JP2017068882A - 磁気ディスク用基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】磁気ディスク用基板の研磨処理に用いる研磨液は、表面をスルホン酸基(−SO3H)で修飾されたシリカ粒子を研磨砥粒として含み、研磨液はアルカリ性である。
【選択図】 なし
Description
さらに、記憶容量の一層の増大化のために、DFH(Dynamic Flying Height)機構を搭載した磁気ヘッドを用いて磁気記録面からの浮上距離を極めて短くすることにより、磁気ヘッドの記録再生素子と磁気ディスクの磁気記録層との間の磁気的スペーシングを低減して情報の記録再生の精度をより高める(S/N比を向上させる)ことも行われている。この場合においても、磁気ヘッドによる磁気記録情報の読み書きを長期に亘って安定して行うために、磁気ディスクの基板の表面凹凸は可能な限り小さくすることが求められる。
これに対して、シリカ砥粒を含むスラリーがアルカリ性の状態でガラス基板を研磨すると、研磨処理後のガラス基板の表面粗さを小さくすることができる。しかし、アルカリ性の条件下で研磨処理を行うと、酸性の条件下で研磨処理を行った場合と比較して、研磨処理後のガラス基板の表面にシリカ砥粒が異物として固着しやすい傾向があることがわかった。シリカ砥粒はガラス基板と組成が共通しているため、ガラス基板に強く付着(固着)しやすく、ガラス基板に固着したシリカ砥粒を通常の洗浄で除去することは困難である。
前記研磨液は、表面をスルホン酸基(−SO3H)で修飾されたシリカ粒子を前記研磨砥粒として含み、
前記研磨液はアルカリ性であることを特徴とする。
コロイダルシリカの表面をスルホン酸基(−SO3H)で修飾した場合でも、コロイダルシリカの表面にシラノール基(Si−OH)が残存しており、このシラノール基がガラス基板の表面のシラノール基と水素結合をするおそれがある。コロイダルシリカのケイ素原子(Si)とスルホン酸基(−SO3H)との間にアルキレン基、フェニレン基又はアルキルフェニレン基を設けることで、コロイダルシリカの表面に残存するシラノール基よりも外側にスルホン酸基を配置することができる。このため、コロイダルシリカの表面に残存するシラノール基とガラス基板の表面のシラノール基とが水素結合をすることを抑制することができる。
(磁気ディスク用基板)
まず、磁気ディスク用基板について説明する。磁気ディスク用基板は、円板形状であって、外周と同心の円形の中心孔がくり抜かれたリング状である。磁気ディスク用基板の両面の円環状領域に磁性層(記録領域)が形成されることで、磁気ディスクが形成される。磁気ディスク用基板として、ガラス基板やアルミニウム合金基板等を用いることができる。ガラス基板として、具体的には、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等が挙げられる。特に、主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アモルファスのアルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。なお、アルミニウム合金基板は、通常、表面にNiP金属膜が設けられている。
コロイダルシリカは、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル等を原料とするゾルゲル法、水ガラスを原料とするイオン交換法により製造することができる。この中でも、コスト面からイオン交換法によりコロイダルシリカを製造することが好ましい。
R2が直鎖のアルキレン基であることが好ましい。R2の炭素数は2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
スルホン酸基を有するシランカップリング剤として、例えば、R1がメチル基(−CH3)、R2がプロピレン基(−(CH2)3−)である、3−スルホプロピル(トリメトキシ)シランを用いることができる。
メルカプト基(−SH)を有するシランカップリング剤として、例えば、R1がメチル基(−CH3)、R2がプロピレン基(−(CH2)3−)である、3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランを用いることができる。
また、スルホン酸基では、アルカリ性の条件下で水素イオンが解離するため、表面をスルホン酸基で修飾されたシリカ粒子では、アルカリ条件下で負に帯電した状態が維持される。このため、アルカリ性のスラリー中では、スルホン酸基で修飾されたシリカ粒子同士が反発するため、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。
なお、表面をスルホン酸基で修飾したシリカ粒子と水とを混合して研磨液を作成する場合、特にpH調整を行わなければ、研磨液はスルホン酸基の効果により酸性を示す。そのため、本実施形態では、アルカリ剤を研磨液に適宜添加することによって研磨液をアルカリ性に調節する。
pHの調整は、KOH、NaOHなどの無機アルカリや、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等の有機アルカリを適宜用いて行えばよい。
(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法)
先ず、磁気ディスク用ガラスブランクをプレス成形により作製する。磁気ディスク用ガラスブランク(以降、単にガラスブランクという)は、一対の主表面を有する円板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材であって、中心孔がくり抜かれる前の形態である。
次に、作製されたガラスブランクの中心部分に孔をあけ、リング形状(円環状)のガラス基板を作製する。次に、穴をあけたガラス基板に対して形状加工を行う。次に、形状加工されたガラス基板に対して固定砥粒による研削を行う(研削処理)。次に、研削処理後のガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う。次に、ガラス基板に対して必要に応じて化学強化を行う。その後、ガラス基板に対して第2研磨(最終研磨)を行う。第2研磨後、洗浄処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
以下、各処理について、さらに説明する。
溶融ガラス流の先端部を切断した溶融ガラスの塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。
ガラスブランクに対してコアドリル等を用いて円孔を形成することにより円形状の中央孔があいたガラス基板を得ることができる。
形状加工処理では、円孔形成後のガラス基板の端部に対する面取り加工を行う。
固定砥粒による研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクから生成されたガラス基板の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。
端面研磨処理では、ガラス基板の内側端面及び外周側端面に対して、ブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の粒子を遊離砥粒として含む砥粒スラリーが用いられる。
第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板を化学強化してもよい。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合熔融液等を用いることができる。なお、化学強化処理を省略してもよい。
第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。第2研磨による取り代は、例えば1μm程度である。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。
第2研磨処理を実施することで、主表面の粗さ(Ra)を0.15nm以下かつ主表面のマイクロウェービネスを0.1nm以下とすることができる。
第2研磨処理の後、ガラス基板は、アルカリ洗浄液を用いてガラス基板の表面が洗浄され、磁性層が形成される前の磁気ディスク用ガラス基板となる。
このとき、洗浄処理では、洗浄処理前後のガラス基板の表面粗さRaの差が0.05nm以下にするアルカリ洗浄液を用いることが好ましい。ガラス基板に付着する研磨砥粒を除去するために、従来、洗浄力の高いアルカリ洗浄液を用いていた。しかし、洗浄力の強いアルカリ洗浄液は、ガラス基板の主表面に作用して主表面を荒らし易い。しかし、本実施形態では、上述した、表面をスルホン酸基で修飾されたシリカ粒子を研磨砥粒として用いて研磨処理を行うので、ガラス基板への研磨砥粒の付着を抑制することができる。このため、本実施形態では、従来に比べて洗浄力の弱いアルカリ洗浄液、すなわち、洗浄処理前後のガラス基板の表面粗さRaの差を0.05nm以下にするアルカリ洗浄液を用いることができる。なお、Raは、JIS B0601に規定される表面粗さである。この表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を256×256ピクセルの解像度で測定したデータに基づいて得られるものである。
〔実施例1〕
(コロイダルシリカの作成)
ケイ砂と炭酸ナトリウムとを原料としてイオン交換法によりシリカ含有量40wt%のコロイダルシリカを得た。
チオール基を有するシランカップリング剤として、3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランを用いた。3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランのチオール基を過酸化水素により酸化することで、スルホン酸基を有するシランカップリング剤として3−スルホプロピル(トリメトキシ)シランを得た。得られた3−スルホプロピル(トリメトキシ)シランの水溶液を上記のコロイダルシリカに混合し、適宜撹拌することで、スルホン酸基で修飾されたコロイダルシリカを得た。
上記実施形態で説明したように、最終研磨処理の前までの処理を行うことでガラス基板を作成した。
次に、修飾処理後のコロイダルシリカを含むスラリーを研磨液として用いて、ガラス基板の最終研磨処理を行った。ガラス基板の主表面とスエードタイプの発泡ポリウレタン製の研磨パッドとの間に、上記の研磨液を供給しながら、研磨パッドをガラス基板の主表面に対して相対移動させることでガラス基板の主表面の研磨を、所定時間行った。スラリーのpHは表1に示したとおりである。
pH10のアルカリ洗浄液を用いて研磨処理後のガラス基板を洗浄した後、純水によるリンスを行い、イソプロピルアルコール(IPA)の蒸気を用いて乾燥した。
オルトケイ酸テトラメチルを原料としてゾルゲル法によりシリカ含有量40wt%のコロイダルシリカを得た。得られたコロイダルシリカに対して、実施例1と同様の修飾処理を行うことで、スルホン酸基で修飾されたコロイダルシリカを得た。次に、修飾処理後のコロイダルシリカを含むスラリーを研磨液として用いて、実施例1と同様に研磨処理、洗浄処理を行った。
実施例1と同様に作成し、修飾処理を行ったコロイダルシリカを含むスラリーを研磨液として用いて、スラリーのpHをアルカリ性の範囲で実施例1とは異なる値としたことを除き、実施例1と同様に研磨処理、洗浄処理を行った。スラリーのpHは表2に示したとおりである。なお、pHは、TMAHを適宜添加することで調整した。
実施例1と同様に、ケイ砂と炭酸ナトリウムとを原料としてイオン交換法によりコロイダルシリカを得た。その後、修飾処理を行わずに、得られたコロイダルシリカを用いて実施例1と同様に研磨処理、洗浄処理を行った。
実施例2と同様に、ゾルゲル法によりコロイダルシリカを得た。その後、修飾処理を行わずに、得られたコロイダルシリカを用いて実施例2と同様に研磨処理、洗浄処理を行った。
実施例1と同様に作成し、修飾処理を行ったコロイダルシリカを含むスラリーを研磨液として用いて、スラリーのpHを酸性又は中性の範囲で実施例1とは異なる値としたことを除き、実施例1と同様に研磨処理、洗浄処理を行った。スラリーのpHは表2に示したとおりである。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を256×256ピクセルの解像度で測定したデータに基づいて、JIS B0601に規定される算術平均粗さ(Ra)を計測した。研磨処理の直後のガラス基板の算術平均粗さと洗浄処理の直後のガラス基板の算術平均粗さとの差を計測し、差が0.05nm未満の場合をA、0.05nm以上0.1nm未満の場合をB、0.1nm以上の場合をCと評価した。評価がA又はBであれば製造上許容範囲である。なお、洗浄処理後の粗さは、研磨処理直後の粗さに対して同等以上である。
研磨処理後、洗浄、乾燥したガラス基板の主表面について、レーザー式の表面検査装置とSEM、AFMを用いて欠陥の検出と同定を行った。同じ条件で製造したガラス基板10枚について、1枚あたり5点の欠陥を検出、同定し、シリカ砥粒が検出されたガラス基板1枚当たり1ポイントとし、総ポイント数が1以下の場合をA、2〜4ポイントの場合をB、5ポイント以上の場合をCと評価した。評価がA又はBであれば研磨液として良好である。
Claims (4)
- 一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、前記研磨パッドと前記基板の間に研磨砥粒を含む研磨液を供給して、前記研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、前記基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、
前記研磨液は、表面をスルホン酸基(−SO3H)で修飾されたシリカ粒子を前記研磨砥粒として含み、
前記研磨液はアルカリ性である、磁気ディスク用基板の製造方法。 - 前記研磨液のpHが10以上の条件下で研磨処理を行う、請求項1に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
- 前記シリカ粒子は、ケイ素原子(Si)とスルホン酸基(−SO3H)との間にアルキレン基、フェニレン基又はアルキルフェニレン基を有する、請求項1又は2に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
- 前記シリカ粒子はイオン交換法により製造されたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
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