JP2017020736A - 沸騰型伝熱管 - Google Patents

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Abstract

【課題】低熱流束域での沸騰伝熱性能を向上させることができ、またドライアウトを防止して、伝熱性能を向上させることができる沸騰型伝熱管を提供する。【解決手段】管外面に管周方向に連続し管軸方向にらせん状になるように形成された複数個のフィン2と、このフィン2の上部2bを管軸方向に延びる溝により凹ませて、フィンの連続方向に適長間隔で形成された複数個の凹部3と、フィン2の上部が相互に対向する方向に張り出して形成された張出部2cと、が設けられている。そして、管中心を基準として、管の最外面の半径をR1、凹部3の底面の半径をR2とし、管軸直交断面における凹部3の底面の両端部の直線距離をW1、底部間の管最外面の両端部の直線距離をW2としたとき、0.953≦R2/R1≦0.995、W1<W2である。【選択図】図1

Description

本発明は、大型冷凍機(ターボ、スクリュー)等の蒸発器に組み込まれる沸騰型伝熱管に関し、特に、低熱流束域において沸騰伝熱性能の向上を図った沸騰型伝熱管に関する。
大型冷凍機の蒸発器として、シェルアンドチューブ型熱交換器が使用されており、この熱交換器においては、多数の伝熱管を水平に配置し、伝熱管の一方の端部を蒸発器の媒体入口に集めて配置し、伝熱管の他方の端部を蒸発器の媒体出口に配置して、これらの伝熱管が組み立てられている。そして、これらの伝熱管を格納する格納容器内に液冷媒を供給して、伝熱管を液冷媒に浸漬し、これらの伝熱管の外表面にこの液冷媒を接触させると共に、伝熱管に対し、媒体入口から、管内に、温水・ブライン等の媒体を流し、媒体出口からこの媒体を排出させる。これにより、伝熱管の内外で熱交換をさせることにより、管内の媒体の熱を奪うと共に、管外の液冷媒を沸騰させる。
大型冷凍機は、更に一層の省エネルギ化の取組みが、種々、なされており、その中で、熱交換器の高性能化を図ると共に、蒸発温度を上げて圧縮機の吸入圧力を上げ、圧縮機の動力を低減させることにより、省エネルギ化が図られている。
大型冷凍機の蒸発器はシェルアンドチューブ型熱交換器を用いており、より冷凍機の効率を上げるために満液式蒸発器が採用されるものが多い。この満液式蒸発器は、シェルアンドチューブ型熱交換器内に水平でかつ多本数の伝熱管を配置し、伝熱管を液冷媒中に浸漬して伝熱管の外表面に液冷媒を充満させ、伝熱管の管内に空調機から戻ってきた温水(約12℃程度)を通水して熱交換させる。なお、伝熱管の外面を覆う液冷媒は、凝縮器で液化された冷媒が膨張弁等で減圧されて温度を下げた状態にて蒸発器に供給される。伝熱管の管内に温水を通水することにより、伝熱管の外面を覆う液冷媒が沸騰する。一方、伝熱管の管内に通水した温水は、熱を奪われて温度が低下(約7℃程度)する。
大型冷凍機の効率を上げるためには、圧縮機の摩擦を低減させれば動力が低減し、駆動電力を少なくすることが可能である。一方、蒸発器においては蒸発温度(蒸発圧力)を上げることにより、圧縮機の圧縮比を下げることが可能になり、圧縮機の駆動電力を少なくすることが可能である。
しかしながら、蒸発温度を上げると冷媒温度と管外表面との温度差が小さく、また熱流束(単位表面積あたりの伝熱量)も小さくなり、沸騰の駆動力が低下するために熱交換性能が低下する。そのため、冷媒温度と管外表面との温度差、すなわち低熱流束域での沸騰を促進する伝熱管の要求が強い。
このような背景の下に、従前、使用されている代表的な伝熱管としては、まず、平滑管がある。この平滑管は、管表面が平滑面につき、管外にて冷媒が沸騰した際に発生する気泡が離脱しやすくなる。さらに、気泡離脱後に液冷媒が再付着する。この結果、管表面が液冷媒により管表面が冷却され、沸騰促進が低下する。
そこで、現在、平滑管に代わり、沸騰型伝熱管が多く使用されている。特許文献1に記載された沸騰型伝熱管は、管外にらせん状の空洞部を設け、この空洞部と外面とを連通する部分に狭い開口部を設けている。この空洞にて冷媒の沸騰により気泡が発生する。この気泡は加工部が狭いことにより離脱しにくくなり、管表面が過熱状態になる。その結果、沸騰が促進されて性能が向上する。
また、特許文献2に記載された沸騰型伝熱管は、管外にらせん状の空洞部を設け、この空洞部と外面とを連通する部分に狭い開口部を設けている。更に、空洞の底面にらせん状の突起を設けている。この突起により、空洞部内において液冷媒の濡れ面積を増大させることによって、気泡発生力を向上させている。更に、突起谷部で気泡が発生しやすくなり、より沸騰を促進させる。
更に、特許文献3に記載された沸騰型伝熱管は、管外にらせん状の空洞部を設け、この空洞部と外面とを連通する部分に狭い開口部を設けている。また、空洞部の底部に、その両側壁をつなぐ小突起を設けている。この突起により、空洞部内の伝熱面積の増大、凸凹部による気泡発生の助長、突起角部による連続沸騰時の薄膜維持等の効果がある。更に、突起が空洞部を横切る形で設けられているため、空洞部の底部に小区画が形成され、フィン根元径部に近い部分で空洞部内の液の移動を抑制することができる。
更にまた、特許文献4に記載された沸騰型伝熱管は、管外にらせん状の空洞部を設け、この空洞部と外面とを連通する部分に狭い開口部を設けている。また、開口部に沿って凸部を設けていると共に、開口部の形状を、より最適化を図って形成されている。更に、前述の凸部を設けたことにより、気泡の離脱を制御して沸騰を促進させている。
特開昭57−131992号公報 特公平4−39596号公報 特許2788793号公報(特開平4−236097号公報) 特開平11−316096号公報
しかしながら、特許文献1に記載された沸騰型伝熱管は、低熱流束域での使用になると、すなわち熱駆動力が小さくなると、気泡発生力が低下することから、伝熱性能が低下するという問題点がある。
また、特許文献2に記載された沸騰型伝熱管は、らせん状突起を設けたことにより、より低熱流束条件の下で運転した場合、空洞部の面積が増加することにより、空洞内の液冷媒が冷却されやすくなり、性能が向上しにくくなる。
更に、特許文献3に記載された沸騰型伝熱管は、液の移動が抑制されることにより、空洞底部でドライアウトすることがある。ドライアウト状態が続くと、その部分がドライパッチ状態、すなわち乾燥状態となる。その結果、長期間使用すると性能が低下していく。
更にまた、特許文献4に記載された沸騰型伝熱管は、低熱流束域での使用になると、凸部での気泡が離脱しやすくなり、空洞部および凸部にて管表面が冷却されてしまい、性能が低下する。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、低熱流束域での沸騰伝熱性能を向上させることができ、またドライアウトを防止して、伝熱性能を向上させることができる沸騰型伝熱管を提供することを目的とする。
本発明に係る沸騰型伝熱管は、金属又は合金管であって、
管外面に管周方向に連続し管軸方向にらせん状になるように形成された複数個のフィンと、
このフィンの上部を管軸方向に延びる溝により凹ませて、前記フィンの連続方向に適長間隔で形成された複数個の凹部と、
前記フィンの上部が相互に対向する方向に張り出して形成された張出部と、
を有し、
管中心を基準として、管の最外面の半径をR1、前記凹部の底面の半径をR2とし、管軸直交断面における前記凹部の底面の両端部の直線距離をW1、前記底部間の前記管最外面の両端部の直線距離をW2としたとき、
0.953≦R2/R1≦0.995
W1<W2
であることを特徴とする。
この場合に、前記凹部の一方の端部と、管周方向に隣接する他の凹部の一方の端部との間の直線距離としての前記凹部のピッチをP2としたとき、
0.40≦P2≦0.90mm
であることが好ましい。
本発明は、伝熱管の管外面に形成した隣接するフィンの対向側面とこのフィン上部の張出部とにより囲まれた空洞を、螺旋状に設け、フィン上部の前記張出部間の狭い開口部を介して、前記空洞と伝熱管の外部とを連通させた沸騰型伝熱管である。そして、螺旋状の空洞と伝熱管の外部とを連通する狭い開口部には、フィンの最上面(管最外周面)を凹ませて形成した凹部を、フィンの連続方向に適長間隔で配置し、管最外周面と凹部とを交互に配置している。
そこで、この伝熱管の管全体を液冷媒に浸漬した場合に、(1)空洞部分に対する液冷媒の流入圧力は、フィン上部における管最外周部分よりも凹部の部分に、適度に集中する。このため、前記凹部部分が、管外面の液冷媒が前記空洞内に適度に流入する経路として機能する。(2)一方、フィンの最外周部分は前記凹部部分よりも、液冷媒の圧力集中が緩和される。更に、フィン上部の張出部間の開口部においては、フィン上部の凹部の位置よりも、フィン最外周部分の位置に、空洞の気泡が集まり、適度に気泡が離脱する。よって、上記(1)と(2)が各々機能することで、凹部の位置から液冷媒が空洞内に流入し、最外周部分の位置から空洞内の気泡が排出され、適度に液冷媒が流入し、適度に冷媒気泡が排出されることになる。この効果を得るために、0.953≦R2/R1≦0.995、W1<W2であることが必要である。
このようにして、本発明によれば、低熱流束域における沸騰伝熱性能を向上させることができる。これにより、大型冷凍機(ターボ、スクリュー)等の蒸発器に組み込まれる沸騰型伝熱管の伝熱性能を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る伝熱管の管外面のフィン形状を示す模式的斜視図である。 同じく、実施例の伝熱管の管軸直交断面を示す断面図である。 同じく、実施例の伝熱管の管軸を含む面における断面図である。 本実施形態の動作を示す管軸直交断面図である。 従来の伝熱管の欠点を示す管軸直交断面図である。 伝熱係数の評価に使用した試験装置のブロック図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1乃至図3は、本発明の実施形態に係る沸騰型伝熱管を示す図であり、図1はこの伝熱管1の外面のフィン形状を示す模式的斜視図、図2は管軸方向に直交する断面における伝熱管の一部を示す断面図、図3は管軸を含む面の断面図である。伝熱管1の外面には、管周方向に連続するフィン2が、管軸方向に螺旋状となるように、複数個形成されている。このフィン2は、1本のフィンが螺旋状に連なるように形成してもよいし、複数個のフィンが夫々螺旋状に連なるように形成してもよいが、いずれの場合も、図1に示すような管外面の一部の領域では、フィン2は複数個のものが隣接して配置されていることになる。
図3に示すように、これらのフィン2の管軸方向のピッチはP1である。また、フィン2間には、溝が形成されることになるが、この溝底部の間隔、即ち、隣接するフィン2の下端の間隔は、wBである。そして、各フィン2は、図3に示すように、その管軸を含む断面において、下部2aは管基部から立設されており、フィン2の上部2bは、管軸方向に隣接する他のフィン2の上部2bに向けて張り出している。即ち、フィン2は、管軸方向に対向するもの同士が、相互に対向する方向に張り出しており、これにより、フィン2は、その上部2bの張出部2cの最近接部間の隙間の間隔wPが、フィン2の下端の相互間隔wBよりも短いものとなっている。これにより、フィン2間に、上端が狭く下部が広い空洞4が形成され、この空洞4内には、フィン2の上部2bの張出部間の狭い開口(間隔wP)を介して、液冷媒が入り込むことができる。なお、管中心を基準とする管最外面の直径をDo、管内面の直径をDiとする。また、フィン2の高さはfhである。空洞4の底部と、伝熱管1の内面との間の部分は、底肉部1aであり、主として、この底肉部1aを介して、伝熱管1の外面側の液冷媒と、伝熱管1の内部の熱媒体(温水)との間で、熱交換がなされるが、当然に、フィン2の表面にても、管外の液冷媒と温水との間で熱交換がなされる。
また、図1に示すように、フィン2の上部を、管軸方向に延びるようにして、溝が形成されており、この溝によりフィン2の上部が凹み、複数個の凹部3が形成されている。この凹部3は、フィン2が連続する方向に適長間隔で複数個形成されている。この凹部3は、図2に示す管軸直交断面に示すように、断面が略矩形である。そして、この凹部3の底部の両端角部間の直線距離はw1である。また、隣接する2個の凹部の上端角部間の直線距離はw2である。このとき、w1<w2である。また、管軸直交断面における隣接する2個の凹部3の底部の端部角部間の直線距離をピッチP2とする。このとき、0.40≦P2≦0.90mmであることが好ましい。そして、管最外面の管中心を基準とする半径をR1、凹部3の底面の管中心を基準とする半径をR2とすると、0.953≦R2/R1≦0.995である。但し、R1=Do/2である。
次に、上述の如く構成された本実施形態の蒸発器用の沸騰型伝熱管の動作について説明する。伝熱管1の外面に液冷媒が供給され、外面に液冷媒が接触する。伝熱管1の内部には、温水が通流する。これにより、管外面の液冷媒と管内の温水との間で、熱交換がなされる。この場合に、管外面側の液冷媒は、フィン2間の空洞4内に進入して、伝熱管1の空洞底面と接触して、伝熱管1の内部を通流する温水の熱により加熱される。これにより、管外面の液冷媒は、蒸発し、ガスが生成し、このガスは、空洞4からフィン2の上部2bの張出部2cの最近接部間の隙間を通流して、伝熱管1から離脱する。
このとき、フィン2の管周方向の形状をみると、フィン2の上部2bに適長間隔で凹部3が形成されており、フィン2の上部2bの最上面(管最外面)に接触する熱媒体と、凹部3内に進入した熱媒体とで、それらよりも下方に位置する空洞4内への流入駆動力は、凹部3内の熱媒体の方が大きい。即ち、フィン2の最上面(管最外面)を被覆している熱媒体よりも、フィン2の凹部3内を充填している熱媒体の方が、その下方に位置する空洞4内に流入しやすい。このため、図4(a)に示すように、管外面側の熱媒体は、凹部3内に進入した後、この凹部3から空洞4内に移動する、そして、空洞4は、フィン2と同様に、フィン2と平行に螺旋状に延びているので、空洞4内に移動した液冷媒は、空洞4の底部で底肉部1aの表面に層6をなして被着される。この冷媒層6は、底肉部1aの表面を被覆して、底肉部1aを介して管内の温水の熱により加熱される。これにより、冷媒層6が沸騰し、蒸気が生成して、ガスの気泡5が空洞4内に生起される。この気泡5は、液冷媒が空洞4内に流入する凹部3の位置を外して、この凹部3間の部分のフィン2の上部2bの張出部2cの最近接部間の隙間から、空洞部4の外部に排出され、伝熱管1から離脱する。これにより、図4(b)に示すように、伝熱管1のフィン2の凹部3間の部分から気泡5が離脱するので、この気泡離脱部からは液冷媒は空洞4内に流入しにくく、液冷媒は、気泡5により凹部3に押し込まれ、凹部3の部分から、主として、空洞4内に流入する。
このとき、上述の熱交換が正常に循環されている場合は、高熱効率で、管外の液冷媒と、管内の温水との熱交換がなされる。しかし、図5(a)に示すように、蒸発する液冷媒が消失してドライアウトが生じると、冷媒層6の層厚が極めて薄くなると共に、空洞4内の殆どの領域を液冷媒の蒸気5aが占めるようになる。そして、この空洞4の外側には、液冷媒が存在するので、図5(b)に示すように、フィン2の最外面の形状に合わせて、管外周側の境界が凹凸となる気泡5が空洞4内に形成される。このようなドライアウトが防止されて、高効率の伝熱効果が得られるためには、管中心を基準として、管の最外面の半径をR1、前記凹部の底面の半径をR2とし、管軸直交断面における前記凹部の底面の両端角部の直線距離をw1、管軸直交断面における隣接する凹部の上端角部間の直線距離をw2としたとき、
0.953≦R2/R1≦0.995
w1<w2
であることが必要である。また、前記凹部の一方の端部と、管周方向に隣接する他の凹部の一方の端部との間の直線距離を、前記凹部のピッチP2としたとき、
0.40≦P2≦0.90mm
であることが好ましい。
「0.953≦R2/R1≦0.995」
管中心を基準とし、最外周部分の半径をR1、凹部3の底部の半径をR2とすると、R2/R1は0.953≦R2/R1≦0.995を満たす。R2/R1が0.953よりも小さい場合は、空洞4部分に対して、凹部3内に管外面に接触する液冷媒の圧力集中が増大し、凹部3からの液冷媒の流入量が増え、気泡が強制的に排出する。その結果、空洞4が液冷媒で充満されて過冷却され、気泡発生が抑制されるため、熱伝達が低下する。R2/R1が0.995よりも大きい場合は、空洞4の部分に対して凹部3の液冷媒の圧力集中が低下し、凹部3からの液冷媒の流入量が不安定になるとともに、管下部の最外周部分及び凹部部分から、液冷媒が流入しやすくなる。その結果、空洞4内が液冷媒で充満されて過冷却され、気泡発生が抑制され、熱伝達が低下する。
これに対し、0.953≦R2/R1≦0.995である場合は、管外面に供給される液冷媒が空洞4に進入する駆動力として、フィンの最外周面に被着した液冷媒よりも、凹部3内を満たす液冷媒の方が強くなり、この凹部3から、液冷媒がフィン2間の空洞4内に供給されやすくなる。つまり、R2/R1が0.953乃至0.995の場合に、凹部3が、液冷媒の空洞4内への進入経路として機能する。また、凹部3間の最外周部分は、凹部3の部分よりも、液冷媒の圧力集中が緩和される。これにより、最外周部分の開口部(フィン上部2bの張出部2c間の隙間)に空洞4内の気泡5が集まり、適度に気泡5が離脱する。その結果、空洞4に対し、適度に液冷媒が流入し、適度に冷媒気泡5が排出されて、熱伝達効率が向上する。
「w1<w2」
管軸直角断面より見た凹底部の幅w1と、管最外周(フィン最上部)の残存部分(凹部3以外の部分)の幅w2との関係は、w1<w2である。
w1≧w2にて凹部3を形成した場合、w1が大きいことにより、凹部3部分からの液冷媒の空洞4内流入が多くなり、空洞4内が過冷却状態になり、熱伝達率が低下する。一方、w1<w2で凹部3を形成した場合は、空洞4内に発生する気泡5が低熱流束条件でも管最外周部分からの気泡5の離脱が適度になされ、かつ凹部3部分からの冷媒流入量を最小限に抑えることができる。その結果、空洞内が過冷却状態にならずに、連続的に沸騰し、熱伝達率がより向上する。
「0.40≦P2≦0.90mm」
また、凹部3の一方の端部と、管周方向に隣接する他の凹部3の一方の端部との間の直線距離を、凹部3のピッチP2としたとき、0.40≦P2≦0.90mmとすることにより、より一層沸騰伝熱を促進することができる。
らせん状の空洞4の部分と空洞4の外部とを連通するフィン2間の狭い開口部は、フィン2の張出部2cの部分で最も狭く、管周方向に一定の間隔で配置された凹部3の部分、即ち、管最外周の面が凹んで形成された凹部3の部分は張出部2cがない分、若干広くなっている。この凹部3の管円周方向のピッチP2(直線距離)は、0.40≦P2≦0.90mmとすることが好ましい。ピッチP2が0.40mmよりも小さい場合、空洞4内に発生する気泡5が低熱流束条件でも排出されにくくなり、空洞4内が過熱状態になる。その結果、空洞4内がドライアウトしやすくなる。
また、ピッチP2が小さい場合、凹部3が多くなることにより、運転開始時に、特に低熱流束条件で空洞4内への液冷媒流入量が多くなり、沸騰の定常状態に至る時間が長くなる。その結果、機器運転開始時のエネルギ(例えば、電力等)を多量に消費する。
一方、ピッチP2を0.90mmよりも大きくした場合は、空洞4内に発生する気泡5が排出されやすくなり、高温の気泡5が少なくなり、低温の液冷媒が多くなって、空洞4内の温度が下がり、空洞4内が過冷却状態になりやすくなる。その結果、空洞4内が冷却されやすく、熱伝達率が低下する。
これに対し、ピッチP2が0.40≦P2≦0.90mmの範囲である場合は、低熱流束域においても、最外周部分の開口部から適度に気泡が離脱し、凹部3から液冷媒が適量空洞4に流入する。その結果、空洞4内でドライアウトが生じることなく、安定的に液冷媒の沸騰を継続させることができ、それにより、沸騰性能がより一層向上する。
「その他の形状因子」
フィン2の最上面、即ち、管最外面の直径(管外径)Doは、2・R1であるが、このDoは、例えば、12.5乃至26mmである。フィン2の間に形成される空洞4の底肉部1aの厚さ(底肉厚)は、管内径をDiとし、フィン2の高さをfhとすると、(Do−2・fh−Di)/2と表される。この底肉厚は、使用する冷媒にもよるが、例えば、0.45乃至1.20mmである。凹部3の底部の幅w1は、例えば、最小値が0.05mmであるが、凹部3の加工工具の耐久性が良ければ、最小値で0.03mmとすることができる。
管外の螺旋状空洞4の管軸方向ピッチP1は、使用する冷媒により適宜変更するものであるが、例えば、エアコンディショナー等にも使用されるフロン冷媒の場合は、ピッチP1は小さくし、その範囲は、例えば、0.40乃至0.85mmである。一方、水冷媒の場合は、ピッチP1を大きくし、その範囲は、例えば、0.80乃至1.60mmである。このピッチP1の相違は、冷媒の粘性係数及び表面張力に影響を受ける。フロン冷媒は粘性係数及び表面張力が小さい。一方で、水は粘性係数及び表面張力が大きい。
また、空洞4の形状を規定するwP、wB及びfhについては、上述の空洞4における液冷媒の沸騰を効率よく促進するために、フィン2の上部張出部2c間の間隔である開口部幅wPは0.064乃至0.188mm、空洞4の管軸方向の最大幅である空洞底幅wBが0.282乃至0.491mm、フィン高さfhが0.41乃至0.65mmであることが好ましい。
なお、管内面には螺旋状のリブを成形することが可能である。このリブを成形することにより、管内の熱伝達率が向上し、より沸騰伝熱性能が向上する。
本発明の沸騰型伝熱管は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、及びステンレス等の熱伝導性を有する金属材料で製造されており、特に、銅又は銅合金のような熱伝導率が良好なものであれば、なお好適である。また、適用する冷媒により微量添加されて強度が向上した銅合金材料を使用すれば、管外側の圧力が高い場合でも通常の銅と比較して薄い素材を使用することが可能となり、材料使用量を削減でき、更には薄い素材を使用することにより材料部分の熱抵抗が小さくなり、より性能が向上する。
以下、本発明の沸騰型伝熱管の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。図6は伝熱性能の評価に使用した試験装置の概略図である。ステンレス鋼製シェルアンドチューブ熱交換器の凝縮器53及び蒸発器55が配管で接続されており、冷媒が温度差により自然循環するサーモサイフォン型の熱交換器である。凝縮器53及び蒸発器55は、内径が333mm、長さが1000mmのタンクである。蒸発器55の中央に、実施例及び比較例の供試管54が1本設置されており、この供試管54の測定有効長は1000mmである。タンク56内には冷媒が貯留されており、このタンク56から供給された冷媒は、ヒータ57にて加熱されて、温水となる。このとき、タンク56内の冷却コイルにより、タンク56内の冷媒は冷却され、ヒータ57により加熱されることにより、供試管54に供給される温水は、一定温度に制御される。この温水は供試管54の一方の端部である入口から供試管内部に供給される。供試管54の他端の出口から排出された冷媒は、タンク56に返戻される。蒸発器55内には液冷媒が充填されており、供試管54はこの蒸発器55内の液冷媒中に浸漬される。そして、供試管54内部の温水により加熱された液冷媒は蒸発し、蒸気冷媒となって、凝縮器53に供給される。
凝縮器53においては、管端部をOリングで固定した伝熱管52(有効長1000mm)が水平に1本設置され、冷媒蒸気入口には、蒸発器55から供給される冷媒蒸気が直接伝熱管52に当たらないように、邪魔板が設置されている。伝熱管52内には、タンク51から供給されたブラインを流し、伝熱管52の外表面で蒸気冷媒を恐縮させる。この凝縮した液冷媒は、重力で蒸発器55に戻る。
蒸発圧力は、蒸発器上部に設けた圧力取出し口より、半導体ひずみゲージ式圧力伝送器(測定誤差:測定スパンの±0.1%)を使用して測定する。温水の出入口温度は、白金測温抵抗体(Pt100Ω、JIS−A級)を、予めクオーツ温度計にて±0.05°Cに校正したものを供試管54の両管端に夫々設置して測定する。ここに、白金測温抵抗体の先端は、流路中央になるように設置されている。温水流量は電磁流量計(測定誤差:読み値の±0.25%)で測定する。試験条件を、下記表1に示す。
Figure 2017020736
熱伝達率は以下の各数式により算出した。先ず、温水伝熱量Qは、数式1により求めた。
Figure 2017020736
ここで、Gは温水体積流量、ρは温水密度、cpcは温水定圧比熱、TCoutは温水出口温度、TCinは温水入口温度である。なお、温水の物性値は、物性値表より作成した相関式を用いて、温水出入口温度測定値の算術平均値により算出した値を使用した。対数平均温度差ΔTは、下記数式2で定義される。
Figure 2017020736
ここで、Tは冷媒飽和温度である。この冷媒飽和温度Tは、蒸発圧力の測定値と冷媒物性値より算出した。
そして、供試管フィン加工部の外表面積A基準の総括伝熱係数Kを、下記数式3により求めた。
Figure 2017020736
ここで、供試管フィン加工部の外表面積Aは、下記数式4に示すように、供試管フィン加工部外径Dより算出した包絡面を基準とした。
Figure 2017020736
ここで、lは供試管伝熱有効長である。
また、外表面積基準の熱流束qは、供試管フィン加工部の外表面積Aを基準として、下記数式5により求めた。
Figure 2017020736
管外蒸発熱伝達率hは、下記数式6にて求めた。
Figure 2017020736
ここで、hは管内側熱伝達率、Aは供試管フィン加工部の内表面積、Rwallは管壁熱抵抗であり、これらは以下のように求める。
供試管フィン加工部の内表面積Aは、下記数式7にて定義される。
Figure 2017020736
ここで、Dimaxは供試管フィン加工部最大内径である。また、管壁熱抵抗Rwallは、下記数式8にて定義して求める。
Figure 2017020736
ここで、kwallは管壁の熱伝導率である。更に、管内側熱伝達率h及び管内側ヌッセルト数Nuは、関数形がDittus-Boelterの式で表されると仮定し、下記数式9にて定義して求める。
Figure 2017020736
ここで、Cは実験的に求められる係数、kは温水の熱伝導率、Prは温水のプラントル数である。また、温水のレイノルズ数Reは、下記数式10にて定義して求めた。
Figure 2017020736
ここで、VCiは温水平均流速、νは温水の動粘性係数である。なお、管内側熱伝達率hを求めるためのC値は、事前にWilson-plot法を使用して予め試験して求めた。そのC値は、0.068である。
試験評価した本発明の実施例及び比較例の伝熱管の形状因子を下記表2−1、表2−2及び表3に示す。表2−1、表2−2は実施例、表3は比較例である。表2−1、表2−2及び表3において、各数値の単位は、R2/R1及びhoを除いて、mmである。なお、素材はりん脱酸銅管(JIS H3300 C1220TS)を使用した。実施例及び比較例の伝熱管を得るための素管のサイズは、管の外径が19.05mm、肉厚が1.05mmの平滑管である。この素管を転造加工法によりローフィン及び内面リブを同時に加工し、数段のフィン先端部を分断及び圧縮して目的の形状を成形した。なお、フィンの成形は転造による方法に限定するものではなく、切り起こし法、又は切削による方法でも可能である。なお、内面リブの形状仕様は、リブ数が48個、リブの管軸に対してなす角度であるリード角が47°、リブ高さが0.31mmである。
Figure 2017020736
Figure 2017020736
Figure 2017020736
この表3に示すように、比較例1乃至7は、R2/R1が0.953乃至0.995の範囲から外れる。また、比較例3,5,8は、w1≧w2であり、本発明の範囲から外れる。更に、比較例1〜3,6〜8は、P2が本発明の範囲0.40乃至0.90mmから外れる。
これに対し、表2−1,表2−2に示す実施例1〜16は、全て、R2/R1及びw1,w2は、本発明の範囲を満たす。また、実施例3〜6、8,10,16は、P2も本発明の請求項2の範囲を満たす。しかし、実施例1,2,7,9,11〜15は、P2が本発明の請求項2の範囲から外れる。
この表2-1,表2−2に示すように、本発明の請求項2の範囲を満たす実施例3〜6,8,10,16は、管外面の蒸発熱伝達率hoが7.89以上と極めて高い。また、請求項2から外れるが、請求項1は満たす実施例1,2,7,9,11〜15は、蒸発熱伝達率hoが6.52以上と高い。これに対し、表3に示すように、本発明の比較例の場合は、蒸発熱伝達率hoの最高値が5.45であった。
1:伝熱管
1a:底肉部
2:フィン
2a:下部
2b:上部
2c:張出部
3:凹部
4:空洞
5:気泡
6:冷媒層

Claims (2)

  1. 金属又は合金管であって、
    管外面に管周方向に連続し管軸方向にらせん状になるように形成された複数個のフィンと、
    このフィンの上部を管軸方向に延びる溝により凹ませて、前記フィンの連続方向に適長間隔で形成された複数個の凹部と、
    前記フィンの上部が相互に対向する方向に張り出して形成された張出部と、
    を有し、
    管中心を基準として、管の最外面の半径をR1、前記凹部の底面の半径をR2とし、管軸直交断面における前記凹部の底面の両端角部の直線距離をw1、管軸直交断面における隣接する凹部の上端角部間の直線距離をw2としたとき、
    0.953≦R2/R1≦0.995
    w1<w2
    であることを特徴とする沸騰型伝熱管。
  2. 前記凹部の一方の端部と、管周方向に隣接する他の凹部の一方の端部との間の直線距離としての前記凹部のピッチをP2としたとき、
    0.40≦P2≦0.90mm
    であることを特徴とする請求項1に記載の沸騰型伝熱管。
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