JP2017065216A - 繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法 - Google Patents

繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】射出成形体の表面に繊維構造体を含むインモールド材を一体化した積層成形体において、射出成形体とインモールド材との接着性を向上させることを目的とする。【解決手段】射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して型締めする工程と、キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形体の表面にインモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力PSを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる範囲に設定する、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法を用いる。【選択図】図5

Description

本発明は、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法に関する。
携帯電話,モバイル機器,家電製品の筐体や、車両,航空機等の内装部品、建材,家具等の外装部材として、インモールド材を表面に一体化させた積層成形体が知られている。このような積層成形体は、シートまたは予め賦形されたプリフォーム成形体である、インモールド材を金型のキャビティに配置し、射出成形するインモールド成形により製造される。
インモールド材として、織布、不織布、合成皮革、人工皮革等のような繊維構造体を用いることが知られている。例えば、下記特許文献1は、インモールド材として合成皮革を用いた積層成形体の製造方法を開示する。また、下記特許文献2は、織布、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革のいずれかを含むインモールド材を樹脂成形品に積層圧着する積層成形体の製造方法を開示する。
特開昭59−142937号公報 特開2006−281592公報
繊維構造体を含むインモールド材を用いてインモールド成形を行う場合、射出成形により製造される射出成形体とインモールド材との接着性が不充分であることがあった。本発明は、射出成形体の表面に繊維構造体を含むインモールド材を一体化した積層成形体において、射出成形体とインモールド材との接着性を向上させることを目的とする。
一般的には、インモールド成形においては、充填圧を高めれば高めるほど、溶融樹脂に圧力がかかるために、高い充填圧で射出した方がインモールド材と射出成形体とが密着して接着性が向上すると思われる。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、そのような技術常識に反して、外観不良に着目して設定された高い充填圧を採用した場合には、射出成形体とインモールド材との剥離強度が低くなることを見出し、本発明に想到するに至った。
すなわち、本発明の一局面は、可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して可動側型と固定側型とを型締めする工程と、キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面にインモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる範囲に設定する、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法である。このように、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値の60%以上を維持させる範囲に、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを設定することにより、射出成形体とインモールド材との接着性を著しく改善できる。型内ピーク圧力Pは、具体的には、射出成形の条件出しにおいて、型内ピーク圧力の変化に対する剥離強度の変化をプロットしたグラフから求めることができる。
また、本発明の他の一局面は、可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して可動側型と固定側型とを型締めする工程と、キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面にインモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に設定する、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法である。このように、射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXを求め、最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲になるように型内ピーク圧力Pを設定することにより、射出成形体とインモールド材との接着性を著しく改善できる。剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXは、具体的には、射出成形の条件出しにおいて、型内ピーク圧力の変化に対する剥離強度の変化をプロットしたグラフから求めることができる。
また、本発明の他の一局面は、可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して可動側型と固定側型とを型締めする工程と、キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面にインモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、繊維構造体は、0.45〜0.85g/cm3の見かけ密度を有し、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、21〜73MPaの範囲に設定する、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法である。繊維構造体を含むインモールド材が、0.45〜0.85g/cm3の見かけ密度を有するものである場合には、型内ピーク圧力Pが、21〜73MPaの範囲になるように充填圧力を設定することにより、射出成形体とインモールド材との接着性を著しく改善できる。
本発明によれば、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体とが強く接着された積層成形体を得られる。
図1は、実施形態の積層成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。 図2は、実施例の型内ピーク圧力が33.1MPaのときの射出成形体と人工皮革との接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。 図3は、実施例の型内ピーク圧力が20.2MPaのときの射出成形体と人工皮革との接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。 図4は、実施例の型内ピーク圧力が76.9MPaのときの射出成形体と人工皮革との接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。 図5は、実施例の各型内ピーク圧力で充填したときの剥離強度を示した結果を示すグラフである。
本実施形態の積層成形体の製造方法を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の積層成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。
図1中、1は繊維構造体を含むインモールド材,2aはキャビティ部2cを有する可動側型,2bはコア部2dを有する固定側型,2eはスプルーブッシュ,3は射出成形機の射出部本体,3aはノズル,3bはシリンダ,3cはインラインスクリュ,4はゲート,5は射出成形体,5aは溶融樹脂,10は積層成形体である。可動側型2aと固定側型2bとは一対になって射出成形用金型2を構成する。なお、本実施形態においては、可動側型2aは射出成形用金型の雌型、固定側型2bは射出成形用金型2の雄型であり、キャビティ部2cとコア部2dとはキャビティcを形成する。
本実施形態の積層成形体の製造方法においては、図1(a)に示すように、可動側型2aの凹状のキャビティ部2cに繊維構造体を含むインモールド材1をインサートさせる。このとき、インモールド材1の少なくとも一面には繊維構造体が露出しており、繊維構造体が露出した面を溶融樹脂が充填される側に向くように配することが好ましい。このようにインモールド材を配することにより、繊維構造体を形成する繊維同士の間に形成された空隙に溶融樹脂が侵入し、アンカー効果による高い接着性を発現させることができる。
また、溶融樹脂が充填される側に向くように配されるインモールド材の繊維構造体の面は、起毛処理されていることが、溶融樹脂の浸透性が向上する点から好ましい。
なお、インモールド材1は、溶融樹脂の充填時に位置ずれすることを抑制するために、キャビティ部2cに固定されてもよい。固定手段の具体例としては、例えば、可動側型表面に両面テープで貼り付けたり、真空吸着させたり、インモールド材自身の表面粘着性を用いて付着させたり、キャビティ部2cに突起を設けてインモールド材をはめ込んだりする方法等が挙げられる。
次に、図1(b)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型締めすることにより、キャビティcを形成する。そして、図1(c)に示すように、ゲート4から予め設定された所定量の溶融樹脂5aをキャビティcに充填する。詳しくは、射出成形機の射出部3を前進させ、ノズル3aを固定側型2bに形成されたスプルーブッシュ2eに当接させ、シリンダ3b内で溶融された溶融樹脂5aをインラインスクリュ3cで射出することにより、溶融樹脂5aがキャビティcに充填される。
本実施形態の積層成形体の製造方法においては、図1(c)に示す溶融樹脂を射出する工程において、キャビティcに溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にする圧力に基づいて設定する。
一般的に、インモールド成形においては、充填圧を高めれば高めるほど、溶融樹脂に圧力がかかるために、高い充填圧で射出した方がインモールド材と射出成形体とが密着して接着性が向上すると考えられていた。しかしながら、本発明者らは、繊維構造体を含むインモールド材を用いた場合には、高い充填圧で射出したときにはインモールド材と射出成形体との接着性が低下することを見出した。繊維構造体を含むインモールド材を用いた場合に、高い充填圧で射出したときに接着性が低下する現象は次の理由によると考える。
繊維構造体を含むインモールド材を用いたインモールド成形の場合、射出成形体を形成する溶融樹脂が繊維構造体に浸透することにより、アンカー効果を発揮して接着強度を向上させる。繊維構造体を含むインモールド材を用いたインモールド成形において、高い充填圧で射出した場合、圧縮性が高い繊維構造体に高い圧力が掛かることにより繊維が動かされて圧し潰され、溶融樹脂が浸透する空隙が減少してしまう。その結果、繊維構造体に溶融樹脂が深く浸透することが阻害されてアンカー効果が低下することにより、接着性が低下する。
本発明者らは、上述した知見に基づき、射出成形条件を剥離強度という視点で分析し、剥離強度に基づいて型内ピーク圧力を設定することにより、接着性の高い積層成形体を得た。本実施形態における、型内ピーク圧力を設定するいくつかの方法を以下に説明する。
第1の方法としては、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる範囲に設定する。型内ピーク圧力Pは、図5に示すように、射出成形の条件出しにおいて、型内ピーク圧力の変化に対する剥離強度の変化をプロットしたグラフから求めることができる。具体的には、図5に示した例の場合、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)は、型内ピーク圧力が40.4MPaのときに、0.946(N/mm)であった。そして、0.946(N/mm)の60%は、0.568(N/mm)である。図5の例の場合、型内ピーク圧力が20.2MPaのときには0.550(N/mm)、52.8MPaのときには0.846(N/mm)、68.9MPaのときには0.601(N/mm)、76.9MPaのときには0.496(N/mm)、である。従って、剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる、21〜73MPaの範囲に含まれるように型内ピーク圧力Pを設定することにより、得られる成形体の剥離強度を最大値Sの60%以上に維持させることができる。
なお、図5に示すように、最大値S(N/mm)の60%以上の範囲はアンカー効果が奏されることにより顕著に接着性が向上する範囲である。溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pは、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる範囲に設定するが、70%以上、さらには80%以上、とくには90%以上を維持させる範囲に設定することが、より高い接着性を得られる点から好ましい。
次に、第2の方法として、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に設定してもよい。図5に示した例の場合、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)は、型内ピーク圧力が40.4MPaのときに、0.946(N/mm)であった。そして、40.4MPaの0.5倍は20.2MPaであり、40.4MPaの1.8倍は72.7MPaである。従って、剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる、剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に型内ピーク圧力Pを設定することにより、得られる成形体の剥離強度を最大値Sの60%以上に維持させることができる。
なお、図5に示すように、最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲はアンカー効果が奏されることにより顕著に接着性が向上する範囲である。溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pは、積層成形体の射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に設定するが、0.7〜1.7倍の範囲、さらには0.9〜1.5倍の範囲を維持させる範囲に設定することが、より高い接着性を得られる点から好ましい。型内ピーク圧力Pが、剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの1.8倍を超える場合には、圧縮性が高い繊維構造体に高い圧力が掛かることにより繊維が動かされて圧し潰され、溶融樹脂が浸透する空隙が減少し、繊維構造体に溶融樹脂が深く浸透することが阻害されてアンカー効果が低下することにより、接着性が低下する。一方、型内ピーク圧力Pが、剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5倍未満である場合には、金型内での溶融樹脂の流動速度が低下することにより、溶融樹脂の表面の樹脂の粘度が高くなりすぎたりスキン層が形成されたりして、溶融樹脂が繊維構造体の深くまで浸透しにくくなり、接着性が低下する。
射出成形の型内ピーク圧力Pは、射出成形機により検知される射出圧力のピーク圧力Pから溶融樹脂が金型のゲートを通過するときに生じる圧力損失ΔPを減じた、P=P−ΔPから求められる。なお、圧力損失ΔPは、金型のゲート長さL、ゲート幅W、ゲート厚みh、樹脂粘度η、樹脂流速Qに基づき、
(式1)
から算出される。また、このような方法の代わりに、金型内圧センサーを用いて直接的に計測することもできる。
射出成形のその他の条件(樹脂温度、金型温度、射出後の保持圧力、冷却時間)は、熱可塑性樹脂の熱特性や溶融粘度、成形体の形状等に応じて適宜設定される。
射出される熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ABS系樹脂、PMMA樹脂のようなアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、各種ポリアミド系樹脂、ウレタン樹脂、COP樹脂等が挙げられる。また、これらは、フィラー等を配合したコンパウンド品や、複数種の樹脂をアロイ化またはブレンド化した混合品であってもよい。これらは用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる樹脂としては、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の耐衝撃性に優れた樹脂が好ましく用いられる。樹脂のメルトフローレート(MFR)も特に限定されないが、例えば、230℃で5〜20g程度のものが好ましく用いられる。
また、成形される射出成形体の厚さも特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる場合には、0.3〜2mm、さらには0.5〜1.5mmが好ましい範囲として選ばれる。
そして、図1(d)に示すように、冷却工程において、可動側型2aと固定側型2bとを型締めした状態で、キャビティc内のインモールド材1に一体化された射出成形体5を所定の時間冷却する。そして、図1(e)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型開きすることにより、成形された射出成形体5と射出成形体5に積層されたインモールド材1とが一体化された積層成形体10が取り出される。そして、積層成形体10の不要な部分、具体的には、インモールド材の端部をトリミングしたり、スプルーゲートやランナーを切断除去したりすることにより、最終的な製品形状に整えられる。
次に本実施形態の製造方法に用いられるインモールド材について詳しく説明する。
インモールド材の形態としては、本実施形態で参照する図1では、繊維構造体を含むシートを例示したが、シートに限定されず、不織布,織布,織物,編物,紙等の繊維構造体のシート,または繊維構造体を含む人工皮革や合成皮革等または天然皮革の皮革様シートに予め賦形したプリフォーム成形体であってもよい。プリフォーム成形体は、繊維構造体のシート,または繊維構造体を含む皮革様シート等を熱プレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形手段により賦形することにより得られる。インモールド材の厚さは、特に限定されないが、0.1〜2mm、さらには、0.2〜1mm程度であることが好ましい。
繊維構造体の繊維を形成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、変性PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリトリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6−12等のポリアミド系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、塩素系ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、などのポリオレフィン系樹脂;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂;及び、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマー等が挙げられる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、繊維構造体を形成する繊維の繊度は特に限定されず、1dtex超の通常繊維の繊度であっても、1dtex以下、さらには0.6dtex以下、とくには0.5dtex以下であるような極細繊維の繊度であってもよい。なお、極細繊維である場合には、緻密な繊維構造体を形成することができるために、充填される溶融樹脂が、インモールド材の表面まで染み出ることが抑制される点から好ましい。
また、繊維構造体は、形態安定性や充実感を向上させることを目的として、内部の空隙に高分子弾性体を含有してもよい。このような高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。
高分子弾性体の含有割合としては、0〜40質量%、さらには、5〜35質量%、とくには8〜30質量%であることが好ましい。高分子弾性体の含有割合が高すぎる場合には、賦形性が低下する傾向がある。
このような繊維構造体の一面に銀面調の樹脂層を積層形成した場合には、銀付皮革調の外観を有する銀面調皮革様シートが得られる。また、繊維構造体の一面を起毛処理することにより起毛調の外観を有する起毛調皮革様シートが得られる。
銀面調皮革様シートを形成する方法としては、繊維構造体の一面に乾式造面法やダイレクトコート法などの方法によりポリウレタン等の高分子弾性体を含む銀面調の樹脂層を形成する方法が挙げられる。乾式造面法は、離型紙などの支持基材上に高分子弾性体を含む樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、繊維構造体の一面に貼り合せて、必要によりプレスして接着し、離型紙を剥離することにより銀面調の樹脂層を形成する方法である。また、ダイレクトコート法は、高分子弾性体を含む液状樹脂または樹脂液を繊維構造体の一面に直接塗布した後、硬化させることにより銀面調の樹脂層を形成する方法である。
銀面調の樹脂層を形成する高分子弾性体としては、従来から銀面調の樹脂層の形成に用いられているポリウレタンやアクリル系弾性体等を用いることができる。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル弾性体、合成ゴム等が挙げられる。
また、起毛調皮革様シートを形成する方法としては、繊維構造体の表面をバフィング処理することにより起毛処理されたスエード調やヌバック調の加飾面を形成する方法が挙げられる。バフィング処理は、繊維構造体の表面をサンドペーパーやブラシ等で複数回擦ることで、繊維を起毛させる処理である。
繊維構造体の見かけ密度は特に限定されないが、0.45〜0.85g/cm3、とくには0.50〜0.80g/cm3であることが好ましい。このように高い見かけ密度の場合には、薄くても均質性が高くなるために、射出成形により金型内のキャビティに充填される溶融樹脂が、繊維構造体を含むインモールド材の表面まで染み出ることが抑制される点から好ましい。
なお、0.45〜0.85g/cm3の見かけ密度を有する繊維構造体を含むインモールド材を用いる場合、溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを21〜73MPaの範囲に設定することが、より高い接着性を得られる点から好ましい。型内ピーク圧力Pが73MPaを超える場合には、圧縮性が高い繊維構造体に高い圧力が掛かることにより繊維が動かされて圧し潰され、溶融樹脂が浸透する空隙が減少し、繊維構造体に溶融樹脂が深く浸透することが阻害されてアンカー効果が低下することにより、接着性が低下する。一方、型内ピーク圧力Pが、21MPa未満である場合には、金型内での溶融樹脂の流動速度が低下することにより、溶融樹脂の表面の樹脂の粘度が高くなりすぎたりスキン層が形成されたりして、溶融樹脂が繊維構造体の深く浸透しにくくなり、接着性が低下する。
以上、説明した製造方法によれば、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体との積層成形体において、溶融樹脂が繊維構造体に深く浸透することにより高いアンカー効果を発揮し、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体とが高い接着性を維持して一体化される。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例]
スエード調の表面を有し、他の一面も起毛処理された人工皮革のシート(縦250×横250mm、厚さ0.5mm)を準備した。なお、スエード調の表面を有する人工皮革は、繊度0.9dtexで、T100℃の変性PETの極細繊維を含む、見かけ密度0.50g/cm3の(株)クラレ製のティレニーナEPFW1-45、を用いた。
そして、インモールド材として人工皮革のシートを用いてインモールド成形を行った。具体的には、直圧式油圧成形機((株)名機製作所製のM-100C-AS-DM)に搭載された、射出成形用金型の可動側型と固定側型とを型開きした状態で、可動側型のキャビティ部に人工皮革のシートを配置した。そして、可動側型と固定側型とを型締めした。なお、射出成形用金型のキャビティ形状は、厚さ3mmで、縦200mm×横50mmの角板形状であった。
そして、樹脂温度235℃、金型温度50℃、射出ピーク圧78MPaの条件でABS樹脂を射出してキャビティ内に充填した。そして、保圧4MPaを付与しながら、20秒間の冷却時間を保持した後、型開きした。このようにして、ABS樹脂の射出成形体の表面に人工皮革のシートが一体化された積層成形体を得た。算出された圧力損失は37.6MPaであり、このときの型内ピーク圧力は40.4MPaであった。
さらに、20.2MPa、33.1MPa、52.8MPa、68.9MPa、76.9MPa、88.0MPa、103.6MPa、131.0MPaの型内ピーク圧力になるように、射出ピーク圧を変化させて、各型内ピーク圧力でインモールド成形された積層成形体を得た。
型内ピーク圧力が33.1MPaのときに得られた積層成形体の断面の、ABS樹脂の射出成形体と人工皮革のシートとの接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図2に示す。図2のSEMの写真において、斜線を付した領域に示すように、人工皮革のシートに含まれる不織布にABS樹脂が深く侵入している様子がわかる。
型内ピーク圧力が20.2MPaの条件で得られた積層成形体の断面の、ABS樹脂の射出成形体と人工皮革のシートとの接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図3に示す。図3のSEMの写真においては、斜線を付した領域に示すように、人工皮革のシートに含まれる不織布にABS樹脂が深く侵入していないことがわかる。型内ピーク圧力が低い場合には充填速度が低いために、型内における溶融樹脂の粘度が高くなって不織布に浸透しにくくなったものと考えられる。
また、型内ピーク圧力が76.9MPaの条件で得られた積層成形体の断面の、ABS樹脂の射出成形体と人工皮革のシートとの接着面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図4に示す。図4のSEMの写真においては、斜線を付した領域に示すように、人工皮革のシートに含まれる不織布にABS樹脂が深く侵入しておらず、また、織布を形成する繊維が圧し潰されることにより、緻密になっていることがわかる。これは、型内ピーク圧力が高い場合には、溶融樹脂の圧力により不織布が圧し潰されることにより繊維間の空隙が、減少し、溶融樹脂が不織布に浸透しにくくなったものと考えられる。
そして、各型内ピーク圧力で得られた積層成形体の剥離強度を次のようにして評価した。
〈剥離強度の評価〉
積層成形体を、長さ125mm、巾20mmに切り出し、積層成形体を形成する人工皮革のシートを端部から長さ80mm程度剥離した。そして、人工皮革のシート及び射出成形体のそれぞれの端部を、初期間隔100mmに設定した引張試験機の上下それぞれのチャックに挟んで、引張速度5mm/分で引張試験を行って引張時間−剥離強力の曲線を得た。そして、引張時間−剥離強力の曲線において、剥離強力がほぼ一定となる領域の平均値を読み取り、その試験片の剥離強力値とした。試験片3個の剥離強力測定値を算術平均した値を、その人工皮革の剥離強力値とした。
結果を下記表1及び図5に示す。
表1及び図5から、剥離強度の最大値0.946(N/mm)の60%以上を維持させる、21〜73MPaの範囲に含まれるように型内ピーク圧力Pを設定すること、または、射出成形体とインモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に設定することにより、得られる成形体の剥離強度が顕著に向上することがわかる。
本発明は、携帯電話、モバイル機器の外装部品、自動車の内装部品、家具の装飾部品、などに使用される人工皮革、天然皮革、テキスタイル、不織布、織布等を用いた加飾成形体を製造する分野に有用である。
1 インモールド材
2 射出成形用金型
2a 可動側型
2b 固定側型
2c キャビティ部
2d コア部
2e スプルーブッシュ
3 射出成形機の射出部本体
3a ノズル
3b シリンダ
3c インラインスクリュ
4 ゲート
5 射出成形体
5a 溶融樹脂
10 積層成形体

Claims (5)

  1. 可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して前記可動側型と前記固定側型とを型締めする工程と、
    前記キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面に前記インモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、
    前記溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、前記積層成形体の前記射出成形体と前記インモールド材との剥離強度の最大値S(N/mm)の60%以上を維持させる範囲に設定することを特徴とする、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法。
  2. 前記型内ピーク圧力Pは、射出成形の条件出しにおいて、型内ピーク圧力の変化に対する前記剥離強度の変化をプロットしたグラフから求められる請求項1に記載の積層成形体の製造方法。
  3. 可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して前記可動側型と前記固定側型とを型締めする工程と、
    前記キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面に前記インモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、
    前記溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、前記積層成形体の前記射出成形体と前記インモールド材との剥離強度を最大にするときの最大型内ピーク圧力PMAXの0.5〜1.8倍の範囲に設定することを特徴とする、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法。
  4. 前記型内ピーク圧力Pは、射出成形の条件出しにおいて、型内ピーク圧力の変化に対する前記剥離強度の変化をプロットしたグラフから求められる請求項3に記載の積層成形体の製造方法。
  5. 可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに、繊維構造体を含むインモールド材を収容して前記可動側型と前記固定側型とを型締めする工程と、
    前記キャビティに溶融樹脂を充填した後、冷却することにより、射出成形される射出成形体の表面に前記インモールド材を一体化させた積層成形体を形成する工程と、を備え、
    前記繊維構造体は、0.45〜0.85g/cm3の見かけ密度を有し、
    前記溶融樹脂を充填する際の型内ピーク圧力Pを、21〜73MPaの範囲に設定することを特徴とする、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法。
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