JP5636278B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
近年、これら各種部品に関しては、一体化・軽量化などを目的とした金属材料からポリアミド樹脂への代替要求が非常に高まっている。その結果、ポリアミド樹脂に要求される性能レベルが一層高くなってきている。
その一方で、環境への配慮から、これらポリアミドの成形品や部品をリワーク・リサイクルして再利用するという動きも非常に高まっている。
高まる要求特性に応えるため、単一の樹脂材料の欠点を補いつつその性能を向上させる目的で、異種の樹脂成分の混合物ならびに相溶化剤を配合し溶融混練などの方法を用いて配合する方法、すなわちポリマーアロイ技術が研究されている。
そこで、上記問題点を解決するための方法として、ポリマーアロイ技術より簡易でかつコストの観点からも有利な方法、すなわち異種の樹脂成分の混合物と反応触媒とを用いる方法が検討されている。
特許文献2には、グラフト及び/又はブロック共重合体を形成するために、2種以上のポリアミド、ポリエステル、α,β−不飽和カルボン酸の酸ホモポリマー、及びα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和オレフィンとの酸コポリマーを、好ましい温度として約200〜300℃で反応させる方法が開示されている。
特許文献3には、少なくとも2種のポリアミドを亜リン酸エステル化合物と亜リン酸金属塩の存在下で溶融混練するポリアミド樹脂組成物及びその製造方法が開示されている。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(A)ポリアミド6及びポリアミド66と、
(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩と、
(D)高級脂肪酸金属塩と、
を、溶融混練することにより得られるポリアミド樹脂組成物であり、
金属元素/リン元素のモル比が、0.6〜1.5であるポリアミド樹脂組成物。
〔2〕
前記(A)成分:100質量部に対して、前記(B)成分を0.05〜1質量部及び/
又は前記(C)成分を0.05〜1質量部、前記(D)成分0.05〜1質量部が、それ
ぞれ配合されている前記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔3〕
前記(A)ポリアミド6及びポリアミド66が、交換反応を起こしたポリアミドを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド成分と、
(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩と、
(D)高級脂肪酸金属塩と、
を、溶融混練することにより得られるポリアミド樹脂組成物であり、
金属元素/リン元素のモル比が、0.6〜1.5であるポリアミド樹脂組成物である。
ポリマーアロイによるポリアミド樹脂の単なる相溶化技術では、色調、表面外観の改良が不十分であるため、本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、少なくとも2種の異なるポリアミド−ポリアミド交換反応を利用することとし、溶融混練により交換反応させたポリアミドを含有するポリアミド樹脂組成物を得ることによって、色調、表面外観などにおいて、優れた特性を実現した。
また、本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、金属元素/リン元素のモル比を特定することにより、溶融安定性、熱安定性を大幅に高め、高温加工条件下でも色調や機械物性について、優れた性能が得られた。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を得るために用いる「(A)ポリアミド成分」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であるポリアミドを意味し、少なくとも2種の異なるポリアミドを含む。
ポリアミド成分としては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))などのポリアミドが挙げられる。
(A)ポリアミド成分は、上記ポリアミドを任意に組み合わせることができ、共重合ポリアミドであってもよい。
すなわち、溶融混練前の段階で、2種以上のポリアミド(A1−1)、(A1−2)、・・・(A1−n)、(nは正の整数であり、(A)ポリアミド成分とは、これらの総称である)を用い、溶融混練を経てポリアミド交換反応が行われ、これにより得られたポリアミド(A2)が、本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含有されることとなる。
前記「構成単位が異なる」とは、以下の実施形態に限定されるものではないが、例えば、2種のポリアミドとして、構成単位がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸であるポリアミド66と、構成単位がヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸であるポリアミド6Iとからなる場合などが挙げられる。
この場合、ポリアミド66とポリアミド6Iとでは、構成単位のジカルボン酸がアジピン酸とイソフタル酸と異なるため、ポリアミド66とポリアミド6Iとは構成単位が異なるポリアミドである。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(B)亜リン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
一般式(1):
(RO)nP(OH)3-n
(ここでnは1、2又は3を示す。)
一般式(2):
(RO)mP(OH)2-m(R)
(ここでmは1又は2を示す。)
一般式(1)又は一般式(2)において、Rは、それぞれ独立して、脂肪族基若しくは芳香族基又はそれらの基の一部が置換基で置換された置換脂肪族基若しくは置換芳香族基を示す。
一般式(1)又は一般式(2)において、n又はmが2以上の場合、一般式(1)又は一般式(2)中、複数の(RO)基は同じであっても異なっていてもよい。
前記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ノニル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。
より好ましくは(B)亜リン酸エステル化合物を0.05〜0.75質量部及び/又は後述する(C)亜リン酸金属塩を0.05〜0.75質量部、さらに好ましくは(B)亜リン酸エステル化合物を0.05〜0.5質量部及び/又は後述する(C)亜リン酸金属塩を0.05〜0.5質量部、配合されているものとする。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(C)亜リン酸金属塩とは、亜リン酸又は次亜リン酸と、元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素、スズ、及び鉛からなる群より選ばれる金属との金属塩を意味する。
亜リン酸金属塩は、1種の亜リン酸金属塩を用いてもよく、2種以上の亜リン酸金属塩を組み合わせて用いてもよい。
亜リン酸金属塩は、水和物であってもよく、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)などが挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(D)高級脂肪酸金属塩とは、炭素数10〜40程度の高級脂肪族カルボン酸と元素周期律表中の1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,13族元素、スズ、及び鉛からなる群より選ばれる金属との金属塩を意味する。
高級脂肪酸は、より好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリル酸、モンタン酸が挙げられる。
また、金属元素としては、元素周期律表の第1、2、3族元素、亜鉛、アルミニウムなどが好ましい。より好ましくは、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の、金属元素/リン元素のモル比は、0.6〜1.5であり、好ましくは0.70〜1.30、より好ましくは0.75〜1.25である。
金属元素とは、(C)亜リン酸金属塩及び(D)高級脂肪酸金属塩から由来する金属元素を意味している。金属元素とリン金属とのモル比が0.60以上であれば、本発明の目的を達成し得る程の溶融粘度安定性や機械物性を得ることができ、1.5以下であれば、色調や表面外観に優れるポリアミド樹脂組成物となる。
亜リン酸エステル化合物の含有量が0.05質量部以上であれば、本実施の形態の目的を達成し得る程の表面外観を得ることができ、1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂組成物となる。
(C)亜リン酸金属塩の含有量が0.05質量部以上であれば、本発明の目的を達成し得る程の表面外観を得ることができ、1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂組成物となる。
(D)高級脂肪酸金属塩の含有量が0.05質量部以上であれば良好な溶融粘度安定性や、表面外観を得ることができる。(D)高級脂肪酸金属塩の含有量が1質量部以内であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂組成物となる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した(A)〜(D)以外の(E)その他の化合物として、ポリアミド樹脂に配合され得る公知の化合物、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、及びアパタイト化合物などの無機充填材;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、芳香族系ポリホスフェート、及び複合ガラス粉末などの難燃剤;N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどの添加剤;チタンホワイト、カーボンブラック、及びメタリック顔料などの顔料や着色剤;ポリアルキレングリコール及びその末端変性物;低分子量ポリエチレン;酸化低分子量ポリエチレン;置換ベンジリデンソルビトール;カプロラクタム類;並びにタルクなどの無機結晶核剤などを含有してもよい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、(A)ポリアミド成分に、(B)亜リン酸エステル化合物、(C)亜リン酸金属塩、及び(D)高級脂肪酸金属塩を配合し、300〜375℃の温度条件下で、かつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する方法が好ましい製造方法として挙げられ、(A)ポリアミド成分に(B)亜リン酸エステル化合物、(C)亜リン酸金属塩を配合し、320℃〜375℃の温度条件下で、かつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練した後に、(D)高級脂肪酸金属塩を配合する方法も、好ましい製造方法として挙げられる。
(A)成分〜(C)成分を溶融混練する際に、(D)成分をさらに配合して一緒に溶融混練してもよく、また、(A)成分〜(C)成分を溶融混練して得られるポリアミド樹脂に、(D)成分をさらに配合(展着)して溶融混練してもよい。
また、(B)亜リン酸エステル化合物、(C)亜リン酸金属塩、(D)高級脂肪酸金属塩などをディスクペレッターなどにより予めタブレット(錠剤)に加工して添加する方法も好ましい方法として挙げられ、(B)成分〜(D)成分より選ばれる1種又は2種以上を混合後に加工しタブレット(錠剤)にして添加することもできる。
(B)成分〜(D)成分の各成分が粉体の場合は、取扱上タブレットとして添加することは好ましい方法である。
タブレット造粒時は、特に限定されず、乾式造粒でもよく、水やポリアルキレングリコールなどを予め原料パウダー混合物に配合した湿式造粒でもよい。溶融混練時のタブレット構成成分の分散性から湿式造粒が好ましい。
亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩の存在状態としては、例えば、亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩のままで存在してもよく、リン酸エステル又はリン酸金属塩として存在してもよく、これらが混在した状態であってもよい。また、亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩が加水分解した状態、例えば、亜リン酸又はリン酸などの状態で存在してもよい。
例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー又はミキシングロールなどの溶融混練機などが好ましく用いられる。
この中でも脱気機構(ベント)装置及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機がより好ましく用いられる。
樹脂温度が300℃以上であれば、ポリアミド成分の交換反応が十分に起こり、溶融粘度の安定性、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
樹脂温度が375℃以下であれば、ポリアミド樹脂の劣化を防止することができ、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
平均滞留時間が20秒以上であれば、ポリアミド成分の交換反応が十分に起こり、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
なお、平均滞留時間とは、溶融混練装置内での滞留時間が一定の場合はその滞留時間を意味し、滞留時間が不均一な場合は最も短い滞留時間と最も短い滞留時間の平均値を意味する。
溶融混練中のポリアミド樹脂とは色の異なる樹脂などポリアミド樹脂と区別できる樹脂(以下、樹脂Xと略記する)を溶融混練中に添加し、樹脂Xの排出開始時間と排出終了時間を計測し、排出開始時間と排出終了時間を平均することにより、平均滞留時間を測定することができる。
分子量や溶融粘度の制御、ガス抜きという観点から脱気を行った方が好ましい。脱気を行う工程としては、減圧度にして0〜0.10MPa程度とすることが好ましく、より好ましくは0〜0.07MPaであり、さらに好ましくは0.01〜0.065MPaである。
前記減圧度0MPaとは、溶融混練装置に開口部を設け、自然脱気することを意味する。減圧度が0MPa以上(溶融混練装置に開口部を設けるのみ)であれば、溶融混練後にポリアミド樹脂をストランド状で抜出す際にポリアミド樹脂と共にガスが噴出することを防止することができ、ペレタイズ後の水分率が低いポリアミド樹脂を得ることができる。
前記減圧度が0.10MPa以下であれば、押出機のトルクの上昇を防止することができ、安定な生産を行うことができる。
減圧度とは、大気圧を基準とし、脱気領域の圧力と大気圧の差を意味する。
(相対粘度)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の相対粘度は、成形性及び機械物性の点から、JIS−K6810に準じて測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度(ηr)が、好ましくは1.50〜7.50であり、より好ましくは1.80〜6.00であり、さらに好ましくは2.00〜5.00である。
25℃の相対粘度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物の結晶化温度は、成形した際の表面外観の点から、JIS−K7121に準じて測定した結晶化温度が、好ましくは235℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、さらに好ましくは215℃以下であり、よりさらに好ましくは210℃以下である。
結晶化温度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
無機充填材などの充填材を配合していないポリアミド樹脂組成物の引張強度は、機械特性の点から、ASTMD638に準じて測定した引張強度が、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、さらに好ましくは60MPa以上である。
無機充填材などの充填材を配合し強化したポリアミド樹脂組成物においては、ASTMD638に準じて測定した引張強度が、好ましくは120MPa以上であり、より好ましくは130MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。
引張強度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物の引張伸度は、機械特性の点から、ASTMD638に準じて測定した引張伸度が、好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは2.75%以上であり、さらに好ましくは3.5%以上である。
引張伸度は、以下の実施例に記載の方法で測定することができる。
ポリアミド樹脂組成物の表面外観は、JIS−K7150に準じて測定した表面外観が、好ましくは30以上であり、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは50以上である。
表面外観(Gs60゜)は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて成形体とすることができる。
本実施形態におけるポリアミド樹脂を溶融混練する原料としては、ポリアミド樹脂の既成形体や部品類を粉砕するなどした、リワーク材料やリサイクル材料を用いることができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、各種成形体又は部品類の再生への応用が期待される。
本実施形態におけるポリアミド樹脂組成物から得られる成形体は、従来のポリアミド樹脂から得られる成形体に比べ、色調、表面外観、耐熱変色、耐候性、耐熱エージング性などに優れるため、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、事務機器部品、航空宇宙部品、各種ギア、押出用途などの各種部品への応用が期待される。
<(1−1)相対粘度(ηr)>
JIS−K6810に準じて相対粘度を測定した。
具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド樹脂1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
溶融混練する工程において、脱気の減圧度を、0〜0.07MPaまで変化させ、0、0.04、0.07MPaの3段階における相対粘度を測定し、相対粘度の変化を比較して溶融粘度の安定性を評価した。
減圧度0から減圧度0.07に変化させたときの溶融粘度の変化の割合が18%以内であれば、溶融粘度の安定性が良好であるものと判断した。
JIS K7121に準じて結晶化温度を測定した。
具体的には、測定装置として、PERKIN−ELMER社製DSC−7型を用いた。
測定条件は、窒素雰囲気下、約8mgのサンプルを300℃で2分間保った後、降温速度20℃/minで40℃まで降温したときに現れるピーク温度から結晶化温度を測定した。
さらに40℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れるピーク温度から融点を測定した。
射出成形機を用いて成形品を作製した。
射出成形装置として、日精樹脂株式会社製PS40Eを用い、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、ポリアミド樹脂組成物ペレットから成形品を得た。
シリンダー温度は、前記(1−3)に準じて求めたポリアミド樹脂組成物の融点より約15〜40℃高い温度条件に設定した。
ASTMD638に準じて引張強度及び引張伸度を測定した。
<(2−2)表面外観>
ハンディー光沢計として、株式会社堀場製作所製IG320を用いて、JIS−K7150に準じてGs60°を測定した。
<(2−3)色調(b値)>
色差計として、日本電色工業株式会社製ND−300Aを用いて、b値を測定した。
b値が小さいものほど色調が良好であると判断した。
ポリアミド66(旭化成ケミカルズ株式会社製レオナ(登録商標)1300(水分率0.08質量%)、以下、「PA66−1」と略記する)50質量部、及びポリアミド6(宇部興産株式会社製SF1022A(水分率0.08質量%)、以下、「PA6−1」と略記する)50質量部からなるポリアミド成分100質量部に、トリス(2,4−t−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.1質量部、次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム(日本油脂株式会社製)0.1質量部を配合した。
2軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。
サイドフィーダーからポリアミド成分100質量部に対して、ガラス短繊維(旭ファイバーガラス株式会社製JA416、以下、「GF」と略記する)50質量部を添加した。
スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。押出レートは15kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度を0〜0.07MPaで変化させ押出を行った。
先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。
運転は何れも安定で、安定した溶融粘度のサンプルを作製することができた。
なお、減圧度を0,0.04,0.07(MPa)としたときの三点でサンプルを採取し、該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。それぞれの減圧度で作製したサンプルを評価した。評価結果を表1に示す。
特許文献3(国際公開第2001/072872号)の実施例1に準じて、下記のように実施した。
PA66−1 50質量部、及びPA6−1 50質量部からなるポリアミド成分100質量部に、亜リン酸トリデシル(和光純薬工業株式会社製)1.0質量部、次亜リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)0.5質量部、アジピン酸(旭化成ケミカルズ株式会社製)0.5質量部を配合した。2軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。
サイドフィーダーからポリアミド成分100質量部に対して、GF 50質量部を添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。押出レートは15kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度を0〜0.07MPaで変化させ押出を行った。
先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。減圧度0.07MPaでは、トルクが上昇し、安定してサンプルを作製することができなかった。
なお、減圧度を0,0.04(MPa)としたときの二点でサンプルを採取し、該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。それぞれの減圧度で作製したサンプルを評価した。評価結果を表1に示す。
PA66−1 50質量部、及びPA6−1 50質量部からなるポリアミド成分100質量部を、2軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。
サイドフィーダーからポリアミド樹脂成分100質量部に対して、GF 50質量部を添加した。スクリュー回転数250rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は349℃であった。押出レート15kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度0〜0.07MPaで変化させ押出を行った。
先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。
なお、減圧度を0,0.04(MPa)としたときの二点でサンプルを採取し、該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。
それぞれの減圧度で作製したサンプルを評価し、評価結果を表1に示す。
亜リン酸エステル化合物及び/又は亜リン酸金属塩を配合しないと熱劣化が進み、溶融粘度が低下し、良好な溶融粘度の安定性が得られなかった。更に異なる2種のポリアミド間のアミド交換反応が充分に起こらず、結晶化温度ピークが二山になり、良好な表面外観が得られなかった。
ステアリン酸カルシウムの代わりに、モンタン酸カルシウム塩(Licomont社製CaV102)0.1質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして実施した。
先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
ステアリン酸カルシウムの代わりに、さらにステアリン酸アルミニウム(堺化学工業株式会社製SA−1000)0.1質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
ステアリン酸カルシウム0.5質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
トリス(2,4−t−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト((チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.2質量部、次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製)0.2質量部、ステアリン酸カルシウム(日本油脂株式会社製)0.2質量部を配合する以外は、実施例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製)0.1質量部を配合しない以外は、実施例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は350℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
亜リン酸エステル化合物として、トリス(2,4−t−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト((チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)の代わりに亜リン酸トリフェニル0.1質量部を配合し、次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業社製)は配合せず、ステアリン酸カルシウム0.5質量部を配合した以外は実施例1と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は350℃であり、その他、押出レート、ペレットの乾燥条件も実施例1と同様とし、運転状態の安定性も良好であった。
評価結果を表1に示す。
比較例3においては、金属元素/リン元素の値が高すぎるため、異種ポリアミド間の交換反応が不十分となり、複数の結晶化温度が得られた。その結果、表面外観特性が低下した。
Claims (3)
- (A)ポリアミド6及びポリアミド66と、
(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩と、
(D)高級脂肪酸金属塩と、
を、溶融混練することにより得られるポリアミド樹脂組成物であり、
金属元素/リン元素のモル比が、0.6〜1.5であるポリアミド樹脂組成物。 - 前記(A)成分:100質量部に対して、前記(B)成分を0.05〜1質量部及び/又は前記(C)成分を0.05〜1質量部、前記(D)成分0.05〜1質量部が、それぞれ配合されている請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(A)ポリアミド6及びポリアミド66が、交換反応を起こしたポリアミドを含む、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
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