(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
(基本構成)
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、搬送装置20と、検出装置30と、撮像装置40と、印刷装置50と、回収装置60と、メンテナンス装置70と、画像処理装置80と、制御装置90とを備えている。
供給装置10は、ホッパ11及びシュータ12を具備する。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、その収容された錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、供給された錠剤Tを複数列に整列させ、搬送装置20に供給する。この供給装置10は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
搬送装置20は、二本の搬送ベルト21(図2参照)、駆動プーリ22、従動プーリ23及び駆動部24を具備する。各搬送ベルト21は、どちらも無端状に形成されており、互いに平行に駆動プーリ22及び従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び従動プーリ23は軸を中心として回転可能に設けられており、駆動プーリ22は駆動部24に連結されている。駆動部24は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。この駆動部24は、ロータリーエンコーダなどの位置検出器24aを備えている。位置検出器24aは検出信号を制御装置90に送信する。制御装置90は、その検出信号に基づいて各搬送ベルト21の位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。なお、搬送装置20は、二本の搬送ベルト21により二つの搬送経路を有することになる。
この搬送装置20は、駆動部24による駆動プーリ22の回転によって従動プーリ23と共に各搬送ベルト21を回転させ、それらの搬送ベルト21上の錠剤Tを図1及び図2中の矢印A1(搬送方向A1)に搬送する。なお、各搬送ベルト21には、直線のスリット状の吸引口21a(図2参照)が搬送方向A1に沿って二列になるよう、それぞれ形成されている。二本の吸引口21aは吸引チャンバを介して吸引装置(いずれも図示せず)に接続されており、吸引装置(例えば吸引ポンプ)の駆動により吸引力を得る。吸引口21a上に供給された錠剤Tは、その吸引口21aの吸引によって搬送ベルト21上に保持されることになる。
検出装置30は、複数の検出部31(図2参照)を具備する。検出部31は、搬送ベルト21ごとに二つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。これらの検出部31は、供給装置10より搬送方向A1の下流側であって二列の吸引口21aの上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。各検出部31は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤Tを検出する。これらの検出部31は制御装置90に電気的に接続されており、制御装置90に検出信号を送信する。検出部31としては、例えば、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサ(レーザ変位計)を用いることが可能である。また、レーザ光のビーム形状としては、スポットやラインなど各種の形状を用いることが可能である。
撮像装置40は、複数の撮像部41(図2参照)を具備する。各撮像部41は、搬送ベルト21ごとに二つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。これらの撮像部41は、検出装置30より搬送方向A1の下流側であって二列の吸引口21aの上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。撮像部41の撮像視野は、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tが1つだけ撮像視野に入り、搬送方向A1の上流又は下流側の錠剤Tや隣の列の錠剤Tが入ることがない大きさに設定されている。撮像部41は、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を画像処理装置80に送信する。撮像部41としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部41は画像処理装置80を介して制御装置90に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置90により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷装置50は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド51を具備する。各印刷ヘッド51は、搬送ベルト21ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられ、撮像装置40より搬送方向A1の下流側に位置付けられている。これらの印刷ヘッド51は、搬送方向A1に所定距離(例えば、印刷ヘッド51における搬送方向A1の幅より長い距離)ずらされて配置されており、メンテナンス装置70に対する互いの移動を妨げないように構成されている。印刷ヘッド51は、複数のノズル51a(図2参照)を具備し、それらのノズル51aから個別にインク(液体の一例)を吐出する。この印刷ヘッド51は、各ノズル51aが並ぶノズル整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド51としては、例えば、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。印刷ヘッド51は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
回収装置60は、印刷装置50より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送装置20の端部、すなわち各搬送ベルト21における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収装置60は、各搬送ベルト21による保持が解除されて落下する錠剤Tを順次受けて回収することが可能に構成されている。なお、搬送装置20は、各搬送ベルト21上の個々の錠剤Tが所望の位置、例えば、各搬送ベルト21における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
メンテナンス装置70は、図3に示すように、液受け部71及び移動装置72を具備する。なお、図1及び図2では、図の簡略化のため、移動装置72は省略されている。
液受け部71は、例えば、上部が開口する箱形状に形成されており、隣接する二本の搬送ベルト21の間に設けられている。この液受け部71は、メンテナンス時に対向する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクを受け取る。液受け部71の上端は、印刷ヘッド51の移動を妨げないように搬送ベルト21の上面よりも低い位置にある。液受け部71における搬送方向A1と直交する方向の幅は、印刷ヘッド51の同方向の幅とほぼ同じである(ヘッド一つ分の幅とほぼ同じであり、少なくともヘッド二つ分の幅よりも短い)。なお、液受け部71の周囲には、各印刷ヘッド51が存在しており、それらの印刷ヘッド51は搬送ベルト21ごとに液受け部71に近接するように搬送ベルト21の上方に設けられている。ここで、二本の搬送ベルト21は互いに所定距離、すなわちメンテナンス装置70を設置することが可能な距離だけ離間されている。この離間距離は所定距離に維持されている。これは、二本の搬送ベルト21を保守する際など、各搬送ベルト21を取り外すことがあるが、それらの搬送ベルト21を同じ方向(一方向)からしか取り外せない場合があるためである。
移動装置72は、一対の移動機構72a、72b及び一対の支持台72c、72dを有する。一対の移動機構72a、72bは、撮像装置40より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、水平面で搬送方向A1と直交する方向に沿うように各搬送ベルト21及び液受け部71の上方に設けられている。一対の支持台72c、72dは、搬送装置20を挟むように搬送方向A1と直交する方向に並べられ、前述の一対の移動機構72a、72bの両端部を支持する。各移動機構72a、72bはそれぞれ、搬送方向A1と直交する方向に印刷ヘッド51を移動自在に支持し、印刷ヘッド51が液受け部71に対向するメンテナンス位置と、搬送ベルト21に対向する印刷位置(塗布位置)とに印刷ヘッド51を移動させる。一対の移動機構72a、72bは制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
ここで、メンテナンス位置とは、印刷ヘッド51が液受け部71に向けてインクを出すための位置である。このメンテナンス位置は、印刷ヘッド51ごとに設けられており、液受け部71の上方に二つ存在している。これらのメンテナンス位置は搬送方向A1に沿って並んでいる。また、印刷位置とは、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tに向けてインクを吐出するための位置である。この印刷位置は、印刷ヘッド51ごとに設けられており、第1の搬送ベルト21の上方と、第2の搬送ベルト21の上方に二つ存在している。これらの印刷位置は、搬送方向A1に所定距離ずれている。すなわち、図3において、搬送ベルト21上の実線で示す印刷ヘッド51の位置が印刷位置であり、液受け部71上の破線で示す印刷ヘッド51の位置がメンテナンス位置である。
画像処理装置80は、撮像装置40によって撮像された各画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて各画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(回転方向)の位置ずれを検出する(図3参照)。ここで、X方向及びY方向の位置ずれとは、撮像視野の中心に対する錠剤Tの位置ずれであり、その中心に対して錠剤Tがどの程度ずれているかを検出する。本実施形態では、一例として、錠剤Tの搬送方向A1がX方向であり、それに直交する方向がY方向である。
また、θ方向の位置ずれとは、錠剤Tの水平面内での回転ずれである。このθ方向の位置ずれは、錠剤Tに割り線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形態の場合に検出される。例えば、錠剤Tに割り線が形成されている場合には、割り線の方向がY方向に平行な状態を0度として、0度〜179度の範囲において1度単位でθずれを求めるようにする。また、錠剤Tの形状が割り線に対して線対象でない場合には、0度〜359度の範囲でθずれを求めることもある。なお、錠剤Tが方向性を持たない形態の場合には、θずれを検出する必要はない。
画像処理装置80は、検出した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置ずれ情報を制御装置90に送信する。なお、画像処理装置80が位置ずれ情報を送信する際には、この位置ずれ情報に各撮像部41の識別情報を付加して送信する。これにより、制御装置90は、送信された位置ずれ情報が、二本の搬送ベルト21により4列で搬送される錠剤Tのうち、どの列に位置する錠剤Tの位置ずれ情報であるかを認識することができる。
制御装置90は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御装置90は、各種情報や各種プログラムに基づいて供給装置10、搬送装置20、撮像装置40及び印刷装置50を制御する。また、制御装置90は、検出装置30や位置検出器24aから送信される検出信号、撮像装置40から送信される画像などを受信する。
また、制御装置90は、画像処理装置80から送信される各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置ずれ情報に基づいて、X方向、Y方向及びθ方向の位置ずれが検出された錠剤Tに対する印刷条件を設定する。なお、記憶部には、錠剤Tに印刷する文字や記号などの印刷パターン、及び、それらの文字や記号などの錠剤T上での印刷位置などのデータにより構成される印刷データ、各搬送ベルト21の移動速度情報などが記憶されている。
例えば、制御装置90は、Y方向の位置ずれに基づき、印刷ヘッド51において今回の印刷に用いるノズル51aの使用範囲を決定する。一例として、印刷ヘッド51が備える複数のノズル51aのうち、錠剤Tの塗布に用いられるノズル51aが5つであるとし、錠剤TのY方向の位置ずれ量がノズル51aの配置間隔の1ピッチ分であった場合には、錠剤Tの位置ずれ方向に1ピッチ分だけノズル51aの使用範囲をずらした5つのノズル51aを用いるように印刷条件を設定する。
また、制御装置90は、X方向の位置ずれに基づいて、錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングを決定する。例えば、錠剤Tが、その搬送方向A1の上流側に距離ΔXだけ位置ずれしているときには、錠剤TにX方向の位置ずれが無い場合に比べて、搬送ベルト21が距離ΔX移動するに要する時間だけ遅れたタイミングで印刷を開始するように印刷条件を設定する。
また、制御装置90は、θ方向の位置ずれに基づいて、錠剤Tの回転ずれに合わせて回転させた印刷条件を設定する。例えば、制御装置90の記憶部に、文字や記号などの印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷データを登録しておき、それらの印刷データの中から、検出されたθ方向の位置ずれに適合する角度の印刷データを選択して印刷条件を設定する。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程(印刷処理)について説明する。
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置90の記憶部に記憶される。また、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入される。そして、錠剤印刷装置1が駆動されると、搬送装置20の各搬送ベルト21は、駆動部24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴い、搬送方向A1に回転する。各搬送ベルト21が回転している状態で、供給装置10から錠剤Tが各搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに順次供給される。錠剤Tは搬送ベルト21ごとに二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
各搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、搬送ベルト21ごとに各検出部31によって検出され、各検出部31から各々の検出信号がトリガ信号として制御装置90に入力される。その後、各搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、搬送ベルト21ごとに各撮像部41によって撮像される。前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが撮像部41の下方に到達したタイミングで錠剤Tの上面が撮像部41により撮像され、その撮像された画像が画像処理装置80に送信される。各撮像部41から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理装置80により生成され、制御装置90に送信される。その錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件が制御装置90により設定される。
その後、各搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド51の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷装置50により印刷が実行される。印刷装置50の各印刷ヘッド51において、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字やマークなどの識別情報が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは、その錠剤Tが回収装置60により回収される前に乾燥する。インクが乾燥した錠剤Tは、各搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、各搬送ベルト21に保持された状態から解放され、各搬送ベルト21から落下して回収装置60により回収される。
(メンテナンス工程)
このような印刷工程において、印刷ヘッド51に対するメンテナンス動作は定期的に所定時間行われる。メンテナンス動作がダミー吐出である場合(吐出動作によりノズル51aからインクを出す場合)には、ダミー吐出の実行間隔は例えば10〜20分などの時間であり、ダミー吐出時間は1〜5秒などの数秒である。また、メンテナンス動作が圧送である場合(加圧によりノズル51aからインクを出す場合)には、圧送の実行間隔は例えば30〜40分などの時間であり、圧送時間は30〜60秒などの数十秒である。ここで、圧送時間はダミー吐出時間に比べて長いことから、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間を短縮するためには、ダミー吐出によるメンテナンスの回数を増やして圧送によるメンテナンスの回数を減らすことが望ましい。そこで、ダミー吐出の実行間隔を短くし、圧送の実行間隔を長くすることで、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間を短縮することができる。また、ダミー吐出時のインク使用量は圧送時のインク使用量に比べ非常に少ないため、メンテナンスに用いるインクの使用量を抑えることもできる。さらに、メンテナンスとして、印刷ヘッド51のノズル面に付着する余分なインクを拭き取るワイピングを行うようにしても良い。
メンテナンス工程においては、各搬送ベルト21の駆動は停止されず、それらの搬送ベルト21に対する錠剤Tの供給が供給装置10により停止され、各印刷ヘッド51のメンテナンスが実行される。詳しくは、錠剤Tの供給停止後、搬送ベルト21ごとに、搬送ベルト21上で印刷ヘッド51の下方に到達していない未印刷の錠剤Tが印刷ヘッド51の下方に順次到達し、印刷ヘッド51によって印刷されていく。その印刷完了後、各印刷ヘッド51は、それぞれ液受け部71に対向するメンテナンス位置に移動装置72によって移動する。メンテナンス位置に移動した各印刷ヘッド51は、それぞれダミー吐出又は圧送を所定時間だけ行う。このメンテナンス動作完了後、各印刷ヘッド51は、それぞれ搬送ベルト21に対向する元の印刷位置に移動装置72によって移動する。その後、錠剤Tの供給が供給装置10により再開され、印刷位置に移動した各印刷ヘッド51によって印刷が再開される。なお、各印刷ヘッド51のメンテナンス開始タイミングは同じであっても、あるいは、ずらされていても良い。
このようなメンテナンス工程によれば、メンテナンスのために錠剤Tの供給は停止されるが、その停止時間は抑えられている。二つの印刷ヘッド51のどちらでも、メンテナンス時の移動距離がほぼ最短距離となるため、各印刷ヘッド51の移動時間を短くすることが可能である。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、メンテナンス装置70のメンテナンス部として機能する液受け部71が二本の搬送ベルト21の間に設けられ、二つの印刷ヘッド51は、印刷ヘッド51ごとに、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tに向けてインク(液体の一例)を吐出するための印刷位置及び液受け部71に向けてインクを出すためのメンテナンス位置に移動装置72により移動する。これにより、一つの液受け部71が二つの搬送ベルト21の間ではなくどちらか一方の外側に設けられている場合に比べ、メンテナンス時の二つの印刷ヘッド51の両方の移動距離が短くなるため、各印刷ヘッド51の移動時間を短くすることが可能となる。これにより、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間が短縮されるため、印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。さらに、二本の搬送ベルト21の間に液受け部71を設けることで、液受け部71が二本の搬送ベルト21のそれぞれの外側に設けられている場合に比べ、液受け部71は一つになるので、錠剤印刷装置1の小型化を実現することができる。
なお、前述のように各印刷ヘッド51は互いに搬送方向A1にずらされてオフセットされているが、これに限られるものではなく、液受け部71上で衝突しなければ良い。このため、搬送ベルト21ごとの印刷ヘッド51を同一直線上に位置付け、各印刷ヘッド51の移動経路が重ならないように斜めあるいは曲線の移動経路を設けるようにしても良い。また、各印刷ヘッド51の移動経路が重なっていても、同一タイミングで各印刷ヘッド51がメンテナンスに入らないように、タイミングをずらせば良い。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図4を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(印刷ヘッドの個数及びメンテナンス工程)について説明し、その他の説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施形態では、印刷ヘッド51が4つ設けられており、印刷位置が4つとなる。ここで、説明の簡略化のため、4つの印刷ヘッド51を第1の印刷ヘッド51、第2の印刷ヘッド51、第3の印刷ヘッド51、第4の印刷ヘッド51として区別し、図4中の4つの印刷ヘッド51上に符号1、2、3及び4を記す。
第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51は互いに平行になるようにX方向に並べられている。また、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51も互いに平行になるようにX方向に並べられている。第1の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51は移動機構72aにより個別にY方向に移動する。第2の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は移動機構72bにより個別にY方向に移動する。なお、第1の印刷ヘッド51と第3の印刷ヘッド51が一つのメンテナンス位置を共用する組となり、第2の印刷ヘッド51と第4の印刷ヘッド51が一つのメンテナンス位置を共用する組となる。
第1のメンテナンス工程(交互印刷)では、第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51が同時に印刷を行うことはなく、どちらか一方が印刷を実行していると、他方がメンテナンスを実行する。同様に、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51が同時に印刷を行うことはなく、どちらか一方が印刷を実行していると、他方がメンテナンスを実行する。また、メンテナンス位置を共用する組の印刷ヘッド51は同時に印刷を実行しない。
例えば、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51が印刷を開始してから所定時間が経過すると、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は印刷を止め、それと共に待機中の第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51が印刷を開始する。この印刷ヘッド51の切り替えが終わったら、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は、それぞれ印刷位置からメンテナンス位置に移動し、メンテナンスを開始する。その後、メンテナンスが完了すると、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は、それぞれメンテナンス位置から印刷位置に移動し、次の印刷に待機する。
次いで、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51が印刷を開始してから所定時間が経過すると、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51は印刷を止め、それと共に待機中の第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51が印刷を開始する。この印刷ヘッド51の切り替えが終わったら、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51は、それぞれ印刷位置からメンテナンス位置に移動し、メンテナンスを開始する。その後、メンテナンスが完了すると、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51は、それぞれメンテナンス位置から印刷位置に移動し、次の印刷に待機する。このような動作が繰り返される。
メンテナンスは所定時間ごとに実行されるが、第1のメンテナンス工程における所定時間は、印刷位置で待機している印刷ヘッド51がそのまま印刷を行うことが可能である時間に設定されている。例えば、第1の印刷ヘッド51が印刷している間、第2の印刷ヘッド51は印刷位置で待機している。この待機時間が長くなると、第2の印刷ヘッド51の各ノズル51aのインクが乾燥し、吐出不良が生じることがある。このため、前述の所定時間は、その吐出不良が生じないように実験的又は理論的に予め設定されている。ただし、所定時間は必ずしも前述のように設定されなくても良く、例えば、印刷位置で待機している印刷ヘッド51が印刷を行う場合、その印刷前にメンテナンス位置に移動してダミー吐出を行い、印刷位置に戻って印刷を開始することも可能である。また、メンテナンス位置を共用する組の印刷ヘッド51が同時に印刷を実行しないようにするので、各搬送ベルト21の印刷ヘッド51が同時にメンテナンス位置に移動することはなく、それらの印刷ヘッド51がメンテナンス位置で衝突することはない。
第2のメンテナンス工程(全印刷)では、各印刷ヘッド51が一緒に印刷を行う。第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51は、所定時間(例えば1分)ごとに交代で印刷を行う。同様に、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51も、所定時間(例えば1分)ごとに交代で印刷を行う。これらの各印刷ヘッド51の中から個々の駆動回数に基づいてメンテナンス対象が制御装置90により選択され、選択された印刷ヘッド51に対するメンテナンスが実行される。なお、錠剤Tが搬送されてくる間隔が一定でないため、各印刷ヘッド51の使用頻度は異なることになる。
制御装置90は、各印刷ヘッド51の個々の駆動回数(例えば、駆動素子の駆動回数)を把握することが可能であり、各印刷ヘッド51の中からそれぞれの駆動回数に応じてメンテナンス対象の印刷ヘッド51を選択する。例えば、各印刷ヘッド51の中から、駆動回数が所定回数に到達した印刷ヘッド51をメンテナンス対象の印刷ヘッド51とする。ただし、制御装置90は、第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51を同時にメンテナンス対象としないように、また、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51を同時にメンテナンス対象としないように前述の選択を調整する。同様に、制御装置90は、第1の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51を同時にメンテナンス対象としないように、また、第2の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51を同時にメンテナンス対象としないように前述の選択を調整する。
前述の第1又は第2のメンテナンス工程によれば、メンテナンスのために錠剤Tの供給が停止されることはなく、錠剤Tは各搬送ベルト21に順次供給され、各印刷ヘッド51のいずれかによって印刷は実行される。これにより、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間が無くなるので、メンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。
また、第2のメンテナンス工程では、各印刷ヘッド51の個々の駆動回数をカウントすることで、実際の印刷ヘッド51の使用頻度に応じてメンテナンスを実行することができる。これにより、不要なメンテナンスを省くことが可能であり、生産性を高めることができ、また、ランダムに搬送される錠剤Tに対しても安定した印刷を行うことができる。なお、印刷ヘッド51ごとの駆動素子の駆動回数以外にも、例えば、印刷ヘッド51ごとの印刷回数(印刷ヘッド51ごとの印刷済の錠剤Tの数)に応じて各印刷ヘッド51からメンテナンス対象を選択することも可能である。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、各印刷ヘッド51のいずれかにより印刷が継続されるので、メンテナンスに伴う印刷の停止時間を無くし、メンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図5を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(印刷ヘッドの個数及びメンテナンス工程)について説明し、その他の説明を省略する。
図5に示すように、第3の実施形態では、印刷ヘッド51が4つ設けられており、印刷位置が4つとなる。ここで、説明の簡略化のため、4つの印刷ヘッド51を第1の印刷ヘッド51、第2の印刷ヘッド51、第3の印刷ヘッド51、第4の印刷ヘッド51として区別し、図5中の4つの印刷ヘッド51上に符号1、2、3及び4と記す。また、2つの搬送ベルト21を第1の搬送ベルト21及び第2の搬送ベルト21として区別し、図5中の2つの搬送ベルト21上に符号1、2を記す。
第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51がY方向に並べられている。また、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51もY方向に並べられている。Y方向に並ぶ第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51は移動機構72aにより一緒にY方向に移動する。同様に、Y方向に並ぶ第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は移動機構72bにより一緒にY方向に移動する。なお、第1の印刷ヘッド51と第2の印刷ヘッド51が一つのメンテナンス位置を共用する組となり、第3の印刷ヘッド51と第4の印刷ヘッド51が一つのメンテナンス位置を共用する組となる。
第1の印刷ヘッド51及び第2の印刷ヘッド51において、第1の印刷ヘッド51が第1の搬送ベルト21の印刷位置に存在する場合、第2の印刷ヘッド51はメンテナンス位置に存在する。第1の印刷ヘッド51がメンテナンス位置に存在する場合、第2の印刷ヘッド51は第2の搬送ベルト21の印刷位置に存在する。同様に、第3の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51においても、第3の印刷ヘッド51がメンテナンス位置に存在する場合、第4の印刷ヘッド51は第2の搬送ベルト21の印刷位置に存在する。第3の印刷ヘッド51が第1の搬送ベルト21の印刷位置に存在する場合、第4の印刷ヘッド51はメンテナンス位置に存在する。
メンテナンス工程では、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51が印刷を開始してから所定時間が経過すると、第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は印刷を止め、それぞれ印刷位置からメンテナンス位置に移動し、メンテナンスを開始する。この移動に伴って、第2の印刷ヘッド51はメンテナンス位置から第2の搬送ベルト21の印刷位置に移動し、第3の印刷ヘッド51はメンテナンス位置から第1の搬送ベルト21の印刷位置に移動し、印刷を開始する。第1の印刷ヘッド51及び第4の印刷ヘッド51は、メンテナンスが完了すると、それぞれメンテナンス位置で待機する。
その後、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51が印刷を開始してから所定時間が経過すると、第2の印刷ヘッド51及び第3の印刷ヘッド51は印刷を止め、それぞれ印刷位置からメンテナンス位置に移動し、メンテナンスを開始する。この移動に伴って、第1の印刷ヘッド51はメンテナンス位置から第1の搬送ベルト21の印刷位置に移動し、第4の印刷ヘッド51はメンテナンス位置から第2の搬送ベルト21の印刷位置に移動し、印刷を開始する。このような処理が繰り返される。
メンテナンスは所定時間ごとに実行されるが、メンテナンス工程における所定時間は、印刷位置で待機している印刷ヘッド51がそのまま印刷を行うことが可能である時間に設定されている。例えば、第1の印刷ヘッド51が印刷している間、第2の印刷ヘッド51はメンテナンス位置で待機している。この待機時間が長くなると、第2の印刷ヘッド51の各ノズル51aのインクが乾燥し、吐出不良が生じることがある。このため、前述の所定時間は、その吐出不良が生じないように実験的又は理論的に予め設定されている。ただし、所定時間は必ずしも前述のように設定されなくても良く、例えば、メンテナンス位置で待機している印刷ヘッド51が印刷を行う場合、印刷位置に移動する前にダミー吐出を行い、その後、印刷位置に移動して印刷を開始することも可能である。
このメンテナンス工程によれば、メンテナンスのために錠剤Tの供給が停止されることはなく、錠剤Tは各搬送ベルト21に順次供給され、各印刷ヘッド51のいずれかによって印刷される。これにより、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間が無くなるので、メンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。
なお、各印刷ヘッド51の移動速度などは、各印刷ヘッド51の移動中に印刷されない錠剤Tが発生しないように設定されている。ただし、X方向に隣接する錠剤Tの離間距離が非常に短い場合には、各印刷ヘッド51の移動中に印刷されない錠剤Tが生じることがあるため、錠剤Tの供給を所定時間(数秒)停止し、X方向に隣接する錠剤Tの離間距離を長くする。これにより、各印刷ヘッド51の移動中に印刷されない錠剤Tの発生を防ぐことができる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、各印刷ヘッド51のいずれかにより印刷が継続されるので、メンテナンスに伴う印刷の停止時間を無くし、メンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図6を参照して説明する。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点(メンテナンス装置)について説明し、その他の説明を省略する。
図6に示すように、第4の実施形態に係るメンテナンス装置70は、液受け部71などに加え、排出管73及び貯留部74を具備する。液受け部71の底面は、その底面におけるY方向の両端部のどちらか一方に向かって徐々に低くなるように傾斜している。その一端部には排出口71aが形成されており、この排出口71aには排出管73の一端が接続されている。排出管73のもう一端は貯留部74に接続されている。メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは液受け部71の底面に当たり、その底面に沿って移動して排出口71aから排出管73に流入する。貯留部74は、排出管73から流れ出たインクを貯留する。なお、液受け部71の底面はどの方向に傾斜しても良く、排出口71aが形成されている箇所に向かって傾斜していれば良い。また、排出口71aや排出管73、貯留部74の数は特に限定されるものではない。
前述の排出管73の内部には、フィルタ73aが設けられている。このフィルタ73aは、排出管73を流れるインクから錠剤Tの粉などの異物を取り除く。また、フィルタ73aの詰まりを検出するセンサ(検出部)75が設けられている。制御装置90には、報知器(図示せず)が接続されている。報知器は、センサ75の検出結果に応じてフィルタ73aのメンテナンスを促す警告を報知する。報知器としては、例えば、ランプ、ブザー又は表示器などを用いることが可能である。なお、このようなフィルタ73aや報知器は必要に応じて設置されれば良く、無くても良い。
メンテナンス工程において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは、液受け部71の底面に当たり、その底面の傾斜に応じて底面に沿って排出口71aに向かって流れる。そのインクは、排出口71aから排出管73に流入し、排出管73を介して貯留部74に流れ込み、貯留部74によって貯留される。なお、圧送によるメンテナンス工程では、印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されるインクの量はダミー吐出によるメンテナンス工程よりも多くなる。多量のインクが液受け部71の底面に溜まると、次回のメンテナンス時に液跳ねが発生する傾向が高くなる。このため、排出管73や貯留部74を設けることで、液受け部71の底面に多量のインクが溜まることを抑えることが可能となり、液跳ねによる印刷ヘッド51などの汚染を抑制することができる。
以上説明したように、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、排出管73や貯留部74を設けることで、液受け部71の底面に多量のインクが溜まることを抑えることが可能となり、液跳ねによる印刷ヘッド51や搬送ベルト21の表面(一例として、錠剤Tが載置されるベルト表面)、搬送中の錠剤Tなどの汚染を抑制することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態について図7を参照して説明する。なお、第5の実施形態では、第1の実施形態との相違点(メンテナンス装置)について説明し、その他の説明を省略する。
図7に示すように、第5の実施形態に係るメンテナンス装置70の液受け部71は、その底面に凸部71bを有する。この凸部71bは、一例として、頂上がX方向に延びる山形状であって、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから吐出されたインクが凸部71bの各傾斜面に当たるように形成されている。このため、凸部71bのY方向の最大長さは、液受け部71の底面のインク着弾幅以上であることが望ましい。インク着弾幅とは、底面において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクが着弾する端から端の幅である。なお、凸部71bの形状は、頂上が一点となる山形状であっても良く、あるいは、V字形状や漏斗形状であっても良い。
メンテナンス工程において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは、液受け部71の凸部71bの各傾斜面に当たり、それらの傾斜面に沿って流れ、底面におけるY方向の両端部に向かって移動する。ここで、液受け部71の底面が平坦であると、その底面におけるインクが当たる着弾領域内にインクが溜まるため、次回のメンテナンス時などに液跳ねが発生する傾向が高くなる。このため、液受け部71の底面に凸部71bを設けることで、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは凸部71bの各傾斜面に沿って流れ、液受け部71の底面の着弾領域の外に溜まることになる。これにより、液受け部71の底面の着弾領域内にインクが溜まることを抑えることが可能となり、液跳ねによる印刷ヘッド51などの汚染を抑制することができる。また、底面が平坦であると、液跳ねの方向がランダムになるが、各傾斜面の角度を調整することで、液が跳ねる方向をある程度調整することができる。
以上説明したように、第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、液受け部71の底面に凸部71bを設けることで、液受け部71の底面の着弾領域内にインクが溜まることを抑えることが可能となるので、液跳ねによる印刷ヘッド51や搬送ベルト21の表面(一例として、錠剤Tが載置されるベルト表面)、搬送中の錠剤Tなどの汚染を抑制することができる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態について図8を参照して説明する。なお、第6の実施形態では、第1の実施形態との相違点(メンテナンス装置)について説明し、その他の説明を省略する。
図8に示すように、第6の実施形態に係るメンテナンス装置70は、液受け部71などに加え、複数の吸引管76及び吸引部77を具備する。液受け部71の底面には二つの吸引口71cが形成されており、これらの吸引口71cはX方向に並べられている。各吸引口71cは、ノズル列の長さより長い矩形状のスリットに形成されている。これらの吸引口71cには各吸引管76の一端が個別に接続されている。各吸引管76のもう一端は、吸引部77に接続されている。この吸引部77は、例えば吸引ポンプなどであり、吸引力を発生させる。吸引部77は、液トラップなどの液回収部やフィルタ(いずれも図示せず)などを具備する。この吸引部77は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
ここで、各吸引口71cは、液受け部71の上方に位置する各メンテナンス位置に対応させて設けられており、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51に対向するように液受け部71の底面にそれぞれ形成されている。これらの吸引口71cは、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから吐出されたインクが通過し、跳ね返らない大きさに各々形成されている。このため、吸引口71cのY方向の長さは、液受け部71の底面のインク着弾幅以上である。インク着弾幅とは、底面において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクが着弾する端から端の幅である。
メンテナンス工程において、吸引部77が制御装置90により駆動され、液受け部71の底面の二つの吸引口71cから空気が吸い込まれる。この状態において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは、液受け部71の吸引口71cを通過し、吸引管76によって吸引される。このインクは吸引管76を流れ、吸引部77の液回収部により回収される。なお、吸引部77はメンテナンス実行時に駆動され、そのメンテナンス実行時以外の通常時には駆動されない。ただし、吸引部77として、搬送装置20の吸引装置を共用することも可能である。この場合、吸引装置が常時駆動されているため、各吸引口71cから空気が常時吸い込まれることになる。
ここで、液受け部71の底面にインクが当たると、インクが跳ねることがあり、液滴の舞い上がりによってミストが発生することがある。このため、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51に対向させて液受け部71の底面に吸引口71cを形成することで、メンテナンス時に液滴の舞い上がり、すなわちミストが発生することを抑えることが可能となる。これにより、ミストによる印刷ヘッド51や液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を抑制することができる。
以上説明したように、第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51に対向させて液受け部71の底面に吸引口71cを形成することで、メンテナンス時に液滴の舞い上がり、すなわちミストが発生することを抑えることが可能になるので、ミストによる印刷ヘッド51や液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を抑制することができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態について図9を参照して説明する。なお、第7の実施形態では、第6の実施形態との相違点(メンテナンス装置)について説明し、その他の説明を省略する。
図9に示すように、第7の実施形態では、液受け部71の底面に吸引口71cが二つ形成されており、それらの吸引口71cに各吸引管76が個別に接続されている。二つの吸引口71cは、液受け部71の底面におけるY方向の両端部に形成されている。また、これらの吸引口71cは、液受け部71の底面に渡ってX方向に延びるように形成されている。なお、液受け部71の底面は、中央に向かって徐々に低くなるように傾斜している。二本の吸引管76は、それぞれ吸引口71cを介し、液受け部71で発生したミストを吸引する。ミストは、前述のように、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51から吐出されたインクが液受け部71の底面に当たって跳ね、液滴が舞い上がることによって生じる。
メンテナンス工程において、吸引部77が制御装置90により駆動され、液受け部71の二つの吸引口71cから空気が吸い込まれる。この状態において、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51の各ノズル51aから出されたインクは、液受け部71の底面に当たり、底面の傾斜に沿って流れ、底面の中央に徐々に溜まっていく。このとき、液滴の舞い上がりによってミストが発生しても、そのミストは空気と共に二つの吸引管76によって吸引される。これにより、メンテナンス時にミストを除去することが可能になるので、ミストによる印刷ヘッド51や液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を抑制することができる。
なお、底面の中央に排出管(図示せず)を接続することも可能である。この場合には、底面の中央まで移動したインクは排出管に流入し、排出管により排出されることになる。これにより、液受け部71の底面の着弾領域内にインクが溜まることを抑えることが可能となり、液跳ねによる印刷ヘッド51の汚染を抑制することができる。
以上説明したように、第7の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、液受け部71の底面のいずれかの箇所に吸引口71cを形成することで、メンテナンス時に液滴の舞い上がりによって発生するミストを除去することが可能になるので、ミストによる印刷ヘッド51や液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を抑制することができる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態について図10を参照して説明する。なお、第8の実施形態では、第7の実施形態との相違点(メンテナンス装置)について説明し、その他の説明を省略する。
図10に示すように、第8の実施形態では、二つの気体吹付部78が設けられている。これらの気体吹付部78は、印刷ヘッド51の移動を妨げないよう、印刷ヘッド51の上端よりも高い位置に設けられている。さらに、各気体吹付部78は、液受け部71の各吸引口71cにそれぞれ対向するように配置されている。これらの気体吹付部78は、X方向に延びるように形成されている。各気体吹付部78の下部には、X方向に延びるスリット状の吹出孔(図示せず)が形成されている。このため、気体吹付部78は、下方に向けて気体(例えば空気又は窒素など)を吹き出し、気体によるカーテンを形成する。各気体吹付部78は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
メンテナンス工程において、各気体吹付部78が制御装置90により駆動され、それらの気体吹付部78から空気(気体の一例)が吹き出され、液受け部71の二つの吸引口71cから吸い込まれる。これにより、印刷ヘッド51の両側に気流幕、すなわちエアカーテン(気体カーテンの一例)が形成される。第7の実施形態と同様、液受け部71の底面にインクが当たると、液滴の舞い上がりによってミストが発生することがあるが、そのミストはエアカーテンの流れに沿って空気と共に二つの吸引管76によって吸引される。さらに、ミストが大量に発生しても、そのミストが液受け部71の上部の開口から搬送ベルト21側に流出することがエアカーテンにより抑えられる。このようにして、メンテナンス時のミスト除去、さらに、ミスト流出を抑えることが可能となるので、ミストによる印刷ヘッド51や液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を抑制することができる。また、気体吹付部78の下方から気体を吸引することによって(下吸引)、エアカーテンの幅が広がるのを抑えることが可能となり、エアカーテン近くの印刷に影響を与えないようにすることができる。
また、図11に示すように、変形例では、前述の二つの気体吹付部78に加え、気体吹付部78ごとに吸引ヘッド79が設けられている。気体吹付部78は、搬送ベルト21と液受け部71との間にエアカーテンを形成するよう、搬送ベルト21と液受け部71との間に向けて錠剤Tの搬送方向A1と平行に気体を吹き出す。吸引ヘッド79は、上面が開口してX方向に延びる樋形状に形成されており、X方向に延びる吸引口79aを有している。この吸引ヘッド79は、気体吹付部78の下方であって液受け部71よりも低い位置に位置付けられ、吸引口79aが気体吹付部78に対向するように設けられている。吸引ヘッド79は、吸引部77に吸引管(図示せず)を介して接続されている。この吸引ヘッド79は、気体吹付部78から吹き出されて搬送ベルト21と液受け部71との間を通過した気体を吸引する。これにより、エアカーテンは液受け部71の外側に形成され、搬送ベルト21の延伸方向、すなわち搬送方向A1に沿うように(例えば搬送ベルト21と平行に)形成されることになる。なお、吸引ヘッド79あるいは前述の吸引管76などによる吸引機構は必須のものではなく、エアカーテンだけを形成するようにしても良い。
以上説明したように、第8の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、気体吹付部78を設けることで、ミストが大量に発生しても、そのミストが液受け部71の上部の開口から搬送ベルト21側に流出することをエアカーテン(気流幕の一例)により抑えることが可能となるので、ミストによる液受け部71の周囲の搬送ベルト21などの汚染を確実に抑制することができる。
(他の実施形態)
前述の各実施形態においては、供給装置10として、ホッパ11及びシュータ12を用いることを例示したが、これに限るものではなく、各種の供給機構を用いることが可能である。例えば、下面で錠剤Tを吸引して搬送する受渡機構を設け、この受渡機構により搬送装置20に錠剤Tを供給することが可能である。この場合、搬送装置20に対する錠剤Tの供給を停止するためには、受渡機構による吸引を停止するようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21によって錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、一列や三列又は四列以上であっても良く、その数は特に限定されるものではない。なお、一つの印刷ヘッド51によって二列以上の錠剤Tに印刷を行うことが可能であるが、これに限るものではなく、例えば、列ごとに印刷ヘッド51を設けるようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21の本数を二本だけ設けることを例示したが、これに限るものではなく、二本以上設けるようにしても良い。例えば、図12に示すように、搬送ベルト21を三本設けた場合には、それらの搬送ベルト21の個々の間の全てに液受け部71を設けることが可能である。すなわち、錠剤Tの搬送経路が二つ(2列)だけでなく、それ以上であっても良く、それぞれの搬送経路の間に液受け部71を設けることになる。さらには、搬送経路としては搬送ベルト21に限るものではなく、例えば円筒ドラムやトレイ、パレットなどを用いたものでも良い。
また、前述の各実施形態においては、搬送装置20として、錠剤Tを吸引により保持して搬送する搬送装置を例示したが、これに限るものではなく、各種の搬送機構を用いることが可能である。また、錠剤Tを吸引して保持する保持機構として、搬送方向A1に延びるスリット状の吸引口21aにより錠剤Tを保持することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送方向A1に並ぶ円形の複数の吸引口により錠剤Tを保持するようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、検出装置30に基づいて印刷のタイミングを取っているが、これに限るものではなく、例えば、撮像装置40に基づいて印刷のタイミングを取るようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、インクジェット方式の印刷ヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、液受け部71を固定して設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、移動機構により液受け部71を移動させるようにしても良い。例えば、移動機構として、液受け部71を上下方向に移動させる上下移動機構を設けることが可能である。この場合には、メンテナンス時、メンテナンス位置に存在する印刷ヘッド51と液受け部71との離間距離を調整することができる。
また、前述の各実施形態においては、メンテナンスを実行するメンテナンス部として、液受け部51を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、液受け部51に加えて、あるいは、液受け部51に替えて、印刷ヘッド51のノズル面に付着する余分なインクを拭き取るワイピング部を設けることも可能である。また、メンテナンス部として、他のメンテナンス機構を設けることも可能である。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、例えば、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがある。さらに、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。また、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。
また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合、使用するインクとしては、可食性インクが好適である。具体的には、可食性色素としてアマランス、エリスロシン、ニューコクシン(以上、赤色)、タートラジン、サンセットイエローFCF、β−カロチン、クロシン(以上、黄色)、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン(以上、青色)などを用い、これらをビヒクルに分散または溶解し、必要に応じて色素分散剤(界面活性剤)を配合したものを使用することができる。なお、可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。