WO2024058264A1 - 鞍乗り型車両 - Google Patents

Abstract

この鞍乗り型車両は、乗員が着座するシート（８）と、前記乗員が把持するハンドル（２）と、前記ハンドル（２）と前記シート（８）との間に配置され、前記乗員が足を載せる足載せ面（９ａ）を形成するフロア部（９）と、車両走行用の駆動力を発生するモータ（３０）と、前記モータ（３０）を駆動する電力を蓄電するバッテリ（１００）と、前記バッテリ（１００）が供給する直流電流を交流に変換して前記モータ（３０）に供給するインバータ（３３）と、を備え、前記インバータ（３３）および前記バッテリ（１００）の少なくとも一方は、前記フロア部（９）の下方に配置されたフロア下電装部品であり、前記フロア下電装部品は、車両下方側に開口部（５３）を向けた凹状構造物（５０）内に配置されている。

Description

鞍乗り型車両

　本発明は、鞍乗り型車両に関する。
　本願は、２０２２年９月１６日に、日本に出願された特願２０２２－１４７７９０号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

　近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもＣＯ２排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
　例えば、ハンドルとシートとの間にフロア部を有するスクータ型の鞍乗り型電動車両において、フロア部のフットボードの下方にＰＣＵ（Power control unit、インバータと制御装置が一体になったもの）を収納したものがある（例えば、特許文献１参照）。

日本国特許第５５９４２２９号公報

　上記従来の構成では、フロア部の上面において上方に開放する凹形状の収納部を形成し、この収納部内にＰＣＵ（電装部品）を収納して、フロアボードで閉塞している。
　ところで、インバータ等の電装部品は、放熱のために走行風を供給可能な構成が望ましい。一方、スクータ型車両のフロア部は地上高が低く、道路の冠水時等にはフロア部まで水没する虞がある。このような点の対策について、上記従来技術には言及されていなかった。

　本発明は、ハンドルとシートとの間にフロア部を有する鞍乗り型車両において、フロア下に配置した電装部品の放熱性を確保するとともに電装部品の浸水を抑制することを目的とする。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。

　上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
　（１）本発明の態様に係る鞍乗り型車両は、乗員が着座するシート（８）と、前記乗員が把持するハンドル（２）と、前記ハンドル（２）と前記シート（８）との間に配置され、前記乗員が足を載せる足載せ面（９ａ）を形成するフロア部（９）と、車両走行用の駆動力を発生するモータ（３０）と、前記モータ（３０）を駆動する電力を蓄電するバッテリ（１００）と、前記バッテリ（１００）が供給する直流電流を交流に変換して前記モータ（３０）に供給するインバータ（３３）と、を備え、前記インバータ（３３）および前記バッテリ（１００）の少なくとも一方は、前記フロア部（９）の下方に配置されたフロア下電装部品であり、前記フロア下電装部品は、車両下方側に開口部（５３）を向けた凹状構造物（５０）内に配置されている。
　本発明の上記（１）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータまたはバッテリといった重量のある基幹電装部品をフロア下に配置することで、車両の低重心化を図るとともに、このフロア下電装部品の周囲を車両下方側に開口する凹状構造物で囲む構成とすることで、フロア下電装部品に走行風を供給可能としながら、車両がフロア部まで水没した場合でも、凹状構造物内に空気溜まりを確保し、フロア下電装部品の浸水を抑えることができる。

　（２）上記（１）に記載の鞍乗り型車両では、前記フロア下電装部品は、素子部品を収容するケース（３２）を備え、前記ケース（３２）は、ケース内外を連通させる呼吸部（３５）を備え、前記凹状構造物（５０）は、前記フロア下電装部品の上方に位置する上壁部（５１）と、前記上壁部（５１）の外周側から車両下方側に延び、前記フロア下電装部品の前後左右を囲う周壁部（５２）と、を備え、前記周壁部（５２）は、前記呼吸部（３５）よりも下方まで延びてもよい。
　本発明の上記（２）に記載の鞍乗り型車両によれば、フロア下電装部品のケースに呼吸部を備えてケース内の呼吸作用を得ながら、凹状構造物におけるフロア下電装部品の周囲を囲う周壁部が呼吸部よりも下方に延びることで、車両がフロア部近傍まで水没した場合でも、少なくとも呼吸部の浸水を抑えて空気溜まりを確保し、フロア下電装部品のケース内への水の浸入を抑えることができる。

　（３）上記（１）に記載の鞍乗り型車両では、前記凹状構造物（５０）の周壁部（５２）は、車両後方側の後壁部（５２ｂ）の下端（ｔ２）が、他の壁部（５２ａ）の下端（ｔ１）よりも下方にあってもよい。
　本発明の上記（３）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータ側端子の周辺は、車両下方側に長い後壁部によって異物等の接触から保護しやすくしながら、他の壁部は比較的短くすることで、フロア下電装部品に走行風が当たりやすくし、フロア下電装部品の放熱性を向上させることができる。

　（４）上記（１）から（３）の何れか一項に記載の鞍乗り型車両では、前記フロア下電装部品は、前記インバータ（３３）であり、前記モータ（３０）及び前記バッテリ（１００）は、前記インバータ（３３）よりも車両後方側に配置され、前記インバータ（３３）は、前記車両後方側にインバータ側端子（３１）を備え、前記インバータ側端子（３１）には、前記モータ（３０）及び前記バッテリ（１００）と前記インバータ（３３）とを接続する配線（６０，６１）が接続されていてもよい。
　本発明の上記（４）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータの車両後方側（モータおよびバッテリに近い側）にインバータ側端子を備えることで、モータ及びバッテリとインバータとを接続する給電線等の配線の長さを短縮し、コストおよび重量を抑えることができる。

　（５）上記（４）に記載の鞍乗り型車両では、前記インバータ（３３）は、後部が前部よりも上方側に位置するように傾斜して配置されてもよい。
　本発明の上記（５）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータの車両後方側に配置されたインバータ側端子が高い位置に配置されるので、配線の接続作業をし易くし、かつ車両前方および下方からの飛び石等がインバータ側端子に接触することを抑えることができる。

　（６）上記（４）に記載の鞍乗り型車両では、前記インバータ（３３）は、前記車両下方側に放熱部（３４ａ）を有するヒートシンク（３４）を備えてもよい。
　本発明の上記（６）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータの車両下方側は凹状構造物の開口部に臨むので、この部位にヒートシンクの放熱部を配置することで、インバータの放熱を走行風によって良好に行うことができる。

　（７）上記（４）に記載の鞍乗り型車両では、前記インバータ（３３）は、左右一対の車体フレーム部材（１４）の間に配置されており、前記凹状構造物（５０）は、前記車体フレーム部材（１４）に固定されてもよい。
　本発明の上記（７）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータを左右一対の車体フレーム部材で保護しながら、これら左右一対の車体フレーム部材に簡易に支持することができる。

　（８）上記（４）に記載の鞍乗り型車両は、前記インバータ（３３）を制御する制御装置（３２２）を、更に備え、前記インバータ（３３）は、前記制御装置（３２２）と一体のユニット（３２０）として構成されてもよい。
　本発明の上記（８）に記載の鞍乗り型車両によれば、インバータと制御装置とを一体にユニット化することで、部品配置スペースの抑制および支持構造の簡素化を図ることかできる。

　本発明の態様によれば、ハンドルとシートとの間にフロア部を有する鞍乗り型車両において、フロア下に配置した電装部品の放熱性を確保するとともに電装部品の浸水を抑制することができる。

本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。 上記自動二輪車のフロア部のＰＣＵの配置を示す一部断面を含む左側面図である。 上記ＰＣＵ周辺を左上後方から見た一部断面を含む斜視図である。 図３を後方側から見た後面図である。 上記自動二輪車の駆動システムを示すブロック図である。

　以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印ＦＲ、車両左方を示す矢印ＬＨ、車両上方を示す矢印ＵＰ、車体左右中心を示す線ＣＬが示されている。

＜車両全体＞
　図１には、鞍乗り型電動車両の一例として、乗員（運転者）が足を載せるフロア部（低床部）９を有するスクータ型の自動二輪車１が示されている。自動二輪車１は、操向輪である前輪３と、駆動輪である後輪４と、を備えている。前輪３は、フロントフォーク６に支持され、バーハンドル（操向ハンドル）２によって操向可能である。図中符号２ａはバーハンドル２の左右両側のグリップ部、符号２ｂは左右グリップ部２ａを除いてバーハンドル２の周囲を覆うハンドルカバーを示している。

　後輪４は、スイングアーム２０の後端部に支持され、電気モータ３０によって駆動可能である。スイングアーム２０の前端部は、車体フレーム１１を含む車体本体１１Ａに連結されている。実施形態の車体本体１１Ａは、ステアリング系部品５を支持する車体フレーム１１の他、車体フレーム１１に固定的に支持された他部品を含む。実施形態の車体本体１１Ａは、車体フレーム１１と、電気モータ３０を含む駆動ユニット３０Ａと、を含む。

　駆動ユニット３０Ａは、車体フレーム１１に固定的に支持されている。上記「固定的に支持」とは、支持状態で不動であること（位置が一意的に定められること）であり、実質的な「固定」であるが、バネやゴム等の弾性部材を介して変位可能な支持（ラバーマウント等）であっても、弾性力によって元の位置に戻る構成であれば「固定的に支持」に含むものとする。

　バーハンドル２、フロントフォーク６及び前輪３を含むステアリング系部品５は、車体フレーム１１の前端部に操向可能に支持されている。スイングアーム２０および後輪４は、車体フレーム１１の下部に固定的に支持された駆動ユニット３０Ａに上下揺動可能に支持されている。車体フレーム１１の周囲は、車体カバー２５によって覆われている。

　自動二輪車１は、シート８に着座した運転者が足を載せる足載せ面を形成するフロア部９と、フロア部９の前方に連なるフロントボディＦＢと、フロア部９の後方に連なるリヤボディＲＢと、を備えている。フロア部９の上方には、乗員が車体を跨ぎやすくするための跨ぎ空間Ｋ１が形成されている。

　リヤボディＲＢ上には、乗員が着座するシート８が支持されている。シート８は、前端部下側が、車幅方向（左右方向）に沿うヒンジ軸８ａを介して車体に連結されている。シート８は、上記ヒンジ軸８ａを中心に上下に回動することで、リヤボディＲＢの上部を開閉する。シート８が座面を略水平にしてリヤボディＲＢの上部を閉塞した閉状態（図１参照）になると、乗員がシート８に着座可能となり、かつシート８下方のバッテリ収容部が閉じられる。この状態で、シート８は施錠可能である。シート８がヒンジ軸８ａ回りに回動し、座面を上方に起立させてリヤボディＲＢの上部を開放した開状態になると、乗員がシート８に着座不能となり、かつシート８下方のバッテリ収容部が開いてバッテリ１００を着脱可能となる。

　車体フレーム１１は、複数種の鋼材を溶接等により一体に接合して形成されている。車体フレーム１１は、前端部に位置するヘッドパイプ１２と、ヘッドパイプ１２から下方へ延びるダウンフレーム１３と、ダウンフレーム１３の下部から左右に分岐して後方へ延びる左右一対のロアフレーム１４と、左右ロアフレーム１４の後部から上後方へ延びる左右一対のリヤフレーム１５と、を備えている。左右ロアフレーム１４の間に後述するＰＣＵ３２０が配置されている。

　車体フレーム１１の周囲は、車体カバー２５で覆われている。車体カバー２５は、車体フレーム１１の前部を前方から覆うフロントカバー２５ａと、車体フレーム１１の前部を後方から覆うインナーカバー２５ｂと、車体フレーム１１の下部を上方から覆うフロアカバー２５ｃと、車体フレーム１１の後部を前方から覆うリヤセンターカバー２５ｄと、車体フレーム１１の後部を左右側方から覆う左右一対のリヤサイドカバー２５ｅと、を備えている。

　フロントカバー２５ａおよびインナーカバー２５ｂは、フロントボディＦＢの外面を形成するフロントボディカバー２５ｆを構成している。フロントボディカバー２５ｆは、運転者の脚部の前方を覆うレッグシールドを兼ねている。フロアカバー２５ｃの上面部は、フロアステップ９ａを構成している。フロアステップ９ａは、例えば車幅方向の全幅に渡って平坦な上面（足載せ面）を形成している。フロアステップ９ａは、車幅方向内側で上方に隆起するセンタートンネルを備えてもよい。リヤセンターカバー２５ｄおよび左右リヤサイドカバー２５ｅは、リヤボディＲＢの外面を形成するリヤボディカバー２５ｇを構成している。車体カバー２５は、ハンドルカバー２ｂを除き、車体本体１１Ａに固定的に支持されている。

＜駆動ユニット＞
　駆動ユニット３０Ａは、自動二輪車１の走行用の駆動力を発生する電気モータ３０と、電気モータ３０の駆動力を減速する減速機構３７と、電気モータ３０および減速機構３７を収容するユニットケース４０と、を備えている。

　電気モータ３０は、バッテリ１００の電力により駆動する。電気モータ３０は、駆動軸を車幅方向に沿わせて配置されている。電気モータ３０は、駆動軸と一体回転するロータと、ロータの外周を囲うとともにユニットケース４０に固定されるステータと、を備えている（何れも不図示）。電気モータ３０は、例えばＶＶＶＦ（variable voltage variable frequency）制御による可変速駆動がなされる。電気モータ３０は、無段変速機を有する如く変速制御されるが、これに限らない。電気モータ３０は、有段変速機を有する如く変速制御されてもよい。

　減速機構３７は、電気モータ３０の駆動軸に一体回転可能に設けられる小径ギヤと、小径ギヤに噛み合う大径ギヤと、を備えている（何れも不図示）。大径ギヤは、モータ駆動軸の後方でモータ駆動軸と平行に配置された出力軸に一体回転可能に設けられる。出力軸の軸方向一端部（例えば左端部）は、ユニットケース４０の外側に突出し、この突出部分と後輪４とが、例えば無端状のベルト又はチェーンを用いた伝動装置を介して動力伝達可能に連結される。

　電気モータ３０が発生する駆動力は、スイングアーム２０に支持された駆動輪（後輪４）に伝達されて自動二輪車１を走行させる、例えば、スイングアーム２０の後端部には、フェンダ支持アーム２６を介してリヤフェンダ２７が支持されている。例えば、スイングアーム２０の後端部には、リヤクッション２８の下端部が連結されている。スイングアーム２０およびリヤクッション２８を含んで、後輪４を支持する懸架装置（リヤサスペンション）が構成されている。

　ユニットケース４０は、例えばアルミニウム合金製の構造体であり、車体フレーム１１に対する複数の固定部４５ａ，４５ｂ，４５ｃを備えている。複数の固定部４５ａ，４５ｂ，４５ｃは、例えばケース前端部に位置する第一固定部４５ａと、ケース後端部の上下に位置する第二および第三固定部４５ｂ，４５ｃと、を備えている。

＜バッテリ＞
　バッテリ１００は、シート８の下方に搭載されている。バッテリ１００は、平面視でシート８と重なるように配置されている。バッテリ１００は、複数（例えば前後二つ）の単位バッテリ１０１，１０２を備えている。複数の単位バッテリ１０１，１０２は、互いに同一構成とされている。以下、各単位バッテリ１０１，１０２をそれぞれ前バッテリ１０１、後バッテリ１０２という。

　前後バッテリ１０１，１０２は、それぞれ断面矩形状（例えば略正方形状）をなして長手方向に延びる角柱状（直方体状）をなしている。前後バッテリ１０１，１０２は、それぞれ断面形状の前後辺を左右方向に沿わせて配置されている。前後バッテリ１０１，１０２は、それぞれ長手方向を上方に位置するほど後方に位置するように傾斜させた起立姿勢で配置されている。前後バッテリ１０１，１０２は、互いに平行に傾斜し、前後面間に一定間隔を空けて配置されている。

　バッテリ１００は、前後バッテリ１０１，１０２を直列に結線することで、所定の高電圧（４８～９６Ｖ）を発生させる。前後バッテリ１０１，１０２は、それぞれ充放電可能なエネルギーストレージとして、例えばリチウムイオンバッテリで構成されている。

　図４を併せて参照し、前後バッテリ１０１，１０２の正負極からは、それぞれバッテリケーブル６１が延びている。各バッテリケーブル６１は、ジャンクションボックス（分配器）３２３およびコンタクタ（電磁開閉器）３２４を介して、ＰＤＵ（Power Driver Unit）３２１に接続されている。ＰＤＵ３２１からは三相ケーブル６０が延び、この三相ケーブル６０が電気モータ３０に接続されている。

　前後バッテリ１０１，１０２は、車体に対して着脱可能なモバイルバッテリである。前後バッテリ１０１，１０２は、例えば車体から取り外した状態で、あるいは車体に搭載された状態で、車外の充電器３２５を用いて充電可能である。前後バッテリ１０１，１０２は、モバイルバッテリとして外部機器の電源として利用する等、単独で用いることが可能である。

　バッテリ１００の下方には、駆動ユニット３０Ａが配置されている。バッテリ１００は、少なくとも一部が平面視で駆動ユニット３０Ａと重なるように配置されている。前バッテリ１０１は、概ね全体が駆動ユニット３０Ａの前後幅内に収まるように配置され、後バッテリ１０２は、前部が前バッテリ１０１および駆動ユニット３０Ａと前後方向位置を重ねるように配置されている。図示はしないが、前後バッテリ１０１，１０２および駆動ユニット３０Ａは、互いに車幅方向位置を重ねるように配置されている。前後バッテリ１０１，１０２および駆動ユニット３０Ａは、それぞれ平面視で車両左右中央を左右に跨いで配置されている。

＜駆動システム＞
　図５に示すように、ＰＤＵ（Power Driver Unit）３２１およびＥＣＵ（Electric Control Unit）３２２は、一体の制御ユニットであるＰＣＵ（Power control unit）３２０を構成している。ＰＤＵ３２１は、バッテリ１００が供給する直流電流を交流に変換して電気モータ３０に供給するインバータ３３を備えている。ＰＤＵ３２１は、電気モータ３０のステータ巻線に対する通電を制御する。電気モータ３０は、ＰＤＵ３２１による制御に応じて力行運転を行い、自動二輪車１を走行させる。ＰＤＵ３２１の作動はＥＣＵ３２２に制御されている。

　バッテリ１００からの電力は、コンタクタ３２４を介して、モータドライバたるＰＤＵ３２１に供給される。バッテリ１００からの電力は、ＰＤＵ３２１にて直流から三相交流に変換された後、三相交流モータである電気モータ３０に供給される。
　バッテリ１００からの出力電圧は、ＤＣ－ＤＣコンバータ（電装品、ダウンレギュレータ）３２６を介して降圧され、１２Ｖのサブバッテリ３２７の充電に供される。サブバッテリ３２７は、灯火器等の一般電装部品、メーター、スマートユニット及びＥＣＵ３２２等の制御系部品に電力を供給する。サブバッテリ３２７を搭載することで、バッテリ１００の取り外し時にも各種電磁ロック等を操作可能となる。

　前後バッテリ１０１，１０２の各々は、充放電状況や温度等を監視するＢＭＵ（Battery Managing Unit）１０１ａ，１０２ａを備えている。各ＢＭＵ１０１ａ，１０２ａが監視した情報は、前後バッテリ１０１，１０２を車体に搭載した際にＥＣＵ３２２に共有される。ＥＣＵ３２２には、アクセルセンサ３２９からの出力要求情報が入力される。ＥＣＵ３２２は、入力された出力要求情報に基づき、ＰＤＵ３２１を介して電気モータ３０を駆動制御する。

　例えば、ＥＣＵ３２２は、バッテリ１００の状態に応じて、バッテリ１００の充放電を規制する。例えば、ＥＣＵ３２２は、コンタクタ３２４等を制御することにより、バッテリ１００に対する電力の供給とバッテリ１００からの放電とを切り替える。

＜ＰＣＵ配置＞
　図１～図４を参照し、ＰＣＵ３２０は、上下幅を抑えた偏平の直方体状の外形を有している。ＰＣＵ３２０は、フロア部９の内側に配置されている。ＰＣＵ３２０は、左右ロアフレーム１４の間に配置されている。ＰＣＵ３２０は、全体が左右ロアフレーム１４の下端よりも上方に配置されており、地上面との接触が抑えられる。ＰＣＵ３２０は、後部が前部よりも上側に位置するように車両側面視で傾斜して配置されている。ＰＣＵ３２０の後部には、インバータ側端子台３１が配置されており、このインバータ側端子台３１の地上高を高くすることで、インバータ側端子台３１に路面からの外乱が至り難くし、かつインバータ側端子台３１への結線作業をしやすくしている。インバータ側端子台３１には、三相ケーブル６０が接続されるとともに、前後バッテリケース１０３のケース側接続端子１０７から延びてケース下突出部１２２の下方に導出された正負極のバッテリケーブル６１が接続される。ＰＣＵ３２０の例えば右側面には、ＥＣＵ３２２に接続される制御系配線６７がコネクタ６７ａを介して接続されている。

　ＰＣＵ３２０の後方には、駆動ユニット３０Ａが配置されている。駆動ユニット３０Ａは、下部がフロア部９と上下方向位置を重ねるように配置され、上部がフロア部９よりも上方に位置するように配置されている。ＰＣＵ３２０は、全体が駆動ユニット３０Ａの上下幅内に収まるように配置されている。駆動ユニット３０Ａの下端は、ＰＣＵ３２０の下端よりも下方に位置するが、左右ロアフレーム１４の下端よりは上方に位置しており、左右ロアフレーム１４の下端よりも下方に張り出すことはない。

　図示はしないが、ＰＣＵ３２０および駆動ユニット３０Ａは、互いに車幅方向位置を重ねるように配置されている。ＰＣＵ３２０および駆動ユニット３０Ａは、それぞれ平面視で車両左右中央を左右に跨いで配置されている。

　ＰＣＵ３２０は、車両前後方向における前後輪３，４間の中央位置ＣＰよりも前方に配置されている。駆動ユニット３０Ａは、前後輪３，４間の中央位置ＣＰよりも後方に配置されている。これにより、車両前後方向における制御系部品の重量バランスが良好になる。ＰＣＵ３２０および駆動ユニット３０Ａをリヤサスペンションのバネ上に配置することで、例えばＰＣＵ３２０および駆動ユニット３０Ａの少なくとも一方をリヤサスペンションのバネ下に配置する場合に比べて、バネ下重量を軽減して路面追従性を向上させる。

　ＰＣＵ３２０は、例えばアルミニウム合金製の電装ケース３２を備えている。電装ケース３２の内部空間には、ブリッジ回路及び平滑コンデンサ等を具備するインバータ３３が収容されている。ブリッジ回路及び平滑コンデンサは、トランジスタ等のスイッチング素子を複数用いて構成されている。電装ケース３２の下部はヒートシンク３４とされ、下方に向けて複数の放熱フィン３４ａを突出させている。電装ケース３２の上面部には、電装ケース３２内外を連通させる呼吸部（ベントプラグ、呼吸孔形成部）３５が備えられている。呼吸部３５は、例えばラビリンス構造を有して水、異物の浸入を抑えているが、逆止弁、防水透湿シート等を配置して水等の浸入を阻止してもよい。フロア下電装部品の電装ケース３２内は温度変化が大きく結露が生じやすい環境であるため、呼吸部３５を設けて湿度を調節可能としている。

＜フロア下ケース＞
　図２～図４を参照し、ＰＣＵ３２０は、車両下方に開口部５３を向けて配置されたフロア下ケース（凹状構造物）５０内に収容されている。フロア下ケース５０は、例えば合成樹脂製の一体成型品であり、ＰＣＵ３２０の上方に位置する平面視矩形状の上壁部５１と、上壁部５１の外周四辺からそれぞれ下方に延びてＰＣＵ３２０の前後左右を囲う周壁部５２と、を備えている。周壁部５２は、ＰＣＵ３２０の前後左右にそれぞれ配置される前壁部５２ａ、後壁部５２ｂならびに左右側壁部５２ｃを備えている。上壁部５１の外周縁と周壁部５２の上縁とは、相互に一体化されて連続している。周縁部の各壁部も、相互に一体化されて連続している。フロア下ケース５０は、下方に臨む開口部５３を除いて閉塞（密閉）された収容空間Ｋ２を形成している。したがって、自動二輪車１がフロア部９まで水没したとしても、フロア下ケース５０内には、周壁部５２の下端よりも上方に空気溜まりが形成され、ＰＣＵ３２０への被水が抑えられる。図２中符号Ｗ１は水没時の水面を示す。

　周壁部５２は、部位によって下端高さ（地上面から下端までの鉛直方向高さ）が異なる。周壁部５２の最も高い下端高さは、前壁部５２ａの下端ｔ１の高さＺ１であり、周壁部５２の最も低い下端高さは、後壁部５２ｂの下端ｔ２の高さＺ２である。前壁部５２ａの下端高さＺ１を高くする（前壁部５２ａを短くする）ことで、フロア下ケース５０内に走行風を導入しやすくしている。一方、前壁部５２ａの下端高さＺ１は、ＰＣＵ３２０の呼吸部３５の地上面からの鉛直方向高さＺ３よりも低い。したがって、自動二輪車１がフロア部９まで水没したとしても、呼吸部３５の水没が抑えられ、ＰＣＵ３２０の電装ケース３２内への浸水（電装ケース３２内の電装部品への被水）が抑えられる。

　フロア下ケース５０は、下面部を開口部５３とすることで、電装ケース３２内のＰＣＵ３２０に走行風を取り込み可能としている。一方、フロア下ケース５０が下方へ開放されることで、ＰＣＵ３２０への外乱の影響が懸念される。特に、車両整備時等に作業者の手指や工具がインバータ側端子台３１周辺に入り込むことは好ましくない。このため、インバータ側端子台３１に別途カバーを設けることが考えられるが、実施形態では、フロア下ケース５０におけるインバータ側端子台３１に近い後壁部５２ｂの下端高さＺ２を低くする（後壁部５２ｂを長くする）ことで、インバータ側端子台３１周辺に手指等が入り難くし、その結果、別途カバーを設けることを不要にしている。

　後壁部５２ｂは、電装ケース３２内の走行風の流れを塞がない程度に下方に延びるが、後壁部５２ｂに走行風を流すための孔や切り欠きを設けてもよい。後壁部５２ｂは、周壁部５２の車両後方側の壁部であり、左右側壁部５２ｃの後端の間に渡る壁部である。後壁部５２ｂは、平面視での法線方向が前後方向を向くが、段差等により部分的に左右方向を向くこともある。後壁部５２ｂが湾曲する場合、例えば平面視での法線方向が前後方向に対して４５度程度までの範囲を後壁部５２ｂとする。

　図３、図４を参照し、フロア下ケース５０は、左右ロアフレーム１４に固定的に支持されている。図の例では、フロア下ケース５０は、アンダーカバー５５を介して左右ロアフレーム１４に支持されている。アンダーカバー５５は、ＰＣＵ３２０を下方から覆うトレー状のカバーであり、例えば合成樹脂製の一体成型品である。アンダーカバー５５は、左右側部に左右ロアフレーム１４の外周面に沿うように湾曲した湾曲部５５ａを備え、この左右湾曲部５５ａが左右ロアフレーム１４に上方から載置された状態で、左右ロアフレーム１４に固定的に支持されている。アンダーカバー５５は、走行風を流すための導風部および排風部を備えている。

　フロア下ケース５０の左右側壁部５２ｃの下端部には、左右方向外側に屈曲して延びるフランジ５２ｄが形成されている。このフランジ５２ｄがアンダーカバー５５の左右側部に上方から当接した状態で、フロア下ケース５０がアンダーカバー５５に固定され、かつアンダーカバー５５を介してフロア下ケース５０が左右ロアフレーム１４に固定されている。

　フロア下ケース５０の内側には、ＰＣＵ３２０を左右ロアフレーム１４に支持するための支持フレーム５６が設けられている。支持フレーム５６は、例えば鋼板製の一体成型品であり、ＰＣＵ３２０の上方に位置する平面視矩形状の上壁部５６ａと、上壁部５６ａの左右二辺からそれぞれ下方に屈曲して延びてＰＣＵ３２０の左右に配置される左右側壁部５６ｂと、左右側壁部５６ｂの下端から左右方向外側に屈曲して延びる左右フランジ５６ｃと、を備えている。

　左右フランジ５６ｃは、左右ロアフレーム１４の上面側に固定された台座１４ａに上方から当接した状態で、ボルト締結等によって左右フランジ５６ｃひいては支持フレーム５６が左右ロアフレーム１４に固定される。支持フレーム５６の上壁部５６ａには、ＰＣＵ３２０の電装ケース３２に備える締結ボス３６が下方から当接し、ボルト締結によって固定される。ＰＣＵ３２０は、支持フレーム５６の上壁部５６ａに、上方から吊り下げられた状態で固定的に支持されている。

　以上説明したように、上記実施形態の自動二輪車１は、乗員が着座するシート８と、乗員が把持するバーハンドル２と、上記バーハンドル２とシート８との間に配置され、乗員が足を載せる足載せ面（フロアステップ９ａ）を形成するフロア部９と、車両走行用の駆動力を発生する電気モータ３０と、上記電気モータ３０を駆動する電力を蓄電するバッテリ１００と、上記バッテリ１００が供給する直流電流を交流に変換して上記電気モータ３０に供給するインバータ３３（ＰＣＵ３２０）と、を備え、上記インバータ３３は、上記フロアステップ９ａの下方に配置され、上記インバータ３３（ＰＣＵ３２０）は、車両下方側に開口部５３を向けたフロア下ケース５０内に配置されている。
　この構成によれば、インバータ３３といった重量のある基幹電装部品をフロア下に配置することで、車両の低重心化を図るとともに、このフロア下電装部品の周囲を車両下方側に開口するフロア下ケース５０で囲む構成とすることで、フロア下電装部品に走行風を供給可能としながら、車両がフロア部９まで水没した場合でも、フロア下ケース５０内に空気溜まりを確保し、フロア下電装部品の浸水を抑えることができる。

　上記自動二輪車１において、上記インバータ３３（ＰＣＵ３２０）は、素子部品を収容する電装ケース３２を備え、上記電装ケース３２は、上記電装ケース３２の内部と外部とを連通させる呼吸部３５を備え、上記フロア下ケース５０は、上記インバータ３３（ＰＣＵ３２０）の上方に位置する上壁部５１と、上記上壁部５１の外周側から車両下方側に延び、上記フロア下電装部品の前後左右を囲う周壁部５２と、を備え、上記周壁部５２は、上記呼吸部３５よりも下方まで延びている。
　この構成によれば、フロア下電装部品の電装ケース３２に呼吸部３５を備えて電装ケース３２内の呼吸作用を得ながら、フロア下ケース５０におけるフロア下電装部品の周囲を囲う周壁部５２が呼吸部３５よりも下方に延びることで、車両がフロア部９近傍まで水没した場合でも、少なくとも呼吸部３５の浸水を抑えて空気溜まりを確保し、フロア下電装部品の電装ケース３２内への水の浸入を抑えることができる。

　上記自動二輪車１において、上記電気モータ３０及びバッテリ１００は、上記インバータ３３（ＰＣＵ３２０）よりも車両後方側に配置され、上記インバータ３３（ＰＣＵ３２０）は、車両後方側にインバータ側端子台３１を備え、上記インバータ側端子台３１には、上記電気モータ３０及びバッテリ１００と上記インバータ３３とを接続する配線（三相ケーブル６０、バッテリケーブル６１）が接続されている。
　この構成によれば、インバータ３３の車両後方側（電気モータ３０およびバッテリ１００に近い側）にインバータ側端子台３１を備えることで、電気モータ３０及びバッテリ１００とインバータ３３とを接続する給電線等の配線の長さを短縮し、コストおよび重量を抑えることができる。

　上記自動二輪車１において、上記フロア下ケース５０の周壁部５２は、車両後方側の後壁部５２ｂの下端ｔ２が、他の壁部（特に前壁部５２ａ）の下端ｔ１よりも車両下方側にある。
　この構成によれば、インバータ側端子台３１の周辺は、車両下方側に長い後壁部５２ｂによって異物等の接触から保護しやすくしながら、他の壁部は比較的短くすることで、フロア下電装部品に走行風が当たりやすくし、フロア下電装部品の放熱性を向上させることができる。

　上記自動二輪車１において、上記インバータ３３は、後部が前部よりも上方側に位置するように傾斜して配置されている。
　この構成によれば、インバータ３３の車両後方側に配置されたインバータ側端子台３１が高い位置に配置されるので、配線の接続作業をし易くし、かつ車両前方および下方からの飛び石等がインバータ側端子台３１に接触することを抑えることができる。

　上記自動二輪車１において、上記インバータ３３は、車両下方側に放熱フィン３４ａを有するヒートシンク３４を備えている。
　この構成によれば、インバータ３３の車両下方側はフロア下ケース５０の開口部５３に臨むので、この部位にヒートシンク３４の放熱フィン３４ａを配置することで、インバータ３３の放熱を走行風によって良好に行うことができる。

　上記自動二輪車１において、上記インバータ３３は、左右一対の車体フレーム部材（ロアフレーム１４）の間に配置されており、上記フロア下ケース５０は、上記車体フレーム部材に固定的に支持されている。
　この構成によれば、インバータ３３を左右一対の車体フレーム部材で保護しながら、これら左右一対の車体フレーム部材に簡易に支持することができる。

　上記自動二輪車１において、上記インバータ３３を制御する制御装置（ＥＣＵ３２２）を備え、上記インバータ３３は、上記制御装置と一体のユニット（ＰＣＵ３２０）として構成されている。
　この構成によれば、インバータ３３と制御装置とを一体にユニット化することで、部品配置スペースの抑制および支持構造の簡素化を図ることかできる。

　本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、フロア部の下方に配置されたフロア下電装部品としてＰＣＵを挙げたが、これに限らない。例えばフロア下電装部品は、バッテリであってもよく、あるいはＰＣＵから制御装置（ＥＣＵ）を分離させたＰＤＵ（少なくともインバータを備えるモータドライバ）であってもよく、さらにはＰＣＵおよびバッテリの少なくとも一部を備える構成であってもよい。複数のバッテリでなく単一のバッテリを備える構成であってもよい。

　本発明は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。上記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車（原動機付自転車を含む）のみならず、三輪（前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む）又は四輪（四輪バギー等）の車両も含まれる。
　上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

　１　自動二輪車（鞍乗り型車両）
　２　バーハンドル（ハンドル）
　８　シート
　９　フロア部
　９ａ　フロアステップ（足載せ面）
　１４　ロアフレーム（車体フレーム部材）
　３０　電気モータ（モータ）
　３１　インバータ側端子台（インバータ側端子）
　３２　電装ケース（ケース）
　３３　インバータ
　３４　ヒートシンク
　３４ａ　放熱フィン
　３５　呼吸部
　５０　フロア下ケース（凹状構造物）
　５１　上壁部
　５２　周壁部
　５２ａ　前壁部（他の壁部）
　ｔ１　下端
　５２ｂ　後壁部
　ｔ２　下端
　６０　三相ケーブル（配線）
　６１　バッテリケーブル（配線）
　１００　バッテリ
　１０１　前バッテリ
　１０２　後バッテリ
　１０３　バッテリケース
　３２０　ＰＣＵ（一体のユニット）
　３２２　ＥＣＵ（制御装置）

Claims (8)

1. 　乗員が着座するシート（８）と、
   　前記乗員が把持するハンドル（２）と、
   　前記ハンドル（２）と前記シート（８）との間に配置され、前記乗員が足を載せる足載せ面（９ａ）を形成するフロア部（９）と、
   　車両走行用の駆動力を発生するモータ（３０）と、
   　前記モータ（３０）を駆動する電力を蓄電するバッテリ（１００）と、
   　前記バッテリ（１００）が供給する直流電流を交流に変換して前記モータ（３０）に供給するインバータ（３３）と、
   を備え、
   　前記インバータ（３３）および前記バッテリ（１００）の少なくとも一方は、前記フロア部（９）の下方に配置されたフロア下電装部品であり、
   　前記フロア下電装部品は、車両下方側に開口部（５３）を向けた凹状構造物（５０）内に配置されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
2. 　前記フロア下電装部品は、素子部品を収容するケース（３２）を備え、
   　前記ケース（３２）は、ケース内外を連通させる呼吸部（３５）を備え、
   　前記凹状構造物（５０）は、前記フロア下電装部品の上方に位置する上壁部（５１）と、前記上壁部（５１）の外周側から車両下方側に延び、前記フロア下電装部品の前後左右を囲う周壁部（５２）と、を備え、
   　前記周壁部（５２）は、前記呼吸部（３５）よりも下方まで延びていることを特徴とする請求項１に記載の鞍乗り型車両。
3. 　前記凹状構造物（５０）の周壁部（５２）は、車両後方側の後壁部（５２ｂ）の下端（ｔ２）が、他の壁部（５２ａ）の下端（ｔ１）よりも下方にあることを特徴とする請求項１に記載の鞍乗り型車両。
4. 　前記フロア下電装部品は、前記インバータ（３３）であり、
   　前記モータ（３０）及び前記バッテリ（１００）は、前記インバータ（３３）よりも車両後方側に配置され、
   　前記インバータ（３３）は、前記車両後方側にインバータ側端子（３１）を備え、
   　前記インバータ側端子（３１）には、前記モータ（３０）及び前記バッテリ（１００）と前記インバータ（３３）とを接続する配線（６０，６１）が接続されていることを特徴とする請求項１から３の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
5. 　前記インバータ（３３）は、後部が前部よりも上方側に位置するように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項４に記載の鞍乗り型車両。
6. 　前記インバータ（３３）は、前記車両下方側に放熱部（３４ａ）を有するヒートシンク（３４）を備えていることを特徴とする請求項４に記載の鞍乗り型車両。
7. 　前記インバータ（３３）は、左右一対の車体フレーム部材（１４）の間に配置されており、
   　前記凹状構造物（５０）は、前記車体フレーム部材（１４）に固定されていることを特徴とする請求項４に記載の鞍乗り型車両。
8. 　前記インバータ（３３）を制御する制御装置（３２２）を、更に備え、
   　前記インバータ（３３）は、前記制御装置（３２２）と一体のユニット（３２０）として構成されていることを特徴とする請求項４に記載の鞍乗り型車両。

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