JP2016059337A - 細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体 - Google Patents

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泰秀 中山
良輔 岩井
Ryosuke Iwai
良輔 岩井
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Yasushi Nemoto
泰 根本
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Abstract

【課題】本発明は、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を提供することが可能な細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】低曇点型温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、低曇点型温度応答性ポリマー組成物で細胞培養シートの培養面の一部を被覆して、第一の非被覆細胞培養シート部分を取り囲むように設けられ、第二の非被覆細胞培養シート部分により取り囲まれるように設けられた被覆細胞培養シート部分を有する、部分被覆細胞培養シートを準備する準備工程と、細胞を、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で、部分被覆細胞培養シートの培養面上に播種する播種工程と、播種した細胞を培養する培養工程と
を備えることを特徴とする、細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体に関する。
近年、患者のQOLの向上を目的として、オーダーメイド医療の実現が望まれている。オーダーメイド医療では、患者自身の細胞を用いて機能障害や機能欠損に陥った組織や臓器の再生を図る、再生医療が主要な役割を担う。
ここで、再生医療は、患者の組織から採取した細胞を、細胞培養器中で培養し、組織を形成させ、その後、その組織を患者に移植するというオペレーションを必要とする。そのため、細胞を培養して、組織等の細胞構造体を形成させる技術や、細胞構造体をそのままの状態で回収する技術が所望されている。
一般的に、生体外に取り出された細胞は、その遺伝子制御に乱れを生じさせる様々なストレスを受けて、脱分化してしまうことが多く、また、細胞を増殖させるために脱分化させることが必要となる場合も多い。これにより、患者から採取した細胞を、単純な培養条件で培養しても、細胞は元の遺伝子発現状態を維持できないことが多いため、細胞構造体、ひいては組織を形成させることができず、また、その細胞の高度な機能を発揮することができないという問題がある。例えば、一般的なポリスチレン製の細胞培養皿で細胞培養を行った場合には、細胞が単層状の構造を形成するに留まり、高度に分化した細胞に見られる構造、例えば、軟骨細胞が生体内に存在している場合の形状であるペレット状の構造と同様の構造を有する細胞構造体を形成させることは困難であり、また、軟骨細胞に特異的な多くの機能が消失されてしまう。
上記問題に関して、例えば、組織の構造を模倣した立体的構造を構築する細胞培養方法、例えば、スフェロイド培養、クラスター培養、ペレット培養、三次元担体培養等の方法が開発されている。立体的な構造を有する細胞外マトリックスを、細胞培養の足場(スキャホールド)として用いることにより、立体的な構造を有する細胞を作製する細胞培養方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
特開2010−524458号公報
しかしながら、従来のスフェロイド培養、クラスター培養、ペレット培養の場合には、機械的応力を印加する操作が含まれるため、細胞がつくる立体的構造の再現性や均質性が良好ではない。すなわち、操作者の技量やさじ加減に依存して、得られる細胞構造体にバラツキが生じる。そのため、この細胞構造体を用いて得られる実験結果が、研究機関ごとに異なってしまう虞がある。
そこで、本発明は、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を提供することが可能な細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の細胞構造体の製造方法は、
低曇点型温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、
前記低曇点型温度応答性ポリマー組成物で細胞培養シートの培養面の一部を被覆して、第一の非被覆細胞培養シート部分を取り囲むように設けられ、第二の非被覆細胞培養シート部分により取り囲まれるように設けられた被覆細胞培養シート部分を有する、部分被覆細胞培養シートを準備する準備工程と、
細胞を、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で、前記部分被覆細胞培養シートの前記培養面上に播種する播種工程と、
前記播種した細胞を培養する培養工程と
を備えることを特徴とする。
本発明の細胞構造体の製造方法では、追加の細胞を、前記播種工程において前記部分被覆細胞培養シートの前記培養面に播種された前記細胞上に追加的に播種する追加の播種工程を更に備えることが好ましい。
本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一の非被覆細胞培養シート部分と前記被覆細胞培養シート部分との境界をなす線と、前記被覆細胞培養シート部分と前記第二の非被覆細胞培養シート部分との境界をなす線とは、同心円を形成することが好ましい。
本発明の細胞構造体の製造方法では、前記細胞は、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)であり、前記追加の細胞は、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であることが好ましい。
本発明の細胞構造体は、上記いずれかの細胞構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を提供することが可能な細胞構造体の製造方法、及び該方法により製造された細胞構造体を提供することができる。
図1(i)〜(ix)は、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法の概要について示す図である。 図2(a)(i)〜(iii)、(b)(i)〜(iii)は、図1に示す(viii)から(ix)までの細胞の挙動の詳細について示す図であり、図2(a)に、図1に示す細胞構造体の斜視図を示し、図2(b)に、図1に示す線I−Iに沿う面により切断したときの図を示す。 図3は、HUVECの培養開始から12時間後の細胞構造体の様子を写した写真を示す図であり、図3(a)に、細胞構造体を実体顕微鏡で観察したときの写真を示し、図3(b)に、細胞構造体の短軸切片を蛍光顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す(図1に示す細胞構造体の線II−IIに沿う面により切断したときの図に相当する)。ADSCについては恒久的に発現されているGFPを観察し(図中、緑色で示される)、HUVECについてはセルリンカーキットによる蛍光標識を観察した(図中、赤色で示される)。 図4は、図3に示す細胞構造体の長軸切片を蛍光顕微鏡を用いて観察したときの写真(図1に示す細胞構造体の線III−IIIに沿う面により切断したときの図に相当する)。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、「DMAEMA」ともいう)の重合体は、温度応答性高分子として公知であり、その下限臨界溶解温度(Lower Critical Solution Temperature、以下、「曇点」ともいう。)は32℃程度である。
先般、発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、室温(25℃)程度の曇点を有する低曇点型温度応答性ポリマー組成物(以下、単に「温度応答性ポリマー組成物」ともいう)を調製することに成功した。低曇点型温度応答性ポリマー組成物としては、分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーからなるもの、混合型温度応答性ポリマー組成物がある。
分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーは、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の繰り返し単位(後述)、及び該DMAEMAの加水分解物の繰り返し単位(後述)を含む。発明者らは、室温のクリーンベンチ内で操作しても、培養中の細胞を細胞培養器に接着させ続けることができ、培養した細胞構造体をそのままの状態で回収することができる、上記分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製した。
また、混合型温度応答性ポリマー組成物は、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、(3)核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを含む。発明者らは、室温のクリーンベンチ内で操作しても、培養中の細胞を細胞培養器に接着させ続けることができ、培養した細胞構造体をそのままの状態で回収することができる、上記組成物を被覆してなる細胞培養器を調製した。
(細胞構造体の製造方法)
本発明の細胞構造体の製造方法は、
低曇点型温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、
前記低曇点型温度応答性ポリマー組成物で細胞培養シートの培養面の一部を被覆して、第一の非被覆細胞培養シート部分を取り囲むように設けられ、第二の非被覆細胞培養シート部分により取り囲まれるように設けられた被覆細胞培養シート部分を有する、部分被覆細胞培養シートを準備する準備工程と、
細胞を、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で、前記部分被覆細胞培養シートの前記培養面上に播種する播種工程と、
前記播種した細胞を培養する培養工程と
を備える。
図1(i)〜(ix)に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法の概要について示す。
図2(a)(i)〜(iii)、(b)(i)〜(iii)に、図1に示す(viii)から(ix)までの細胞の挙動の詳細について示す。図2(a)に、図1に示す細胞構造体の斜視図を示し、図2(b)に、図1に示す線I−Iに沿う面により切断したときの図を示す。
以下、各工程の詳細を記載する。
(調製工程)
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、まず、低曇点型温度応答性ポリマー組成物(温度応答性ポリマー組成物)を調製する(調製工程)。
−温度応答性ポリマー組成物の製造方法−
温度応答性ポリマー組成物は、例えば、下記の通り、一例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法、及び別の例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法により製造することができる。
以下、一例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法について記載する。この例では、低曇点型温度応答性ポリマー組成物は、分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーからなる。
すなわち、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む混合物を調製する(混合物調製工程)。ここで、混合物は、重合禁止剤及び水を更に含む。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)としては、市販品を用いることができる。重合禁止剤としては、メチルヒドロキノン(MEHQ)、ヒドロキノン、p−ベンゾキノリン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N−nitroso−N−phenylhydroxylamine(Cupferron)、t−ブチルハイドロキノン、等が挙げられる。また、市販のDMAEMAに含まれるMEHQ等をそのまま用いてもよい。水としては、超純水が挙げられる。
重合禁止剤の混合物に対する重量割合は、0.01%〜1.5%であることが好ましく、0.1%〜0.5%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、ラジカル重合反応の暴走を抑制して、制御できない架橋を低減することができ、製造される分子内イオン複合体型応答性ポリマーの溶媒に対する溶解性を確保することができる。
水の混合物に対する重量割合は、1.0%〜50%であることが好ましく、9.0%〜33%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、側鎖の加水分解反応の反応速度と、重合するポリマー鎖の成長反応の反応速度とを、バランスよく調和させることができる。これにより、側鎖が加水分解されたDMAEMAに対する、側鎖が加水分解されていないDMAEMAの割合(共重合割合)が1.0〜20程度の分子内イオン複合体型応答性ポリマーを得ることができる。
次いで、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法では、混合物に紫外線を照射する(紫外線照射工程)。ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射される。DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマーとなる。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210nm〜600nmであることが好ましく、360nm〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応条件に関して、温度条件としては、15℃〜50℃であることが好ましく、20℃〜30℃であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、熱による開始反応を抑制し、光照射による開始反応を優先的に進行させることができる。また、加水分解反応の反応速度をポリマー鎖の成長反応の反応速度に対してバランスのよいものにすることができる。
反応時間としては、7時間〜24時間であることが好ましく、17時間〜21時間であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、分子内イオン複合体型応答性ポリマーを高収率で得ることができ、また、光分解反応や不要な架橋反応を抑制しながらラジカル重合を行うことができる。
なお、調製工程において混合物が調製され終えてから、照射工程において紫外線の照射が開始されるまでの時間は、10分〜1時間であることが好ましい。
混合物を加えたバイアルの内部の気体を置換して、バイアル内を不活性雰囲気とする際には、10分程度の時間を要する。そのため、上記時間を10分未満とすると、ラジカル重合に必要となる不活性雰囲気が得られない虞がある。また、混合物中では、DMAEMAの加水分解反応が、紫外線の照射が開始される前に開始される。そのため、上記時間を1時間超とすると、ラジカル重合反応に不活性なメタクリル酸が混合物中に多数生じてしまう。
この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法では、混合物に水が含まれるため、DMAEMAのラジカル重合反応と、ポリ2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(PDMAEMA)の側鎖のエステル結合の加水分解反応とを、拮抗させることができる。
この拮抗により、得られる生成物は、式(I)で表される繰り返し単位(A)
、及び式(II)で表される繰り返し単位(B)
を含むポリマーとなる。
そのため、ポリマーが有するカチオン性官能基、すなわち、ジメチルアミノ基と、ポリマーが有するアニオン性官能基、すなわち、側鎖のエステル結合が加水分解されてできたカルボキシル基の両方を、バランスよく備えることができる。そして、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
なお、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法と同一の製造方法ではなくとも、DMAEMA、重合禁止剤、及び水が、紫外線照射時に反応系中に共存していれば、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法の上記効果と同様の効果を得ることができる。
例えば、DMAEMA及び重合禁止剤を含む混合物と、水とを別々に準備し、次いで、混合物と水とに不活性ガスをバブリングし、その後、混合物と水とを不活性雰囲気下で混合すると同時に紫外線を照射するという、温度応答性ポリマー組成物の製造方法も、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法に含めることができる。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法において用いられる分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーは、上記例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法により製造される。
ここで、分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10kDa〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
この分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
この分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
また、この分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器(例えば、細胞培養用プレート、細胞培養用シート等を調製することができる。
更に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法において用いられる分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を形成させることができる。
この分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーでは、上記分子内イオン複合体型温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記分子内イオン複合体型温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
以下、別の例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法について記載する。この例では、低曇点型温度応答性ポリマー組成物は、DMAEMAの重合体である温度応答性ポリマーを含む混合型温度応答性ポリマー組成物である。
すなわち、この例の温度応答性ポリマー組成物の製造方法では、まず、混合型温度応答性ポリマー組成物を調製する(混合物調製工程)。具体的には、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、(3)核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを混合する。
(1)のDMAEMA及び/又はその誘導体の重合体は、温度応答性ポリマーであり、その曇点は32℃である。(2)のトリスは、曇点の若干の低下、及び/又は曇点よりも高温で形成されたポリマーが、曇点以下に冷却された際に再溶解する速度を低減させる役割を果たし、また、疎水化されたポリマー層中でも親水性を維持しながら、アミノ基に由来する陽電荷により細胞に刺激を与える役割を果たすと推定される。(3)のアニオン性物質は、培養する細胞の遊走や配向を可能にする役割や細胞傷害性を抑制する役割を果たすと推定される。
この混合型温度応答性ポリマー組成物によれば、曇点を室温(25℃)以下に低減させることができる。
上記組成物では、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体の側鎖とトリスとが、互いに相互作用(例えば、架橋する作用)して、上記重合体が凝集しやすくなっていると推定される。
ここで、上記(1)について、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体としては、数平均分子量(Mn)が、10kDa〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜6.0である分子が好ましい。
また、(1)のDMAEMAの誘導体としては、例えば、メタクリレートのメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、メタクリレートのメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体が挙げられる。
上記(2)について、トリスは、純度99.9%以上の純物質であるか、又は、トリス水溶液を、アルカリ性物質の添加などにより、使用時に中性又は塩基性とすることが好ましい。トリスは、塩酸塩の状態で市販されているところ、これを用いた場合には、トリス水溶液のpHが下がるため、組成物の曇点が70℃程度にまで上昇してしまう。そのため、トリス塩酸塩は好ましくない。
上記(3)に列挙したアニオン性物質のうち、核酸は、DNA、RNA、その他1本鎖、2本鎖、オリゴ体、ヘアピンなどの人工核酸などが挙げられる。
また、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、ある程度の大きさ、例えば1kDa〜5,000kDaの分子量(M)を有していることが好ましい。
分子量を上記範囲とすれば、アニオン性物質は、カチオン性物質とイオン結合して、カチオン性物質を、長時間捕捉する役割を果たすことができ、安定したイオン複合体微粒子を形成させることがでる。また、一般的にカチオン性物質が有する、細胞の細胞膜表面に対する静電的相互作用に起因する細胞傷害性を緩和することもできる。
(3)に列挙したアニオン性物質の他にも、例えば、カチオン性ポリマーであるポリ(4−アミノスチレン)の4−位のアミノ基に対してシュウ酸などのジカルボン酸を脱水縮合させることによって、アニオン性官能基を導入した、実質的にアニオン性物質として機能するポリマー誘導体も、用いることができる。
なお、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、二種以上含まれていてもよい。
ここで、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体に対する、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)の割合((2)/(1))が、1.0以下とした混合型温度応答性ポリマー組成物を用いることが好ましい。
なお、割合((2)/(1))は、重量割合であるものとする。
上記割合の混合型温度応答性ポリマー組成物を用いた場合、後述の培養工程で、細胞構造体を形成しやすくすることができる。
この組成物によれば、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にすることができる。そして、この好適なバランスが、培養面への細胞の接着性を好適に調整し、細胞の遊走や配向を活性化していると推定される。
また、上記割合は、0.1以上あることが好ましい。
上記割合を0.1以上とすることにより、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。また、細胞構造体を形成しやすくするという上記効果が得られやすい。
上記と同様の理由により、上記割合((2)/(1))は、0.1〜0.5であることが更に好ましい。
ここで、混合型温度応答性ポリマー組成物中のC/A比(正電荷/負電荷)が、0.5〜16であることが好ましい。
なお、本願明細書では、C/A比とは、組成物中に含まれる物質が有する正電荷の、組成物中に含まれる物質が有する負電荷に対する割合を指す。具体的には、C/A比は、(1)DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体のモル数をN1、(3)アニオン性物質のモル数をN3としたときに、{(重合体1分子当たりの正電荷)×N1}/{(アニオン性物質1分子当たりの負電荷)×N3}という式で表される。
またなお、本願明細書では、アニオン性物質をDNAとした場合、アニオン性物質1分子当たりの負電荷数は、DNAの塩基対の数(bp数)×2で計算し、分子量(Da)は、bp数×660(ATペア及びCGペアの平均分子量)で計算するものとする。
C/A比を0.5〜16とすることにより、細胞構造体を形成させやすくするという上記効果が得られやすくなる。
上記組成物中の正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができると推定される。また、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができると推定される。
上記と同様の理由により、上記C/A比は、2〜10とすることが更に好ましく、特にC/A比は8付近であることが最も好ましい。
(準備工程)
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、次いで、前述の低曇点型温度応答性ポリマー組成物(温度応答性ポリマー組成物)で細胞培養シートの培養面の一部を被覆して、被覆細胞培養シート部分を有する部分被覆細胞培養シートを準備する(準備工程)。
ここで、被覆細胞培養シート部分は、第一の非被覆細胞培養シート部分を取り囲むように設けられ、また、第二の非被覆細胞培養シート部分により取り囲まれるように設けられる。言い換えれば、第一の非被覆細胞培養シート部分は、被覆細胞培養シート部分に囲繞されており、また、被覆細胞培養シート部分は、第二の非被覆細胞培養シート部分に囲繞されている。
この工程は、例えば、図1に示すように、行うことができる。すなわち、まず、細胞が接着しない又は接着しにくいシート11を準備し、そして、該シート11のうち、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1となる領域、及び、第二の非被覆細胞培養シート部分11b2となる領域を、フィルム12により覆い、一方、該シート11のうち、被覆細胞培養シート部分11cとなる領域は、未処理としておく(図1(i)参照)。
次いで、このシート11上に、前述の温度応答性ポリマー組成物の水溶液13を加え(図1(ii)参照)、その後、該水溶液を、前述の「曇点」以上の温度(例えば、45℃)で、所定時間(例えば、3時間)、乾燥させる(図1(iii)参照)。
そして、乾燥後、上記フィルム12を剥がす(図1(ix)参照)。
上記一連の操作により、被覆細胞培養シート部分11cを有する部分被覆細胞培養シート11xを準備することができる(図1(ix)参照)。
特に、図1に示す本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1と被覆細胞培養シート部分11cとの境界をなす線と、被覆細胞培養シート部分11cと第二の非被覆細胞培養シート部分11b2との境界をなす線とは、同心円を形成している(図1(ix)参照)。
この構成によれば、後述の培養工程において、播種・培養された細胞が管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を形成しやすい。
ここで、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1と被覆細胞培養シート部分11cとの境界をなす線が描く円の半径としては、所望の管腔構造のサイズに合わせて適宜選択されてよく、特に、管腔構造を有する細胞構造体を形成しやすくする観点から、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、また、100mm以下であることが好ましく、80mm以下であることが更に好ましい。
また、被覆細胞培養シート部分11cと第二の非被覆細胞培養シート部分11b2との境界をなす線が描く円の半径としては、所望の管腔構造のサイズに合わせて適宜選択されてよく、特に、管腔構造を有する細胞構造体を形成しやすくする観点から、2mm以上であることが好ましく、5mm以上であることが更に好ましく、また、200mm以下であることが好ましく、90mm以下であることが更に好ましい。
なお、本発明の細胞構造体の製造方法では、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1と被覆細胞培養シート部分11cとの境界をなす線が描く平面視形状は、円形に限定されることなく、多角形、楕円形等としてもよく、また、被覆細胞培養シート部分11cと第二の非被覆細胞培養シート部分11b2との境界をなす線が描く平面視形状も、円形に限定されることなく、多角形、楕円形等としてもよい。
特に、上記境界をなす線が描く平面視形状は、管腔構造をその軸線に関して線対称とする観点から、点対称であることが好ましい。
上記細胞が接着しない又は接着しにくいシート11の素材としては、当業者に周知の素材が使用可能であり、例えば、接触角が70°以下の素材、具体的には、親水性基で修飾したポリエチレンテレフタレート製のシート、ポリスチレン製のシート、ポリカーボネート製のシート、ガラスシート、ポリプロピレン製のシート等が挙げられ、特に、細胞培養に使用するために溶出物を少なくする観点から、例えば、N,N−ジメチルアクルリルアミドが放射線グラフト重合により導入固定されたポリスチレン製のシート等が好ましい。
上記シート11の形状、サイズ、厚さ等は、特に限定されない。
特に、図1に示す本発明の一例の細胞構造体の製造方法において用いられる平面視円形のシートでは、半径:10mm〜30mm、厚さ:0.05mm〜2.0mmであることが好ましい。
上記フィルム12としては、例えば、前述の温度応答性ポリマー組成物(分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーからなるもの、混合型温度応答性ポリマー組成物)が塗布されない表面を作製できる限り特に限定されることなく、例えば、前述のシート11との密着性の高いパラフィルム等が挙げられる。
(播種工程)
そして、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、準備した部分被覆細胞培養シートに、細胞を、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で、部分被覆細胞培養シートの培養面上に播種する(播種工程)。
この工程は、例えば、37℃のインキュベーター中に静置しておいた部分被覆細胞培養シート11xを、室温のクリーンベンチに取り出し、該シート11xを細胞培養器に入れ、該細胞培養器に細胞C1及び細胞培養用培地M1を加えることによって、行うことができる(図1(v)参照)。
上記の部分被覆細胞培養シートのうち、細胞C1が接着しない又は接着しにくい部分である、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1及び第二の非被覆細胞培養シート部分11b2には、細胞C1は接着せず、被覆細胞培養シート部分11cの上にのみ細胞C1が接着する(図1(vi)参照)。
上記細胞密度に関して、例えば、200mm2の培養面の面積及び1mLの培地容量を有する24ウェルプレートに、播種する場合に、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で播種を行うためには、20×104個/mL以上の細胞密度を有する細胞浮遊液を用いる必要がある。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、特に限定されることなく、軟骨細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、心筋細胞等の間葉系細胞を好適に用いることができ、特に、アクチンフィラメントが発達し、自己凝集がしやすいものが好ましく、凝集力と合わせて免疫寛容性をも有する脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)が特に好ましい。初代細胞の場合は、コロニーを形成する接着性細胞を選択すれば良く、当業者によって適宜選択可能である。
上記細胞密度で細胞を播種すれば、詳細なメカニズムは不明であるが、下記の培養工程で、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を形成させることができる。この細胞構造体は、その管腔構造内に生存している細胞を有する。
また、上記細胞密度は、培養中の細胞C1同士の接触による増殖停止などの、細胞周期に関する問題を生じにくくするため、5.0×103個/mm2以下とすることが好ましい。
そして、上記細胞密度は、1.5×103個/mm2以上とすることが更に好ましく、また、3.0×103個/mm2以下とすることが更に好ましい。上記細胞密度を上記範囲とすれば、下記の培養工程(及び追加の培養工程)で、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を形成しやすくするという上記効果が得られやすい。
(培養工程)
最後に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、播種された細胞を培養する(培養工程)。
この工程は、例えば、一般的な37℃の細胞インキュベーターを用いて行うことができる(図1(ix)参照)。
この工程において生じる現象を、図1(特に、(viii)、(ix))、図2を参照しながら、以下に記載する(なお、図では、播種工程において播種された細胞C1と共に、後述の追加の播種工程において播種された追加の細胞C2も、示されている)。
すなわち、この工程において、被覆細胞培養シート部分11cに接着した細胞C1は、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1と被覆細胞培養シート部分11cとの境界付近から、培養皿面から遠ざかり、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1から被覆細胞培養シート部分11cに向かって反り返るように、凝集し始める(図2(a)(ii)、図2(b)(ii)参照)。同様に、被覆細胞培養シート部分11cに接着した細胞C1は、被覆細胞培養シート部分11cと第二の非被覆細胞培養シート部分11b2との境界付近から、培養皿面から遠ざかり、第二の非被覆細胞培養シート部分11b2から被覆細胞培養シート部分11cに向かって反り返るように、凝集し始める(図2(a)(ii)、図2(b)(ii)参照)。
細胞培養シート11にシート状に存在していた細胞C1は、上記の反り返りを徐々に増大させ、遂には、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1と被覆細胞培養シート部分11cとの境界付近に位置していた細胞C1と、被覆細胞培養シート部分11cと第二の非被覆細胞培養シート部分11b2との境界付近に位置していた細胞C1とが、接着し、管腔構造(チューブ構造)を形成する(図2(a)(iii)、図2(b)(iii)参照)。
なお、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法が、追加の播種工程(後述)を含む場合には、上記現象が生じないうちに、追加の播種工程を行うことが好ましい。
また、培養時間、使用される培地等の培養条件は、細胞種や実験目的に基づいて、当業者は適切に定めることができる。
(追加の播種工程)
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、任意選択的に、好適に、前述の播種工程後に、追加の細胞を、播種工程において部分被覆細胞培養シートの培養面に播種された細胞上に追加的に播種してもよい(追加の播種工程)。
図1に示す細胞構造体の製造方法は、追加の播種工程を含んでいる。
この場合、前述の播種工程終了から前述の追加の播種工程開始までの時間は、前述の細胞が凝集する現象が進行する前に当該工程を行うことができる限り特に限定されることなく、使用する細胞種に応じて当業者によって適宜調整されてよく、例えば、約6時間〜約24時間程度としてよい。なお、脂肪組織由来間葉系幹細胞及びヒト臍帯静脈内皮細胞を使用した場合の具体的な時間に関しては、実施例に記載の通りである。当該時間は、播種工程において播種された細胞を接着させるため、通常の培養条件下で培養してよい。
この工程は、前述の播種工程後の部分被覆細胞培養シート(図1(vi)参照)を、適当な緩衝液を用いて洗浄し、別の細胞培養器に入れ、該細胞培養器に追加の細胞C2及び細胞培養用培地M2を加えることによって、行うことができる(図1(vii)参照)。
上記の部分被覆細胞培養シートのうち、細胞が接着しない又は接着しにくい部分である、第一の非被覆細胞培養シート部分11b1及び第二の非被覆細胞培養シート部分11b2には、追加の細胞C2は接着せず、前述の播種工程において被覆細胞培養シート部分11cに既に接着された細胞C1の上に、追加の細胞C2が接着する(図1(viii)参照)。
前述の播種工程における細胞C1と、上記の追加の播種工程における追加の細胞C2とは、同種であってもよく、異種であってもよい。
なお、細胞密度は、例えば、実施例に記載の通りとすることができる。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法が、追加の播種工程を含む場合、前述の培養工程において、前述の通り、細胞C1及び追加の細胞C2の反り返りが生じ、細胞C1の層を内側層として追加の細胞C2の層を外側層として有する管腔構造(チューブ構造)を形成する(図1(ix)、図2参照)。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、追加の播種工程において用いる追加の細胞C2は、高度に分化した(CD31陽性である)血管内皮細胞、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であることが好ましい。なお、播種工程において用いる細胞C1は、前述の通り、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)であることが好ましい。
特に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、播種工程において用いる細胞C1をADSCとし、追加の播種工程において用いる追加の細胞C2をHUVECとした場合、培養面側にあるADSCが、追加のHUVECと比較して、細胞の凝集が生じやすいため、外側層が内側層を包み込むような現象が生じやすい。
そして、この場合、人工血管とし得る細胞構造体を形成することが可能となる。このような細胞構造体は、既に臨床で利用されているe−PTFE製やポリエステル製の多孔質チューブ等でできた人工血管と比較して以下の点で有用である。
・上記細胞構造体は、人工材料を含まず、細胞及び細胞間マトリックスのみで構成されているため、コンプライアンスβ値(血管拍動におけるSSカーブ追随性)が生体血管に近く、宿主血管との吻合部において発生しやすい血栓を防止できる可能性がある。
・上記細胞構造体は、宿主体内で宿主の成長に合わせて人工血管としてそれ自体も成長する可能性を秘めている。
・上記細胞構造体は、人工材料を含まないので石灰化の危険性を低減できる。
・上記細胞構造体は、宿主に移植した時点で内壁が内皮細胞で覆われているため、移植初期の血栓発生や内膜肥厚の問題が生じにくい。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法によれば、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を提供することができる。
そして、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法によれば、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体の製造の再現性や簡便性が高く、細胞構造体の均質性が良好である。
(細胞構造体)
本発明の実施形態の細胞構造体は、上記本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法により製造することができる。
本発明の実施形態の細胞構造体は、構成する細胞の成熟度が高く、細胞間マトリックスが豊富であるため粘着性に富んでいるため、単層培養されたシート状の細胞を単に丸めてなる細胞構造体と比較して、管腔構造(チューブ構造)の物理的強度が高く、シートの端部のシール性が高い。
以下、試験例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の試験例に何ら限定されるものではない。
下記の試験において、市販の試薬は、特に断りのない限り更に精製することなく用いた。
(試験A)分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの調製
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10.0g、及び水5,000μLを加えて、磁気撹拌器を用いて撹拌した。そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。なお、用いたDMAEMAには、重合禁止剤であるメチルヒドロキノン(MEHQ)が0.5重量%含まれていた。
その後、この反応物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、22時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。反応物は、5時間後に粘性を帯び15時間後に固化して、重合体が反応生成物として得られた。この反応生成物を2−プロパノールに溶解させ、溶液を透析チューブに移した。そして、透析を72時間行い、反応生成物を精製した。
反応生成物を含む溶液を、セルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることにより、分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーが得られた(収量:6.8g、転化率:68%)。このポリマーの数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=160,000(Mw/Mn=3.0)と決定した(以下、「試験Aポリマー」ともいう)。
(試験B)部分被覆細胞培養シートの準備
図1に示すように、第一の非被覆細胞培養シート部分と被覆細胞培養シート部分との境界をなす線と、被覆細胞培養シート部分と第二の非被覆細胞培養シート部分との境界をなす線とが、同心円を形成するように、第一の非被覆細胞培養シート部分、第二の非被覆細胞培養シート部分、被覆細胞培養シート部分を作製した。
具体的には、下記手順に従った。
親水性基で修飾したポリエチレンテレフタレート製のシート(和光純薬社製、14mm径プラスチックシート)を準備し、そして、該シートのうち、第一の非被覆細胞培養シート部分となる領域、及び、第二の非被覆細胞培養シート部分となる領域を、パラフィルム(Pechiney社製)により覆い、一方、該シートのうち、被覆細胞培養シート部分となる領域は、未処理とした。次いで、このシート上に、試験Aポリマーの水溶液(濃度:30ng/μL)20μLを加え、その後、該水溶液を45℃で3時間乾燥させた。乾燥後、上記パラフィルムを剥がした。
(試験C)細胞の播種
上記試験Bで準備した部分被覆細胞培養シートを、24ウェル細胞培養プレートのウェルに敷き、このプレートを、室温条件下において、GFP組換えルイルラットの脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC(Adipose−derived vascular stromal cell))を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FCS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番11965、FCS:インビトロゲン社製、ロット番号715929)中に浮遊させ、細胞密度を4×103個/mm2)に調整した培養液を加えた。
そして、この実験では、この細胞を37℃の細胞培養インキュベーター中で6時間培養した。
(試験D)追加の細胞の播種
上記試験Cで準備したプレートのウェル中の培地を吸引して、被覆細胞培養シート部分に接着しなかったADSCを取り除き、緩衝液(インビトロゲン社製、D’−PBS×1)を用いて、被覆細胞培養シート部分にADSCが接着した部分被覆細胞培養シートを洗浄した。そして、洗浄後の部分被覆細胞培養シートをプレートの別のウェルに敷き、このプレートを、室温条件下において、セルリンカーキット(SIGMA社、CellVue Claret RFP Kit)で蛍光標識したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC(Human Umbilical Vein Endothelial Cell))を、EGM培地(Lonza社、EC−Supplementを含む+5%ウシ胎児血清(FCS))中に浮遊させ、細胞密度を3種類(5×102個/mm2、20×102個/mm2、40×102個/mm2)に調整した培養液を加えた。
(試験E)細胞及び追加の細胞の培養
(試験D)の後、これらの細胞(ADSC、HUVEC)を37℃の細胞培養インキュベーター中で6時間培養した。
HUVECの培養開始から6時間後、第一の非被覆細胞培養シート部分と被覆細胞培養シート部分との境界付近のADSCsが、培養面から遠ざかり、第一の非被覆細胞培養シート部分から被覆細胞培養シート部分に向かって反り返るように凝集し始め、管腔構造(チューブ構造)を形成した。
図3に、HUVECの培養開始から12時間後の細胞構造体の様子を写した写真を示す。図3(a)に、細胞構造体を実体顕微鏡で観察したときの写真を示す。図3(b)に、細胞構造体の短軸切片を蛍光顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す(図1に示す細胞構造体の線II−IIに沿う面により切断したときの図に相当する)。ADSCについては恒久的に発現されているGFPを観察し(図中、緑色で示される)、HUVECについてはセルリンカーキットによる蛍光標識を観察した(図中、赤色で示される)。
図4に、図3に示す細胞構造体の長軸切片を蛍光顕微鏡を用いて観察したときの写真(図1に示す細胞構造体の線III−IIIに沿う面により切断したときの図に相当する)。
これらの結果から、(試験A)〜(試験D)により得られた細胞構造体は、ADSCsを外側の細胞層とし、HUVECを内側の細胞層とする、管腔状の細胞構造体を有するものであることがわかった。
本発明の細胞構造体の製造方法によれば、人工的な足場(スキャホールド)を特に用いることなく、細胞に自発的に細胞構造体を形成させて、管腔構造(チューブ構造)を有する細胞構造体を提供することができる。
11;シート、11b1;第一の非被覆細胞培養シート部分、11b2;第二の非被覆細胞培養シート部分、11c;被覆細胞培養シート部分、11x;部分被覆細胞培養シート、12;フィルム、13;温度応答性ポリマーの水溶液、C1;細胞、M1;細胞培養用培地、C2;追加の細胞、M2;細胞培養用培地、

Claims (5)

  1. 低曇点型温度応答性ポリマー組成物を調製する調製工程と、
    前記低曇点型温度応答性ポリマー組成物で細胞培養シートの培養面の一部を被覆して、第一の非被覆細胞培養シート部分を取り囲むように設けられ、第二の非被覆細胞培養シート部分により取り囲まれるように設けられた被覆細胞培養シート部分を有する、部分被覆細胞培養シートを準備する準備工程と、
    細胞を、1.0×103個/mm2以上の細胞密度で、前記部分被覆細胞培養シートの前記培養面上に播種する播種工程と、
    前記播種した細胞を培養する培養工程と
    を備えることを特徴とする、細胞構造体の製造方法。
  2. 追加の細胞を、前記播種工程において前記部分被覆細胞培養シートの前記培養面に播種された前記細胞上に追加的に播種する追加の播種工程
    を更に備える、請求項1に記載の細胞構造体の製造方法。
  3. 前記第一の非被覆細胞培養シート部分と前記被覆細胞培養シート部分との境界をなす線と、前記被覆細胞培養シート部分と前記第二の非被覆細胞培養シート部分との境界をなす線とは、同心円を形成する、請求項1又は2に記載の細胞構造体の製造方法。
  4. 前記細胞は、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)であり、前記追加の細胞は、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である、請求項2又は3に記載の細胞構造体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする、細胞構造体。
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