JP2017015945A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記工程1〜3を有する、静電荷像現像用トナーの製造方法である。
工程1:末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程。
工程2:工程1で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。
【選択図】なし
Description
トナーには、近年の環境負荷低減や省エネルギーといった観点から、低温定着性が求められている。特に、トナー用結着樹脂の主成分にビニル系樹脂を用いた静電荷像現像用トナーの場合、帯電安定性及び耐熱保存性に優れるものの、低温定着性に大きな課題がある。この低温定着性を改善するためには、低温定着性に優れるポリエステル等のエステル結合を有する樹脂をビニル系樹脂と併用することは有効な解決手段である。
しかし、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂との相溶性が低いことからトナー粒子中でそれぞれの樹脂が均一に混合せず、ポリエステル系樹脂の有する良好な低温定着性を十分に発揮することができないという課題がある。
また、このポリエステル等の低温定着性に優れる樹脂がトナーの最表面に存在すると、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性を大きく低下させてしまうおそれがあり、これらの性能を両立し得る材料が望まれている。このポリエステル等の低温定着性に優れる樹脂をトナーの最表面に存在させないためには、トナーを水媒体中で作製する場合において、水可溶分を少なくすることが有効であると考えられている。
このように、トナー用結着樹脂の主成分にビニル系樹脂を用いた静電荷像現像用トナーにおける低温定着性の改善、及びビニル系樹脂とポリエステル系樹脂とを併用する場合における耐熱保存性及び帯電安定性の改善が望まれていた。
そこで、本発明は、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1] 下記工程1〜3を有する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1:末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程。
工程2:工程1で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中でビニル系モノマーを重合する工程。
[2] 下記工程1′〜3を有する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1′:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とモノカルボン酸又はその無水物とビニル系モノマーとを混合及び反応させた溶液を得る工程。
工程2:工程1′で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、[1]下記工程1〜3を有する製造方法、及び[2]下記工程1′〜3を有する製造方法である。
[1]工程1:末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程。
工程2:工程1で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中でビニル系モノマーを重合する工程。
[2]工程1′:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とモノカルボン酸又はその無水物とビニル系モノマーとを混合及び反応させた溶液を得る工程。
工程2:工程1′で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。
なお、以下、[1]工程1〜3を有する本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法を「製造方法(1)」と称し、[2]工程1′〜3を有する本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法を「製造方法(2)」と称することがある。
低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性に優れるトナーを得るために、低温定着性には劣るものの保存安定性及び帯電安定性に優れるビニル系樹脂と、保存安定性及び帯電安定性には劣るものの低温定着性に優れるポリエステル系樹脂とを単に混合し、均一に分散しただけでは、トナーとしてビニル系樹脂とポリエステル系樹脂の両方の樹脂の優れた性能のみを引き出すことは困難であり、各々の劣る性能も引き出されてしまい、総合的に低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性に優れるトナーを得ることは困難であった。
本発明の製造方法により得られるトナーは、ビニル系樹脂内部にポリエステル系樹脂を均一に分散することができ、互いの樹脂の性能に悪影響を及ぼすことなく、それぞれの劣る性能を補い、本来必要とされる低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を発揮できたものと考えられる。
すなわち、本発明の製造方法では、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の末端ヒドロキシ基をエステル化することにより樹脂の疎水性を高めて水可溶分を減らすことができ、これにより、ビニル系樹脂モノマー及びビニル系樹脂との相溶性が増したことで、トナー内部にポリエステル系樹脂を均一に分散でき、ビニル系樹脂のみを用いた場合と比較して低温定着性が向上したと考えられる。さらに、トナーの最表面には耐熱保存性及び帯電安定性に優れるビニル系樹脂のみが存在するため、耐熱保存性及び帯電安定性が維持できたと考えられる。
本発明の製造方法(1)は、下記工程1〜3を有する。
工程1:末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程。
工程2:工程1で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中でビニル系モノマーを重合する工程。
工程1は、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程である。
なお、本明細書において、工程1で得る末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を「樹脂溶液」とも称する。
本発明の製造方法(1)に用いる末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂は、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の末端のヒドロキシ基をエステル化することにより得られるものである。
本明細書中、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂を単に「ポリエステル系樹脂」と称することがある。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂とは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル樹脂ユニットを含む樹脂をいい、ポリエステル、ポリエステルポリアミド等の重縮合系樹脂ユニットからなる樹脂だけでなく、前記ポリエステル樹脂ユニットを含む、2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂、例えば、ポリエステル樹脂ユニットとビニル系樹脂等の付加重合系樹脂ユニットとが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂も含まれる。
また、本発明においては、異なる原料モノマー間の反応に限らず、複数の異種官能基を1分子内に有するモノマー、例えば、ヒドロキシ基とカルボキシ基を有する乳酸を脱水縮合することにより得られるポリ乳酸も、ポリエステル系樹脂に含まれる。
本発明において、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「非晶質」の樹脂とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。一方、「結晶性」の樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下の樹脂をいう。
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。結晶性指数は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリエステル系樹脂の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、また、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
〔吸熱の最高ピーク温度〕
ポリエステル系樹脂の吸熱の最高ピーク温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
〔酸価〕
ポリエステル系樹脂の酸価は、トナーの生産性の観点から、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下、更に好ましくは4mgKOH/g以下であり、そして、ポリエステル系樹脂の生産性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.3mgKOH/g以上、更に好ましくは0.5mgKOH/g以上である。
〔水酸基価〕
ポリエステル系樹脂の水酸基価は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下であり、そして、同様の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上である。
ポリエステル系樹脂の酸価と水酸基価の合計は、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは7mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
〔数平均分子量(Mn)〕
ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、そして、低温定着性及び生産性の観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下である。
〔重量平均分子量(Mw)〕
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、そして、低温定着性及び生産性の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下である。
ポリエステル系樹脂の軟化点、吸熱の最高ピーク温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、及び重量平均分子量は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
ポリエステル系樹脂として用いられるポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合反応させることにより調製することができる。
これらのうち、耐熱保存性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,12−ドデカンジオールがより好ましい。
本発明においては、耐熱保存性の観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸が好ましく、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、テレフタル酸、セバシン酸が更に好ましい。
なお、本明細書において、カルボン酸成分は、上記のようなカルボン酸、これらのカルボン酸の無水物、及びこれらのカルボン酸のアルキルエステルを含むものとする。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1以上28以下のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整、及びポリエステル系樹脂の物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)が更に好ましい。
上記エステル化触媒の使用量は、反応性、分子量調整、及びポリエステル系樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下である。
上記エステル化助触媒の使用量は、反応性、分子量調整、及びポリエステル系樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
重合禁止剤としては、4−t−ブチルカテコール等が挙げられる。
反応率(%)=(反応開始後生成した水の総質量/理想的な反応によって生成する水の質量)×100
ポリエステル樹脂の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、また、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
〔吸熱の最高ピーク温度〕
ポリエステル樹脂の吸熱の最高ピーク温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
〔酸価〕
ポリエステルル樹脂の酸価は、トナーの生産性の観点から、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下、更に好ましくは4mgKOH/g以下であり、そして、ポリエステル樹脂の生産性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.3mgKOH/g以上、更に好ましくは0.5mgKOH/g以上である。
〔水酸基価〕
ポリエステル樹脂の水酸基価は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下であり、そして、同様の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上である。
ポリエステル樹脂の酸価と水酸基価の合計は、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは7mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
〔数平均分子量(Mn)〕
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、そして、低温定着性及び生産性の観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下である。
〔重量平均分子量(Mw)〕
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、そして、低温定着性及び生産性の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下である。
ポリエステル樹脂の軟化点、吸熱の最高ピーク温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、及び重量平均分子量は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
ポリエステル系樹脂として用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステル樹脂ユニットとビニル系樹脂等の付加重合系樹脂ユニットとが部分的に化学結合した樹脂であり、ポリエステル樹脂ユニットを構成するポリエステル樹脂成分の原料モノマー又はポリエステル樹脂と、付加重合系樹脂ユニットを構成する付加重合系樹脂成分の原料モノマーと、ポリエステル樹脂成分の原料モノマー及び付加重合系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーとを重縮合させて得られる樹脂である。
なお、両反応性モノマーは、後述する各成分の含有量の計算において、アルコール成分及びカルボン酸成分の含有量のいずれにも含めないものとする。
ハイブリッド樹脂中のポリエステル樹脂ユニットを構成するポリエステル樹脂成分の原料モノマーは、ポリエステル樹脂の製造方法の項で挙げられたものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ハイブリッド樹脂中の付加重合系樹脂ユニットを構成する付加重合系樹脂成分としては、ビニル系モノマーとの相溶性を向上させる観点から、スチレン系樹脂が好ましい。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン誘導体の重合体、スチレン−アクリル共重合体等が挙げられ、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、ポリスチレン、スチレン誘導体の重合体及びスチレン−アクリル共重合体から選ばれる1種以上が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
スチレン誘導体としては、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。
さらに、付加重合系樹脂成分の原料モノマー中のスチレンの含有量は、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数としては、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは8以下である。
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)パルミチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、(イソ)ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(イソ)」とは、ノルマル又はイソを意味する。
両反応性モノマーとしては、分子内に、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、好ましくはヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物、より好ましくはカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより一層向上させることができる。
両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
(i)重縮合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行う方法
(ii)重縮合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行い、工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂成分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに進める方法
(iii)付加重合反応に適した温度条件下で、重縮合反応を行う工程(A)と付加重合反応を行う工程(B)とを並行して行い、反応温度を前記条件下で保持して工程(B)を完結させた後、反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂成分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに進める方法
上記(i)、(ii)の方法において、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合したポリエステル樹脂を用いてもよい。
上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、ポリエステル樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物中に、付加重合系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
また、両反応性モノマーは、付加重合系樹脂成分の原料モノマーと共に用いることが好ましい。
なお、重合開始剤を使用する場合、付加重合系樹脂成分の原料モノマーの量は、重合開始剤の量を含まないものとする。
付加重合反応の温度は、反応性の観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
ハイブリッド樹脂の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは125℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
〔吸熱の最高ピーク温度(融点)〕
ハイブリッド樹脂の吸熱の最高ピーク温度(融点)は、耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
〔ガラス転移温度〕
非晶質ハイブリッド樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは33℃以上、更に好ましくは36℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
〔酸価〕
ハイブリッド樹脂の酸価は、トナーの生産性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは3mgKOH/g以下であり、そして、ハイブリッド樹脂の生産性の観点から、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1.5mgKOH/g以上である。
〔水酸基価〕
ハイブリッド樹脂の水酸基価は、帯電安定性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下であり、そして、ハイブリッド樹脂の生産性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上である。
〔数平均分子量(Mn)〕
ハイブリッド樹脂の数平均分子量(Mn)は、耐熱保存性の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは15,000以下、より好ましくは10,000以下である。
〔重量平均分子量(Mw)〕
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐熱保存性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下である。
ハイブリッド樹脂の軟化点、吸熱の最高ピーク温度(融点)、ガラス転移温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、及び重量平均分子量は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
ポリエステル系樹脂の末端のヒドロキシ基をエステル化する方法としては、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂と、モノカルボン酸又はその無水物とを混合してエステル化する方法が好ましい。
ポリエステル系樹脂の末端ヒドロキシ基のエステル化は、ビニル系モノマー等と混合する前に行ってもよく、混合した後に行ってもよいが、工程1においてビニル系モノマー等と混合した後に行うことが好ましい。
Z=(M×X×Y)/(56100×V) (1)
(式中、M:モノカルボン酸又はその無水物の分子量(g/mol)、X:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の添加量(g)、Y:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の水酸基価(mgKOH/g)、V:モノカルボン酸1分子当りのカルボキシ基の数又はモノカルボン酸の無水物1分子が加水分解した際に生じるカルボキシ基の数の合計を表す。)
モノカルボン酸の無水物を使用する場合、前記式(1)におけるカルボキシ基の数Vは、モノカルボン酸の無水物1モルが加水分解した際に生じるカルボキシ基の価数の合計であり、例えば無水酢酸の場合、1分子の無水酢酸が加水分解すると2分子の酢酸を生成し、カルボキシ基が合計2つ生じるので、Vは2となる。
本発明の製造方法(1)の工程1で調製される樹脂溶液は、ビニル系モノマーを含有する。樹脂溶液中のビニル系モノマーは、後の工程2及び3を経て、結着樹脂であるビニル系樹脂を形成する。
工程1で用いるビニル系モノマーとは、通常のラジカル重合可能なモノマーであれば利用できるが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン等のスチレン又はスチレン誘導体;例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル等のビニルエステル類;例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、α−クロロメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;例えば、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類、例えば、ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;例えば、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類が挙げられる。
低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、スチレン及びスチレン誘導体から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸エステルを併用することが好ましい。
さらに、ビニル系モノマー中のスチレンの含有量は、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
樹脂溶液は、反応性の観点から、撹拌停止しても均一透明な状態が好ましいが、透明でなく濁った状態であっても撹拌中に均一な状態が保てればよい。
本発明の製造方法(1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、結着樹脂として公知の結着樹脂、例えば、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル系モノマーから形成されるビニル系樹脂以外のスチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂を併用してもよい。
トナーに含まれる全結着樹脂中、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーから形成されるビニル系樹脂との合計含有量は、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤であれば利用できるが、熱重合開始剤が好ましい。例えば、過酸化物系開始剤としては、具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサンケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系開始剤、イソブチルパーオキサイド、m−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、α−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系開始剤、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系開始剤、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系開始剤、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ吉草酸−n−ブチルエステル等のパーオキシケタール系開始剤、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシフェノキシアセテート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート等のアルキルパーエステル系開始剤、ジ−t−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート系開始剤、その他のアセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等が挙げられ、また、アゾビス系開始剤としては、具体的には、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(メチルイソブチレート)、α,α’−アゾビス−(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレイン酸)等が挙げられる。
反応性の観点から、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエートが好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いることができ、また、2種以上の混合物として使用することもできる。その使用量は、ビニル系モノマー100質量部に対して、反応性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。
着色剤の含有量は、トナーの印字濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、トナーの定着性を向上させる観点から、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。
エステル系ワックスとしては、合成エステルワックス及び天然エステルワックスが挙げられる。合成エステルワックスとしては、長鎖アルコールと脂肪酸からなるエステルが挙げられ、好ましくはベヘニン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である。天然エステルワックスとしては、好ましくはカルナウバワックス及びライスワックスから選ばれる1種以上である。
炭化水素ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックスが挙げられ、好ましくはパラフィンワックスである。
離型剤の混合量は、低温定着性及び印刷物の光沢性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば、「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN−01」、「ボントロンN−04」、「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−11」(以上、オリエント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP−51」(オリエント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP−B」(オリエント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ−2001」、「PLZ−8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA−701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
工程2は、工程1で得られた樹脂溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程である。
乳化液とは樹脂溶液を水媒体中に乳化剤を用いて均一分散したものであって、懸濁液とは樹脂溶液を水媒体中に機械力を用いて均一分散したものであって、いずれも、撹拌や混合による液流動を停止した場合に直ちに分離せず、均一な状態を保つ状態を示す。乳化液及び懸濁液は、通常の撹拌に用いられる棒、板、プロペラ状等の撹拌翼を有する撹拌機やホモジナイザーなどの各種撹拌装置を用いて得ることができ、均一分散できるものであれば種類や温度条件などは特に限定されるものではない。
工程2で用いる水系媒体としては、水溶性の媒体であればいずれのものでも利用できるが、トナー粒子の粒径制御の観点から、水を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上含有するものである。
水系媒体は水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。水と混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ(登録商標)類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
水系媒体量は、トナー粒子の粒径制御の観点から、結着樹脂の合計質量の、好ましくは2.5質量倍以上、より好ましくは2.8質量倍以上、更に好ましくは3.0質量倍以上であり、そして、好ましくは6質量倍以下、より好ましくは5質量倍以下、更に好ましくは4質量倍以下である。
樹脂溶液は、水系媒体を撹拌しながら添加しても、添加した後に撹拌を開始してもよいが、トナー粒子の粒径制御の観点から、添加した後に撹拌を開始することが好ましい。また、工程2において水系媒体に樹脂溶液を加えて得られる液体は、懸濁液又は乳化液であるが、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは懸濁液である。
無機塩の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上であり、そして、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
工程3は、工程2で得られた懸濁液又は乳化液中でビニル系モノマーを重合する工程である。
工程3における重合法は、トナーの小粒径化の観点から、乳化重合法、懸濁重合法が好ましく、懸濁重合法がより好ましい。
工程3における重合条件は、通常のラジカル重合反応の条件を適用できるが、以下の各条件が好ましい。
反応温度は、反応性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
反応時間は、反応性の観点から、好ましくは5時間以上、より好ましくは6時間以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下である。
また、重合反応後、ろ紙等を用いてろ過してトナー粒子を分取し、乾燥することが好ましい。
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子を静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、トナー粒子の表面を処理したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーが外添剤で処理されている場合には、トナー母粒子の体積中位粒径とする。
なお、CV値は、下記式(2)で表される値であり、実施例に記載の方法で測定することができる。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差÷体積中位粒径(D50))×100 (2)
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法(2)は、下記工程1′〜3を有する。
工程1′:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂と、モノカルボン酸又はその無水物と、ビニル系モノマーと、を混合し反応させた溶液を得る工程。
工程2:工程1′で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。
工程1′は、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とモノカルボン酸又はその無水物とビニル系モノマーとを混合及び反応させた溶液を得る工程である。
工程1′で使用する末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の種類、製造方法及び物性は、工程1において説明した末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂と同様である。
工程1′で使用するモノカルボン酸又はその無水物の種類及び使用量は、工程1において説明したモノカルボン酸又はその無水物の種類及び使用量と同様である。
工程1′で使用するビニル系モノマーの種類及び使用量は、工程1において説明したビニル系モノマーの種類及び使用量と同様である。
また、工程1′では、工程1で説明したその他の結着樹脂成分、ビニル系モノマーの重合開始剤を使用してもよく、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。これらの種類及び使用量は、工程1で説明したとおりである。
本発明の製造方法(2)における工程2及び3は、本発明の製造方法(1)における工程2及び3と同様である。
また、重合反応後、ろ紙等を用いてろ過してトナー粒子を分取し、乾燥することが好ましい。
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子を静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、トナー粒子の表面を処理したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
本発明の製造方法(2)により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とした。
上記で得られた軟化点と、吸熱の最高ピークとの比[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]から結晶性指数を求めた。
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
以下の方法により、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(有機溶媒系で測定する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)とも呼ばれる)により数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC−25JP」(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の標準ポリスチレン(「TSKgel標準ポリスチレン」(東ソー株式会社製)、以下にタイプ(重量平均分子量、Mw/Mn)を示す。A−500(5.89×102、1.14)、A−1000(1.01×103、1.13)、A−2500(2.5×103、1.05)、A−5000(6.20×103、1.02)、F−1(9.49×103、1.02)、F−2(1.54×104、1.01)、F−4(3.72×104、1.01)、F−10(9.89×104、1.01)、F−20(1.89×105、1.04)、F−40(3.97×105、1.02)、F−80(7.07×105、1.05)、F−128(1.11×106、1.08))を標準試料として作成したものを用いた。
・測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
・分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー株式会社製)
トナーの体積中位粒径は、以下の条件で測定した。
・測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:アイソトンII(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:電解液にポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王株式会社製、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:ビーカーに前記電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度となるように前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
また、CV値(%)は下記式(3)に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差÷体積中位粒径(D50))×100 (3)
トナーの円形度は、以下の条件で測定した。
・測定機:湿式フロー式粒子径・形状分析装置「FPIA−3000」(Malvern Instruments Ltd社製)
・分散液:電解液にポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王株式会社製)、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料50mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、蒸留水20mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させた。
・測定モード:HPF測定モード
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで−10℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定した。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の数平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
(樹脂Aの製造)
表1に示す質量の1,12−ドデカンジオールを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、常圧で120℃まで撹拌しながら昇温した。120℃にて、セバシン酸を表1に示す質量の半分添加し、170℃まで昇温し、6時間反応させた。その後、表1に示す質量のスチレン、ジブチルパーオキサイド及びアクリル酸を滴下ポンプ「MASTER FLEX L/S」(ヤマト科学株式会社製)により1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を行った後、残りのセバシン酸を添加し、200℃まで8時間かけて昇温した。その後、2−エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、200℃にて1時間反応させた後、減圧し8.3kPaにて5時間反応させて、樹脂Aを得た。なお、撹拌は昇温開始から反応終了まで継続して行った。
(樹脂Bの製造)
表1に示す質量のBPA−POを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、常圧で120℃まで撹拌しながら昇温した。120℃にて、表1に示す質量のテレフタル酸を添加し、その後170℃まで昇温した。その後、表1に示す質量のスチレン、ジブチルパーオキサイド及びアクリル酸を滴下ポンプ「MASTER FLEX L/S」(ヤマト科学株式会社製)により1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、200℃を維持したまま1時間減圧(8.3kPa)した。その後、2−エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、235℃まで昇温し5時間反応させた後、減圧し8.3kPaにて1時間反応させた。系内を常圧に戻した後、表1に示す質量のアジピン酸を添加し、200℃まで4時間かけて昇温した。その後、8.3kPaにて所望の軟化点になるまで反応を行い、樹脂Bを得た。なお、撹拌は昇温開始から反応終了まで継続して行った。
(樹脂Cの製造)
表1に示す質量の1,12−ドデカンジオール及びセバシン酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、常圧で135℃から200℃まで10時間かけて撹拌しながら昇温した後、2−エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを加えて、1時間反応させた後、8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、樹脂Cを得た。なお、撹拌は昇温開始から反応終了まで継続して行った。
実施例1〜9、11、12、及び比較例1
(トナーNo.1〜9、11〜13の製造)
300ミリリットルのガラスビーカーに、ビニル系モノマーとしてスチレン85g、n−ブチルアクリレート15g、表2に示す末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂11.1g、着色剤「ピグメントブルー15:3」(大日精化工業株式会社製)5g、荷電制御剤「ボントロンE−88」(サリチル酸アルミニウム:オリエント化学工業株式会社製)1g、離型剤「HNP−9」(パラフィンワックス:日本精蝋株式会社製、融点75.5℃)15gを添加し、表2に示す種類及び量のモノカルボン酸の無水物を添加した後、撹拌混合し、60℃に昇温して反応を行い均一に溶解した。その後、重合開始剤「V−65」(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業株式会社製)4gを添加し、樹脂溶液を調製した。
次に、1リットルのガラスビーカーに、イオン交換水150g、第3リン酸カルシウム10質量%スラリー「TCP−10・U」(太平化学産業株式会社製)500g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム16質量%水溶液「ネオペレックスG−15」(花王株式会社製)0.004gを添加し、撹拌して水系媒体を調製した。
得られた水系媒体を60℃に加温し、60℃を保ちながら、上記樹脂溶液を一気に加え、ホモミキサーMARKII2.5型(プライミクス株式会社製)で4分間、12000rpmにて撹拌し、懸濁液を得た。
実施例10
(トナーNo.10の製造)
200ミリリットルのポリエチレンボトルに、モノマーとしてスチレン85g、n−ブチルアクリレート15g、表2に示す末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂11.1g、着色剤として「ピグメントブルー15:3」(大日精化工業株式会社製)5g、荷電制御剤として「ボントロンE−88」(サリチル酸アルミニウム:オリエント化学工業株式会社製)1g、離型剤としてジペンタエリスリトールヘキサミリステート10gを添加し、無水酢酸0.209gを添加し反応させた後、室温にて、ビーズミル「ラボスターミニ」(アシザワファインテック株式会社製、ビーズ径:φ0.03〜0.2mm(HFM02))で分散させ、S−シアノメチル−S−ドデシルトリチオカーボネート(川口化学工業株式会社製)3.2gを添加し、樹脂溶液を調製した。
5時間、乳化液の温度を90℃に維持して、重合を継続した後、水冷して反応を停止し、トナー粒子の水分散液を得た。この重合体粒子を脱水、洗浄、乾燥してトナー粒子を得た。
実施例1〜12及び比較例1で得られたトナー1〜13について、以下に示す方法により、低温定着性、帯電安定性、及び高温度高湿度環境下での耐熱保存性を評価した。
トナー3質量部と、スチレン・メチルメタクリレート樹脂被覆されたフェライト粉(関東電化工業株式会社製、平均粒子径100μm)97質量部とを混合して、二成分現像剤を得た。
未定着画像を得られるように定着機を装置外での定着が可能なように改良した複写機「AR−505」(シャープ株式会社製)に二成分現像剤を実装し、シャープ株式会社製の紙[CopyBond SF−70NA(75g/m2)]上に、トナー付着量が0.5mg/cm2となるように未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を90℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で前記未定着状態の印刷物の定着試験を行った。
500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴム「消ゴム・砂 No.502」(株式会社ライオン事務器製)で、定着機を通して定着された画像を5往復擦り、擦る前後の画像濃度を画像濃度測定器「GREGSPM50」(Gretag社製)を用いて測定し、擦り前後の画像濃度比率([擦り後の画像濃度÷擦り前の画像濃度]×100)が最初に70%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。結果を表2に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れ、最低定着温度は、145℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましい。
温度25℃、相対湿度50%の環境下で、トナー0.6gと、体積平均粒径60μmのシリコーンコートフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製)9.4gを20ミリリットルの円柱状のポリビンに入れ、ポリビンをターブラーミキサー「T2F」(Willy A. Bachofen AG社製)中に固定し、90回転/分の速度にて10分間混合し、帯電量をq/mメータ(Epping社製)にて測定した。温度25℃、相対湿度50%の環境下で、3日間静置後、帯電量をq/mメータにて再度測定し、下記式(5)に従って算出される帯電安定性(%)で、帯電安定性を評価した。
帯電安定性(%)=3日後の帯電量÷混合直後の帯電量×100 (5)
帯電安定性(%)の値が100%に近いほど、帯電安定性に優れ、帯電安定性(%)は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上である。
〔q/mメーターの設定〕
・メッシュ サイズ:400メッシュ(ステンレス製)
・ソフトブロー吸引時間(ブロー圧 1050V):90秒
・帯電量(μC/g)=トナー吸引時間90秒後の総電気量(μC)÷吸引されたトナー量(g)
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、温度50℃及び相対湿度80%の環境で72時間保持した。
パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の三つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gをのせて60秒間振動を与えた。
篩いA上に残存したトナーの質量WA(g)を、篩いB上に残存したトナーの質量WB(g)を、篩いC上に残存したトナーの質量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式(4)
α=100−(WA+WB×0.6+WC×0.2)×10 (4)
に従って算出される値(α)をもとに、耐熱保存性を評価した。結果を表2に示す。値(α)が100に近いほど、耐熱保存性に優れ、値(α)は、50以上が好ましく、70以上がより好ましく、90以上が更に好ましい。
これに対し、本発明の製造方法を用いていない比較例1では、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性のいずれもが劣ることがわかる。
実施例1〜5、12より、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂を樹脂Aに固定し、モノカルボン酸の無水物の添加量を変化させた場合に、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性に関して、適正な添加量の範囲が存在することがわかる。
実施例1、6、7より、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂を樹脂Aに固定し、工程1で用いるモノカルボン酸の無水物の種類を変化させた場合に、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、無水酢酸が好ましいことがわかる。
実施例1、8より、工程1において用いる末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂として、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、結晶性樹脂が好ましいことがわかる。
実施例1、9より、工程1において用いる末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂として、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、ハイブリッド樹脂が好ましいことがわかる。
実施例1、10より、工程2において、重合方法として、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、懸濁重合法が好ましく、水系媒体への無機塩の添加が好ましく、無機塩として第3リン酸カルシウムを用いることが好ましいことがわかる。
実施例1、11より、末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂を樹脂Aに固定し、工程1におけるポリエステル系樹脂の添加量を変化させた場合に、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、ビニル系モノマー100質量部に対して、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂が5質量部以上50質量部以下であることが好ましいことがわかる。
Claims (12)
- 下記工程1〜3を有する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1:末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程。
工程2:工程1で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。 - 前記末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂を、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とモノカルボン酸又はその無水物とを混合してエステル化する方法により得る、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 工程1が、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを混合し、下記式(1)で表されるZに対してモノカルボン酸又はその無水物を0.01〜2倍添加して、前記末端のヒドロキシ基をエステル化したポリエステル系樹脂とビニル系モノマーとを含む溶液を得る工程である、請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
Z=(M×X×Y)/(56100×V) (1)
(式中、M:モノカルボン酸又はその無水物の分子量(g/mol)、X:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の添加量(g)、Y:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の水酸基価(mgKOH/g)、V:モノカルボン酸1分子当りのカルボキシ基数又はモノカルボン酸の無水物1分子が加水分解した際に生じるカルボキシ基の数の合計を表す。) - 前記末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂の使用量が、ビニル系モノマー100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、請求項2又は3に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂が、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学的に結合してなるブロック共重合体又はグラフト共重合体であるハイブリッド樹脂である、請求項2〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂が、結晶性樹脂である、請求項2〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記モノカルボン酸又はその無水物がモノカルボン酸の無水物である、請求項2〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記モノカルボン酸の無水物が、無水酢酸、無水プロピオン酸及び無水安息香酸から選ばれる1種以上である、請求項7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- ビニル系モノマー中のスチレンの含有量が50質量%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 工程2において、水系媒体に無機塩を加える、請求項1〜9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記無機塩が第3リン酸カルシウムである、請求項10に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 下記工程1′〜3を有する、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1′:末端にヒドロキシ基を有するポリエステル系樹脂とモノカルボン酸又はその無水物とビニル系モノマーとを混合及び反応させた溶液を得る工程。
工程2:工程1′で得られた溶液を水系媒体中に添加し、懸濁又は乳化することにより、前記溶液の懸濁液又は乳化液を得る工程。
工程3:工程2で得られた懸濁液又は乳化液中のビニル系モノマーを重合する工程。
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