧力容器55の後端部に設けられている。タンクバルブ63は、ガードフレーム29で囲まれた空間に配置されている。燃料供給元弁59は、遮断弁(図示省略)および一次減圧弁(図示省略)を備えている。燃料充填元弁58と燃料供給元弁59の遮断弁とは、電磁弁を用いた開閉弁である。燃料供給元弁59の一次減圧弁と二次減圧弁とは、圧力容器55からの高圧燃料ガスの圧力を順次減圧して調整する。
二次電池16は、箱状のリチウムイオン電池である。二次電池16は、機器搭載領域37の前端部であって、圧力容器55の後半部、つまり円筒胴の後半部、および後方側の鏡板とシート13の前半部13aとの間に配置されている。
なお、燃料電池車両1は、二次電池16の他に、メータ類(図示省略)、ランプ類(図示省略)用の電源として、例えば12V系の電力を供給する第2二次電池(図示省略)を備えている。第2二次電池は、ヘッドパイプ21の周囲、例えば、ヘッドパイプ21の右側の側方に配置されている。
また、仮に燃料充填口56から燃料としての水素ガスが漏洩しても、空気より軽い水素ガスは上昇して、車内に滞留することなく車外に拡散する。また、仮に燃料充填元弁58または燃料供給元弁59から燃料としての水素ガスが漏洩しても、水素ガスはタイヤハウス領域38に向かって移動して、車内に滞留することなく車外に拡散する。
電力管理装置17は、機器搭載領域37内で二次電池16と燃料電池2との間に配置されている。電力管理装置17は、フレーム11に固定されている。なお、電力管理装置17は二次電池16と同じ防水ケース内に配置されていても良い。
燃料電池車両1は、二次電池16、電力管理装置17、および燃料電池2を上述のように配置することによって、電気的な接続関係が隣り合う装置を極力近接する位置に配置することが可能である。これにより、装置間の配線長は短く、配線に係る重量は軽くなる。
車両コントローラ19は、燃料電池車両1内で比較的に高所であるヘッドパイプ21の周囲、例えば、第2二次電池の反対側にあたるヘッドパイプ21の左側の側方に配置されている。
次いで、燃料電池車両1の燃料充填システムについて説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の燃料充填システムのブロック図である。
図4に示すように、本実施形態に係る燃料電池車両1の燃料充填システム69は、水素供給装置が設置されている場所、いわゆる水素ステーションHSSから燃料タンク15に燃料としての水素の充填を制御する。
ここで先ず、水素ステーションHSSは、主に水素タンク201(蓄圧器とも呼ばれる。)と、ディスペンサー202と、を備えている。水素タンク201は、圧縮された高圧の水素ガスを蓄えている。ディスペンサー202は、水素タンク201が蓄える水素ガスの吐出量を制御する。ディスペンサー202は、燃料電池車両1の燃料充填用継手57に着脱可能な継手構造を有する燃料充填用ノズル203と、燃料電池車両1から燃料充填に係わる情報を受信するための受信機204と、を備えている。受信機204は、燃料タンク15の温度や圧力を含む情報を燃料電池車両1から受信する。ディスペンサー202は、受信機204を介して受信する情報に基づいて、燃料タンク15に燃料を安全に充填するための制御(いわゆる充填プロトコル)を行う。
燃料充填システム69は、燃料と空気中の酸素とを反応させて発電する燃料電池2と、燃料を貯蔵する燃料タンク15と、燃料充填用継手57から燃料タンク15に充填される燃料を導く充填系統71と、燃料タンク15から燃料電池2へ燃料を供給する供給系統72と、送信機73と、を備えている。
燃料電池2は、セルスタック51および燃料電池制御装置52を含んでいる。セルスタック51には、セルスタック51の温度を測定する温度センサ75と、セルスタック51の電圧を測定する電圧センサ76と、が設けられている。温度センサ75の測定結果(測定値)、および電圧センサ76の測定結果(測定値)は、燃料電池制御装置52に送信される。燃料電池制御装置52は、車両コントローラ19から燃料電池車両1のメインスイッチ、いわゆるイグニッションキー77の入り切り(ON、OFF)の情報を取得している。
燃料タンク15のタンクバルブ63には、燃料タンク15内の燃料の温度を測定する温度センサ78が設けられている。温度センサ78は、燃料タンク15内のガスの温度を直接的に測定している。なお、温度センサ78は、圧力容器55の表面温度を測定し、燃料タンク15内の燃料の温度を間接的に測定してもよい。温度センサ78の測定結果(測定値)は燃料電池制御装置52に送信される。
充填系統71は、燃料充填用継手57と、燃料タンク15から燃料充填用継手57へ燃料が逆流することを阻止する逆止弁79と、遮断弁としての燃料充填元弁58と、燃料タンク15内の圧力を測定する圧力センサ81と、を備えている。
供給系統72は、遮断弁59aおよび減圧弁59bを含む燃料供給元弁59と、燃料電池2に供給される燃料の圧力を測定する圧力センサ85と、を備えている。圧力センサ85の測定結果(測定値)は、燃料電池制御装置52に送信される。
送信機73は、燃料充填に係わる情報を水素ステーションHSSの受信機204へ送信する。燃料充填に係わる情報には、温度センサ78が測定する燃料タンク15内の燃料の温度の測定値、圧力センサ81が測定する燃料タンク15内の燃料の圧力の測定値、および燃料電池制御装置52による燃料充填の可否判断の結果が含まれている。燃料電池制御装置52による燃料充填の可否判断は、燃料電池2に関する温度センサ75、電圧センサ76、および圧力センサ85の測定値と、燃料タンク15に関する温度センサ78、および圧力センサ81の測定値と、に基づいて行われる。
充填系統71の燃料充填用継手57、および送信機73は、燃料充填口用リッド62によって覆われて保護されている。燃料充填口用リッド62は、燃料の充填を行う際に開放される。燃料充填システム69は、燃料充填口用リッド62の開閉状態を検知する蓋開閉検知スイッチ86を備えている。蓋開閉検知スイッチ86は、燃料充填口用リッド62が開かれたことを検知することによって、充填系統71から燃料タンク15へ燃料を充填するための操作(以下、単に「充填開始操作」と呼ぶ。)を検知している。また、蓋開閉検知スイッチ86は、燃料充填口用リッド62が閉じられたことを検知することによって、燃料の充填終了の操作(以下、単に「充填終了操作」と呼ぶ。)を検知している。
なお、充填開始操作には、蓋開閉検知スイッチ86が検知する燃料充填口用リッド62自体の開放操作の他に、燃料充填口用リッド62を開放するための部品や部材の操作、例えば燃料充填口用リッド62のロック解除操作や、電動式の燃料充填口用リッド62を開放するためのスイッチ操作や、このスイッチ操作によって出力される電気信号や、燃料充填用継手57に燃料充填用ノズル203を接続するための操作がある。これらの操作に応じて、蓋開閉検知スイッチ86は適宜の検知方法、または検知手段に置き換えられる。この適宜の検知方法、または検知手段を充填操作センサ87と呼ぶ。換言すると、蓋開閉検知スイッチ86は、充填操作センサ87の一具体例にあたる。充填操作センサ87は、充填終了操作を検知することもできる。
次いで、燃料充填システム69による燃料充填制御について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の燃料充填制御のフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態に係る燃料電池車両1の燃料電池制御装置52は、燃料を燃料タンク15に充填する際、燃料電池2を運転しておく。
また、燃料電池制御装置52は、燃料電池2が停止している場合、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると燃料電池2を起動させる。
さらに、燃料電池制御装置52は、燃料電池2が既に運転している場合、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると燃料電池2を休止させる。燃料電池制御装置52は、充填操作センサ87が充填開始操作を検知したため燃料電池2を起動した場合にも、燃料電池2を休止させる。燃料電池2は、休止中であっても、発電して電圧を維持する一方、電力の出力を止める。なお、休止中の燃料電池2は電力の出力を止めるが、燃料電池2の状態によっては、少なくとも駆動力を発生するための出力、つまりモータ3への電力の供給を止める。休止中であっても燃料電池2は発電しているため、電力管理装置17は、駆動力を発生するモータ3への電力の供給は止めるが、二次電池16への充電を許容することができる。ただし、休止中、または停止中の燃料電池2が起動を開始した状態で発電に適さない状態の場合は、全ての電力の出力を止める。
さらにまた、燃料電池制御装置52は、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると自己診断を行う。
また、燃料電池制御装置52は、充填操作センサ87が充填終了操作を検知するまで、走行に要する電力の供給を抑制する。つまり、燃料電池制御装置52(または電力管理装置17)は、充填操作センサ87が充填終了操作を検知するまで、燃料電池2の運転を許容する一方、車両の走行を禁止する。
ここで、燃料充填制御について、現に走行中の燃料電池車両1を停止させ、燃料を補給する場合、つまり、未だ燃料電池2が運転状態である走行直後に燃料を燃料タンク15に充填する場合と、駐車中であって燃料電池車両1のイグニッションキー77が切られ、燃料電池2が停止している場合と、に分けて説明する。
先ず、現に走行中の燃料電池車両1を停止させ、未だ燃料電池2が運転状態の燃料電池車両1に対して燃料を燃料タンク15に充填する場合について説明する。
図5に示すように、燃料電池制御装置52は、燃料電池車両1が停車し、メインスイッチが切られる(OFFされる)と(ステップS1)、燃料電池2を後処理モードに遷移させ、燃料電池2の運転を止めるための後処理を開始する(ステップS2)。後処理モードの燃料電池2は、モータ3への電力の供給を禁じ、つまり燃料電池車両1の走行を禁じる。また、後処理モードの燃料電池2は、燃料タンク15への燃料の充填を禁じる。燃料タンク15への燃料充填の禁止は、送信機73を経由して水素ステーションHSSに送信される禁止指令に基づいて、水素ステーションHSSで処理される。また、燃料タンク15への燃料充填の禁止は、燃料充填元弁58を閉じることによって処理されてもよい。
燃料電池制御装置52は、燃料電池2の後処理が終了するまでの間(ステップS3 No)、充填操作センサ87を監視し、充填開始操作が行われたか否かを判断する(ステップS4)。具体的には、燃料電池制御装置52は、燃料電池2の後処理が終了するまでの間(ステップS3 No)、蓋開閉検知スイッチ86を監視し、充填開始操作が行われたか否かを判断する(ステップS4)。
充填開始操作が行われなかった場合(ステップS4 No)、つまり充填操作センサ87が充填開始操作を検知しなかった場合、換言すると蓋開閉検知スイッチ86が燃料充填口用リッド62の開放操作を検知しなかった場合には、燃料電池制御装置52は、イグニッションキー77を監視し、イグニッションキー77が入り操作(ON操作)されたか否かを判断する(ステップS5)。
充填開始操作が行われず(ステップS4 No)、かつイグニッションキー77が入り操作(ON操作)された場合(ステップS5 Yes)には、燃料電池制御装置52は、燃料電池2の後処理を中断し、燃料電池2を後処理モードから走行フェーズに遷移させる(ステップS6)。そして、燃料電池車両1は走行可能になる。
なお、走行フェーズの燃料電池2は、燃料電池車両1が走行可能なように発電している。走行フェーズは、走行起動モード、走行始動待ちモード、走行モード、走行終了モード、および走行異常モードを含んでいる。走行起動モード、走行始動待ちモード、および走行モードで異常が発生すると、燃料電池2は、走行異常モードを経由して走行終了モードに遷移する。
充填開始操作が行われず(ステップS4 No)、かつイグニッションキー77が入り操作(ON操作)されない場合(ステップS5 No)、つまりイグニッションキー77が切り(OFF)のままの場合には、燃料電池制御装置52は、ステップS3に戻る。この場合、燃料電池2は、後処理モードにあり、後処理を継続している。
ステップS4およびステップS5は、燃料電池2の後処理に要する時間よりも短い時間で繰り返される。そして、充填開始操作が行われず(ステップS4 No)、かつイグニッションキー77が入り操作(ON操作)されない(ステップS5 No)まま、燃料電池2の後処理が終了した場合には(ステップS3 Yes)、燃料電池制御装置52は、燃料電池2を停止させる(ステップS7)。
燃料電池2は、停止する際、後処理モードからシステム終了モードに遷移し、システム終了モードを経て停止する。停止した燃料電池2は、フェーズ判定モードにある。フェーズ判定モードの燃料電池2は、イグニッションキー77が入り操作、および充填操作センサ87が充填開始操作を検知したか否かを監視している。
他方、充填開始操作が行われた場合(ステップS4 Yes)、つまり充填操作センサ87が充填開始操作を検知した場合、換言すると蓋開閉検知スイッチ86が燃料充填口用リッド62の開放操作を検知した場合には、燃料電池制御装置52は、燃料電池2を充填フェーズに遷移させる。充填フェーズは、充填起動モード、充填モード、充填終了モード、および充填異常モードを含んでいる。充填フェーズの燃料電池2は、充填起動モードに遷移し、燃料電池2の自己診断を始める(ステップS8)。
自己診断の結果、燃料電池2に異常がない、換言すると自己診断結果が正常な場合には(ステップS9 No)、燃料電池制御装置52は、燃料電池2の後処理を中断し、燃料電池2を充填モードに遷移させ、燃料電池2を休止させる(ステップS10)。つまり、充填モードの燃料電池2は、休止している。
燃料電池制御装置52は、燃料電池2を休止させた後、換言すると燃料電池2を充填モードに遷移させた後、送信機73から水素ステーションHSSの受信機204へ充填許可信号を送信する(ステップS11)。充填許可信号を受信した水素ステーションHSSは、燃料タンク15へ燃料を充填する(ステップS12)。
燃料タンク15に燃料が充填されている最中、燃料電池制御装置52は、燃料電池2に関する温度センサ75、電圧センサ76、および圧力センサ85の測定値と、燃料タンク15に関する温度センサ78、および圧力センサ81の測定値と、に基づいて燃料の充填に異常があるか否かを判断する(ステップS13)。燃料の充填に異常がない場合には(ステップS13 No)、燃料電池制御装置52は、充填操作センサ87を監視し、充填終了操作が行われたか否かを判断する(ステップS14)。燃料電池制御装置52は、充填終了操作が行われるまで、換言すると充填終了操作が行われていない間(ステップS14 No)、ステップS11へ戻って送信機73から水素ステーションHSSの受信機204へ充填許可信号を送信し続ける。
他方、充填終了操作が行われた場合(ステップS14 Yes)、つまり充填操作センサ87が充填終了操作を検知した場合、換言すると蓋開閉検知スイッチ86が燃料充填口用リッド62の閉鎖操作を検知した場合には、燃料電池制御装置52は、充填モードから充填終了モードを経てステップS2へ戻り、燃料電池2の後処理モードへ遷移する(ステップS2)。
また、自己診断(ステップS8)の結果、燃料電池2に異常がある場合(ステップS9 Yes)、または燃料の充填に異常がある場合には(ステップS13 Yes)、燃料電池制御装置52は、充填異常モードに遷移し、燃料供給元弁59の遮断弁59aを閉じ(ステップS15)、燃料電池2への燃料の供給を禁じる。
燃料電池制御装置52は、燃料電池2への燃料の供給を禁じた後、送信機73から水素ステーションHSSの受信機204へ充填禁止信号を送信する(ステップS16)。燃料電池車両1、および水素ステーションHSSの少なくともいずれかは、警告灯(図示省略)を備え、これを点灯させる(ステップS17)。燃料電池車両1が警告灯を備える場合には、警告灯は、ハンドル57の根元に設けられる計器類(図示省略)に含められる。水素ステーションHSSが警告灯を備える場合には、警告灯は、ディスペンサー202の計器類(図示省略)に含められる。
燃料電池制御装置52は、充填終了操作が行われるまで、換言すると充填終了操作が行われていない間(ステップS18 No)、ステップS16へ戻って送信機73から水素ステーションHSSの受信機204へ充填禁止信号を送信し続ける。
他方、充填終了操作が行われた場合(ステップS18 Yes)、つまり充填操作センサ87が充填終了操作を検知した場合、換言すると蓋開閉検知スイッチ86が燃料充填口用リッド62の閉鎖操作を検知した場合には、燃料電池制御装置52は、充填異常モードから後処理モード、およびシステム終了モードを経て燃料電池2を停止させる(ステップS19)。停止した燃料電池2は、フェーズ判定モードに遷移する。
次いで、駐車中であって燃料電池車両1のイグニッションキー77が切られ、燃料電池2が停止している状態で燃料を燃料タンク15に充填する場合について説明する。この場合は、ステップS7で燃料電池2が停止された後、燃料タンク15に燃料が充填される場合に相当する。
図5に示すように、燃料電池制御装置52は、イグニッションキー77が切られ、燃料電池2が停止している最中であっても(ステップS20)、充填操作センサ87を監視し、充填開始操作が行われたか否かを判断する(ステップS21)。具体的には、燃料電池制御装置52は、燃料電池2が停止している最中(ステップS20)、蓋開閉検知スイッチ86を監視し、充填開始操作が行われたか否かを判断する(ステップS21)。
充填開始操作が行われた場合(ステップS21 Yes)、つまり充填操作センサ87が充填開始操作を検知した場合、換言すると蓋開閉検知スイッチ86が燃料充填口用リッド62の開放操作を検知した場合には、燃料電池制御装置52は、充填フェーズの充填起動モードに遷移し、燃料電池2を起動させ(ステップS22)、燃料供給元弁59の遮断弁59aを開き(ステップS23)、燃料電池2への燃料の供給を可能にする。この後、燃料電池制御装置52は、上述のステップS8へ進み、ステップS10で燃料電池2を休止させ、ステップS14を経て走行フェーズ(ステップS6)または燃料電池2の停止(ステップS7)に至る。
なお、燃料電池制御装置52は、イグニッションキー77が入ると(ステップS31)、燃料電池2を起動させ、走行フェーズの走行起動モードに遷移し、燃料電池2を起動させ(ステップS32)、燃料供給元弁59の遮断弁59aを開き(ステップS33)、自己診断を経て燃料電池2を走行始動待ちモードに遷移させる。
本実施形態に係る燃料電池車両1は、燃料を燃料タンク15に充填する際、燃料電池2を運転しておく。そのため、燃料電池車両1は、燃料を充填する前に燃料電池2を停止させる必要がない。つまり、燃料電池車両1は、燃料を充填する前に燃料電池2を停止させるための時間を必要としない。燃料電池車両1は、燃料の充填を早期に開始できる。また、燃料電池車両1は、燃料を充填している最中、燃料電池2の自己診断を行うことができる。燃料電池車両1は、燃料の充填を終了した後、燃料電池2を再起動させる必要が無く、早期に発進できる。さらに、燃料電池車両1は、燃料の充填にともなう燃料電池2の停止と起動の回数を低減させ、セルスタック51の劣化を抑制する。
また、本実施形態に係る燃料電池車両1は、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると燃料電池2を起動させる。そのため、燃料電池車両1は、燃料電池車両1は、燃料を充填している最中、燃料電池2の自己診断を行うことができる。燃料電池車両1は、燃料の充填を終了した後、燃料電池2を再起動させる必要が無く、早期に発進できる。
さらに、本実施形態に係る燃料電池車両1は、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると燃料電池2を休止させる。そのため、燃料電池車両1は、燃料を充填する以前、かつ燃料電池2を休止させる前に燃料電池2の自己診断を行うことができる。自己診断は、走行前に再度行う必要はなく、燃料電池車両1は、燃料の充填を終了した後、走行開始直前の自己診断を省いて、早期に発進できる。
さらにまた、本実施形態に係る燃料電池車両1は、休止中、電圧を維持する一方、電力の出力を止める燃料電池2を備えている。そのため、燃料電池車両1は、セルスタック51を走行のための良好な状態に維持しておくことが可能である。したがって、燃料電池車両1は、燃料の充填を終了した後、早期に発進できる。
また、本実施形態に係る燃料電池車両1は、充填操作センサ87が充填開始操作を検知すると自己診断を行う。そのため、燃料電池車両1は、充填の安全性を向上させる。
さらに、本実施形態に係る燃料電池車両1は、充填操作センサ87が充填終了操作を検知するまで電力の供給を抑制する。そのため、燃料電池車両1は、燃料の充填中に走り始めることがない。したがって、燃料電池車両1は、充填時の安全性を向上させる。
したがって、本発明に係る燃料電池車両1によれば、燃料の補給時間の短縮により利便性が向上され、停止と再起動とを繰り返すことによる燃料電池の劣化が抑制され、および燃料補給にともなう燃料消費が抑制される。
なお、以上説明した燃料充填時の制御は、メインスイッチが燃料電池車両1のキーシリンダに挿入され、かつ切られていることが前提条件である。燃料充填時の制御は、誤操作やいたずらを防止できるとともに、ユーザーの燃料充填の意思を反映させることができる。メインスイッチが切られずに燃料の充填をしようとした場合には、燃料充填時の制御は、燃料充填口用リッド62の開放操作を無効として燃料充填口用リッド62の開放を禁止し、誤操作の防止や注意喚起をすることもできる。さらに、燃料充填時の制御は、燃料充填口用リッド62の開放を禁止せず、メインスイッチが切られずに燃料の充填をしようとした場合にも、充填操作センサ87の検出に連動して燃料電池2を休止状態(充填モード)にしてもよい。この場合、燃料充填の終了後に走行モードに遷移するための条件には、充填終了操作だけでなく別の操作等の条件が設定されて、誤操作の防止を図り安全性を向上させる。