JP2017055622A - スリップリング機構 - Google Patents

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修士 湯本
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Abstract

【課題】スリップリングに対するブラシの浮きを防止し、ブラシの寿命を長くするスリップリング機構を提供する。【解決手段】スリップリング機構100は、第一層10aと、電気抵抗率が大きい第二層10bとを有するブラシ10と、スリップリング20と、付勢ばね30とを備え、ブラシ10は、スリップリング20に摩耗量が小さい時に接触する第一接触部13aと、摩耗量が多い時に接触する第二接触部13bとを有し、第一接触部13aの第一接触面14aは第二接触部13bの第二接触面14bよりも面積が大きく、第一接触面14aを占める第二層10bは第一層10aよりも面積が大きく、第二接触面14bを占める第一層10aは第二層10bよりも面積が大きい。【選択図】図1

Description

この発明は、スリップリング機構に関する。
特許文献1には、回転電機の回転子に設けられたスリップリング(整流子)と、ブラシスプリングによってスリップリングに対して押圧されるとともにスリップリングに電力を供給するブラシとが記載されている。ここで、ブラシが摩耗すると、ブラシを直接押圧するブラシスプリングの端部は、摩耗してブラシの厚みが減った分だけ、ブラシをスリップリングに押圧する方向に移動する。すなわち、ブラシの摩耗に伴ってブラシスプリングも変形し、それとともにブラシスプリングの弾性力、すなわちブラシをスリップリングに対して押圧する力も徐々に低下していく。そして、ブラシの摩耗が進行した結果、ブラシスプリングがブラシをスリップリングに押圧する際の面圧が一定値以下となると、ブラシがスリップリングに対して浮いてしまう可能性が出てくる。
一方、特許文献2に記載されているブラシは、摩耗する方向に沿って徐々に断面積が変化するように形成されているため、摩耗するに従ってブラシとスリップリングとが接触する面積も徐々に減少するようになっている。これにより、ブラシが摩耗した場合であっても、ブラシとスリップリングとの間の面圧は一定に保たれる。
特開2002−204553号公報 実開昭61−176963号公報
しかしながら、特許文献2に記載されるブラシは単一の材料によって形成されているため、ブラシとスリップリングとの接触面積が低下すると、ブラシ側の接触面の電気抵抗が大きくなってしまう。そして、ブラシ側の接触面の電気抵抗が大きくなるとブラシが発熱するため、ブラシの摩耗速度が速くなり、寿命が短くなってしまうという問題があった。
この発明は、このような問題を解決するためになされ、ブラシの摩耗が進行した場合でも、スリップリングに対するブラシの浮きを防止することができるとともに、ブラシの寿命を長くすることができるスリップリング機構を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、この発明に係るスリップリング機構は、第一層と第一層よりも電気抵抗率が大きい材料からなる第二層とを有するブラシと、ブラシに相対回転可能に接触するスリップリングと、ブラシをスリップリングに対して押圧する付勢ばねとを備え、ブラシは、ブラシの摩耗量が所定摩耗量以下である場合にスリップリングに接触可能な第一接触面が形成される第一接触部と、ブラシの摩耗量が所定摩耗量より多い場合にスリップリングに接触可能な第二接触面が形成される第二接触部とを有し、第一接触面の面積は第二接触面の面積よりも大きく、第一接触面及び第二接触面は、各々、第一層及び第二層を含み、第一接触面を占める第二層の面積は、第一接触面を占める第一層の面積よりも大きく、第二接触面を占める第一層の面積は、第二接触面を占める第二層の面積よりも大きい。
これにより、ブラシの摩耗に伴うブラシのスリップリングに対する面圧の低下及び接触面の電気抵抗の上昇が抑制される。
また、この発明に係るスリップリング機構のブラシの第一接触面及び第二接触面は、各々、積層された第一層と第二層とを含むように構成され、第一接触部に設けられる第一層には第一スリットが形成され、第二接触部に設けられる第二層には第二スリットが形成されてもよい。
さらに、第一層と第二層とが積層される方向において、ブラシの両端部には第一層が配置されてもよい。
この発明に係るスリップリング機構によれば、ブラシの摩耗が進行した場合でも、スリップリングに対するブラシの浮きを防止することができるとともに、ブラシの寿命を長くすることができる。
この発明の実施の形態に係るスリップリング機構の概略を示す模式図である。 図1に示すスリップリング機構のブラシの構造を示す図である。 図2に示すブラシの構造の一部を拡大した図である。 図1に示すスリップリング機構のブラシが図2の状態から摩耗が進行した状態を示す図である。 図5(i)は、図1に示すスリップリング機構のブラシの第一接触部の第一接触面の構成を示す図であり、図5(ii)は第二接触部の第二接触面を示す図である。
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に示すように、回転電機の本体(図示せず)に回転可能に接続されたシャフト21には、略円筒形状のスリップリング20が設けられる。そして、スリップリング20には、回転電機の本体に回転不能に固定されたブラシ10が接触する。すなわち、スリップリング20はブラシ10に相対回転可能に接触する。ここで、ブラシ10は、シャフト21の延長方向における幅の長さがLaであり、奥行きの長さがWbである略直方体をなしている。また、ブラシ10は、渦巻形状の付勢ばね30によってスリップリング20に対して力Fで押圧される。付勢ばね30は、ブラシ10が摩耗するに従い、ブラシ10をスリップリング20に押し付ける方向に変形しつつ、徐々に弾性力すなわち押圧力Fが小さくなっていく。
ここで、ブラシ10とスリップリング20と付勢ばね30とはスリップリング機構100を構成する。
また、以下の説明において、シャフト21が延長する方向をX方向とする。また、シャフト21の径方向であって、ブラシ10に対する力Fの作用方向と直交する方向をY方向とする。また、ブラシ10に対する力Fの作用方向をZ方向とするとともに、力Fが作用する向きをZ方向正側とし、Z方向正側と反対の向きをZ方向負側とする。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。
次に、図1〜3を参考に、ブラシ10の構造について説明する。なお、ブラシ10はZ方向負側に向かって摩耗が進行するものとする。
図2に示すように、ブラシ10のZ方向正側の部分は第一接触部13aを構成している。ブラシ10の摩耗量が所定の摩耗量G未満である時には、ブラシ10の第一接触部13aがスリップリング20に接触する。
なお、ブラシ10の所定の摩耗量Gとは、付勢ばね30によってブラシ10が押圧される力Fが所定の押圧力f1[N]を越える範囲での最大限の摩耗量であるものとする。また、所定の押圧力f1[N]とは、従来の構造のブラシがスリップリング20に対して浮くおそれのない最低限の押圧力Fの値である。すなわち、付勢ばね30による押圧力Fが所定の押圧力f1[N]以下ならば、従来の構造のブラシであればスリップリング20に対して浮き上がり、ブラシとスリップリング20との接触が不安定になる可能性がある。
また、ブラシ10の第一接触部13aに隣接して、Z方向負側の部分は第二接触部13bを構成する。ブラシ10の第二接触部13bは、ブラシ10の摩耗が進行して第一接触部13aが摩滅した後に、スリップリング20に接触する部分である。すなわち、ブラシ10の摩耗量が所定の摩耗量G以上となった時は、ブラシ10の第二接触部13bがスリップリング20に接触する。また、ブラシ10の第二接触部13bがスリップリング20に接触する間は、付勢ばね30がブラシ10を押圧する力Fが所定の押圧力f1[N]以下となるものとする。
また、ブラシ10は、各々X方向に沿って交互に積層する略板状の4枚の第一層10aと、略板状の3枚の第二層10bとを有する。ここで、図3に示すように、第一層10aの幅の長さは、各々W1である。また、第二層10bの幅の長さは、各々W2である。第一層10aの幅W1は、第二層10bの幅W2よりも短い。
また、第一層10aは電気抵抗率E1の材料によって形成されており、第二層10bは電気抵抗率E2の材料によって形成されている。第一層10aの電気抵抗率E1は、第二層10bの電気抵抗率E2よりも低い。
さらにまた、ブラシ10のX方向における両端面には、各々、第一層10aが配置されている。
なお、ブラシ10の第一層10a及び第二層10bの材質としては、Cu,Ag,Au等の金属、カーボン、黒鉛などが用いられる。
さらに、図1〜3に示すように、第一層10aの各々には、第一接触部13aに該当する部分に、Y方向に延びて貫通する第一スリット11が形成される。第一スリット11は、スリップリング20の周方向に沿ってY方向を円弧形状に延びており、ブロック10のY方向の両側面に開口している。また、第一スリット11の断面は、Z方向正側に短手方向の一辺が開放される細長い矩形状をなし、長手方向の辺は第一層10aの中央をZ方向に沿って第一接触部13aの範囲を延びている。さらに、第二層10bの各々には、第二接触部13bに該当する部分に、Y方向に延びて貫通する第二スリット12が形成される。第二スリット12は、スリップリング20の周方向に沿ってY方向を円弧形状に延びており、ブロック10のY方向の両側面に開口している。また、第二スリット12の断面は細長い矩形状をなし、長手方向の辺は第二層10bの中央をZ方向に沿って第二接触部13bの範囲を延びている。そして、第一スリット11のZ方向負側の端部と、第二スリット12のZ方向正側の端部とは面一になるように設けられている。
なお、第一スリット11の幅の長さは各々、S1である。また、第二スリット12の幅の長さは各々、S2である。第一スリット11の幅S1は第二スリット12の幅S2よりも短い。また、第一スリット11の幅S1と第二スリット12の幅S2との間には、4×S1<3×S2、という関係が成立する。すなわち、4個の第一スリット11の幅S1を全て合わせた長さより、3個の第二スリット12の幅S2を全て合わせた長さの方が、長い。
次に、図2、4及び5を参照にして、ブラシ10の第一接触部13aがスリップリング20に接触する場合と、ブラシ10の第二接触部13bがスリップリング20に接触する場合とを比較する。なお、ブラシ10の摩耗量が所定の摩耗量G未満である時に第一接触部13aに形成される、スリップリング20に接触可能な接触面を第一接触面14aとする。また、ブラシ10の摩耗量が所定の摩耗量G以上である時に第二接触部13bに形成される、スリップリング20に接触可能な接触面を第二接触面14bとする。第一接触面14a及び第二接触面14bは、各々、内側にわずかに凹んだ円筒面をなす。また、第一接触面14a及び第二接触面14bは、各々、X方向に積層された第一層10a及び第二層10bを含むように構成されている。
ここで、図2及び図5(i)に示すように、第一接触部13aの第一層10aには4本の第一スリット11が形成されているため、第一接触面14aのおおよその面積A1は、A1=(La−4×S1)×Wbとなる。また、図4及び図5(ii)に示すように、第二接触部13bの第二層10bには3本の第二スリット12が形成されているため、第二接触面14bのおおよその面積A2は、A2=(La−3×S2)×Wbとなる。第一スリット11の幅S1と第二スリット12の幅S2とは、4×S1<3×S2、という関係を有しているため、第一接触面14aの面積A1は第二接触面14bの面積A2よりも大きい。
また、図5(i)に示すように、ブラシ10の第一接触面14aの大半の部分は、電気抵抗率E2の第二層10bにより構成される。一方、図5(ii)に示すように、ブラシ10の第二接触面14bの大半の部分は、電気抵抗率E2よりも低い電気抵抗率E1の第一層10aにより構成される。すなわち、第一接触部13aの第一接触面14aに占められる第二層10bの面積は、第一接触面14aに占められる第一層10aの面積よりも大きい。また、第二接触部13bの第二接触面14bに占められる第一層10aの面積は、第二接触面14bに占められる第二層10bの面積よりも大きい。
以上より、この実施の形態に係るスリップリング機構100のブラシ10では、第一接触部13aの第一接触面14aの接触面積A1は、第二接触部13bの第二接触面14bの接触面積A2よりも大きい。これにより、ブラシ10の摩耗が進行して第一接触部13aが摩滅した後、付勢ばね30がブラシ10を押圧する力Fが低下しても、ブラシ10の第二接触部13bの第二接触面14bの面圧の低下は抑制され、ブラシ10の浮きが防止される。
ここで、ブラシとスリップリングとの間を冷却又は潤滑するためにオイル等の液体の冷却媒体が用いられるが、ブラシ10がスリップリング20に対して浮いてしまうと、ブラシ10とスリップリング20との間に冷却媒体が入り込む可能性がある。しかしながら、スリップリング機構100ではブラシ10の浮きが防止されるので、間に入り込んだ冷却媒体が原因でブラシ10とスリップリング20との接触が悪くなり、ブラシ10とスリップリング20との電力のやり取りにバラつきが出るという事態が防止される。そのため、回転電機を狙い通りに制御することができる。
また、冷却媒体がブラシ10とスリップリング20との間に入りこんで電食が発生し、ブラシの摩耗が促進されてしまうという事態も防止される。
さらに、ブラシ10は、電気抵抗率E1の第一層10aと、E1よりも高い電気抵抗率E2の第二層10bとを有する。そして、第一接触面14aに占められる第二層10bの面積は、第一接触面14aに占められる第一層10aの面積よりも大きく、第二接触面14bに占められる第一層10aの面積は、第二接触面14bに占められる第二層10bの面積よりも大きい。
ここで、ブラシ10のスリップリング20に対する接触面の電気抵抗の大きさは、接触面の接触面積に反比例する。そのため、もしブラシ10が単一の電気抵抗率を持つ材料のみから形成されている場合は、接触面積A2の第二接触面14bの方が、接触面積A1の第一接触面14aよりも電気抵抗が大きくなる。しかしながら、この実施の形態のスリップリング機構100のブラシ10では、第二接触面14bの方が第一接触面14aよりも電気抵抗率が低い第一層10aで構成されている面積の割合が高い。従って、ブラシ10の摩耗が進行し第一接触部13aが摩滅して、ブラシ10のスリップリング20に対する接触面が第一接触面14aから第二接触面14bに変化した際であっても、接触面積の変化に伴う電気抵抗の上昇が抑制される。よって、ブラシ10の摩耗が進行した場合であってもブラシ10の発熱が防止され、その分ブラシ10の寿命が長くなる。
また、第一接触部13aに設けられる第一層10aには第一スリット11が形成され、第二接触部13bに設けられる第二層10bには第二スリット12が形成される。これにより、ブラシ10に付着したオイル等の冷却媒体は第一スリット11又は第二スリット12を通ってブラシ10の外部に排出される。
さらにまた、第一スリット11と第二スリット12とは、各々、第一接触部13aの第一層10aと第二接触部13bの第二層10bとに、X方向における位置をずらしつつ互い違いに配置されている。そのため、各々のスリットの長さは第一接触部13a又は第二接触部13bのZ方向長さを超えることがないように形成されている。従って、使用領域である第一接触部13a及び第二接触部13bをZ方向に横断してスリットが形成される場合に比べて、各々のスリット11,12の深さは浅くなるように形成される。すなわちスリット11同士の間、又はスリット12同士の間のブラシ10の片持ち支持の長さが短くなるため、ブラシ10のねじり剛性及び曲げ剛性が向上する。
また、第二層10bよりも電気抵抗率が低い第一層10aが、ブラシ10のX方向における両端部に配置される。電気抵抗率が低い第一層10aは電気伝導率が高いため、第一層10aを第二層10bよりもブラシ10の外側に置くことで、ブラシ10がより効率よく放熱することができ、発熱が防止される。
さらに、第一スリット11のZ方向負側の端部と、第二スリット12のZ方向正側の端部とは面一になるように設けられている。すなわち、第一スリット11のZ方向負側の端部と、第二スリット12のZ方向正側の端部との位置は、Z方向において一致する。このため、ブラシ10がZ方向負側に向かって摩耗する過程では、第一接触部13aと第二接触部13bとの境界付近において、スリットが形成されていない部分がスリップリング20との接触面となる状況は存在しないようになっている。従って、ブラシ10が摩耗する過程で急にスリップリング20との接触面の面積が増え、面圧が一時的に低下する事態が防止される。
なお、第一スリット11のZ方向負側の端部と、第二スリット12のZ方向正側の端部との関係は面一に限定されず、互いの端部の近傍の部分がZ方向において重なりあうように設けられていてもよい。
10 ブラシ、10a 第一層、10b 第二層、11 第一スリット、12 第二スリット、13a 第一接触部、13b 第二接触部、14a 第一接触面、14b 第二接触面、20 スリップリング、30 付勢ばね、100 スリップリング機構。

Claims (3)

  1. 第一層と前記第一層よりも電気抵抗率が大きい材料からなる第二層とを有するブラシと、
    前記ブラシに相対回転可能に接触するスリップリングと、
    前記ブラシを前記スリップリングに対して押圧する付勢ばねとを備え、
    前記ブラシは、
    前記ブラシの摩耗量が所定摩耗量未満である場合に前記スリップリングに接触可能な第一接触面が形成される第一接触部と、
    前記ブラシの前記摩耗量が前記所定摩耗量以上である場合に前記スリップリングに接触可能な第二接触面が形成される第二接触部とを有し、
    前記第一接触面の面積は前記第二接触面の面積よりも大きく、
    前記第一接触面及び前記第二接触面は、各々、前記第一層及び前記第二層を含み、
    前記第一接触面を占める前記第二層の面積は、前記第一接触面を占める前記第一層の面積よりも大きく、
    前記第二接触面を占める前記第一層の面積は、前記第二接触面を占める前記第二層の面積よりも大きい、スリップリング機構。
  2. 前記第一接触面及び前記第二接触面は、各々、積層された前記第一層と前記第二層とを含むように構成され、
    前記第一接触部に設けられる前記第一層には第一スリットが形成され、前記第二接触部に設けられる前記第二層には第二スリットが形成される請求項1に記載のスリップリング機構。
  3. 前記第一層と前記第二層とが積層される方向において、前記ブラシの両端部には前記第一層が配置される請求項2に記載のスリップリング機構。
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