JP2017055743A - 管状細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造される管状細胞構造体 - Google Patents

管状細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造される管状細胞構造体 Download PDF

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泰秀 中山
良輔 岩井
Ryosuke Iwai
良輔 岩井
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Abstract

【課題】本願発明の目的は、確実かつ簡便に、管腔を有する均質な管状細胞構造体を製造する方法を提供することにある。【解決手段】本願発明の管状細胞構造体の製造方法は、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器上の、前記窪み部分の表面の少なくとも一部に前記温度応答性ポリマー又は前記温度応答性ポリマー組成物を被覆して温度応答性ポリマー被覆部を形成する準備工程と、前記温度応答性ポリマー被覆部上に少なくとも1種の細胞を播種、培養する培養工程と、前記細胞から管状細胞構造体を形成する形成工程と、を含むことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、管状細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造される管状細胞構造体に関する。
近年、機能障害や機能欠損に陥った組織や臓器の再生を図る再生医療等の観点から、細胞を細胞培養器内で培養して、組織等の構造を模倣した立体的構造を有する細胞構造体を形成させる技術の重要性が高まってきている。
組織の構造を模倣した立体的構造を有する細胞構造体を形成する方法としては、例えば、平面の培養表面に温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養器を用いて管腔を有する細胞構造体を得る方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2014−027917号公報
特許文献1に記載の方法は、簡便に管腔を有する細胞構造体を製造することができる優れた方法である。特許文献1には、平面の培養表面上で細胞を培養し、培養した細胞同士が収縮して自己凝集することを利用して、管腔を有する細胞構造体を製造した具体例が記載されている。しかしながら、平面上で細胞を自己凝集させると、均質な細胞構造体が得られにくく、また、管腔が潰れて中実の細胞構造体となりやすいため、より確実に、管腔を有する管状細胞構造体を製造する方法が求められているのが現状である。
従って、本発明の目的は、確実かつ簡便に、管腔を有する均質な管状細胞構造体を製造する方法を提供することにある。
すなわち、本発明の管状細胞構造体の製造方法は、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器上の、上記窪み部分の表面の少なくとも一部に上記温度応答性ポリマー又は上記温度応答性ポリマー組成物を被覆して温度応答性ポリマー被覆部を形成する準備工程と、上記温度応答性ポリマー被覆部上に少なくとも1種の細胞を播種、培養する培養工程と、上記細胞から管状細胞構造体を形成する形成工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の管状細胞構造体の製造方法は、上記形成工程が、上記培養工程で培養した上記細胞上に、細胞非接着性の棒状構造物を配置する配置工程と、上記棒状構造物が上記細胞からなる管状細胞構造体に覆われた細胞・棒状構造物複合体を形成する複合体形成工程と、上記細胞・棒状構造物複合体から上記棒状構造物を抜き取って、管状細胞構造体を形成する抜き取り工程とを含むことが好ましい。
本発明の管状細胞構造体の製造方法は、上記培養工程が、上記温度応答性ポリマー被覆部上に第一の細胞を播種、培養する第一培養工程と、培養した上記第一の細胞上に、第二の細胞を播種、培養する第二培養工程とを含み、上記形成工程が、上記第一の細胞が上記第二の細胞の外側に位置する積層構造を有する管状細胞構造体を形成する工程であることが好ましい。
また、本発明の管状細胞構造体は、本発明の管状細胞構造体の製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明の管状細胞構造体の製造方法によれば、上記構成を有するため、確実かつ簡便に、管腔を有する均質な管状細胞構造体を製造する方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態の管状細胞構造体の製造方法を説明するための概略図である。 図2(A)は、本発明の一実施形態の管状細胞構造体の製造方法で用いる細胞培養器の概略図(斜視図)である。図2(B)は、(A)の線X−Xに沿う面による断面図である。
以下、本発明の管状細胞構造体の製造方法、及び本発明の管状細胞構造体の実施形態について詳細に例示説明する。
[管状細胞構造体の製造方法]
本発明の管状細胞構造体の製造方法は、少なくとも、調製工程、準備工程、培養工程、及び形成工程を、この順に含む。
本発明の管状細胞構造体の製造方法によれば、管腔が潰れて中実となる部分がない管状細胞構造体を容易に製造することができる。
また、平面の培養面上で形成された管状細胞構造体は、培養面から遠ざかるにつれて細胞密度が低くなりやすいため、培養面側で細胞密度が高く、培養面から離れた上側では細胞密度が低い、細胞密度が不均一な細胞構造体となりやすい。本発明の管状細胞構造体の製造方法によれば、半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器を用いているため、細胞が凝集して管状構造を形成する際、細胞が移動する距離が短くなることで、管状構造の全管状にわたって細胞密度が均一な細胞構造体を得ることができる。
(調製工程)
本発明の実施形態の製造方法において、上記調製工程は、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する工程である。
本実施形態の製造方法に用いられる温度応答性ポリマー及び温度応答性ポリマー組成物としては、(A)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー、(B)N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー、(C)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性物質とを含む温度応答性ポリマー組成物等が挙げられる。中でも、管状細胞構造体が得られやすいという観点から、(A)が好ましい。
ここで、上記(A)としては、例えば、(A−1)DMAEMAを水存在下で重合する方法により得られる温度応答性ポリマー、(A−2)主としてDMAEMAを含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてDMAEMAとアニオン性モノマー(重合鎖ω末端)とを含む温度応答性ポリマー等が挙げられる。
本実施形態において、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、上記(A−1)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
−(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法−
(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む混合物を調製する(調製工程)。ここで、混合物は、重合禁止剤及び水を更に含む。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)としては、市販品を用いることができる。重合禁止剤としては、メチルヒドロキノン(MEHQ)、ヒドロキノン、p−ベンゾキノリン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N−nitroso−N−phenylhydroxylamine(Cupferron)、t−ブチルハイドロキノン等が挙げられる。また、市販のDMAEMAに含まれるMEHQ等をそのまま用いてもよい。水としては、超純水等が挙げられる。
上記混合物に対する重合禁止剤の重量割合は、0.01〜1.5%であることが好ましく、0.1〜0.5%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、ラジカル重合反応の暴走を抑制して、制御できない架橋を低減することができ、製造される温度応答性ポリマーの溶媒に対する溶解性を確保することができる。
上記混合物に対する水の重量割合は、1.0〜50%であることが好ましく、9.0〜33%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、側鎖の加水分解反応の反応速度と、重合するポリマー鎖の成長反応の反応速度とを、バランスよく調和させることができる。これにより、側鎖が加水分解されたDMAEMAに対する、側鎖が加水分解されていないDMAEMAの割合(共重合割合)が1.0〜20程度の温度応答性ポリマーを得ることができる。
次いで、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、混合物に紫外線を照射する(照射工程)。ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射される。DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマーとなる。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応条件に関して、温度条件としては、15〜50℃であることが好ましく、20〜30℃であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、熱による開始反応を抑制し、光照射による開始反応を優先的に進行させることができる。また、加水分解反応の反応速度をポリマー鎖の成長反応の反応速度に対してバランスのよいものにすることができる。
反応時間としては、7〜24時間であることが好ましく、17〜21時間であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、(A−1)の温度応答性ポリマーを高収率で得ることができ、また、光分解反応や不要な架橋反応を抑制しながらラジカル重合を行うことができる。
なお、混合物調製工程において混合物が調製され終えてから、照射工程において紫外線の照射が開始されるまでの時間は、10分〜1時間であることが好ましい。
混合物を加えたバイアルの内部の気体を置換して、バイアル内を不活性雰囲気とする際には、10分程度の時間を要する。そのため、上記時間を10分未満とすると、ラジカル重合に必要となる不活性雰囲気が得られない虞がある。また、混合物中では、DMAEMAの加水分解反応が、紫外線の照射が開始される前に開始される。そのため、上記時間を1時間超とすると、ラジカル重合反応に不活性なメタクリル酸が混合物中に多数生じてしまう。
(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、混合物に水が含まれるため、DMAEMAのラジカル重合反応と、ポリ2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(PDMAEMA)の側鎖のエステル結合の加水分解反応とを、拮抗させることができる。
この拮抗により、得られる生成物は、式(I)で表される繰り返し単位(A)
Figure 2017055743
、及び式(II)で表される繰り返し単位(B)
Figure 2017055743
を含むポリマーとなる。
そのため、ポリマーが有するカチオン性官能基、すなわち、ジメチルアミノ基と、ポリマーが有するアニオン性官能基、すなわち、側鎖のエステル結合が加水分解されてできたカルボキシル基の両方を、バランスよく備えることができる。そして、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
なお、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法と同一の製造方法ではなくとも、DMAEMA、重合禁止剤、及び水が、紫外線照射時に反応系中に共存していれば、上記効果と同様の効果を得ることができる。
例えば、DMAEMA及び重合禁止剤を含む混合物と、水とを別々に準備し、次いで、混合物と水とに不活性ガスをバブリングし、その後、混合物と水とを不活性雰囲気下で混合すると同時に紫外線を照射するという、温度応答性ポリマーの製造方法も、(A−1)の温度応答性ポリマーに含めることができる。
−(A−1)の温度応答性ポリマー−
(A−1)の温度応答性ポリマーは、上記(A−1)の製造方法により製造される。
上記温度応答性ポリマー(A−1)は、曇点を細胞培養に適当な温度付近に維持しつつ、イオンバランスを確保する観点から、上記繰り返し単位(A)のホモポリマー領域と、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とのコポリマー領域とを有するポリマーであることが好ましい。
上記繰り返し単位(A)のホモポリマー領域と、上記繰り返し単位(A)と上記繰り返し単位(B)とのコポリマー領域とを有するポリマーの製造方法は、例えば、DMAEMAを光照射してポリマー化し、ポリマーの数平均分子量が一定値を超えた時点(例えば、ポリマーの数平均分子量が5,000Da(より好ましくは20,000Da)を超えた時点)で、アニオン性モノマーである上記繰り返し単位(B)を混合して更に光照射する方法が挙げられる。
(A−1)の温度応答性ポリマーの数平均分子量(Mn)としては、10〜500kDaが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0が好ましい。
(A−1)の温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた(A−1)の温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
また、この(A−1)の温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる温度応答性ポリマー被覆部を有する細胞培養器を調製することができる。
更に、(A−1)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、塊状、シート状、管腔状(チューブ状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
以下、上記(A−2)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
−(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法−
(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
DMAEMAとしては、市販品としてよい。
第一混合物に含まれ得る上記他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、イオンバランスの調整を安定的に行うことを可能にする観点から、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミドが好ましい。上記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル数)は、0.001〜1とすることが好ましく、0.01〜0.5とすることが更に好ましい。
第一混合物に含まれ得る上記溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、メタノール、エタノール等が挙げられ、特に、DMAEMAのエステル結合に対して不活性であるため、トルエン、ベンゼンが好ましい。上記溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、無用な化学結合の切断等による分解を抑制しつつ、安定的に、適切な速度(時間)で重合反応を進行させることができる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において反応を行うことができ、また、光とは別の手段(加熱等)により反応を抑制することが可能となる。
反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA))となり、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程における重合物(具体的には、ポリマー化した2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)の数平均分子量が所定値以上となった時点で、第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、前述の第一混合物に含まれ得る溶媒(トルエン、ベンゼン、メタノール等)等を含んでよい。
また、アニオン性モノマーは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体等が挙げられ、特に、化学的安定性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。上記アニオン性モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、電気的に中性であり、且つ親水性である、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。上記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル)は、0.01〜10とすることが好ましく、0.1〜5とすることが更に好ましい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記第二混合物を添加する。
数平均分子量の所定値は、曇点低減の効果を十分に得る観点から、好適には5,000Daであり、更に好適には20,000Daであり、特に好適には100,000Daである。
なお、第一重合工程後の第一混合物中におけるポリマー化したPDMAEMAの数平均分子量は、所定の時点で重合系から少量の反応混合物を採取して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や光散乱法(SLS)等の当業者に周知の方法により、測定することができる。
この工程において、重合中のDMAEMAを含むホモポリマーに加えて、アニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、DMAEMAの単独重合系から、DMAEMAとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、第二混合物を添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
第二重合工程における、紫外線の波長、紫外線の照射強度、用いる不活性ガス、反応温度、反応時間等の諸条件は、第一重合工程における条件と同様としてよい。
この工程において、DMAEMAとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したDMAEMAを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、DMAEMAとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、(A−2)の製造方法では、当業者に理解される通り、種々の分子量及び分子構造を有するポリマーの混合物が生成するところ、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーを主成分として得る観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って、同一の条件下で重合を行うことが好ましい。
−(A−2)の温度応答性ポリマー−
(A−2)の温度応答性ポリマーは、上記(A−2)の製造方法により製造される。
(A−2)の温度応答性ポリマーは、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含み、任意選択的にジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の親水性モノマー等の他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとアニオン性モノマー(重合鎖ω末端)とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。
好適には、(A−2)の温度応答性ポリマーは、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、更に好適には、これらブロックからなる。
(A−2)のの温度応答性ポリマーでは、DMAEMA単位、アニオン性モノマー単位の温度応答性ポリマー全体に対する割合(モル)が、それぞれ、99.99〜90、0.01〜10であることが好ましい。
他のモノマーも用いた場合には、DMAEMA単位、アニオン性モノマー単位、他のモノマー単位の温度応答性ポリマー全体に対する割合(モル)が、それぞれ、99.99〜90、0.01〜10、0.01〜10であることが好ましい。
ここで、(A−2)の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、DMAEMAのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
(A−2)の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(A−2)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記(A−2)の温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、(A−2)の温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量(例えば、5000Da以上)を有するDMAEMAのホモポリマーブロックを備えるため、DMAEMAの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる温度応答性ポリマー被覆部を有する細胞培養器を調製することができる。
更に、(A−2)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、塊状(ペレット状)、シート状、管腔状(チューブ状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(A−2)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
以下、上記(B)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
−(B)の温度応答性ポリマーの製造方法−
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)と、カチオン性モノマー(以下、「モノマー(B)」ともいう。)と、アニオン性モノマー(以下、「モノマー(C)」ともいう。)とを重合させるものである。任意選択的に、上記3種類のモノマーにこれら以外の他のモノマーを加えて重合させてよい。
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)としては、市販品としてよい。
カチオン性モノマーとしては、カチオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、カチオン性官能基としては、第1級〜第4級アミノ基等のアミノ基、グアニジン基等が挙げられ、特に、化学的安定性、低細胞傷害性、滅菌安定性、強陽電荷性の観点から、第3級アミノ基が好ましい。
より具体的には、カチオン性モノマーとしては、生理活性物質を担持したり、アルカリ性条件下においたりしても、安定性が高いものが好ましく、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、特に、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にするため、好ましい。
また、アミノスチレンは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にすると共に、分子内の芳香環が水溶液中において他の物質の疎水性構造と相互作用することから、担持可能なアニオン性物質のバリエーションを広げるため、好ましい。
更に、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタクリルアミドは、中性域のpHで微弱な陽電荷を有し、且つ、水への溶解性が温度に影響されないことから、一度担持したアニオン性物質の放出を容易にするため、好ましい。
カチオン性モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アニオン性モノマーとしては、アニオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、アニオン性官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ボロン酸基等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性、高い精製度の観点から、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が好ましい。
より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性の観点から、メタクリル酸、ビニル安息香酸が好ましい。
アニオン性モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の中性の親水性モノマー等が挙げられる。
他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーは、電荷以外の親水性・疎水性のバランスの調整に使用可能であり、バリエーションを広げることが可能となる。
ここで、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法におけるNIPAMの使用量のモノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、0.01〜90とすることが好ましく、0.1〜10とすることが更に好ましく、0.9とすることが特に好ましい。
カチオン性モノマーの使用量のモノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、0.01〜90とすることが好ましく、0.1〜10とすることが更に好ましい。
アニオン性モノマーの使用量のモノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、0.01〜10とすることが好ましく、0.1〜10とすることが更に好ましい。
他のモノマーの使用量のモノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、0.01〜10とすることが好ましく、0.1〜10とすることが更に好ましい。
ここで、重合方法としては、ラジカル重合、イオン重合等が挙げられる。
ラジカル重合としては、リビングラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、イニファーター重合等が挙げられ、イニファーター重合が好ましい。
イオン重合としては、リビングアニオン重合が好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法の一例は、ラジカル重合を用いる方法である。
この製造方法の一例では、まず、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、メタノール、水等が挙げられ、特に、溶解力の点、及び重合に不活性である点から、ベンゼン、トルエンが好ましい。溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜100mW/cm2であることが好ましく、0.1〜10mW/cm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、分解などの副反応を抑制しながら効率良く重合反応を進行させることができる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜50℃であることが好ましく、20〜30℃であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、省エネルギーであること、温度制御が容易であること、反応が効率良く進行すること、熱反応ルートでの重合反応を抑制できることができる。
反応時間としては、1分間〜720時間であることが好ましく、1〜48時間であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、目的の分子量まで副反応を抑制しながら効率良く重合反応を進行させることができる。
この工程において、NIPAMは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM))となり、N−イソプロピルアクリルアミドを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程後の第一混合物にカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、カチオン性モノマー、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加する。
この工程において、重合中のNIPAMを含むホモポリマーに加えて、カチオン性モノマー及びアニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、NIPAMの単独重合系から、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜100mW/cm2であることが好ましく、0.1〜10mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜50℃であることが好ましく、20〜30℃であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において重合反応を行うことを可能とすることができ、また、光照射という手段とは別の加熱という手段での反応制御を可能とすることもできる。
反応時間としては、1分間〜720時間であることが好ましく、1〜48時間であることが更に好ましい。
この工程において、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したNIPAMを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロック、及び/又は、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、NIPAMを含むホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、この一例の製造方法では、効率的な反応を実現する観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って紫外線を照射することが好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法の別の例は、ラジカル重合を用いる方法であり、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーと、任意選択的に他のモノマーを含む混合物に紫外線を照射する。
ここで、上記混合物は、例えば、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
他の条件については、前述の一例の製造方法と同様としてよい。
−(B)の温度応答性ポリマー−
(B)の温度応答性ポリマーは、上記(B)の製造方法により製造される。
(B)の温度応答性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に、他のモノマー単位を含む。本ポリマーは、前述の一例、別の例の製造方法により製造することができる。
好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、主としてN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位を含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてカチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。更に好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、NIPAMのホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、特に好適には、これらブロックからなる。本ポリマーは、前述の一例の製造方法により製造することができる。
例えば、従来の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるDMAEMAが、同時に、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーであり、また、温度応答性に関わるDMAEMAはポリマーブロックとして重合鎖α末端に含まれている。
かかる温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずカチオン性モノマーが存在することから、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置の調整の自由度が高くはなく、また、カチオン性モノマーが主としてDMAEMAに限られることから、カチオン性サイトの陽電荷強度の調整や、温度応答性ポリマー水溶液のpHの調整も必ずしも容易とは言えなかった。
例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。DDSの手法としては、例えば、細胞培養器に薬剤を担持させた温度応答性ポリマーを塗布して、塗布後の細胞培養器で細胞や組織を培養することによって、被覆物から細胞・組織に対して薬剤を徐放するといった手法等が挙げられる。ここで、上記従来の温度応答性ポリマーでは、陽電荷強度が小さいDMAEMAを含むため、アニオン性物質の薬剤の担持は必ずしも容易とは言えず、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。
一方、(B)の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるNIPAMは中性のモノマーであり、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーはNIPAMとは異なるモノマーである。
(B)の温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずしもカチオン性モノマーが存在する必要はなく、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置を自由に調整することが可能であり、また、広範なカチオン性モノマーを用いることができるため、カチオン性サイトの陽電荷強度や温度応答性ポリマー水溶液のpHを容易に調整することが可能である。
(B)の温度応答性ポリマーによれば、例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類を拡大しつつ、その量を増加させることが可能となり、ひいては、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
(B)の温度応答性ポリマーでは、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する、NIPAM単位の割合(モル)が、0.6〜0.9であることが好ましく、0.7〜0.9であることが更に好ましく、0.9であることが特に好ましい。
他のモノマーも用いた場合には、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する、他のモノマー単位の割合(モル)が、0.001〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、NIPAMのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、重合条件により、適宜調整することができる。
(B)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、前述の(B)の好適な温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量を有するNIPAMのホモポリマーブロックを備えるため、NIPAMの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる温度応答性ポリマー被覆部を有する細胞培養器を調製することができる。
更に、(B)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、塊状(ペレット状)、シート状、管腔状(チューブ状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(B)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基の官能基数と、アニオン性官能基の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
−−(C)の温度応答性ポリマー組成物の製造方法−−
以下、上記(C)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
(C)の温度応答性ポリマー組成物の製造方法は、まず、混合型温度応答性ポリマー組成物を調製する(組成物調製工程)。具体的には、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、(3)核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを混合する((2)トリスは任意選択的に含む。)。
(1)のDMAEMA及び/又はその誘導体の重合体は、温度応答性ポリマーであり、その曇点は32℃である。(2)のトリスは、曇点の若干の低下、及び/又は曇点よりも高温で形成されたポリマーが、曇点以下に冷却された際に再溶解する速度を低減させる役割を果たし、また、疎水化されたポリマー層中でも親水性を維持しながら、アミノ基に由来する陽電荷により細胞に刺激を与える役割を果たすと推定される。(3)のアニオン性物質は、培養する細胞の遊走や配向を可能にする役割や細胞傷害性を抑制する役割を果たすと推定される。
この混合型温度応答性ポリマー組成物によれば、曇点を室温(25℃)以下に低減させることができる。
上記組成物では、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体の側鎖とトリスとが、互いに相互作用(例えば、架橋する作用)して、上記重合体が凝集しやすくなっていると推定される。
ここで、上記(1)について、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体としては、数平均分子量(Mn)が、10kDa〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜6.0である分子が好ましい。
また、(1)のDMAEMAの誘導体としては、例えば、メタクリレートのメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、メタクリレートのメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体等が挙げられる。
上記(2)について、トリスは、純度99.9%以上の純物質であるか、又は、トリス水溶液を、アルカリ性物質の添加などにより、使用時に中性又は塩基性とすることが好ましい。トリスは、塩酸塩の状態で市販されているところ、これを用いた場合には、トリス水溶液のpHが下がるため、組成物の曇点が70℃程度にまで上昇してしまう。そのため、トリス塩酸塩は好ましくない。
上記(3)に列挙したアニオン性物質のうち、核酸は、DNA、RNA、その他1本鎖、2本鎖、オリゴ体、ヘアピンなどの人工核酸などが挙げられる。
また、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、ある程度の大きさ、例えば1〜5000kDaの分子量(M)を有していることが好ましい。
分子量を上記範囲とすれば、アニオン性物質は、カチオン性物質とイオン結合して、カチオン性物質を、長時間捕捉する役割を果たすことができ、安定したイオン複合体微粒子を形成させることがでる。また、一般的にカチオン性物質が有する、細胞の細胞膜表面に対する静電的相互作用に起因する細胞傷害性を緩和することもできる。
(3)に列挙したアニオン性物質の他にも、例えば、カチオン性ポリマーであるポリ(4−アミノスチレン)の4−位のアミノ基に対してシュウ酸などのジカルボン酸を脱水縮合させることによって、アニオン性官能基を導入した、実質的にアニオン性物質として機能するポリマー誘導体も、用いることができる。
なお、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、二種以上含まれていてもよい。
ここで、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体に対する、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)の割合((2)/(1))が、1.0以下とした混合型温度応答性ポリマー組成物を用いることが好ましい。
なお、割合((2)/(1))は、重量割合であるものとする。
上記割合の混合型温度応答性ポリマー組成物を用いた場合、塊状の細胞構造体を形成しやすくすることができる。
この組成物によれば、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にすることができる。そして、この好適なバランスが、培養面への細胞の接着性を好適に調整し、細胞の遊走や配向を活性化していると推定される。
また、上記割合((2)/(1))は、0.1以上あることが好ましい。
上記割合を0.1以上とすることにより、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。また、細胞構造体を形成しやすくするという上記効果が得られやすい。
上記と同様の理由により、上記割合((2)/(1))は、0.1〜0.5であることが更に好ましい。
ここで、温度応答性ポリマー組成物中のC/A比(正電荷/負電荷)が、0.5〜16であることが好ましい。
なお、本願明細書では、C/A比とは、組成物中に含まれる物質が有する正電荷の、組成物中に含まれる物質が有する負電荷に対する割合を指す。具体的には、C/A比は、(1)DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体のモル数をN1、(3)アニオン性物質のモル数をN3としたときに、{(重合体1分子当たりの正電荷)×N1}/{(アニオン性物質1分子当たりの負電荷)×N3}という式で表される。
またなお、本願明細書では、アニオン性物質をDNAとした場合、アニオン性物質1分子当たりの負電荷数は、DNAの塩基対の数(bp数)×2で計算し、分子量(Da)は、bp数×660(ATペア及びCGペアの平均分子量)で計算するものとする。
C/A比を0.5〜16とすることにより、塊状の細胞構造体を形成させやすくするという上記効果が得られやすくなる。
上記組成物中の正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができると推定される。また、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができると推定される。
上記と同様の理由により、上記C/A比は、2〜10とすることが更に好ましく、特にC/A比は8付近であることが最も好ましい。
上記温度応答性ポリマー又は上記温度応答性ポリマー組成物は、加熱乾燥、凍結乾燥、減圧蒸留等により水分を除去して、メタノール、エタノール等アルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒に溶解してもよい。中でも、表面張力と沸点が低く速やかな乾燥が可能であり、温度応答性ポリマーをより均一に被覆できる観点から、メタノールに溶解することが好ましい。また、有機溶媒に溶解する場合には、更に、ポリエチレングリコール(PEG)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)、グリセリン、TritonX、ポリプロピレングリコール等の非イオン性でかつ親水性である親水性分子を加えてもよい。
上記温度応答性ポリマーとしては、上記以外に、例えば、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
(準備工程)
本発明の実施形態の製造方法において、上記準備工程は、半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器上の、上記窪み部分の表面の少なくとも一部に上記温度応答性ポリマー又は上記温度応答性ポリマー組成物を被覆して温度応答性ポリマー被覆部を形成する工程である。半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器を用いることにより、確実かつ簡便に、管腔を有する均質な管状細胞構造体を製造することができる。
なお、本明細書において、半円柱状に窪んだ窪み部分の表面の少なくとも一部に上記温度応答性ポリマー被覆部有する細胞培養器を、「被覆細胞培養器」と称する場合がある。
上記半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器の形状としては、例えば、図2に記載の細胞培養器21の形状等が挙げられる。半円柱状に窪んだ部分22は、上記温度応答性ポリマー被覆部が形成される部分である。半円柱状に窪んだ部分22は、例えば、培養器の平坦面上を所定方向に延び、該所定方向に垂直な面による断面形状が丸みを帯びている窪み部分等が挙げられる。
半円柱状に窪んだ部分22の延在方向に垂直な面による断面の形状(例えば、図2の長さ方向DCに垂直な面による断面の形状)は、丸みを帯びて窪んでいれば特に限定されず、例えば、半円状、半楕円状、U字状、等が挙げられる。また、上記断面形状は、半円状(1/2円状)等に限定されず、例えば、1/3円状、2/3円状、1/4円状、3/4円状等も含まれる。また、加工容易性、コストの観点から、上記断面形状は左右対称であることが好ましい。
上記断面の形状は、半円柱状に窪んだ表面の延在方向全長にわたって同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
上記半円柱状に窪んだ部分は、図2に示されるように、半円柱状に窪んだ部分の幅方向DWの端部から中心方向にかけて窪みが深くなるように配置されていることが好ましい。
上記半円柱状に窪んだ表面は、より確実に管腔が設けられやすくなるという観点から、図2に示されるように、細胞培養器の長さ方向DC全体にわたって設けられていることが好ましい。
上記半円柱状に窪んだ表面を有する細胞培養器は、半円柱状に窪んだ部分22以外に、その他の部分23を有していてもよい。その他の部分23の形状は、半円柱状に窪んだ部分22に上記温度応答性ポリマー被覆部を形成でき、上記温度応答性ポリマー被覆部上に少なくとも1種の細胞を播種、培養することを妨げない形状であれば、特に限定されない。
上記半円柱状に窪んだ部分22のみで細胞を培養すると、厚さが均一な管状細胞構造体が得られやすくなるという観点から、その他の部分23は細胞非接着性であることが好ましい。その他の部分23における細胞非接着性の素材としては、例えば、水の接触角が70°以下の素材、具体的には、親水性基で修飾したポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ガラス、ポリプロピレン等が挙げられ、特に、細胞培養時の溶出物が少なくなる観点から、例えば、N,N−ジメチルアクルリルアミドが放射線グラフト重合により導入固定されたポリスチレン等が好ましい。
半円柱状に窪んだ部分22の大きさは、直径1〜10mmの管状細胞構造体を形成できる形状であることが好ましく、長さ(奥行き、長さ方向DCの長さl)は1〜200mmであることが好ましく、より好ましくは2〜10mmである。また、半円柱状に窪んだ部分断面における内周の長さa(窪んだ部分の長さ)は、1.5〜15mmであることが好ましい。
半円柱状に窪んだ部分22は、細胞が塊状にならず、細胞が幅方向に収縮して一層管状に凝集しやすくなるという観点から、上記長さ(奥行き)lと上記内周の長さaとの割合(長さ(奥行き)/内周の長さ)が、1以上であることが好ましい。
半円柱状に窪んだ部分断面における幅wは、一層均質な管状細胞構造体が得られ、製造した管状細胞構造体を回収しやすくなるという観点から、1〜5mmであることが好ましい。また、半円柱状に窪んだ部分断面における深さdは、製造した管状細胞構造体を回収しやすくなるという観点から、1〜10mmであることが好ましい。また、細胞が管腔を一層形成しやすくなり、一層均質な管状細胞構造体が得られるという観点から、幅wと、深さdの割合(幅/深さ)が、0.3〜3.0であることが好ましい。
半円柱状に窪んだ部分断面が曲率中心を有する形状である場合、一層均質な管状細胞構造体が得られるという観点から、曲率半径は、0.01〜10mmであることが好ましい。
上記温度応答性ポリマー被覆部は、半円柱状に窪んだ部分の少なくとも一部に形成すればよい。中でも、管状細胞構造体が一層均質になり、管腔を有する管状細胞構造体が一層形成されやすくなるという観点から、半円柱状に窪んだ部分の全面に形成することが好ましい。
上記被覆細胞培養器において、上記窪み部分の表面が単位面積当たりに有する、温度応答性ポリマーの量は、管状細胞構造体が一層形成されやすくなるという観点から、例えば、5〜250ng/mm2が好ましく、より好ましくは5〜200ng/mm2である。
上記温度応答性ポリマー被覆部の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、曇点以下の温度まで冷却した温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物の水溶液を、半円柱状に窪んだ部分の底面に流延させて、その後、37℃のインキュベーター中で静置して、温度応答性ポリマーを培養皿の底面へ沈降させる方法、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を上記有機溶媒等に溶解して、半円柱状に窪んだ部分の底面に塗布し、乾燥させる方法等が挙げられる。乾燥の方法としては、特に限定されないが、例えば、減圧下で乾燥する方法、加湿を一時的に停止させた細胞インキュベーター内に一定時間(例えば、24時間程度)静置する方法等が挙げられる。
(培養工程)
本発明の実施形態の製造方法において、上記培養工程は、上記温度応答性ポリマー被覆部上に少なくとも1種の細胞を播種、培養する工程である。
上記培養工程で播種、培養する細胞として、例えば、血管細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、肝細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、心筋細胞、腎細胞、神経細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞等が挙げられる。上記細胞は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記培養工程では、2種以上の細胞を同時に播種、培養してもよいし、播種、培養した細胞上に、更に他の細胞を播種、培養してもよい。即ち、上記培養工程は、例えば、上記温度応答性ポリマー被覆部上に第一の細胞を播種、培養する第一培養工程と、培養した上記第一の細胞上に、第二の細胞を播種、培養する第二培養工程とからなる工程であってもよい。第一の細胞としては、例えば、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)、平滑筋細胞、線維芽細胞等が挙げられ、第二の細胞としては、第一の細胞よりも凝集しにくい細胞が好ましく、例えば、高度に分化した(CD31陽性である)血管内皮細胞、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)等が挙げられる。
特に、本発明の実施形態の管状細胞構造体の製造方法では、第一培養工程において用いる第一の細胞をADSCとし、第二培養工程において用いる第二の細胞をHUVECとした場合、培養面側にあるADSCが、HUVECと比較して、細胞の凝集が生じやすいため、外側層が内側層を包み込むような現象が生じやすい。
そして、この場合、人工血管とし得る管状細胞構造体を形成することが可能となる。このような細胞構造体は、既に臨床で利用されているe−PTFE製やポリエステル製の多孔質チューブ等でできた人工血管と比較して以下の点で有用である。
・上記管状細胞構造体は、人工材料を含まず、細胞及び細胞間マトリックスのみで構成されているため、コンプライアンスβ値(血管拍動におけるSSカーブ追随性)が生体血管に近く、宿主血管との吻合部において発生しやすい血栓を防止できる可能性がある。
・上記管状細胞構造体は、宿主体内で宿主の成長に合わせて人工血管としてそれ自体も成長する可能性を秘めている。
・上記管状細胞構造体は、人工材料を含まないので石灰化の危険性を低減できる。
・上記管状細胞構造体は、宿主に移植した時点で内壁が内皮細胞で覆われているため、移植初期の血栓発生や内膜肥厚の問題が生じにくい。
第一の細胞を播種してから、第二の細胞を播種するまでの時間は、使用する細胞種に応じて当業者によって適宜調整されてよく、例えば、6〜24時間程度が挙げられる。
上記培養工程で、播種する細胞の密度としては、例えば、100〜1000個/mm2であることが好ましい。複数種の細胞を播種する場合、各細胞の播種密度は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、播種される細胞は、生きた細胞とする。
(形成工程)
本発明の実施形態の製造方法において、上記形成工程は、上記細胞を自己凝集させて管状細胞構造体を形成する工程である。
上記形成工程は、例えば、配置工程、複合体形成工程、抜き取り工程をこの順に含むことが好ましい。
上記培養工程で、温度応答性ポリマー被覆部を満たすまで(例えば、80〜100%コンフルエントまで)増殖した細胞は、収縮して、半円柱状の端部から離れて反り返るようにして自己凝集し始め、管状構造を形成する。そして、更に収縮することで、管状細胞構造体と細胞培養器表面との接着力が低下し、トリプシン処理等の細胞剥離操作を行うことなしに、管状細胞構造体を回収することができる。なお、2種以上の細胞が積層している場合は、その積層状態を維持したまま、管状構造を形成し、管状細胞構造体を回収することができる。
((配置工程))
上記配置工程は、上記培養工程で培養した上記細胞上に、細胞非接着性の棒状構造物を配置する工程である。
本発明の管状細胞構造体の製造方法において、配置工程は設けられていてもよいし、設けられていなくてもよいが、より確実に管腔を形成でき、太い管状細胞構造体が得られるという観点から、配置工程が設けられていることが好ましい。
上記細胞非接着性の棒状構造物としては、例えば、水の接触角が70°以下の素材からなる構造物が挙げられ、具体的には、シリコン製の構造物、親水性基で修飾したポリエチレンテレフタレート製の構造物、ポリスチレン製の構造物、ポリカーボネート製の構造物、ガラス製の構造物、ポリプロピレン製の構造物等が挙げられ、中でも、扱いやすさの観点から、シリコン製の構造物、等が挙げられる。中でも、抜き取り工程時に管状細胞構造体が崩壊しにくいという観点から、シリコン製の構造物が好ましい。
上記棒状構造物の形状は、管状細胞構造体に覆われやすく、覆った細胞構造体が傷つきにくいという観点から、例えば、表面が丸みを帯びており、その断面が、円状、楕円状、等である形状(例えば、円柱状、楕円柱状、円錐状、楕円錐状等)であることが好ましい。上記棒状構造物の断面形状は、全長さ方向で同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
上記棒状構造物の長さは、操作性の観点から、上記被覆細胞培養器の半円柱状に窪んだ部分の延在方向長さよりも長いことが好ましく、上記被覆細胞培養器の半円柱状に窪んだ部分の延在方向長さの1.01〜1.50倍が好ましい。
なお、上記棒状構造物は、細胞培養器から細胞・棒状構造物複合体を回収しやすくなるという観点から、棒状構造物の端部(管状細胞構造体に覆われない端部)は、ピンセット等でつかむための穴が設けられていたり、その断面が多角形状であったりしてもよい。
上記棒状構造物の外径は、棒状構造物が細胞に覆われやすい観点、抜き取り工程時に管状細胞構造体が崩壊しにくいという観点から、10mm以下(例えば、1〜5mm)が好ましい。
細胞上に、細胞非接着性の棒状構造物を配置する方法としては、特に限定されないが、例えば、細胞上に直接棒状構造物を載せてもよいし、細胞上に0.1〜1mm程度の隙間を空けて棒状構造物を配置してもよい。
((複合体形成工程))
上記複合体形成工程は、上記棒状構造物を覆うように上記細胞を自己凝集させて、上記棒状構造物が、上記細胞からなる管状細胞構造体に覆われた細胞・棒状構造物複合体を形成する工程である。
上記複合体形成工程は、上記配置工程後に設けられる工程である。
播種、培養された細胞は、収縮して、半筒状の窪み部分の端部から離れて反り返り、棒状構造物の周囲を覆うようにして自己凝集し始め(図1参照)、上記棒状構造物が、上記細胞からなる管状細胞構造体に覆われた細胞・棒状構造物複合体を形成する。そして、更に収縮することで、管状細胞構造体と温度応答性ポリマー被覆部との接着力が低下し、トリプシン処理等の細胞剥離操作を行うことなしに、細胞・棒状構造物複合体を回収することができる。
((抜き取り工程))
上記抜き取り工程は、上記細胞・棒状構造物複合体から上記棒状構造物を抜き取って、管状細胞構造体を形成する工程である。
上記抜き取り工程は、上記配置工程、上記複合体形成工程の後に設けられる工程である。
上記抜き取り工程では、回収した細胞・棒状構造物複合体から、棒状構造物を抜き取ることにより、管状細胞構造体を得ることができる。
特に、棒状構造物を用いると、自己凝集をして管状構造を形成する際に、管腔がつぶれにくくなり、且つ内径が大きい管腔を形成しやすくなるため、内径が大きい管腔が確実に設けられ、太い管状構造物が得られる。
本発明の実施形態の管状細胞構造体の製造方法によれば、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する管状細胞構造体を提供することができる。
そして、本発明の実施形態の管状細胞構造体の製造方法によれば、管腔構造(チューブ構造)を有する管状細胞構造体の製造の再現性や簡便性が高く、得られる管状細胞構造体の均質性が良好である。
図1に、本実施形態における管状細胞構造体の製造方法の一例を概略図で示す。
(i)調製工程、準備工程で作製した、窪み部分11を有する細胞培養器上に、温度応答性ポリマー被覆部が形成された細胞培養器に、第一の細胞12を播種する(第一培養工程)(図1(i)参照)。
(ii)播種した第一の細胞12が、温度応答性ポリマー被覆部上に沈殿し、接着する。なお、温度応答性ポリマー被覆部以外の、その他の部分13に存在する細胞は、培地交換をすることにより、除去することができる(図1(ii)参照)。
(iii)培養した第一の細胞12上に、第二の細胞14を播種、培養する(第二培養工程)(図1(iii)参照)。
(iv)培養した第二の細胞14上に、棒状構造物15をのせる(配置工程)(図1(iv)参照)。
(v)第一の細胞12、及び第二の細胞14が自己凝集をして、第一の細胞12及び第二の細胞14が、積層状態を保ったまま、棒状構造物15を覆う。そして、棒状構造物15が、第一の細胞12及び第二の細胞14からなる管状細胞構造体17に覆われた、細胞・棒状構造物複合体16が形成される(複合体形成工程)(図1(v)参照)。
(vi)細胞・棒状構造物複合体16から棒状構造物15を抜き取って、管状細胞構造体17を形成する(抜き取り工程)(図1(vi)参照)。
[管状細胞構造体]
本発明の本実施形態の管状細胞構造体の製造方法により得られる管状細胞構造体は、最大外径が1〜30mmであることが好ましく、1〜2mmであることがより好ましい。また、管状構造の最小内径は、1〜2mmであることが好ましい。また、延在方向の長さ(奥行き)は、2〜20mmであることが好ましい。
上記管状細胞構造体の管状構造は、一種又は複数種の細胞の単層構造であってもよいし、積層構造であってもよいし。
上記管状細胞構造体としては、例えば、平滑筋細胞、血管内皮細胞の2層積層構造からなる管状構造を有する人工血管(例えば、心臓の血管等)、人工弁等が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
下記の試験において、市販の試薬は、特に断りのない限り更に精製することなく用いた。
(実施例1)
(試験A)温度応答性ポリマーの調製
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10.0g、及び水5,000μLを加えて、磁気撹拌器を用いて撹拌した。そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。なお、用いたDMAEMAには、重合禁止剤であるメチルヒドロキノン(MEHQ)が0.5重量%含まれていた。
その後、この反応物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、22時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。反応物は、5時間後に粘性を帯び15時間後に固化して、重合体が反応生成物として得られた。この反応生成物を2−プロパノールに溶解させ、溶液を透析チューブに移した。そして、透析を72時間行い、反応生成物を精製した。
反応生成物を含む溶液を、セルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることにより、温度応答性ポリマー1が得られた(収量:6.8g、転化率:68%)。この温度応答性ポリマー1の数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=160,000(Mw/Mn=3.0)と決定した。
そして、温度応答性ポリマー1を水に溶解して、温度応答性ポリマー溶液(終濃度30ng/μL)を調製した。
(試験B)細胞培養器の準備
図2に示すような形状をした、ポリスチレン製の細胞培養器(長さ(奥行き)20mm、幅3mm、深さ1mmの円柱状の窪みを有する細胞培養器)の半円柱状に窪んだ表面に、温度応答性ポリマー溶液を750μL滴下し、半円柱状に窪んだ全表面に流延させた。その後、減圧チャンバー中で速やかに乾燥させ、半円柱状に窪んだ表面上に、温度応答性ポリマー被覆部が形成された細胞培養器を製造した。
(試験C)第一の細胞の播種
上記試験Bで準備した細胞培養器を、90mmディッシュ(細胞非接着性のディッシュ、商品名「プライムサーフェイス」、住友ベークライト社製)に入れた。
室温条件下において、GFP組換えルイスラット脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC(Adipose−derived vascular stromal cell))を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FCS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番11965、FCS:インビトロゲン社製、ロット番号715929)中に浮遊させ、細胞密度を4×103個/mLに調整した培養液を、上記試験Bで準備した細胞培養器を入れた90mmディッシュに加えた。
そして、37℃の細胞培養インキュベーター中で培養したところ、ADSCが、培養面(温度応答性ポリマー被覆部)から遠ざかり、円柱状の窪みの中心方向に向かって反り返るように凝集し始め、管腔構造(チューブ構造)を形成した。そして、ADSCにより管腔が形成された管状細胞構造体を得た。
(実施例2)
試験Cの後に試験Dを行ったこと以外は、実施例1と同様にして管状細胞構造体を得た。
(試験D)第二の細胞の播種
(試験C)の後にADSCを37℃の細胞培養インキュベーター中で6時間培養した後、培地を吸引して、温度応答性ポリマー層に接着しなかったADSCを取り除き、緩衝液(インビトロゲン社製、D´−PBS×1)を用いて、細胞培養器を洗浄した。そして、室温条件下において、セルリンカーキット(SIGMA社、CellVue Claret RFP Kit)で蛍光標識したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC(Human Umbilical Vein Endothelial Cell))を、EGM培地(Lonza社、EC−Supplementを含む+5%ウシ胎児血清(FCS))中に浮遊させ、細胞密度を2×103個/mLに調整した培養液を加えた。
これらの細胞(ADSC、HUVEC)を37℃の細胞培養インキュベーター中で培養した。細胞が、培養面(温度応答性ポリマー被覆部)から遠ざかり、円柱状の窪みの中心方向に向かって反り返るように凝集し始め、管腔構造(チューブ構造)を形成した。そして、ADSC、HUVECの積層構造により管腔が形成された管状細胞構造体を得た。
(実施例3)
試験Dの後に試験Eを行ったこと以外は、実施例2と同様にして管状細胞構造体を得た。
(試験E)細胞・棒状構造物複合体の形成
(試験D)の後にADSC及びHUVECを、37℃の細胞培養インキュベーター中で6時間培養した後、シリコン製の細胞非接着性の棒状構造物(円柱状の形状、長さ20mm、外径1.8mm)をHUVEC上にのせ、37℃の細胞培養インキュベーター中でさらに21時間培養した。棒状構造物をのせてから5時間後から、細胞(ADSC、HUVEC)が、培養面(温度応答性ポリマー被覆部)から遠ざかり、円柱状の窪みの中心方向に向かって反り返るように凝集し始め、細胞(ADSC、HUVEC)が棒状構造物を覆い始め、その後、細胞・棒状構造物複合体を形成した。
細胞・棒状構造物複合体から、棒状構造物を抜き取り、ADSC、HUVECの積層構造により管腔が形成された管状細胞構造体を得た。
(比較例1)
細胞培養器として、窪みがない平面のポリスチレン製のプラスチックプレート(細胞非接着性のプレート、長さ20mm、幅3mm)の全表面上に、温度応答性ポリマー被覆部を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ADSC、HUVECの積層構造により管腔が形成された管状細胞構造体の製造を行った。
[評価]
(管状細胞構造体の管腔の内径)
実施例、及び比較例で得られた管状細胞構造体を、定法に従ってパラホルムアルデヒドで固定し、クライオ切片を作製し、ミクロトームで延在方向にほぼ垂直な面でスライスしてHE染色とCD31免疫染色を実施し、顕微鏡でドーナツ状の断面の観察を行なった。得られた断面画像から、3箇所の管腔の内径を測定し、その平均値を「管状細胞構造体の管腔の内径(mm)」とした。
(管腔の均質性)
実施例、及び比較例で得られた管状細胞構造体の細胞密度の均一性を評価するため、共焦点レーザー顕微鏡を用いて管状細胞構造体の長軸方向へ沿って断面の均質性を観察した。そして、以下の基準で均質性評価した。
○(良好):全体にわたって、ほぼ均一な細胞密度で管腔が形成されていた。
×(不良):培養面に相当する部分で細胞密度が高く、その対面側(培養面から離れた側)で細胞密度が低く、細胞密度が均一ではなかった。
Figure 2017055743
実施例及び比較例で得られた管状細胞構造体の輪切り切片を、長軸方向へ沿って共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、実施例2及び実施例3の管状細胞構造体は、2種の細胞が全周囲に亘って積層された構造を有していた。
11 窪み部分
12 第一の細胞
13 その他の部分
14 第二の細胞
15 棒状構造物
16 細胞・棒状構造物複合体
17 管状細胞構造体
21 細胞培養器
22 半円柱状に窪んだ部分
23 その他の部分
DC 半円柱状に窪んだ部分の長さ方向
DW 半円柱状に窪んだ部分の幅方向
a 半円柱状に窪んだ部分断面における内周の長さ
w 半円柱状に窪んだ部分断面における幅
d 半円柱状に窪んだ部分断面における深さ
l 半円柱状に窪んだ部分断面における長さ

Claims (4)

  1. 温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、
    半円柱状に窪んだ窪み部分を有する細胞培養器上の、前記窪み部分の表面の少なくとも一部に前記温度応答性ポリマー又は前記温度応答性ポリマー組成物を被覆して温度応答性ポリマー被覆部を形成する準備工程と、
    前記温度応答性ポリマー被覆部上に少なくとも1種の細胞を播種、培養する培養工程と、
    前記細胞から管状細胞構造体を形成する形成工程と、
    を含むことを特徴とする、管状細胞構造体の製造方法。
  2. 前記形成工程が、
    前記培養工程で培養した前記細胞上に、細胞非接着性の棒状構造物を配置する配置工程と、
    前記棒状構造物が前記細胞からなる管状細胞構造体に覆われた細胞・棒状構造物複合体を形成する複合体形成工程と、
    前記細胞・棒状構造物複合体から前記棒状構造物を抜き取って、管状細胞構造体を形成する抜き取り工程とを含む、請求項1に記載の管状細胞構造体の製造方法。
  3. 前記培養工程が、
    前記温度応答性ポリマー被覆部上に第一の細胞を播種、培養する第一培養工程と、
    培養した前記第一の細胞上に、第二の細胞を播種、培養する第二培養工程とを含み、
    前記形成工程が、前記第一の細胞が前記第二の細胞の外側に位置する積層構造を有する管状細胞構造体を形成する工程である、請求項1又は2に記載の管状細胞構造体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状細胞構造体の製造方法により製造されることを特徴とする、管状細胞構造体。
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