JP2017055741A - 農作業機 - Google Patents

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Abstract

【課題】機体の最低地上高を高くでき、旋回時の滑らかさを確保しながら直進性も確保でき、停止状態の維持が可能な農作業機を提供する。
【解決手段】コンバインが備える動力伝達装置10は、エンジン7から入力された駆動力を変速して一方の走行装置2へ出力する第一出力軸25を有する第一油圧モータ22を備えた第一無段変速装置20と、エンジン7から入力された駆動力を変速して他方の走行装置2へ出力する第二出力軸35を有する第二油圧モータ32を備えた第二無段変速装置30と、第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを一致させる同調駆動状態と、第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを一致させない非同調駆動状態と、に切り替え可能な状態切替機構50と、第一無段変速装置20側に配設され、第一出力軸25及び第二出力軸35のうち、少なくともいずれか一方の回転を制動可能なパーキングブレーキ機構82と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、駆動源と、左右一対の走行装置と、前記駆動源の駆動力を前記左右一対の走行装置に伝達する動力伝達装置とを備えた農作業機に関する。
特許文献1に記載のように、従来の農作業機の一例であるコンバイン等の収穫機は、エンジン等の駆動源と、HST等の無段変速装置及び機械的な減速機により構成された動力伝達装置と、収穫機の機体の左右に備えられた一対の無限軌道式の走行装置等とを備えている。
駆動源や動力伝達装置は機体フレームの中央に配設されており、駆動源から出力された駆動力は動力伝達装置により左右に分配され、左右一対の走行装置のそれぞれに伝達される。
特開2012−211672号公報
コンバインの大型化・高出力化に伴って、動力伝達装置にかかる牽引力やトルク等の負荷が増大する。この増大した負荷に耐えるために、動力伝達装置と走行装置とを連結する部分や走行装置の軸受に構造的な強化が必要となる。
しかし、構造的な強化は部品の大型化を招きやすく、上記のような左右分配式の動力伝達装置を採用するコンバインは機体下部中央に上記部品が大きく張り出すため、機体の最低地上高が低くなってしまうという点で改良の余地があった。
また、上記のような左右分配式の動力伝達装置は、コンバインの旋回時の駆動力の伝達ロスが大きく、滑らかな旋回の点で改良の余地があった。
旋回時の滑らかさを確保するために、左右分配式の動力伝達装置を機体フレームの中央に一つだけ備える構成に換えて、二つの動力伝達装置を機体フレームの左右に備えて、左右の動力伝達装置により左右一対の走行装置を独立して駆動させる構成の採用が考えられる。
左右独立式の動力伝達装置は、機体下部中央の張り出しを解消する観点では有効であるが、二つの動力伝達装置のそれぞれを構成する二つの無段変速装置の伝達効率の差や左右一対の走行装置にかかる負荷に起因する作動油の漏れ(オイルリーク)等に起因して左右一対の走行装置の回転に差が生じ、直進性を確保することが難しいという点で改良の余地があった。特に、自脱式のコンバインは条刈り時の直進性が重要であるため、左右独立式の動力伝達装置を搭載しても直進性の確保が望まれていた。
また、コンバインには、その走行停止時に走行装置を確実に停止できる構成の採用が望まれていた。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、機体の最低地上高を高くでき、旋回時の滑らかさを確保しながら直進性も確保でき、停止状態の維持が可能な農作業機を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するための、本発明に係る農作業機の特徴は、駆動源と、左右一対の走行装置と、前記駆動源の駆動力を前記左右一対の走行装置に伝達する動力伝達装置とを備えた農作業機であって、前記動力伝達装置は、前記駆動源の駆動力が入力される第一油圧ポンプと、第一油圧回路により前記第一油圧ポンプと連結され前記第一油圧ポンプに入力された駆動力を前記左右一対の走行装置のうちの一方の走行装置へ出力する第一出力軸を有する第一油圧モータとを備えた静油圧式の第一無段変速装置と、前記駆動源の駆動力が入力される第二油圧ポンプと、第二油圧回路により前記第二油圧ポンプと連結され前記第二油圧ポンプに入力された駆動力を前記左右一対の走行装置のうちの他方の走行装置へ出力する第二出力軸を有する第二油圧モータとを備えた静油圧式の第二無段変速装置と、前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態と、前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを一致させない非同調駆動状態とに切り替え可能な状態切替機構と、前記第一無段変速装置側及び前記第二無段変速装置側の両方又は一方に配設され、前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを制動可能なパーキングブレーキ機構とを備えている点にある。
動力伝達装置に、第一無段変速装置と第二無段変速装置と左右独立して備えることで、第一無段変速装置と第二無段変速装置を機体フレームのうち左右一対の走行装置のそれぞれに近い位置に配設することができる。
状態切替機構は、機体フレームにおいてある程度自由にレイアウトできるため、第一無段変速装置及び第二無段変速装置が配設されている位置より高い位置に配設すれば、従来のような左右分配式の動力伝達装置に比べて、機体の最低地上高を高くすることができる。
状態切替機構を第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とを一致させない非同調駆動状態にすると、左右一対の走行装置の独立駆動が可能となるため、農作業機の旋回時の滑らかさを確保することができる。
状態切替機構を第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態にすると、左右一対の走行装置の独立駆動が不可能となるため、農作業機の直進性を確保することもできる。
農作業機は、パーキングブレーキ機構により第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とが制動されるため、停止状態が確実に維持される。
パーキングブレーキ機構は、一つ又は複数備えることができる。
例えば、パーキングブレーキ機構が一つである場合は、第一無段変速装置側及び前記第二無段変速装置側の一方に配設される。パーキングブレーキ機構が一つであっても、状態切替機構を第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態としていれば、パーキングブレーキ機構が配設されていない無段変速装置側の出力軸の回転も制動することができる。そのため、農作業機の停止状態が確実に維持される。また、パーキングブレーキ機構が一つであるため、動力伝達装置はシンプルな構造となる。
例えば、パーキングブレーキ機構が二つである場合は、第一無段変速装置側及び第二無段変速装置側の両方に配設することができる。この場合は、二つあるパーキングブレーキ機構のうちいずれか一方のパーキングブレーキ機構が故障しても、状態切替機構を第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態としていれば、他方のパーキングブレーキ機構の制動力により、当該故障したパーキングブレーキ機構が備えられた無段変速装置側の出力軸の回転も制動することができる。パーキングブレーキ機構が二つあると冗長性が高められる。
なお、パーキングブレーキ機構はハンドレバーやフットペダルの操作により作動する湿式多板ブレーキや乾式多板ブレーキ等を採用することができる。
本発明においては、前記状態切替機構と前記パーキングブレーキ機構とを連動可能な制動連動機構を備え、前記制動連動機構は、前記パーキングブレーキ機構が制動動作した際に前記状態切替機構が前記非同調駆動状態であれば前記状態切替機構を前記同調駆動状態に切り替えると共に、前記パーキングブレーキ機構が制動動作した際に前記状態切替機構が前記同調駆動状態であれば前記状態切替機構を前記同調駆動状態に維持すると好適である。
制動連動機構は、パーキングブレーキ機構の制動動作に連動して状態切替機構を同調駆動状態にするために備えられる。パーキングブレーキ機構を制動動作した際には、常に状態切替機構を第一出力軸の回転と第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態とすることで、第一出力軸の回転及び第二出力軸の回転の両方を確実に制動することができる。
本発明においては、前記制動連動機構は、前記状態切替機構が前記非同調駆動状態から前記同調駆動状態に切り替わったときであっても、前記状態切替機構が前記同調駆動状態から前記非同調駆動状態に切り替わったときであっても、前記状態切替機構と前記パーキングブレーキ機構とを連動させないと好適である。
制動連動機構は、状態切替機構の状態に連動してパーキングブレーキ機構が意図せず制動動作してしまうことはない。
本発明においては、前記パーキングブレーキ機構は、前記第一無段変速装置側又は前記第二無段変速装置側のいずれか一方に配設されていると好適である。
パーキングブレーキ機構を、第一無段変速装置側及び第二無段変速装置側の両方に備える場合に比べて部品点数を少なくすることができ、省スペース化も図ることができる。動力伝達装置をシンプルな構造とすることができ、コストダウンも達成することができる。
本発明においては、前記パーキングブレーキ機構は、前記第一油圧モータ又は前記第二油圧モータと、前記状態切替機構との間に配設されていると好適である。
一つのパーキングブレーキ機構を、第一油圧モータと、左右一対の走行装置のうち当該第一油圧モータの第一出力軸からの駆動力が入力される方の走行装置との間に配設した場合は、当該パーキングブレーキ機構から第一出力軸までの距離と、当該パーキングブレーキ機構から第二出力軸までの距離とに大きな差が生じてしまう。このように一方の走行装置の近傍にパーキングブレーキ機構を備える構成は、動力伝達装置の左右の重量バランスに大きな偏りが生じる観点から好ましいものではない。パーキングブレーキ機構を、前記第一油圧モータ又は前記第二油圧モータと、前記状態切替機構との間に配設することで、重量バランスの偏りを減らすことできる。
本発明においては、前記状態切替機構は、前記第一出力軸から出力された駆動力が入力される第一入力軸と、前記第二出力軸から出力された駆動力が入力される第二入力軸とを備え、前記第一入力軸及び前記第二入力軸は、前記第一出力軸及び前記第二出力軸の配設高さより高い位置に配設され、前記パーキングブレーキ機構は、前記第一入力軸上又は前記第二入力軸上に配設されていると好適である。
パーキングブレーキ機構は、左右一対の走行装置のそれぞれの駆動軸より高い位置に配設することができるため、泥がかりによる構成部品の損傷、磨耗及び固着等の虞を低減することができる。
本発明においては、前記第一出力軸の回転を増速して前記第一入力軸に伝達する第一増速機構と、前記第二出力軸の回転を増速して前記第二入力軸に伝達する第二増速機構とを備えていると好適である。
第一増速機構及び第二増速機構によって回転を増速して伝達するため、第一入力軸のトルク及び第二入力軸のトルクは、第一出力軸のトルク及び第二出力軸のトルクよりそれぞれ小さい。第一入力軸の回転及び第二入力軸の回転を制動するために必要なトルクは、第一出力軸の回転及び第二出力軸の回転を制動するために必要なトルクより小さくてよい。従ってパーキングブレーキ機構の小型化を図ることができる。
コンバインの全体図 動力伝達装置の概略説明図 コンバインが直進操作されたときの動力伝達装置の要部説明図 コンバインが旋回操作されたときの動力伝達装置の要部説明図 コンバインが停止操作されたときの動力伝達装置の要部説明図 別実施形態による状態切替機構の説明図 別実施形態による状態切替機構の説明図
以下、本発明に係る農作業機の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、農作業機の一例である自脱型コンバイン1(以下、コンバイン1という。)が示されている。以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」等の相対的な方向を伴う文言は基本的にコンバイン1の前進方向を基準とする。
コンバイン1は、圃場を自走しながら稲や麦の刈取り脱穀をする収穫機であって、機体フレーム9の前部右領域に運転部3を備え、前部左領域に刈取部4を備え、後部左領域に脱穀装置5を備え、後部右領域に穀粒タンク6を備え、下部に左右一対の走行装置の一例である無限軌道式の走行装置2,2を備えている。
運転部3には、コンバイン1の進行方向を操作するための操向操作具(操向レバー3aやハンドル,図3参照)や、コンバイン1の走行方向及び速度を無段階に操作するための変速操作具(変速レバー)や、操縦者の運転席等が備えられている。運転席に搭乗した操縦者が操向レバー3aや変速操作具を操作することで、コンバイン1は直進(前進、後進)、右旋回、左旋回、停止等の各動作をする。
本実施形態では、刈取部4は六条刈りができるように構成されている。従って、コンバイン1は圃場を前進しながら一度に六条の稲や麦を刈取ることができる。往復刈りを行うときは圃場の端で旋回して未刈り地の反対側へ移動して次の六条の稲や麦を刈取ること繰り返す。
図2に示すように、コンバイン1の動力源であるエンジン7は、機体フレーム9のうち運転部3(図示せず)の操縦部の支持フレームの下方であって、左右一対の走行装置2,2の車軸より高い位置にあるエンジン支持フレーム9aに支持されている。
エンジン7の出力軸7aの駆動力は作業伝動装置(図示せず)が備える伝動ベルト等の伝動機構を介して刈取部4や脱穀装置5等に伝動される。
また、エンジン7の出力軸7aの駆動力は、出力軸7aに直結された動力伝達装置10に伝達される。動力伝達装置10は、エンジン7の駆動力を左右一対の走行装置2,2に伝達するための装置であり、左右一対の静油圧式の第一無段変速装置20及び第二無段変速装置30等を備えている。
第一無段変速装置20は、第一油圧ポンプ21と、第一油圧モータ22と、第一油圧ポンプ21と第一油圧モータ22とを連結する第一油圧回路とを備えている。
第一油圧回路は、可撓性の油圧ホース23,24により構成されている。作動油は油圧ホース23,24を通って第一油圧ポンプ21と第一油圧モータ22との間を往来する。
第二無段変速装置30は、第二油圧ポンプ31と、第二油圧モータ32と、第二油圧ポンプ31と第二油圧モータ32とを連結する第二油圧回路とを備えている。
第二油圧回路は、可撓性の油圧ホース33,34により構成されている。作動油は油圧ホース33,34を通って第二油圧ポンプ31と第二油圧モータ32との間を往来する。
第一油圧回路及び第二油圧回路を可撓性の油圧ホース23,24,33,34で構成することで、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ31を、機体フレーム9のうちエンジン7に近い位置にそれぞれ独立して支持し、第一油圧モータ22及び第二油圧モータ32を、機体フレーム9のうち走行装置2に近い位置にそれぞれ独立して支持することができる。
つまり、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ31、並びに第一油圧モータ22及び第二油圧モータ32を、機体フレーム9を構成する複数のフレームに分散して配設することができるため、各フレームは独立した強度を有していればよく、全てのポンプ及びモータを単一の屈強なフレームで支持する構成に比べて、安価に構成することができる。
第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ31はそれぞれエンジン7から入力された駆動力により駆動する可変容量型のポンプである。
第一油圧ポンプ21の斜板の角度及び第二油圧ポンプ31の斜板の角度は、運転部3の操向レバー3aや変速操作具に連係された操向装置及び油圧機構(図示せず)により、それぞれ独立して斜板の角度が中立停止位置、前進側又は後進側に無段階に変更操作され、一定回転あたりの作動油の吐出量が変化される。
なお、当該斜板の角度が、当該斜板が備えられているポンプ軸心に垂直な面に対して大きく傾くほど作動油の吐出量が多くなり、前記ポンプ軸心に垂直な面に対して小さく傾くほど作動油の吐出量が少なくなる。
第一油圧モータ22及び第二油圧モータ32はそれぞれ第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ31から供給される作動油により駆動する定容量型のモータである。当該モータは、第一出力軸25及び第二出力軸35にそれぞれ備えられた斜板の角度が固定されている。第一出力軸25は第一油圧ポンプ21から供給された作動油の吐出量に応じた回転数で回転し、第二出力軸35は第二油圧ポンプ31から供給された作動油の吐出量に応じた回転数で回転する。
上述の構成により、第一無段変速装置20は、エンジン7から入力された駆動力を第一油圧ポンプ21の斜板の角度に応じて無段階に変更し、第一油圧モータ22の第一出力軸25から出力する。
同様に、第二無段変速装置30は、エンジン7から入力された駆動力を第二油圧ポンプ31の斜板の角度に応じて無段階に変更し、第二油圧モータ32の第二出力軸35から出力する。
第一出力軸25は、第一油圧モータ22のモータケースを貫通してコンバイン1の外側及び内側に向けて突出している。
第一出力軸25のうちコンバイン1の外側に向けて突出した部分25aには、減速伝動機構8aを介して走行装置2の起動輪2aが接続されている。
減速伝動機構8aは所定の変速比を有する複数のギヤが組み合わされた例えば遊星歯車機構で構成されており、第一出力軸25の回転は所定の変速比で減速されて走行装置2の起動輪2aに伝達される。
第二出力軸35は、第二油圧モータ32のモータケースを貫通してコンバイン1の外側及び内側に向けて突出している。
第二出力軸35のうちコンバイン1の外側に向けて突出した部分35aには、減速伝動機構8bを介して走行装置2の起動輪2bが接続されている。
減速伝動機構8bは所定の変速比を有する複数のギヤが組み合わされた例えば遊星歯車機構で構成されており、第二出力軸35の回転は所定の変速比で減速されて走行装置2の起動輪2bに伝達される。
第一出力軸25のうちコンバイン1の内側に向けて突出した部分25bと、第二出力軸35のうちコンバイン1の内側に向けて突出した部分35bとの間には状態切替機構50が配設されている。
図3に示すように、状態切替機構50は噛合クラッチで構成されている。
噛合クラッチは、ケーシングの内部に、第一入力軸51の端部に軸心方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不可なように備えられた第一噛合部53と、第二入力軸52の端部に備えられると共に第一噛合部53と噛み合い可能な第二噛合部55と、第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合うように第一噛合部53を第二噛合部55の方向へ付勢する弾性力を発生する弾性体としての圧縮コイルばね54と、第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合わないように第一噛合部53を第二噛合部55から離間する方向へ移動させるための操作ロッド57とを備えている。
状態切替機構50は、第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合うことで、第一連結機構40を介して第一出力軸25の駆動力が入力される第一入力軸51の回転と、第二連結機構41を介して第二出力軸35の駆動力が入力される第二入力軸52の回転とを一致させる、つまり第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを一致させる同調駆動状態となる。また、状態切替機構50は、第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合わないことで、第一入力軸51の回転と第二入力軸52の回転とを一致させない、つまり第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを一致させない非同調駆動状態となる。
操作ロッド57は、運転部3の操向レバー3aの操作に連動して作動する油圧機構70により操作される。
油圧機構70は、エンジン7の駆動力により駆動する油圧ポンプ71と、複動型の油圧シリンダ72と、油圧シリンダ72の各シリンダ室につながる油路73と、油路73に備えられ油圧ポンプ71から供給される圧油の方向を切り替える方向制御弁74と、方向制御弁74を制御する弁切替機構75と、弁切替機構75を制御する電気制御ユニット76等とを備えて構成されている。電気制御ユニット76は操向装置を構成する。
方向制御弁74としては、4ポート単動式の弁機構が用いられている。後述する弁切替機構75の操作レバー78の揺動によって、方向制御弁74のスプールが押し込み操作されると、油圧ポンプ71の圧油が油圧シリンダ72のピストンロッド77の引退側に供給される。操作レバー78によるスプールの押し込みが操作が終了すると、方向制御弁74のスプールがスプリングの弾性力によって自動的に元の位置へ復帰して、油圧ポンプ71の圧油が油圧シリンダ72のピストンロッド77の進出側に供給される。
弁切替機構75は、電気制御ユニット76により制御されるアクチュエータ79と、アクチュエータ79の操作ロッド80の進退により直立又は傾倒させられる操作レバー78とを備えて構成されている。
アクチュエータ79は電気制御ユニット76と電気的に連結されている。また、アクチュエータ79は操作ロッド80を備えている。電気制御ユニット76から送信される制御信号により、操作ロッド80の進退が制御される。
アクチュエータ79の操作ロッド80が進出すると、操作ロッド80の先端部が操作レバー78を傾倒させ、スプールが押し込まれる。
アクチュエータ79の操作ロッド80が引退すると、スプールはスプリングの弾性力で元の位置へ復帰する。このとき操作レバー78は直立に復帰する。
このように、電気制御ユニット76がアクチュエータ79を制御することで、方向制御弁74が制御され、油圧シリンダ72のピストンロッド77が進退制御される。
油圧シリンダ72のピストンロッド77は操作ロッド57に当接可能に配設してある。油圧シリンダ72のピストンロッド77が進出したときには、操作ロッド57を押圧し、操作ロッド57が傾倒することにより第一噛合部53が第二噛合部55から離間する。逆に、油圧シリンダ72のピストンロッド77が引退したときには、操作ロッド57から離間して、圧縮コイルばね54の弾性力により第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合う。このとき操作ロッド57は直立する。
図3に示すように、運転部3の操向レバー3aには、ポテンショメータ81が連結されている。
ポテンショメータ81は電気制御ユニット76と電気的に接続されている。
操向レバー3aを左又は右に旋回操作すると、ポテンショメータ81は電気信号を電気制御ユニット76に送信する。
電気制御ユニット76は、ポテンショメータ81から送信された電気信号を受信すると、操向レバー3aの旋回操作の変位レベルが所定の閾値Th以上であるか否かを識別する。
電気制御ユニット76は、変位レベルが所定の閾値Th未満であると識別した場合には、操向レバー3aは旋回操作されていないと判断する。
このとき、アクチュエータ79の操作ロッド80は進出側に制御され、方向制御弁74は油圧ポンプ71の圧油を油圧シリンダ72のピストンロッド77の引退側のシリンダ室に供給させる。
これにより操作ロッド57は直立状態となり、圧縮コイルばね54の弾性力により第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合い、状態切替機構50は同調駆動状態となる。
電気制御ユニット76は、変位レベルが所定の閾値Th以上であると識別した場合には、操向レバー3aが旋回操作されたと判断する。
このとき、アクチュエータ79の操作ロッド80は引退側に制御され、方向制御弁74は油圧ポンプ71の圧油を、油圧シリンダ72のピストンロッド77の進出側のシリンダ室に供給させる。
これにより操作ロッド57は傾倒状態となり、第一噛合部53が第二噛合部55から離間する方向へ移動させられ、状態切替機構50は非同調駆動状態となる。
上述のように、状態切替機構50は、運転部3の操向レバー3aの操作に連動し、自動で同調駆動状態と非同調駆動状態とがスムーズに切り替えられるため、操縦者が切り替える手間を省略することができる。
図2に示すように、第一連結機構40は、第一出力軸25と第一伝達軸43aとを軸心方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不可なように連結する第一連結部42と、第一伝達軸43aに備えられ第一伝達軸43aと共に回転する第一傘歯車43bと、第一傘歯車43bと噛み合って第二伝達軸44aに駆動力を伝達する第二傘歯車44bと、第二伝達軸44aと第三伝達軸46aとを軸心方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不可なように連結する第二連結部45と、第三伝達軸46aに備えられ第三伝達軸46aと共に回転する第三傘歯車46bと、第三傘歯車46bと噛み合って第四伝達軸47aに駆動力を伝達する第四傘歯車47bと、第四伝達軸47aと第一入力軸51とを軸心方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不可なように連結する第三連結部48とを備えている。
第一連結機構40が備える第一連結部42と第二連結部45と第三連結部48とにより、第一油圧モータ22と状態切替機構50との相対的な移動が許容される。
また、第一傘歯車43bと第二傘歯車44bと第三伝達軸46aと第四傘歯車47bとはそれぞれの歯数が第一出力軸25の回転を増速して第一入力軸51に伝達可能に設定されている。本実施形態では、第一連結機構40が本発明における「第一増速機構」に相当し、第一連結機構40により第一出力軸25の回転数は増加され、すなわちトルクは減少されて第一入力軸51に伝達される。
なお、第二連結機構41も第一連結機構40と同様に構成されており、第二油圧モータ32と状態切替機構50との相対的な移動が許容される。本実施形態では、第二連結機構41が本発明における「第二増速機構」に相当し、第二連結機構41を構成する各部について、第一連結機構40を構成する各部と対応するものに同じ符号を付して説明を省略する。
第一入力軸51及び第二入力軸52のトルクは、第一増速機構である第一連結機構40の増速作用と、第二増速機構である第二連結機構41の増速作用により、第一出力軸25及び第二出力軸35のトルクより低トルクとなる。
例えば、第一出力軸25に第一噛合部53を直接的に備え、第二出力軸35に第二噛合部55を直接的に備え、第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを、第一噛合部53と第二噛合部55とで直接同調させる場合は、第一噛合部53及び第二噛合部55は高トルクに耐え得る高価な材料で構成する必要がある。これに対して、第一出力軸25及び第二出力軸35のトルクより低トルクの第一入力軸51と第二入力軸52の回転とを同調させる構成としたことで、第一噛合部53及び第二噛合部55は安価な材料で構成することができる。
なお、第一出力軸25及び第二出力軸35の回転数差は、第一無段変速装置20と第二無段変速装置30の伝達効率の差や、左右一対の走行装置2,2にかかる負荷に応じた作動油の漏れ(オイルリーク)等に起因する。
上述したように、第一無段変速装置20及び第二無段変速装置30や、左右一対の走行装置2,2を同一の構成とすることで、第一出力軸25及び第二出力軸35の回転数差を極力小さくすることができる。
また、図2に示すように、状態切替機構50は、第一油圧モータ22及び第二油圧モータ32が支持されている位置よりも高い位置であって、機体フレーム9のうち状態切替機構50が支持されている箇所と、機体フレーム9のうち第一油圧モータ22と第二油圧モータ32が支持されている箇所とは剛連結されていない箇所に支持されている。
従来のような左右分配式の動力伝達装置を採用するコンバインは、当該動力伝達装置が機体下部中央に張り出し、機体の最低地上高を高くすることが困難であるのに対して、当該コンバイン1は動力伝達装置10を構成する第一油圧ポンプ21と第二油圧ポンプ31と状態切替機構50とを、機体フレーム9のうち比較的高い位置に配設することができるため、その分機体下部中央の最低地上高を高くすることができる。
動力伝達装置10はさらに、図2に示すようにパーキングブレーキ機構82を備えている。
本実施形態では、パーキングブレーキ機構82は第一入力軸51上に配設されている。状態切替機構50とパーキングブレーキ機構82とは同じ機体フレーム9上に隣接して配設されている。
状態切替機構50及びパーキングブレーキ機構82は、左右一対の走行装置2,2のそれぞれの駆動軸である第一出力軸25及び第二出力軸35の配設高さより高い位置に配設することができるため、泥がかりによる構成部品の損傷、磨耗及び固着等の虞が低減されている。
パーキングブレーキ機構82としては、第一入力軸51に配設されたブレーキローターをブレーキパッドで挟持して制動力を得る湿式多板式又は乾式多板式のディスクブレーキ機構や、第一入力軸51と同軸に配設された円筒形のドラムにその内側又は外側からブレーキシューを押し付けて制動力を得るドラムブレーキ機構などが好ましく採用され、第一入力軸51の回転を摩擦力により制動する。
このブレーキパッドやブレーキシューは、運転部3に備えられたハンドレバーやフットペダル3b(図3参照)とワイヤ等を介して機械的に接続されており、ハンドレバーやフットペダルの操作により作動する。
パーキングブレーキ機構82が、運転部3に備えられたフットペダル3bによって作動する構成を例に説明する。フットペダル3bは例えばラッチ式のペダルで構成されており、操縦者がフットペダル3bを踏み込むとパーキングブレーキ機構82が第一入力軸51の回転を摩擦力により制動する。操縦者がもう一度フットペダル3bを踏み込むと制動が解除される。
動力伝達装置10はさらに、図3に示すように状態切替機構50とパーキングブレーキ機構82とを連動可能な制動連動機構83を備えている。
制動連動機構83は、フットペダル3bとワイヤ等を介して機械的に接続された連動レバー84と、連動レバー84から弁切替機構75の操作レバー78に向けて突出した連動ロッド85とを備えて構成されている。連動レバー84の連動ロッド85は、アクチュエータ79の操作ロッド80が弁切替機構75の操作レバー78を傾倒させていない状態であっても、操作レバー78を傾倒させることができる。
従って、コンバイン1の旋回操作状態、つまり状態切替機構50が非同調駆動状態であったとしても、操縦者がフットペダル3bを踏み込むとパーキングブレーキ機構82が第一入力軸51の回転を摩擦力により制動すると共に、連動レバー84の連動ロッド85が弁切替機構75の操作レバー78に当接し操作レバー78を傾倒させる。これにより上述のように方向制御弁74が切り替えられ油圧シリンダ72のピストンロッド77が引退し操作ロッド57が直立して、第一噛合部53と第二噛合部55とが噛み合わされ、状態切替機構50の状態は強制的に同調駆動状態となる。従って、パーキングブレーキ機構82によって、第一出力軸25の回転が制動される際、第二出力軸35の回転も制動されることとなる。
なお、コンバイン1が直進操作状態、つまり状態切替機構50が同調駆動状態であるときに、パーキングブレーキ機構82によるブレーキを解除しても、連動レバー84の連動ロッド85が操作レバー78から離間するだけである。そのため、アクチュエータ79の操作ロッド80により操作レバー78を操作しない限り、ブレーキ解除に連動して状態切替機構50の状態が同調駆動状態から非同調駆動状態に変更されることはない。
また、パーキングブレーキ機構82によるブレーキを解除している状態で、コンバイン1を直進から旋回へ操作しても、旋回から直進へ操作しても、つまりアクチュエータ79の操作ロッド80により操作レバー78を操作して状態切替機構50の状態を切り替えたとしても、連動レバー84の連動ロッド85には何ら影響を与えず、パーキングブレーキ機構82が操作ロッド80に連動して作動させられることはない。
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり上記の記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
例えば、状態切替機構50は、図6に示すような多板クラッチで構成してもよい。
多板クラッチは、ケーシングの内部に、第一入力軸51の端部に、軸心方向に相対移動可能かつ周方向に相対回転不可なように備えられた円筒部の内周に、軸心方向に摺動可能に配設された摩擦プレート58と、第二入力軸52の周囲に軸心方向に摺動可能に配設された摩擦プレート59とが備えられると共に、摩擦プレート58と摩擦プレート59とを圧接する方向にピストン62を進出させる油圧シリンダ60と、油圧シリンダ60のピストン62による圧接を解除する方向へ弾性力を発生する弾性体としての圧縮コイルばね56とを備えている。
摩擦プレート58と摩擦プレート59の接続状態と非接続状態は、油圧シリンダ60のピストン62の押圧力の大きさと、圧縮コイルばね56の弾性力の大きさとの関係により決定される。ピストン62の押圧力を弾性力より大きくすれば、摩擦プレート58と摩擦プレート59とは圧接される。ピストン62の押圧力を徐々に弱めることで摩擦プレート58と摩擦プレート59とは徐々にすべり始め、やがてすべりが大きくなり、最終的に摩擦プレート58と摩擦プレート59は接続状態から非接続状態へと移行する。
非接続状態であるときに、ピストン62の押圧力を徐々に強めると、摩擦プレート58と摩擦プレート59は非接続状態から接続状態へと移行し、徐々にすべりが小さくなり、最終的に摩擦プレート58と摩擦プレート59はすべらないように圧接される。
このように、摩擦プレート58と摩擦プレート59のすべりを利用することで、同調駆動状態と非同調駆動状態との移行を徐々に行うことができる。
多板クラッチは、同調駆動状態の維持時、すなわち直進時に摩擦プレート58と摩擦プレート59にすべりが生じないようにするために強い圧接力を必要とする。この強い圧接力を圧縮コイルばねの弾性力により得る構成とした場合、同調駆動状態から非同調駆動状態への移行時及び非同調駆動状態の維持時、すなわち旋回時に、その圧縮コイルばねの強い弾性力に打ち勝つように、強い押圧力を発生可能な油圧機構が必要となってしまう。
多板クラッチを、同調駆動状態の維持時、すなわち直進時に、ピストン62の押圧力を利用し、同調駆動状態から非同調駆動状態への移行時及び非同調駆動状態の維持時、すなわち旋回時に、圧縮コイルばね56の弾性力を利用する構成としたことにより、圧縮コイルばね56は、押圧力が下がっている状態のときに機能する程度の弱い弾性力のものでよく、そして、油圧シリンダ60もその弱い弾性力に打ち勝つ程度の押圧力を発揮できるものでよい。
なお、油圧シリンダ60は、運転部3の操向レバー3aの操作に連動して作動する油圧機構により操作される。以下の油圧機構についての説明のうち、上述の油圧機構70と同様の構成については同じ符号を付し詳細な説明を省略する。
油圧機構70は、エンジン7の駆動力により駆動する油圧ポンプ71と、状態切替機構50が備える単動型の油圧シリンダ60と、油圧シリンダ60のシリンダ室につながる油路63と、油路63に備えられ油圧ポンプ61から供給される圧油の方向を切り替える方向制御弁64と、方向制御弁64を制御する弁切替機構75と、弁切替機構75を制御する電気制御ユニット76等とで構成されている。
方向制御弁64は3ポート単動式の弁機構であって、弁切替機構75の操作レバー78の揺動によりスプールを押し込み操作すると油圧ポンプ71の圧油を油圧シリンダ60のシリンダ室に供給してピストン62を進出させ、操作力を取り去るとスプリングの弾性力でスプールが自動的に元の位置へ復帰して、圧縮コイルばね56がピストン62を引退させる弾性力により油圧シリンダ60のシリンダ室内の圧油を排出するように構成されている。
電気制御ユニット76がアクチュエータ79を制御することで方向制御弁64が制御され、油圧シリンダ60のピストン62が進退制御される。
油圧シリンダ60のピストン62が進出したときは、摩擦プレート58と摩擦プレート59とが圧接させられ、状態切替機構50は同調駆動状態となる。
逆に油圧シリンダ60のピストン62が引退したときは、摩擦プレート58と摩擦プレート59との圧接が解除させられ、状態切替機構50は非同調駆動状態となる。
この実施形態においても、状態切替機構50は運転部3の操向レバー3aの操作に連動し、自動で同調駆動状態と非同調駆動状態とがスムーズに切り替えられるため、操縦者が切り替える手間を省略することができる。
またこの実施形態においても、パーキングブレーキ機構82は第一入力軸51上に配設されている。そして、動力伝達装置10は状態切替機構50とパーキングブレーキ機構82とを連動可能な制動連動機構83を備えている。
従って、操縦者がフットペダル3bを踏み込むとパーキングブレーキ機構82が第一入力軸51の回転を摩擦力により制動すると共に、連動レバー84の連動ロッド85が弁切替機構75の操作レバー78に当接し操作レバー78を傾倒させる。これにより上述のように方向制御弁64が切り替えられ、油圧シリンダ60のピストン62が進出し、摩擦プレート58と摩擦プレート59とが圧接させられ、状態切替機構50は同調駆動状態となる。
このように、連動レバー84の連動ロッド85は、アクチュエータ79の操作ロッド80が弁切替機構75の操作レバー78を傾倒させていない状態であっても操作レバー78を傾倒させることができる。
従って、パーキングブレーキ機構82によって第一出力軸25の回転が制動される際、第二出力軸35の回転も制動されることとなる。
パーキングブレーキ機構82によるブレーキを解除しても連動レバー84の連動ロッド85が操作レバー78から離間するだけであるため、アクチュエータ79の操作ロッド80により操作レバー78を操作しない限り、状態切替機構50の状態が同調駆動状態から非同調駆動状態へとブレーキ解除に連動して変更されることはない。
また、パーキングブレーキ機構82によるブレーキを解除している状態で、アクチュエータ79の操作ロッド80により操作レバー78を操作して状態切替機構50の状態を切り替えたとしても、連動レバー84の連動ロッド85には何ら影響を与えず、パーキングブレーキ機構82が操作ロッド80に連動して作動させられることはない。
また、状態切替機構50は、図7に示すように、噛合クラッチと多板クラッチを第一出力軸25と第二出力軸35の間に並列的に備えた構成であってもよい。
噛合クラッチは、基本的には図3に示した噛合クラッチと同様の構成であり、多板クラッチは、基本的には図6に示した多板クラッチと同様の構成である。噛合クラッチには図3に示す油圧機構70が接続され、多板クラッチには図6に示す油圧機構70が接続されている。
なお本実施形態では、噛合クラッチの第一噛合部53と、多板クラッチの摩擦プレート58とが一体的に回転するように接続され、噛合クラッチの第二噛合部55と、多板クラッチの第二入力軸52とが一体的に回転するように接続されている。
このような構成によると、噛合クラッチにより第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転の確実な一致が実現でき、多板クラッチにより摩擦プレート58と摩擦プレート59のすべりを利用することで、同調駆動状態と非同調駆動状態との移行を徐々に行うことができる。
さらに、状態切替機構50は、図3に示すような噛合クラッチと、図4に示す多板クラッチとを、第一出力軸25と第二出力軸35の間に直列的に備えた構成であってもよい。この構成によると、噛合クラッチによる切り替えか、多板クラッチによる切り替えかを選択することができる。
さらに、状態切替機構50は、流体クラッチ、遠心クラッチ、電磁クラッチ等の公知のクラッチや自動車等に用いられる差動装置を応用してもよい。
また、第一連結機構40による第一出力軸25から第一入力軸51への駆動力の伝達は、第一傘歯車43b等の歯車の噛み合いによる構成に限らず、例えば、第一伝達軸43aに設けたスプロケットと第四伝達軸47aに設けたスプロケットとに配設した動力伝達ベルトや動力伝達チェーンにより第一出力軸25から第一入力軸51へ駆動力を伝達するように構成してもよい。第二連結機構41も同様である。
また、第一無段変速装置20は、第一油圧ポンプ21と第一油圧モータ22とが同一のケーシング内に一体的に備えられ、第一油圧回路として同ケーシングに配設された油路により第一油圧ポンプ21と第一油圧モータ22が接続される構成であってもよい。第二無段変速装置30も同様である。
さらに、上述の実施形態では、状態切替機構50が運転部3の操向レバー3aの操作に連動して作動する油圧機構70により操作される例について説明した。しかし、このような実施形態に限定されない。運転部3に状態切替機構50を同調駆動状態又は非同調駆動状態に手動で切り替えるための機構を備えてあってもよい。
このような場合であっても、動力伝達装置10は、上述のように状態切替機構50とパーキングブレーキ機構82とを連動可能な制動連動機構83を採用することが可能である。
上述のいずれの実施形態においても、制動連動機構83は、パーキングブレーキ機構82が制動動作した際に状態切替機構50が非同調駆動状態であれば、状態切替機構50を同調駆動状態に切り替えると共に、パーキングブレーキ機構82が制動動作した際に状態切替機構50が同調駆動状態であれば、状態切替機構50を同調駆動状態に維持する。
また、制動連動機構83は、状態切替機構50が非同調駆動状態から同調駆動状態に切り替わったときであっても、状態切替機構50が同調駆動状態から非同調駆動状態に切り替わったときであっても、状態切替機構50とパーキングブレーキ機構82とを連動させない。
なお、パーキングブレーキ機構82は、第一油圧モータ22又は第二油圧モータ32と、状態切替機構50との間に配設されていることが好ましい。
これは、第一連結機構40及び第二連結機構41による増速作用により、第一入力軸51及び第二入力軸52のトルクは、第一出力軸25及び第二出力軸35のトルクに比べて小さくなっているからである。従って、第一入力軸51及び第二入力軸52を制動するのに必要なトルクは、第一出力軸25及び第二出力軸35を制動するのに必要なトルクより小さくてよい。従って、パーキングブレーキ機構82の小型化を図ることができる。
また、一つのパーキングブレーキ機構82を、第一油圧モータ22と、左右一対の走行装置2,2のうち第一油圧モータ22の第一出力軸25からの駆動力が入力される方の走行装置2との間に配設した場合は、当該パーキングブレーキ機構82から第一出力軸25までの距離と、当該パーキングブレーキ機構82から第二出力軸35までの距離とに大きな差が生じてしまう。このように一方の走行装置2の近傍にパーキングブレーキ機構82を備える構成は、動力伝達装置10の左右の重量バランスに大きな偏りが生じる観点から好ましいものではない。パーキングブレーキ機構82を、第一油圧モータ22又は第二油圧モータ32と、状態切替機構50との間に配設することで、重量バランスの偏りを減らすことできる。
なお、パーキングブレーキ機構82は、第一無段変速装置20側又は第二無段変速装置30側のいずれか一方に配設されていればよい。
上述の実施形態では、パーキングブレーキ機構82は、第一入力軸51のみに配設されていたが、パーキングブレーキ機構82は、第二入力軸52のみに配設されていてもよい。
パーキングブレーキ機構82を、第一無段変速装置20側及び第二無段変速装置30側の両方に備える場合に比べて部品点数を少なくすることができ、省スペース化も図ることができる。動力伝達装置10をシンプルな構造とすることができ、コストダウンも達成することができる。
パーキングブレーキ機構82が、第一無段変速装置20側及び第二無段変速装置30側の一方に配設されている場合は、状態切替機構50を第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とを一致させる同調駆動状態としていれば、パーキングブレーキ機構82が配設されていない側の出力軸の回転も制動することができる。
なお、パーキングブレーキ機構82は、第一入力軸51及び第二入力軸52の両方に配設されていてもよい。パーキングブレーキ機構82が、第一無段変速装置20側及び第二無段変速装置30側の両方に配設されている場合は、いずれか一方のパーキングブレーキ機構82,82が故障しても、状態切替機構50を同調駆動状とすれば、他方のパーキングブレーキ機構82の制動力により、当該故障したパーキングブレーキ機構82側の出力軸の回転も制動することができる。このようにパーキングブレーキ機構82が二つあると冗長性が高められる。
以上のように動力伝達装置10にパーキングブレーキ機構82を備えることで、コンバイン1は、パーキングブレーキ機構82により第一出力軸25の回転と第二出力軸35の回転とが制動されるため、停止状態が確実に維持される。
本発明に係る農作業機は、自脱型のコンバインに限らず普通型のコンバインであってもよい。また、コンバインに限らずその他の収穫機であってもよい。さらに、収穫機に限らず、田植機、トラクタ等のその他の農作業機であってもよい。
1 :コンバイン
2 :走行装置
2a :起動輪
2b :起動輪
3 :運転部
3a :操向操作具
3b :フットペダル
4 :刈取部
5 :脱穀装置
6 :穀粒タンク
7 :エンジン
7a :出力軸
8a :減速伝動機構
8b :減速伝動機構
9 :機体フレーム
9a :エンジン支持フレーム部
10 :動力伝達装置
20 :第一無段変速装置
21 :第一油圧ポンプ
22 :第一油圧モータ
23 :油圧ホース
24 :油圧ホース
25 :第一出力軸
30 :第二無段変速装置
31 :第二油圧ポンプ
32 :第二油圧モータ
33 :油圧ホース
34 :油圧ホース
35 :第二出力軸
40 :第一連結機構(第一増速機構)
41 :第二連結機構(第二増速機構)
42 :第一連結部
43a:第一伝達軸
43b:第一傘歯車
44a:第二伝達軸
44b:第二傘歯車
45 :第二連結部
46a:第三伝達軸
46b:第三傘歯車
47a:第四伝達軸
47b:第四傘歯車
48 :第三連結部
50 :状態切替機構
51 :第一入力軸
52 :第二入力軸
53 :第一噛合部
54 :圧縮コイルばね
55 :第二噛合部
56 :圧縮コイルばね
57 :操作ロッド
58 :摩擦プレート
59 :摩擦プレート
60 :油圧シリンダ
61 :油圧ポンプ
62 :ピストン
63 :油路
64 :方向制御弁
70 :油圧機構
71 :油圧ポンプ
72 :油圧シリンダ
73 :油路
74 :方向制御弁
75 :弁切替機構
76 :電気制御ユニット
77 :ピストンロッド
78 :操作レバー
79 :アクチュエータ
80 :操作ロッド
81 :ポテンショメータ
82 :パーキングブレーキ機構
83 :制動連動機構
84 :連動レバー
85 :連動ロッド
Th :閾値

Claims (7)

  1. 駆動源と、左右一対の走行装置と、前記駆動源の駆動力を前記左右一対の走行装置に伝達する動力伝達装置とを備えた農作業機であって、
    前記動力伝達装置は、
    前記駆動源の駆動力が入力される第一油圧ポンプと、第一油圧回路により前記第一油圧ポンプと連結され前記第一油圧ポンプに入力された駆動力を前記左右一対の走行装置のうちの一方の走行装置へ出力する第一出力軸を有する第一油圧モータとを備えた静油圧式の第一無段変速装置と、
    前記駆動源の駆動力が入力される第二油圧ポンプと、第二油圧回路により前記第二油圧ポンプと連結され前記第二油圧ポンプに入力された駆動力を前記左右一対の走行装置のうちの他方の走行装置へ出力する第二出力軸を有する第二油圧モータとを備えた静油圧式の第二無段変速装置と、
    前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを一致させる同調駆動状態と、前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを一致させない非同調駆動状態とに切り替え可能な状態切替機構と、
    前記第一無段変速装置側及び前記第二無段変速装置側の両方又は一方に配設され、前記第一出力軸の回転と前記第二出力軸の回転とを制動可能なパーキングブレーキ機構とを備えている農作業機。
  2. 前記状態切替機構と前記パーキングブレーキ機構とを連動可能な制動連動機構を備え、
    前記制動連動機構は、前記パーキングブレーキ機構が制動動作した際に前記状態切替機構が前記非同調駆動状態であれば前記状態切替機構を前記同調駆動状態に切り替えると共に、前記パーキングブレーキ機構が制動動作した際に前記状態切替機構が前記同調駆動状態であれば前記状態切替機構を前記同調駆動状態に維持する請求項1に記載の農作業機。
  3. 前記制動連動機構は、前記状態切替機構が前記非同調駆動状態から前記同調駆動状態に切り替わったときであっても、前記状態切替機構が前記同調駆動状態から前記非同調駆動状態に切り替わったときであっても、前記状態切替機構と前記パーキングブレーキ機構とを連動させない請求項2に記載の農作業機。
  4. 前記パーキングブレーキ機構は、前記第一無段変速装置側又は前記第二無段変速装置側のいずれか一方に配設されている請求項1から3のいずれか一項に記載の農作業機。
  5. 前記パーキングブレーキ機構は、前記第一油圧モータ又は前記第二油圧モータと、前記状態切替機構との間に配設されている請求項4に記載の農作業機。
  6. 前記状態切替機構は、前記第一出力軸から出力された駆動力が入力される第一入力軸と、前記第二出力軸から出力された駆動力が入力される第二入力軸とを備え、
    前記第一入力軸及び前記第二入力軸は、前記第一出力軸及び前記第二出力軸の配設高さより高い位置に配設され、
    前記パーキングブレーキ機構は、前記第一入力軸上又は前記第二入力軸上に配設されている請求項1から5のいずれか一項に記載の農作業機。
  7. 前記第一出力軸の回転を増速して前記第一入力軸に伝達する第一増速機構と、前記第二出力軸の回転を増速して前記第二入力軸に伝達する第二増速機構とを備えている請求項6に記載の農作業機。
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