JP2017052187A - 積層成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】射出成形体の表面に繊維構造体を含むインモールド材を一体化した積層成形体において、射出成形体とインモールド材との接着性を向上させることを目的とする。
【解決手段】起毛面を有する繊維構造体を含むインモールド材を準備する工程と、射出成形用金型のキャビティにインモールド材を収容して型締めし、キャビティ内のインモールド材の起毛面側から溶融樹脂を射出成形用金型のゲートから充填することにより、積層成形体を形成する工程と、を備え、起毛面に露出する繊維は一方向に倒れており、キャビティ内での溶融樹脂の流動方向が繊維の倒れる方向に対して逆方向になるようにインモールド材をキャビティに収容する積層成形体の製造方法を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】起毛面を有する繊維構造体を含むインモールド材を準備する工程と、射出成形用金型のキャビティにインモールド材を収容して型締めし、キャビティ内のインモールド材の起毛面側から溶融樹脂を射出成形用金型のゲートから充填することにより、積層成形体を形成する工程と、を備え、起毛面に露出する繊維は一方向に倒れており、キャビティ内での溶融樹脂の流動方向が繊維の倒れる方向に対して逆方向になるようにインモールド材をキャビティに収容する積層成形体の製造方法を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、繊維構造体を含むインモールド材を表面に一体化させた積層成形体の製造方法に関する。
携帯電話、モバイル機器、家電製品の筐体や、車両、航空機等の内装部品、建材、家具等の外装部材として、インモールド材を表面に一体化させた積層成形体が知られている。このような積層成形体は、シートまたは予め賦形されたプリフォーム成形体である、インモールド材を金型のキャビティに配置し、射出成形するインモールド成形により製造される。
インモールド材として、織布、不織布、合成皮革、人工皮革等のような繊維構造体を用いることが知られている。例えば、下記特許文献1は、織布、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革のいずれかをインモールド材として樹脂成形品に積層圧着する積層成形体の製造方法を開示する。
繊維構造体を含むインモールド材を用いてインモールド成形を行う場合、射出成形により製造される射出成形体とインモールド材との接着性が不充分であることがあった。本発明は、射出成形体の表面に繊維構造体を含むインモールド材を一体化した積層成形体において、射出成形体とインモールド材との接着性を向上させることを目的とする。
本発明の一局面は、少なくとも一面が起毛面である繊維構造体を含むインモールド材を準備する工程と、可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティにインモールド材を収容して型締めし、キャビティ内のインモールド材の起毛面側に溶融樹脂を射出成形用金型のゲートから充填することにより、積層成形体を形成する工程と、を備え、起毛面に露出する繊維は一方向に倒れており、キャビティ内での溶融樹脂の流動方向が繊維の倒れる方向に対して逆方向になるようにインモールド材をキャビティに収容する積層成形体の製造方法である。繊維構造体の表層の繊維が起毛処理されている場合、起毛面に露出する繊維は一方向に倒れている。このような繊維構造体を含むインモールド材を、繊維の倒れる方向が溶融樹脂の流動方向に対して逆方向になるように配置することにより、繊維構造体を形成する繊維同士の間に形成された空隙に溶融樹脂が侵入しやすくなり、アンカー効果によって、射出成形体とインモールド材とが強く接着された積層成形体を得られる。繊維が一方向に倒れる方向は、通常、繊維構造体の製造時の表面起毛処理方向に一致するが、製造後のバフィング処理等によって変更することも可能である。
例えば、射出成形体が、長手方向と短手方向とを有する形状の場合、流動方向はゲートから長手方向の流動末端に向かう方向に対応する。
本発明によれば、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体とが強く接着された積層成形体が得られる。
本実施形態の積層成形体の製造方法を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の積層成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。
図1中、1は繊維構造体を含むインモールド材,2aはキャビティ部2cを有する可動側型,2bは固定側型,2eはスプルーブッシュ,3は射出成形機の射出部本体,3aはノズル,3bはシリンダ,3cはインラインスクリュ,4はゲート,5は射出成形体,5aは溶融樹脂,9はフィルムゲートランナー、10は積層成形体である。可動側型2aと固定側型2bとは一対になって射出成形用金型2を構成する。また、ゲート4はフィルムゲートである。
本実施形態の積層成形体の製造方法においては、図1(a)に示すように、可動側型2aの凹状のキャビティ部2cに繊維構造体を含むインモールド材1をインサートさせる。このとき、インモールド材1の少なくとも一面には繊維構造体の表層の繊維が起毛処理されてなる起毛面が露出しており、起毛面を溶融樹脂が充填される側に向くように配している。後述するように、インモールド材1の起毛面に露出する繊維は一方向に倒れており、インモールド材1は溶融樹脂の流動方向が繊維の倒れる方向に対して逆方向になるように配置されている。
インモールド材は、溶融樹脂の充填時に位置ずれすることを抑制するために、キャビティ部に固定されてもよい。固定手段の具体例としては、例えば、可動側型表面に両面テープで貼り付けたり、真空吸着させたり、インモールド材自身の表面粘着性を用いて付着させたり、キャビティ部に突起を設けてインモールド材をはめ込んだりする方法等が挙げられる。
次に、図1(b)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型締めすることにより、キャビティcを形成する。そして、図1(c)に示すように、ゲート4から予め設定された所定量の溶融樹脂5aをキャビティcに充填する。詳しくは、射出成形機の射出部3を前進させ、ノズル3aを固定側型2bに形成されたスプルーブッシュ2eに当接させ、シリンダ3b内で溶融された溶融樹脂5aをインラインスクリュ3cで射出することにより、溶融樹脂5aがキャビティcに充填される。
本実施形態の製造方法においては、インモールド成形に用いられる射出成形用金型との関係でインモールド材1を配置する方向に次のような特徴を有する。図2を参照してインモールド材1の配置について詳しく説明する。
図2は、射出成形用金型2のキャビティ形成面の斜視模式図であり、(a)はインモールド材1が配置された可動側型2aを示し、(b)は固定側型2bを示す。図2中、1aはインモールド材1の起毛面の立毛した繊維であり、4はフィルムゲートである。
本実施形態の積層成形体の製造方法においては、図2(a)に示すように、可動側型2aの凹状のキャビティ部2cに繊維構造体を含むインモールド材1をインサートさせる。このとき、インモールド材1の繊維構造体の表層の繊維が起毛処理されてなる起毛面を溶融樹脂が充填される側に向くように配する。
インモールド材1の起毛面に露出する繊維1aは、通常、繊維構造体の製造時の起毛処理により、繊維1aが一方向に倒れている。繊維の倒れる方向は、製造後のバフィング処理等によって変更することも可能である。繊維が倒れている方向は、通常、順目方向と称され、順目の逆方向を逆目方向と称される。図2(a)では、起毛面に露出する繊維1aが、矢印Fで示す順目方向に倒れている。そして、溶融樹脂5aの大部分が、図2(b)の矢印Rで示す方向、すなわち、起毛面に露出する繊維1aの倒れる順目方向に対して逆方向になるように流される。
図3は、射出成形用金型2のキャビティ内でインモールド材1の起毛面側を溶融樹脂5aが流れる様子を説明する断面説明図である。図3に示すように、キャビティ内でインモールド材1の起毛面の表面を溶融樹脂5aが繊維1aの倒れる方向に対して逆方向になるように流れる場合、起毛面に露出する繊維1aが、溶融樹脂5aの流れにより倒れた状態から起こされる。そして、繊維1aを起こしながら溶融樹脂5aが流れることにより、起こされた繊維1a同士の間の空隙に溶融樹脂5aが侵入しやすくなる。その結果、インモールド材1の繊維構造体を形成する繊維1a同士の間に形成された空隙に溶融樹脂5aが侵入することにより、成形される射出成形体5は、アンカー効果による高い接着性を発現する。なお、キャビティ内で溶融樹脂がインモールド材の起毛面の表面を繊維の倒れる方向と同方向に流れる場合には、倒れた繊維がさらに倒されて、繊維同士の間の空隙を塞ぐために溶融樹脂が侵入しにくくなり、接着力が低下する。
本実施形態においては、射出成形用金型として、方形のキャビティの端部に設けたフィルムゲートから溶融樹脂を流す場合を例として説明したが、ゲート形状は、スプルーゲート、ピンゲート、ファンゲート等いずれの形態であってもよい。また、ゲートは二つ以上あってもよい。このような場合は、ゲートから流れる溶融樹脂の流動方向のベクトルを合成した合成ベクトルの方向を流動方向とする。具体的には、例えば、図4(a)に示すようにスプルーゲート14を有するような射出成形用金型12のキャビティの場合、スプルーゲート14から流入した樹脂の流動方向のベクトルを足し合わせたときの、例えば、図4(b)に示すような方向が流動方向になる。流動方向は、市販の流動解析ソフトを用いても容易に解析することができる。
なお、インモールド材の起毛面の表面を溶融樹脂が繊維の倒れる方向に対して逆方向になるように流れるとは、例えば、流動方向をベクトルで表現した場合に、繊維の倒れる方向のベクトルと溶融樹脂が流動する方向のベクトルの成す角度が、180度±10度、すなわち170〜190度程度であることを意味する。
射出成形の条件(樹脂温度、金型温度、射出圧力、射出後の保持圧力、冷却時間)は、熱可塑性樹脂の熱特性や溶融粘度、成形体の形状等に応じて適宜設定される。
射出される熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ABS系樹脂、PMMA樹脂のようなアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、各種ポリアミド系樹脂、ウレタン樹脂、COP樹脂等が挙げられる。また、これらは、フィラー等を配合したコンパウンド品や、複数種の樹脂をアロイ化またはブレンド化した混合品であってもよい。これらは用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる樹脂としては、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の耐衝撃性に優れた樹脂が好ましく用いられる。樹脂のメルトフローレート(MFR)も特に限定されないが、例えば、230℃で5〜20g程度のものが好ましく用いられる。
また、成形される射出成形体の厚さも特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる場合には、0.3〜2mm、さらには0.5〜1.5mmが好ましい範囲として選ばれる。
そして、図1(d)に示すようにキャビティc内に溶融樹脂5aを充填した後、所定の時間冷却することにより、インモールド材1に一体化された射出成形体5が形成される。そして、図1(e)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型開きすることにより、成形された射出成形体5と射出成形体5に積層されたインモールド材1とが一体化された積層成形体10が取り出される。そして、図1(f)に示すように、積層成形体10からフィルムゲートランナー9を切断除去することにより、最終的な製品10aに整えられる。
次に本実施形態の製造方法に用いられるインモールド材について詳しく説明する。
インモールド材の形態として、本実施形態で参照する図1では、繊維構造体を含むシートを例示したが、シートに限定されず、不織布、織布、織物、編物、紙等の繊維構造体のシート、または繊維構造体を含む人工皮革や合成皮革等または天然皮革の皮革様シートに予め賦形したプリフォーム成形体であってもよい。プリフォーム成形体は、繊維構造体のシート、または繊維構造体を含む皮革様シート等を熱プレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形手段により賦形することにより得られる。インモールド材の厚さは、特に限定されないが、0.1〜2mm、さらには、0.2〜1mm程度であることが好ましい。
繊維構造体の繊維を形成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、変性PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリトリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6−12等のポリアミド系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、塩素系ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、などのポリオレフィン系樹脂;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂;及び、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマー等が挙げられる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
また、繊維構造体の繊維を形成する繊維の繊度は特に限定されず、1dtex超の通常繊維の繊度であっても、1dtex以下、さらには0.6dtex以下、とくには0.5dtex以下であるような極細繊維の繊度であってもよい。
また、繊維構造体は、形態安定性や充実感を向上させることを目的として、内部の空隙に高分子弾性体を含有してもよい。このような高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。
高分子弾性体の含有割合としては、0〜40質量%、さらには、5〜35質量%、とくには8〜30質量%であることが好ましい。高分子弾性体の含有割合が高すぎる場合には、賦形性が低下する傾向がある。
このような繊維構造体の一面は通常、製造時に、所定の厚みに整えられて、必要に応じてバフィング処理されて、一方向に繊維が向く起毛面が形成される。本実施形態の製造方法においては、このような起毛面の側から溶融樹脂を充填するように、繊維構造体を含むインモールド材が配される。
繊維構造体の、溶融樹脂を充填される側になる起毛面ではない他の一面に銀面調の樹脂層を積層形成した場合には、銀付皮革調の外観を有する銀面調皮革様シートが得られる。また、溶融樹脂を充填される側になる起毛面ではない他の一面も起毛処理することにより、起毛調の外観を有する起毛調皮革様シートが得られる。
銀面調皮革様シートを形成する方法としては、繊維構造体の一面に乾式造面法やダイレクトコート法などの方法により、ポリウレタン等の高分子弾性体を含む銀面調の樹脂層を形成する方法が挙げられる。乾式造面法は、離型紙などの支持基材上に高分子弾性体を含む樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、繊維構造体の一面に貼り合せて、必要によりプレスして接着し、離型紙を剥離することにより銀面調の樹脂層を形成する方法である。また、ダイレクトコート法は、高分子弾性体を含む液状樹脂または樹脂液を繊維構造体の一面に直接塗布した後、硬化させることにより銀面調の樹脂層を形成する方法である。
銀面調の樹脂層を形成する高分子弾性体としては、従来から銀面調の樹脂層の形成に用いられているポリウレタンやアクリル系弾性体等を用いることができる。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル弾性体、合成ゴム等が挙げられる。
また、起毛調皮革様シートを形成する方法としては、繊維構造体の表面をバフィング処理することにより起毛処理されたスエード調やヌバック調の加飾面を形成する方法が挙げられる。バフィング処理は、繊維構造体の表面をサンドペーパーやブラシ等で複数回擦ることで、繊維を起毛させる処理である。
繊維構造体の見かけ密度は特に限定されないが、0.45〜0.85g/cm3、とくには0.50〜0.80g/cm3であることが好ましい。このように高い見かけ密度の場合には、薄くても均質性が高くなるために、射出成形により金型内のキャビティに充填される溶融樹脂が、繊維構造体を含むインモールド材の表面まで染み出ることが抑制される点から好ましい。
以上、説明した製造方法によれば、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体との積層成形体において、溶融樹脂が繊維構造体に深く浸透することで高いアンカー効果を発揮し、繊維構造体を含むインモールド材と射出成形体とが高い接着性を維持して一体化される。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例]
スエード調の表面を有し、他の一面が起毛処理された人工皮革のシート(縦250×横250mm、厚さ0.5mm)を準備した。なお、スエード調の表面を有する人工皮革は、繊度0.9dtexで、Tg100℃の変性PETの極細繊維を含む、見かけ密度0.5g/cm3の(株)クラレ製のティレニーナEPFW1-45、を用いた。なお、人工皮革のシートの起毛処理された面の繊維は、図5に示すように、一方向に倒れていた。
スエード調の表面を有し、他の一面が起毛処理された人工皮革のシート(縦250×横250mm、厚さ0.5mm)を準備した。なお、スエード調の表面を有する人工皮革は、繊度0.9dtexで、Tg100℃の変性PETの極細繊維を含む、見かけ密度0.5g/cm3の(株)クラレ製のティレニーナEPFW1-45、を用いた。なお、人工皮革のシートの起毛処理された面の繊維は、図5に示すように、一方向に倒れていた。
そして、インモールド材として人工皮革のシートを用いてインモールド成形を行った。具体的には、直圧式油圧成形機((株)名機製作所製のM-100C-AS-DM)に搭載された、射出成形用金型の可動側型と固定側型とを型開きした状態で、可動側型のキャビティ部に人工皮革のシートを配置した。なお、射出成形用金型のキャビティ形状は、厚さ3mmで、縦200×横50mmの角板形状であり、図2で示したような、キャビティ上部にフィルムゲートが形成されたものであった。そして、可動側型と固定側型とを型締めした。なお、人工皮革のシートは、ゲートから溶融樹脂の流動末端へ一方向に流れる方向に対して、繊維が倒れる方向が180度になる方向に配置した。
そして、樹脂温度235℃、金型温度50℃、射出ピーク圧78MPaの条件でABS樹脂を射出してキャビティ内に充填した。そして、保圧4MPaを付与しながら、20秒間の冷却時間を保持した後、型開きした。このようにして、ABS樹脂の射出成形体の表面に人工皮革のシートが一体化された積層成形体を得た。
また、人工皮革のシートを、ゲートから溶融樹脂が流れる方向に対して、繊維が倒れる方向が180度になる方向の代わりに、170度、150度、90度、0度になる方向に繊維が倒れる方向に配置したものについても同様に成形した。
そして、得られた各積層成形体の剥離強力を次のようにして評価した。
〈剥離強力の評価〉
積層成形体を、長さ125mm、巾20mmに切り出し、積層成形体を形成する人工皮革のシートを端部から長さ80mm程度剥離した。そして、人工皮革のシート及び射出成形体のそれぞれの端部を、初期間隔100mmに設定した引張試験機の上下それぞれのチャックに挟み、引張速度5mm/分で引張試験を行って引張時間−剥離強力の曲線を得た。そして、引張時間−剥離強力の曲線において、剥離強力がほぼ一定となる領域の平均値を読み取り、その試験片の剥離強力値とした。試験片3個の剥離強力測定値を算術平均した値を、その人工皮革の剥離強力とした。結果を下記表1及び図6に示す。
〈剥離強力の評価〉
積層成形体を、長さ125mm、巾20mmに切り出し、積層成形体を形成する人工皮革のシートを端部から長さ80mm程度剥離した。そして、人工皮革のシート及び射出成形体のそれぞれの端部を、初期間隔100mmに設定した引張試験機の上下それぞれのチャックに挟み、引張速度5mm/分で引張試験を行って引張時間−剥離強力の曲線を得た。そして、引張時間−剥離強力の曲線において、剥離強力がほぼ一定となる領域の平均値を読み取り、その試験片の剥離強力値とした。試験片3個の剥離強力測定値を算術平均した値を、その人工皮革の剥離強力とした。結果を下記表1及び図6に示す。
表1及び図6から、キャビティ内での溶融樹脂の流動方向が繊維の倒れる方向に対して逆方向になっている、両者の成す角が170〜180度の場合、すなわち180±10度程度である場合には、両者の成す角が0度、90度、150度の場合に比べて得られる成形体の剥離強力が顕著に向上していることがわかる。
本発明は、携帯電話、モバイル機器の外装部品、自動車の内装部品、家具の装飾部品、などに使用される、人工皮革、天然皮革、テキスタイル、不織布、織布等を用いた加飾成形体を製造する分野に有用である。
1 インモールド材
2、12 射出成形用金型
2a 可動側型
2b 固定側型
2c キャビティ部
2e スプルーブッシュ
3 射出成形機の射出部本体
3a ノズル
3b シリンダ
3c インラインスクリュ
4 ゲート
5 射出成形体
5a 溶融樹脂
9 フィルムゲートランナー
10 積層成形体
2、12 射出成形用金型
2a 可動側型
2b 固定側型
2c キャビティ部
2e スプルーブッシュ
3 射出成形機の射出部本体
3a ノズル
3b シリンダ
3c インラインスクリュ
4 ゲート
5 射出成形体
5a 溶融樹脂
9 フィルムゲートランナー
10 積層成形体
Claims (3)
- 少なくとも一面に起毛面を有する繊維構造体を含むインモールド材を準備する工程と、
可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに前記インモールド材を収容して型締めし、前記キャビティ内の前記インモールド材の前記起毛面側に対して前記射出成形用金型のゲートから溶融樹脂を充填することにより、積層成形体を形成する工程と、を備え、
前記起毛面に露出する繊維は一方向に倒れており、前記キャビティ内での前記溶融樹脂の流動方向が前記繊維の倒れる方向に対して逆方向になるように前記インモールド材を前記キャビティに収容することを特徴とする積層成形体の製造方法。 - 前記繊維が一方向に倒れる方向は、前記繊維構造体の製造時の表面起毛処理方向に一致する請求項1に記載の積層成形体の製造方法。
- 前記射出成形体は、長手方向と短手方向とを有する形状を有し、
前記流動方向が前記ゲートから前記長手方向の流動末端に向かう方向に対応する請求項1または2に記載の積層成形体の製造方法。
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