JP5570892B2 - ポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物の製造方法に関する。
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性等に優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品等の分野で使用されている。
特に、電気・電子部品用途において、ますます難燃性に対する要求レベルが高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求されており、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL94V−0規格やV−1規格に適合する難燃レベルを実現するための材料が数多く検討されている。
従来、難燃化レベルの高度化を図るためには、一般的に、ハロゲン系難燃剤や、トリアジン系難燃剤を添加する方法が取られている。
しかしながら、ハロゲン系難燃剤は、難燃性を向上させる一方、射出成形等の加熱加工時に、腐食性のハロゲン化水素を発生させるため、金型等を腐食してしまうという問題がある。
一方のハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤に関しては、ガラス繊維等の無機強化材で強化し剛性を高めた組成である場合には、このトリアジン系難燃剤を多量に配合しても、UL94V−0規格やV−1規格に適合しない問題がある。
ところで近年、リンを含有した難燃剤が注目されている。
例えば、イントメッセント型難燃剤であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンあるいはポリリン酸メラミンをガラス繊維強化ポリアミド樹脂に使用するハロゲンフリーの難燃技術(例えば、特許文献1参照。)、無機質強化ポリアミド樹脂にポリリン酸メラミンに加えチャー化触媒及び/又はチャー形成剤を併用する難燃技術(例えば、特許文献2参照。)が公開されている。
さらには、ホスフィン酸塩と、メラミンとリン酸の反応物とを組み合わせた難燃剤コンビネーション技術(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)が提案され、1/16inchの成形品において難燃規格UL94V−0規格を満足することが知られている。
特許第3427898号公報 国際公開第98/45364号パンフレット 特開2001−72978号公報 特開2004−263188号公報 特開2005−179360号公報
前記特許文献1、2に開示されている技術で得られるガラス繊維強化のポリアミド樹脂組成物は、1/32inchの薄肉成型品においても難燃規格UL94V−0規格を満足するが、そのためには難燃剤を多く用いる必要があるため、ポリアミド樹脂が持つ優れた機械特性(特に曲げ撓み等の靭性)や電気特性(耐トラッキング性)を大きく低下させてしまい、高い靭性や高い電気特性が必要となる一部の電気・電子部品用の成形材料として十分に満足されるものではない。また、押出加工性、成形加工性、流動性、離型性も十分ではない。
前記特許文献3乃至5に開示されている技術においては、二種以上の難燃剤による相乗効果により難燃剤を減量することが可能であり、機械特性(特に曲げ撓み等の靭性)、電気特性(耐トラッキング性)の改良効果が得られるが、成形時の流動性や離型性等の改良には効果があまりない。
さらに、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンあるいはポリリン酸メラミン等のリン系難燃剤は熱的安定性が低いため、ポリアミド樹脂とガラス繊維のような無機強化材と配合する際に、特許文献5に記載されている一般的な配合方法では、配合時の熱によりリン系難燃剤の一部が分解しガスが多く発生するほか、得られた組成物を成形する際に金型付着物が発生し実用性の面から問題となることがある。特にこの傾向は、無機充填材の割合を多く配合すると配合装置内での混錬による発熱がより大きくなり、リン系難燃剤の分解はより促進されることなる。このため、電気・電子分野のハウジング用途等に好適な、難燃性を有し、かつ高い機械物性を有する組成物を得ることは困難である。
そこで本発明においては、従来のリン系難燃剤を用いた組成物に比べ、配合時にガスの発生が少なく、実用上十分な機械的強度を有し、押出加工性、成形加工性が良好で、かつ高い難燃性を有するポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂、ガラス繊維、特定のホスフィン酸塩を含んでなるポリアミド樹脂組成物を、特定の配合条件で製造することで、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕
(a)ポリアミド樹脂:35〜60質量%、
(b)ガラス繊維35〜55質量%、
(c)下記の式(I)で表されるホスフィン酸、及び/又は、下記式(II)で表される
ジホスフィン酸の、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛からなる群より選ば
れる少なくともいずれかの塩:1〜15質量%、
(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物:1〜15質量%、
を、配合装置を用いて混合する工程を有し、
前記配合装置の、前記(b)及び前記(d)の配合が完了した位置の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
前記式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状の、C1〜C6−アルキル、アリール、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかであり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
前記式(II)中、R3は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、及びC6〜C10−アリールアルキレンからなる群より選ばれるいずれかである。
Mは、それぞれ独立してカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、及び亜鉛(イオン)からなる群より選ばれるいずれかである。
mは、2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
〔2〕
前記配合装置が、二軸押出機である前記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔3〕
前記(a)ポリアミド樹脂が、ヘキサメチレンアジパミド単位70〜83質量%及びヘキサメチレンイソフタラミド単位17〜30質量%を含有するポリアミド樹脂である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔4〕
(e)金属化合物を、前記(a)〜前記(d)の合計100質量部に対し、さらに0.1〜5質量部、添加する前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔5〕
(f)脂肪酸アミドを、前記(a)〜(d)の合計100量部に対し、さらに0.01〜0.5質量部、添加する前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔6〕
前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を、前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位置する供給口から投入し、
前記(b)ガラス繊維を、前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投入する供給口よりも更に下流に位置する供給口から投入し、
前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔7〕
前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
前記(b)ガラス繊維を、前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位置する供給口から投入し、
前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を、前記(b)ガラス繊維を投入する供給口よりも更に下流に位置する供給口から投入し、
前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
〔8〕
前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
前記(b)ガラス繊維と(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を、前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位置する供給口から投入し、
前記(b)ガラス繊維と(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、配合時にガスの発生が少なく、実用上十分な機械的強度を有し、押出加工性、成形加工性が良好で、かつ高い難燃性を有するポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法を実施する装置の一例である二軸押出機の概略構成図を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、
(a)ポリアミド樹脂:35〜60質量%、
(b)ガラス繊維35〜55質量%、
(c)下記の式(I)で表されるホスフィン酸及び/又は下記式(II)で表されるジホスフィン酸の、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛からなる群より選ばれる少なくともいずれかの塩:1〜15質量%、
(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物:1〜15質量%
を、配合装置を用いて混合する工程を有し、
前記配合装置の、前記(d)を配合する位置以降の少なくとも一部の温度を、
前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下として、ポリアミド樹脂組成物を製造する。
前記式(I)、(II)中、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C6−アルキル、アリール、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかであり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
前記式(II)中、R3は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、及びC6〜C10−アリールアルキレンからなる群より選ばれるいずれかである。
Mは、それぞれ独立してカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、及び亜鉛(イオン)からなる群より選ばれるいずれかである。
mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
先ず、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いる材料について説明する。
((a)ポリアミド樹脂)
(a)ポリアミド樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物等が挙げられる。
具体的には、ポリ(カプロラクタム)(以下ポリアミド6と略す。)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(以下ポリアミド66と略す。)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(以下ポリアミド46と略す。)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(以下ポリアミド610と略す。)、ポリ(ヘキサメチレンドデカミド)(以下ポリアミド612と略す。)、ポリ(ウンデカメチレンアジパミド)(以下ポリアミド116と略す。)、ポリ(ウンデカラクタム)(以下ポリアミド11と略す。)、ポリ(ドデカラクタム)(以下ポリアミド12と略す。)等の脂肪族ポリアミドや、ポリ(メタキシリレンアジパミド)(以下ポリアミドMXD6と略す)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)(以下ポリアミド6Tと略す。)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)(以下ポリアミド6Iと略す。)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(以下ポリアミド9Tと略す。)、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)(以下ポリアミド4Iと略す。)等の芳香族成分を含むポリアミド及び上記の脂肪族ポリアミド同士や芳香族成分を含むポリアミド同士や脂肪族ポリアミド同士と芳香族成分を含むポリアミドの共重合体や混合物が挙げられる。
(a)ポリアミド樹脂としては、融点が240℃以上270℃以下のポリアミド樹脂が好ましい。
融点を270℃以下とすることにより、溶融加工時における難燃剤成分の分解やガス成分の発生を防止でき、溶融加工性を良好なものとすることができる。
融点を240℃以上とすることにより、成形体におけるHDT(荷重たわみ温度)等の耐熱性の低下を抑制できる。
上記融点を有するポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、66/6I共重合ポリアミド、66/6I/6T三元共重合ポリアミド、66/6I/6三元共重合ポリアミド、66/6I/6C三元共重合ポリアミドが挙げられる。
例えば、成形性に加え、外観特性にも優れるイソフタル酸成分を含む66/6I共重合ポリアミド、66/6I/6三元共重合ポリアミド、66/6I/6C三元共重合ポリアミドが好ましい。
具体的には、(1)ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)単位60〜95質量%及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜40質量%からなる共重合体;(2)ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)単位50〜94質量%、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜40質量%及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)以外の脂肪族ポリアミド単位1〜10質量%からなる3元共重合体;(3)ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)成分60〜95質量%及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)成分5〜40質量%を含有する混合ポリアミド;(4)ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)成分50〜94質量%、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)成分5〜40質量%及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)以外の脂肪族ポリアミド成分1〜10質量%を含有する混合ポリアミドが挙げられ、これら(1)〜(4)の芳香族成分を含むポリアミド樹脂はより好ましい。
また、上記(2)中のポリ(ヘキサメチレンアジパミド)以外の脂肪族ポリアミド単位及び(4)中のポリ(ヘキサメチレンアジパミド)以外の脂肪族ポリアミド成分としては、ポリ(カプロラクタム)及び/又はポリ(ヘキサメチレンシクロヘキサミド)の単位及び成分等が挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法における(a)成分の使用量は、成形加工性と機械特性、難燃性の観点から、当該(a)成分と、後述する(b)成分、(c)成分、(d)成分の合計を100質量%としたとき、35〜60質量%の範囲とする。
好ましくは機械的特性の観点から37〜55質量%であり、より好ましくは、40〜50質量%である。
((b)ガラス繊維)
(b)ガラス繊維は、ポリアミド樹脂組成物に優れた機械的強度、剛性や成形性を付与する機能を有する。
(b)ガラス繊維としては、一般的にポリアミド樹脂に使用されているものであれば特に制限はない。
(b)ガラス繊維の平均繊維径については、特に限定されるものではないが、例えば、5〜30μmのチョップドストランド、ロービング又はミルドファイバーを用いることができる。
また、(b)ガラス繊維の平均繊維長については、特に限定されるものではないが、チョップドストランドを用いる場合、0.1〜6mmの範囲で適宜選択すればよい。
なお、本明細書における平均繊維径及び平均繊維長は、無作為に抽出した500本の繊維の直径ないし長さを測定して得られた値の平均値である。
(b)ガラス繊維は、その表面に、従来公知の集束剤やシラン系カップリング剤を付着させてもよい。
シラン系カップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法における(b)ガラス繊維の使用量は、配合時における分解ガス発生の抑制や、機械物性の観点から、前記(a)成分と、当該(b)成分、後述する(c)成分、(d)成分の合計を100質量%としたとき、35〜55質量%の範囲である。好ましくは、成形安定性の観点から36〜50質量%であり、より好ましくは37〜45質量%である。
((c)下記の式(I)で表されるホスフィン酸及び/又は下記式(II)で表されるジホスフィン酸の、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛からなる群より選ばれる少なくともいずれかの塩)
本明細書においては、当該(c)成分を、ホスフィン酸塩と略して表すこともある。
前記式(I)、(II)中、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C6−アルキル、アリール、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかであり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
前記式(II)中、R3は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、及びC6〜C10−アリールアルキレンからなる群より選ばれるいずれかである。
Mは、それぞれ独立してカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、及び亜鉛(イオン)からなる群より選ばれるいずれかである。
mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
(c)ホスフィン酸塩は、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平08−73720号公報に記載されているように、ホスフィン酸と、金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物とを用いて、水溶液中で製造することができる。
(c)ホスフィン酸塩は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩として得られる場合もある。
前記ホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
また、前記金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物としては、金属成分として、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含むものが挙げられる。
(c)ホスフィン酸塩としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
特に、難燃性、電気特性、ホスフィン酸金属塩の合成の観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法により得られるポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体の機械的強度、成形体外観の観点から、(c)ホスフィン酸塩としては、粒径100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いることが好ましい。
(c)ホスフィン酸塩として粒径0.5〜20μmの粉末を用いると、高い難燃性を発現することができ、成形体の強度が著しく高くなるのでより好ましい。
前記粒径は、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
また、(c)ホスフィン酸塩は、必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応物あるいは副生成物が多少残存していてもよい。
(c)ホスフィン酸塩は難燃剤として作用するが、メラミンとリン酸とから形成される付加物と併用することで少ない量で優れた薄肉難燃性と優れた電気特性を発現する。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法において、(c)ホスフィン酸塩の使用割合は、難燃性と機械物性の観点から、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、後述する(d)成分の合計を100質量%としたとき1〜15質量%の範囲である。好ましくは難燃性の観点から2〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。
((d)メラミンとリン酸とから形成される付加物)
(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物としては、化学式(C366・HPO3)n、(ここでnは縮合度を表す。)で示される化合物を用いることができる。
具体的には、メラミンとリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られるものが用いられる。(d)成分の製造方法については特に限定されるものではない。
(d)成分としては、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミンを好ましいものとして使用できる。
前記リン酸メラミンを構成するリン酸としては、例えば、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特にオルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃剤としての効果が高く、好ましい。
また、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性の観点から、かかるポリリン酸メラミンの縮合度nは5以上が好ましい。
また、ポリリン酸メラミンは、ポリリン酸とメラミンの等モルの付加塩であってもよく、メラミンとの付加塩を形成するポリリン酸としては、いわゆる縮合リン酸と呼ばれる鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸が挙げられる。
前記化学式中、縮合度nは、特に限定されるものではなく、通常3〜50であるが、得られるポリリン酸メラミン付加塩の耐熱性の観点から、縮合度nは5以上が好ましい。
前記ポリリン酸メラミン付加塩は、メラミンとポリリン酸との混合物を、例えば水スラリーとし、十分に混合して両者の反応生成物を微粒子状に形成した後、このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、さらに必要であれば焼成し、得られた固形物を粉砕することにより、粉末として得られる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法により得られるポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体の機械的強度、外観特性の観点から、前記(d)成分としてのポリリン酸メラミンは、100μm以下、好ましくは50μm以下の粒径の粉末を用いることが好ましい。粒径が0.5〜20μmの粉末を用いると、高い難燃性を発現するばかりでなく成形体の強度が著しく高くなるのでより好ましい。
また、前記(d)成分としてのポリリン酸メラミンは、必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応のメラミンあるいはリン酸、ポリリン酸が多少残存していてもよい。
前記粒径は、上記範囲に限定されるものではないが、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物の使用割合は、難燃性と機械物性の観点から1〜15質量%の範囲である。好ましくは、分解ガス抑制の観点から1〜10質量%とし、より好ましくは、1〜5質量%である。
((e)金属酸化物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、上述した(a)〜(d)成分に加え、(e)金属酸化物を任意に加えてもよい。
(e)金属化合物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム等の金属ホウ酸塩が挙げられる。
特に、助難燃剤として燃焼時に熱源である炎から樹脂への熱を遮断すること(断熱能力)によって、樹脂の分解で燃料となるガスの発生を抑制し、難燃性を高めるのに必要な不燃層(又は炭化層)の形成効率が高く、難燃性に優れているという観点から、(e)金属化合物としては、xZnO・yB23・zH2O(x>0、y>0、z≧0)で表されるホウ酸亜鉛が好ましく、2ZnO・3B23・3.5H2O、4ZnO・B23・H2O、2ZnO・3B23で表されるホウ酸亜鉛がより好ましい。
上述した金属ホウ酸塩は、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
(e)金属酸化物の平均粒径は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下である。
平均粒径は、上記数値に限定されるものではないが、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
(e)金属化合物の配合量は、難燃性や流動性の観点から、上述した成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計を100質量部としたとき、0.1〜5質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、機械的強度の観点から0.2〜3質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜1.5質量%である。
((f)脂肪酸アミド)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、上述した(a)〜(d)成分に加え、(f)脂肪酸アミドを任意に加えてもよい。
(f)脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ベヘニン酸とステアリルアミンのモノアミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。
(f)脂肪酸アミドとしては、成形時の流動性、離型性、成形体の難燃性、靭性、高温での付着物量の抑制への効果の観点から、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の炭素−炭素不飽和結合を含む脂肪酸アミドが好ましい。
前記炭素−炭素不飽和結合を含む脂肪酸アミドとしては、成形時の流動性、離型性、成形体の難燃性、靭性、高温での付着物量の抑制への効果の観点から、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等の炭素−炭素不飽和結合を含む脂肪酸とアミンとから形成される脂肪酸アミドが好ましい。
より好ましくは、炭素−炭素不飽和結合を含む脂肪酸と第一級アミンとから形成される脂肪酸アミドが挙げられ、N−ステアリルエルカ酸アミドがさらに好ましい。
また、炭素−炭素不飽和結合を含む脂肪酸アミドは、必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応物あるいは副生成物が多少残存していてもよい。
(f)脂肪酸アミドの配合量は、難燃性と流動性の観点から、上述した成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計を100質量部としたとき、0.01〜1質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、成形時の付着物の抑制の観点から0.03〜0.5質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜0.3質量%である。
(その他の成分)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば難燃剤、エラストマー、フィブリル化剤、顔料、染料等の着色剤や、ポリアミド樹脂の一般的な熱安定剤である銅系熱安定剤、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系熱安定剤、耐候性改良剤、核剤、可塑剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、他のポリマー等を、任意の段階で添加することができる。
(ポリアミド樹脂組成物の製造工程)
本実施形態の製造方法においては、所定の配合装置を用いて、上述した(a)ポリアミド樹脂、(b)ガラス繊維、(c)ホスフィン酸及び/又はホスフィン酸塩、(d)メラミンとリン酸からなる付加物を混練し、ポリアミド樹脂組成物を製造する。
混練の際、配合装置内の少なくとも一部の温度を、加工容易性と配合時のガス発生抑制の観点から、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上で溶融温度以下に設定する。
配合量は、(a)成分:35〜60質量%、(b)成分:35〜55質量%、(c)成分:1〜15質量%、(d)成分:1〜15質量%とする。
配合装置は特に限定はなく、一般に実用化されている配合装置が適用できる。
例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール等を用いればよい。
特に、二軸押出機が加工安定性や生産性の観点から好ましい。
二軸押出機としては、例えば、COPERION社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
前記(a)ポリアミド樹脂として、複数種のポリアミド樹脂を用いる場合は、混練の際、配合装置内の少なくとも一部の温度を、最も高い結晶化温度を有するポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする。
生産効率性の観点から、配合装置内の少なくとも一部の温度を、(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度から5度高い温度以上溶融温度から5度低い温度とすることが好ましい。
配合装置内で(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする部分は、本願の趣旨の観点から、(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を配合装置内に投入する部分以降の領域であるものとする。
加工時の樹脂温度を下げることで、難燃剤の熱分解が抑制される。これにより、押出時のガス発生が少なくなりペレット形状が良好となる。また、成型時にはガス発生が少なくなり成型品表面のガスによる凹凸が減少し、成型品外観が良くなる。
そして上記効果を発揮するためには、押出機の難燃剤添加位置以降の部分で上記温度範囲に設定する。
なお、難燃剤添加位置以降の全てではなく、一部分のみでも効果が発現することもある。
また、押出機全体が上記温度では、樹脂の溶融に支障が出るため生産できなくなる。
図1に、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いられる配合装置の一例として、二軸押出機の概略構成図を示す。
二軸押出機は、外装1内にスクリュー6を具備しており、矢印7に示す原料の流れ方向に対し、上流側に第一供給口2、これより下流側に、順次、第二供給口3、第三供給口4が設けられており、さらに第三供給口4の下流に、減圧脱揮部である真空ベント口5が設けられている。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いる二軸押出機は、二軸押出機のL/D(スクリュー有効長/スクリュー外径)が20以上60以下の範囲であることが好ましく、30以上50以下の範囲であることがより好ましい。
なお、スクリュー有効長Lとは、スクリュー6の長さのうち、二軸押出機1の第一供給口2の原料の流れ方向に対して上流の端から、スクリュー6の樹脂の流れ方向の先端までの長さである。
また、スクリュー外径Dとは、回転直径(スクリュー直径)である。
回転直径(スクリュー直径D)とは、スクリュー6を回転させた場合に、スクリュー有効長の長さ方向に直角に断面を取った際の最大円直径を意味する。
二軸押出機に原料を供給するための原料供給装置については、特に限定されるものではなく、単軸スクリューフィーダー、二軸スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、ロータリーフィーダー、液体供給ポンプ等が使用できる。
特に、ロスインウェイトフィーダーが、原料供給の変動誤差が少なく好ましい。
各成分の添加方法に特に制限はなく、各成分を別々の原料供給装置から投入する方法、全ての成分、又は任意の複数成分をミキサー、コーンブレンダー等で混合してから原料供給装置で添加する方法等、常用の方法を用いることができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法の一形態としては、ポリアミド樹脂組成物の機械物性の観点から、(a)ポリアミド樹脂を二軸押出機の第一供給口2から投入し、(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を第二供給口3から投入し、(b)ガラス繊維を第三供給口4から投入し、第二供給口3からスクリュー6の先端の部分の温度を(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする方法が好適に用いられる。
また、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法の他の形態としては、生産性の観点から、(a)ポリアミド樹脂を二軸押出機の第一供給口2から投入し、(b)ガラス繊維を第二供給口3から投入し、(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を第三供給口4から投入し、第三供給口4からスクリュー先端の部分の温度を、(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする方法が好適に用いられる。
さらに、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法の他の形態としては、生産性の観点から、(a)ポリアミド樹脂を二軸押出機の第一供給口2から投入し、(b)ガラス繊維と(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を第二供給口3又は第三供給口4のどちらかから投入し、選択された供給口からスクリュー先端の部分の温度を(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする方法が好適に用いられる。
(ポリアミド樹脂組成物の用途)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法によって得られるポリアミド組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形等、公知の方法によって成形体に成形される。
また、このポリアミド組成物の成形体は、電気・電子分野のハウジングとして好適である。
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す
〔原材料〕
(a)成分 ポリアミド樹脂
(a−1):下記製造例1のポリアミド66/6I(PA66/6I) (共重合成分のモル比 66:6I=82:18)、溶解温度:245℃、結晶化温度:220℃、硫酸相対粘度2.10
(a−2):ポリアミド66(PA66) 旭化成ケミカルズ(製)1300、溶解温度:265℃、結晶化温度:240℃、硫酸相対粘度2.79
(b)成分 ガラス繊維
(b−1):ガラス繊維(GF) 日本電気硝子(株)製 商品名 ECS03T275H/PL(平均繊維径10.5μm)
(c)成分 ホスフィン酸塩
(c−1):特開平08−73720号公報に記載されている製法を参考にして、製造されたジエチルホスフィン酸アルミニウム(以下、DEPAlと記載する)。
(d)成分 メラミンとリン酸とから形成される付加物
(d−1):ポリリン酸メラミン(以下、MPPと記載する) チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製 商品名 Melapur200/70
(e)成分 金属化合物
(e−1):ホウ酸亜鉛 2ZnO・3B (ホウ酸亜鉛A) U.S. Borax社製 商品名 Firebrake 500
(f)成分 脂肪酸アミドや他の添加剤成分
(f−1):N−ステアリルエルカ酸アミド 日本精化(株)製 商品名 SNT−P
〔製造例1〕
ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の等モル塩をポリアミド樹脂として50質量%相当含有する水溶液12.3kgと、ヘキサメチレンジアミン及びイソフタル酸の等モル塩をポリアミド樹脂として50質量%相当含有する水溶液2.7kgとを調製した。
次に、撹拌装置を有し、かつ下部に抜き出しノズルを有する40リットル容のオートクレーブ中に、上記の水溶液を仕込み、50℃で十分に水溶液を攪拌した。
次に、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した後、水溶液を撹拌しながらオートクレーブ内の温度を50℃から約270℃まで昇温した。
その際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧で約1.8MPaであったが、かかる圧力が1.8MPa以上にならないよう、水を随時系外に排出した。
また、重合時間は、ポリアミド樹脂の相対粘度(ηr)が目的値となるように調整した。
オートクレーブ内での重合終了後、下部ノズルからストランド状にポリアミド樹脂を送り出し、水冷・カッティングを経て、前記(a−1)であるペレット状のポリアミド66/6I共重合体を得た。
このポリアミド樹脂を80℃で24時間真空乾燥した。
ポリアミド樹脂の溶解温度は245℃、結晶化温度は220℃であった。
ポリアミド樹脂のηrを上記の方法(JIS K 6810に従った方法)で測定したところ2.10であった。
ポリアミド樹脂の溶解温度、結晶化温度の測定方法に関しては、示差走査熱量(DSC)測定法を適用した。
すなわち、示差熱量測定装置を用いて、測定対象である試料を室温から20℃/分の昇温条件下で測定し、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20〜50℃高い温度で3分間保持した。
次に、20℃/分の降温条件で室温まで測定した際の放熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶化温度とした。
さらにその後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を溶解温度とした。
〔測定方法〕
<(1)機械的性質(機械的強度)>
機械的性質を評価するために引張強度、及び引張弾性率を測定した。
射出成形機(FN−3000、スクリュー直径40mm、日精樹脂工業(株)製)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度90℃、射出圧力65MPa、射出時間25秒、冷却時間20秒、及びスクリュー回転数200rpmの成形条件で、ISO 3167に準じた多目的試験片A形を成形し、試験用試験片とした。
得られた試験片は、ISO 527に準じ、オートグラフ(AG−5000D形、(株)島津製作所社製)を用いて引張試験を行った。
<(2)押出時のガス発生>
押出時に、分解ガスが発生しているかどうかを評価した。
検査は目視で行い、以下のような判定基準とした。
○:ガス発生が見られない。
△:ガス発生がうっすらと見られる。
×:ガス発生がはっきりと見られる。
<(3)成形体外観(成形加工性)>
前記<(1)機械的性質>において作製した試験片の表面に付着物が見られるか、及び表面にざらつきがあるかを評価した。
判定は以下の通りとした。
◎:成形体表面に付着物は見られない。ざらつきもない。
○:成形体表面に付着物は見られない。ざらつきがある。
×:成形体表面に付着物が見られる。ざらつきもある。
<(4)ペレット形状(押出加工性)>
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを観察し、ワレや毛羽立ちがあるかを評価した。またペレット25kgを秤量し、高さ90cm×幅50cmの紙袋に入るかどうかを評価した。
○:ペレットにワレや毛羽立ちは見られない。紙袋に入る。
△:ペレットにワレや毛羽立ちが見られる。紙袋に入る。
×:ペレットにワレや毛羽立ちが見られる。紙袋に入らない。
<(5)難燃性(UL−94VB)>
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法を用いて、1サンプル当たりそれぞれ10本ずつ測定を行った。
なお試験片は長さ127mm、幅12.7mm、厚みは1/16インチと、厚みが1/32インチの2種類を射出成形機(日精工業(株)製:PS40E)を用いて成形して得た。
この際使用した金型は、1/16インチと1/32インチ両試験片が一度にとれるもので、長さ方向が流動方向であり、1/16インチのゲートは片端のみ、1/32インチのゲートは両端に設けてあるものであった。
難燃等級には、UL94垂直燃焼試験によって分類される難燃性のクラスを示した。
ただし、全てのサンプルで試験は10本行い、その10本のうち1本だけがV−0などの基準に満たさない場合もV−0と判定し、基準に満たないサンプルが2本以上なら下位のランクに判定した。
分類方法の概要は以下の通りとした。
その他詳細はUL94規格に準じるものとした。
V−0 : 綿着火無し、平均燃焼時間5秒以下、最大燃焼時間10秒以下
V−1 : 綿着火無し、平均燃焼時間25秒以下、最大燃焼時間30秒以下
V−2 : 綿着火有り、平均燃焼時間25秒以下、最大燃焼時間30秒以下
〔実施例1〕
東芝機械(株)製のTEM58φ二軸押出機を用いて、ポリアミド樹脂組成物を作製した。二軸押出機の概略構成については図1に示す。
低温部を第三供給口4からスクリュー6の先端部の間を低温部として230℃に設定し、それ以外を高温部として270℃に設定した。
スクリュー回転数200rpm、及び吐出量300kg/hの条件で、(a)ポリアミド樹脂として前記(a−1)を最上流部に設けられたメインフィード口より、下記表1に示した割合(配合量)で供給した。
第二供給口3から、(b)ガラス繊維として前記(b−1)、第三供給口4から(c)ホスフィン酸塩として前記(c−1)、及び(d)付加物として前記(d−1)を、それぞれ下記表1に示す割合(配合量)で供給した。
そして、最下流部に設けられたダイヘッドノズル(4mmΦ×15穴)より押し出されたストランドを水で冷却し、ストランドカッターによりカットして、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記の評価方法により評価した。
〔実施例2〕
(a−1)の代わりに(a−2)を使用した。
温度以外の条件は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔実施例3〕
第二供給口3から(c)ホスフィン酸塩及び(d)付加物を、及び第三供給口4から(b)ガラス繊維として(b−1)を供給した。
その他の条件は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔実施例4〕
下記表1に示すように、各成分の配合量を変化させた。
その他の条件は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔実施例5〕
下記表1に示したように、各成分の配合量を変化させた。
その他の条件は、実施例3と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔実施例6〕
第一供給口2から(e)金属化合物として(e−1)を、前記(a)成分〜(d)成分の合計100質量部に対し、さらに1質量部添加した。
その他の条件は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔実施例7〕
第一供給口2から(f)脂肪族アミドとして(f−1)を、前記(a)成分〜(d)成分の合計100質量部に対し、さらに0.1質量部添加した。
その他の条件は、実施例6と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔比較例1〕
低温部を設けず、全ての温度を270℃に設定した。
その他の条件は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔比較例2〕
低温部を設けず、全ての温度を270℃に設定した。
その他の条件は、実施例4の場合と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、これを評価した。
〔比較例3〕
低温部を設けず、全ての温度を230度に設定した。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得ようとした。
しかし、(a)ポリアミド樹脂が十分に溶融しなかったためペレットを得ることが出来なかった。
上記表1に示すように、実施例1〜7においては、いずれも、実用上十分な機械的強度を有し、配合時のガス発生が抑制されており、押出加工性、成形加工性が良好で、かつ優れた難燃性を有するポリアミド樹脂組成物が得られた。
比較例1においては、ガス発生が確認され、かつ押出加工性、成形加工性においても、実施例に比較して劣ったものとなった。
比較例2においては、ガス発生が確認され、押出加工性、成形加工性、及び難燃性においても実施例に比較して劣ったものとなった。
本発明の製造方法は、電気・電子用途分野のハウジング材料の製造技術として、産業上の利用可能性がある。
1 外装
2 第一供給口
3 第二供給口
4 第三供給口
5 真空ベント口
6 スクリュー
樹脂の流れ方向
L スクリュー有効長

Claims (8)

  1. (a)ポリアミド樹脂:35〜60質量%、
    (b)ガラス繊維35〜55質量%、
    (c)下記の式(I)で表されるホスフィン酸、及び/又は、下記式(II)で表される
    ジホスフィン酸の、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛からなる群より選ば
    れる少なくともいずれかの塩:1〜15質量%、
    (d)メラミンとリン酸とから形成される付加物:1〜15質量%、
    を、配合装置を用いて混合する工程を有し、
    前記配合装置の、前記(b)及び前記(d)の配合が完了した位置の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
    (前記式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状の、C1〜C6−
    アルキル、アリール、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかであり、これらは同
    一であっても異なっていてもよい。
    前記式(II)中、R3は、それぞれ独立して直鎖状又は分岐状のC1〜C10−アルキ
    レン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、及びC6〜C1
    0−アリールアルキレンからなる群より選ばれるいずれかである。
    Mは、それぞれ独立してカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウ
    ム(イオン)、及び亜鉛(イオン)からなる群より選ばれるいずれかである。
    mは、2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。)
  2. 前記配合装置が二軸押出機である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記(a)ポリアミド樹脂が、ヘキサメチレンアジパミド単位70〜83質量%及びヘ
    キサメチレンイソフタラミド単位17〜30質量%を、含有するポリアミド樹脂である請
    求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  4. (e)金属化合物を、前記(a)〜前記(d)の合計100質量部に対し、さらに0.
    1〜5質量部、添加する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物の
    製造方法。
  5. (f)脂肪酸アミドを、前記(a)〜(d)の合計100量部に対し、さらに0.01〜0.5質量部添加する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
    前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を、
    前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位置する供給口から投入し、
    前記(b)ガラス繊維を、前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸と
    から形成される付加物を投入する供給口よりも更に下流に位置する供給口から投入し、
    前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投
    入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結
    晶化温度以上溶融温度以下とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂
    組成物の製造方法。
  7. 前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
    前記(b)ガラス繊維を、前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位
    置する供給口から投入し、
    前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を、
    前記(b)ガラス繊維を投入する供給口よりも更に下流に位置する供給口から投入し、
    前記(c)ホスフィン酸塩と前記(d)メラミンとリン酸とから形成される付加物を投
    入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリアミド樹脂の結
    晶化温度以上溶融温度以下とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂
    組成物の製造方法。
  8. 前記(a)ポリアミド樹脂を、二軸押出機の最も上流に位置する供給口から投入し、
    前記(b)ガラス繊維と(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成さ
    れる付加物を、前記(a)ポリアミド樹脂を投入する供給口よりも下流に位置する供給口
    から投入し、
    前記(b)ガラス繊維と(c)ホスフィン酸塩と(d)メラミンとリン酸とから形成さ
    れる付加物を投入する供給口からスクリュー先端部までの部分の温度を、前記(a)ポリ
    アミド樹脂の結晶化温度以上溶融温度以下とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の
    ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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