以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のエンジン2が搭載される車両1の概略構成図、図2は排熱利用装置21(排熱利用システム)の概略構成図である。
図1において、車両1には、動力源としてのエンジン2を車両1の前方(図1で左側)に備える。エンジンは例えばガソリンエンジンである。また、車両1は後輪駆動車である。車両1の床下には、変速機3、プロペラシャフト4、デファレンシャルギア装置5、ドライブシャフト6が車両1の後方(図1で右側)に向けてこの順に配置されている。最も車両後方に配置されるデファレンシャルギア装置を、以下単に「リアデフ」という。エンジン2の出力軸は変速機3、プロペラシャフト4、リアデフ5、ドライブシャフト6を介して、後輪(車両後方の駆動輪)7に伝えられる。前輪(車両前方の被駆動輪)8は操舵機構9に回転可能に設けられている。
エンジン2には燃焼室を出た排気を流す排気マニホールド(図示しない)及び排気マニホールドに接続される排気管11を備える。排気管11は車両1の床下を車両1の後方に向けて走り、排気管11の下流端が車両後方に開口するように配置されている。排気マニホールドの合流部直後などに例えば三元触媒などのマニホールド触媒12が、床下の排気管11に例えば三元触媒などのメイン触媒13が設けられている。排気管11の下流端にはマフラー14を備える。一方、車両1の前方にはエンジンを冷却するための部品であるラジエータ14とラジエータファン15が配置されている。
車両1には排熱利用装置21を備える。排熱利用装置21は、排熱回収器22、熱交換器31、リアヒーター41、これらを連絡する冷却水通路61,62,63、ウォータポンプ71から構成されている。ここでは、冷媒として冷却水を用いるが、冷却水に限定されるものでない。
排熱回収器22は、メイン触媒13よりも下流側の排気管11であってリアデフ5近傍の排気管11に設けられる。メイン触媒13よりも下流側の排気管11に排熱回収器22を設けるのは、次の理由からである。すなわち、メイン触媒13は活性温度に到達していないと機能しない(有害成分を浄化できない)ため、排熱(排気の有する熱)で常にメイン触媒13を活性温度にまで温めておく必要がある。メイン触媒13の上流側に排熱回収器22を設けるとすれば排熱回収器22の下流で排気温度が低下しメイン触媒13の機能に影響しかねない。メイン触媒13より下流側の排熱を有効利用するのであればメイン触媒13の機能に影響を与えることがない。そこでメイン触媒13の下流側に排熱回収器22を設けることとしたのである。
次に、リアデフ5近傍の排気管11に排熱回収器22を設けるのは、次の理由からである。すなわち、メイン触媒13下流の排気管11は、車両のレイアウト上、リアデフ5の近くに配置されていることが多い。従って、リアデフ5に熱交換器31を設け、排熱回収器22で温めた冷却水をこの熱交換器31に導くことでリアデフ5の暖機を促進することを考える。すると、排熱回収器22が熱交換器31に近い位置にあり、排熱回収器22と熱交換器31を結ぶ冷却水通路62が短くなることが、冷却水通路62からの放熱を最小限にするためにもベターである。そこで、リアデフ5近傍の排気管11に排熱回収器22を設けることにしたのである。
排熱回収器22は、図2にも示したように排気管11の外周を囲う円筒状の本体23、本体23の内部に設けられるウォータジャケット24(冷媒通路)から構成される。ウォータジャケット24には入口25と出口26が設けられる。ウォータジャケットの入口25は冷却水通路61に、ウォータジャケットの出口26は冷却水通路62に接続される。冷却水は入口25からウォータジャケット24に入ってウォータジャケット24を流れ、出口26から出て行く。排熱回収器22では、ウォータジャケット24を流れる冷却水と、排気管11を流れる排気との間で熱交換を行い、排気の熱を冷却水に回収する。このようにして熱回収され、暖まった冷却水は、冷却水通路62を介して熱交換器31に送られる。
熱交換器31は、リアデフ5のハウジング5A(デファレンシャルケース)の外周に、例えばリアデフ5の下半分の外周全体を覆うように、熱交換器の本体32が設けられる。リアデフ5は、ハウジング5Aとその内部に収納されるギア機構(図示しない)を備える。ギア機構は、プロペラシャフト4の回転を同シャフト4に直交配置される2つのドライブシャフト6,6に伝達するものである。ハウジング5Aの内部にはほぼ半分の液位で作動油であるギアオイルが封入されている。
熱交換器31は、図2にも示したように本体32、本体32の内部に設けられるウォータジャケット33(冷媒通路)から構成される。ウォータジャケット33には入口34と出口35が設けられる。ウォータジャケットの入口34は冷却水通路62に、ウォータジャケットの出口35は冷却水通路63に接続される。排熱回収器22で暖められた冷却水は入口34からウォータジャケット33に入ってウォータジャケット33を流れ、出口35から出ていく。熱交換器31では、ウォータジャケット33を流れる温められた冷却水と、ハウジング5A内部に貯留されているギアオイル(以下、「リアデフ内部のギアオイル」という。)との間で熱交換を行い、冷却水の熱でリアデフ内部のギアオイルを加熱する。これによって、リアデフ5の暖機を促進する。このようにして冷却水が熱をリアデフ内部のギアオイルに放出することで冷却水の温度(以下「冷却水温」ともいう。)が低下する。温度低下した冷却水は、冷却水通路63を介してリアヒーター41に送られる。
室内の冷却と暖房を行い得るエアコンディショナー(図示しない)が主に運転室側に設けられている。一方、リアヒーター41(ヒーター)は、このエアコンディショナーとは別に、例えば後席側に設けられる。エアコンディショナーとは別にリアヒーター41を設け、2つを共に働かせることで、全体の室内暖房を早期に行わせることができる。あるいは、後席側の室内暖房要求に応じることが可能となる。このように後席側にリアヒーター41を設けることは、特に室内空間の広いワンボックスカーにおいて有用である。ここでは、後席側の室内暖房要求に応じる場合で説明する。リアヒーター41は基本的に後席側の室内暖房のためのものであるので、空気を扱うこととなる。ここでは後席側の室内を中心に考え、後席側の室内の空気を「後席側の内気」と、後席側及び運転席側を含む車室の外の空気を「外気」という。
リアヒーター41の主要部は、図2にも示したようにダクト42、ヒーターコア43、ブロアファン46、外内気選択機構47から構成される。リアヒーター41を後席側に設けることで、熱交換器31とヒーターコア43を結ぶ冷却水通路63及びヒーターコア43と排熱回収器22を結ぶ冷却水通路61をともに短くすることができる。このように、排熱回収器22、熱交換器31、リアヒーター41を車両後方の床下や後席側にまとめて配置することで、排熱利用装置21の全体をコンパクトにすることができる。
空気(外気と後席側の内気)を流すためのダクト42が、例えば円筒状であるとすると、ヒーターコア43は、ダクト42の断面を仕切るように、例えば全体として薄い円柱状に形成されて配置される。ヒーターコア43は、冷却水が流れる多数のチューブ(冷媒通路)を支持する本体と、チューブの周辺に配置したフィンで構成され、チューブの外周を空気が通過し得るようになっている。ヒーターコア43としては周知の形状や構造であるものを採用すればよい。ヒーターコア43そのものは周知であるので詳述しない。ヒーターコア43には入口44と出口45が設けられる。入口44は冷却水通路63に、出口45は冷却水通路61に接続される。冷却水は入口44から入って多数のチューブを流れ、出口45から出て行く。
ヒーターコア43のすぐ下流にブロアファン46を備える。ブロアファン46のアクチュエータは例えばモータである。モータを制御することによってブロアファン46の回転速度を変え得る。ブロアファン46が駆動されると、ヒーターコア43のチューブの外周を空気が上流側(図2で左側)から下流側(図2で右側)に向けて一方向に通過する。このとき、ヒーターコア43では、チューブを流れる冷却水と、チューブの外周を通過する空気との間で熱交換を行う。
外内気選択機構47は、第1のモード、第2のモード、第3のモードの3つのモードを選択的に切換えるものである。第1のモードとは、ブロアファン46の駆動時に、ヒーターコア43に外気を通過させてヒーターコア43のチューブを流れる冷却水との間で熱交換を行わせ、熱交換した後の外気を室外に放出するモードのことである。第1のモードが必要となる理由は、次の通りである。すなわち、排熱利用装置21を設ける際には、メイン触媒13の下流側(排気通路11の下流側)に排熱回収器22を設けていても、エンジンの高負荷域では、排熱回収器22に導入される排気が高温となることから排熱回収器22を出る冷却水も高温となる。従って、高水温時の対策を予め考えておく必要があるためである。
これについて詳述すると、エンジンが高負荷域にあるということは、リアデフ5内部のギア機構も存分に働いているはずであり、ギア機構が盛んに熱を発生し、リアデフ内部のギアオイルの温度が上昇する。一方、排熱回収器22では高温の排気から熱回収するのであるから、エンジンが高負荷域以外にあるときよりも排熱回収器22を出る冷却水の温度が上昇する。リアデフ5内部のギア機構が盛んに熱を発生しギアオイルの温度が上昇しているというのに、この上昇した冷却水の熱を熱交換機31においてリアデフ内部のギアオイルに与え続けたのでは、ギアオイルが沸騰(気化)する恐れがある。リアデフ内部のギアオイルの一部でも沸騰すると、リアデフ5内部のギア機構を潤滑する効率が低下(信頼性が低下)してしまう。
そこで、熱交換器31の出口に水温センサ82を設けておき、水温センサ82により検出される冷却水温に基づいて、エンジンの高負荷域にあるか否かを判定する。ここで、エンジンの負荷が高くなるほど排熱回収器22に導入される排気の温度が高くなる。熱交換器31出口の冷却水の温度は、エンジンの負荷あるいは排熱回収器22に導入される排気の温度にほぼ比例するといえる。そして、熱交換器31出口の冷却水の温度からエンジンの高負荷域にあると判定されたときには、外内気選択機構47を第1のモードの位置に切換える。これによって、外気の温度がヒーターコア43のチューブを流れる冷却水よりも低いときには、ヒーターコア43のチューブを流れる冷却水からヒーターコア43のチューブの外周を流れる外気へと熱が移動するので、冷却水温が低下する。温度低下した冷却水を熱交換器31に導き、温度低下した冷却水とリアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換を行わせることで、リアデフ内部のギアオイルを冷却することが可能となる。このように、第1のモードを設けたのは、エンジンの高負荷域において排気管11の下流側であっても排気が高温となり排熱回収器22で回収される熱量が過剰気味なるので、この対策のためである。
第2のモードとは、ブロアファン46の駆動時に、ヒーターコア43に後席側の内気を通過させてヒーターコア43のチューブを流れる冷却水との間で熱交換を行わせ、熱交換した後の内気を後席側の室内に戻すモードのことである。例えば、後席側の室内暖房要求時で、ヒーターコア43のチューブを流れる冷却水の温度が後席側の内気よりも高いときには、外内気選択機構47を第2のモードに切換える。これによって、チューブを流れる冷却水からヒーターコア43のチューブの外周を流れる内気へと熱が移動するので、後席側の室内暖房を行わせることが可能となる。このように外内気選択機構47は、ブロアファン46の駆動時に、第1のモードと第2のモードとを選択的に切換え得るものである。
第3のモードとは、ブロアファン46の非駆動時に外内気選択機構47の作動を停止させるモードのことである。
次に、外内気選択機構47を詳述する。外内気選択機構47は、主に4つの各部屋48,49,52,53、2つの連動する三位置弁50,54から構成される。ヒーターコア43に外気または後席側の内気を導入するため、ヒーターコア41の上流側で外気を導入する外気部屋48と、後席側の内気を導入する内気部屋49とがダクト42の上下に仕切られている。ここで、外気部屋48は、図示しないダクトを介して室外(車室の外)の大気と連通している。内気部屋49は、図示しないダクトを介して後席側の室内と連通している。
第1三位置弁50は、外内気選択機構47の3つのモードに対応して、中間位置、内気側位置、外気側位置の3つの位置を採り得る。例えば、第1三位置弁50が中間位置にあるときを図4に、内気側位置にあるときを図5に、外気側位置にあるときを図6にモデルで示している。第1三位置弁50のアクチュエータ51はたとえばモータである。モータの回転運動を第1三位置弁50の動きに変換する機構を有している。アクチュエータ51が駆動信号を受けていないときには、第1三位置弁50が中立位置である中間位置にある。中間位置にあるときには、図2,図4に示したように外気部屋48、内気部屋49の両方がヒーターコア43の上流側と連通している。内気側位置を指示する駆動信号を第1三位置弁50のアクチュエータ51が受けて第1三位置弁50が内気側位置に移動したときには、図5に示したように内気部屋49の後席側の内気のみをヒーターコア43に導入する。一方、外気側位置を指示する駆動信号を第1三位置弁50のアクチュエータ51が受けて第1三位置弁50が外気側位置に移動したときには、図6に示したように外気部屋48の外気のみをヒーターコア43に導入する。
ヒーターコア43を出た空気を外気に放出するか後席側の室内に戻すため、ヒーターコア43の下流側に外気と連通する外気連通部屋52と、後席側の室内と連通する室内連通部屋53とがダクト42の上下に仕切られている。ここで、外気連通部屋52は、図示しないダクトを介して室外(車室の外)の大気と連通している。室内連通部屋53は、図示しないダクトを介して後席側の室内と連通している。
第2三位置弁54も、第1三位置弁50と同じに中間位置、内気側位置、外気側位置の3つの位置を採り得る。例えば、第2三位置弁54が中間位置にあるときを図4に、内気側位置にあるときを図5に、外気側位置にあるときを図6にモデルで示している。第2三位置弁54のアクチュエータ55もたとえばモータである。モータの回転運動を第2三位置弁54の動きに変換する機構を有している。第2三位置弁54は第1三位置弁50と連動させて駆動する。アクチュエータ55が駆動信号を受けていないときには、第2三位置弁54が中立位置である中間位置にある。中間位置にあるときには、図2,図4に示したように外気連通部屋52、室内連通部屋53の両方がヒーターコア43の下流側と連通している。内気側位置を指示する駆動信号を第2三位置弁54のアクチュエータ55が受けて第2三位置弁54が内気側位置に移動したときには、図5に示したように第2三位置弁54も内気側位置に移動する。一方、外気側位置を指示する駆動信号を第2三位置弁54のアクチュエータ55が受けて第2三位置弁54が外気側位置に移動したときには、図6に示したように第2三位置弁54も外気側位置に移動する。
3つの冷却水通路61,62,63(外部冷媒通路)は、排熱回収器22のウォータジャケット24、排熱回収器31のウォータジャケット33、ヒーターコア43のチューブと共に、閉じた一つの回路を構成している。このうち、冷却水通路61にウォータポンプ71(ポンプ)を備える。ウォータポンプ71を設ける位置は冷却水通路61に限定されない。ウォータポンプ71のアクチュエータは例えばモータである。モータを制御することによってウォータポンプ71の回転速度を変え得る。ウォータポンプ71を駆動すると、3つの冷却水通路61,62,63及び排熱回収器22のウォータジャケット24、熱交換器31のウォータジャケット33、ヒーターコア43のチューブを冷却水が循環する。
このように、排熱利用装置21を構成することで、エンジンの冷間始動後に排熱回収器22によって回収した排熱を用いてリアデフ内部のギアオイルを暖めたり、ヒーターコア43を熱源として用いて後席側の室内を暖房したりすることができる。一方、エンジンの高負荷域でヒーターコア43を放熱器として用いて冷却水を冷却し、これを熱交換器31に導くことでリアデフ内部のギアオイルを冷却することができる。
エンジンの冷間始動後におけるリアデフ5の暖機促進要求と後席側の暖房要求とに応じて、また高負荷域におけるリアデフ内部のギアオイルの冷却要求に応じてブロアファン46、2つの三位置弁、ウォータポンプ71を制御するため、制御装置81を備える。制御装置81には、水温センサ82からの実際の冷却水温の信号と、暖房スイッチ83からの後席側の暖房要求信号が入力されている。水温センサ82は熱交換器31出口の冷却水温を検出するためのものである。暖房スイッチ83は後席側の車室内に設けられている。後席側の乗員がリアヒーター41を作動させたいときに暖房スイッチ83をOFFからONに切換えると、このON信号が後席側の室内を暖房する暖房要求が有るという信号として制御装置81に伝わるようになっている。
制御装置81は、例えばマイコンから構成される。制御装置81では、後席側の暖房要求の有無と、水温センサ82により検出される熱交換器31出口の冷却水温に応じて、ブロアファン46、2つの三位置弁50,54、ウォータポンプ71を制御する。
次に、制御装置81において行われる、排熱利用装置21の制御方法を説明すると、図3は排熱利用装置の制御方法をまとめたものである。ここではエンジンの全運転域が対象となっている。エンジンの全運転域で排熱利用装置21を活用するため、2つの水温判定閾値T1[℃],T2[℃](T1<T2)を導入する。まず一方の水温判定閾値T1(第2所定値)は、エンジンの冷間始動後などに、リアデフ5の暖機促進を後席側の暖房要求よりも優先させるか否かを判定するための閾値である。熱交換器31出口の実際の冷却水温をT[℃]とすると、T<T1の温度域のときにリアデフ5の暖機促進を後席側の暖房要求よりも優先させることが必要な状態にあり、T1≦Tの温度域のときにリアデフ5の暖機促進と後席側の暖房要求を共に満たすことが必要な状態となる。
次に、他方の水温判定閾値T2(第1所定値)は、エンジンの高負荷域において、後席側の暖房が不要でかつリアデフ内部のギアオイルの冷却が必要であるか否かを判定するための閾値である。T<T2の温度域のときに後席側の暖房要求とリアデフ5の暖機促進が必要な状態にあり、T2≦Tの温度域のときに後席側の暖房が不要でリアデフ内部のギアオイルの冷却が必要な状態となる。
ここで、T2≦Tの温度域のときに後席側の暖房が不要となる理由は次の通りである。すなわち、運転席側に設けられるエアコンディショナーにもヒーターコア(図示しない)を有している。エンジンの暖機完了後にエンジンから熱を奪って温度上昇した冷却水は主にラジエータ14に導かれて冷却される一方で、温度上昇した冷却水の一部が、室内暖房用のヒーターコアに導入されている。T2≦Tの温度域になると、この室内暖房用のヒーターコアに導入される冷却水の温度が高くなる。T2≦Tの温度域でエアコンディショナーを作動させていると、この室内暖房用のヒーターコアからの温風によって、運転席側の室内だけでなく後席側の室内が暖房される。T2≦Tの温度域では後席側の暖房要求(つまり後席側のみの暖房要求)に応じなくても、後席側の暖房が運転席側に設けられているエアコンディショナーによって行われるのである。そこで、T2≦Tの温度域のときに後席側の暖房が不要としたものである。繰り返しになるが、後席側の暖房が行われない、あるいは後席側の暖房を行うことができない、ということではない。
この結果、熱交換器出口の冷却水温はT<T1の温度域、T1≦T<T2の温度域、T2≦Tの温度域の3つの温度域に分かれる。すなわち、T<T1の温度域(以下、「第1温度域」という。)は、リアデフ5の暖機促進要求を後席側の暖房要求よりも優先させることが必要な温度域である。T1≦T<T2の温度域(以下、「第2温度域」という。)は、リアデフ5の暖機促進要求と後席側の暖房要求をともに満たすことが必要な温度域である。T2≦Tの温度域(以下、「第3温度域」という。)は、後席側の暖房が不要でリアデフ内部のギアオイルの冷却が必要な温度域である。
このように、3つの各温度域によって要求が異なる。このため、図3のほぼ右側半分に示したように後席側の室内を暖房する暖房要求がある場合に、第1温度域で制御モード1を、第2温度域で制御モード2を、第3温度域で制御モード3を実行するようにしている。また、図3のほぼ左側半分に示したように後席側の室内を暖房する暖房要求がない場合に、第1及び第2の温度域で制御モード1を、第3温度域で制御モード3を実行するようにしている。
以下、制御モード1,2,3を、図4,図5,図6を参照して順に説明する。図4は制御モード1での排熱利用装置21の状態をモデルで示したものである。上記のように第1温度域は、リアデフ5の暖機促進要求を後席側の暖房要求よりも優先させることが必要な温度域である。ここで、リアデフ5の暖機促進要求を後席側の暖房要求よりも優先させる理由は次の通りである。すなわち、エンジンの冷間始動直後のような熱交換器出口の冷却水温が低い状態のときが第1温度域である。後席側の暖房要求があるからといって、熱交換器出口の冷却水温が低い場合にも、外内気選択機構47を第2のモードに切換えたのでは、リアヒーター41から低温の空気が後席側の室内に吹出し、後席側の乗員が寒く感じることとなるので、これを回避するためである。制御モード1では、外内気選択機構47を第3のモードに切換える。すなわち、排熱回収によってリアデフ5の暖機を促進するためウォータポンプ71をONとし(駆動)、リアヒーター41を非作動とするためブロアファン46をOFFとし(停止)、三位置弁50,54を中間位置にする。
ウォータポンプ71を駆動することで、冷却水が冷却水通路61,62,63及び排熱回収器22のウォータジャケット24、熱交換器31のウォータジャケット33、ヒーターコア43のチューブを循環する。排熱回収器22では、排熱が冷却水に回収されるため、冷却水が温まり、暖まった冷却水(温水)が熱交換器31に導かれる。この場合、排熱回収器22を流れる冷却水の流量と流速が、排熱回収器22に導入される排気から冷却水に回収される熱量(排熱回収効率)に関係する。冷却水通路の断面積が定まっているとして、冷却水の流れが速すぎるときには排熱回収器22で排熱を回収するのに却って効率が悪くなる。この反対に流れが遅過ぎるときには排熱回収器22で排熱を回収する効率は良くなっても回収した排熱を熱交換器5に輸送するのが遅れるため、リアデフ5の暖機に時間がかかってしまう。そこで、第1温度域で高い排熱の回収効率が得られかつリアデフ5の暖機が促進されるように、冷却水の流速、つまりウォータポンプ71の回転速度(以下「ポンプ回転速度」という。)を適合する。熱交換器31では、温水とリアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換が行われ、リアデフ内部のギアオイルの温度が上昇してゆく(リアデフ5の暖機が促進される)。リアヒーター41ではブロアファン46は停止し、三位置弁50,54は中間位置にあるため、リアヒーター41による後席側の暖房は作動しない。このように、制御モード1はリアデフ5の暖機促進モードである。
次に、図5は制御モード2での排熱利用装置21の状態をモデルで示したものである。上記のように第2温度域は、リアデフ5の暖機促進要求と後席側の暖房要求をともに満たすことが必要な温度域である。このため、制御モード2では、外内気選択機構47を第2のモードに切換える。すなわち、排熱回収によってリアデフ5の暖機を促進しかつ後席側の暖房を行うため、ウォータポンプ71をONとし(駆動)、ブロアファン46をONとし(駆動)、三位置弁50,54を内気側位置にする。
ウォータポンプ71を駆動することで、冷却水が冷却水通路61,62,63及び排熱回収器22のウォータジャケット24、熱交換器31のウォータジャケット33、ヒーターコア43のチューブを循環する。この場合、排熱回収器22に導入される排気の温度が第1温度域のときよりも高くなることから、排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が多くなる。そこで、第2温度域では、リアデフ5の暖機促進が効率よく行われるように冷却水の流速、つまりポンプ回転速度を適合する。排熱回収器22では、排熱が冷却水に回収されるため、冷却水が温まり、暖まった冷却水(温水)が熱交換器31に導かれる。熱交換器31では、温水とリアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換が行われ、リアデフ内部のギアオイルの温度が上昇してゆく(リアデフ5の暖機が促進される)。
図4と図5とでは、図5のほうが排熱回収器22に導入される排気の温度が高い分だけ排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が多く、その分、熱交換器出口の冷却水温が高くなる。この高くなった温水がリアヒーター41のヒーターコア43に導かれる。つまり、ヒーターコア43のチューブを流れる冷却水の温度が図4の場合より高くなる。リアヒーター41では、ブロアファン46が駆動され、2つの三位置弁50,54が内気側位置にあるため、ヒーターコア43を通過する後席側の内気と温水との間で熱交換が行われる。このときチューブを流れる温水は、図4の場合よりも高くなっているので、内気よりも暖かく、従って後席側の内気の温度が上昇してゆく(後席側の暖房が作動する)。この場合、チューブの外周を流れる内気の流速が、チューブを流れる冷却水から奪うことのできる熱量に関係し、内気の流速が速いほど冷却水から奪うことのできる熱量が多くなる。一方、内気の流速は速いほどよいわけでなく、内気の流速を速くし過ぎても、冷却水から熱を奪う効率が低下する。よって、第2温度域でヒーターコア43のチューブを流れる冷却水から奪うことのできる熱量が最大となるように内気の流速、つまりブロアファン46の回転速度(以下「ファン回転速度」という。)を適合する。ヒーターコア43のチューブを流れることによって温度低下した冷却水は排熱回収器22に戻され、再び排熱を冷却水に回収する。このように、制御モード2はリアデフ5の暖機促進と後席側の暖房をともに行わせるモードである。
次に、図6は制御モード3での排熱利用装置21の状態をモデルで示したものである。上記のように第3温度域は、後席側の暖房が不要でリアデフ内部のギアオイルの冷却が必要な温度域である。制御モード3では、外内気選択機構47を第1のモードに切換える。すなわち、リアデフ内部のギアオイルを冷却するため、ウォータポンプ71をONとし(駆動)、ブロアファン46をONとし(駆動)、三位置弁50,54を外気側位置にする。
ウォータポンプ71を駆動することで、冷却水が冷却水通路61,62,63及び排熱回収器22のウォータジャケット24、熱交換器31のウォータジャケット33、ヒーターコア43のチューブを循環する。この場合、ヒーターコア43のチューブに導入される冷却水の温度が第2温度域のときよりも高くなっている。このため、チューブの外周を流れる外気が、第2温度域での内気と同じ流速であると、チューブを流れる冷却水から奪うことのできる熱量が最大とならないことが考えられる。そこで、第3温度域でも、チューブを流れる冷却水から奪うことのできる熱量が最大となるように外気の流速、つまりファン回転速度を適合する。リアヒーター41では、ブロアファン46が駆動され2つの三位置弁50,54が外気側位置にある(後席側の暖房は非作動)ため、ヒーターコア43のチューブの外周を通過する外気と、チューブを流れる高温の温水との間で熱交換が行われ、冷却水温が低下する。温度低下した冷却水(冷水)は排熱回収器22に戻される。
ここで、熱交換器出口の冷却水の温度は、排熱回収器22に導入される排気の温度にほぼ比例する。ウォータポンプ71の回転速度が図5と図6で一定であるとすれば、図6のほうが排熱回収器22に導入される排気の温度が高い分だけ排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が多くなる。せっかくヒーターコア43を放熱器として利用し、高温となった冷却水の温度を低下させていても、排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が多くなったのでは、ヒーターコア43で冷却水の温度を低下させた効果が減殺されてしまう。そうならないようにするためには、図6のほうが排熱回収器22に導入される排気の温度が高くなっても、排熱回収器22で冷却水に回収される熱量をできるだけ少なくすることである。そのためには、排熱回収器22を流れる冷却水の流速を例えば図5の場合より速くすることが考えられる。冷却水の流速を速くすると、排熱回収器22で排熱を冷却水に回収する前に冷却水が流れ去ることになって排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が少なくなるためである。従って、排熱回収器22で冷却水に回収される熱量ができるだけ少なくなり、できるだけ熱回収しないで温度低下した冷却水が熱交換器31に導入されるように排熱回収器22を流れる冷却水の流速、つまりポンプ回転速度を適合する。熱交換器31では、こうして温度低下させた冷却水とリアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換が行われ、リアデフ内部のギアオイルの温度が低下される。このように、制御モード3はリアデフ内部のギアオイルの冷却モードである。
3つの各温度域で適合するポンプ回転速度をモデルで示したのが図7である。図7に実線で示したように、第1温度域でのポンプ回転速度は例えば所定値a、第2温度域でのポンプ回転速度は例えば所定値b、第3温度域でのポンプ回転速度は例えば所定値cである。このように、ポンプ回転速度は冷却水温に対して階段的な値となっている。同様に、第2、第3の2つの温度域で適合するファン回転速度をモデルで示したのが図8である。図8に実線で示したように、第1温度域でのファン回転速度はゼロ、第2温度域でのファン回転速度は例えば所定値e、第3温度域でのファン回転速度は例えば所定値fである。このように、ファン回転速度は冷却水温に対して階段的な値となっている。
つぎに、制御装置81で行われる制御を、図9A,図9Bのフローチャートを参照して説明する。図9A,図9Bのフローは一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ1では、エンジンの冷間始動後に本実施形態の排熱利用システムを開始してよい状態にあるか否かを判定する。本実施形態の排熱利用システムを開始してよい状態にないときにはそのまま今回の処理を終了する。やがて、ステップ1で本実施形態の排熱利用システムを開始してよい状態になるとステップ2に進み、後席側の暖房要求が有るか否かをみる。暖房スイッチ83がONになっていれば後席側の暖房要求が有ると、暖房スイッチ83がOFFになっていれば後席側の暖房要求がないと判断する。
後席側の暖房要求があると判断したときには、ステップ3,4に進み、水温センサ82により検出される熱交換器31出口の冷却水温T[℃]と水温判定閾値T1,T2[℃]を比較する。水温判定閾値T1,T2はエンジンの仕様毎に及びエンジンを搭載する車両の仕様毎に異なると考えられるので、適合により設定する。熱交換器31出口の冷却水温Tが水温判定閾値T1未満であるときには第1温度域にあると判断する。熱交換器31出口の冷却水温が水温判定閾値T1以上で水温判定閾値T2未満であるときには第2温度域にあると、熱交換器31出口の冷却水温Tが水温判定閾値T2以上であるときには第3温度域にあると判断する。熱交換器出口の冷却水温が第1温度域にあるときにはステップ5〜9に、熱交換器出口の冷却水温が第2温度域にあるときにはステップ10〜14に、熱交換器出口の冷却水温が第3温度域にあるときにはステップ15〜19に進む。
第1温度域にあるときに進むステップ5,6,7では制御モード1とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をOFFにし、2つの三位置弁50,54を中間位置にする。
ステップ8ではポンプ回転速度に所定値aを入れる。所定値aは、排熱回収器22を流れる冷却水の流速を定めるもので、第1温度域で高い排熱の回収効率が得られかつリアデフ5の暖機が促進されるように適合されている。これによって、リアデフ5の暖機促進要求を後席側の暖房要求よりも優先させることができる。ステップ9ではファン回転速度にゼロを入れる。
第2温度域にあるときに進むステップ10,11,12では制御モード2とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をONにし、2つの三位置弁50,54を内気側位置にする。
ステップ13ではポンプ回転速度に所定値bを入れる。所定値bは、冷却水の流速を定めるもので、第2温度域で排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が多くなって、リアデフ5の暖機促進と後席側の室内暖房が効率よく行われるように適合されている。ステップ14ではファン回転速度に所定値eを入れる。所定値eは、内気の流速を定めるもので、第2温度域でヒーターコア43のチューブから熱を効率よく奪って後席側の室内に送ることができるように適合されている。これによって、リアデフ5の暖機促進要求と後席側の暖房要求をともに満たすことができる。
第3温度域にあるときに進むステップ15,16,17では制御モード3とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をONにし、2つの三位置弁50,54を外気側位置にする。
ステップ18ではポンプ回転速度に所定値cを入れる。所定値cは、冷却水の流速を定めるもので、第3温度域で排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が少なくなって熱交換器31に導入される冷却水の温度が低下し、リアデフ内部のギアオイルが効率よく冷却されるように適合されている。ステップ19ではファン回転速度に所定値fを入れる。所定値fは、第3温度域でヒーターコア43のチューブから熱を効率よく奪って外気に放出することができるように適合されている。これによって、リアデフ内部のギアオイルを冷却することができる。
この場合、後席側の暖房要求があるのにも拘わらず、外内気選択機構47を第1のモードにしているので、リアヒーター41によって後席側の室内暖房が行われることはない。しかしながら、運転席側に設けられているエアコンディショナーを作動状態にしてあれば、エアコンディショナーによって、運転席側の室内だけでなく後席側の室内も暖房されるので、問題ない。
ステップ2で後席側の暖房要求無しと判断したときにはステップ20,21に進み、水温センサ82により検出される熱交換器31出口の冷却水温T[℃]と水温判定閾値T1,T2[℃]を比較する。熱交換器31出口の冷却水温Tが水温判定閾値T1未満であるときには第1温度域にあると判断する。熱交換器31出口の冷却水温が水温判定閾値T1以上で水温判定閾値T2未満であるときには第2温度域にあると、熱交換器31出口の冷却水温Tが水温判定閾値T2以上であるときには第3温度域にあると判断する。熱交換器出口の冷却水温が第1温度域にあるときにはステップ22〜26に、熱交換器出口の冷却水温が第2温度域にあるときにはステップ27〜31に、熱交換器出口の冷却水温が第3温度域にあるときにはステップ32〜36に進む。
第1温度域にあるときに進むステップ22,23,24では制御モード1とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をOFFにし、2つの三位置弁50,54を中間位置にする。
ステップ25ではポンプ回転速度に所定値aを入れる。所定値aは、排熱回収器22を流れる冷却水の流速を定めるもので、第1温度域で高い排熱の回収効率が得られかつリアデフ5の暖機が促進されるように適合されている。これによって、リアデフ5の暖機促進要求を後席側の暖房要求よりも優先させることができる。ステップ26ではファン回転速度にゼロを入れる。
第2温度域にあるときに進むステップ27,28,29でも制御モード1とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をOFFにし、三位2つの置弁50,54を内気中間位置にする。ステップ30,31では、ステップ25,26と同じにポンプ回転速度に所定値aを、ファン回転速度にゼロを入れる。後席側の暖房要求がないときに制御モード1とする理由は、後席側の暖房要求がないのであるから、リアデフ5の暖機促進を専ら行わせればよいためである。
第3温度域にあるときに進むステップ32,33,34では制御モード3とするため、ウォータポンプ71をONにし、ブロアファン46をONにし、2つの三位置弁50,54を外気側位置にする。
ステップ35ではポンプ回転速度に所定値cを入れる。所定値cは、冷却水の流速を定めるもので、第3温度域で排熱回収器22で冷却水に回収される熱量が少なくなって熱交換器31に導入される冷却水の温度が低下し、リアデフ内部のギアオイルが効率よく冷却されるように適合されている。ステップ36ではファン回転速度に所定値fを入れる。所定値fは、第3温度域でヒーターコア43のチューブから熱を効率よく奪って外気に放出することができるように適合されている。これによって、リアデフ内部のギアオイルを冷却することができる。
この場合、後席側の室内を暖房する暖房要求がないので、外内気選択機構47を第1のモードにしていても問題ない。
図示しないフローでは、このようにして決定したウォータポンプ71に対するON、OFFの信号がウォータポンプ71に、このようにして決定したブロアファン46に対するON、OFFの信号がブロアファン46に出力される。また、このようにして設定したポンプ回転速度が得られるように制御量がウォータポンプ71のアクチュエータ(モータ)に、このようにして設定したファン回転速度が得られるように制御量がブロアファン46のアクチュエータ(モータ)に出力される。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態の排熱利用システムは、排熱回収器22と、熱交換器31と、ヒーターコア43と、ブロアファン46と、冷却水通路61,62,63(冷媒通路)と、ウォータポンプ71(ポンプ)と、制御装置81(制御部)と、を備えている。上記排熱回収器22は内部にギアオイルを封入したリアデフ5のハウジング5A(デファレンシャルケース)の近傍の排気管11に設けられ、排気管11を流れる排気と冷却水(冷媒)との間で熱交換を行い得る。上記熱交換器31はリアデフ5のハウジング5Aに設けられ、ギアオイルと冷却水との間で熱交換を行い得る。上記ヒーターコア43は空気と冷却水との間で熱交換を行い得る。上記ブロアファン46はヒーターコア43に空気を一方向に通過させる。上記冷却水通路61,62,63は排熱回収器22、熱交換器31、ヒーターコア43を接続する。上記ウォータポンプ71は冷却水を冷却水通路61,62,63に循環させる。上記制御装置81は冷却水の温度が第3温度域(予め定めた第1所定値より高い温度域)にあるときに、制御モード3を実行する。
制御モード3は、ポンプ71とブロアファン46を駆動すると共に、ヒーターコア43に外気を通過させて冷却水との熱交換を行い、熱交換した後の外気を室外に放出する第1のモードとするものである。
本実施形態では、エンジンの高負荷域で冷却水が高温となったときには、ヒーターコア43を放熱器として利用し、高温となった冷却水を冷却できるため、従来装置のようにバイパス通路と排気切換弁を設ける必要がない。また、ヒーターコア43で冷却水から放熱させているので、放熱不足により冷却水が沸騰する恐れを回避できる。また、エンジンの高負荷域で車両を走行させている場合にリアデフ5内部のギア機構が高い回転速度で回転するときにはリアデフ内部のギアオイルが過熱気味となり得る。このとき、ヒーターコア43での放熱によって温度低下した冷却水が熱交換器31に導かれることで、温度低下した冷却水とリアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換が行われる。過熱気味のギアオイルよりも冷却水の温度が低いときには、熱交換器31がオイルクーラーとして機能することになり、リアデフ5内部のギア機構の高負荷域における信頼性を向上できる。
本実施形態では、制御装置81が、室内を暖房する暖房要求が有り、かつ第2温度域(第1所定値より低い値であって予め定めた第2所定値から第1所定値までの温度域)に冷却水温(冷媒の温度)があるときに、制御モード2を実行する。制御モード2は、ポンプ71とブロアファン46を駆動すると共に、ヒーターコア43を通過させて冷媒との熱交換を行わせ、熱交換した後の内気を室内に戻す第2のモードとするものである。本実施形態では、排熱回収器22で回収した排熱を後席側の室内暖房に利用できるため、後席側の室内暖房要求に応えることができる。また、熱交換器31では、排熱回収器22に回収した排熱によって温度上昇した冷却水と、リアデフ内部のギアオイルとの間で熱交換が行われるため、リアデフ5の暖機を促進することがきる。これによって、室内を暖房する暖房要求が有り、かつ第2温度域にあるときに、リアデフ内部のギアオイルの粘性が低下しリアデフ内部のギア機構の回転に伴うフリクションが下がるため、車両の実用走行域での燃費を改善できる。
本実施形態では、制御装置81が、第1温度域(冷媒温度が第2所定値未満の温度域)にあるときに、制御モード1を実行する。言い換えると、制御モード2、制御モード3のいずれも実行しない。ここで、制御モード2は、上記のようにポンプ71とブロアファン46を駆動すると共に、ヒーターコア43を通過させて冷媒との熱交換を行わせ、熱交換した後の内気を室内に戻す第2のモードとするものである。また、制御モード3は、上記のようにポンプ71とブロアファン46を駆動すると共に、ヒーターコア43に外気を通過させて冷却水との熱交換を行い、熱交換した後の外気を室外に放出する第1のモードとするものである。第1温度域にあるときとは、例えばエンジンの冷間始動後まもない時期である。この時期にはリアデフ内部のギアオイルが大気と同じ低い温度にあるため、リアデフ内部のギアオイルの粘性が高く、リアデフ内部のギア機構が回転するときのフリクションが大きい。本実施形態では、この時期に制御モード1を実行することで排熱でリアデフ5の暖機を促進することができる。これによって、第1温度域にあるときにリアデフ5の暖機を促進することでリアデフ内部のギアオイルの粘性が低下するため、車両の実用走行域での燃費改善が期待できる。
本実施形態では、制御装置81が、室内を暖房する暖房要求が無く、かつ第2温度域(第1所定値より低い値であって予め定めた第2所定値から第1所定値までの温度域)に冷却水温(冷媒の温度)があるときに、制御モード1を実行する。言い換えると、制御モード2、制御モード3のいずれも実行しない。室内を暖房する暖房要求が無く、かつ第2温度域に冷却水温があるときには、第1温度域に冷却水温があるときと同一視するのである。これによって、排熱でリアデフ5の暖機を促進することができる。室内を暖房する暖房要求が無く、かつ第2温度域にあるときにもリアデフ5の暖機を促進することでリアデフ内部のギアオイルの粘性が低下するため、車両の実用走行域での燃費改善が期待できる。
本実施形態では、外内気選択機構47が、外気部屋48、内気部屋49、第1三位置弁50、外気連通部屋52、室内連通部屋53、第2三位置弁54、を備えている。上記外気部屋48はヒーターコア43の上流側にあって外気を導入するものである。上記内気部屋49はヒーターコア43の上流側にあって内気を導入するものである。上記第1三位置弁50は駆動信号を受けてないときに中間位置にあり、外気側位置を指示する駆動信号で外気部屋48とヒーターコア43を連通し、内気側位置を指示する駆動信号で内気部屋49とヒーターコア43を連通するものである。上記外気連通部屋52はヒーターコア43の下流側にあって外気と連通するものである。上記室内連通部屋53はヒーターコア43の下流側にあって室内と連通するものである。上記第2三位置弁54は駆動信号を受けてないときに中間位置にあり、外気側位置を指示する駆動信号でヒーターコア43を出た空気を外気連通部屋52に導入し、内気側位置を指示する駆動信号でヒーターコア43を出た空気を室内連通部屋53に導入するものである。この場合に、制御装置81が、制御モード3(第1のモード)にするときには2つの三位置弁50,54に外気側位置を指示する駆動信号を出し、制御モード2(第2のモード)にするときには2つの三位置弁50,54に内気側位置を指示する駆動信号を出す。また、制御装置81が、停止するときには2つの三位置弁50,54に駆動信号を出さない。これによって、外内気選択機構47をコンパクトに構成することができる。
本実施形態では、排気管11を有するエンジン2が車両1の前方に搭載され、排気管11は車両1の床下を車両1の後方に向けて走り、排気管11の下流端が車両後方に開口するように配置される。リアデフ5のハウジング5A(デファレンシャルケース)は車両後方の床下に配置され、エンジン2の出力がリアデフ5内部のギア機構を介して後輪7に伝達される。この場合に、排熱回収器22、熱交換器31、リアヒーター41(ヒーター)の3つが車両後方にまとめて配置される。本実施形態では、排熱回収器22、熱交換器31、リアヒーター41を車両後方にまとめて配置することで、排熱利用装置21の全体をコンパクトにすることができる。
実施形態では、ポンプ回転速度及びファン回転速度が冷却水温に対して階段状の値(離散値)を採る場合で説明したが、この場合に限られない。例えばポンプ回転速度及びファン回転速度が冷却水温に対して連続値を採る場合を図7,図8に一点鎖線で重ねて示す。
実施形態では後輪駆動車で説明したが、この場合に限られない。前輪駆動車ではトランスアクスルにデファレンシャルギア装置が含まれている。このデファレンシャルギア装置の近傍に排気管の下流側が配置されていれば、本発明の適用がある。