JP2017046672A - タレ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コク味及び香味野菜の風味が増強されたタレ及びその製造方法を提供する。【解決手段】醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が、タレ全体に対して0.007〜0.06%(w/w)となるようにタレに添加し、且つ、90℃未満の温度で加熱殺菌する。【効果】タレを製造する際に、タレに添加することで、簡便にコク味を増強できる。また、香味野菜の風味が高いタレ及びその製造方法を提供することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、醤油を火入れした際に副生する水不溶性蛋白質等を含む醤油火入れオリを添加することでコク味を増強した焼肉のタレ等のタレ及びその製造方法に関する。
食品を食した際の味覚としては、甘味、塩味、酸味、苦味及びうま味からなる5種の基本の味が知られているが、さらに、近年、6番目の味覚としてコク味が知られてきている。コク味とは、上記の基本の味の周辺に広がる厚み、持続性、まとまり等で表現される後味に代表される風味や香りを増強した味といわれている(非特許文献1)。
一般的に、各種食品に、畜肉エキス、鰹だしのような魚介類エキス、野菜エキス等を添加することで、食品にコク味が付与され、食品に複雑な味と幅を与えるとともに、後味が増強されることはよく知られている。コク味を増強する食品として上記のような各種の天然エキス類が広く用いられているが、これらの天然エキスは比較的高価であり、天然物由来の調味料に特有の原料の生産状況によっては入手困難となる問題がある。そこで、安価でコク味増強効果が高いエキス類として、グルタチオン等を含有する酵母エキスは広く利用されている。
また、最近、醤油の製造における副産物である醤油火入れオリを、香味野菜、油脂とともに醤油含有調味料に添加した後、さらに、90〜110℃で加熱することで、香味力価や嗜好性の向上に優れた効果を示す調味用素材が得られることが知られている。(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、加熱温度が85℃等では重い熟成臭が強く、異臭が漂うところ、90℃以上に加熱することで異臭がなくなる旨、記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載してあるように、醤油火入れオリを添加した後、90℃以上に加熱することで得られる調味用組成物は、高温で加熱するために、香味野菜、香辛料やだし類を含むタレ等の調味料の場合、香味野菜やだしの風味が劣化するという問題がある。
以上のことから、香味野菜や香辛料の風味等が劣化する高温の加熱をしなくても、タレ等の調味料に添加するだけでコク味が増強できる調味料の製造方法が求められている。
特許第4033602号公報
日本醸造協会誌,102巻第7号,頁520〜526,2007年
本発明は、調味料等の食品に添加するだけで、簡便にコク味を増強することができるタレの製造方法と、該製造方法を用いることでコク味が増強した焼肉のタレ等のタレを提供することを課題とする。
本発明者らは、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、所定の量でタレに添加し、90℃未満で加熱することで、香味野菜等の風味が強く、また、タレのコク味が増強されるという知見を得、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が0.007〜0.06%(w/w)となるように含有することを特徴とするタレ、
(2)90℃未満の温度で加熱殺菌されている(1)に記載のタレ、
(3)上記のタレが焼肉のタレである(1)又は(2)に記載のタレ、
(4)水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が0.007〜0.06%(w/w)となるようにタレに添加し、90℃未満の温度で加熱殺菌することを特徴とする、タレの製造方法、
(5)上記タレが焼肉のタレである(4)記載のタレの製造方法、
を提供するものである。
本発明では、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が0.007〜0.06%(w/w)となるようにタレ原料に添加することで、タレが持つコク味を増強することができ、タレを食した際に、味の濃厚感、その持続性及び旨味の広がりとで示される後味、すなわち、コク味を増強することができる。
また、90℃以上の高温で加熱しないために、香味野菜やだし等の風味を損なうことがない。更に、醤油火入れオリの添加量を上記のように限定したことにより、醤油火入れオリに含まれる水不溶性凝集物に由来する苦み等の異味も抑制することができる。
本発明は、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを添加することで、コク味を増強したタレ、及びその製造方法を提供するものである。本発明において、タレとは、料理に使う液状の合わせ調味料を意味する。具体的には、焼肉のタレ、蒲焼きのタレ、しゃぶしゃぶのタレ、照り焼きのタレ、焼き鳥のタレ、すきやきのタレ等を意味し、特には、焼肉のタレに好適である。
本発明における醤油火入れオリとは、醤油諸味を圧搾した後、火入れ殺菌した醤油を、数日〜約1週間静置後、火入れタンクの底部より分離される、水に不溶性の凝集沈澱物と醤油とが混合した混濁液を意味する。具体的には、醤油諸味を圧搾して得られた生醤油は、透明であるが、80〜110℃付近で行われる火入れ殺菌工程を経ると、主として醤油原料あるいは麹菌酵素等に由来する蛋白質や大豆由来の多糖類からなるオリ、すなわち、水に不溶性の凝集沈殿物(以下、水不溶性凝集沈殿物という)が生じ、やがて火入れタンクの底部に、醤油を多量に含む混濁液として沈澱してくる。この醤油と水不溶性凝集沈殿物からなる混濁液が、醤油火入れオリであるが、醤油火入れオリは、醤油を多量に含むため旨味は有するものの、色調が暗黒色で苦味を有し、塩味が強く、且つ、醸造臭が強いため、醤油の製造工程に戻すか、あるいは、廃棄されることが通常である。本発明における水不溶性蛋白質とは、上記に記載したように醤油を火入れすることにより凝集沈殿してくる、水に不溶性の蛋白質及び多糖類からなる水不溶性凝集沈殿物に含まれる水不溶性の蛋白質のことである。
本発明においては、上記の水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、タレに添加することで、タレのコク味を増強することができる。醤油火入れオリは、これをMF膜、あるいは遠心分離等で処理することにより、侠雑する醤油を除去することで、適宜濃縮することができる。また、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを濃縮後、必要に応じてデキストリン等の賦形剤を添加した後、スプレードライあるいは凍結乾燥等の処理をすることで、粉末や顆粒状の水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを得ることができ、その形態に特に限定はない。
上記の醤油火入れオリとしては、濃口醤油、薄口醤油、溜醤油及び再仕込醤油等の製造工程において、生醤油を火入れした際に副生する醤油火入れオリを使用できる。
本発明のタレにおいて、醤油火入れオリ以外の原料は、特に限定されず、通常のタレに使用されるものを使用できる。例えば、しょうゆや、食塩や、砂糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖)、水あめ等の糖類や、たまねぎ、にんにく、しょうが、パプリカ、パセリ等の香味野菜類や、ごま、クルミ等の種子類や、レモン果汁等の果実類や、コショウ、唐辛子等の香辛料や、グルタミン酸ナトリウム、酵母エキスなどの旨味調味料や、植物性油脂などの油脂や、みりん、酒などのアルコール調味料や、鰹節エキス、宗田節抽出物、昆布エキス等の各種だし類や、チキンエキス、ポークエキス等の畜肉エキスや、化工澱粉、増粘多糖類等の増粘剤などが挙げられる。なお、野菜類や果実類は、細断したり、すり下ろしたり、搾汁したりして添加することが好ましい。また、化工澱粉としては、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、湿熱処理澱粉等が好ましく使用でき、増粘多糖類としては、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム等が好ましく使用できる。油脂としては、コーンサラダ油、胡麻油、オリーブオイル等が好ましく使用できる。なお、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を添加してもよい。
水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリは、上記のような原料で製造されたタレに添加してもよく、タレの製造時にタレ原料に添加してもよい。この場合、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリは、ホモジナイズ等の均質化処理をしてからタレに加えることが好ましい。また、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリは、液状やペースト状あるいは粉末や課粒状で使用できることから、タレ等に直接添加することができ、また、水や溶媒等を用いて希釈して、希釈液として添加することもでき、さらに、酵母エキス、畜肉や魚介のエキスやグルテン等のタンパク加水分解物等と混合してタレに添加することもできる。
水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリをタレに配合する量は、コク味の増強に有効な量で、且つ、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリの水不溶性凝集沈殿物は苦みを有するため、この凝集沈殿物由来の苦みを示さない量とする。具体的には、醤油火入れオリに由来する前記水不溶性蛋白質の含有量がタレの全量に対して0.007〜0.06%(w/w)となるように添加することが好ましく、0.02〜0.05%(w/w)であることがより好ましい。タレの全量に対する水不溶性蛋白質の含有量が0.007%(w/w)未満の場合、コク味増強効果が乏しくなり、0.06%(w/w)を超えると、苦み等の水不溶性凝集物由来の異味が生じるため好ましくない。なお、本発明において、醤油火入れオリの配合量を、水不溶性蛋白質の含量で規定した理由は、醤油火入れオリは、調製方法によって濃度等にばらつきがあって、その添加量を正確に規定することができないためである。
こうして、タレに醤油火入れオリを添加した後、90℃未満、好ましくは60℃以上90℃未満で、加熱殺菌処理を行う。加熱時間は、長期保存に適した殺菌ができるように定めればよい。加熱殺菌を90℃以上の温度で行うと、香味野菜、香辛料やだし類の好ましい風味が劣化するので好ましくない。
本願発明では、醤油火入れオリの配合量を上記のように規定したことにより、加熱殺菌を90℃未満で行っても、醤油火入れオリに含まれる水不溶性凝集沈殿物に由来する苦み等の異味を抑制することができ、香味野菜、香辛料やだし類の好ましい風味を保持したままで、コク味が強い焼肉のタレ等のようなタレを製造することができる。
本発明において、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを添加するタレに関しては、特に限定はなく、具体的には、焼肉のタレ、蒲焼のタレ等の醤油を含むタレ類であれば使用でき、タレの後味を強め、コク味を増強することができ、非常に汎用性が高い。
以下に本発明を比較例及び試験例をあげて説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
本発明の食品に添加する水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを製造し、該醤油火入れオリを醤油に添加した際のコク味に及ぼす影響を検討した。
(水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリの製造)
水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリは、醸造終了後の濃口醤油もろ味から得られた生醤油を、100℃で加熱し火入れした後副生した醤油火入れオリ(キッコーマン食品社製)を用いた。
(醤油火入れオリ中の水不溶蛋白質量の算出)
水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリをタレに添加した際に、タレ中の水不溶性蛋白質の濃度を算出するために、醤油火入れオリの蛋白質量を算出した。具体的には、醤油火入れオリに含まれる水不溶性蛋白質の含有量は、醤油火入れオリの蛋白質量から水不溶性蛋白質を含む水不溶性凝集沈殿物を除去した醤油火入れオリのろ過液の蛋白質量との差から求めた。
蛋白質量は、改良ケルダール法によって窒素量を求めた後、五訂増補日本食品標準成分表(2009)の一般成分の分析法に記載されている蛋白質の算出法に基づいて、窒素量に調味料(醤油類)の「窒素−蛋白質換算係数5.71」を乗じることで求めた。表1に、上記で得られた醤油火入れオリに含まれる蛋白質量を示した。
なお、水不溶性蛋白質を含む水不溶性凝集沈殿物を除去した醤油火入れオリのろ過液は、上記で製造した醤油火入れオリを3日間放置した後の上澄み液を、ろ紙(No.2、東洋濾紙社製)及びメンブレンフィルター(C045A、東洋濾紙社製)を用いてろ過することで得た。
上記製造法で得られた水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリの蛋白質量は、窒素量が1.374%(w/w)と測定されたことから、蛋白質の含有量は、7.846%(w/w)と算出され、また、水不溶性蛋白質を含む水不溶性凝集沈殿物を除したろ液の窒素量が1.360%(w/w)と測定されたことから、蛋白質の含有量は7.766%(w/w)であった。したがって、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリに含まれる水不溶性蛋白質の含有量は、0.08%(w/w)と算出された。
(水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリの醤油に対するコク味増強効果)
2Lのステンレス製カップに、上記で製造した水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリと市販の濃口醤油(キッコーマン食品社製)とを表1の配合量で混合してから、80℃に達温加熱後、室温まで冷却することで、水不溶性蛋白質の含有量が異なる試験例1〜6の醤油火入れオリ含有醤油を作成した。なお、醤油火入れオリを添加しない市販の濃口醤油を比較例1とした。
本発明においてコク味に関する官能評価は、下記のようにして実施した。コク味の評価項目として、食した後の後味である、口中の濃厚感、持続性及び旨味の広がりに関して評価し、比較例1と比べて強い場合を○、やや強い場合を△、差がない場合を×として官能評価を行い、それぞれの評価項目について、すべて○の場合をコクが強いとして○を、ひとつでも△がある場合コクがやや強いとして△を、ひとつでも×がある場合コクに差がないと判断して×とした。
また、水不溶性凝集物は苦みを有することから、醤油等の調味料に添加した際の苦みの強さについて評価した。苦みの評価は、比較例1と比べて、苦みに差がない場合を○、やや強い場合を△、苦みが強い場合を×として官能評価を行った。総合評価は、コク味の強さと苦みの強さについて、どちらも○の場合を○、ひとつでも△の場合を△、ひとつでも×がある場合を×とした。また、総合評価が○において、特に好ましいコク味を有し、苦みが比較例1と差がない場合を◎とし、結果を表2に示した。
表2に示すように、水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリに含まれる水不溶性蛋白質が、醤油と醤油火入れオリの合計量に対して0.007〜0.06%(w/w)となるように添加することで、醤油のコク味が増強されることがわかった。しかし、該蛋白質の含有量が、醤油に対して0.19%(w/w)を超えるように、醤油火入れオリを配合すると、醤油火入れオリに含まれる水不溶性凝集沈殿物由来であると考えられる苦みを感じるようになり、好ましくないことがわかった。
(水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリによる焼肉のタレのコク味増強効果)
表3に記載した原料を配合して混和し、水で全量を1000gとすることで、表3に記載の温度で達温加熱した後、室温まで冷却して、焼肉のたれを製造した。水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを添加しない焼肉のタレを比較例2とし、また、醤油火入れオリを配合した焼肉のタレを試験7〜11とした。
ついで、比較例及び試験例の焼肉のタレのコク味について官能評価を行ったが、焼肉のタレにおいては、香味野菜を配合していることから、香味野菜の香りの強さについても官能評価を行い、比較例と同等の場合を○、比較例より悪い場合を×とした。コク味の増強効果及び苦みの評価は、実施例1に記載した方法に基づいて実施した。総合評価は各評価項目のすべてが○の時○、ひとつでも×がある時×とした。結果を表3に示した。
表3に示すように、水不溶性蛋白質を含有する醤油火入れオリを添加することにより、焼肉のタレのコク味が増強されることがわかった。しかし、加熱温度を100℃とした場合、香味野菜の風味が、弱くなることがわかった。

Claims (5)

  1. 水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が0.007〜0.06%(w/w)となるように含有することを特徴とするタレ。
  2. 90℃未満の温度で加熱殺菌されていることを特徴とする請求項1記載のタレ。
  3. 上記のタレが焼肉のタレである請求項1又は2に記載のタレ。
  4. 水不溶性蛋白質を含む醤油火入れオリを、該醤油火入れオリ由来の水不溶性蛋白質の含量が0.007〜0.06%(w/w)となるようにタレに添加し、90℃未満の温度で加熱殺菌することを特徴とする、タレの製造方法。
  5. 上記タレが焼肉のタレである請求項4記載のタレの製造方法。
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