JP2017062960A - 非水系電解質二次電池用正極合材ペーストの製造方法、および非水系電解質二次電池用正極の製造方法 - Google Patents

非水系電解質二次電池用正極合材ペーストの製造方法、および非水系電解質二次電池用正極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】正極活物質と導電材の混合作業性に優れ、優れた導電材の分散性により電池として高い出力特性が得られる非水系電解質二次電池用正極の製造方法の提供。【解決手段】正極活物質と導電材を乾式混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末に、溶媒とバインダーと顔料誘導体とを添加して混練し、正極合材ペーストを得る混練工程と、を有する正極合材ペーストの製造方法により得る正極合材ペースト。前記正極合材ペーストを用い、非水系電解質二次電池用正極を製造する方法。前記顔料誘導体は有機色素誘導体であり、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、アントラキノン系色素又は、キナクリドン系色素から選択される1種以上の色素で、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボニル基又はスルホニル基から選択される一種以上の官能基を付加したものである正極合材ペーストの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、非水系電解質二次電池用正極合材ペーストの製造方法、および非水系電解質二次電池用正極の製造方法に関し、より詳しくは、非水系電解質二次電池用正極合材ペーストの製造方法、および該正極合材ペーストの製造方法によって得られた正極合材ペーストを用いた非水系電解質二次電池用正極の製造方法に関する。
非水系電解質二次電池は、高いエネルギー密度をもつため、近年小型化や軽量化を要求される携帯電話やノートパソコンのような携帯電子機器に広く使用されており、また自動車用途ではクリーンなエネルギー源として開発が盛んであり、非水系電解質二次電池に対する高性能化の開発要求はますます高まっている。
特に前述の自動車用途では、小型、軽量、高容量、高出力などの高性能化や低コスト化が求められており、特にエネルギーを貯蔵するためのエネルギー密度と、自動車の大きな加速性を示すための出力密度とが重要視されている。
非水系電解質二次電池の代表的なリチウムイオン二次電池の基本的な構造は、中央にセパレータを配置し、正極および負極でセパレータを挟みこむように配置し、電解質を満たした構成である。また、リチウムイオン二次電池に用いられる電極は、LiCoO2やLiNiO2等からなる正極活物質と、カーボンブラック等からなる導電材とを含む正極膜が、集電体上に形成されたものが用いられている。上述の電池で充放電を行った場合、正極活物質からLiイオンが吸蔵・放出されるのと同時に、電子が導電材を通して移動することにより、電極反応が進行して充放電が行われる。したがって、出力密度を向上させるためには、Liイオンの吸蔵・放出速度を高めるとともに、正極からの電子移動の速度を高めることが有効である。
リチウムイオン二次電池の正極膜の一般的な製造方法は、正極活物質、導電材などをバインダーおよび溶媒の中で混練してペースト化した後、前記ペーストを集電体上に塗工する方法などが用いられている。
高出力のリチウムイオン二次電池を得るためには、前記正極膜内の正極活物質が電解液に接触する面積を大きくしてLiイオンの拡散性を向上させることと、正極極活物質の表面に導電材が均一に付着し、導電材が連続的に配置されることで導電ネットワークを形成し、電子伝導性を高めることが重要である。しかしながら、十分な導電ネットワーク形成させるには大量の導電材が必要となるため、エネルギー密度の低下や、導電材の嵩高さによって混錬が困難になり、さらに混錬後のペーストの高粘度化を防ぐために溶媒を増加させた場合には、ペーストの乾燥中に正極膜が波打ちや膜表面の筋形成などの膜形成の精度低下の問題を招いていた。
導電ネットワークの形成により電子伝導性を高めるため、正極活物質と導電材の分散性を高めることが検討されている。例えば、特許文献1には、少なくとも一種の炭素材料と、前記炭素材料の分散剤としての、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、および、塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる一種以上の誘導体とによって、電極用活物質表面を被覆する電池電極用複合材料の製造方法が提案されている。この提案によれば、電池電極が少ない導電助剤の添加で高い導電性を得ることができるため、例えばリチウムイオン二次電池などの電池性能を総合的に向上させることができるとされている。
しかしながら、正極膜の導電性、すなわち電子伝導性の向上は十分とは言えるものではなく、電子伝導性の向上による出力特性の更なる向上が求められている。
特開2010−86955号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、正極活物質と導電材の混合作業性に優れ、かつ優れた導電材の分散性により、電池に用いた際に高い出力特性が得られる二次電池用正極の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題に鑑み、正極膜中の導電材の分散性について鋭意検討した結果、正極膜を作製する際のペーストの調製において、乾式混合によって導電材の嵩を減らしながら正極活物質と導電材を混合した後に、バインダーと溶媒として有機溶媒および分散剤として顔料誘導体を加えて湿式混合することにより、導電材の分散性に優れるとともに粘度が低く体積密度の高いペーストが得られるとの知見を得た。さらに、該ペーストを用いて作製された正極膜は、導電材が均一に分散しており良好な導電ネットワーク形成が形成されて優れた出力特性を有するものとなるとの知見を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る正極合材ペーストの製造方法は、非水系電解質二次電池用正極の製造に用いられる正極合材ペーストの製造方法であって、正極活物質と導電材を乾式混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末に、溶媒とバインダーおよび顔料誘導体とを添加して混練し、正極合材ペーストを得る混練工程と、を有することを特徴とする。
前記顔料誘導体は、有機色素誘導体であることが好ましく、前記有機色素誘導体は、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、アントラキノン系色素、キナクリドン系色素からなる群より選択される1種以上の色素の誘導体であることが好ましい。
また、前記顔料誘導体は、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボニル基、スルホニル基からなる群より選択される1種以上の官能基を付加したものであることが好ましい。
前記混合工程は、乾式ボールミル、乾式ビーズミル、ブレード遊星運動型混合器、容器回転型遊星運動混合器、擂潰機、ホモジナイザーからなる群より選択される1種以上の混合装置を用いて乾式混合することが好ましい。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極の製造方法は、上記記載の正極合材ペーストの製造方法により得られた正極合材ペーストを、集電体上に塗工して正極膜を形成する塗工工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、正極活物質と導電材の混合作業性に優れ、塗工工程に好適な粘度を有し、正極合材ペーストにおける活物質と導電材の分散性が高く、表面性状に優れた高密度な正極膜が得られる正極合材ペーストを製造することができる。
また、該正極合材ペーストを用いた正極の製造方法により、正極膜中での導電ネットワーク形成が良好となるため、導電性が高く、電池に用いた際に高い出力特性が得られる正極が得られ、該正極を有する電池は、エネルギー密度が高く高出力なものとなる。
実施例で用いた2032型コイン電池の構図を示す断面の概略図である。
本発明は、(1)正極合材ペーストの製造方法と、その製造方法によって得られた正極合材ペーストを用いた(2)非水系電解質二次電池用正極の製造方法により構成される。
(1)正極合材ペーストの製造方法
本発明の正極合材ペーストの製造方法は、非水系電解質二次電池用正極(以下、単に「正極」ということがある。)の製造に用いられる正極合材ペーストの製造方法であって、正極活物質と導電材を乾式混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末に、溶媒とバインダーおよび顔料誘導体とを添加して混練し、正極合材ペーストを得る混練工程と、を有することを特徴とする。
本発明の正極合材ペーストの製造方法(以下、単に「ペーストの製造方法」ということがある。)では、溶媒とバインダー添加して混練する混練工程の前に乾式混合による混合工程を備えることが重要である。
混合工程において正極活物質と導電材(以下、正極活物質と導電材を合わせて「正極材料」ということがある。)を乾式混合することにより、短時間で正極活物質と導電材を均一に高い分散性を有する状態に混合するとともに、混合粉末の嵩高さを低減することが可能となる。一方、本発明に係る混合工程を経ずに、一般的に行われるペースト化などの湿式混練を行うと、正極材料、特に導電材の激しい凝集が生じるため、強剪断力を付与した長時間の混練が必要となり、生産性が低下する。
また、長時間の混練によっても正極材料の十分な分散とペースト粘度が得られない場合もあり、正極膜中において良好な導電ネットワークが形成されず、得られる電池の特性が低下するなどの問題が生じる。さらに、この混合工程を経ずに湿式混練を行うと、正極材料の嵩高さにより混練が困難になることがあるが、本発明に係る混合工程を採りいれることにより、このような事態を避けることができる。
以上のように乾式による混合工程により、非水系電解質二次電池(以下、単に「電池」という。)の高出力化を目的として十分な量の導電材を添加した場合においても、簡易で良好な混合作業性が確保され、さらに混練工程においてペースト化する場合においても、正極材料の分散性に優れ、良好な塗工性を有するペースト粘度を得ることが可能となる。
本発明に係るペーストの製造方法は、(1−1)混合工程および(1−2)混練工程を有するものであり、以下に各工程を詳細に説明する。
(1−1)混合工程
混合工程に用いる正極活物質は、特に限定されるものではなく、製造する電池に用いられるものであればよく、例えば、LiCoO、LiNiO、あるいはLiMn、さらにはこれらに電池特性を向上させるための添加元素が加えられたものなどの一般的なリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられるリチウム金属複合酸化物であれば、適用することができる。
また、導電材は、正極合剤の充放電反応を効率的に行うために電気伝導性を高めるためのものであり、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、または黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)等の炭素材料を単体、もしくは複合して用いることができる。
混合粉末中の混合比は、ペースト中における正極活物質と導電材の混合比とすればよく、エネルギー密度と出力特性を高い次元で両立させる観点から、正極活物質に対する導電材の比(導電材/正極活物質)を質量比で0.02〜0.20とすることが好ましい。また、正極合材ペーストには、電池特性を向上させるため、後述のように添加剤が加えられることが多いが、予め、混合工程で添加剤を加えておいてもよい。
混合工程における乾式混合に用いる装置は、乾式ボールミル、乾式ビーズミル、ブレード遊星運動型混合器、容器回転型遊星運動混合器、擂潰機、ホモジナイザー、などが挙げられるが、容器回転型の遊星運動混合器が好ましい。遊星運動混合器は、短時間で均一な混合が可能であり、高い生産性で均一な混合物を得ることができる。
正極材料を乾式混合する時間は、特に限定されるものではないが、正極活物質と導電材が均一に混合され高い分散性を有する状態になるまで混合するればよく、用いる装置ごとに予備試験などで決定すればよい。
(1−2)混練工程
混練工程は、混合工程で得られた混合粉末に、溶媒とバインダーおよび顔料誘導体とを添加して混練し、正極合材ペーストを得る工程である。混練工程において顔料誘導体分を添加することにより、ペーストの粘度が低下してペーストの流動性が向上するため、ペーストの混練性が向上し、さらに分散が進み、正極活物質の表面に対する導電材の被覆性が向上する。よって、高出力対応に十分な量の導電材を添加した場合にも、簡易で良好な混合性を確保し、さらに良好な塗工性を有するペースト粘度を得ることが可能となる。また、得られたペーストを用いて作製された正極膜は、正極活物質の表面に十分な導電材の被覆が形成されているため、良好な導電ネットワークが形成される。したがって、該正極膜を有する電池は高い出力特性を有するものとなる。また、導電材の被覆性が向上することから導電材の使用量を抑制することが可能であり、相対的な正極活物質の使用量が増加することから、エネルギー密度も高いものとなる。
ここで、混練工程において顔料誘導体を添加することが重要である。顔料誘導体は、顔料に官能基を付加したものであり、ペースト中における正極材料の分散剤として作用する。したがって、混練工程において顔料誘導体を添加することで、上述のようにペーストの粘度が低下し導電材の被覆性が向上する。一方、混練工程の前工程である混合工程において顔料誘導体を添加した場合には、顔料誘導体の添加量が微量であるため、正極材料中で不均一に吸着することから、分散剤としての十分な効果が得られない。また、混合工程を経ずに顔料誘導体を添加して混練工程を行うと、顔料誘導体が作用する以前に正極材料中の導電材の凝集が生じてペースト中で分散性が悪化し、正極活物質に対する十分な導電材の被覆が形成されない。以上のように、乾式混合による混合工程において正極活物質と導電材を十分に分散させ、混練工程において溶剤などとともに顔料誘導体を添加して混練することで、少量の顔料誘導体でもペースト中の正極材料に均一に作用させ、良好な効果を得ることができる。
混練工程で用いる顔料誘導体は、有機色素誘導体であるが好ましい。有機色素誘導体は、金属元素を含まないため、不純物として悪影響を及ぼす金属元素の混入を防止することができる。
前記有機色素誘導体としては、例えば、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、アントラキノン系色素、キナクリドン系色素からなる群より選択される1種以上の色素の誘導体が好ましく用いられる。これらの有機色素誘導体は、金属元素を含まず、導電材の分散剤としての作用が高いため、好ましい。
また、前記顔料誘導体は、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボニル基、スルホニル基からなる群より選択される1種以上の官能基を付加したものであることが好ましい。これらの官能基を付加することで、正極活物質の表面に対する導電材のより高い被覆性が得られるため好ましい。
有機色素誘導体の添加量は、正極活物質の表面に対する導電材の十分な被覆性が得られる量とすればよいが、導電材の質量に対して好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%とする。この添加量の範囲とすることにより、ペースト中での導電材の分散を確保し、ペースト粘度を低くすることができる。
バインダー(結着剤)は、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等を用いることができる。
また、溶媒は、バインダーを溶解するとともにペースト化する作用を有するものであり、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。
さらに、電池性能を向上させ、あるいは安定化させるため、必要に応じてその他の添加剤を追加することができる。
このような電池性能を改善する添加剤は、混合工程および混練工程のいずれで添加してもよく、各工程における作業性を考慮して添加すればよい。
混練工程における各材料の配合比は、後工程である正極形成工程における塗工性や電池の使用適性に応じて任意に調整することが可能であるが、溶媒を除いたペースト中の固形分の全質量を100質量%とした構成比率は、正極活物質が80〜96質量%、導電材が2〜15質量%、バインダーの固体換算重量が2〜10質量%とすることが好ましい。また、混練時に用いる溶媒の含有量は、バインダー中に含まれる溶媒分と合わせて全ペーストに対して30〜50質量%とすることが好ましい。その際のペースト粘度は、25℃において、10000cP以下とすることが好ましく、2000〜5000cPとすることがより好ましい。これにより、ペースト中において正極活物質および導電材を均一に分散させることができるとともに、ペーストを塗工することによって得られる正極膜の厚みを均一にできる。
混練工程に用いられる混練装置は、一般的な非水系電解質二次電池の正極合材ペーストの製造で使用されているものであればよく、例えば、ブレード遊星運動型の混練機、容器回転型の遊星運動混練機、ホモジナイザー、などが挙げられる。
また、混練する時間は、特に限定されるものではないが、ペーストを構成する各材料が均一に混合されペースト中で分散した状態になるまで混練すればよく、用いる装置ごとに予備試験などで決定すればよい。
(2)非水系電解質二次電池用正極の製造方法
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極の製造方法(以下、単に「正極の製造方法」ということがある。)は、上記ペーストの製造方法により得られた正極合材ペーストを集電体上に塗工して正極膜を形成する塗工工程を有することを特徴とする。
塗工工程における正極膜を形成する方法は、一般的な非水系電解質二次電池の正極膜の製造で用いられる公知の方法でよく、正極合材ペーストをアルミ箔に塗工し乾燥させ、必要に応じ、電極密度を高めるべくロールプレス等により加圧してもよい。
このようにしてアルミ箔に状に正極膜を形成してシート状の正極を製造し、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等し、電池の製造に供することができる。ただし、本発明に係る正極の製造方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法に依ってもよい。
以下に、本発明の正極の製造方法によって得られた正極を用いた非水系電解質二次電池とその製造方法について説明する。 これまで述べてきた製造方法によって得られた正極と、一般の非水系電解質二次電池と同様の負極、セパレータおよび非水系電解質からなる電池構成部材を組み立てて、所望の電池を得ることができる。
したがって、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池の製造方法は、下記実施形態をはじめとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明によって得られる非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
負極には、金属リチウム、リチウム合金等、また、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗工、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極バインダーとして、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これら活物質およびバインダーを分散させる溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
これらの負極材料を、混練して負極合材ペーストを作製し、そのスラリーを公知の方法で銅箔に塗工して乾燥させて負極膜を形成する。その後必要に応じてプレス、スリット加工することにより所定の寸法に加工し、シート状の負極を得る。
正極と負極との間にはセパレータを挟み込んで配置する。
セパレータは、正極と負極とを分離し電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な穴を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解質は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解した電解液である。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解質は、ラジカル補足剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
以上説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極をセパレータを介して積層させて電極体とし、この電極体に所定の非水系電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を集電用リード等を用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。本発明は、下記実施例のみに限定
されることはない。
(実施例1)
1.正極の作製
[混合工程]
正極活物質として粒径10μmのリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)を36g、導電材として一次粒子径35nmのカーボン粉(電気化学株式会社製「デンカブラック:登録商標」)2g、直径3mmのジルコニアボール60gを、PP製容器に入れ、公転1500rpm、自転600rpmで60秒間の乾式による遊星撹拌を行って混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末は、リチウムニッケル複合酸化物とカーボン粉が均一に分散して混合されていることを確認した。
[混練工程]
次に、ジルコニアボールを取り除き、容器の中にバインダーとして質量平均分子量約28万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分換算で2g、分散剤の顔料誘導体としてフタロシアニン系顔料誘導体(ルーブリゾール社製、Solsperse−5000)を0.2g添加し、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をペーストの固形分濃度が65質量%になるように加え、公転1500rpm、自転600rpmで5分間の湿式による遊星撹拌を行って正極合材ペーストを得た。得られた正極合材ペーストは、均一に分散して混合されていることが確認された。
[塗工工程]
前記正極合材ペーストを、アプリケーターによってアルミニウム箔(厚さ20μm)上に正極活物質量が10mg/cmとなるように塗工し、130℃で6時間乾燥させた。乾燥後、正極膜が形成されたアルミニウム箔を、直径12mmにプレス打ち抜き、実施例1に係る正極を作製した。
2.負極の作製
負極活物質として、一次粒子径10μmの天然黒鉛90g、バインダーとしてPVDF10g、および、溶媒としてNMP(適量)をプラネタリーミキサーにより攪拌混合することにより、粘度が3000cPの負極合材ペーストを調製した。その負極合材ペーストを、アプリケーターによって銅箔(厚さ20μm)上に天然黒鉛が6mg/cmとなるいように塗工し、130℃で6時間乾燥させた。乾燥後、負極膜が形成された前記銅箔を14mmΦで打ち抜いて負極を作製した。
3.コイン電池の作製
セパレータにはポリプロピレン製の多孔質樹脂膜を用い、電解液には支持塩として電解質LiPFを1モル/L含有するエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)の等量混合液(容積比でEC/EMC/DMC=3/4/3)を用いた。
これらの各構成部材を用いて、露点−30℃未満のグローブボックス中で、図1に示す2032型コイン電池を製造した。
図1において、1は正極、2はLi金属負極、3はセパレーター、4はガスケット、5はウェーブワッシャー、6は正極缶、7は負極缶である。
4.評価
(混合性および混練性評価)
目視により正極合材ペーストにおける正極材料の分散状態を評価した。正極材料が分散状 態にあり凝集が認められない場合を判定「○」とし、僅かに凝集が認められた場合を判定「△」とし、多数の凝集粒が認められた場合を判定「×」と評価した。
(塗工性評価)
上記製造方法で得られた正極合材ペーストの粘度測定、アプリケーターによる塗工のハンドリング、また正極塗工後の塗工膜表面を目視観察してスラリーの塗工性を評価した。 塗工膜表面に筋などがなく平滑な表面が得られた場合を判定「○」とし、筋や粒が確認された場合を判定「×」と評価した。
(電池特性評価)
上記の材料を用いた2032型コイン型電池の電池特性を評価した。
充放電測定条件は1mAで4.2Vまで定電圧充電を行い、4.2Vで低電圧充電(電流値が0.1mAで充電終了)した後、1mAの定電流で3.0Vまで放電を行った。
正極抵抗は、コイン型電池を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定すると、ナイキストプロットが得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。なお、正極抵抗は比較例5を100とした相対値を評価値とした。
(総合評価)
混合性および混練性評価、塗工性評価、電池特性評価のすべてが判定「○」であり、かつ正極抵抗が100未満の場合を判定「○」とし、塗工性が判定「×」で電池作製が困難な場合を判定「×」と評価した。また、混合性および混練性評価が判定「○」であり、かつ塗工性評価において塗工膜表面に筋が認められなかった場合を判定「○」と評価し、混合性および混練性評価が判定「×」であり、かつ塗工性評価において塗工膜表面に筋が認められなかった場合を判定「△」と評価した。
評価結果を纏めて、表1に示す。
(実施例2)
混練工程において、顔料誘導体を0.1g添加したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(実施例3)
混練工程において、顔料誘導体としてルーブリゾール社製フタロシアニン系顔料誘導体Solsperse−12000を0.2g添加したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(実施例4)
混練工程において、顔料誘導体としてルーブリゾール社製アゾ系顔料誘導体Solsperse−22000を0.2g添加したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例1)
混練工程において、顔料誘導体を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例2)
混練工程において、顔料誘導体を添加しなかったこと、遊星湿式攪拌を60分間行ったこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例3)
混合工程において乾式による遊星攪拌を5分間行ったこと、混練工程において、顔料誘導体を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例4)
混練工程において、顔料誘導体を添加しなかったこと、溶媒としてNMPをペーストの固形分濃度が55質量%になるように加えたこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例5)
LiNiO108g、カーボン粉6gをプラネタリーミキサーに投入し、NMPによって5質量%に調整された固形分換算7gのPVDFを加えて60rpmで3時間固練りを行なっところ均一に混合されたため、前記プラネタリーミキサーへペーストの固形分濃度が55質量%になるようにNMPを加え、60rpmで1時間混練したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。評価結果を纏めて、表1に示す。
(比較例6)
LiNiO108g、カーボン粉6gをプラネタリーミキサーに投入し、NMPによって5質量%に調整された固形分換算7gのPVDFを加えて60rpmで3時間固練りを行なったところ均一に混合されたため、ペーストの固形分濃度が55質量%になるようにNMPを加え、超音波ホモジナイザーを用いて30分間混練したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。
(比較例7)
乾式撹拌による混合工程を行わず、混練工程において全ての材料を一度に混練したこと以外は、実施例1と同様にして正極を作成するとともに評価した。
Figure 2017062960
実施例1〜4は、総合評価が「◎」であり、正極活物質と導電材の混合作業性に優れ、表面性状に優れた正極膜が得られたため、電池に用いた際に高い出力特性が得られたことが確認された。
一方、比較例1〜3の塗工性は、実施例よりも悪い結果となっている。これは、顔料誘導体が添加されていなかったためにペースト粘度が高く、一様な塗工が不可能となった。
また、比較例4は、顔料誘導体を添加しなかったがペーストの固形分濃度を下げたことで、混合性および混練性評価およびペースト粘度が良好となったが、塗工膜の表面に粒が認められたため、正極材料の分散状態が実施例より悪化していると考えられる。その結果、電池特性評価がやや悪化した。
比較例5と6は、顔料誘導体を添加せずに混合および混練時間を長くしたが、正極合材ペースト中での正極材料の分散状態が悪く、電池特性評価が悪い結果となった。
比較例7は、混合工程がないため、ペースト粘度が高く、一様な塗工が不可能となった。
1 正極
2 Li金属負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 ウェーブワッシャー
6 正極缶
7 負極缶

Claims (6)

  1. 非水系電解質二次電池用正極の製造に用いられる正極合材ペーストの製造方法であって、
    正極活物質と導電材を乾式混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末に、溶媒とバインダーおよび顔料誘導体とを添加して混練し、正極合材ペーストを得る混練工程と、を有することを特徴とする正極合材ペーストの製造方法。
  2. 前記顔料誘導体は、有機色素誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の正極合材ペーストの製造方法。
  3. 前記有機色素誘導体は、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、アントラキノン系色素、キナクリドン系色素からなる群より選択される1種以上の色素の誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の正極合材ペーストの製造方法。
  4. 前記顔料誘導体は、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボニル基、スルホニル基からなる群より選択される1種以上の官能基を付加したものであることを特徴とする請求項2または3に記載の正極合材ペーストの製造方法。
  5. 前記混合工程は、乾式ボールミル、乾式ビーズミル、ブレード遊星運動型混合器、容器回転型遊星運動混合器、擂潰機、ホモジナイザーからなる群より選択される1種以上の混合装置を用いて乾式混合することを特徴する請求項1から3のいずれかに記載の正極合材ペーストの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の正極合材ペーストの製造方法により得られた正極合材ペーストを、集電体上に塗工して正極膜を形成する塗工工程を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極の製造方法。
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