JP5790885B2 - 接点部材及び電動機 - Google Patents

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Description

本発明は、接点部材及び電動機に関するものである。
従来から、電動機(電気モーター/ジェネレーター)やパンタグラフには、他の接点部材に対して加圧された状態で摺接する接点部材が用いられる。JP2002−25346Aには、表面が導電性ダイヤモンドライクカーボンによって被覆されて強度が向上された導電部材が開示されている。
しかしながら、導電部材の表面の強度を向上すると、導電部材が摩耗しにくくなるため、部材間のなじみ性が悪く、部材間の接触面積が小さいままであるという可能性があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、接点部材の他の接点部材に対するなじみ性を向上させることを目的とする。
本発明のある態様によれば、他の接点部材に摺接して通電する接点部材が提供される。この接点部材は、導電性硬質炭素を含む基材と、前記基材の表面に形成されて前記他の接点部材と摺接し、前記基材と比較して低硬度である層状材と、を備える。
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1は、本発明による接点部材を用いるのに好適な電動機を示す図である。 図2Aは、図1のIIA部の拡大図である。 図2Bは、図2Aの状態から運転時間が経過して接点部材と他の接点部材とがなじんだ状態を示す図である。 図3は、接点部材の層状材の厚さについて説明する図である。 図4は、本発明による接点部材の第二の実施の形態を示す図である。 図5は、本発明による接点部材の第三の実施の形態を示す図である。
(第一の実施の形態)
以下、図1から図3を参照して、本発明の第一の実施の形態に係る接点部材について説明する。
まず、図1を参照して、接点部材を用いるのに好適な電動機1について説明する。
電動機1は、直流電動機である。電動機1は、電気的エネルギーが供給されれば機械的動力を発生する電気モーター機能を有するとともに、機械的エネルギーが供給されれば電気的エネルギーを発生するジェネレーター機能を有するものである。
図1に示される電動機1は、ケース10と、ローター20と、を含む。
ケース10は、略円筒形である。ケース10の両端面10aには、一対のベアリング11が同軸に嵌合される。ケース10の内壁面10bには、マグネット12が設けられる。またケース10には、弾性体13を介して接点部材としての複数のブラシ14が設けられる。
ローター20は、ローターシャフト21と、ローターコア22と、他の接点部材としてのコミュテーター23と、を含む。
ローターシャフト21は、ローター20の回転軸である。
ローターコア22は、ローターシャフト21の周囲に設けられる。ローターコア22は、多数の電磁鋼板がローターシャフトの軸方向に積層されて形成される。またローターコア22には、コイル22aが形成される。
コミュテーター23は、ローターシャフト21に固設される。このコミュテーター23に、ブラシ14が弾性体13によって押圧される。
次に、図2Aから図3を参照して、ブラシ14について説明する。
ブラシ14は、コミュテーター23に摺接して通電するものである。ブラシ14は、図2Aに示すように、導電性硬質炭素を含む基材14aと、基材14aの表面に形成されてコミュテーター23と摺接する層状材14bとを備える。
基材14aは、導電性硬質炭素として導電性ダイヤモンドを含んだ材料で形成される。ここで導電性ダイヤモンドとは、不純物(ボロンBなど)がドーピングされたダイヤモンド半導体である。
基材14aは、導電性ダイヤモンドの粒子と不純物の粒子とからなる粉末素材をヘリウムガスとともに噴射して堆積させるパウダーデポジション法によって形成される。このようなパウダーデポジション法を利用することで、容易かつ安価に基材14aを製造することができる。このパウダーデポジション法に代えて、メッキ法,焼結法,化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD),物理気相成長法(Physical Vapor Deposition;PVD)などによっても、基材14aを製造可能である。
基材14aは、導電性ダイヤモンドを含むことで、高硬度かつ高弾性に形成される。基材14aは、摩耗しにくいため、なじみ性向上のための加工を事前に施すことは困難であった。そこで、ブラシ14では、基材14aの表面に層状材14bを被覆することとした。
層状材14bは、基材14aと比較して低硬度となるように形成される。層状材14bは、基材14aと同様に、導電性ダイヤモンドを含んだ材料によって形成される。
図2Aに示す状態から電動機1を運転し、ローターシャフト21が回転して、ブラシ14とコミュテーター23とが摺動すると、図2Bに示すように、ブラシ14の層状材14bが摩耗してゆく。このように、経時的には、ブラシ14とコミュテーター23とがなじんで、両者の接触面積が増加する。
したがって、基材14aが直接コミュテーター23に摺接する場合と比較すると、低硬度に形成されて摩耗しやすい層状材14bがコミュテーター23と摺接して摩耗することで、ブラシ14とコミュテーター23との間のなじみ性が向上する。
その後、更に電動機1の運転時間が経過しても、ブラシ14は、基材14aに高硬度の導電性ダイヤモンドが含まれるため、良好な耐摩耗性を確保することができる。よって、メンテナンス性に優れる(メンテナンスフリーな)電動機1を得ることができる。
また、ブラシ14とコミュテーター23との間のなじみ性が向上すると、両者の接触面積が増加するため、電動機1のエネルギー効率が良好になる。また、ブラシ14とコミュテーター23との間を流れる電流が局所的に集中することが避けられるため、発熱によって耐摩耗性が低下することを防止できる。
層状材14bは、基材14aと比較して低弾性となるように形成される。つまり、層状材14bは、基材14aと比較して弾性変形しやすい。よって、基材14aが直接摺接する場合と比較すると、ブラシ14がコミュテーター23と摺接する際に、層状材14bが弾性変形しやすい分だけなじみ性が向上する。
層状材14bは、基材14aと比較して比抵抗が小さくなるように形成される。比抵抗とは、単位体積あたりの電気抵抗の大きさである。これにより、基材14aとコミュテーター23との間の電気の流れを層状材14bが妨げることが防止される。
層状材14bは、基材14aと同様にパウダーデポジション法によって形成されるが、導電性ダイヤモンドと不純物との割合を調整することで、基材14aと比較して導電性ダイヤモンドの密度が低くなるように形成される。これにより、基材14aと比較して低硬度,低弾性,かつ比抵抗が小さくなるように層状材14bを形成することができる。
また、図3に示すように、層状材14bの厚さtは、基材14aの表面における凹凸の最大深さRy以上となるように形成される。ブラシ14とコミュテーター23との摺接によって層状材14bが摩耗しても、層状材14bの摩耗は、基材14aが露出したところで止まることとなる。このとき層状材14bの厚さtを、基材14aの表面における凹凸の最大深さRy以上となるように形成しておけば、層状材14bとコミュテーター23との間に非接触部位が露出することはない。よって、ブラシ14とコミュテーター23とが全面接触することとなり、なじみ性が向上する。
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
基材14aの表面に基材14aと比較して低硬度である層状材14bが形成される。よって、基材14aが直接コミュテーター23に摺接する場合と比較すると、低硬度に形成されて摩耗しやすい層状材14bがコミュテーター23と摺接して摩耗することで、ブラシ14とコミュテーター23との間のなじみ性が向上する。
また、ブラシ14とコミュテーター23との間のなじみ性が向上すると、両者の接触面積が増加するため、電動機1のエネルギー効率が良好になる。また、ブラシ14とコミュテーター23との間を流れる電流が局所的に集中することが避けられるため、発熱によって耐摩耗性が低下することを防止できる。
(第二の実施の形態)
以下、図4を参照して、本発明の第二の実施の形態に係る接点部材としてのブラシ214について説明する。なお、以下に示す各実施の形態では、前述した第一の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
上述した第一の実施の形態のブラシ14では、層状材14bが導電性ダイヤモンドを含んだ材料で形成された。これに対して、第二の実施の形態のブラシ214では、層状材214bは、基材14aの表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon:以下、「導電性DLC」と称する。)を被覆することによって形成される。
層状材214bを形成する導電性DLCは、ダイヤモンド構造(SP3結晶構造)とグラファイト構造(SP2結晶構造)とが混在したアモルファス(非晶質)構造である。この導電性DLCは、導電性ダイヤモンドが含まれる基材14aと比較して低硬度である。
よって、第一の実施の形態と同様に、低硬度に形成されて摩耗しやすい層状材214bがコミュテーター23と摺接して摩耗する。したがって、基材14aが直接コミュテーター23に摺接する場合と比較すると、ブラシ214とコミュテーター23との間のなじみ性が向上する。
また、ブラシ214とコミュテーター23との間のなじみ性が向上すると、両者の接触面積が増加するため、電動機1のエネルギー効率が良好になる。また、ブラシ214とコミュテーター23との間を流れる電流が局所的に集中することが避けられるため、発熱によって耐摩耗性が低下することを防止できる。
また、導電性DLCの摩擦係数は、導電性ダイヤモンドと比較すると高いが、金属材料等と比較すると低い。よって、ブラシ214とコミュテーター23との間の引きずり損失が低減する。したがって、電動機1のエネルギー効率が良好となるとともに、耐摩耗性が向上する。
(第三の実施の形態)
以下、図5を参照して、本発明の第三の実施の形態に係る接点部材としてのブラシ314について説明する。
第三の実施の形態は、図5に示されるように、ブラシ314が、基材14aの表面に金属材料によって形成される層状材314bを被覆して形成される点で、これまでの実施の形態とは相違する。
層状材314bは、銅,アルミニウム,ニッケル,チタン,亜鉛,コバルト,金,及び銀のうち少なくともいずれか一つを含む金属材料である。これらの金属材料は、いずれも、導電性ダイヤモンドが含まれる基材14aと比較して低硬度な金属材料である。
よって、上述した実施の形態と同様に、低硬度に形成されて摩耗しやすい層状材314bがコミュテーター23と摺接して摩耗する。したがって、基材14aが直接コミュテーター23に摺接する場合と比較すると、ブラシ314とコミュテーター23との間のなじみ性が向上する。
また、ブラシ314とコミュテーター23との間のなじみ性が向上すると、両者の接触面積が増加するため、電動機1のエネルギー効率が良好になる。また、ブラシ314とコミュテーター23との間を流れる電流が局所的に集中することが避けられるため、発熱によって耐摩耗性が低下することを防止できる。
また、上記の金属材料は、導電性ダイヤモンドや導電性ダイヤモンドライクカーボンと比較して比抵抗が小さく、かつ低弾性である。したがって、電動機1のエネルギー効率が更に良好となるとともに、ブラシ314とコミュテーター23とのなじみ性が更に向上する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、本発明の接点部材の構造を電動機1のブラシ14,214,314に適用したが、これに限らず、本発明の接点部材の構造を電動機1のコミュテーター23に適用してもよい。この場合、ブラシ14,214,314が他の接点部材となる。
また上記実施形態では、電動機の電気接点を掲げて説明したが、これには限られない。たとえば、パンタグラフやスイッチ類の可動接点などのように、相手部材に対して相対的に摺動接触しながら通電をするための各種電気接点に適用可能である。
本願は、2012年8月8日に日本国特許庁に出願された特願2012−176013に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (8)

  1. 他の接点部材に摺接して通電する接点部材であって、
    導電性硬質炭素を含む基材と、
    前記基材の表面に形成されて前記他の接点部材と摺接し、前記基材と比較して低硬度である層状材と、を備え、
    前記導電性硬質炭素は、導電性ダイヤモンドである接点部材。
  2. 請求項1に記載の接点部材であって、
    前記層状材は、前記基材と比較して低弾性である接点部材。
  3. 請求項1又は2に記載の接点部材であって、
    前記層状材は、前記基材の前記表面における凹凸の最大深さ以上の厚さに形成される接点部材。
  4. 請求項1から3のいずれか一つに記載の接点部材であって、
    前記層状材は、前記基材と比較して比抵抗が小さい接点部材。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載の接点部材であって、
    前記層状材は、導電性ダイヤモンドを含む接点部材。
  6. 請求項1から4のいずれか一つに記載の接点部材であって、
    前記層状材は、導電性ダイヤモンドライクカーボンである接点部材。
  7. 請求項1から4のいずれか一つに記載の接点部材であって、
    前記層状材は、銅,アルミニウム,ニッケル,チタン,亜鉛,コバルト,金,及び銀のうち少なくともいずれか一つを含む金属材料である接点部材。
  8. 請求項1から7のいずれか一つに記載の接点部材がブラシ又はコミュテーターに適用される電動機。
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