JP2017052127A - 樹脂部材およびその製造方法ならびに接合体およびその製造方法 - Google Patents

樹脂部材およびその製造方法ならびに接合体およびその製造方法 Download PDF

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Yusuke Nakai
祐介 中井
章亘 佐々木
Akinobu Sasaki
章亘 佐々木
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Abstract

【課題】被接合面において接着剤に対する密着性に優れる樹脂部材およびその製造方法、ならびに樹脂部材からなる第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい接合体およびその製造方法を提供する。【解決手段】他の部材と接着剤を介して接合される樹脂部材10であって、樹脂部材10の被接合面Aに、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された複数の凹部12からなる凹凸を有する樹脂部材10;樹脂部材10からなる第1の部材22と、第1の部材22の被接合面Aに接着剤24を介して接合された第2の部材26とを有する、接合体。【選択図】図4

Description

本発明は、他の部材(第2の部材)と接着剤を介して接合される樹脂部材(第1の部材)およびその製造方法、ならびに第1の部材の被接合面に接着剤を介して第2の部材を接合した接合体およびその製造方法に関する。
樹脂部材からなる第1の部材と、樹脂部材または異種部材(金属部材等)からなる第2の部材とを接合する方法の一つとして、接着剤を介して接合する方法が知られている。しかし、接着剤を介して接合する方法には、例えば、下記の問題がある。
・樹脂部材が熱可塑性樹脂材料を含む場合、接着剤に対する樹脂部材の密着性が不十分な場合があり、樹脂部材と接着剤との界面で剥離が生じやすい。
・樹脂部材が繊維強化樹脂部材である場合、接着剤に対する、樹脂部材の表面付近に存在する強化繊維の密着性が不十分な場合があり、樹脂部材と接着剤との界面で剥離が生じやすい。
・接着剤として第2の部材に適しているが、第1の部材に適していない接着剤を用いた場合、第1の部材と接着剤との界面で剥離が生じる場合がある。
接着剤に対する樹脂部材の密着性を向上させる方法としては、樹脂部材の被接合面をサンドペーパー等を用いて粗面化する方法、または樹脂部材の被接合面にエンボス加工テープの表面形状を転写して凹凸を形成する方法等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−230059号公報
サンドペーパーやエンボス加工テープを用いて形成される凹凸は、マイクロメートルオーダーないしミリメートルオーダーである。本発明者らの検討によれば、マイクロメートルオーダーないしミリメートルオーダーの凹凸では、接着剤に対する樹脂部材の被接合面の密着性の向上効果は、ほとんど確認できない。
本発明は、被接合面において接着剤に対する密着性に優れる樹脂部材およびその製造方法、ならびに樹脂部材からなる第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい接合体およびその製造方法を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
<1>他の部材と接着剤を介して接合される樹脂部材であって、前記樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有する、樹脂部材。
<2>前記樹脂部材が、繊維強化樹脂部材である、<1>の樹脂部材。
<3>前記樹脂部材が、熱可塑性樹脂材料を含む、<1>または<2>の樹脂部材。
<4>前記転写用部材の微細凹凸構造が、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状である複数の凸部からなる、<1>〜<3>のいずれかの樹脂部材。
<5>前記<1>〜<4>のいずれかの樹脂部材を製造する方法であって、(α1)前記転写用部材の微細凹凸構造を転写する前の樹脂部材の被接合面と、前記転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とが接するように、前記樹脂部材と前記転写用部材とを重ねる工程と、(α2)前記工程(α1)の後、超音波溶着またはホットプレスによって、前記樹脂部材の被接合面に、前記転写用部材の微細凹凸構造を転写する工程と、(α3)前記工程(α2)の後、前記樹脂部材と前記転写用部材とを分離する工程とを有する、樹脂部材の製造方法。
<6>前記<1>〜<4>のいずれかの樹脂部材を製造する方法であって、(β1)金型の表面と、前記転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とは反対側の面とが接するように、前記金型内の前記樹脂部材の被接合面に対応した箇所に前記転写用部材を配置する工程と、(β2)前記工程(β1)の後、前記金型内に、液状の前記樹脂部材の材料を充填し、固化させて前記樹脂部材を形成する工程と、(β3)前記工程(β2)の後、前記金型から取り出した前記樹脂部材と前記転写用部材とを分離する工程とを有する、樹脂部材の製造方法。
<7>前記転写用部材が、前記微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層を有し、前記硬化樹脂層が、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)と、Fedorの推算法で表されるsp値が20〜23である、3つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能モノマー(B)とを含み、組成物中の全モノマーの合計(100質量%)のうち、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)の割合が3〜18質量%であり、前記多官能モノマー(B)の割合が82〜97質量%である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物である、<5>または<6>の樹脂部材の製造方法。
<8>前記<1>〜<4>のいずれかの樹脂部材からなる第1の部材と、前記第1の部材の被接合面に接着剤を介して接合された第2の部材とを有する、接合体。
<9>前記第2の部材が、前記第1の部材とは樹脂材料の種類が異なる樹脂部材、または金属部材である、<8>の接合体。
<10>前記第2の部材が、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を被接合面に有する樹脂部材である、<8>の接合体。
<11>前記<1>〜<4>のいずれかの樹脂部材からなる第1の部材の被接合面に、接着剤を介して第2の部材を接合する、接合体の製造方法。
<12>前記第2の部材として、前記第1の部材とは樹脂の種類が異なる樹脂部材、または金属部材を用いる、<11>の接合体の製造方法。
<13>前記第2の部材として、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を被接合面に有する樹脂部材を用いる、<11>の接合体の製造方法。
本発明の樹脂部材は、被接合面において接着剤に対する密着性に優れる。
本発明の樹脂部材の製造方法によれば、被接合面において接着剤に対する密着性に優れる樹脂部材を製造できる。
本発明の接合体は、樹脂部材からなる第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい。
本発明の接合体の製造方法によれば、樹脂部材からなる第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい接合体を製造できる。
本発明の樹脂部材の一実施形態を示す断面図である。 転写用部材の一実施形態を示す断面図である。 本発明の樹脂部材の製造方法における工程を示す断面図である。 本発明の接合体の一実施形態を示す断面図である。 90゜剥離試験の様子を示す図である。 引張試験の様子を示す図である。 モールドの作製の工程を示す断面図である。 実施例1の樹脂部材の被接合面の電界放出形走査電子顕微鏡写真である。 実施例1における90゜剥離試験後の樹脂部材の剥離面の電界放出形走査電子顕微鏡写真である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「被接合面」とは、接合体とした際に、他の部材と接着剤を介して接合される面を意味する。
「微細凹凸構造」とは、複数の凸部および複数の凹部のいずれか一方または両方を有し、隣接する凸部間の平均間隔または隣接する凹部間の平均間隔がナノメートルオーダーである構造を意味する。
「細孔」とは、モールドの表面に形成された微細凹凸構造の凹部を意味する。
「撥水性」とは、水の接触角が90°以上であることを意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシの総称である。
「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。
「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
図1〜図7における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。また、図3〜図5においては、図1または図2と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
<樹脂部材>
本発明の樹脂部材は、他の部材と接着剤を介して接合される樹脂部材であって、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有する。
図1は、本発明の樹脂部材の一実施形態を示す断面図である。
樹脂部材10は、他の部材と接着剤を介して接合される際に接着剤と接触する領域となる被接合面Aに、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって形成された複数の凹部12からなる凹凸を有する。
(樹脂材料)
樹脂部材に含まれる樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料であってもよく、熱硬化性樹脂材料またはその硬化物であってもよい。樹脂材料としては、接着剤との密着性が悪く、本発明の効果を十分に発揮できる点から、熱可塑性樹脂材料が好ましい。
熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性樹脂を必須成分とし、必要に応じて添加剤等を含む。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、液晶ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂材料は、熱硬化性樹脂を必須成分とし、必要に応じて、硬化剤、硬化触媒等を含む。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ジシアノジアミド等が挙げられる。
硬化触媒としては、三級アミン、イミダゾール類、オニウム塩等が挙げられる。
(繊維強化樹脂部材)
樹脂部材としては、接着剤との密着性が悪く、本発明の効果を十分に発揮できる点から、繊維強化樹脂部材が好ましい。繊維強化樹脂部材は、プリプレグの状態であってもよく、そのプリプレグを積層したシート状物であってもよい。
繊維強化樹脂部材は、樹脂材料と強化繊維とを含む。
樹脂材料としては、上述した熱可塑性樹脂材料、熱硬化性樹脂材料またはその硬化物が挙げられ、接着剤との密着性が悪く、本発明の効果を十分に発揮できる点から、熱可塑性樹脂材料が好ましい。
強化繊維としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレスの繊維、鉄の繊維、金属を被覆した炭素繊維等が挙げられる。
強化繊維としては、繊維強化樹脂部材の機械的物性および軽量化の点、および接着剤との密着性が悪く、本発明の効果を十分に発揮できるから、炭素繊維が好ましい。炭素繊維は、PAN系炭素繊維であってもよく、ピッチ系炭素繊維であってもよい。
強化繊維は、連続繊維であってもよく、不連続繊維であってもよい。
連続繊維を含む繊維強化樹脂部材は、機械的物性に優れる。樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合、不連続繊維を含む繊維強化樹脂部材は、それを加熱することで強化繊維含有熱可塑性樹脂材料の流動性がよくなり、プレス成形法等により任意の形状に賦形しやすい。樹脂材料が熱硬化性樹脂の場合、不連続繊維を含む繊維強化樹脂部材は、硬化前の強化繊維含有熱硬化性樹脂材料の流動性がよく、プレス成形法等により任意の形状に賦形しやすい。
連続繊維を含む繊維強化樹脂部材の形態として、強化繊維が一方向に引き揃えられた強化繊維束に樹脂材料を含浸させたプリプレグやそのプリプレグを積層したシート状物、強化繊維束を織物等に加工した後、樹脂材料を含浸させた織物材等が挙げられる。
繊維強化樹脂部材としては、軽量であり、加工性がよく、リサイクルしやすい点から、炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材が好ましく、機械的特性に優れ、かつ転写用部材を分離しやすい点から、ポリプロピレンおよび炭素繊維を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材がより好ましく、炭素繊維と樹脂材料との接着性が良好であり、機械的特性に優れ、かつ転写用部材を分離しやすい点から、変性ポリプロピレンおよび炭素繊維を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材が特に好ましい。ポリプロピレン、変性ポリプロピレンおよび炭素繊維を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材としては、例えば、特開2014−234509号公報に記載された炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグ、これを用いてなる炭素繊維強化複合材料等が挙げられる。
(被接合面の凹凸)
被接合面の凹凸は、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸である。
転写用部材の微細凹凸構造については、後に詳しく説明する。
被接合面の凹凸は、転写用部材の微細凹凸構造を転写することによって形成されたものであることから、少なくとも一部に転写用部材の微細凹凸構造の反転構造を有する。被接合面の凹凸は、樹脂部材の製造において樹脂部材と転写用部材とを分離する際に被接合面が変形して形成された反転構造以外の凹凸を有していてもよい。
(他の形態)
本発明の樹脂部材は、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有するものであればよく、図示例のものに限定はされない。
例えば、樹脂部材の形状は、樹脂部材の用途に応じて適宜決定すればよく、図示例の形状に限定はされない。
被接合面は、図示例のように樹脂部材の表面の一部に形成されていてもよく、樹脂部材の表面の全体に形成されていてもよい。
被接合面は、図示例のように樹脂部材の表面の1箇所のみに形成されていてもよく、2箇所以上に形成されていてもよい。
被接合面の凹凸は、図示例のように被接合面の一部に形成されていてもよく、被接合面の全体に形成されていてもよい。
樹脂部材は、転写用部材の微細凹凸構造を転写して形成された被接合面を樹脂材料の表面に有してさえいれば、他の被接合面に他の樹脂部材や異種部材(金属部材等)がすでに接合した接合体であってもよい。
(作用機序)
以上説明した本発明の樹脂部材にあっては、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有するため、被接合面における接着剤との接触面積が増加するとともに、微細凹凸構造によるアンカー効果が十分に発揮される。そのため、樹脂部材の被接合面において接着剤に対する密着性に優れる。
<転写用部材>
本発明における転写用部材は、特定の平均間隔の微細凹凸構造が表面に形成されたものである。
図2は、転写用部材の一実施形態を示す断面図である。
転写用部材100は、基材フィルム102と、基材フィルム102の表面に形成された、複数の凸部104からなる微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層106とを有する。
(基材フィルム)
基材フィルムの材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ガラス等が挙げられる。基材フィルムは、シート、射出成形品等であってもよい。
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層は、後述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、複数の凸部および複数の凹部のいずれか一方または両方からなる微細凹凸構造を表面に有する。
硬化樹脂層の微細凹凸構造としては、転写用部材の微細凹凸構造を転写した樹脂部材の被接合面の接着剤に対する密着性にさらに優れる点から、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して形成された複数の凸部からなる微細凹凸構造が好ましい。陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して形成された微細凹凸構造は、複数の凸部が平面六方格子状に配列した微細凹凸構造となる。
凸部間または凹部間の平均間隔は、600nm以下であり、400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下であれば、転写用部材の微細凹凸構造を転写した樹脂部材の被接合面の接着剤に対する密着性に優れる。
陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部を形成する場合、細孔間隔を大きくするには電圧を高くする必要があり、工業的には製造しづらくなることから、凸部間の平均間隔は、200nm以下が特に好ましい。
凸部間または凹部間の平均間隔は、凸部または凹部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましく、80nm以上がさらに好ましい。
凸部間または凹部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって、隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)または隣接する凹部間の間隔(凹部の中心から隣接する凹部の中心までの距離)を10点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部の平均高さまたは凹部の平均深さは、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
凸部の平均高さまたは凹部の平均深さが50nm以上であれば、転写用部材の微細凹凸構造を転写した樹脂部材の被接合面の接着剤に対する密着性にさらに優れる。凸部の平均高さまたは凹部の平均深さは、凸部の耐擦傷性、および凸部または凹部の形成のしやすさの点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下がさらに好ましく、300nm以下が特に好ましい。
凸部の平均高さまたは凹部の平均深さは、電子顕微鏡観察によって、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の垂直距離を10点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部のアスペクト比(凸部の平均高さ/凸部間の平均間隔)または凹部のアスペクト比(凹部の平均深さ/凹部間の平均間隔)は、0.5〜5が好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3がさらに好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、転写用部材の微細凹凸構造を転写した樹脂部材の被接合面の接着剤に対する密着性にさらに優れる。アスペクト比が5以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となり、また、凸部または凹部を形成しやすい。
凸部または凹部の形状としては、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。特に、円錐形状、角錐形状等のように、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましい。
(転写用部材の製造方法)
転写用部材は、例えば、微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材フィルムとの間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を挟持した状態にて、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成した後、硬化樹脂層とモールドとを分離することによって製造できる。
モールドとしては、例えば、リソグラフィ法やレーザー加工によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド;複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド等が挙げられる。モールドとしては、低コストで大面積のモールドを製造しやすい点から、陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドが好ましい。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、特開2010−000719号公報、特開2014−076557号公報等に記載された方法等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、特開2010−000719号公報、特開2014−076557号公報等に記載された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドを備えた装置、および該装置および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた転写用部材の具体的な製造方法については、例えば、特開2010−000719号公報、特開2014−076557号公報等に記載されている。
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X))
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては下記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)が好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物は、撥水性に優れることから、樹脂部材との密着性が低く、後述する樹脂部材の製造方法において樹脂部材と転写用部材とを引き剥がしやすくなる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物は、耐擦傷性に優れることから、後述する樹脂部材の製造方法において転写用部材を繰り返し用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、特定のアルキル(メタ)アクリレート(A)と、特定の多官能モノマー(B)(ただし、アルキル(メタ)アクリレート(A)を除く。)とを必須成分とする。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、必要に応じて、アルキル(メタ)アクリレート(A)および多官能モノマー(B)以外の他のモノマー(C)、スリップ剤(D)、活性エネルギー線重合開始剤(E)、添加剤(F)を含んでいてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート(A):
アルキル(メタ)アクリレート(A)は、ラジカル重合性官能基として(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有し、かつ炭素数12以上のアルキル基を有する化合物である。
アルキル基の炭素数は、12以上であり、12〜22が好ましく、12〜18がより好ましく、16〜18が特に好ましい。アルキル基の炭素数が12以上であれば、硬化樹脂層の撥水性に優れる。アルキル基の炭素数が22以下であれば、特に直鎖状アルキル基の場合のハンドリング性に優れ、例えば加熱によって液状にしやすく、室温でもワックス状になりにくい。
アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。撥水性の点から、直鎖状が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(A)は、ラジカル重合性官能基として(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有することが好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有するアルキル(メタ)アクリレート(A)は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物においてブリードアウトしにくい。また、ラジカル重合性官能基が1つであることによって、アルキル鎖が凝集しやすくなり、硬化樹脂層に撥水性を付与しやすくなる。
アルキル(メタ)アクリレート(A)としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート(A)の市販品としては、日油社製のブレンマー(登録商標)LA、ブレンマー(登録商標)CA、ブレンマー(登録商標)SA、ブレンマー(登録商標)VA、ブレンマー(登録商標)LMA、ブレンマー(登録商標)CMA、ブレンマー(登録商標)SMA、ブレンマー(登録商標)VMA;新中村化学工業製のNKエステル(登録商標)S−1800A、NKエステル(登録商標)S−1800M等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート(A)の割合は、組成物中の全モノマーの合計(100質量%)のうち、3〜18質量%であり、3〜12質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましく、5〜8質量%が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(A)の割合が3質量%以上であれば、硬化樹脂層の撥水性に優れる。アルキル(メタ)アクリレート(A)の割合が18質量%以下であれば、架橋密度の低下が抑えられ、硬化樹脂層の耐擦傷性に優れる。
多官能モノマー(B):
多官能モノマー(B)は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の主成分であり、硬化樹脂層に機械的特性、特に耐擦傷性を付与するとともに、硬化に伴う相分離を誘起させる役割を果たす。
多官能モノマー(B)は、3つ以上のラジカル重合性官能基を有する。ラジカル重合性官能基を3つ以上有する多官能モノマー(B)は、硬化物の架橋点間分子量が小さくなり、架橋密度を高くして、硬化物の弾性率や硬度を高くする。そのため、硬化樹脂層の耐擦傷性に優れる。ラジカル重合性官能基は、代表的には(メタ)アクリロイル基である。
多官能モノマー(B)の分子量をラジカル重合性官能基の数で除した値(分子量/ラジカル重合性官能基の数)は、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、110〜150が特に好ましい。前記範囲は、硬化物の弾性率、硬度、硬化樹脂層の耐擦傷性の点で意義が有る。多官能モノマー(B)がトリメチロールプロパントリアクリレートの場合、その分子量は296であり、ラジカル重合性官能基の数は3である。したがって、分子量/ラジカル重合性官能基の数は、98.7となる。
アルキル(メタ)アクリレート(A)と多官能モノマー(B)とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、加熱時は各成分が相溶して透明、清澄な組成物となるものの、室温まで冷却すると白濁や分離が発生する場合もある。また、硬化物に濁りやもやが発生する場合もある。一方で、アルキル(メタ)アクリレート(A)と多官能モノマー(B)とがよく相溶する組み合わせである場合、硬化樹脂層の撥水性が発現しにくくなる。このような点を考慮して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)を取り扱う上で不便がなく、かつ硬化樹脂層が撥水性を発現するようなアルキル(メタ)アクリレート(A)と多官能モノマー(B)との組み合わせにすることが好ましい。
多官能モノマー(B)は、Fedorの推算法で表される特定のsp値を示す。sp値は、溶解性パラメータまたは溶解度パラメータと言われ、溶質が溶媒へ溶けるか否か、異種の液体が混ざるか否か等の溶解性を判断する際の指標となる値である。本発明におけるsp値は、モノマー同士の溶解性の指標になる。
sp値を導く方法としては、液体の蒸発熱から計算する方法、各化学構造に基づいた値を積算することで算出する方法等の様々な方法がある。例えば、Hildeblandのsp値、Hansenのsp値、Kreverenの推算法、Fedorの推算法等が知られている。sp値を導く方法は、情報機構発刊の「SP値 基礎・応用と計算方法」に詳細に記載されている。本発明においては、化学構造に応じた値を積算するFedorの推算法を用いる。
多官能モノマー(B)のFedorの推算法で表されるsp値は、20〜23であり、20.5〜23が好ましく、20.5〜22.5がより好ましい。sp値が20以上であれば、多官能モノマー(B)がアルキル(メタ)アクリレート(A)と相溶し過ぎることなく、硬化樹脂層の撥水性に優れる。また、アルキル(メタ)アクリレート(A)と適度に相溶し、透明、清澄な組成物を得るために過度な加熱等を必要としないため、ハンドリング性に優れる。
多官能モノマー(B)としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。具体例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、これらのエトキシ変性物等が挙げられる。多官能モノマー(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能モノマー(B)の市販品としては、新中村化学工業社製のNKエステル(登録商標)ATM−4E;日本化薬社製のKAYARAD(登録商標)DPEA−12;東亞合成社製のアロニックス(登録商標)シリーズのM−305、M−450、M−400、M−405;ダイセル・サイテック社製のEBECRYL(登録商標)40が挙げられる。
多官能モノマー(B)の割合は、組成物中の全モノマーの合計(100質量%)のうち、82〜97質量%であり、85〜97質量%が好ましく、90〜95質量%がより好ましい。多官能モノマー(B)の割合が82質量%以上であれば、硬化物の弾性率、硬度、硬化樹脂層の耐擦傷性に優れる。多官能モノマー(B)の割合が97質量%以下であれば、硬化樹脂層の耐擦傷性が向上し、かつ硬化樹脂層とモールドとを分離する際のひび割れ、微細凹凸構造の破損が抑えられる。
他のモノマー(C):
他のモノマー(C)は、1個以上のラジカル重合性官能基を有する。
他のモノマー(C)は、アルキル(メタ)アクリレート(A)および多官能モノマー(B)と共重合可能なモノマーであって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)全体としての重合反応性を良好に維持しつつ、ハンドリング性や基材フィルムとの密着性をさらに向上するものであることが好ましい。
他のモノマー(C)は、フッ素原子およびシリコーンを含まないことが好ましいが、硬化樹脂層の撥水性を損なわない範囲でフッ素原子およびシリコーンのいずれか一方または両方を含んでもよい。これは、アルキル(メタ)アクリレート(A)と多官能モノマー(B)との相溶状態に影響を与えず、硬化樹脂層の耐擦傷性や基材フィルムとの密着性をあまり損なわないようにするためである。また、他のモノマー(C)としては、アルキル(メタ)アクリレート(A)と多官能モノマー(B)との相溶状態に影響を与えず、硬化樹脂層の撥水性を損なわないようにする点から、Fedorの推算法で表されるsp値が20以上のモノマーは多量に用いないことが好ましい。
他のモノマー(C)としては、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等)、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アミノ基を有する(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等)、水酸基を有する(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等)、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。他のモノマー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他のモノマー(C)としては、嵩高くなく、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の重合反応性を促進させ得る点から、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。また、基材フィルムとして、アクリル系フィルムを用いる場合には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
他のモノマー(C)の割合は、組成物中の全モノマーの合計(100質量%)のうち、0〜15質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましく、3〜8質量%が特に好ましい。他のモノマー(C)の割合が15質量%以下であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)を効率よく硬化させ、残存モノマーが可塑剤として作用して硬化物の弾性率や硬化樹脂層の耐擦傷性への悪影響を抑えることができる。他のモノマー(C)がフッ素原子およびシリコーンのいずれか一方または両方を含む場合は、他のモノマー(C)の割合は、10質量%以下が好ましい。
スリップ剤(D):
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、スリップ剤(D)を含むことが好ましい。スリップ剤(D)は、硬化樹脂層の表面に存在し、表面における摩擦を低減し、耐擦傷性を向上させる。
スリップ剤(D)の市販品としては、東レ・ダウコーニング社製のSH3746FLUID、FZ−77;信越化学工業社製のKF−355A、KF−6011等が挙げられる。スリップ剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スリップ剤(D)の添加量は、組成物中の全モノマーの合計100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。スリップ剤(D)の添加量が0.01質量部以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化性に優れ、硬化樹脂層の機械的特性、特に耐擦傷性が良好となる。スリップ剤(D)の添加量が5質量部以下であれば、硬化物内に残存するスリップ剤(D)による弾性率および耐擦傷性の低下や着色が抑えられる。
活性エネルギー線重合開始剤(E):
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、活性エネルギー線重合開始剤(E)を含むことが好ましい。活性エネルギー線重合開始剤(E)は、活性エネルギー線の照射によって開裂し、重合反応を開始させるラジカルを発生する化合物である。活性エネルギー線としては、装置コストや生産性の点から、紫外線が好ましい。
活性エネルギー線重合開始剤(E)のとしては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン類(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン類(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル類(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンが挙げられる。活性エネルギー線重合開始剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、吸収波長の異なる2種以上を併用することが好ましい。また必要に応じて、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物、アゾ系開始剤等の熱重合開始剤を併用してもよい。
活性エネルギー線重合開始剤(E)の添加量は、組成物中の全モノマーの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.2〜3質量部が特に好ましい。活性エネルギー線重合開始剤(E)の添加量が0.01質量部以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化性に優れ、硬化樹脂層の機械的特性、特に耐擦傷性が良好となる。活性エネルギー線重合開始剤(E)の添加量が10質量部以下であれば、硬化物内に残存する活性エネルギー線重合開始剤(E)による弾性率および耐擦傷性の低下や着色が抑えられる。
添加剤(F):
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の機能を阻害しない範囲において、必要に応じて、活性エネルギー線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の添加剤(F)を含んでもよい。
活性エネルギー線吸収剤としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化の際に照射される活性エネルギー線を吸収し、樹脂の劣化を抑制できるものが好ましい。活性エネルギー線吸収剤としては、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線吸収剤等が挙げられる。活性エネルギー線吸収剤の市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のチヌビン(登録商標)シリーズの400、479;共同薬品社製のViosorb(登録商標)シリーズの110等が挙られる。活性エネルギー線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系の酸化防止剤、リン系の酸化防止剤、イオウ系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のIRGANOX(登録商標)シリーズ等が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線吸収剤および酸化防止剤の添加量の合計は、組成物中の全モノマーの合計100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部が特に好ましい。活性エネルギー線吸収剤および酸化防止剤の添加量の合計が0.01以上であれば、硬化物の黄色化やヘイズ上昇が抑えられ、硬化樹脂層の耐候性が向上する。活性エネルギー線吸収剤および酸化防止剤の添加量の合計が5質量部以下であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化性、硬化樹脂層の耐擦傷性、基材フィルムとの密着性をさらに良好にできる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)は、溶剤を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。溶剤を含まない場合は、溶剤が硬化物中に残る心配がない。また、製造工程を考慮した場合、溶剤除去のための設備投資が不要であり、コストの点でも好ましい。
(他の形態)
本発明における転写用部材は、特定の平均間隔の微細凹凸構造を表面に形成されたものであればよく、図示例のものに限定はされない。
例えば、転写用部材は、硬化樹脂層のみからなるものであってもよく、微細凹凸構造が基材フィルムに直接形成されたものであってもよい。ただし、樹脂部材の被接合面に転写用部材の微細凹凸構造を転写する際に、微細凹凸構造が熱および圧力によって変形せず、転写用部材を繰り返し用いることができる点から、微細凹凸構造が硬化樹脂層に形成されたものが好ましい。
転写用部材として、リソグラフィ法やレーザー加工によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド;陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド等を用いてもよい。
<樹脂部材の製造方法>
本発明の樹脂部材の製造方法としては、例えば、下記の方法(α)または方法(β)が挙げられる。
(α)超音波溶着またはホットプレスによって、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された微細凹凸構造を転写する方法。
(β)内部に転写用部材を配置した金型内に溶融した樹脂部材の材料を充填することによって、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された微細凹凸構造を転写する方法。
(方法(α))
方法(α)としては、例えば、下記の工程(α1)〜(α3)を有する方法が挙げられる。
(α1)転写用部材の微細凹凸構造を転写する前の樹脂部材の被接合面と、転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とが接するように、樹脂部材と転写用部材とを重ねる工程。
(α2)前記工程(α1)の後、超音波溶着またはホットプレスによって、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の微細凹凸構造を転写する工程。
(α3)前記工程(α2)の後、樹脂部材と転写用部材とを分離する工程。
工程(α1):
図3に示すように、樹脂部材10の被接合面Aと、転写用部材100の、複数の凸部104からなる微細凹凸構造が形成された面とが接するように、樹脂部材10と転写用部材100とを重ねる。
樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱可塑性樹脂材料の場合、工程(α1)においては、樹脂部材を加熱して、転写用部材の微細凹凸構造を転写しやすい状態にしておいてもよい。
樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱硬化性樹脂材料の場合、工程(α1)においては、熱硬化性樹脂材料は、未硬化の状態であってもよく、部分硬化の状態であってもよく、硬化物の状態であってもよい。転写用部材の微細凹凸構造を転写しやすい点からは、未硬化の状態または部分硬化の状態が好ましい。
工程(α2):
図3に示すように、転写用部材100の上方から超音波溶着機の超音波ホーン200を押し当て、超音波溶着によって、樹脂部材10の被接合面Aを、転写用部材100の、複数の凸部104からなる微細凹凸構造が形成された面に溶着させる。
超音波溶着の条件(周波数、振幅、時間、圧力、溶着エネルギ等)は、樹脂部材に含まれる樹脂材料の種類、転写用部材の材料、厚さ等に応じて適宜設定すればよい。
工程(α2)においては、超音波溶着機を用いた超音波溶着の代わりに、プレス機を用いたホットプレスによって、樹脂部材の被接合面を、転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面に溶着させてもよい。
樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱可塑性樹脂材料の場合、ホットプレスとは、その樹脂材料が結晶性樹脂の場合には融点以上に、非結晶性樹脂の場合にはガラス転移点以上に樹脂部材を加熱した状態で樹脂部材に転写用部材を重ねて、圧力をかける方法である。樹脂部材と転写用部材を分離しやすくするために、ホットプレス後に樹脂材料の融点ないしガラス転移点以下にすることが好ましい。また、樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱硬化性樹脂材料の場合、ホットプレスとは、その樹脂部材に転写用部材を重ねて、樹脂材料の硬化温度以上に加熱しながら圧力をかける方法である。樹脂部材と転写用部材を分離しやすくするために、樹脂材料を充分硬化させることが好ましい。
ホットプレスの条件(温度、時間、圧力等)は、樹脂部材に含まれる樹脂材料の種類、厚さ、転写用部材の材料、厚さ等に応じて適宜設定すればよい。
工程(α3):
図3に示すように、樹脂部材10と転写用部材100とを分離することによって、被接合面Aに、転写用部材100の表面に形成された複数の凸部104からなる微細凹凸構造を転写することによって形成された複数の凹部12からなる凹凸を有する樹脂部材10を得る。
被接合面Aの凹凸には、樹脂部材10と転写用部材100とを分離する際に被接合面Aが変形して形成された凹部12以外の凹凸(転写用部材100に密着した樹脂部材10が転写用部材100を分離する際に引き伸ばされて形成された筋状や糸状の凸部等)が形成されてもよい。
(方法(β))
方法(β)としては、例えば、下記の工程(β1)〜(β3)を有する方法が挙げられる。
(β1)金型の表面と、転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とは反対側の面とが接するように、金型内の、樹脂部材の被接合面に対応した箇所に転写用部材を配置する工程。
(β2)前記工程(β1)の後、金型内に、液状の樹脂部材の材料を充填し、固化させて樹脂部材を形成する工程。
(β3)前記工程(β2)の後、金型から取り出した樹脂部材と転写用部材とを分離する工程。
工程(β1):
通常のインサート成形の要領にしたがい、金型内に転写用部材を配置する。
この際、金型の表面と、転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とは反対側の面とが接するように、かつ金型内の、樹脂部材の被接合面に対応した箇所に転写用部材が位置するように配置する。
金型としては、射出成形用の金型、圧縮成形の金型、トランスファー成形の金型、ブロー成形の金型、真空成型の金型、圧空成形の金型等が挙げられる。
工程(β2):
金型内に、液状の樹脂部材の材料を充填し、固化させて樹脂部材を形成する。
樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱可塑性樹脂材料の場合、工程(β2)においては、金型内に、溶融状態の熱可塑性樹脂材料を充填した後、冷却して熱可塑性樹脂材料を固化させる。
樹脂部材に含まれる樹脂材料が熱硬化性樹脂材料の場合、工程(β2)においては、金型内に、未硬化の熱硬化性樹脂材料を充填した後、金型の熱によって熱硬化性樹脂材料を硬化させる。
工程(β3):
上述した工程(α3)と同様にして樹脂部材と転写用部材とを分離する。
(作用機序)
以上説明した本発明の樹脂部材の製造方法にあっては、樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって、被接合面に凹凸を有する樹脂部材を得ている。このようにして得られた樹脂部材は、被接合面における接着剤との接触面積が増加するとともに、微細凹凸構造によるアンカー効果が十分に発揮される。そのため、樹脂部材の被接合面において接着剤に対する密着性に優れる。
<接合体>
本発明の接合体は、本発明の樹脂部材からなる第1の部材と、第1の部材の被接合面に接着剤を介して接合された第2の部材とを有する。
図4は、本発明の接合体の一実施形態を示す断面図である。
接合体20は、樹脂部材10からなる第1の部材22と、第1の部材22の被接合面Aに接着剤24を介して接合された第2の部材26とを有する。
(第1の部材)
第1の部材は、本発明の樹脂部材からなる。
第1の部材は、樹脂材料のみからなる樹脂部材であってもよく、樹脂材料と強化繊維とを含む繊維強化樹脂部材であってもよい。
第1の部材の好ましい形態は、本発明の樹脂部材の好ましい形態と同様である。
(第2の部材)
第2の部材は、樹脂部材であってもよく、樹脂部材以外の異種部材であってもよい。
第2の部材が樹脂部材である場合、第2の部材は、樹脂材料のみからなる樹脂部材であってもよく、樹脂材料と強化繊維とを含む繊維強化樹脂部材であってもよい。
また、第2の部材が樹脂部材である場合、第2の部材に含まれる樹脂材料は、第1の部材に含まれる樹脂材料と同じ種類の樹脂材料であってもよく、異なる種類の樹脂材料であってもよい。
異種部材としては、金属部材、ガラス部材、セラミックス部材等が挙げられる。
第2の部材が第1の部材とは樹脂の種類が異なる樹脂部材、または金属部材である場合、接着剤として第2の部材に適しているが、第1の部材に適していない接着剤が用いられる可能性が高くなり、そのような場合であっても本発明の効果を十分に発揮できる。
第2の部材が樹脂部材である場合、第2の部材としては、第2の部材の樹脂部材の被接合面において接着剤に対する密着性に優れる点から、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を被接合面に有する樹脂部材が好ましい。第2の部材が樹脂部材である場合の好ましい形態は、本発明の樹脂部材の好ましい形態と同様である。
(接着剤)
接着剤としては、市販の接着剤が挙げられる。
接着剤としては、シリル化ウレタン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、塩素化ポリオレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、フェノール系接着剤等が挙げられる。
接着剤の形態としては、液状に限定されず、ホットメルト接着剤や両面接着テープ等の固体状でもよい。
(他の形態)
本発明の接合体は、本発明の樹脂部材からなる第1の部材と、第1の部材の被接合面に接着剤を介して接合された第2の部材とを有するものであればよく、図示例のものに限定はされない。
例えば、第1の部材および第2の部材の形状は、接合体の用途に応じて適宜決定すればよく、図示例の形状に限定はされない。
本発明の接合体は、接合体を構成するいずれかの部材の被接合面に接合された第3の部材またはそれ以上の数の部材を有していてもよい。
(作用機序)
以上説明した本発明の接合体にあっては、樹脂部材からなる第1の部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された特定の平均間隔の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有するため、第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい。
<接合体の製造方法>
本発明の接合体の製造方法は、本発明の樹脂部材からなる第1の部材の被接合面に、接着剤を介して第2の部材を接合する方法である。
具体的には、第1の部材の被接合面および第2の部材の被接合面のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、第1の部材の被接合面と第2の部材の被接合面とを接着剤を介して貼り合わせ、接着剤を硬化させることによって接合体を製造する。
(作用機序)
以上説明した本発明の接合体の製造方法にあっては、本発明の樹脂部材からなる第1の部材の被接合面に、接着剤を介して第2の部材を接合しているため、第1の部材と接着剤との界面において剥離が生じにくい接合体を製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(モールドの細孔の平均間隔および深さ)
陽極酸化ポーラスアルミナからなるモールドの一部の縦断面に白金を1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて加速電圧3.00kVで観察し、隣り合う細孔間の間隔および細孔の深さを測定した。それぞれ10点ずつ測定し、その平均値を測定値とした。
(転写用部材の凸部の平均間隔および高さ)
転写用部材の縦断面に白金を10分間蒸着し、モールドの場合と同じ装置および条件にて、隣り合う凸部間の間隔および凸部の高さを測定した。それぞれ10点ずつ測定し、その平均値を測定値とした。
(90゜剥離試験)
図5に示すように、樹脂部材1(長さ:130mm、幅:30mm、厚さ:2mm)の被接合面に0.1gの接着剤3(コニシ社製、ウルトラ多用途(登録商標)SU)を介してポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、長さ:80mm、幅:26mm、厚さ:75μm)(以下、PETフィルム2と記す。)を接合した。接着剤3による接合部分の幅は、約20mmとした。
樹脂部材1を、長さ方向が水平方向になるように移動台4に固定した。PETフィルム2の長さ方向の一辺を、デジタルフォースゲージ5(イマダ社製、ZP−200N)に挟んだ状態で、90°剥離試験用スライドテーブル(イマダ社製、P90−200N)4を利用して、デジタルフォースゲージ5を垂直方向に300mm/秒で引き上げながら、樹脂部材1を、PETフィルム2を引き上げる側の長さ方向に300mm/秒で移動させ、PETフィルム2を剥離させた。デジタルフォースゲージ5に記録された最大荷重(N)を接着剤3による接合部分の幅(mm)で除した値を剥離力(N/mm)とした。
(引張試験)
図6に示すように、樹脂部材1(長さ:130mm、幅:30mm、厚さ:2mm)の被接合面に0.1gの接着剤3(コニシ社製、ウルトラ多用途(登録商標)SU)を介してPETフィルム2(三菱樹脂社製、長さ:80mm、幅:26mm、厚さ:75μm)を接合した。接着剤3による接合部分の面積は、接合部分の長径と短径とから楕円の面積の公式によって算出した。
樹脂部材1を、長さ方向が垂直方向になるように固定台6に固定した。PETフィルム2の長さ方向の上側の一辺をデジタルフォースゲージ5(イマダ社製、ZP−200N)に挟んだ状態で、デジタルフォースゲージ5を垂直方向に60mm/秒で引き上げ、PETフィルム2を剥離させた。デジタルフォースゲージ5に記録された最大荷重(N)を接着剤3による接合部分の面積(mm)で除した値を接着力(N/mm)とした。
(モールドの作製)
図7に示す工程にしたがい、モールドを以下のように作製した。
まず、純度99.99%のアルミニウム板30を、羽布研磨し、さらに過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
アルミニウム板30について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行い、細孔31を有する酸化皮膜32を形成した。
工程(b):
酸化皮膜32を形成したアルミニウム板30を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜32を除去し、細孔31に対応する周期的な窪み33を露出させた。
工程(c):
酸化皮膜32を除去したアルミニウム板30について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行い、細孔35を有する酸化皮膜34を形成した。
工程(d):
酸化皮膜34を形成したアルミニウム板30を、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔35の径拡大処理を行った。
工程(e):
酸化皮膜34を形成したアルミニウム板30について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行い、細孔35の下方に小径の細孔が延びる酸化皮膜34を形成した。
工程(f):
前記(d)工程および(e)工程を合計で5回繰り返し、平均間隔100nm、平均深さ180nmの略円錐形状の細孔35を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。得られた陽極酸化ポーラスアルミナを脱イオン水で洗浄し、表面の水分をエアーブローで除去し、表面防汚コーティング剤(ダイキン社製、オプツール(登録商標)DSX)を固形分0.1質量%になるように希釈剤(ハーベス社製、HD−ZV)で希釈した溶液に10分間浸漬し、20時間風乾してモールド36を得た。
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の調製)
アルキル(メタ)アクリレート(A)として、ラウリルアクリレート(日油社製、ブレンマー(登録商標)LA)の8部、多官能モノマー(B)として、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、NKエステル(登録商標)ATM−4E、Fedorの推算法で表されるsp値:20.51、ラジカル重合性官能基の数:4、分子量:528)の85部、他のモノマー(C)として、メチルアクリレートの7部、活性エネルギー線重合開始剤(E)として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、IRGACURE(登録商標)184)の0.5部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(日本チバガイギー社製、DAROCURE(登録商標)TPO)の1.0部、内部離型剤(日光ケミカルズ社製、NIKKOL(登録商標)TDP−2)の0.5部を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)を調製した。
(転写用部材の作製)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)を50℃に調温し、50℃に調温したモールドの細孔が形成された表面上に流し込み、その上に厚さ75μmのPETフィルム(東洋紡社製、A4300)を押し広げながら被覆した。ベルトスピード6.0m/分で移動させながら、PETフィルム側からフュージョンランプを用いて積算光量1000mJ/cmとなるよう紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)を硬化させ、微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層を形成した。硬化樹脂層とモールドとを分離して、転写用部材を得た。
転写用部材の硬化樹脂層の表面には、モールドの細孔が転写されており、図2に示すような、凸部間の平均間隔が100nm、凸部の平均高さが180nmの略円錐形状の微細凹凸構造が形成されていた。
(樹脂部材の作製)
酸変性プロピレン(三菱化学社製、モディック(登録商標)P958、酸変性量:0.24質量%、MFR:50g/10分)の5質量部および未変性プロピレン(日本ポリプロ社製、ノバテック(登録商標)SA06A、MFR:60g/10分)の95質量部を単軸押出機(IKG社製、PMS30)に投入し、厚さ40μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムを、繊維目付け145g/mになるように引き揃えられたPAN系炭素繊維(三菱レイヨン社製、パイロフィル(登録商標)TR50S15L AD、平均単繊維繊度:0.67dtex、フィラメント数:15,000本)の両面にドラムワインド方式によって貼り合わせ、両面から離型紙(リンテック社製、CFP−45)の軽面で挟み、加熱ロールで含浸させて、繊維含有率50体積%の炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグを得た。
炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグを適当なサイズにカットし、繊維方向が[0°/90°]3S=0°/90°/0°/90°/0°/90°/90°/0°/90°/0°/90°/0°となるように12枚積み重ね、バギングした後、230℃、15分、昇温速度4℃/分、圧力0.7MPa、バック内の圧力−100kPaの条件でオートクレーブにて成形して、厚さ2mmの炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材を得た。
(実施例1)
炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材から長さ:130mm、幅:30mm、厚さ:2mmの試験用の樹脂部材を2枚切り出した。切り出した試験片の表面および裏面の長手方向(長さ130mm)が炭素繊維方向(0°)と同じになるようにした。
工程(α1):
樹脂部材の被接合面と、転写用部材の微細凹凸構造が形成された面とが接するように、樹脂部材と転写用部材とを重ねた。
工程(α2):
転写用部材の上方から超音波溶着機(日本エマソン社製、ブランソン2000Xdt)の超音波ホーン(先端形状:φ25mm)を押し当て、周波数:20kHz、振幅:60μm、時間:1.0秒、圧力:約600N、溶着エネルギ:約700Jの条件にて超音波溶着によって、樹脂部材の被接合面を転写用部材の微細凹凸構造が形成された面に溶着させた。
工程(α3):
樹脂部材と転写用部材とを分離することによって、転写用部材の微細凹凸構造を被接合面に転写した樹脂部材を得た。樹脂部材の被接合面の電界放出形走査電子顕微鏡写真を図8に示す。転写用部材の複数の凸部からなる微細凹凸構造を転写することによって形成された複数の凹部、および転写用部材に密着した樹脂部材が転写用部材を分離する際に引き伸ばされて形成された筋状や糸状の凸部が確認された。
転写用部材の微細凹凸構造を被接合面に転写した樹脂部材を90゜剥離試験および引張試験に供した。結果を表1に示す。また、90゜剥離試験後の樹脂部材の剥離面の電界放出形走査電子顕微鏡写真を図9に示す。樹脂部材の被接合面が接着剤で埋まっており、接着剤が凝集破壊されていることが確認された。
(比較例1)
炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材から長さ:130mm、幅:30mm、厚さ:2mmの試験用の樹脂部材を2枚切り出し、被接合面に何ら処理を施すことなく、そのまま90゜剥離試験および引張試験に供した。結果を表1に示す。
(比較例2)
炭素繊維強化熱可塑性樹脂部材から長さ:130mm、幅:30mm、厚さ:2mmの試験用の樹脂部材を2枚切り出した。被接合面にサンドペーパー(#400)を用いて粗面化処理を施した後、90゜剥離試験および引張試験に供した。結果を表1に示す。なお、粗面化処理を施した面の粗さをレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−X100)で測定したところ、Rz:5.7μm、Sm:7.7μm(JIS B0601:1994)であった。
転写用部材の微細凹凸構造を被接合面に転写した実施例1は、被接合面が未処理の比較例1および被接合面をサンドペーパーで粗面化した比較例2に比べ、被接合面において接着剤に対する密着性に優れていた。
被接合面をサンドペーパーで粗面化した比較例2は、被接合面が未処理の比較例1と密着性が同等であった。
本発明の樹脂部材は、樹脂部材同士または樹脂部材と異種部材(金属部材等)とを接合した接合体における樹脂部材として有用である。
1 樹脂部材
2 PETフィルム
3 接着剤
4 移動台
5 デジタルフォースゲージ
6 固定台
10 樹脂部材
12 凹部
20 接合体
22 第1の部材
24 接着剤
26 第2の部材
100 転写用部材
102 基材フィルム
104 凸部
106 硬化樹脂層
200 超音波ホーン
A 被接合面

Claims (13)

  1. 他の部材と接着剤を介して接合される樹脂部材であって、
    前記樹脂部材の被接合面に、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を有する、樹脂部材。
  2. 前記樹脂部材が、繊維強化樹脂部材である、請求項1に記載の樹脂部材。
  3. 前記樹脂部材が、熱可塑性樹脂材料を含む、請求項1または2に記載の樹脂部材。
  4. 前記転写用部材の微細凹凸構造が、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状である複数の凸部からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂部材を製造する方法であって、
    (α1)前記転写用部材の微細凹凸構造を転写する前の樹脂部材の被接合面と、前記転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とが接するように、前記樹脂部材と前記転写用部材とを重ねる工程と、
    (α2)前記工程(α1)の後、超音波溶着またはホットプレスによって、前記樹脂部材の被接合面に、前記転写用部材の微細凹凸構造を転写する工程と、
    (α3)前記工程(α2)の後、前記樹脂部材と前記転写用部材とを分離する工程と
    を有する、樹脂部材の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂部材を製造する方法であって、
    (β1)金型の表面と、前記転写用部材の、微細凹凸構造が形成された面とは反対側の面とが接するように、前記金型内の前記樹脂部材の被接合面に対応した箇所に前記転写用部材を配置する工程と、
    (β2)前記工程(β1)の後、前記金型内に、液状の前記樹脂部材の材料を充填し、固化させて前記樹脂部材を形成する工程と、
    (β3)前記工程(β2)の後、前記金型から取り出した前記樹脂部材と前記転写用部材とを分離する工程と
    を有する、樹脂部材の製造方法。
  7. 前記転写用部材が、前記微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層を有し、
    前記硬化樹脂層が、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)と、Fedorの推算法で表されるsp値が20〜23である、3つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能モノマー(B)とを含み、組成物中の全モノマーの合計(100質量%)のうち、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)の割合が3〜18質量%であり、前記多官能モノマー(B)の割合が82〜97質量%である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物である、請求項5または6に記載の樹脂部材の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂部材からなる第1の部材と、
    前記第1の部材の被接合面に接着剤を介して接合された第2の部材と
    を有する、接合体。
  9. 前記第2の部材が、前記第1の部材とは樹脂の種類が異なる樹脂部材、または金属部材である、請求項8に記載の接合体。
  10. 前記第2の部材が、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を被接合面に有する樹脂部材である、請求項8に記載の接合体。
  11. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂部材からなる第1の部材の被接合面に、接着剤を介して第2の部材を接合する、接合体の製造方法。
  12. 前記第2の部材として、前記第1の部材とは樹脂材料の種類が異なる樹脂部材、または金属部材を用いる、請求項11に記載の接合体の製造方法。
  13. 前記第2の部材として、転写用部材の表面に形成された凸部間または凹部間の平均間隔が600nm以下の微細凹凸構造を転写することによって形成された凹凸を被接合面に有する樹脂部材を用いる、請求項11に記載の接合体の製造方法。
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