JP2017066996A - エンジン燃焼室の断熱構造 - Google Patents

エンジン燃焼室の断熱構造 Download PDF

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Abstract

【課題】ピストン本体頂面のスキッシュエリア面に断熱層を形成しつつ、当該断熱層に大きなクラックが発生するのを防止し、断熱層の損傷・剥離を抑える。
【解決手段】ピストン本体19の頂面におけるスキッシュエリア面12’の断熱層22を無機酸化物を含む層とするとともに、スキッシュエリア面12’以外の頂面の断熱層21を中空粒子31とバインダ材32とを含む層とした。
【選択図】図3

Description

本発明は、エンジン燃焼室の断熱構造に関するものである。
従来、エンジン部品のような高温ガスに晒される金属製品では、高温ガスからの熱伝達、すなわち冷却損失を抑制するために、その金属製母材の表面に断熱層を形成することが行われている。その一例として、エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面に、ジルコニア等の無機酸化物や、中空粒子を含有する有機系材料からなる断熱層を形成することが知られている。
ところで、燃焼室を区画するピストン本体の頂面とシリンダヘッドの下面との間隙部にスキッシュエリアが形成されることがある。このようなピストン本体の頂面のうち、スキッシュエリアを形成する面(スキッシュエリア面)に断熱層が設けられている場合、当該断熱層の温度は高温となり、延いてはスキッシュエリア面自体が高温となる。このため、燃焼工程において、スキッシュエリアに高温高圧のエンドガス(点火プラグから遠い場所にある未燃焼の混合気)が流れ込んだ際に、高温のスキッシュエリア面により、エンドガスからスキッシュエリア面への放熱が妨げられて、ノッキングが発生し得る。そして、スキッシュエリア面に形成された断熱層にクラックが生じ、断熱層の損傷・剥離が引き起こされ、断熱性能が失われる。
そこで、ピストン本体の頂面のうち、スキッシュエリア面上には断熱層を形成せず、それ以外の部分にのみ断熱層を形成した内燃機関が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の内燃機関によれば、スキッシュエリア面上には断熱層を形成していないので、エンドガスからのスキッシュエリア面への放熱が促進され、ノッキングの発生が抑制される。
特開2011−169232号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、スキッシュエリアにおけるノッキング発生を抑制できるものの、冷却損失の低減という観点からは、スキッシュエリア面も含めたピストン本体の頂面全体に断熱層を形成することが望ましい。
そこで、本発明では、スキッシュエリア面に断熱層を形成しつつ、ノッキングの発生によって当該断熱層に大きなクラックが生じるのを防止し、断熱層の損傷・剥離を抑えることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明では、ピストン本体の頂面におけるスキッシュエリア面の断熱層を無機酸化物を含む層とするとともに、スキッシュエリア面以外の頂面の断熱層を中空粒子とバインダとを含む層とした。
すなわち、ここに開示するエンジン燃焼室の断熱構造は、エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面に断熱層が設けられたものであって、上記ピストン本体の頂面は、上記燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア面を備えており、上記スキッシュエリア面に形成された断熱層は、無機酸化物を含み、上記ピストン本体の頂面における上記スキッシュエリア面以外の頂面に形成された断熱層は、多数の中空粒子と、該中空粒子を上記ピストン本体の頂面に保持するとともに上記中空粒子間を埋めて上記断熱層の母材を形成するバインダとを含むことを特徴とする。
本発明によれば、スキッシュエリア面以外の頂面には中空粒子とバインダからなる、より断熱性能の高い断熱層を形成するとともに、スキッシュエリア面にはより耐熱性の高い無機酸化物からなる断熱層を形成することにより、ピストン本体の頂面全体の断熱性能を得つつ、スキッシュエリア面の断熱層の耐熱性を高めることができる。
好ましい態様では、上記無機酸化物は、ZrOである。これにより、スキッシュエリア面の断熱層の耐熱性を効果的に向上させることができる。
好ましい態様では、上記バインダは、シリコーン系樹脂である。これにより、スキッシュエリア面以外の頂面における断熱層の熱伝導性を低下させることができるとともに、ピストン本体の頂面と断熱層との優れた密着性を得ることができる。
好ましい態様では、上記中空粒子は、ガラスバルーンである。これにより、スキッシュエリア面以外の頂面における断熱層の熱伝導性を低くすることができるとともに、その強度も向上させることができる。
以上述べたように、本発明によると、ピストン本体の頂面全体の断熱性能を得つつ、スキッシュエリア面の断熱層の耐熱性を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンを模式的に示す断面図である。 図2は、図1の実施形態に係るピストンの冠面を示す平面図である。 図3は、図2のピストンの縦断面図である。 図4は、図3のキャビティ部に形成された断熱層の拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
<エンジンの構成>
図1に示す直噴エンジンEは、ピストン1、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、シリンダヘッド3の吸気ポート5を開閉する吸気バルブ4、排気ポート7を開閉する排気バルブ6、インジェクタ8、点火プラグ9を備える。ピストン1がシリンダブロック2のシリンダボア内を往復動する。
エンジンの燃焼室は、ピストン1の冠面10、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、吸排気バルブ4,6の傘部前面(燃焼室に臨む面)で形成される。図1、図2に示すように、ピストン1の冠面10の略中央部には、燃焼室のキャビティを形成する凹陥状のキャビティ部11が設けられている。また、冠面10の外縁側には、燃焼室のキャビティから離れた外縁側にスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア部12が存在する。本実施形態に係るピストン1の冠面10において、スキッシュエリア部12はスキッシュエリア部12a,12b,12c,12dからなっている。
<断熱層>
図3に示すように、ピストン1は、該ピストン1の基材であるピストン本体19と、エンジンEの燃焼室の冷却損失低減の観点からピストン本体19の頂面に設けられた断熱層21,22とを備えている。
ピストン本体19はT7処理又はT6処理を施してなるアルミニウム合金製である。ピストン本体19の頂面は、上記キャビティ部11を構成するキャビティ面11’と、上記スキッシュエリア部12を構成するスキッシュエリア面12’とを備えている。本実施形態において、断熱層22は、上記スキッシュエリア面12’上に設けられており、断熱層21は、スキッシュエリア面12’以外の頂面、例えば上記キャビティ面11’等の頂面に設けられている。
断熱層21は、図4に示すように、中空粒子31と、バインダ材(バインダ)32とを含む層である。
すなわち、断熱層21は、バインダ材32と、その中に分散された多数の中空粒子31とを含む。バインダ材32は、中空粒子31をピストン本体19の頂面に保持するとともに、中空粒子31間を埋めて断熱層21の母材を形成する。バインダ材32は例えばシリコーン系樹脂などの低熱伝導性材料であるとともに、中空粒子31は、その内部空間に熱伝導性の低い空気を含有する。このため、断熱層21は低熱伝導性の層になっている。
中空粒子31としては、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、エアロゲルバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ(SiO))又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ(Al))を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましく、特にガラスバルーンを採用することが好ましい。これにより、断熱層21の熱伝導性を低くすることができるとともに、その強度も向上させることができる。
なお、中空粒子31は好ましくは球状である。中空粒子31の平均粒径は、断熱層21の断熱性向上の観点から、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上45μm以下、特に好ましくは15μm以上40μm以下である。断熱層21中における中空粒子31の含有量は、断熱層21の断熱性向上の観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上45質量%以下、特に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
バインダ材32としては、低熱伝導性材料であるシリコーン系樹脂を用いることができ、例えば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン系樹脂を好ましく用いることができる。シリコーン系樹脂の具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。これにより、断熱層21の熱伝導性を低下させることができるとともに、ピストン本体19の頂面と断熱層21との優れた密着性を得ることができる。
断熱層22は、無機酸化物からなる。具体的には例えば、ZrO(CaOやY、MgOなどにより安定化したものを含む)やAl、TiO、Cr、MgO等の無機酸化物であり、特に好ましくはZrOである。このような無機酸化物からなる断熱層22は、後述するように上記無機酸化物の粉末を溶射すること等により形成することができる。
ここで、本実施形態に係る断熱構造は、ピストン本体19のスキッシュエリア面には断熱層22を備え、スキッシュエリア面以外の頂面には断熱層21を備えていることを特徴とする。
本構成では、上述のごとくノッキングが生じ得るスキッシュエリア面12’には、耐熱性の高い無機酸化物からなる断熱層22が形成されている。そして、スキッシュエリア面12’以外の頂面には、優れた断熱性能を得る観点から、中空粒子31とバインダ材32からなる、より断熱性能の高い断熱層21が形成されている。これにより、ピストン本体19の頂面全体において高い断熱性能を得つつ、スキッシュエリア面12’の耐熱性を高めることができ、スキッシュエリア面の断熱層22に大きなクラックが生じるのを抑えることができる。
なお、断熱層21の厚さは、優れた断熱性能を得る観点から、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上120μm以下、特に好ましくは60μm以上100μm以下である。
また、断熱層22の厚さは、断熱層21と同程度の厚さか、又はその半分程度以下であってもよく、好ましくは15μm以上150μm以下、より好ましくは25μm以上120μm以下、特に好ましくは30μm以上100μm以下である。断熱層22の厚さが断熱層21の厚さの半分程度以下である場合には、断熱層22にクラックが生じたときであっても、そのクラックの進行を効果的に抑制することができる。
<断熱層の形成方法>
ピストン本体19と断熱層21,22を形成するための断熱材料を準備する。
ピストン本体19については、その頂面にキャビティ形成用の凹部を形成しておき、脱脂処理により、ピストン本体19の頂面に付着している油脂や指紋等の汚れを除去する。
また、断熱層21の断熱材料としてのバインダ材32としての液状シリコーン樹脂と中空粒子31としてのガラスバルーンとを攪拌・混合した断熱材料を準備する。必要に応じて、増粘剤や希釈溶剤を添加して断熱材料の粘度を調整する。
さらに、断熱層22の断熱材料としてのY安定化ZrO(YSZ)粉末を準備する。
ピストン本体19と断熱材料、特にシリコーン樹脂との付着力を高めるべく、ピストン本体19の頂面に粗面化処理を施すことが好ましい。粗面化処理としては、例えばサンドブラスト等のブラスト処理を行うことが好ましい。例えば、ブラスト処理は、エアーブラスト装置を使用し、研削材として粒度#30のアルミナを用い、圧力0.39MPa、時間45秒、距離100mmの処理条件で行うことができる。なお、これに限らず、ピストン本体19がAl合金からなる場合、アルマイト処理によってピストン本体19の頂面に微小凹凸を形成するようにしてもよい。例えば、アルマイト処理は、シュウ酸浴を用い、浴温20℃、電流密度2A/dm、時間20分の処理条件で行うことができる。
まず、ピストン本体19のスキッシュエリア面以外の頂面に、例えばマスキングテープや樹脂系のマスキング膜等を用いてマスキングを行った後、スキッシュエリア面に上記YSZ粉末をプラズマ溶射して、断熱層22を形成する。このとき、プラズマ溶射条件の調整によって多孔質で低熱伝導率且つ耐熱性の高い断熱層22を得ることができる。
次に、上記マスキングを取り除き、断熱層22が形成されたスキッシュエリア面上に新たにマスキングを施す。そして、上記シリコーン樹脂と中空粒子31とを撹拌・混合した断熱材料を、ピストン本体19のスキッシュエリア面以外の頂面にスプレーや刷毛等を用いて塗布する。続いて、熱風乾燥、赤外線ヒータ等により、塗布された断熱材料の予備乾燥を行う。
そして、必要に応じて、当該塗布と予備乾燥を繰り返し(重ね塗り)、所望の塗布厚さにする。
次に、スキッシュエリア面以外の頂面に塗布された断熱材料に対して、例えば、180℃前後の温度で数時間ないし数十時間の加熱処理を行う。これにより、シリコーン樹脂(バインダ)が硬化して、多数の中空粒子31が密に充填され、それら粒子間がバインダ材32で埋まった断熱層21が得られる。また、スキッシュエリア面上に施されたマスキングも焼失する。
また、断熱材料の塗布方法の一形態として、ピストン本体19のスキッシュエリア面以外の頂面に断熱材料を載せ、その頂面形状に倣った成形面を有する成形型によって断熱材料を上記頂面に押し付けて頂面全体に拡げてもよい。なお、この方法によれば、成形中に成形型を加熱することにより、断熱層21の焼成も同時に行うことができる。これにより、断熱層21の製造工程を簡略化することができる。また、断熱層21の焼成を同時に行う場合には、ピストン本体19を、例えばピストンスカートの内側から水冷又は空冷する等の方法によって冷却する構成とすることができる。これにより、断熱層21とピストン本体19の頂面との密着性を向上させることができる。
本発明は、ピストン本体頂面のスキッシュエリア面に断熱層を形成しつつ、当該断熱層に大きなクラックが発生するのを防止し、断熱層の損傷・剥離を抑えることができるので、極めて有用である。
1 ピストン
11’ キャビティ面
12’ スキッシュエリア面
19 ピストン本体
21 断熱層
22 断熱層
31 中空粒子
32 バインダ材(バインダ)
E エンジン

Claims (4)

  1. エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面に断熱層が設けられたエンジン燃焼室の断熱構造であって、
    上記ピストン本体の頂面は、上記燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア面を備えており、
    上記スキッシュエリア面に形成された断熱層は、無機酸化物を含み、
    上記ピストン本体の頂面における上記スキッシュエリア面以外の頂面に形成された断熱層は、多数の中空粒子と、該中空粒子を上記ピストン本体の頂面に保持するとともに上記中空粒子間を埋めて上記断熱層の母材を形成するバインダとを含む
    ことを特徴とするエンジン燃焼室の断熱構造。
  2. 請求項1において、
    上記無機酸化物は、ZrOである
    ことを特徴とするエンジン燃焼室の断熱構造。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    上記バインダは、シリコーン系樹脂である
    ことを特徴とするエンジン燃焼室の断熱構造。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記中空粒子は、ガラスバルーンである
    ことを特徴とするエンジン燃焼室の断熱構造。
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