以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
本実施形態における電力管理システムは、需要家の負荷電力が減少する時間帯において、蓄電が満充電となることを抑制しつつ、電力ピークの削減と負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)を両立する。負荷周波数制御とは、自然エネルギー電源の発電電力を調整することにより、電力系統の周波数を規定値に維持する制御である。本実施形態における電力管理システムは、負荷変動補償制御時において、大きな負荷電力減少時の蓄電池の蓄電池残量(SOC:State Of Charge)が目標値になるように蓄電池の出力を制御する。負荷変動補償制御は、負荷周波数制御の周波数帯域を含む比較的長周期の負荷変動に対して蓄電池の出力を追従させる制御である。例えば、大きな負荷減少時(以下、単に「負荷電力が減少する時間帯」という。)とは、蓄電池の充電量が多くなりSOCが満充電状態になる可能性のある時間帯である。SOCの目標値は、蓄電池の運転時間帯において蓄電池が満充電となって停止することなく、電力系統のピーク電力を削減できる蓄電池のSOCである。
以下、本実施形態における電力管理システムについて、具体的に説明する。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態における電力管理システム1について説明する。
図1は、第1の実施形態における電力管理システム1の構成を示すブロック図である。図1において、電力管理システム1は、システム演算部10、第1の過去実績データDB(データベース)11、第2の過去実績データDB(データベース)12(請求項における記憶部に対応する記載)、リアルタイムコントローラ13及び定置用蓄電池部14を備える。
システム演算部10は、気象情報取得部20、気象類似日負荷電力データ取得部21、蓄電池補償帯域決定部22、出力初期値決定部23及びSOC制御時間決定部24を備える。
リアルタイムコントローラ13は、第1格納部30、第2格納部31、SOC制御指令値計算部32及び蓄電池出力指令値計算部33を備える。
また、上記気象情報取得部20、気象類似日負荷電力データ取得部21及び第1の過去実績データDB11を負荷電力取得部40として構成することもできる。また、蓄電池補償帯域決定部22及び出力初期値決定部23を制御パラメータ決定部41として構成することもできる。また、SOC制御時間決定部24及び第2の過去実績データDB12をSOC制御時間帯決定部42として構成することもできる。また、第1格納部30、第2格納部31、SOC制御指令値計算部32、蓄電池出力指令値計算部33及び定置用蓄電池部14を蓄電池制御部43として構成することもできる。
負荷電力取得部40は、制御対象日の前日、又は前日よりも前の日に翌日(制御対象日)の気象情報と類似した気象情報に対応付けられて記録されている負荷電力の過去実績データ(平日、土日・祝日に対応)を取得する(1日1回)。より具体的には、第1の過去実績データDB11は、外部に設けられたシステムから、負荷電力の履歴、天気、温度、湿度等を含む気象情報を日付に対応づけて記憶する。
気象情報取得部20は、インターネット2を介して天気、温度、湿度等を含む気象情報を外部に接続された気象情報提供サーバ等から取得する。気象類似日負荷電力データ取得部21は、気象情報取得部20によって取得した気象情報に類似する気象情報が対応づけられた負荷電力のデータを、負荷電力の過去実績データとして第1の過去実績データDB11から取得する。気象情報が類似するか否かの判定は、例えば、天気(天候)が同じであり、お互いの温度と湿度とが、それぞれ所定の範囲内にあれば類似すると判定する。すなわち、天気が同じであっても、お互いの温度と湿度との少なくともいずれかが、所定の範囲外である場合には、類似しないと判定する。また、制御対象日における気温の推移予想グラフと過去の気象情報における気温の推移グラフの相関関係、制御対象日における湿度の推移予想グラフと過去の気象情報における湿度の推移グラフの相関関係によって類似を判断してもよい。なお、第1の実施形態において、負荷電力取得部40は、制御対象日の気象情報に類似する気象情報が対応づけられた負荷電力のデータを第1の過去実績データDB11から取得することで、制御対象日の負荷電力データを予測したが、これに限定されない。例えば、負荷電力取得部40は、ニュートラルネットワークやカルマンフィルタ等、既存の技術を用いて制御対象日の負荷電力データを予測してもよい。なお、気象類似日負荷電力データ取得部21は、例として、図2に示す負荷電力データを制御対象日の負荷電力データとして取得したとする。
制御パラメータ決定部41は、気象類似日負荷電力データ取得部21が取得した負荷電力データ(過去実績データ)を用いて、実効蓄電池容量でピーク電力削減量が最大となる補償周波数帯域及び出力初期値を決定する。ここで、補償周波数帯域とは、蓄電池で補償すべき負荷変動の周波数帯域である。補償周波数帯域を決定する目的は、様々な周波数成分で構成されている負荷変動において、与えられた蓄電池容量で最大限のピーク電力削減量を得るためには、蓄電池で補償すべき負荷変動の周波数帯域を決定する必要があるためである。なお、ピーク電力削減量とは、負荷電力がピークとなる時間帯において、そのピークの負荷電力を削減する削減量である。出力初期値とは、負荷の変動による電力量を補償する負荷変動補償の開始時刻における蓄電池から出力される出力の初期値である。
蓄電池補償帯域決定部22は、負荷電力取得部40が取得した負荷電力データ(過去実績データ)を用いて、高域遮断周波数及び低域遮断周波数を決定する。すなわち、蓄電池補償帯域決定部22は、時刻の経過と負荷電力との関係を表す負荷電力プロファイルのうち、ある時刻の範囲における負荷電力プロファイルから、又は、過去の類似する電力プロファイルや、シミュレーション結果などを解析することで、その負荷電力プロファイルに対応する最適な蓄電池の補償周波数帯域(高域遮断周波数及び低域遮断周波数)を求める。ここで、例えば、使用する負荷電力データは、業務時間帯のデータである。業務時間帯とは、負荷に電力を供給するために蓄電池の電力を放電する時間帯である。
以下に、第1の実施形態の蓄電池補償帯域決定部22の高域遮断周波数及び低域遮断周波数を決定する方法の一例を説明する。
まず、蓄電池補償帯域決定部22は、負荷電力に含まれる周波数成分を特定するため、負荷電力の過去実績データから、(1)式の離散フーリエ変換の公式を用いて、負荷電力の各周波数fkにおける実数部R(fk)、及び虚数部I(fk)を計算する。x(t)は負荷電力、fkは周波数、X(fk)は周波数fkにおける負荷電力、kは1からサンプル数Nまでの数を表す。
次に、蓄電池補償帯域決定部22は、(2)式に基づき、負荷電力の各周波数の振幅|X(fk)|[kW]を求める。kは、1からN/2までの数である。
次に、蓄電池補償帯域決定部22は、(3)式に基づき、実数部R(fk)及び虚数部I(fk)を用いて、位相差φ(fk)[rad]を求める。
なお、基本周波数f1は、(3)式に基づき、負荷電力のサンプリング間隔Δt、及びサンプル数Nから求められる。また、ナイキスト周波数fsは、(4)式及び(5)式に基づき求められる。
次に、図3を用いて、低域遮断周波数の決定方法を説明する。図3は、(2)式で求めた各周波数の振幅|X(fk)|の正弦波の時間積分による蓄電池容量の算出方法を示すグラフである。
図3において、縦軸は電力を表し、横軸は時間を表す。電力のグラフは、(2)式より求めた各周波数fkに対する振幅|X(fk)|を示し、正弦波の半周期分において、(3)式より求めた位相差φ(fk)を考慮して、蓄電池の充電期間における放電電力と放電期間における放電電力を示している。すなわち、図3における0〜φ(fk)における電力は充電電力を示し、φ(fk)〜1/2fkにおける電力は放電電力を示す。
ここで、負荷変動補償に必要な蓄電池容量は、放電量から充電量を引いた値、すなわち、図3の斜線部分で示した放電量から充電量を引いた値によって算出することができる。周波数fkにおける蓄電池容量は、以下に示す(6)式に基づき求められる。
蓄電池補償帯域決定部22は、離散フーリエ変換で求めた振幅|X(fk)|、周波数fk、及び位相差φ(fk)を用いて、図3に示す半周期分において蓄電池の充電量及び放電量を算出する。
また、位相差φ(fk)を0[rad]として考えると、(6)式においてcosφ(fk)=1となり、すなわち、周波数fkにおける蓄電池容量は、半周期において放電電力量に基づく値となる。一方、位相差φ(fk)が0[rad]でない値の場合を考慮すると、半周期分において、放電量に加えて充電量を考慮した電力量が計算される。位相差φ(fk)を考慮することにより、放電量のみを考慮した蓄電池容量に対して充電量を考慮するため、より小さい蓄電池容量を算出することになり、負荷変動補償に適切な蓄電池容量の決定をすることができる。
蓄電池補償帯域決定部22は、(7)式に示すように、各成分の周波数fkにおける蓄電池容量を低域遮断周波数から高域遮断周波数まで積算することにより、蓄電池容量W(放電量−充電量)を計算する。
このように、蓄電池補償帯域決定部22は、蓄電池容量Wついて、低域遮断周波数から高域遮断周波数まで積算することにより、低域遮断周波数と負荷変動補償に必要な蓄電池容量との関係を求めることができる。蓄電池補償帯域決定部22は、(7)式に示す関係から、実効蓄電池容量で最も補償周波数帯域を広くとれる低域遮断周波数を、2点の線形補間で求めることができる。すなわち、蓄電池補償帯域決定部22は、(7)式において求めた低域遮断周波数と負荷変動補償に必要な蓄電池容量との関係において、実効蓄電池容量において最も補償周波数帯域を広くとれる低域遮断周波数を求め、求めた補償周波数帯域の低域遮断周波数の高域側及び低域側の2点の周波数の線形補間によって低域遮断周波数を決定する。なお、高域遮断周波数は、短周期の速い変動を補償してもピーク電力削減効果が小さいことから固定値とする。
出力初期値決定部23は、蓄電池出力指令値計算部33から出力される蓄電池出力指令値(後述する)の初期値である出力初期値を算出する。例えば、出力初期値決定部23は、負荷電力取得部40が取得した負荷電力データを離散フーリエ変換し、蓄電池補償帯域決定部22によって算出された高域遮断周波数を上限値、低域遮断周波数を下限値として、逆離散フーリエ変換することで、蓄電池補償帯域決定部22が高域遮断周波数及び低域遮断周波数を設定した際に予想される蓄電池出力を求める。出力初期値決定部23は、求めた蓄電池出力に基づいて出力初期値を決定する。出力初期値決定部23は、決定した出力初期値、高域遮断周波数及び低域遮断周波数を制御パラメータとして第1格納部30に格納する。このように、制御パラメータ決定部41は、蓄電池補償帯域決定部22における上述のような補償周波数帯域を決定する処理、及び出力初期値決定部23における上述のような出力初期値を決定する処理を例えば1日に1回実行する。
SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21が取得した負荷電力データ(過去実績データ)に基づいて負荷電力が減少する時間帯を決定する。上述したように、第1の実施形態の電力管理システム1は、負荷電力が減少する時間帯において、SOCが目標値になるように蓄電池の出力を制御する。したがって、負荷電力が減少する時間帯とは、電力管理システム1が蓄電池の出力を制御することにより蓄電池のSOCを予め設定された目標値にする(又は目標値に近づける)時間帯を示している。以下、制御対象日の負荷電力が減少する時間帯を、SOC制御時間帯と称す。
SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データのパターンに類似するパターンを有する負荷電力データを第2の過去実績データDB12から抽出する。負荷電力データのパターンが類似するとは、所定の期間(例えば、1日、又は1か月等)における負荷電力の推移が類似することである。言い換えれば、SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データの負荷電力の推移が類似する負荷電力データを第2の過去実績データDB12から抽出する。そして、SOC制御時間決定部24は、抽出した負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯をSOC制御時間帯とする。第2の過去実績データDB12には、種々の代表的な負荷電力の推移パターンを備える複数の負荷電力データが予め記憶されており、その負荷電力データ毎に負荷電力が減少する時間帯が予め設定されている。したがって、SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データの負荷電力の推移に類似する推移パターンを有する負荷電力データを、第2の過去実績データDB12に記憶された複数の負荷電力データから選別する。図4は、第1の実施形態における第2の過去実績データDB12が記憶する代表的な推移パターンを有する負荷電力データの一例を示す図である。
例えば、第2の過去実績データDB12は、夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期(夏期と冬期との間、あるいは冬期と夏期との間の季節)の負荷電力データを備える。図4(a)は、第1の実施形態における夏期の負荷電力データの一例を示す。図4(b)は、第1の実施形態における冬期の負荷電力データの一例を示す。図4(c)は、第1の実施形態における中間期の負荷電力データの一例を示す。夏期の負荷電力データは、夏期の負荷電力データの平均値でもよいし、夏期の代表的な負荷電力データでもよいし、夏期の負荷電力データから所定の時間毎に代表的な負荷電力データを選択してプロットした負荷電力でもよい。冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データにおいても、上記夏期の負荷電力データと同様の方法で生成されてもよい。なお、第1の実施形態において、第2の過去実績データDB12が記憶する代表的なパターンを有する負荷電力データとして、夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データの3つの負荷電力データを例として説明したが、これに限定されない。すなわち、第2の過去実績データDB12が記憶する代表的なパターンを有する負荷電力データは、上記3つの負荷電力パターンに限定されず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。例えば、第2の過去実績データDB12が記憶する代表的なパターンを有する負荷電力データとして、夏期、冬期及び中間期等の季節ごとのデータと気象情報とを組み合わせた複数の負荷電力データを、第2の過去実績データDB12が記憶する代表的なパターンを有する負荷電力データとしてもよい。
以下に、SOC制御時間決定部24が第2の過去実績データDB12から抽出した負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯について説明する。例えば、図4に示す第2の過去実績データDB12に記憶されている夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データの各々には、予め負荷電力が減少する時間帯がそれぞれに対して設定されている。
図5は、図4に示す夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データの各々の負荷電力が減少する時間帯を示す図である。負荷電力が減少する時間帯は、負荷電力が大きく下がり、蓄電池に対する充電量が大きくなる時間帯である。なお、ピーク電力が発生する時間帯において放電量が制限されるのを防ぐため、ピーク電力が発生する時間帯では蓄電池のSOCを目標値とする制御(以下、「SOC制御」という。)をしない。すなわち、負荷電力が減少する時間帯は、ピーク電力が発生する時間帯を含まない。したがって、以下に列挙する4点により、図4に示す夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データの各々の負荷電力が減少する時間帯が設定されている。なお、第1の実施形態では蓄電池の運転開始時間を8時とし、蓄電池の運転終了時間を17時とする。
・昼休みの時間帯である12〜13時は消灯等により一時的に負荷電力が大きく下がる。
・夏期の場合、昼休みに負荷電力が下がるが、午後にピーク電力が現れるので、昼休みの時間帯のみSOC制御を行う。
・冬期の場合、昼休みに一旦負荷電力が下がると、そのままの状態を維持する。すなわち、昼休みに一旦負荷電力が下がると午後にピーク電力が現れない。したがって、12時〜17時までSOC制御する。
・中間期の場合、ピーク電力が現れないので、8時〜17時までSOC制御する。
以下に、SOC制御時間決定部24が気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データのパターンに類似するパターンを有する負荷電力データを、第2の過去実績データDB12に記憶された複数の負荷電力データから選別する方法について説明する。
SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データの負荷電力の値yp(以下、「予測値」という。)と第2の過去実績データDB12に記憶された負荷電力データの負荷電力の値yd(以下、「真値」という。)とを負荷電力データ毎に、且つ時間毎に比較することで、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データのパターンに類似するパターンを有する負荷電力データを決定する。具体的には、SOC制御時間決定部24は、予測値ypと真値ydとに基づいて、第2の過去実績データDB12に記憶された負荷電力データ毎に負荷予測誤差(EEP値)を算出する。例えば、SOC制御時間決定部24が算出した負荷予測誤差は、各予測値と真値との誤差の二乗の平均の平方根(二乗平均誤差)を百分率で示した値である。したがって、負荷予測誤差は、小さい値ほど予測値と真値とが一致している割合が高いことを示す。したがって、SOC制御時間決定部24は、第2の過去実績データDB12に記憶された複数の負荷電力データの中で、負荷予測誤差が最も小さい負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯をSOC制御時間帯とする。SOC制御時間決定部24は、決定したSOC制御時間帯を第2格納部31に格納する。例えば、SOC制御時間決定部24は、以下に示す(8)式を用いて負荷予測誤差を計算する。
なお、ydmaxは、真値の最大値である。nは、単位時間毎の負荷電力データにおける負荷電力のデータ数である。
次に、蓄電池制御部43が行う蓄電池制御処理について説明する。蓄電池制御部43は、例えば、蓄電池制御処理を制御周期1秒として実行する。蓄電池制御部43は、所定のアルゴリズムに従って、リアルタイム制御で、様々な周波数成分を持つ負荷電力の変動(買電電力と蓄電池出力との合計)から各補償周波数帯域の変動を抽出することで蓄電池出力値を求める。ただし、蓄電池制御部43は、第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯において、リアルタイム制御で取得した現在のSOCが目標値になるように、補償周波数帯域の負荷電力の変動(買電電力と蓄電池出力との合計)を補正する。
以下、第1の実施形態における蓄電池制御部43の蓄電池制御処理について、具体的に説明する。
図6は、第1の実施形態における蓄電池制御(SOC制御指令値計算部32及び蓄電池出力指令値計算部33の構成)を説明するブロック図である。
SOC制御指令値計算部32は、減算器321、変換部322及びスイッチ部323を備える。
減算器321は、SOC計測値をSOCの目標値で減算することで差分値ΔS(SOC計測値−SOCの目標値)を算出する。減算器321は、算出した差分値ΔSを変換部322に出力する。SOC計測値とは、リアルタイムに取得した現在の蓄電池のSOCである。
変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSを電力に変換する。例えば、変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSにゲインAを乗算する。ゲインAは、差分値ΔSを電力に変換する変換係数である。変換部322は、乗算することで変換した電力Y(=差分値ΔS×ゲインA)をSOC制御指令値としてスイッチ部323に出力する。SOC制御指令値は、蓄電池出力指令値計算部33に対して、SOC制御指令値が示す電力Yを充電又は放電するように指示する信号である。
SOC制御指令値計算部32は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当する場合、スイッチ部323をオン状態にして、変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力する。一方、SOC制御指令値計算部32は、現在の時間がSOC制御時間帯に該当しない場合、スイッチ部323をオフ状態にして、変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力しない。又は、SOC制御指令値計算部32は、現在の時間がSOC制御時間帯に該当しない場合、0kWであるSOC制御指令値(電力Y=0)を蓄電池出力指令値計算部33に出力する。
例えば、SOC計測値が55%、SOCの目標値が50%、ゲインAが2である場合、減算器321は、差分値ΔS=5%を算出する。そして、変換部322は、5%に2を乗算することで電力Y=10kWを算出する。すなわち、5%である差分値ΔSを電力Y=10kWに変換したことになる。そして、SOC制御指令値計算部32は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当する場合、スイッチ部323をオン状態にして、変換部322が決定したSOC制御指令値(電力Y=10kW)を蓄電池出力指令値計算部33に出力する。これにより、蓄電池出力指令値計算部33は、電力Y=10kWを蓄電池から放電することでSOCを目標値に近づける。なお、蓄電池出力指令値計算部33は、電力Yがプラスである場合には蓄電池から電力Yを放電し、電力Yがマイナスである場合には蓄電池に電力Yを充電する。
蓄電池出力指令値計算部33は、加算器331、バンドパスフィルタ332及び第1出力リミッタ333を備える。
加算器331は、買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値とを合計する。加算器331は、買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値とを合計した値をバンドパスフィルタ332に通す。
バンドパスフィルタ332は、第1格納部30に格納されている低域遮断周波数fHと高域遮断周波数fLと出力初期値とに従って、加算器331から供給される買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値との合計値をフィルタリングする。バンドパスフィルタ332は、フィルタリングすることで決定した出力信号を第1出力リミッタ333に出力する。
第1出力リミッタ333は、バンドパスフィルタ332から供給される出力信号の振幅を制限し、蓄電池出力指令値として出力する。すなわち、第1出力リミッタ333は、蓄電池残量SOCの上限設定値及び下限設定値から設定される出力上限値及び出力下限値の範囲内の補償周波数帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令値を求め、蓄電池出力指令値を定置用蓄電池部14に出力する。図7は、出力上限値及び出力下限値とSOCの上限設定値及び下限設定値との関係の一例を示す図である。
図7に示すように、例えば第1出力リミッタ333の上限値及び下限値は、蓄電池のSOCが以下の値となるように設定される。すなわち、第1出力リミッタ333の上限値は、満充電状態(SOC100%)に対して、充電時における蓄電池のSOCが20〜90%の間の予め設定される値となるように設定される。この上限値に応じて生成される蓄電池出力指令値が、定置用蓄電池部14に入力される。なお、第1出力リミッタ333の上限値は、SOCの目標値より高い値である。第1出力リミッタ333の下限値は、SOCの目標値より低い値である。
定置用蓄電池部14は、上記蓄電池出力指令値計算部33からの蓄電池出力指令値に従って、自身の内部に設けられた蓄電池の出力を制御する。
以下に、第1の実施形態のバンドパスフィルタ332のフィルタリングの一例を説明する。図8は、第1の実施形態のバンドパスフィルタ332のフィルタリングの一例を説明する図である。図8(a)は、第1の実施形態のバンドパスフィルタ332のフィルタリングを説明する図である。図8(b)は、第1の実施形態のバンドパスフィルタ332の概略構成の一例を示す図である。
図8(b)に示すうように、バンドパスフィルタ332は、ローパスフィルタ332−1及びハイパスフィルタ332−2を備える。ここで、ローパスフィルタ332−1の入力をx(n)、ローパスフィルタ332−1の出力(ハイパスフィルタ332−2の入力)をy(n)、ハイパスフィルタ332−2の出力をz(n)として、y(n)は、x(n)を入力とし、高域遮断周波数によって定められたx(n)の高域周波数を遮断するローパスフィルタ332−1の出力である。また、z(n)は、y(n)を入力とし、低域遮断周波数によって定められたx(n)の低域周波数を遮断するハイパスフィルタ332−2の出力である。例えば、蓄電池出力指令値計算部33は、加算器331から供給される買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値との合計値をx(n)として、高域遮断周波数及び低域遮断周波数からバンドパスフィルタ332の計算式を用いて上記出力信号をz(n)として求める。バンドパスフィルタ332の計算式は、以下の式で示すことができる。
ynは、中間出力値(kW)である。yn−1は、ynの1ステップ前の中間出力値(kW)である。ynは、以下に示す式で表すことができる。
ここで、xn−1は、バンドパスフィルタ332に入力するxnの1ステップ前の負荷電力(kW)である。Tは、制御周期であり、例えば1sである。ωLは、高域遮断角周波数である。ωHは、低域遮断角周波数である。ωL及びωHは、以下で示す式で表すことができる。
なお、fLは、高域遮断周波数である。fHは、低域遮断周波数である。
なお、図8(b)に示すように、バンドパスフィルタ332は、ローパスフィルタ332−1及びハイパスフィルタ332−2に分けることができる。したがって、蓄電池出力指令値計算部33は、ローパスフィルタ332−1及びハイパスフィルタ332−2の計算式に基づいて出力信号を計算することができる。すなわち、蓄電池出力指令値計算部33は、買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値との合計値x(n)及び高域遮断周波数(fL)からローパスフィルタ332−1の計算式を用いて、中間出力値y(n)を計算する。次に、蓄電池出力指令値計算部33は、計算した中間出力値y(n)及び低域遮断周波数(fH)からハイパスフィルタ332−2の計算式を用いて、出力信号z(n)を計算する。
このように、蓄電池出力指令値計算部33は、様々な周波数成分を持つ負荷電力である買電電力と蓄電池出力との合計に対して、SOC制御指令値を加算する。そして、蓄電池出力指令値計算部33は、加算結果を図6に示すバンドパスフィルタ332に通す。そして、蓄電池出力指令値計算部33は、SOCの上限設定値及び下限設定値から設定される出力上限値及び出力下限値の範囲内の補償周波数帯域の変動を抽出し、蓄電池出力指令値を出力する。これにより、蓄電池出力指令値計算部33は、負荷変動補償制御時において、現在のSOCが目標値になるように蓄電池の出力を制御することができる。すなわち、負荷変動補償制御時において、現在の時間がSOC制御時間帯に、SOCが目標値よりも大きい場合には、蓄電池出力指令値計算部33は、SOC制御指令値が示す電力を蓄電池から放電する。一方、負荷変動補償制御時において、現在の時間がSOC制御時間帯に、SOCが目標値よりも小さい場合には、蓄電池出力指令値計算部33は、SOC制御指令値が示す電力を蓄電池に充電する。
以下に、第1の実施形態におけるシステム演算部10の処理の一例を説明する。図9は、第1の実施形態におけるシステム演算部10の処理の一例を説明するフローチャートである。まず、第1の実施形態のSOC制御時間帯を決定する処理について説明する。図9(a)は、第1の実施形態のSOC制御時間帯を決定する処理のフローチャートである。
SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された負荷電力データの負荷電力の推移が類似する負荷電力データを第2の過去実績データDB12から選別する(ステップS101)。例えば、SOC制御時間決定部24は、第2の過去実績データDB12に記憶された複数の負荷電力データの中で、負荷予測誤差が最も小さい負荷電力データを選別する。
SOC制御時間決定部24は、選別した負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯をSOC制御時間帯に決定する(ステップS102)。
SOC制御時間決定部24は、決定したSOC制御時間帯を第2格納部31に格納する(ステップS103)。
次に、第1の実施形態の高域遮断周波数、低域遮断周波数及び出力初期値を決定する処理について説明する。図9(b)は、第1の実施形態の高域遮断周波数、低域遮断周波数及び出力初期値を決定する処理のフローチャートである。
蓄電池補償帯域決定部22は、負荷電力取得部40が取得した負荷電力データを用いて、高域遮断周波数及び低域遮断周波数を決定する(ステップS201)。
出力初期値決定部23は、負荷電力取得部40が取得した負荷電力データを用いて、出力初期値を決定する(ステップS202)。
出力初期値決定部23は、決定した出力初期値、高域遮断周波数及び低域遮断周波数を制御パラメータとして第1格納部30に格納する(ステップS203)。
以下に、第1の実施形態における蓄電池制御部43のリアルタイム制御の処理の一例を説明する。図10は、第1の実施形態における蓄電池制御部43のリアルタイム制御の処理の一例を説明するフローチャートである。
減算器321は、現在のSOCをSOCの目標値で減算することで差分値ΔSを算出する。減算器321は、算出した差分値ΔSを変換部322に出力する(ステップS301)。
変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSを電力に変換し、変換した電力をSOC制御指令値とする(ステップS302)。例えば、変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSにゲインAを乗算することで、差分値ΔSを電力に変換する。
SOC制御指令値計算部32は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当するか否かを判定する(ステップS303)。SOC制御指令値計算部32は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当する場合、SOC制御指令値を加算器331に出力する。一方、SOC制御指令値計算部32は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当しない場合、SOC制御指令値を加算器331に出力しない。
加算器331は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当する場合、買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値とを合計する(ステップS304)。一方、加算器331は、現在の時間が第2格納部31に格納されているSOC制御時間帯に該当しない場合、買電電力と蓄電池出力とを合計する(ステップS305)。
加算器331は、合計した合計値をバンドパスフィルタ332に通す(ステップS306)。これにより、バンドパスフィルタ332は、第1格納部30に格納されている低域遮断周波数fHと高域遮断周波数fLと出力初期値とに従って、加算器331で合計した合計値をフィルタリングする。バンドパスフィルタ332は、フィルタリングすることで決定した出力信号を第1出力リミッタ333に出力する。
第1出力リミッタ333は、蓄電池残量SOCの上限設定値及び下限設定値から設定される出力上限値及び出力下限値の範囲内の補償周波数帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令値を求め、蓄電池出力指令値を定置用蓄電池部14に出力する(ステップS307)。
次に、第1の実施形態の電力管理システム1の効果について説明する。以下に、電力管理システム1のピーク電力削減量についてMATLAB/Simulink(マトラボ(マットラブ)/シミュリンク)(登録商標)を用いてシミュレーションを行った。なお、蓄電池は、定格出力が90kWであり、定格容量が163kWhとして、上記シミュレーションを行った。ただし、電池残量の使用範囲を30%(SOC下限値)から95%(SOC上限値)と設定しているため、実効蓄電池容量は106kWhとなる。また、蓄電池の出力下限値を−90kWとし、出力上限値を90kWとした。
上記シミュレーションにおいて、気象情報取得部20は、過去の負荷電力データから翌日の気象情報と類似した負荷電力として図2に示す負荷電力データを取得したと仮定する。
蓄電池補償帯域決定部22は、図2に示す負荷電力データから、高域遮断周波数を10mHz、低域遮断周波数を0.045mHzに決定した。また、出力初期値決定部23は、蓄電池補償帯域決定部22が決定した高域遮断周波数及び低域遮断周波数に基づいて出力初期値を79.7kWに決定した。
上記シミュレーションにおいて、SOC制御時間決定部24は、気象類似日負荷電力データ取得部21によって取得された図2に示す負荷電力データの予測値ypと第2の過去実績データDB12に記憶された負荷電力データの負荷電力の真値ydとを負荷電力データ毎に比較し、負荷電力データのパターンに類似するパターンを有する負荷電力データを決定した。すなわち、SOC制御時間決定部24は、予測値ypと真値ydとに基づいて、第2の過去実績データDB12に記憶された負荷電力データ毎に(8)式を用いて負荷予測誤差(EEP値)を算出した。そして、SOC制御時間決定部24は、第2の過去実績データDB12に記憶された複数の負荷電力データの中で、負荷予測誤差が最も小さい負荷電力データを選択する。SOC制御時間決定部24は、選択した負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯をSOC制御時間帯とした。図11に、上記シミュレーションにおいてSOC制御時間決定部24が決定した負荷予測誤差及びSOC制御時間帯を示す。なお、第2の過去実績データDB12が記憶する代表的なパターンを有する負荷電力データとして、図4に示す夏期の負荷電力データ、冬期の負荷電力データ及び中間期の負荷電力データの3つの負荷電力データの場合とした。また、データ数nは、8時から17時まで(蓄電池運転時間帯)の負荷電力のデータ数であり、32401個とした。
図11に示すように、負荷電力データの予測値ypと夏期の負荷電力データの予測値ypとから負荷予測誤差24.7%が算出された。また、負荷電力データの予測値ypと冬期の負荷電力データの予測値ypとから負荷予測誤差7.2%が算出された。負荷電力データの予測値ypと中間期の負荷電力データの予測値ypとから負荷予測誤差54.3%が算出された。これにより、SOC制御時間決定部24は、最も小さい負荷予測誤差の真値として使用された冬期の負荷電力データの負荷電力が減少する時間帯(12時00分から17時00分)をSOC制御時間帯とした。SOC制御指令値計算部32は、SOCの目標値を80%として、SOC制御時間帯(12時00分から17時00分)にSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力した。
蓄電池出力指令値計算部33は、図2に示す負荷電力データを制御対象日の負荷電力データとした。蓄電池出力指令値計算部33は、図2に示す負荷電力データ(買電電力と蓄電池出力との合計)にSOC制御指令値を加算してバンドパスフィルタ332に通して、各補償周波数帯域の変動を出力信号として抽出した。そして、蓄電池出力指令値計算部33は、第1出力リミッタ333において、蓄電池残量SOCの上限設定値及び下限設定値から設定される出力上限値及び出力下限値の範囲内の補償周波数帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令値を求め、蓄電池出力指令値を定置用蓄電池部14に出力した。
図12は、シミュレーションにおいて、SOCが目標値である80%になるように蓄電池の出力を制御したときの電力管理システム1のシミュレーション結果を示す図である。図12(a)は1秒刻みの電力(kW)と電力量(kWh)を示す。図12(b)は、30分平均毎の負荷電力と買電電力との推移を示す図である。上記のシミュレーションの結果、第1の実施形態における電力管理システム1では、図12(a)に示すように、SOCの使用範囲が38.9〜95%となった。これにより、蓄電池の使用容量が、91.4kWhと計算され、図12(b)に示すようにピーク電力削減量が42.4kWと計算された。図12に示すように、第1の実施形態における電力管理システム1は、SOC制御時間帯である12時から17時までの間において、SOCを目標値である80%を維持するように制御することができる。したがって、電力管理システム1は、蓄電池の運転時間帯(8時から17時)において蓄電池が停止することなく、ピーク電力の削減を達成し、且つ蓄電池がピーク電力の削減の周波数帯域の変動に対応できている。すなわち、電力管理システム1は、蓄電池によるピーク電力の削減とピーク電力の削減とが両立できていることが確認された。なお、SOC制御では、変換部322が減算器321から供給された差分値ΔSにゲインAを乗算する比例制御を用いているため、定常偏差が残り目標値である80%を少しずれた状態を維持しているが、比例積分等の高精度の方法を用いることにより、定常偏差をより小さくすることができる。
図13は、従来の電力管理システムのシミュレーション結果を示す図である。図14は、従来の電力管理システムの概略構成図を示す図である。従来の電力管理システムは、電力管理システム1と比較して、SOC制御を実施しない構成である。
図13(a)は1秒刻みの電力(kW)と電力量(kWh)を示す。図13(b)は、30分平均毎の負荷電力と買電電力との推移を示す図である。なお、シミュレーションには、図2に示す負荷電力データをリアルタイムの負荷電力として用いた。上記のシミュレーションの結果、従来の電力管理システムでは、図13(a)に示すように蓄電池の使用容量91.4kWhと計算され、図13(b)に示すようにピーク電力削減量が42.4kWと計算された。図13に示すように、従来の電力管理システムは、ピーク電力の削減が可能であるが、蓄電池の運転時間帯において蓄電池が満充電となることで停止している時間帯がある。したがって、従来の電力管理システムでは、負荷電力が減少する時間帯において、負荷周波数制御の周波数帯の変動に対応できていないことがわかる。
図12及び図13に示すシミュレーションの結果より、第1の実施形態における電力管理システム1は、蓄電池の充電量を抑制しつつ、蓄電池によるピークカットと負荷周波数制御との機能を両立し、自然エネルギーを最大限活用することができる。したがって、第1の実施形態における電力管理システム1は、自然エネルギーを大量導入した様々な用途の建物に最適である。
上述したように、第1の実施形態の電力管理システム1は、制御対象日に所定の周波数帯域の負荷電力の変動を蓄電池の出力で補償する電力管理システムである。そして、第1の実施形態の電力管理システム1は、制御対象日の負荷電力が減少する時間帯に、補償周波数帯域の負荷電力の変動を補償し、且つ記蓄電池のSOCの値が目標値に収束するように蓄電池の出力を制御する。これにより、負荷電力が減少する時間帯において蓄電池が停止することなく、ピーク電力を削減できる。したがって、電力管理システム1は、ピーク時間帯の電力の削減と負荷周波数制御とを両立することが可能である。
上述の実施形態の電力管理システム1において、負荷電力が減少する時間帯が予め設定されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、負荷電力が所定の閾値を下回ったときの時間帯を負荷電力が減少する時間帯としてもよい。
また、上述の実施形態の電力管理システム1において、SOCの目標値は、過去の負荷電力の実績データから算出されてもよいし、気象類似日負荷電力データ取得部21が取得した負荷電力データに基づいて決定される蓄電池運電時間帯(又はSOC制御時間帯)に必要な蓄電池容量に基づいて決定されてもよい。
また、上述の実施形態の電力管理システム1において、スイッチ部323がオン状態になることで変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力したが、これに限定されない。例えば、スイッチ部323は、SOC制御指令値計算部32から供給される制御信号に基づいて変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力するものであればよい。すなわち、スイッチ部323は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。例えば、スイッチ部323は、SOC制御指令値計算部32から制御信号が供給される場合、変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力する。一方、スイッチ部323は、SOC制御指令値計算部32から制御信号が供給されない場合、変換部322が決定したSOC制御指令値を蓄電池出力指令値計算部33に出力しない。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態における電力管理システム1Aについて説明する。第2の実施形態における電力管理システム1Aは、負荷電力の過去実績データに基づいて閾値を決定する。そして、電力管理システム1Aは、制御対象日の負荷電力が上記閾値未満になる時間帯を制御対象日の前記負荷電力が減少する時間帯とする。
図15は、第2の実施形態における電力管理システム1Aの構成を示すブロック図である。図15において、電力管理システム1Aは、システム演算部10A、第1の過去実績データDB11、リアルタイムコントローラ13A及び定置用蓄電池部14を備える。
システム演算部10Aは、気象情報取得部20、気象類似日負荷電力データ取得部21、蓄電池補償帯域決定部22、出力初期値決定部23及び平均電力計算部25を備える。
リアルタイムコントローラ13Aは、第1格納部30、第3格納部34、SOC制御指令値計算部32A及び蓄電池出力指令値計算部33を備える。
平均電力計算部25を平均電力決定部42Aとして構成することもできる。また、第1格納部30、第3格納部34、SOC制御指令値計算部32A、蓄電池出力指令値計算部33及び定置用蓄電池部14を蓄電池制御部43Aとして構成することもできる。
平均電力計算部25は、気象類似日負荷電力データ取得部21が取得した負荷電力データに基づいて閾値を決定する。閾値とは、制御対象日において、現在の時間帯が、上記負荷電力が減少する時間帯であるか否かを判定する値である。例えば、平均電力計算部25は、気象類似日負荷電力データ取得部21が取得した負荷電力データの平均値(以下、「平均電力」)PAVEを閾値として求める。例えば、平均電力PAVEを求める際に使用する負荷電力データは、電力管理システム1Aが備えられている事務所等における業務時間帯のデータである。業務時間帯とは、蓄電池の運転時間帯を示す。したがって、例えば平均電力計算部25は、業務時間帯における負荷電力データの平均電力PAVEを決定する。平均電力計算部25は、決定した平均電力PAVEを第3格納部34に格納する。
次に、蓄電池制御部43Aが行う蓄電池制御処理について説明する。蓄電池制御部43Aは、例えば、蓄電池制御処理を制御周期1秒として実行する。蓄電池制御部43Aは、所定のアルゴリズムに従って、リアルタイムで、様々な周波数成分を持つ負荷電力の変動(買電電力と蓄電池出力との合計)から各補償周波数帯域の変動を抽出することで蓄電池出力値を求める。ただし、蓄電池制御部43Aは、蓄電池の電力を充電する時間帯において、制御対象日の負荷電力が平均値PAVE未満である場合には、リアルタイムに取得した現在のSOCが目標値になるように、補償周波数帯域の負荷電力の変動(買電電力と蓄電池出力との合計)を補正する。
以下、第2の実施形態における蓄電池制御部43Aの蓄電池制御処理について、具体的に説明する。図16は、第2の実施形態における蓄電池制御(SOC制御指令値計算部32A及び蓄電池出力指令値計算部33の構成)を説明するブロック図である。
図16に示すように、SOC制御指令値計算部32Aは、減算器321、変換部322及び第2出力リミッタ324を備える。
第2出力リミッタ324は、変換部322が決定した電力Yを取得する。第2出力リミッタ324は、制御対象日においてリアルタイムに取得した負荷電力と第3格納部34に格納されている平均電力PAVEとに基づいて、加算器331に出力するSOC制御指令値を決定する。第2出力リミッタ324は、決定したSOC制御指令値を加算器331に出力する。
図17は、第2の実施形態における第2出力リミッタ324のSOC制御指令値を決定する方法を説明する図である。
第2出力リミッタ324は、制御対象日においてリアルタイムに取得された負荷電力に基づいて計算される蓄電池出力Xを取得する。蓄電池出力Xは、蓄電池制御部43AがSOC制御を実施しないと仮定して算出した蓄電値出力値である。図18は、蓄電池制御部43Aにおける蓄電池出力Xの算出方法の一例を説明する図である。
蓄電池制御部43Aは、リアルタイムに取得した買電電力と蓄電池出力とを加算器331Aで加算することで負荷電力Ploadを求める。蓄電池制御部43Aは、バンドパスフィルタ332Aに負荷電力Ploadを通すことで、負荷電力Ploadの各補償周波数帯域の変動を蓄電池出力Xとして抽出する。なお、加算器331Aは、加算器331と同等の機能を備える。バンドパスフィルタ332Aは、バンドパスフィルタ332と同等の機能を備える。蓄電池制御部43Aは、抽出した蓄電池出力Xを第2出力リミッタ324に出力する。
図17に戻り、第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0未満であり、且つ現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満であるか否かを判定する。第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0未満であり、且つ現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満である場合、電力YをSOC制御指令値とし加算器331に出力する。一方、第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0以上、又は現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE以上である場合、0kWをSOC制御指令値とし加算器331に出力する。すなわち、本実施形態では、制御対象日の負荷電力Ploadが減少する時間帯を、負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満である時間帯とする。
図19は、第2の実施形態における蓄電池制御を説明する図である。なお、図19に示す図の縦軸は電力量を示し、横軸は時間を示す。図19に示すように、現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE以上である場合、蓄電池制御部43Aは、超えた分の負荷電力Ploadをピーク電力とみなす。そして、蓄電池制御部43Aは、ピーク電力を削減するために、買電電力を超えた分の負荷電力Ploadの電力、すなわち蓄電池出力Xを蓄電池から放電することで、ピーク電力における買電電力を削減する。この場合、蓄電池が満充電状態になることがないので、蓄電池制御部43AはSOC制御で蓄電池の充電量を制御する必要はない。一方、現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満である場合、蓄電池に電力が充電されるため、SOCが高くなり満充電状態になる場合がある。したがって、蓄電池制御部43Aは、SOC制御で蓄電池の充電量を制御する。なお、蓄電池制御部43Aは、蓄電池運転時間帯において蓄電池の電力を放電するか、蓄電池に電力を充電するかのいずれか実施するか判定するために負荷電力Ploadに基づいて蓄電池出力Xを計算している。すなわち、蓄電池出力Xが負の値である場合には蓄電池に電力を充電することを意味し、正である場合には蓄電池の電力を放電することを意味する。
以下に、第2の実施形態の平均電力PAVEを決定する処理について説明する。図20は、第2の実施形態の平均電力PAVEを決定する処理のフローチャートである。
平均電力計算部25は、気象類似日負荷電力データ取得部21から負荷電力データを取得する(ステップS401)。
平均電力計算部25は、気象類似日負荷電力データ取得部21から供給された負荷電力データにおいて、業務時間帯における負荷電力データの平均電力PAVEを決定する(ステップS402)。
平均電力計算部25は、決定した平均電力PAVEを第3格納部34に格納する(ステップS403)。
以下に、第2の実施形態における蓄電池制御部43Aのリアルタイム制御の処理の一例を説明する。図21は、第2の実施形態における蓄電池制御部43Aのリアルタイム制御の処理の一例を説明するフローチャートである。
減算器321は、現在のSOC(SOC計測値)をSOCの目標値で減算することで差分値ΔSを算出する(ステップS501)。減算器321は、算出した差分値ΔSを変換部322に出力する。
変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSを電力Yにする(ステップS502)。例えば、変換部322は、減算器321から供給された差分値ΔSにゲインAを乗算することで、差分値ΔSを電力Yに変換する。
蓄電池制御部43Aは、リアルタイムに取得した買電電力と蓄電池出力とを加算器331Aで加算することで負荷電力Ploadを求める。蓄電池制御部43Aは、バンドパスフィルタ332Aに負荷電力Ploadを通すことで、負荷電力Ploadの各補償周波数帯域の変動を蓄電池出力Xとして抽出する。第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0未満であり、且つ現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満であるか否かを判定する(ステップS503)。
第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0未満であり、且つ現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE未満である場合、電力YをSOC制御指令値とし加算器331に出力する(ステップS504)。
第2出力リミッタ324は、蓄電池出力Xが0以上、又は現在の負荷電力Ploadが平均電力PAVE以上である場合、0kWをSOC制御指令値とし加算器331に出力する(ステップS505)。
加算器331は、買電電力と蓄電池出力とSOC制御指令値とを合計する(ステップS506)。
加算器331は、合計した合計値をバンドパスフィルタ332に通す(ステップS507)。これにより、バンドパスフィルタ332は、第1格納部30に格納されている低域遮断周波数fHと高域遮断周波数fLと出力初期値とに従って、加算器331で合計した合計値をフィルタリングする。バンドパスフィルタ332は、フィルタリングすることで決定した出力信号を第1出力リミッタ333に出力する。
第1出力リミッタ333は、蓄電池残量SOCの上限設定値及び下限設定値から設定される出力上限値及び出力下限値の範囲内の補償周波数帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令値を求め、蓄電池出力指令値を定置用蓄電池部14に出力する(ステップS508)。
次に、第2の実施形態の電力管理システム1Aの効果について説明する。以下に、電力管理システム1Aのピーク電力削減量についてMATLAB/Simulink(マトラボ(マットラブ)/シミュリンク)(登録商標)を用いてシミュレーションを行った。なお、蓄電池は、定格出力が90kWであり、定格容量が163kWhとして、上記シミュレーションを行った。ただし、電池残量の使用範囲を30%(SOC下限値)から95%(SOC上限値)と設定しているため、実効蓄電池容量は106kWhとなる。また、蓄電池の出力下限値を−90kWとし、出力上限値を90kWとした。
上記シミュレーションにおいて、気象情報取得部20は、過去の負荷電力データから翌日の気象情報と類似した負荷電力として図2に示す負荷電力データを取得したと仮定する。
蓄電池補償帯域決定部22は、図2に示す負荷電力データから、高域遮断周波数を10mHz、低域遮断周波数を0.045mHzに決定した。また、出力初期値決定部23は、蓄電池補償帯域決定部22が決定した高域遮断周波数及び低域遮断周波数に基づいて出力初期値を79.7kWに決定した。平均電力計算部25は、図2に示す負荷電力データから、業務時間帯である8〜17時の負荷電力データの平均電力PAVEを264.8kWに決定した。
蓄電池出力指令値計算部33は、図2に示す負荷電力データを制御対象日の負荷電力データとした。また、制御周期は1秒とし、蓄電池の運転時間帯は8時〜17時までとした。また、SOCの目標値を80%とし、ゲインAを10とした。
図22は、シミュレーションにおいて、SOCが目標値である80%になるように蓄電池の出力を制御したときの電力管理システム1Aのシミュレーション結果を示す図である。図22(a)は1秒刻みの電力(kW)と電力量(kWh)を示す。図22(b)は、30分平均毎の負荷電力と買電電力との推移を示す図である。上記のシミュレーションの結果、第2の実施形態における電力管理システム1Aでは、図22(a)に示すようにSOCの使用範囲が38.9〜95%となった。これにより、蓄電池の使用容量が91.4kWhと計算され、図22(b)に示すようにピーク電力削減量は42.4kWと計算された。図22に示すように、第2の実施形態における電力管理システム1Aは、蓄電池の運転時間帯において、SOCを目標値である80%を維持するように制御することができる。したがって、電力管理システム1Aは、蓄電池の運転時間帯において蓄電池が停止することなく、ピーク電力の削減を達成し、且つ蓄電池がピーク電力の削減の周波数帯域の変動に対応できている。すなわち、電力管理システム1Aは、蓄電池によるピーク電力の削減と負荷周波数制御とが両立できていることが確認された。
図22及び図13に示すシミュレーションの結果より、第2の実施形態における電力管理システム1Aは、従来の電力管理システムと比較して、蓄電池の充電量を抑制しつつ、蓄電池によるピークカットと負荷周波数制御との機能を両立し、自然エネルギーを最大限活用することができる。したがって、第2の実施形態における電力管理システム1Aは、自然エネルギーを大量導入した様々な用途の建物に最適である。
上述したように、第2の実施形態における電力管理システム1Aは、制御対象日に所定の周波数帯域の負荷電力の変動を蓄電池の出力で補償する電力管理システムである。そして、第2の実施形態の電力管理システム1Aは、負荷電力データの過去実績データに基づいて閾値(例えば、平均電力PAVE)を求める。第2の実施形態の電力管理システム1Aは、蓄電池に電力を充電する時間帯において、制御対象日の負荷電力Ploadが閾値未満である場合、補償周波数帯域の負荷電力の変動を補償し、且つ蓄電池のSOCの値が目標値に収束するように蓄電池の出力を制御する。ただし、第2の実施形態の電力管理システム1Aは、蓄電池の電力を放電する時間帯、又は制御対象日の負荷電力Ploadが閾値以上である時間帯においてはSOC制御を実行しない。これにより、負荷電力が減少する時間帯において蓄電池が停止することなく、ピーク電力を削減できる。したがって、電力管理システム1Aは、ピーク時間帯の電力の削減と負荷周波数制御とを両立することが可能である。
上述した実施形態における電力管理システム1又は電力管理システム1Aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。