JP2019074009A - 内燃機関のピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストンの冠面に断熱膜が形成される内燃機関において、高エンジン回転速度域での吸気温度の加熱を抑える。【解決手段】ピストンの冠面の中央部に位置する第1領域には、第1断熱膜が形成されている。中央部よりも外側の外周部に位置する第2領域と、中央部と外周部の間に位置する第3領域とには、第2断熱膜が形成されている。第1断熱膜は、内側層と外側層を有している。内側層は、アルマイトから構成されている。アルマイトは、ピストンの母材の陽極酸化処理により形成される多孔質アルミナである。外側層は、封孔膜から構成されている。封孔膜は、シリコン酸化物を主成分とする封孔剤の焼成処理により形成される。第2断熱膜は、アルマイトから構成されている。第2断熱膜のアルマイトは、内側層のアルマイトよりも薄い。従って、第2断熱膜は、第1断熱膜よりも薄い。【選択図】図1

Description

この発明は、内燃機関のピストンに関し、より詳細には、その冠面に断熱膜が形成される内燃機関のピストンに関する。
特開2017−066995号公報は、内燃機関のピストンの冠面に断熱膜を形成する技術を開示する。このピストンは、キャビティを形成するキャビティ部と、燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア部と、を備えている。断熱膜は、キャビティ部およびスキッシュエリア部の両表面に形成されている。キャビティ部の表面には、十分な厚さの断熱膜が形成されている。スキッシュエリア部の表面には、キャビティ部の表面の断熱膜の半分以下の厚さの断熱膜が形成されている。
断熱膜の膜厚が大きくなると、内燃機関の断熱性能が高くなる。この点、上記ピストンによれば、キャビティ部の表面の断熱膜の膜厚が大きいので、内燃機関の断熱性能を高めることができる。一方、断熱膜の膜厚が大きくなると、ノッキングの発生に伴って断熱膜に生じるクラックのサイズが拡大し易い。但し、ノッキングは、スキッシュエリアにおいて発生し易い。この点、上記ピストンによれば、スキッシュエリア部の断熱膜の膜厚が小さいので、ノッキングが発生し易い領域において、クラックのサイズが拡大するのを抑えることができる。
特開2017−066995号公報
特開2017−066995号公報の技術は、断熱膜の膜厚化とノッキングの発生がトレードオフの関係にあることに着目したものであると言える。これに関し、本発明者の知見によれば、エンジンの高回転速度域では、断熱膜の膜厚を大きくすると、筒内に吸入された空気の温度(以下、「吸気温度」ともいう。)が下がり難くなることから、ノッキングが発生し易くなることが明らかになった。そのため、断熱膜の膜厚を大きくした場合には、このような高エンジン回転速度域においてノッキングが多発する可能性が高い。従って、高エンジン回転速度域での吸気温度の上昇を抑えるための改良が望まれる。
この発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ピストンの冠面に断熱膜が形成される内燃機関において、高エンジン回転速度域での吸気温度の上昇を抑えることのできる技術を提供することを目的とする。
本発明は、冠面に断熱膜が形成される内燃機関のピストンであり、次の特徴を有する。
前記冠面は、中央部に位置する第1領域と、前記中央部よりも外側の外周部に位置する第2領域と、を備える。
前記第1領域には、多孔質アルミナからなる内側層と、前記内側層の多孔質アルミナの表面に開口する細孔を封じる封孔膜または溶射膜からなる外側層と、を含む第1断熱膜が形成される。
前記第2領域には、多孔質アルミナからなる第2断熱膜が形成される。
前記第2断熱膜の多孔質アルミナの表面に開口する細孔は、外部に露出する。
前記第2断熱膜の膜厚は、前記第1断熱膜の膜厚よりも小さい。
本発明において、前記第2断熱膜の多孔質アルミナの膜厚が、前記内側層の多孔質アルミナの膜厚よりも小さくてもよい。
本発明において、前記冠面が、バルブリセスを形成する第3領域を更に備えていてもよい。
前記第3領域には、多孔質アルミナからなる第3断熱膜が形成されていてもよい。
前記第3断熱膜の膜厚は、前記第2断熱膜の膜厚と等しくてもよい。
本発明によれば、第1断熱膜では細孔が封じられているので、第1領域においては第1断熱膜を経由した燃焼ガスの熱放出を抑えることができる。従って、内燃機関の断熱性能を高めることができる。また、第2断熱膜は相対的に膜厚が小さく、また、細孔が外部に露出しているので、第2領域においては第2断熱膜を経由した熱放出を促進することができる。従って、高エンジン回転速度域での吸気温度の上昇を抑えることが可能になる。
本発明の実施の形態1に係るピストンの上面図である。 図1のA−A線断面図である。 アルマイトの膜厚TFと燃費改善率との関係を示した図である。 アルマイトの膜厚TFと吸気効率の変化率との関係を示した図である。 ピストンの壁面温度と、膜厚TFとの関係を示した図である。 本発明の実施の形態1に係るピストンによる効果を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係るピストンによる効果を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係るピストンの製造例を説明する図である。 本発明の実施の形態2に係るピストンの上面図である。 図9のA−A線断面図である。 本発明の実施の形態2に係るピストンの製造例を説明する図である。 溶射処理後の溶射膜S1とアルマイトA3の境界の近傍の断面模式図である。 本発明の実施の形態1の断熱膜が適用された圧縮自着火式エンジンのピストンの断面模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
先ず、図1乃至図8を参照して、本発明の実施の形態1に係る内燃機関のピストンについて説明する。
[実施の形態1に係るピストンの説明]
実施の形態1に係るピストンは、吸気弁と排気弁を2つずつ備える火花点火式エンジンに適用される。火花点火式エンジンは、燃焼室内にタンブル流が生成されるエンジンでもよい。図1は、実施の形態1に係るピストンの上面図である。図1に示すように、ピストン10の冠面12は、中央部に位置する第1領域14と、中央部よりも外側の外周部に位置する第2領域16と、中央部と外周部の間に位置する第3領域18と、を備えている。第1領域14は、燃焼初期の火炎が少なくとも接触する領域である。タンブル流が生成される場合は、このタンブル流も第1領域14に接触する。第2領域16は、スキッシュエリアを形成する領域であり、燃焼後期の火炎が接触する領域でもある。第3領域は、バルブリセスを形成する領域である。第1領域14には、第1断熱膜20が形成されている。第2領域16と第3領域18には、第2断熱膜22が形成されている。
図2は、図1のA−A線断面図である。図2に示すように、第1断熱膜20は、内側層20aと外側層20bの二層構造の膜である。内側層20aは、アルマイトから構成されている。アルマイトは、ピストン10の母材(具体的には、アルミニウム合金)の陽極酸化処理により形成される多孔質アルミナである。多孔質アルミナは、母材の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有しており、尚且つ、母材の単位体積当たりの熱容量よりも低い熱容量を有している。外側層20bは、封孔膜から構成されている。封孔膜は、シリコン酸化物(例えば、ポリシロキサン、ポリシラザン)を主成分とする封孔剤の焼成処理により形成される。封孔膜は、多孔質アルミナの表面の開口部を覆って当該表面を平滑化する目的で形成される。
第2断熱膜22は、単層構造の膜である。第2断熱膜22は、アルマイトから構成されている。第2断熱膜22のアルマイトは、内側層20aのアルマイトと同じく、ピストン10の母材の陽極酸化処理により形成される多孔質アルミナである。第2断熱膜22のアルマイトの熱特性(即ち、熱伝導率および単位体積当たりの熱容量)は、内側層20aのアルマイトの熱特性と同じである。但し、第2断熱膜22のアルマイトは、内側層20aのアルマイトよりも薄い。従って、第2断熱膜22は、第1断熱膜20よりも薄い。一例として、第2断熱膜22のアルマイトの厚さは10〜30μmであり、内側層20aのアルマイトの厚さは20〜90μmである。また、第2断熱膜22と母材の境界は、内側層20aのアルマイトと母材の境界よりも冠面12の内側に位置している。この理由は、陽極酸化処理に由来するものである(詳細は後述)。
[アルマイトの膜厚に関する問題点]
上述した低い熱伝導率を有するアルマイトをピストンの冠面に設ければ、燃焼室内の遮熱性を高めて冷却損失の低減を図ることができる。図3は、アルマイトの膜厚TFと燃費改善率との関係を示した図である。図3に示すように、膜厚TFが大きくなるにつれて燃費の改善率が高くなる。これは、アルマイトを設けることで冷却損失の低減が図られていることを裏付けている。燃費の改善率は、膜厚TFがTF5のときに最も高くなる。従って、燃費の観点からすると、膜厚TF5のアルマイトが最適であると言える。
ところが、高エンジン回転速度域では、アルマイトの膜厚TFが大きくなることで吸気効率が下がるという問題がある。図4は、アルマイトの膜厚TFと吸気効率の変化率との関係を示した図である(但し、エンジン回転速度NE=6800rpm)。この変化率は、アルマイトを設けていない場合の膜厚TF(TF0)を基準として算出したものである。図4に示すように、膜厚TFがTF2以下では、変化率が正の値となる。しかし、膜厚TFがTF3以上になると、変化率が負の値に転じる。従って、高エンジン回転速度域での吸気効率の観点からすると、膜厚TF2以下のアルマイトが望ましいと言える。
図4の結果は、図5から説明することができる。図5は、ピストンの壁面温度(つまり、冠面温度)と、膜厚TFとの関係を示した図である。図5に示すように、膜厚TFが大きくなると、膨張行程での壁面温度のピークが高くなる。これは、アルマイトの低い熱容量にも関わらず、膜厚TFが大きくなることで、アルマイト全体が一時的に蓄える熱量が多くなるためである。しかし、図5の左方に示すように、膜厚TFがTF8(>TF7)になると、吸気行程の初期での壁面温度も高くなる。これは、アルマイト全体が蓄える熱量が多くなることで、膨張行程の中期以降において壁面温度が下がり難くなるためである。このような温度特性は、エンジンの回転速度域に関係なく観察される。しかし、高エンジン回転速度域では、サイクル間隔が短くなるため、アルマイトが蓄えた熱が燃焼室の外部に放出され難くなる。故に、高エンジン回転速度域では、アルマイトの膜厚TFが大きくなることで筒内に吸入された空気の温度(つまり、吸気温度)が下がり難くなり、この結果、吸気効率が下がってしまう。
[実施の形態1に係るピストンによる効果]
この点、実施の形態1に係るピストンによれば、次の効果を奏することができる。図6乃至図7は、実施の形態1に係るピストンによる効果を説明する図である。図6には、第1断熱膜20の断面が描かれており、図7には、第2断熱膜22の断面が描かれている。図6および図7に示すように、アルマイト(つまり、内側層20a)には、複数の細孔が形成されている。これらの細孔は、陽極酸化処理の際に形成されるものであり、表面に開口する細孔Aと、内部の細孔Bと、に大別される。細孔Aは、封孔剤の焼成処理により封止される。細孔Bの一部も、封孔剤の焼成処理により封止される。
2種類の細孔A,Bが形成されていることで、陽極酸化処理後の冠面(つまり、アルマイトの表面)は、陽極酸化処理前の冠面(つまり、母材の表面)に比べて粗くなる。冠面が粗いほど、冠面の表面積が拡大する。冠面の表面積が拡大すると、燃焼ガスの熱が伝わることのできる面積(以下、「伝熱面積」ともいう。)も拡大する。従って、アルマイトの表面が外部に露出する第2断熱膜22は、広い伝熱面積を有することになる。一方、封孔剤の焼成処理を行うと、冠面が封孔膜で覆われる。そのため、焼成処理後の冠面は焼成処理前の冠面に比べて滑らかになる。そして、冠面が滑らかになれば、伝熱面積が減少する。つまり、アルマイトの表面が封孔膜で覆われた第1断熱膜20は、狭い伝熱面積を有することになる。
このように、実施の形態1においては、狭い伝熱面積を有し、尚且つ、膜厚の大きい第1断熱膜20が第1領域14に形成されている。また、広い伝熱面積を有し、尚且つ、膜厚の小さい第2断熱膜22が第2領域16および第3領域18に形成されている。そのため、第1領域14においては第1断熱膜20を経由した燃焼ガスの熱放出を抑えることができる。また、第2領域16および第3領域18においては、第2断熱膜22を経由した燃焼ガスの熱放出を促進することができる。つまり、実施の形態1に係るピストンによれば、第1断熱膜20の優れた断熱作用により、膨張行程の初期において冠面温度のピークを高めることができる。また、第2断熱膜22の優れた放熱作用により、膨張行程の中期以降において冠面温度を十分に下げることが可能になる。従って、第1断熱膜20の膜厚を大きい値に設定した場合であっても、高エンジン回転速度域において吸気効率が下がるのを抑えることが可能になる。
[実施の形態1に係るピストンの製造例]
図8は、実施の形態1に係るピストンの製造例を説明する図である。実施の形態1に係るピストンは、STEP1〜STEP3の3つの工程を経て製造される。STEP1は、1回目の陽極酸化処理である。1回目の陽極酸化処理では、成膜領域に電解液(例えば、シュウ酸、硫酸等の水溶液)を供給して成膜領域の母材を酸化する。この成膜領域は、図1で説明した第1領域14に相当する。1回目の陽極酸化処理に際しては、図1で説明した第2領域16および第3領域18にマスキングが施される。1回目の陽極酸化処理を経ることで、成膜領域に膜厚tf1のアルマイトA1が形成される。
STEP2は、2回目の陽極酸化処理である。2回目の陽極酸化処理では、1回目の陽極酸化処理で使用したマスキングを一旦除去し、冠面12の全域に電解液を供給して酸化する。2回目の陽極酸化処理を経ることで、冠面12の全域に膜厚tf2のアルマイトA2が形成される。この結果、中央部のアルマイト(A1+A2)の膜厚は、膜厚(tf1+tf2)となる。なお、陽極酸化処理は、母材を消費しながらアルマイトを生成する処理である。そのため、STEP2に示すように、アルマイトA1の外側ではなく、アルマイトA1の内側にアルマイトA2が形成される。また、STEP2には示されていないが、中央部では陽極酸化処理が2回行われているので、アルマイト(A1+A2)と母材の境界は、アルマイトA2と母材の境界よりも冠面12の内側に位置することになる。
STEP3は、封孔剤の焼成処理である。焼成処理では、アルマイト(A1+A2)の表面に封孔剤を塗布し、適宜乾燥させた後に焼成する。焼成処理では、1回目の陽極酸化処理で使用したマスキングを、アルマイトA2の露出領域に施す。つまり、マスキングを再利用する。焼成処理を経ることで、アルマイト(A1+A2)の表面に封孔膜が形成される。
実施の形態2.
次に、図9乃至図12を参照して、本発明の実施の形態2に係る内燃機関のピストンについて説明する。
[実施の形態2に係るピストンの説明]
実施の形態2に係るピストンは、実施の形態1に係るピストンと同一の構成の火花点火式エンジンに適用される。図9は、実施の形態2に係るピストンの上面図である。図9に示すように、ピストン30の冠面12は、中央部に位置する第1領域14と、中央部よりも外側の外周部に位置する第2領域16と、中央部と外周部の間に位置する第3領域18と、を備えている。第2領域16と第3領域18には、第2断熱膜22が形成されている。ここまでは、図1で説明したピストン10と同一である。ピストン10との相違点は、第1領域14に第1断熱膜32が形成されている点においてである。
図10は、図9のA−A線断面図である。図10に示すように、第1断熱膜32は、内側層32aと外側層32bの二層構造の膜である。内側層32aは、アルマイト(多孔質アルミナ)から構成されている。外側層32bは、封孔膜または溶射膜から構成されている。封孔膜は、実施の形態1で使用した封孔剤に、中空シリカ等の中空粒子を分散させた中空粒子入り封孔剤の焼成処理により形成される。溶射膜は、ジルコニア、アルミナ、チタニアといったセラミックスの粉末、または、サーメット、ムライト、コージライト、ステアタイトなどの複合セラミックスの粉末の溶射処理と、その後の表面研磨処理と、によって形成される。封孔膜または溶射膜は、多孔質アルミナの表面の開口部を覆って平滑化する目的で形成される。
外側層32bを構成する封孔膜または溶射膜は、アルマイトと同様に多孔質構造を有している。そのため、母材の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有しており、尚且つ、母材の単位体積当たりの熱容量よりも低い熱容量を有している。
外側層32bを構成する封孔膜または溶射膜の膜厚は、一例として、10〜60μmである。内側層32aまたは第2断熱膜22のアルマイトの厚さは、一例として、10〜30μmである。
[実施の形態2に係るピストンによる効果]
実施の形態2に係るピストンによる効果は、基本的に実施の形態1に係るピストンと同じである。即ち、実施の形態2においては、狭い伝熱面積を有し、尚且つ、膜厚の大きい第1断熱膜32が第1領域14に形成されている。また、広い伝熱面積を有し、尚且つ、膜厚の小さい第2断熱膜22が第2領域16および第3領域18に形成されている。そのため、第1領域14においては燃焼ガスの熱がピストンの内部に放出されるのを抑えることができ、第2領域16および第3領域18においてはこの熱放出を促進することができる。従って、実施の形態2に係るピストンによれば、第1断熱膜32の膜厚を大きい値に設定した場合であっても、高エンジン回転速度域において吸気効率が下がるのを抑えることが可能になる。
[実施の形態2に係るピストンの製造例]
図11は、実施の形態2に係るピストンの製造例を説明する模式図である。実施の形態2に係るピストンは、STEP1〜STEP3の3つの工程を経て製造される。STEP1は、陽極酸化処理である。陽極酸化処理では、成膜領域に電解液(例えば、シュウ酸、硫酸等の水溶液)を供給して成膜領域の母材を酸化する。この成膜領域は、冠面12の全域に相当する。陽極酸化処理を経ることで、成膜領域に膜厚tf3のアルマイトA3が形成される。
STEP2は、溶射処理である。溶射処理では、ジルコニア等の溶射粉末が冠面12に噴き付けられる。溶射処理に際しては、図9で説明した第2領域16および第3領域18に、マスキングが施される。溶射処理を経ることで、中央部のアルマイトA3の上に膜厚tf4の溶射膜S1が形成される。図12は、溶射処理後の溶射膜S1とアルマイトA3の境界の近傍の断面模式図である。図12に示すように、溶射膜S1とアルマイトA3の境界においては、アルマイトA3の細孔に溶射膜S1の一部が入り込んで硬化している。そのため、アンカー効果によって両者の接着力が高められている。
STEP3は、表面研磨処理である。表面研磨処理では、砥石、エンドミル等を用いた加工により溶射膜S1の表面が平滑化される。表面研磨処理を経ることで中央部のアルマイトA3の表面に溶射膜S1が形成される。
なお、図11においては、溶射処理と表面研磨処理を行う製造例を説明したが、中空粒子入り封孔剤の焼成処理を行う場合は、図11のSTEP2において、中央部に中空粒子入り封孔剤を塗布し、適宜乾燥させた後に焼成すればよい。焼成処理を経ることで、中央部のアルマイトA3の表面に封孔膜が形成される。
その他の実施の形態.
上記実施の形態1,2においては、火花点火式エンジンのピストンを前提として説明した。しかし、図1や図9で説明した2種類の断熱膜は、圧縮自着火式エンジンにも適用できる。図13は、実施の形態1の断熱膜が適用された圧縮自着火式エンジンのピストンの断面模式図である。図13に示すピストン40は、冠面42の中央部にキャビティ44を備えている。キャビティ44の表面には、燃焼初期の火炎が少なくとも接触する。冠面42の外周部の表面には、燃焼後期の火炎が接触する。そのため、キャビティ44の表面に第1断熱膜20を形成し、外周部の表面に第2断熱膜22を形成すれば、上記実施の形態1(または実施の形態2)に係るピストンと同様の効果を得ることができる。なお、キャビティ44の表面に図9に示した第1断熱膜32を形成すれば、上記実施の形態2に係るピストンと同様の効果を得ることができる。
なお、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
10,30,40 ピストン
12,42 冠面
14 第1領域
16 第2領域
18 第3領域
20,32 第1断熱膜
20a,32a 内側層
20b,32b 外側層
22 第2断熱膜
44 キャビティ
A1 アルマイト
A2 アルマイト
A3 アルマイト
S1 溶射膜

Claims (3)

  1. 冠面に断熱膜が形成される内燃機関のピストンであって、
    前記冠面は、中央部に位置する第1領域と、前記中央部よりも外側の外周部に位置する第2領域と、を備え、
    前記第1領域には、多孔質アルミナからなる内側層と、前記内側層の多孔質アルミナの表面に開口する細孔を封じる封孔膜または溶射膜からなる外側層と、を含む第1断熱膜が形成され、
    前記第2領域には、多孔質アルミナからなる第2断熱膜が形成され、
    前記第2断熱膜の多孔質アルミナの表面に開口する細孔は、外部に露出し、
    前記第2断熱膜の膜厚は、前記第1断熱膜の膜厚よりも小さいことを特徴とする内燃機関のピストン。
  2. 前記第2断熱膜の多孔質アルミナの膜厚が、前記内側層の多孔質アルミナの膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のピストン。
  3. 前記冠面は、バルブリセスを形成する第3領域を更に備え、
    前記第3領域には、多孔質アルミナからなる第3断熱膜が形成され、
    前記第3断熱膜の膜厚が、前記第2断熱膜の膜厚と等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のピストン。
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