一実施形態のプリンタ10について説明する。図1は、プリンタ10の全体構成を示す概略図である。図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼び、X軸正方向を前方向と呼び、X軸負方向を後ろ方向と呼び、Y軸正方向を右方向と呼び、Y軸負方向を左方向と呼ぶものとする。
プリンタ10は、1色(例えばブラック)のトナー(現像剤)を用いて、例えば記録用紙やOHPシート等のシートWに画像を形成する電子写真式のプリンタである。プリンタ10は、画像形成装置の一例である。
図1に示すように、プリンタ10は、筐体100と、シート供給部200と、画像形成部400とを備える。筐体100は、シート供給部200と画像形成部400とを収容する。また、筐体100の上面には、排出口110と、排出トレイ120とが形成されており、筐体100内の排出口110付近に排出ローラ130が設けられている。
シート供給部200は、トレイ210と、ピックアップローラ220と、搬送ローラ230と、レジストレーションローラ240とを備える。トレイ210は、シートWを収容する収容体である。ピックアップローラ220は、トレイ210に収容されたシートWを1枚ずつ取り出す。搬送ローラ230は、取り出されたシートWをレジストレーションローラ240に向けて搬送する。レジストレーションローラ240は、搬送ローラ230によって搬送されるシートWの斜行補正を行い、シートWを画像形成部400に向けて搬送する。
画像形成部400は、露光部500と、プロセス部600と、定着器700とを備える。露光部500は、レーザ光L(光ビーム)を、プロセス部600に備えられた感光体610に照射する。
プロセス部600は、感光体610と、帯電部620と、現像部630と、転写ローラ640とを備える。感光体610は、回転可能に設けられたドラム状の部材である。帯電部620は、感光体610の表面に対向するように配置され、感光体610の表面を一様に帯電させる。現像部630は、トナーを収容し、感光体610の表面にトナーを供給する。転写ローラ640は、感光体610に対向するように配置されている。
帯電部620により帯電された感光体610の表面に、露光部500からのレーザ光Lが照射されると、感光体610の表面に静電潜像が形成される。現像部630によって感光体610の表面にトナーが供給されると、感光体610の表面に形成された静電潜像が現像されてトナー像が形成される。感光体610の表面に形成されたトナー像は、電圧が印加された転写ローラ640によって、感光体610と転写ローラ640とが対向する位置を通過するシートW上に転写される。
定着器700は、プロセス部600を通過したシートWを加熱し、シートWに転写されたトナー像をシートWに定着させる。具体的には、定着器700は、定着ベルト710と、ハロゲンヒータ720と、ニップ部材730と、加圧ローラ750と、サーミスタ770とを備える。定着ベルト710は、筒状の帯体であり、回転可能に設けられている。なお、定着ベルト710は、金属製であり、例えば、ステンレス鋼やニッケルなどから形成されている。ハロゲンヒータ720は、交流電源ACS(図2参照)からの電力供給を受けることにより発熱する発熱体であり、定着ベルト710の内周面側に配置されている。加圧ローラ750は、定着ベルト710と接触するように配置されており、定着ベルト710に向けて押圧されている。ニップ部材730は、金属板であり、加圧ローラ750との間で定着ベルト710を挟む。定着ベルト710と加圧ローラ750との間には、ニップ部Pが形成されている。サーミスタ770は、ニップ部材730に接触する位置に配置されており、ニップ部材730の温度に応じた温度信号をコントローラ800(図2参照)に向けて出力する温度センサである。なお、定着ベルト710は、定着部材の一例であり、ハロゲンヒータ720は、ヒータの一例である。
ハロゲンヒータ720が発熱すると、ハロゲンヒータ720によってニップ部材730を介して定着ベルト710が加熱され、定着ベルト710の温度が上昇する。また、加圧ローラ750が、モータ811からの駆動力によって回転駆動されると、定着ベルト710が従動回転する。プロセス部600を通過したシートWは、定着ベルト710と加圧ローラ750との間(ニップ部P)に到達すると、定着ベルト710および加圧ローラ750によって搬送されつつ、定着ベルト710によって加熱され、シートWの表面に形成されたトナー像がシートWに定着される。これにより、シートWに画像が形成される。
排出ローラ130は、定着器700を通過したシートWを、排出口110を介して排出トレイ120へと排出する。
図2は、プリンタ10の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ10は、上述のシート供給部200、露光部500、プロセス部600、定着器700等に加え、コントローラ800と、モータ811と、表示部820と、操作部830と、通信インターフェース(IF)840とを備える。
コントローラ800は、CPU801と、ROM802と、RAM803と、不揮発性メモリ804と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)805と、モータ駆動部810とを有する。ROM802には、プリンタ10を制御するための制御プログラムや各種設定情報等が記憶されている。RAM803は、CPU801が各種のプログラムを実行する際の作業領域や、データの一時的な記憶領域として利用される。不揮発性メモリ804は、NVRAM、フラッシュメモリ、HDD、EEPROMなどの書き換え可能なメモリである。ASIC805は、画像処理等のためのハード回路である。CPU801は、ROM802から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って、プリンタ10の各構成要素を制御する。モータ駆動部810は、モータ811を駆動する。コントローラ800は、制御部の一例である。
モータ811は、上述のピックアップローラ220、レジストレーションローラ240、感光体610、および、定着器700の加圧ローラ750等を回転駆動するモータである。
表示部820は、例えば液晶ディスプレイ等で構成されており、コントローラ800からの指示に応じて、各種情報を表示する。操作部830は、ユーザによる操作を受け付ける各種のボタン等を有する。通信インターフェース840は、外部デバイスとの通信を可能にするハードウェアである。通信インターフェース840は、例えば、ネットワークインターフェース、シリアル通信インターフェース、パラレル通信インターフェース等である。
次に、定着器700の電気的構成について説明する。図2に示すように、定着器700は、上述した定着ベルト710、ハロゲンヒータ720、サーミスタ770に加えて、トライアック910と、フォトカプラ920と、定着スイッチ930と、第1ゼロクロス検出回路940と、第2ゼロクロス検出回路950とを備える。トライアック910は、通電切替素子の一例であり、定着スイッチ930は、スイッチの一例であり、第1ゼロクロス検出回路940は、オンオフ検出部の一例であり、第2ゼロクロス検出回路950は、ゼロクロス検出部の一例である。
トライアック910は、交流電源ACSの一方の端子とハロゲンヒータ720とを接続する通電路PL1上に配置されている。トライアック910は、コントローラ800からフォトカプラ920を介して、オン指令を示すヒータ制御信号Stを受け、かつ、トライアック910に流れる電流がゼロになる、または、トライアック910にかかる電圧の極性が反転すると、交流電源ACSとハロゲンヒータ720とを電気的に接続するオン状態となり、ハロゲンヒータ720を通電状態にする。また、トライアック910は、コントローラ800からフォトカプラ920を介して、オフ指令を示すヒータ制御信号Stを受け、かつ、トライアック910に流れる電流がゼロになる、または、トライアック910にかかる電圧の極性が反転すると、交流電源ACSとハロゲンヒータ720とを電気的に遮断するオフ状態となり、ハロゲンヒータ720を非通電状態にする。なお、本実施形態では、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスすると、トライアック910に流れる電流がゼロになる、または、トライアック910にかかる電圧の極性が反転し、トライアック910は、そのときにコントローラ800からオン指令を受けていればオン状態になり、オフ指令を受けていればオフ状態になる。
トライアック910によるハロゲンヒータ720の温度制御(ハロゲンヒータ720への通電量の調整)は、交流電源ACSの電圧の半波長単位の波数制御によって行われる。例えば、4半波長期間に対して1半波長期間、トライアック910がオン状態になる場合、波数制御による波数デューティは25%となり、3半波長期間に対して1半波長期間、トライアック910がオン状態になる場合、波数制御による波数デューティは33%となる。
定着スイッチ930は、ヒータ保護用のスイッチであり、交流電源ACSの他方の端子とハロゲンヒータ720とを接続する通電路PL2上に配置されている。定着スイッチ930は、コントローラ800による制御に従い、交流電源ACSとハロゲンヒータ720とを電気的に接続する接続状態と、交流電源ACSとハロゲンヒータ720とを電気的に遮断する遮断状態との間で切り替わる。定着スイッチ930は、例えば、トランジスタ等の半導体スイッチやリレー等の機械スイッチである。
図3は、第1ゼロクロス検出回路940の回路図である。第1ゼロクロス検出回路940は、抵抗R1と、交流電源ACSの電圧を全波整流する全波整流ブリッジ回路D1と、発光ダイオードD2と、発光ダイオードD2とともにフォトカプラPC1を構成するフォトトランジスタTr1と、抵抗R2と、反転回路D3とを備える。全波整流ブリッジ回路D1の一端は、抵抗R1を介して、交流電源ACSの上記他方の端子に接続されており、全波整流ブリッジ回路D1の他端は、トライアック910に接続されている。発光ダイオードD2は、全波整流ブリッジ回路D1を構成し、互いに直列接続された2組の整流素子対のそれぞれの接続点に接続されている。フォトトランジスタTr1のエミッタはグランドに接続され、コレクタは抵抗R2を介して、電源ラインVccに接続されており、コレクタの電圧レベル(High/Low)を反転させて出力する。
交流電源ACSの電圧が小さくなると、発光ダイオードD2の発光量が少なくなり、フォトトランジスタTr1に流れる電流Icが小さくなることから、反転回路D3の入力電圧Vinが大きくなる。そして、交流電源ACSの電圧が閾値を下回ると、反転回路D3の出力がローレベルになる。一方、交流電源ACSの電圧が大きくなると、発光ダイオードD2の発光量が多くなり、フォトトランジスタTr1に流れる電流Icが大きくなることから、反転回路D3の入力電圧Vinが小さくなる。そして、交流電源ACSの電圧が閾値を上回ると、反転回路D3の出力がハイレベルになる。
以上のように、第1ゼロクロス検出回路940は、交流電源ACSの電圧のゼロクロスタイミングに同期したオンオフ検出信号Srを生成することができる。コントローラ800は、第1ゼロクロス検出回路940が生成したオンオフ検出信号Srに基づいてトライアック910をオンオフさせて、上記波数デューティを変えることによって、サーミスタ770の検出温度を目標温度に近づける温度制御を実行する。また、上述したように、第1ゼロクロス検出回路940の一端(全波整流ブリッジ回路D1の他端)は、トライアック910とハロゲンヒータ720との間に接続されているため、オンオフ検出信号Srは、トライアック910がオン状態のときにハイレベルとなり、トライアック910がオフ状態のときにローレベルとなる。従って、コントローラ800は、オンオフ検出信号Srに基づき、トライアック910がオン状態であるかオフ状態であるかを判断することができる。なお、上述した接続構成であれば、定着スイッチ930を遮断状態にしてハロゲンヒータ720への通電を行わずに、第1ゼロクロス検出回路940は、オンオフ検出信号Srを生成することができる。
第2ゼロクロス検出回路950は、交流電源ACSの上記一方の端子と上記他方の端子とに接続されており、交流電源ACSの電圧のゼロクロスタイミングに同期したゼロクロス検出信号Szを生成する公知の回路である。コントローラ800は、第2ゼロクロス検出回路950が生成するゼロクロス検出信号Szに基づき、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスしたことが検出されたことを認識することができる。
図4は、ハロゲンヒータ720の温度制御の実行時における交流電源ACSの電圧とヒータ制御信号Stとオンオフ検出信号Srとヒータ電流との関係を示すタイムチャートである。上述したように、トライアック910は、正常時であれば、オン指令を示すヒータ制御信号Stを受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスすると、オン状態となり、ハロゲンヒータ720を通電状態にする(図4のt1、t4、t7参照)。また、トライアック910は、オフ指令を示すヒータ制御信号Stを受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスすると、オフ状態となり、ハロゲンヒータ720を非通電状態にする(図4のt8参照)。
しかし、図4に示すように、交流電源ACSの電圧波形が正弦波形ではなく矩形波形に近い場合、ゼロクロスにおける電圧変化が急峻である。このため、トライアック910がオフ指令を受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスしても、トライアック910が正常にオフ状態にならず、ハロゲンヒータ720の温度制御が正常に実行されず、ハロゲンヒータ720の温度が過度に上昇するおそれがある。なお、プリンタ10が、図示しない無停電電源装置を備える場合、停電時に、この無停電電源装置によって電圧波形が矩形波形に近い電力が供給される場合も、同様に、トライアック910が正常にオフ状態にならないという問題が生じることがある。
ここで、トライアック910がオフ指令を受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスしても、トライアック910が正常にオフ状態にならない状態には、オン継続状態とオンオフ状態とがある。オン継続状態は、トライアック910がオフ指令を受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスしても、トライアック910が、オフ状態にならずに、少なくとも次に交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスになるまでオン状態が継続する状態である(図4のt8以降の一点鎖線で示すオンオフ検出信号Srの波形参照)。このオン継続状態では、ハロゲンヒータ720の温度制御が正常に実行されず、ハロゲンヒータ720の温度が過度に上昇する可能性が高い。このため、定着スイッチ930を遮断状態にすることが好ましい。例えば、複数のオフ指令基準期間Toff(後述)に亘って、連続的にオン継続状態が検出されたことを条件に、定着スイッチ930を遮断状態にすることが好ましい。
一方、オンオフ状態は、トライアック910がオフ指令を受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスすると、トライアック910は、交流電源ACSの電圧のゼロクロスのタイミングに同期して一時的にオフ状態になるが、次に交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスする前にオン状態に復帰する状態である(図4のt2からt3、t5からt6参照)。このオンオフ状態は、一時的な現象であり、その後、トライアック910が正常にオフ状態になり、ハロゲンヒータ720の温度制御が正常に実行される可能性があるため、少なくとも即時に、定着スイッチ930を遮断状態にすることは好ましくない。
そこで、コントローラ800は、トライアック910がオフ指令を受け、かつ、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスした場合、トライアック910がオン継続状態であるかオンオフ状態であるかを判別し、オン継続状態であれば定着スイッチ930を遮断状態にし、オンオフ状態であれば定着スイッチ930を接続状態に維持し、ハロゲンヒータ720の温度制御を継続させるオフ指令時判別処理を実行する。
図5は、オフ指令時判別処理を示すフローチャートである。プリンタ10に電源が投入されると、コントローラ800は、オフ指令時判別処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。なお、定着スイッチ930は、オフ指令時判別処理の開始当初、接続状態になっている。
オフ指令時判別処理では、まず、コントローラ800は、オフ指令を示すヒータ制御信号St(以下、単に、オフ指令という)を出力しており、かつ、上記ゼロクロス検出信号Szに基づき、第2ゼロクロス検出回路950が、交流電源ACSの電圧波形がゼロクロスしたことを検出(以下、ゼロクロスを検出という)したか否かを判断する(S10)。コントローラ800は、オフ指令を出力していることとゼロクロスを検出したことの少なくとも1つが満たされていないと判断した場合(S10:NO)、そのまま待機する。一方、コントローラ800は、オフ指令を出力しており、かつ、ゼロクロスを検出したと判断した場合(S10:YES)、第1ゼロクロス検出回路940が生成するオンオフ検出信号Srに基づき、トライアック910のオンオフ状態の検出結果を取得し、例えば不揮発性メモリ804に記憶する(S20)。
次に、コントローラ800は、所定の取得周期ごとの取得タイミング(図4の上向き矢印参照)が到来したか否かを判断する(S30)。この取得周期は、交流電源ACSの電圧の半波長期間より短い。コントローラ800は、取得タイミングが到来したと判断した場合(S30:YES)、S20の処理を繰り返し実行し、取得タイミングが到来していないと判断した場合(S30:NO)、オフ指令を出力しており、かつ、次のゼロクロスを検出したか否かを判断する(S40)。以下、オフ指令が出力されており、かつ、一のゼロクロスの検出タイミングから次のゼロクロスの検出タイミングまでの期間、より詳細には、オフ指令が出力されてから、ゼロクロスタイミングまでの期間を、オフ指令基準期間Toff(図4参照)という。
コントローラ800は、オフ指令を出力していることと次のゼロクロスを検出したことの少なくとも1つが満たされていないと判断した場合(S40:NO)、S30に戻り、オフ指令を出力しており、かつ、次のゼロクロスを検出したと判断した場合(S40:YES)、S20の処理によって不揮発性メモリ804に蓄積された複数回分のトライアック910のオンオフ状態の検出結果に基づき、オフ指令基準期間Toffにおけるトライアック910の状態が上記オンオフ状態であるというオンオフ条件が満たされたか否かを判断する(S50)。本実施形態では、コントローラ800は、複数回分のトライアック910のオンオフ状態の検出結果に、少なくとも1回分のオン状態の検出結果と、少なくとも1回分のオフ状態の検出結果とが含まれていれば、オンオフ状態であると判断する。
コントローラ800は、オンオフ条件が満たされたと判断した場合(S50:YES)、連続回数Kに1加算し(S60)、この連続回数Kが基準回数N(N:2以上)以上であるか否かを判断する(S70)。連続回数は、連続する複数のオフ指令基準期間Toffのそれぞれにおいて、オンオフ条件が満たされた回数である。コントローラ800は、連続回数Kが基準回数N以上であると判断した場合(S70:YES)、抑制処理と報知処理とを実行し(S80)、本オフ指令時判別処理を終了する。
抑制処理は、例えば、定着器700の定着ベルト710および加圧ローラ750の回転速度を遅くすることにより、シートWの搬送速度を遅くする。シートWの搬送速度が遅くなると、定着ベルト710がシートWに奪われる単位時間当たりの熱量が低下する。そうすると、シートWがニップ部Pを通過することによる定着ベルト710の温度の変動が小さくなるため、波数デューティが、より低い値に設定される。これにより、オフ指令基準期間Toffが長くなるため、オンオフ条件が満たされたか否かを、より精度よく判断することができる。なお、シートWの搬送速度を遅くすることは、定着部材による定着速度を遅くすることの一例である。報知処理では、コントローラ800は、例えば、オン継続状態になる可能性があるという警告情報を、表示部820や通信インターフェース840を介して外部に報知する。表示部820や通信インターフェース840は、報知部の一例である。一方、コントローラ800は、連続回数Kが基準回数N以上でないと判断した場合(S70:NO)、抑制処理および報知処理(S80)を実行せずに、本オフ指令時判別処理を終了する。
一方、S50で、コントローラ800は、オンオフ条件が満たされていないと判断した場合(S50:NO)、連続回数Kをゼロに初期化し(S90)、不揮発性メモリ804に蓄積された複数回分のトライアック910のオンオフ状態の検出結果に基づき、オフ指令基準期間Toffにおけるトライアック910の状態が上記オン継続状態であったというオン継続条件が満たされたか否かを判断する(S100)。コントローラ800は、オン継続条件が満たされたと判断した場合(S100:YES)、定着スイッチ930を接続状態から遮断状態に切り替えて(S110)、本オフ指令時判別処理を終了する。一方、コントローラ800は、オン継続条件が満たされていないと判断した場合(S100:NO)、トライアック910は正常に動作可能であるとして、定着スイッチ930を接続状態に維持して、本オフ指令時判別処理を終了する。
本実施形態によれば、オン継続条件が満たされたと判断された場合、定着スイッチ930が遮断状態に切り替えられる一方で、オンオフ条件が満たされたと判断された場合、定着スイッチ930が接続状態に維持される。これにより、ハロゲンヒータ720の温度制御が正常に実行できる場合でも定着スイッチ930による遮断が過度に実行されることを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、オンオフ条件が満たされたと判断した場合、定着ベルト710によるシートWの搬送速度が遅くなり、これに伴って、ハロゲンヒータ720の波数デューティが低い値に設定される。これにより、トライアック910のオフ指令期間が長くなるため、オンオフ条件およびオン継続条件のいずれが満たされたかを精度よく判断することができる。また、報知処理により、ハロゲンヒータ720の温度制御が正常に実行できなくなるおそれがあることを外部に報知することができる。
また、本実施形態によれば、連続回数Kが基準回数N以上であると判断された場合(S70:YES)、抑制処理が実行される。これにより、オンオフ条件が1回満たされただけで抑制処理を実行する場合に比べて、無駄に抑制処理が実行されることを抑えることができる。また、複数回分のトライアック910のオンオフ状態の検出結果を取得することにより、オン継続条件およびオンオフ条件のいずれが満たされたか否かを判断することができる。
また、本実施形態によれば、オフ指令基準期間Toffの始期は、オフ指令が出力されてから、最初にゼロクロスが検出されたタイミングである。これにより、オンオフ条件が満たされる可能性が最も高い期間で当該オンオフ条件の判断を行うことにより、適正かつ迅速にオンオフ条件が満たされたか否かを判断することができる。
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、トライアック910によるハロゲンヒータ720の温度制御は、波数制御によって行われたが、これに限定されず、交流電源ACSの電圧波形の位相に基づく位相制御によって行ってもよい。この場合、図5のS30における取得周期は、位相制御において交流電源ACSの電圧の半波長期間より短い期間に設定される制御周期よりも短い期間である。また、オフ指令基準期間は、通電切替素子のオフ指令を示す位相制御信号が出力され、かつ、交流電源の電圧の一のゼロクロスの検出タイミングから次のゼロクロスの検出タイミングまでの期間(正常であれば通電切替素子がオフ状態になるべき期間)であり、より詳細には、一のゼロクロスの検出タイミングからオン指令を示す位相制御信号が出力されるまでの期間である)。
上記実施形態において、第1ゼロクロス検出回路940の一端(全波整流ブリッジ回路D1の他端)は、トライアック910と交流電源ACSの上記一方の端子との間に接続されていても、第1ゼロクロス検出回路940は、オンオフ検出部として機能する。
また、上記実施形態の処理(図5)において、一部のステップの内容を変更したり、一部のステップを省略したり、他のステップと順番を入れ替えたりしてもよい。例えば、S50の処理において、コントローラ800は、複数回分のトライアック910のオンオフ状態の検出結果に、所定回数(複数回)分のオン状態の検出結果と、所定回数(複数回)分のオフ状態の検出結果とが含まれていれば、オンオフ状態であると判断してもよい。ただし、上記実施形態であれば、オンオフ条件が満たされたか否かを、より精度よく判断することができる。また、オンオフ状態のときに、オフ指令基準期間Toff内において一時的にオフになる第1期間とオン状態になるオフ期間とがゼロクロスタイミングを基準として予め定められる場合には、S20からS40の処理において、コントローラ800は、オンオフ条件が満たされたか否かの判断を、オフ指令基準期間Toffの全体ではなく、第1期間および第2期間のみ実行してもよい。また、取得周期は一定でなくてもよい。
また、図5において、コントローラ800は、オンオフ条件が満たされたと判断した場合(S50:YES)、S60およびS70の処理を実行せずに、S80の処理を実行してもよい。また、S80の報知処理は、連続回数Kが基準回数N以上でないと判断した場合(S70:NO)、に実行してもよい。
図5のS80の抑制処理は、シートWの搬送速度を遅くすることに限定されず、例えば、シートWの搬送速度は変えずに、シート供給部200によるシートの供給間隔を変えることにより、定着ベルト710による定着速度を遅くしてもよい。また、シートWの印刷動作(シートWの搬送)を停止させてもよい。さらに、ハロゲンヒータ720の温度制御の上記目標温度を低くすることによりハロゲンヒータ720の温度を下げてもよい。これらの構成によっても、オフ指令基準期間Toffが長くなるため、オンオフ条件が満たされたか否かを、より精度よく判断することができる。
上記実施形態のプリンタ10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。上記実施形態では、プリンタ10は、1色(ブラック)のトナーを用いて印刷を行うとしているが、印刷に用いられるトナー色の種類や色数はこれに限られない。
また、画像形成装置は、プリンタ単体に限らず、複写機、ファクシミリ装置や複合機でもよい。これらの複写機等にも本発明を適用することができる。
上記実施形態において、定着器700は、ベルト体の定着ベルト710を備えるものであったが、これに限定されず、ローラ体の定着ローラを備えるいわゆるローラタイプのものでもよい。
また、上記実施形態において1つのCPU801が実行する処理は、複数のCPUや1つまたは複数のASIC、1つまたは複数のCPUと1つまたは複数のASICとの組み合わせによって実行されるとしてもよい。コントローラ800は、CPU801といったプリンタ10の制御に利用されるハードウェアをまとめた総称であり、プリンタ10に存在する単一のハードウェアであるとは限らない。
また、上記実施形態では、ヒータとして、ハロゲンヒータ720を例示したが、これに限定されず、例えば、赤外線ヒータやカーボンヒータなどでもよい。また、上記実施形態では、温度センサとして、サーミスタ770を例示したが、これに限定されず、例えば、サーモスタットや温度ヒューズでもよい。