JP2017014324A - 温度応答性ポリマーの製造方法、温度応答性ポリマー、細胞培養器の製造方法、細胞培養器 - Google Patents

温度応答性ポリマーの製造方法、温度応答性ポリマー、細胞培養器の製造方法、細胞培養器 Download PDF

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泰秀 中山
良輔 岩井
Ryosuke Iwai
良輔 岩井
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Yasushi Nemoto
泰 根本
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Abstract

【課題】本発明は、広く応用することが可能な、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する温度応答性ポリマーを製造することを目的とする。
【解決手段】N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーとを重合させることを特徴とする、温度応答性ポリマーの製造方法、該製造方法により製造された温度応答性ポリマー、該温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器の製造方法、及び該製造方法により製造された細胞培養器。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する温度応答性ポリマーの製造方法、該製造方法により製造された温度応答性ポリマー、該温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器の製造方法、及び該製造方法により製造された細胞培養器に関する。
温度応答性ポリマーは、所定の温度(下限臨界溶液温度:Lower Critical Solution Temperature、以下、「曇点」ともいう。)未満では水に溶解するが、所定の温度以上では不溶化して沈殿する、という物性を備えるポリマーである。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の重合体である、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)は、約32℃の曇点を有する温度応答性ポリマーとして知られている。
ここで、PDMAEMAの側鎖に結合する、カチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基を含むエステル基の一部を、加水分解によりアニオン性のカルボキシル基に変換することによって、物性を変化させたPDMAEMA由来のポリマーを製造する需要も存在していた。
かかる需要に応えるべく、DMAEMAを水存在下でラジカル重合させることによって、カチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基、及び2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基を含むエステル基が加水分解されてなるアニオン性のカルボキシル基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。
特開2014−162865号公報
しかしながら、上記従来の温度応答性ポリマーの製造方法により製造される温度応答性ポリマーには、応用範囲の更なる拡大を可能にする余地があった。
そこで、本発明は、広く応用することが可能な、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する温度応答性ポリマーを製造することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーとを重合させることを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記重合が、ラジカル重合、イニファーター重合、イオン重合からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、
前記第一混合物に、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する添加工程と、
前記第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記カチオン性モノマー単位の、前記アニオン性モノマー単位に対する割合(C/A比)が、0.5〜32であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記N−イソプロピルアクリルアミドの使用量の、前記N−イソプロピルアクリルアミド、前記カチオン性モノマー、前記アニオン性モノマーの使用量の合計に対するモル割合が0.9以上であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記カチオン性モノマーが、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の温度応答性ポリマーは、上記の本発明の温度応答性ポリマーの製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明の温度応答性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含むことを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーは、前記カチオン性モノマー単位の、前記アニオン性モノマー単位に対する割合(C/A比)が、0.5〜32であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーは、前記N−イソプロピルアクリルアミド単位の、前記N−イソプロピルアクリルアミド単位、前記カチオン性モノマー単位、前記アニオン性モノマー単位の合計に対するモル割合が0.9以上であることが好ましい。
本発明の温度応答性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミドのホモポリマーブロックと、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックと、を含むことを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーでは、前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーでは、前記カチオン性モノマーが、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーでは、前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の細胞培養器の製造方法は、上記の本発明の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、
前記曇点以下の温度を有する前記温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、
前記温度応答性ポリマーが前記培養面に流延された前記細胞培養器を、前記曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明の細胞培養器は、上記の本発明の細胞培養器の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明の細胞培養器は、上記の本発明の温度応答性ポリマーを被覆してなることを特徴とする。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、広く応用することが可能な、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する温度応答性ポリマーを製造することができる。
本発明の温度応答性ポリマーによれば、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間を顕著に遅延させることができ、また、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
本発明の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養器を、簡便な方法で製造することができる。
本発明の細胞培養器によれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作を可能とすることができ、また、管腔状や塊状の構造を有する細胞構造体を、簡便に製造することができる。
本発明の細胞培養器を用いて培養された、管腔状(チューブ状)の構造を有するラット皮下脂肪由来の脂肪幹細胞を位相差顕微鏡で観察したときの写真である。
以下、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法、本発明の温度応答性ポリマー、本発明の細胞培養器の製造方法、及び本発明の細胞培養器の実施形態について詳細に例示説明する。
(温度応答性ポリマーの製造方法)
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)と、カチオン性モノマー(以下、「モノマー(B)」ともいう。)と、アニオン性モノマー(以下、「モノマー(C)」ともいう。)とを重合させるものである。任意選択的に、上記3種類のモノマーにこれら以外の他のモノマーを加えて重合させてよい。
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)としては、市販品としてよい。
カチオン性モノマーとしては、カチオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、カチオン性官能基としては、第1級〜第4級アミノ基等のアミノ基、グアニジン基等が挙げられ、特に、化学的安定性、低細胞傷害性、滅菌安定性、強陽電荷性の観点から、第3級アミノ基が好ましい。
より具体的には、カチオン性モノマーとしては、生理活性物質を担持したり、アルカリ性条件下においたりしても、安定性が高いものが好ましく、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、特に、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にするため、好ましい。
また、アミノスチレンは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にすると共に、分子内の芳香環が水溶液中において他の物質の疎水性構造と相互作用することから、担持可能なアニオン性物質のバリエーションを広げるため、好ましい。
更に、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタクリルアミドは、中性域のpHで微弱な陽電荷を有し、且つ、水への溶解性が温度に影響されないことから、一度担持したアニオン性物質の放出を容易にするため、好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アニオン性モノマーとしては、アニオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、アニオン性官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ボロン酸基等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性、高い精製度の観点から、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が好ましい。
より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性の観点から、メタクリル酸、ビニル安息香酸が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の中性の親水性モノマー等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーは、電荷以外の親水性・疎水性のバランスの調整に使用可能であり、バリエーションを広げることが可能となる。
ここで、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法におけるNIPAMの使用量、カチオン性モノマーの使用量、他のモノマーの使用量それぞれの、モノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、モノマーの重合反応における反応性を考慮して、所望のモノマー成分の割合を得られるよう、当業者が適宜調整することができる。
ここで、重合方法としては、ラジカル重合、イオン重合等が挙げられる。
ラジカル重合としては、リビングラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、イニファーター重合等が挙げられ、イニファーター重合が好ましい。
イオン重合としては、リビングアニオン重合が好ましい。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法の一例は、ラジカル重合を用いる方法である。
この製造方法の一例では、まず、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、メタノール、水等が挙げられ、特に、溶解力の点、及び重合に不活性である点から、ベンゼン、トルエンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において重合反応を行うことを可能とすることができ、また、光照射という手段とは別の加熱という手段での反応制御を可能とすることもできる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、NIPAMは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM))となり、N−イソプロピルアクリルアミドを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程後の第一混合物にカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、カチオン性モノマー、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加する。
この工程において、重合中のNIPAMを含むホモポリマーに加えて、カチオン性モノマー及びアニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、NIPAMの単独重合系から、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において重合反応を行うことを可能とすることができ、また、光照射という手段とは別の加熱という手段での反応制御を可能とすることもできる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したNIPAMを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロック、及び/又は、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、NIPAMを含むホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、この一例の製造方法では、効率的な反応を実現する観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って紫外線を照射することが好ましい。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法の別の例は、ラジカル重合を用いる方法であり、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーと、任意選択的に他のモノマーを含む混合物に紫外線を照射する。
ここで、上記混合物は、例えば、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
他の条件については、前述の一例の製造方法と同様としてよい。
更には、イニファーター重合を用いる場合、イニファーターとして、ベンジル−(N,N−ジエチル)ジチオカルバメートを、溶媒として、トルエン等を用いてよく、近紫外線の照射によりリビング重合を行ってよい。ここで、1番目のモノマーによる重合後、単離操作を経て、2番目のモノマーによる重合を行うことによって、ブロック共重合体を得ることができる。
更には、イオン重合を用いる場合、触媒として、NaOH粉末を、溶媒として、精製に用いられる再沈殿用溶媒と共に非プロトン系溶媒を用いてよい。1番目のモノマーによる重合後、再沈殿操作(この操作後もω末端にイオン種が残る)を経て、2番目のモノマーによる重合を行うことによって、ブロック共重合体を得ることができる。
(温度応答性ポリマー)
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、上記本発明の実施形態の製造方法により製造される。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に、他のモノマー単位を含む。本ポリマーは、前述の一例、別の例の製造方法により製造することができる。
好適には、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、主としてN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位を含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてカチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。更に好適には、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、NIPAMのホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、特に好適には、これらブロックからなる。本ポリマーは、前述の一例の製造方法により製造することができる。
例えば、特許文献1に記載の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるDMAEMAが、同時に、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーであり、また、温度応答性に関わるDMAEMAはポリマーブロックとして重合鎖α末端に含まれている。
かかる温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずカチオン性モノマーが存在することから、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置の調整の自由度が高くはなく、また、カチオン性モノマーが主としてDMAEMAに限られることから、カチオン性サイトの陽電荷強度の調整や、温度応答性ポリマー水溶液のpHの調整も必ずしも容易とは言えなかった。
例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。DDSの手法としては、例えば、細胞培養器に薬剤を担持させた温度応答性ポリマーを塗布して、塗布後の細胞培養器で細胞や組織を培養することによって、被覆物から細胞・組織に対して薬剤を徐放するといった手法等が挙げられる。ここで、上記特許文献1の温度応答性ポリマーでは、陽電荷強度が小さいDMAEMAを含むため、アニオン性物質の薬剤の担持は必ずしも容易とは言えず、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。
一方、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるNIPAMは中性のモノマーであり、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーはNIPAMとは異なるモノマーである。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずしもカチオン性モノマーが存在する必要はなく、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置を自由に調整することが可能であり、また、広範なカチオン性モノマーを用いることができるため、カチオン性サイトの陽電荷強度や温度応答性ポリマー水溶液のpHを容易に調整することが可能である。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類を拡大しつつ、その量を増加させることが可能となり、ひいては、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーでは、NIPAM単位の、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する割合(モル)が、0.6〜0.9であることが好ましく、0.7〜0.9であることが更に好ましく、0.9であることが特に好ましい。
他のモノマーも用いた場合には、他のモノマー単位の、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する割合(モル)が、0.001〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、NIPAMのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、重合条件により、適宜調整することができる。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、前述の本発明の好適な実施形態の温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量を有するNIPAMのホモポリマーブロックを備えるため、NIPAMの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製することができる。
更に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基の官能基数と、アニオン性官能基の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
上記と同様の理由により、上記C/A比は、2〜10とすることが更に好ましく、特にC/A比は8付近であることが最も好ましい。
(細胞培養器の製造方法)
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法は、上記の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、温度応答性ポリマーが培養面に流延された細胞培養器を、曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、を含む。
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、まず、上記の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する(冷却工程)。
この工程では、例えば、温度応答性ポリマーを約4℃の冷蔵庫に入れることによって、上記温度応答性ポリマーを曇点以下の温度まで冷却することができる。
次いで、本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる(流延工程)。
この工程では、例えば、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面を傾けることによって、又はスパチュラを用いてポリマーを延ばすことによって、温度応答性ポリマーを流延させることができる。
細胞培養器としては、市販の細胞培養用のプレート、ディッシュ、フラスコ等が挙げられる。細胞培養器の材質としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレン、ガラス等が挙げられる。
そして、本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、温度応答性ポリマーが培養面に流延された細胞培養器を、曇点超の温度まで加熱する(加熱工程)。
この工程は、例えば、流延工程後の細胞培養器を37℃のインキュベーター中で静置することによって、上記温度応答性ポリマーを曇点超の温度まで加熱することができる。
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを細胞培養器の表面に被覆するための特別な処理、例えば、放射線グラフト重合などを施すことを要しない。すなわち、本発明の実施形態の細胞培養器の調製は、該培養器を用いる研究者自身により、簡便な方法で(特殊な装置を要することなく)、低コストで行うことができる。
(細胞培養器)
本発明の実施形態の細胞培養器は、上記の本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法により製造される。
この細胞培養器によれば、一般的な37℃のインキュベーター中で細胞を培養して、組織を形成させた後、曇点以下の条件にすることにより、トリプシン処理等の細胞剥離操作を行うことなく、例えば、細胞シート状の構造を有する細胞を回収することができる。
そのため、この細胞培養器を用いて細胞を培養すれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作が可能となる。
更に、本発明の実施形態の細胞培養器によれば、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を簡便に形成させることができる。
これは、上記温度応答性ポリマーが側鎖に有する疎水性基及びカチオン性基が、何らかの相互作用をしながら、細胞に刺激を与えていると推定される。また、カチオン性基とアニオン性基とを有する温度応答性ポリマーは、正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、細胞傷害性を抑制し(哺乳類細胞の細胞膜の表面は負電荷を帯びているため、カチオン性物質は細胞傷害性を有することが多い)、且つ、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを好適にして、細胞の遊走や配向を可能にしているものと推定される。
また、この細胞培養器によれば、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
本発明の実施形態の細胞培養器では、該細胞培養器の培養面が、単位面積当たりに有する、本発明の温度応答性ポリマーの量が、5.0〜50ng/mm2であることが好ましく、15〜40ng/mm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、細胞構造体を形成させやすくするという効果が得られやすい。
(細胞培養方法)
以下に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマー、及び本発明の実施形態の細胞培養器を用いた細胞培養方法について記載する。
上記細胞培養方法は、上記の本発明の実施形態の細胞培養器に細胞を播種する播種工程と、播種された細胞を培養する培養工程とを含む。播種条件及び培養条件は、細胞種や実験目的に基づいて、当業者は適切に定めることができる。そして、この細胞培養方法は、細胞種に限定されることなく、血管細胞、脂肪幹細胞、肝細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、心筋細胞、腎細胞、神経細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞等の様々な細胞に適用することができる。
ここで、一例の細胞培養方法では、播種される細胞の密度が1,500個/mm2以下(培養面の面積が200mm2である24ウェル細胞培養プレートに1.0mLの細胞浮遊液を加えることにより播種する場合、3.0×105個/mL以下)であることが好ましい。なお、播種される細胞は、生きた細胞とする。
上記細胞密度とすれば、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
上記一例の細胞培養方法は、血管内皮細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、線維芽細胞など間葉系の細胞に対して、特に好適に適用することができる。初代細胞の場合は、コロニーを形成する接着性細胞を選択すれば良く、当業者によって適宜選択可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
下記の試験において、市販の試薬は、特に断りのない限り更に精製することなく用いた。
(試験1)ポリマーの製造
分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの製造(実施例製法1)
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)3.35gと、トルエン5.0mLとを加えて、磁気撹拌器を用いて10分間撹拌しながら、これらを均質に溶解させた。そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。その後、この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、4時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。
そして、バイアル瓶に不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、ここへ、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(カチオン性モノマー、DMAEMA)0.5mL、及びメタクリル酸(アニオン性モノマー、MA)0.03mLを加えて、再度磁気撹拌器を用いて撹拌した。
この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて6時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。
反応物は、4時間後に粘性を帯び、6時間後に固化した。固化後、更に1時間の紫外線照射を行って、重合体を反応生成物として得た。この反応生成物を50mLのトルエンに溶解させ、次いで、溶液を500mLのジエチルエーテル中に少量ずつ加えることによって、重合物を再沈殿させ、そして、上澄みを除去し、最後に、残った沈殿物を少量のジエチルエーテルで洗浄した。このトルエンへの溶解からジエチルエーテルでの洗浄までの再沈殿操作を更に5回繰り返して、重合体を精製した。
精製した反応生成物である重合体を適量の水に溶解させた。そして、溶液をセルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることによって、NIPAMとDMAEMAとの共重合体からなる温度応答性ポリマーが得られた(収率56%)。
このポリマーの数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=90,000(Mw/Mn=2.2)と決定した(実施例ポリマー1)。
実施例ポリマー1の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を、核磁気共鳴装置(Varian社製、型番:Gemini300)を用いて、重水素化メタノール(CD3OD)を溶媒に使用して測定した。下記には、実施例ポリマー1に共通する代表的なピークを示す。
1H-NMR (in CD3OD) δ 0.8-1.2 (br, -CH2-C(CH 3)- of DMAEMA, MA and CH(CH 3)2 of NIPAM), 1.6-2.0 (br, -CH 2-C(CH3)- of DMAEMA, MA and -CH 2-CH2- of NIPAM and CH(CH3)2 of NIPAM), 2.2-2.4 (br, -N(CH 3)2 of DMAEMA), 2.5-2.7 (br, -CH 2-N(CH3)2 of DMAEMA), 3.6-4.2 (br, -O-CH 2-.of DMAEMA and C(O)-NH- of NIPAM)
ここで、NMRのプロトン積分値からNIPAMの側鎖が有するメチル基の官能基数と、DMAEMAの側鎖が有するジメチルアミノ基の官能基数と、のMAの側鎖が有するメチル基の官能基数との比を算出した。
その結果、実施例ポリマー1の場合NIPAM:DMAEMA:MA=10:1.0:0.1となった。C/A比は、10であった。
(試験2)ポリマーの曇点の測定
実施例ポリマー1の3%水溶液を調製し、この水溶液の660nmにおける吸光度を、15℃〜50℃の間で測定した。昇温速度は0.5℃/分とした。
その結果、15℃〜30℃では、水溶液は透明であり、吸光度がほぼ0であったが、31℃付近から水溶液中に白濁が見られるようになり、32℃で吸光度が急激に上昇した。これにより、上記ポリマーは、約32℃の曇点を有することを確認した。
なお、実施例ポリマーを37℃まで昇温させると、ポリマー水溶液は、良好な応答性で、懸濁し、その後、水溶液全体が固化した。この固化物を室温(25℃)で維持したところ、数十時間の間、固化した状態のままであった。その後、固化物が徐々に溶解して、均質な水溶液に変化した。固化したポリマーは4℃まで冷却すると、速やかに溶解した。そして、上記昇温及び降温の操作を繰り返し行なっても、応答性に変化は生じなかったことから、ポリマーが可逆的に相転移を生じさせることが確認された。
(試験3)ポリマーの凝集体の粒子径測定
実施例ポリマー1を20℃の液体とし、静的光散乱装置(シスメックス社製、型番:ゼーターセイザー・ナノ)を用いて、光散乱により、ポリマー分子の凝集体の粒子径を測定したところ250nmであった。曇点未満の温度である20℃においても、比較的粒子径の大きい凝集体、すなわち、沈殿しやすく、沈殿後に拡散しにくい凝集体を形成していることが示唆された。実施例ポリマー1は、細胞培養器に容易に被覆することができる可能性が示唆された。
(試験4)細胞培養器の製造
実施例ポリマー1の水溶液を調製し(最終濃度、ポリマー:5μg/200μL)、この水溶液を4℃まで冷却した。この水溶液を、ポリスチレン製の24ウェル細胞培養プレート(イワキ社製、マイクロプレート、型番:3815−024、1ウェル当たりの底面積:200mm2)の各ウェルに、この溶液を200μLずつ、室温下で加えて、素早く穴の底面の全面に流延させた。そして、この細胞培養皿を、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO2)中で6時間インキュベートした。こうして、培養面であるウェルに実施例ポリマー1を被覆してなる24ウェル細胞培養プレート(細胞培養器)が得られた。
(試験5)細胞培養
実施例ポリマー1を用いて製造した上記の24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、室温条件下において、ラット皮下脂肪由来の脂肪幹細胞(初代培養細胞)を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FCS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番11965、FCS:インビトロゲン社製、ロット番号852546)中に浮遊させ、細胞密度を3.75〜15×104個/mLに調整した培養液を1mLずつ加えた(1.87×103〜7.50×103個/mm2)。この細胞を37℃の細胞培養インキュベーター中で7日間培養した。
70時間後に、細胞はコンフルエントの状態となった。更に培養を続けたところ、一部の細胞がプレート上を移動し、細胞が互いに集まる現象が生じて、プレート表面の露出が確認されるようになった。5日目に、上記露出する領域は、肉眼で確認できるようになり、一方、互いに集まった細胞は、二次元平面で見て網目状の構造を形成した。この網目状の構造を、更に詳細に観察したところ、図1に示す通り、細胞の集合体は、管腔状(チューブ状)の構造を形成していることが確認され、これらの細胞が、あたかも血管を形成するかのように自発的に集合していることを示した(図1参照)。図1に、管腔状(チューブ状)の構造を有するラット皮下脂肪由来の脂肪幹細胞を位相差顕微鏡で観察したときの写真を示す。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、広く応用することが可能な、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する温度応答性ポリマーを製造することができる。
本発明の温度応答性ポリマーによれば、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間を顕著に遅延させることができ、また、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
本発明の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養器を、簡便な方法で製造することができる。
本発明の細胞培養器によれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作を可能とすることができ、また、管腔状や塊状の構造を有する細胞構造体を、簡便に製造することができる。

Claims (19)

  1. N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーとを重合させることを特徴とする、温度応答性ポリマーの製造方法。
  2. 前記重合が、ラジカル重合、イニファーター重合、イオン重合からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  3. N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、
    前記第一混合物に、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する添加工程と、
    前記第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  4. 前記カチオン性モノマー単位の、前記アニオン性モノマー単位に対する割合(C/A比)が、0.5〜32である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  5. 前記N−イソプロピルアクリルアミドの使用量の、前記N−イソプロピルアクリルアミド、前記カチオン性モノマー、前記アニオン性モノマーの使用量の合計に対するモル割合が0.9以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  6. 前記カチオン性モノマーが、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  7. 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法により製造されることを特徴とする、温度応答性ポリマー。
  9. N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含むことを特徴とする、温度応答性ポリマー。
  10. 前記カチオン性モノマー単位の、前記アニオン性モノマー単位に対する割合(C/A比)が、0.5〜32である、請求項8又は9に記載の温度応答性ポリマー。
  11. 前記N−イソプロピルアクリルアミド単位の、前記N−イソプロピルアクリルアミド単位、前記カチオン性モノマー単位、前記アニオン性モノマー単位の合計に対するモル割合が0.9以上である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  12. N−イソプロピルアクリルアミドのホモポリマーブロックと、
    カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックと、
    を含むことを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  13. 前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が5000Da以上である、請求項12に記載の温度応答性ポリマー。
  14. 前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が20000Da以上である、請求項13に記載の温度応答性ポリマー。
  15. 前記カチオン性モノマーが、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8〜14のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  16. 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8〜15のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  17. 請求項8〜16のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、
    前記曇点以下の温度を有する前記温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、
    前記温度応答性ポリマーが前記培養面に流延された前記細胞培養器を、前記曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、
    を含むことを特徴とする、細胞培養器の製造方法。
  18. 請求項17に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、細胞培養器。
  19. 請求項8〜16のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーを被覆してなることを特徴とする、細胞培養器。
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