JP2017059437A - リチウムイオン二次電池用負極の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極の製造方法 Download PDF

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浩哉 梅山
橋本 達也
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達也 橋本
井上 薫
Kaoru Inoue
薫 井上
堤 修司
Shuji Tsutsumi
修司 堤
鳥山 幸一
Koichi Toriyama
幸一 鳥山
谷口 明宏
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Abstract

【課題】ハイレートサイクルにおける性能劣化を抑制できるリチウムイオン二次電池用負極を提供する。【解決手段】リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、セパレータと接することになる最表面層を備えたリチウムイオン二次電池用負極の製造方法である。当該製造方法は、少なくとも炭素系負極活物質およびN,N−ジエチルアクリルアミドを含有する最表面層を形成するステップ(S102)を備える。最表面層は、N,N−ジエチルアクリルアミドを1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下含有するように形成される。さらに当該製造方法は、10W・min/m2以上の放電量で、最表面層にコロナ処理を施すステップ(S103)を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法に関する。
特開2012−204244号公報(特許文献1)には、電極用バインダ組成物の原料(エチレン性不飽和単量体)の一例として、N,N−ジエチルアクリルアミドが開示されている。
特開2012−204244号公報
動力用途のリチウムイオン二次電池が開発されている。動力用途での要求特性は、従来の民生用途(携帯電話等のモバイル機器)での要求特性と大きく異なる。たとえば車載用途等では、ハイレート充放電の繰り返し(以下「ハイレートサイクル」と称する)に対する耐性が重要である。
本発明の目的は、ハイレートサイクルにおける性能劣化を抑制できる、リチウムイオン二次電池用負極の提供にある。
リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、セパレータと接することになる最表面層を備えたリチウムイオン二次電池用負極の製造方法である。当該製造方法は、少なくとも炭素系負極活物質およびN,N−ジエチルアクリルアミドを含有する最表面層を形成するステップを備える。最表面層は、N,N−ジエチルアクリルアミドを1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下含有するように形成される。さらに当該製造方法は、10W・min/m2以上の放電量で、最表面層にコロナ処理を施すステップを備える。
以下の説明では、リチウムイオン二次電池用負極を単に「負極」と、リチウムイオン二次電池を単に「電池」と記す場合がある。
本発明者は、ハイレートサイクルにおける性能劣化の要因が、セパレータと負極との界面に生じる空隙にあることを見出した。すなわち、ハイレートサイクルでは、負極が激しく膨張、収縮するため、セパレータと負極との密着性が低下し、セパレータと負極との界面において、所々に空隙が生じてしまう。
かかる空隙の発生により、負極の表面反応が不均一になると考えられる。空隙の生じた部分と、空隙の生じていない部分との間で、電極間距離に差が生じるためである。加えて負極内に保持されていた電解液が、空隙に流出することにより、負極の表層で電解液の保持量が減少すると考えられる。そして、これらが相俟って、局所的な劣化が促進されると考えられる。
今回本発明者は、負極の最表面にN,N−ジエチルアクリルアミド(以下「DEAA」と略記する場合がある)を含有する最表面層を形成し、さらにコロナ処理によって最表面層に含有されるDEAAを改質することにより、セパレータと負極との密着性を改善できることを見出した。
ゆえに上記の製造方法は、少なくとも炭素系負極活物質およびDEAAを含有する最表面層を形成するステップと、10W・min/m2以上の放電量で、最表面層にコロナ処理を施すステップと、を備える。コロナ処理によって改質されたDEAAは、セパレータと最表面層とを強固に密着させる。これにより、ハイレートサイクル時に、負極が激しく膨張、収縮した場合にも、セパレータが負極の表面に追随できる。すなわち空隙の発生が抑制される。
さらにコロナ処理によって改質されたDEAAは、電解液に対する親和性が高い。これにより、セパレータと負極との界面、ならびに負極の最表面層に、電解液を潤沢に保持できるようになる。すなわち最表面層の保液性が向上する。
ただし、最表面層のDEAA含有量(単位面積当たりの値)は、1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下とする。DEAA含有量が1.88×10-2mg/cm2未満であると、セパレータと負極との密着性が不十分となる可能性がある。またDEAA含有量が7.5×10-2mg/cm2を超えると、改質されたDEAAが抵抗成分となり、電池抵抗が増加する可能性がある。
単位面積当たりのDEAA含有量は、最表面層の塗工量(「目付量」とも称される)と、最表面層におけるDEAAの質量比率(炭素系負極活物質の質量に対する比率)とによって調整可能である。すなわち、塗工量〔mg/cm2〕と質量比率〔質量%〕との積が単位面積当たりのDEAA含有量〔mg/cm2〕となる。最表面層の塗工量は、好ましくは3.75mg/cm2以上15mg/cm2以下である。最表面層におけるDEAAの質量比率は、炭素系負極活物質の質量に対して、好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下である。
さらにコロナ処理の放電量は、10W・min/m2以上とする。本発明者の検討によれば、5〜10W・min/m2の範囲に、DEAAの改質反応の閾値が存在すると考えられる。よって放電量を、10W・min/m2以上とすることにより、DEAAを十分改質することができる。他方、放電量が10W・min/m2未満であると、DEAAの改質が不十分となる可能性がある。
上記によれば、ハイレートサイクルにおける性能劣化を抑制できるリチウムイオン二次電池用負極が提供される。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の構成の一例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の構成の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の概略を示すフローチャートである。 リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。 正極の構成の一例を示す概略図である。 電極群の構成の一例を示す概略図である。 リチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」と記す)について説明する。ただし、本実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。
<リチウムイオン二次電池用負極>
まず、本実施形態の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池用負極の概要を説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池用負極の構成の一例を示す概略図である。負極100は、帯状のシート部材である。負極100は、負極集電体101と、負極集電体101の表面に形成された負極合材層102とを備える。図1に示すように、負極合材層102は、負極集電体101の両面に配置されていてもよい。
本実施形態の製造方法では、セパレータと接することになる最表面層を備えた負極が製造される。図2は、当該負極の構成の一例を示す概略断面図である。前述のように、負極100は、負極集電体101と、負極合材層102とを備える。負極合材層102は、基層102Aと、基層102A上に形成され、セパレータ300と接することになる最表面層102Bとを含む。最表面層102Bは、コロナ処理によって改質されたN,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)を所定量含有する。これによりハイレートサイクルにおける性能劣化を抑制できる。以下、負極の製造方法を説明する。
<リチウムイオン二次電池用負極の製造方法>
図3は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の概略を示すフローチャートである。当該製造方法は、基層形成ステップ(S101)と、最表面層形成ステップ(S102)と、コロナ処理ステップ(S103)とを備える。各ステップはこの順に実行される。以下、各ステップを説明する。
《基層形成ステップ(S101)》
基層形成ステップでは、最表面層の下地となる基層を形成する。基層は、負極集電体上に形成される。負極集電体は、たとえば銅(Cu)箔等でよい。
(塗料の調製)
まず基層となるべき第1塗料(「スラリー」、「ペースト」とも称される)を調製する。第1塗料の調製は、たとえばプラネタリミキサ等の混練装置を用いて行うことができる。すなわち、所定の質量比で、炭素系負極活物質、増粘材およびバインダ等を配合した負極合材を、溶媒中で混練することにより、第1塗料を調製することができる。溶媒には、たとえば水を用いることができる。第1塗料の固形分比率は、たとえば55〜65質量%程度(典型的には60質量%程度)である。固形分比率とは、混合物(塗料、造粒体等)において溶媒以外の成分が占める質量比率を示す。負極合材の分散性の観点から、第1塗料は、固練り、希釈分散を経て調製することが望ましい。
(負極合材)
負極合材は、炭素系負極活物質を、たとえば96〜99.5質量%程度含有するように調製される。炭素系負極活物質とは、炭素から構成され、かつリチウムイオンを吸蔵、放出できる物質を示す。炭素系負極活物質は、たとえば黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等である。炭素系負極活物質は、好ましくは黒鉛である。黒鉛は、天然黒鉛でもよいし、人造黒鉛でもよい。たとえば天然の鱗片状黒鉛を球形化した球形化黒鉛等を用いてもよい。球形化黒鉛は、その表面に非晶質炭素からなる被覆層を有していてもよい。
炭素系負極活物質のd50は、たとえば1〜30μm程度である。「d50」は、レーザ回折/散乱法によって測定された体積基準の粒度分布における累積値50%での粒径(「メジアン径」とも称される)を示すものとする。
負極合材は、増粘材を、たとえば0.25〜2質量%程度含有するように調製される。増粘材は、たとえばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC−Na)、ポリアクリル酸のナトリウム塩(PAA−Na)等であってもよい。
負極合材は、結着材を、たとえば0.25〜2質量%程度含有するように調製される。結着材は、たとえばスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等であってもよい。
(基層の形成)
基層は、第1塗料を負極集電体の表面に塗工し、乾燥させることにより、形成できる。塗工には、たとえばダイコータ等を用いればよい。基層の塗工量は、電池仕様に応じて適宜変更できる。なお基層は、単一の層から構成してもよいし、あるいは塗工と乾燥とを繰り返すことにより、複数の層から構成してもよい。ただし、基層はDEAAを含有しない層とすることが望ましい。DEAAを最表面層に偏在させることにより、電池抵抗の低減が期待できるためである。
《最表面層形成ステップ(S102)》
最表面層形成ステップでは、基層の表面に、少なくとも炭素系負極活物質およびDEAAを含有する最表面層を形成する。このとき最表面層は、単位面積当たりのDEAA含有量が、1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下となるように形成される。性能劣化の抑制効果を高めるため、同含有量は、好ましくは3.75×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下である。同含有量は、最表面層の塗工量〔mg/cm2〕と、最表面層におけるDEAAの質量比率〔質量%〕とによって調整できる。
第2塗料は、DEAAを含有させることを除いては、第1塗料と同様にして調製することができる。第2塗料の固形分(すなわち最表面層となるべき負極合材)は、炭素系負極活物質の質量に対して、DEAAを好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下含有する。
第2塗料も、第1塗料と同様に、ダイコータ等を用いて塗工することができる。下地である第1塗料と、第2塗料との相溶を抑制するため、第1塗料を乾燥させた後に、第2塗料を塗工することが望ましい。第2塗料の塗工量は、好ましくは3.75mg/cm2以上15mg/cm2以下であり、より好ましくは3.75mg/cm2以上7.5mg/cm2以下である。
DEAAを負極合材層の最表面に偏在させるとの観点から、負極合材層の塗工量(基層の塗工量と、最表面層の塗工量との合計)に対する、最表面層の塗工量の割合は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは25%以下である。また最表面層の保液性の観点から、同割合は、好ましくは14%以上である。
(造粒体の調製)
上記の基層および最表面層は、塗料ではなく、造粒体を用いて形成することもできる。造粒体とは、負極合材を顆粒化してなる粒状体である。特に最表面層は、造粒体を用いて形成することが好ましい。造粒体を用いることにより、DEAAが最表面層から基層へと浸透することを抑制できる。造粒体は、塗料に比し、溶媒量が少ないためである。DEAAの浸透の抑制により、電池抵抗の低減が期待できる。
造粒体は、たとえば攪拌造粒装置を用いて調製することができる。たとえば、アーステクニカ社製の「ハイスピードミキサ」、「ハイフレックスグラル」またはこれと同等品を用いて、造粒体を調製することができる。造粒体の固形分(すなわち負極合材)は、塗料と同様である。ただし、造粒体の固形分比率は、塗料の固形分比率よりも高い比率に設定される。具体的には、たとえば76〜82質量%程度(典型的には79質量%程度)に設定するとよい。
造粒体を用いる場合、たとえばロール成形によって、造粒体をシート状に成形することによって、最表面層を形成できる。造粒体から構成された最表面層は、基層の表面に圧着することによって、基層上に配置することができる。たとえばロール転写等により、造粒体から構成された最表面層を基層の表面に圧着することができる。
《コロナ処理ステップ(S103)》
コロナ処理ステップでは、10W・min/m2以上の放電量で、最表面層にコロナ処理を施す。これにより、最表面層に含有されるDEAAが改質され、セパレータと最表面層との密着性、ならびに最表面層の保液性が向上する。コロナ処理は、たとえば春日電機株式会社のコロナ放電装置またはこれと同等品を用いて、実施することができる。放電量の上限は、たとえば50W・min/m2としてもよい。放電量が50W・min/m2を超えると、改質効果が飽和し、経済的でないためである。ただし経済性を無視する限り、放電量を50W・min/m2を超えるものとしても差し支えない。
その後、所定の寸法に、圧縮および裁断を行うことにより、図1に示すリチウムイオン二次電池用負極100を製造することができる。
なお圧縮は、コロナ処理ステップより前に実施されてもよいが、望ましくはコロナ処理ステップより後に実施される。圧縮後は、最表面層の空隙が減少するため、コロナ処理のエネルギー効率が低下する可能性があるためである。
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態は以下の例に限定されるものではない。
<リチウムイオン二次電池の製造>
図4は、リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートに従って、各種負極およびこれを用いた電池を製造した。図4中、負極製造ステップ(S100)は、前述したリチウムイオン二次電池用負極の製造方法に相当するステップである(図3を参照のこと)。
《実施例1》
1.負極製造ステップ(S100)
以下の材料を準備した。
(負極用材料)
負極活物質:炭素系負極活物質(「黒鉛粉末」、d50=20μm)
増粘材 :CMC−Na(製品名「MAC500LC」、日本製紙社製)
N,N−ジエチルアクリルアミド:「DEAA(登録商標)」、KJケミカルズ社製
バインダ :SBR水分散体(JSR社製)
溶媒 :水
負極集電体:Cu箔(厚さ=14μm)。
1−1.基層形成ステップ(S101)
プラネタリミキサの混合容器に、負極活物質、増粘材およびバインダを、質量比で、負極活物質:増粘材:バインダ=100:1:1となるように投入した。さらに固形分比率が65質量%となるように溶媒を加え、固練りを行った。固練り後、固形分比率が60質量%となるように溶媒を追加し、希釈分散を行った。これにより、基層となるべき第1塗料を調製した。
ダイコータを用いて、第1塗料を負極集電体の一方の表面に塗工し、乾燥させた。これにより、基層を形成した。基層の塗工量(片面)は、乾燥後で22.5mg/cm2となるように調整した。
1−2.最表面層形成ステップ(S102)
プラネタリミキサの混合容器に、負極活物質、増粘材、バインダおよびDEAAを、質量比で、負極活物質:増粘材:バインダ:DEAA=100:1:1:0.5となるように投入した。さらに固形分比率が65質量%となるように溶媒を加え、固練りを行った。その後、固形分比率が60質量%となるように溶媒を追加し、希釈分散を行った。これにより、最表面層となるべき第2塗料を調製した。
ダイコータを用いて、第2塗料を、基層の表面に塗工し、乾燥させた。これにより、最表面層を形成した。最表面層の塗工量(片面)は、乾燥後で7.5mg/cm2となるように調整した。
同様にして、負極集電体の他方の表面にも、基層および最表面層を積層形成した。
(付記:造粒体の調製方法)
なお前述のように、最表面層は造粒体を用いて形成してもよい。そのために、ここで造粒体の調製方法を付記しておく。
造粒体の調製には、アーステクニカ社製の「ハイスピードミキサ」を用いるとよい。まず、負極活物質、増粘材およびバインダを、質量比で、負極活物質:増粘材:バインダ=100:1:1となるように配合し、ハイスピードミキサの攪拌槽に投入する。溶媒を固形分比率が79質量%となるように投入する。以下の条件で造粒する。
攪拌羽根(アジテータ)回転速度:300rpm
解砕羽根(チョッパー)回転速度:1200rpm
攪拌時間:3分。
次いでDEAAを、質量比で、負極活物質:増粘材:バインダ:DEAA=100:1:1:0.5となるように投入する。以下の条件でさらに造粒することにより、造粒体を調製できる。
アジテータ回転速度:400rpm
チョッパー回転速度:2500rpm
攪拌時間:5分。
1−3.コロナ処理ステップ(S103)
春日電機株式会社のコロナ放電装置を用いて、50W・min/m2の放電量で最表面層(表裏両面)にコロナ処理を施した。
その後、所定の寸法に、圧縮し、裁断することにより、図1に示す負極100を製造した。図1に示す各部の寸法は次のとおりとした。
(負極寸法)
負極の長さ(L100):4700mm
合材部の幅(W102):100mm
負極の厚さ(T100):150μm。
2.正極製造ステップ(S200)
以下の材料を準備した。
(正極用材料)
正極活物質:LiNi1/3Co1/3Mn1/32
導電材 :アセチレンブラック(AB)
バインダ :ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
溶媒 :N−メチル−2−ピロリドン(NMP)
正極集電体:Al箔(厚さ=20μm)。
プラネタリミキサの混合容器に、正極活物質、導電材およびバインダを、質量比で、正極活物質:導電材:バインダ=90:8:2となるように投入し、溶媒を加えて混練した。これにより正極合材スラリーを調製した。ダイコータを用いて、正極合材スラリーを正極集電体の表面に塗工し、乾燥させた。さらに圧縮、裁断を行い、正極を製造した。図5は、正極の構成を示す概略図である。正極200は、正極集電体201と、正極集電体201の表面に形成された正極合材層202とを含む。正極200の各部の寸法は次のように設定した。
(正極寸法)
正極の長さ(L200):4500mm
合材部の幅(W202):94mm
正極の厚さ(T200):170μm。
3.電極群製造ステップ(S300)
ポリエチレン製の多孔質層(PE層)と、ポリプロピレン製の多孔質層(PP層)とが、PP層/PE層/PP層の順で積層された3層構造を有するセパレータ基材(厚さ=25μm)を準備した。
エム・テクニック社製の乳化機「CLEARMIX」を用いて、アルミナ粒子およびアクリル系樹脂を所定の溶媒中に分散させることにより、耐熱層となるべきスラリーを調製した。グラビアコータを用いて、当該スラリーをセパレータ基材上に塗工し、乾燥させることにより、耐熱層を形成した。これによりセパレータを製造した。
図6は、電極群の構成の一例を示す概略図である。図6に示すように、負極100と正極200との間にセパレータ300が介在するように(すなわちセパレータと負極の最表面層とが接するように)、これらを積層し、巻回した。これにより巻回体を得た。平板プレス機を用いて、巻回体を扁平状に成形した。これにより電極群800を製造した。成形条件は次のとおりとした。
(成形条件)
成形圧力:4kN/cm2
成形時間:2分
成形温度:室温(加温なし)。
4.ケース収容ステップ(S400)
図7は、リチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略図である。まず角形の電池ケース500を準備した。電極群800を外部端子501,502と接続し、電極群800を電池ケース500に収容した。
5.注液ステップ(S500)
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を混合することにより、混合溶媒を調製した。混合溶媒に、Li塩としてLiPF6を溶解させ、さらに添加剤としてリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)およびビフェニル(BP)を溶解させることにより、電解液を調製した。電解液組成は次のとおりである。
(電解液組成)
Li塩 :LiPF6(1mоl/l)
混合溶媒:[EC:DMC:EMC=3:4:3(体積比)]
添加剤 :LiBOB(1質量%)、CHB(1質量%)、BP(1質量%)。
電池ケース500の注液口(図示せず)から、電解液600(125g)を注入し、その後電池ケース500を密閉した。以上より、リチウムイオン二次電池1000(定格容量=24Ah)を製造した。
《比較例1》
DEAAを含有しない負極合材層(基層からなる単一層)を形成し、かつコロナ処理を実施しないことを除いては、実施例1と同様にして、比較例1に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。比較例1は、最表面層形成ステップおよびコロナ処理ステップの両方を実施していない比較例に相当する。以降の製造例において、負極合材層(片面)の塗工量(=(基層の塗工量)+(最表面層の塗工量))は、最表面層を形成しない場合も含め、すべて30mg/cm2とした。
なお表1中、最表面層の塗工量の欄に示す「−」は、最表面層を形成していないこと(負極合材層が単一層であること)を示している。また放電量の欄に示す「−」は、コロナ処理を実施していないことを示している。
《実施例2、比較例2》
表1に示すように、コロナ処理の放電量を変更することを除いては、実施例1と同様にして、実施例2および比較例2に係る負極ならびにこれを用いた電池を製造した。
《実施例3、比較例3、実施例4》
表1に示すように、最表面層の塗工量を変更することにより、単位面積当たりのDEAA含有量を変更することを除いては、実施例1と同様にして、実施例3、比較例3および実施例4に係る負極ならびにこれを用いた電池を製造した。
《実施例5、比較例4、比較例5、実施例6、比較例6》
表1に示すように、DEAA配合量(炭素系負極活物質に対する質量比率)および最表面層の塗工量を変更することにより、単位面積当たりのDEAA含有量を変更することを除いては、実施例1と同様にして、実施例5、比較例4、比較例5、実施例6および比較例6に係る負極ならびにこれを用いた電池を製造した。
《比較例7》
コロナ処理ステップを実施することを除いては、比較例1と同様にして、比較例7に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。
《比較例8》
コロナ処理ステップを実施しないことを除いては、実施例1と同様にして、比較例8に係る負極およびこれを用いた電池を製造した。
<評価>
以下のようにして、電池性能を評価した。以下の説明において、電流の単位「C」は電池の定格容量を1時間で放電しきる電流を示すものとする。
1.電池抵抗の測定
25℃に設定された恒温槽内に電池を配置した。恒温槽内において、電池のSOC(State Of Charge)を60%に調整した。続いて、10Cの電流で10秒間のパルス放電を行い、電圧降下量を測定した。電圧降下量を放電電流で除することにより、電池抵抗(初期IV抵抗)を算出した。結果を表1に示す。表1の電池抵抗の欄に示す値は、電池10個の測定結果の平均値である。
2.低温サイクルにおける容量維持率の測定
25℃に設定された恒温槽内に電池を配置した。1Cの電流で、電池を4.1Vまで充電し、その後1Cの電流で、電池を3.0Vまで放電した。このときの放電容量を初期容量とする。
初期容量を測定した後、電池電圧を3.7Vに調整した。電圧調整後、−10℃に設定された恒温槽内に電池を配置し、以下の「パルス充電→第1休止→パルス放電→第2休止」を1サイクルとして、充放電サイクルを1000サイクル実行した。
(低温サイクル条件)
パルス充電:電流=2C、充電時間=20秒
第1休止 :5分
パルス放電:電流=2C、放電時間=20秒
第2休止 :5分。
初期容量と同様にして、1000サイクル後の放電容量(サイクル後容量)を測定した。サイクル後容量を初期容量で除することにより、容量維持率(百分率)を算出した。結果を表1に示す。表1中、容量維持率が高い程、保液性が良好であると推測される。
3.ハイレートサイクルにおける抵抗増加率の測定
25℃に設定された恒温槽内に電池を配置した。恒温槽内において、電池のSOCを60%に調整した。次いで、以下のパルス充電とパルス放電との組み合わせを1サイクルとして、充放電サイクルを3000サイクル実行した。
(ハイレートサイクル条件)
パルス充電:電流=10C、充電時間=80秒
パルス放電:電流=2C、放電時間=400秒。
3000サイクル後のIV抵抗を、初期IV抵抗で除することにより、抵抗増加率(百分率)を求めた。結果を表1に示す。表1中、抵抗増加率が低い程、ハイレートサイクルにおける性能劣化が抑制されていると評価できる。
Figure 2017059437
<結果と考察>
表1より、以下の条件(1)および(2)を満たす実施例によって製造された負極を用いた電池では、ハイレートサイクルにおける性能劣化が抑制されていることが分かる。コロナ放電により改質されたDEAAによって、セパレータと負極との密着性、ならびに最表面層の保液性が改善されたためと考えられる。
(1)最表面層が、DEAAを1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下含有するように形成されている。
(2)10W・min/m2以上の放電量で、最表面層にコロナ処理が施されている。
比較例2は、ハイレートサイクルの抵抗増加率が高い。コロナ処理の放電量が少ないため、DEAAを十分改質できなかったと考えられる。
比較例3および4は、低温サイクルの容量維持率が低く、ハイレートサイクルの抵抗増加率が高い。最表面層における単位面積当たりのDEAA含有量が少ないため、密着性および保液性が十分でないと考えられる。
比較例5は、ハイレートサイクルにおける抵抗増加率が特に高い。最表面層の単位面積当たりのDEAA含有量が多いためと考えられる。また比較例5は、最表面層の塗工量が多い構成であるため、最表面層と基層との間で膨張収縮量の差が大きくなり、最表面層と基層との間でズレが生じていると予想される。
比較例6は、ハイレートサイクルにおける抵抗増加率が高い。最表面層の単位面積当たりのDEAA含有量が多いためと考えられる。比較例6は、最表面層におけるDEAAの質量比率が多い構成であるため、DEAAが抵抗成分となり、電池抵抗も増加している。
比較例7の結果から、コロナ処理のみでは、密着性および保液性を改善できないことが分かる。
比較例8の結果から、DEAAの添加のみでは、密着性および保液性を改善できないことが分かる。
以上のように、本実施形態はハイレートサイクルにおける性能劣化を抑制できる。したがって本実施形態は、ハイレートサイクル性能が重視される用途(たとえば車載用途等)に好適である。また以上の説明では、角形電池を例示したが、本実施形態は、円筒形電池、ラミネート式電池等にも適用可能である。電極群も巻回型に限られず、たとえば積層型の電極群を採用することもできる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 負極、101 負極集電体、102 負極合材層、102A 基層、102B 最表面層、200 正極、201 正極集電体、202 正極合材層、300 セパレータ、500 電池ケース、501,502 外部端子、600 電解液、800 電極群、1000 リチウムイオン二次電池。

Claims (1)

  1. セパレータと接することになる最表面層を備えたリチウムイオン二次電池用負極の製造方法であって、
    少なくとも炭素系負極活物質およびN,N−ジエチルアクリルアミドを含有する前記最表面層を形成するステップを備え、
    前記最表面層は、前記N,N−ジエチルアクリルアミドを1.88×10-2mg/cm2以上7.5×10-2mg/cm2以下含有するように形成され、さらに、
    10W・min/m2以上の放電量で、前記最表面層にコロナ処理を施すステップを備える、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109830689A (zh) * 2019-01-22 2019-05-31 深圳鸿鹏新能源科技有限公司 锂电池极片及其制备方法和锂电池

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