JP2017025307A - ポリアミド樹脂組成物および成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い難燃性を有し、良好な靱性、靱性と荷重たわみ温度との良好なバランス、および耐折り曲げ疲労性を有するポリアミド樹脂組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】(A)ポリアミド樹脂および(B)メラミンシアヌレート系難燃剤を含有し、(A)が、(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を含有し、(A)と(B)の合計100質量%に対し(A)60〜75質量%、(B)25〜40質量%、(A1)15〜40質量%、(A2)と(A3)の合計20〜60質量%、質量比A2/A3が92/8〜50/50である、ポリアミド樹脂組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそのポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
ポリアミド樹脂は、機械的特性、電気特性、耐薬品性、成型加工性、及び、はんだ耐熱性などに優れることから、自動車部品、又は、電気・電子部品などの各種分野で使用されている。中でも、ハロゲンを含まない難燃剤であるメラミンシアヌレート系難燃剤を含むポリアミド樹脂組成物は、コネクタなどの電気・電子部品などのように、難燃性やはんだ耐熱性を要求される分野で広く利用されている。
現在では、コネクタ用途等の電気および電子部品用樹脂材料には、IEC60695−2−11規格のグローワイヤー燃焼指数(GWFI:Glow-wire Flammability Index)が850℃レベル以上、又は、IEC60695−2−13規格のグローワイヤー着火温度指数(GWIT:Glow-wire Ignition Temperature)が775℃レベル以上の高い難燃性が求められている。
近年、上記難燃性規格を満足するポリアミド樹脂組成物が種々検討されている(特許文献1〜4)。特許文献1には、メラミンシアヌレートと界面活性剤とを含む難燃性ポリアミド樹脂組成物粒状体とポリアミド樹脂粒状体とを混合してなる難燃性ポリアミド樹脂成形材料が開示されている。特許文献1のポリアミド樹脂成形材料によれば、良好な靱性を有し、シルバーストリークの発生が抑制された難燃性成形品を得ることができる。
特許文献2には、ポリアミド樹脂とトリアジン系難燃剤とカルボン酸アマイド系ワックスとを含有する難燃性ポリアミド樹脂組成物が開示されており、GWITが775℃であり、且つ、成形性に優れることが記載されている。
また、特許文献3には、非分岐の熱可塑性ポリアミドと、メラミンシアヌレートと、メラミンシアヌレート以外の窒素含有難燃剤と、リン酸塩系難燃剤とを含有する成形用組成物が開示されており、GWITが775℃超であり、且つ、耐衝撃性や曲げ強度等の機械特性にも優れることが記載されている。
電気・電子機器は、高い長期信頼性が求められることから、電気電子部品用途の樹脂材料に対する難燃性の要求は益々厳しくなってきており、昨今では、GWITが高い温度の材料が望まれている。特許文献4には、ポリアミド樹脂とメラミンシアヌレート系難燃剤と界面活性剤とを溶融混練してなる難燃性ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミドの種類と、メラミンシアヌレート系難燃剤の平均分散粒径と、界面活性剤との配合比を好適化することにより、GWIT825℃、及び、良好な靱性(引張破断伸度)を実現できることが記載されている。
特開平11−302536号公報 特開2005−171232号公報 特表2008−512525号公報 国際公開第2008/149892号
しかしながら、特許文献4に記載のポリアミド樹脂組成物は曲げたわみが比較的低く、昨今の難燃樹脂材料に対する要求が厳しくなっていることに伴い、グローワイヤー着火温度試験での無着火温度の向上、曲げたわみと荷重たわみ温度のバランス、折れ曲げ疲労性において、更なる改良が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、グローワイヤー着火温度試験での無着火最高温度(以下、グローワイヤー無着火温度と記載する。)が780℃以上の難燃性を有し、良好な靱性(引張伸び、曲げたわみ)、靱性と荷重たわみ温度(DTUL:Distortion Temperature under Load)の良好なバランス、および耐折り曲げ疲労性を有するポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、特許文献4に記載のポリアミド樹脂組成物において、GWITを低下させることなく、靱性を向上させる可能性について鋭意検討を行った。その結果、特許文献4において、難燃性と靱性のバランスの観点から好適であるとしていたポリアミド樹脂およびメラミンシアヌレート系難燃剤の含有率とは異なる範囲において、ポリアミド樹脂の種類と質量比を特定の範囲とすることにより、グローワイヤー無着火温度が780℃以上の難燃性、良好な靱性、および靱性と荷重たわみ温度の良好なバランスを達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、および(B)メラミンシアヌレート系難燃剤を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
(A)ポリアミド樹脂が、(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を含有し、
(A)ポリアミド樹脂と(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の合計100質量%に対し、(A)ポリアミド樹脂の含有量が60〜75質量%であり、(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の含有量が25〜40質量%であり
(A1)ポリアミド66の含有量が15〜40質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の合計含有量が20〜60質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の質量比A2/A3が92/8〜50/50である。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)少なくとも1種脂肪酸エステルを含む界面活性剤を、(A)および(B)の合計100質量部に対して1.1〜3.0質量部含んでもよい。
(A2)ポリアミド共重合体は、ポリアミド6の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体を含有するものであってもよい。
質量比A2/A3は、80/20〜50/50であることが好ましい。
(A3)ポリアミド6の相対粘度RVは40〜160であることが好ましい。
(C)少なくとも1種の脂肪酸エステルを含む界面活性剤の含有量は、1.5〜2.5質量部であることがさらに好ましい。
少なくとも1種の脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートからなる群から選ばれることが好ましい。
本発明の成形体は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明のポリアミド樹脂組成物は(A)ポリアミド樹脂、および(B)メラミンシアヌレート系難燃剤を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
(A)ポリアミド樹脂が、(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を含有し、
(A)ポリアミド樹脂と(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の合計100質量%に対し、(A)ポリアミド樹脂の含有量が60〜75質量%であり、(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の含有量が25〜40質量%であり、
(A1)ポリアミド66の含有量が15〜40質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の合計含有量が20〜60質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の質量比A2/A3が92/8〜50/50である。
かかる構成によれば、厚さが3mmの試験片でのグローワイヤー無着火温度が780℃以上の高い難燃性を有し、且つ、良好な靱性(引張伸度、曲げたわみ)、良好な靱性と荷重たわみ温度のバランス、および耐折り曲げ疲労性を有するポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。
「ポリアミド樹脂組成物」
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、および(B)メラミンシアヌレート系難燃剤を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
(A)ポリアミド樹脂が、(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を含有し、
(A)ポリアミド樹脂と(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の合計100質量%に対し、(A)ポリアミド樹脂の含有量が60〜75質量%であり、(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の含有量が25〜40質量%であり、
(A1)ポリアミド66の含有量が15〜40質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の合計含有量が20〜60質量%であり、(A2)ポリアミド共重合体と(A3)ポリアミド6の質量比A2/A3が92/8〜50/50である。
以下、各成分について説明する。
[(A)ポリアミド樹脂(以下、(A)成分と記載する場合がある。また、(A)を構成する(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を、それぞれ、(A1)成分もしくは(A1)、(A2)成分もしくは(A2)、および(A3)成分もしくは(A3)と記載する場合がある。)]
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂((A)成分)は、(A1)ポリアミド66と、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体と、(A3)ポリアミド6とを含有し、ペレット化や射出成形時の流動性等の加工性や、靱性、又ははんだ耐熱性の観点から、(A)ポリアミド樹脂と(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の合計100質量%に対し、(A1)ポリアミド66の含有量が15〜40質量%であり、(A2)成分と(A3)成分の合計含有量が20〜60質量%であり、(A2)と(A3)の質量比A2/A3が、92/8〜50/50である。ペレット化や射出成形時の流動性等の加工性や、靱性、又ははんだ耐熱性の観点から、融点が180℃〜270℃の範囲の(A)ポリアミド樹脂であることが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物のはんだ耐熱性、加工性、難燃性、離形性の両立の観点から、3種のポリアミドを併用する。
(A1)成分はポリアミド66であり、ポリアミド66を含むことによりハンダ耐熱性、難燃性、離形性に優れる。
(A2)成分としては、成形時の流動性、および非相溶である(A1)成分と(A3)成分の混和剤としての観点(ただし、作用効果はこれに限定されない。)から、ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位と、ポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体を含むことが必要である。ポリアミド6単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体(PA66/6)を含むことがより好ましい。
PA66/6のポリアミド66単量体単位とポリアミド6単量体単位のモル比としては、流動性とはんだ耐熱性のバランスに優れる点で、ポリアミド66単量体単位は60モル%以上95モル%以下、ポリアミド6単量体単位は5モル%以上40モル%以下が好ましく、ポリアミド66単量体単位は80モル%以上95モル%以下、ポリアミド6単量体単位は5モル%以上20モル%以下であることがより好ましい。
(A3)成分は、靱性の観点から、ポリアミド6である。靱性と荷重たわみ温度の良好なバランスを得る観点から、(A2)成分/(A3)成分の質量比A2/A3は、92/8〜50/50であり、80/20〜50/50がより好ましく、80/20〜60/40がさらに好ましい。さらに、成形品の折り曲げ疲労性(繰り返し曲げ)、曲げたわみのバラつきの観点から、ASTM D789に準拠した相対粘度RVが40〜160が好ましく、60〜160がより好ましい。この範囲にすることで、(A1)および/または(A2)との絡み合いが高くなる傾向になり、折り曲げ疲労性が向上し、曲げたわみのバラつきが低減する(ただし、作用効果はこれに限定されない)。さらに、(A3)成分のRVが、(A1)および/または(A2)成分よりも高いことがより好ましい。
[(B)メラミンシアヌレート系難燃剤(以下、(B)成分もしくは(B)と記載する場合がある。)]
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるメラミンシアヌレート系難燃剤(B)は、メラミンまたはその誘導体と、シアヌル酸またはその誘導体との反応物であり、かかる反応物であれば特に限定されない。メラミンシアヌレート系難燃剤は、例えば、シアヌル酸またはその誘導体の水溶液中に、メラミンまたはその誘導体を添加して、90〜100℃程度で撹拌する。反応生成物として得られた沈殿物を濾過乾燥後、粉砕して微粉末とすることにより製造することができる。
好ましいメラミンシアヌレート系難燃剤(B)としては、メラミンとシアヌル酸との等モル反応物であるメラミンシアヌレートが挙げられる。メラミンシアヌレートはその中に未反応のメラミンやシアヌル酸を0.001質量%以上0.30質量%以下含んでいてもよい。このようなメラミンシアヌレートは市販されており、本発明では、工業的に入手可能な市販のメラミンシアヌレートを適宜使用することができる。
ポリアミド樹脂((A)成分)と混合する前のメラミンシアヌレート系難燃剤(B)の中位径(D50)は、特に限定されないが、メラミンシアヌレート系難燃剤の分散性の観点から、1μm〜10μmであることが好ましく、1.5μm〜3μmがより好ましい。メラミンシアヌレート系難燃剤の中位径が1μm以上であることにより、ハンドリングが容易となり、メラミンシアヌレート系難燃剤(B)の凝集性悪化を抑制することができる。メラミンシアヌレート系難燃剤(B)の中位径が10μm以下であることにより、ポリアミド樹脂組成物における分散性とハンドリングとのバランスに優れる。
ここで、中位径(D50)とは、JIS Z8901に定義されているとおり、粒体の粒子径分布において、ある粒子径より大きい粒子の質量が全粒体の質量の50%を占める時の粒子径であり、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法により、横軸に粒子径を縦軸に頻度(質量)をとってプロットし、この頻度の累積質量の総和を100%とした時に累積質量が50%となる粒子径として測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物中のメラミンシアヌレート系難燃剤(B)の含有量は、難燃性と靱性の観点から、ポリアミド樹脂(A)とメラミンシアヌレート系難燃剤(B)の合計100質量%に対し、25質量%〜40質量%であり、30質量%〜40質量%以下であることが好ましく、35質量%〜40質量%であることがより好ましい。
[(C)少なくとも1種の脂肪酸エステルを含む界面活性剤(以下、(C)成分もしくは(C)と記載する場合がある。)]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに界面活性剤(C)を含んでもよい。界面活性剤(C)は、少なくとも1種の脂肪酸エステルを含むものであり、脂肪酸エステルとしては、ポリアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステルを挙げることができる。
ポリアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレン多価アルコールと、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、エルカ酸などの脂肪族カルボン酸と、のエステル又はその誘導体が挙げられ、これらは工業的に入手が容易である。メラミンシアヌレート系難燃剤(B)の分散性の観点から、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好ましく、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸(炭素数12個以上)エステル又はその誘導体がより好ましい。
好適なポリエチレングリコールの高級脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートが挙げられ、特にポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートが好ましい。
また、好適なポリエチレングリコールの高級脂肪酸エステル誘導体としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートが挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物中の界面活性剤(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)およびメラミンシアヌレート系難燃剤(B)の合計100質量部に対し、1.1〜3.0質量部が好ましい。かかる含有量とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中において、メラミンシアヌレート系難燃剤(B)が、上記した含有量の範囲である場合に、良好なグローワイヤー無着火温度、良好な靱性、良好な靱性と荷重たわみ温度のバランスを有したポリアミド樹脂組成物とすることができる。また、メラミンシアヌレート系難燃剤(B)と界面活性剤(C)を上記の構成とすることにより、成形品とした場合において、メヤニを生じることが少ない良質な成形品となるという更なる効果が確認されている。この効果が得られるメカニズムは定かではないが、界面活性剤(C)がポリアミド樹脂((A)成分)の可塑化剤として作用しているため、また、(C)成分が(A)成分および/または(B)成分の分解を抑制しているためであると推測される。
ポリアミド樹脂組成物中の界面活性剤(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)およびメラミンシアヌレート系難燃剤(B)の合計100質量部に対して、1.5〜2.5質量部であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本実施の形態の目的を損なわない範囲で、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、ならびにこれらの混合物、を含んでいてもよい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、慣用的に用いられる充填剤、例えば、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維、マイカ、タルク、粘土鉱物、アルミナ、シリカ、およびアパタイトなどの無機充填剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、およびリン酸アルミニウムなどの難燃剤、チタンホワイトおよびカーボンブラックなどの顔料や着色剤、次亜リン酸ソーダなどの亜リン酸金属塩、ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミンに代表される熱安定剤、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルなどの滑剤、種々の可塑剤、ならびに帯電防止剤などの各種添加剤を加えることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、マスターバッチとしても利用することもできる。その場合、マスターバッチである本発明のポリアミド樹脂組成物とポリアミドとを溶融混合し、(B)成分が1〜20質量%の樹脂組成物を得ることもできる。
後記実施例(表1)に示されるように、本発明のポリアミド樹脂組成物は、グローワイヤー無着火温度が780℃以上であり、かつ、曲げたわみ(mm)が5.5mm以上の良好な靱性を有している。
本発明によれば、厚さが3mmの試験片でのグローワイヤー無着火温度が780℃以上の高い難燃性を有し、かつ、良好な靱性(引張破断伸度、曲げたわみ)を有するポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
「成形体」
本発明の成形体は、上記本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる。本発明の成形体は、高い難燃性を有し、且つ、良好な靱性及び成形性を有していることから、ソケット、スイッチ、ケース、カバー等の、電気電子部品や自動車内外装部品、自動車電装部品等として使われる射出成形体、また、これらの射出成形体の成形材料であるペレットとして好適である。また、靱性や靱性と荷重たわみ温度のバランスが良好であることは、薄肉成形品や耐熱性が必要な部位を有している成形品の不良率低減等へ寄与できるため、工業的意味は非常に大きい。
「ポリアミド樹脂組成物の製造方法」
以下、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造する製造方法について説明する。
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、上記、(A1)成分、(A2)成分、および(A3)成分のポリアミドを含む(A)成分60〜75質量%と、(B)成分(メラミンシアヌレート系難燃剤)25〜40質量%とを、例えば二軸押し出し機に投入して溶融混練した後、(C)成分を追加投入してさらに溶融混練する方法が挙げられる。または、(A)成分と(B)成分の合計100質量部と、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1.1〜3.0質量部の(C)成分とを一度に溶融混練してもよい。各成分の配合比は、上記本発明のポリアミド樹脂組成物と同様の構成としている。
ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、(B)成分であるメラミンシアヌレート系難燃剤の分散性の観点から、(B)成分の一部を、残りの全成分を溶融混練した後に加えて更に溶融混練してもよい。
(A1)〜(A3)成分のポリアミド樹脂の形状は特に制限されないが、ペレット状であることが好ましい。この場合、設備簡略化の観点から、(A1)〜(A3)成分のポリアミド樹脂ペレットの表面に、(C)成分の界面活性剤を展着させ、その後、更に、(B)成分のメラミンシアヌレート系難燃剤を展着させたブレンド物としてから溶融混練してもよい。かかる構成とする場合にも、分散性の観点から、(B)成分の一部は展着させずに、残りの全成分を溶融混練した後に加えて更に溶融混練してもよい。
ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、溶融混練する方法は特に制限されないが、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを混合する際に、少なくとも1機の原料供給装置を用いて押出機へ供給して溶融混練する方法が好ましい。各成分の押出機への供給は、それぞれ別の原料供給装置を用いてもよいし、1機の原料供給装置を用いてもよい。
押出機としては特に制限されないが、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、具体的に、COPERION社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズなどが挙げられ、二軸押出機のL/D(スクリュー有効長/スクリュー外径)は、20以上60以下の範囲であることが好ましく、30以上50以下であることが好ましい。
二軸押出機に原料を供給する方法は特に限定されない。原料供給装置は特に限定されず、単軸スクリューフィーダー、二軸スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、ロータリーフィーダー、液体供給ポンプなどが使用できる。中でもロスインウェイト式のスクリューフィーダーが、原料供給の変動誤差が少なく好ましい。また、複数種の原料を1機の原料供給装置へ投入する場合は、投入前する原料のうち少なくとも2種の原料をミキサー、コーンブレンダー等で混合してから投入してもよい。
混練溶融する際の温度は、生産性と熱劣化の抑制の観点から、(A1)成分ポリアミド66の融点より5〜30℃高い温度であることが好ましく、5〜20℃高い温度であることがより好ましい。
本発明にかかる実施例及び比較例について説明する。
(原料物性評価方法)
以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
<相対粘度RV>
(A)成分((A1)成分,(A2)成分,(A3)成分)のポリアミド樹脂の相対粘度RVを、ASTM D789に準じて測定した。具体的には、溶媒として90%ギ酸を用いて、3gサンプル/30mlギ酸の濃度で、25℃の温度条件下で測定した。
<中位径>
(B)成分のメラミンシアヌレート系難燃剤の中位径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名「SALD−7000」、島津製作所(株)製)を用いて測定した。試料を純水に分散させたものを測定試料とし、フローセルを用いて測定を行った。横軸に粒子径を、縦軸に頻度(質量)をとってプロットし、頻度の累積質量の総和を100%とした時に累積質量が50%となる粒子径を中位径(D50)とした。
(ポリアミド樹脂組成物の評価)
各実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物ペレットについて評価を行った。各評価項目及びその結果を表1に示す。各評価項目の評価方法は以下のとおりとした。
<引張伸び>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「PS40E」、日精樹脂(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出25秒、冷却10秒の射出成形条件で射出成形し、4mm厚みのISO試験片を得た。得られたISO試験片を用いてISO527−1に準じ、引張伸びの測定を行った。
<曲げたわみ試験>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「PS40E」、日精樹脂(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出25秒、冷却10秒の射出成形条件で射出成形し、4mm厚みのISO試験片を得た。得られたISO試験片を用いてISO178に準じ、曲げ試験を行い、試験片の最大荷重時のたわみ量(変位量)を曲げたわみ量とした。
<荷重たわみ温度(DTUL)>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「PS40E」、日精樹脂(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出25秒、冷却10秒の射出成形条件で射出成形し、4mm厚みのISO試験片を得た。得られたISO試験片を用いてISO75−2に準じ(0.45MPa荷重)、DTULの測定を行った。
<薄肉曲げ試験>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「SE50D」、住友重機械工業(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出10秒、冷却15秒の射出成形条件で射出成形し、ISO試験片(2mm厚み)を得た。得られたISO試験片を用いて、曲げ試験を行い、試験片の最大荷重時のたわみ量(変位量)を曲げたわみ量とし、試験片10本のたわみ量の値から標準偏差を計算した。
<折り曲げ疲労性(耐繰り返し曲げ性)>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「SE50D」、住友重機械工業(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出10秒、冷却15秒の射出成形条件で射出成形し、2mm厚みの短冊試験片を得た。得られた試験片を曲げ試験機で繰り返し撓ませ、破断するまでの回数が10回となる最大の変位量を測定した。なお、スパン間は32mmで実施した。
<グローワイヤー無着火温度>
ポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成型機(商品名「FN3000」、日精樹脂(株)製)を用いて、シリンダー温度270〜280℃、金型温度80℃に設定し、射出12秒、冷却12秒の射出成型条件で射出成形し、90mm×60mm×3.0mmの試験片を得た。JIS C 60695−2−10に準拠した試験装置を使用し、得られた試験片3枚を用いて、3枚全てが着火しない(着火時間:0秒)最高のワイヤー温度を無着火温度として測定した。なお、ワイヤー温度は5℃単位で設定した。
<メヤニ>
ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造の際、各15分間押出しを続け、ダイス口に発生するメヤニの量を観察した。以下の判断基準にてメヤニ抑制を判断した。
15分間全くメヤニの発生がなかった場合をA、15分間の間にメヤニの発生が僅かに認められた場合をB、15分間の間にメヤニの発生が多数認められた場合をCとして示した。
(各成分の用意)
[(A)ポリアミド樹脂]
(A1):(a−1)ポリアミド66
まず、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸を等モルずつ含むモノマー混合物を50質量%含有する水溶液15kgを調製した。次に、撹拌装置を有し、かつ下部に抜き出しノズルを有する40L容のオートクレーブ中に、上記のモノマー水溶液を仕込み、50℃で充分にモノマー水溶液を攪拌した。オートクレーブ内を充分に窒素で置換した後、モノマー水溶液を撹拌しながらオートクレーブ内の温度を50℃から約270℃まで昇温して重合した。その際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧で約1.8MPaであったが、かかる圧力が1.8MPa以上にならないよう、水を随時系外に排出した。また、重合時間は、ポリアミド66樹脂の相対粘度(ASTM D789に従った方法で測定した相対粘度RV)が45程度となるように調整した。
オートクレーブ内での重合終了後、下部ノズルからストランド状にポリアミド66樹脂を排出し、水冷及びカッティングを経て、ペレット状のポリアミド66樹脂を得た。このペレットを80℃、24時間の条件で真空乾燥した。真空乾燥後のポリアミド66ペレットの相対粘度RVは45であった。
(A2):(a−2)ポリアミド66/6共重合体
ポリアミド66/6(90質量%/10質量%)共重合体を形成する重合成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを等モルずつ含み、更に、ε−カプロラクタムを含むモノマー混合物)の50質量%含有する水溶液30kgを調製した。このモノマー水溶液を、(A1)成分と同様にして重合し、ペレット化し、真空乾燥させてポリアミド66/6共重合体ペレットを得た。真空乾燥後のポリアミド66/6共重合体ペレットの相対粘度RVは38であった。
(A3):(a−3)ポリアミド6
(a−3−1)ポリアミド6:宇部興産製 SF1013A 相対粘度RV:37
(a−3−2)ポリアミド6:宇部興産製 1022B 相対粘度RV:83
(a−3−3)ポリアミド6:宇部興産製 1018B 相対粘度RV:62
[(B)メラミンシアヌレート系難燃剤]
(b−1):メラミンシアヌレート 中位径(D50):2.6μm
(b−2):メラミンシアヌレート 中位径(D50):4μm
[(C)界面活性剤]
(c)PEM:ポリオキシエチレンモノラウレート 花王(株)製エマノーン(登録商標)1112
[実施例1]
(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド66/6、(A3)ポリアミド6、(B)のメラミンシアヌレート、および(C)の界面活性剤をタンブラーでブレンドし、ロスインウェイトフィーダー(K−TRON社製LWF−D5)を用いて、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35BS、二軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6)の第一供給口へ供給した。バレル温度270℃、吐出量30kg/hr、スクリュー回転数300rpmで押出しを行った。押出機先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例2〜7、比較例1〜6]
各成分の組成を表1に記載のとおりとした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜6のポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
表1に示されるように、本発明のポリアミド樹脂組成物は、良好な靱性、靱性と荷重たわみ温度との良好なバランス、および耐折り曲げ疲労性を達成できることが確認された。また、(A3)ポリアミドの相対粘度が実施例1〜4のものに比べて大きい実施例5および6は、耐折り曲げ疲労性に優れる。一方、ポリアミド樹脂の構成単位およびその割合が本発明の範囲から外れる比較例は、靱性と荷重たわみ温度のバランスにおいて満足できるレベルではなかった。また、(A3)成分を含まない、あるいは(A2)/(A3)が小さく、さらに(C)界面活性剤の量が低い比較例5および6はメヤニの発生が多数みられ、成形性に劣ることがわかった。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高い難燃性を有し、かつ、良好な靱性、靱性と荷重たわみ温度との良好なバランス、および耐折り曲げ疲労性を有するため、様々な機械工業部品や電気電子部品、特にコネクタなどの産業用材料として有用である。

Claims (8)

  1. (A)ポリアミド樹脂、および(B)メラミンシアヌレート系難燃剤を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
    前記(A)ポリアミド樹脂が、(A1)ポリアミド66、(A2)ポリアミド6,ポリアミド610,ポリアミド612およびポリアミド6Iから選ばれる少なくとも1種の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体、および(A3)ポリアミド6を含有し、
    前記(A)ポリアミド樹脂と前記(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の合計100質量%に対し、前記(A)ポリアミド樹脂の含有量が60〜75質量%であり、前記(B)メラミンシアヌレート系難燃剤の含有量が25〜40質量%であり、
    前記(A1)ポリアミド66の含有量が15〜40質量%であり、前記(A2)ポリアミド共重合体と前記(A3)ポリアミド6の合計含有量が20〜60質量%であり、前記(A2)ポリアミド共重合体と前記(A3)ポリアミド6の質量比A2/A3が92/8〜50/50であるポリアミド樹脂組成物。
  2. さらに、(C)少なくとも1種の脂肪酸エステルを含む界面活性剤を、前記(A)および(B)の合計100質量部に対して1.1〜3.0質量部含む請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記(A2)ポリアミド共重合体が、ポリアミド6の単量体単位とポリアミド66の単量体単位とからなるポリアミド共重合体を含有する請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記質量比A2/A3が、80/20〜50/50である請求項1〜3いずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記(A3)ポリアミド6の相対粘度RVが40〜160である請求項1〜4いずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記(C)少なくとも1種の脂肪酸エステルを含む界面活性剤の含有量が、前記(A)および(B)の合計100質量部に対して1.5〜2.5質量部である請求項2〜5いずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記少なくとも1種の脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートからなる群から選ばれる請求項2〜6いずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7いずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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