JP6341744B2 - 電子写真用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、本発明は電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に用いられる電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
近年、電子写真方式を用いるプリンター、コピー機においても、少ない消費電力での印字、CO2排出量削減を念頭においた開発が行われており、例えば、特許文献1には、結晶性樹脂を添加して低温定着性能を向上させたトナーにおいて、充分な低温定着性能を有し、かつ現像工程の高速化に対応することを課題として、スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂、着色剤及び結晶性樹脂を含有するトナー粒子の製造方法であって、樹脂粒子を製造した後に、該樹脂粒子を水系媒体中において、該結着樹脂の中間点ガラス転移温度以上、該結晶性樹脂の融解開始温度以下の温度で0.5時間以上加熱保持する工程を含むことを特徴とするトナー粒子の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献2には、トナーの低温定着性に優れるとともに、画像の光沢性及び耐フィルミング性に優れたトナーを得ることができるトナー用結晶性樹脂として、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と、芳香族ジカルボン酸を含有したカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂からなる、トナー用結晶性樹脂が開示されている。
特開2013−80112号公報 特開2010−139659号公報
トナーの結着樹脂として、スチレンアクリル樹脂はポリエステル樹脂に比べると低温定着性で劣るため、印字時に電力を要するという課題がある。かかる課題に対して、前記特許文献1では、結晶性ポリエステルを併用することが有効であると報告されているが、ポリエステルとスチレンアクリル樹脂という本来混ざり合わない2つの樹脂を結着樹脂に用いた場合、特に、水系媒体中で重合する工程で製造した場合には、結晶性ポリエステルの一部がトナー中から抜け出し、結晶性ポリエステルのみの白色粒子(白色トナー)が生成する原因となる。
白色トナーは、定着ロールへの付着性が高いため、定着時にロールに堆積して、ノンビジュアルオフセットを引き起こしたり、定着ロールの寿命を縮める原因となる。
また、白色トナーは、吸湿し易く保存性の低下の原因ともなる。
さらに、定着時に、結晶性ポリエステルとスチレンアクリル樹脂の分離が生じやすく、着色剤が凝集して、発色性(画像鮮明性)が低下するという課題も生じる。
本発明は、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性の良好な電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
本発明は、
〔1〕 スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)、結晶性樹脂(B)及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合する工程を含む方法により得られる、電子写真用トナーであって、
前記結晶性樹脂(B)が、炭素数2〜14の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分を含む原料モノマーを重縮合して得られるポリエステル樹脂部分(B1)と、スチレンを含む原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂部分(B2)を有する複合樹脂であって、該ポリエステル樹脂部分(B1)と該付加重合系樹脂部分(B2)の質量比((B1)/(B2))が60/40〜96/4であり、
前記スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と前記結晶性樹脂(B)の質量比((a)/(B))が60/40〜96/4である、
電子写真用トナー、並びに
〔2〕 スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)、結晶性樹脂(B)及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合する工程を含む、前記〔1〕記載の電子写真用トナーの製造方法
に関する。
本発明の電子写真用トナーは、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性において優れた効果を奏するものである。
本発明の電子写真用トナーは、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)、結晶性樹脂(B)及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合して得られるものであり、結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂(A)と結晶性樹脂(B)を含有するものであるが、本発明では、結晶性樹脂(B)として、ポリエステル樹脂部分(B1)と付加重合系樹脂部分(B2)を有する結晶性の複合樹脂を用いることにより、ノンビジュアルオフセットが抑制されることを見出した。これは、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)が重合する過程で、結晶性樹脂(B)の付加重合系樹脂部分(B2)部分とスチレンアクリル樹脂(A)とが相容し、アンカー的効果を発揮するためか、スチレンアクリル樹脂からの結晶性樹脂の抜け出しによる白色粒子の生成を抑制できたためと考えられる。さらに、低温定着性も大幅に向上することを見出し、発色性の悪化も抑制することができた。これは、スチレンアクリル樹脂と結晶性樹脂との親和性が向上し、結晶性樹脂のスチレンアクリル樹脂中の分散性が向上したためと考えられる。
(スチレンアクリル樹脂(A))
本発明において、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)としては、スチレン化合物及びアルキル(メタ)アクリレートを含む、公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。
スチレン化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマル又はイソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマル、イソ又はターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、アルキル(メタ)アクリレートとは、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物のアルキルエステルを意味する。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、1以上が好ましく、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。また、ノンビジュアルオフセット性、低温定着性、保存性及び発色性の観点から、12以下が好ましく、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。これらの観点から、アルキル(メタ)アクリレートとしては、ブチルアクリレートが好ましく、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
他のラジカル重合性単量体としては、酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテルが挙げられる。
また、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)は、耐高温オフセット性の改善を目的として、少量の多官能性単量体を含有していてもよい。多官能性単量体としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物等が挙げられる。2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート等の二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物等が挙げられる。
スチレン化合物の含有量は、原料モノマー(a)中、保存性の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、88質量%以下がさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートの含有量、好ましくはn-ブチルアクリレートの含有量は、原料モノマー(a)中、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましく、保存性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
(結晶性樹脂(B))
結晶性樹脂(B)は、アルコール成分とカルボン酸成分を含む原料モノマーを重縮合して得られるポリエステル樹脂部分(B1)と、スチレンを含む原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂部分(B2)を有する複合樹脂である。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
ポリエステル樹脂部分(B1)のアルコール成分は、炭素数2〜14の脂肪族ジオールを含有する。かかる脂肪族ジオールの炭素数は、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性に優れる観点から、2以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、9以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、14以下であり、12以下が好ましい。炭素数が大きくなるにつれて、樹脂がより疎水的になるため、原料モノマー(a)の重合時に、スチレンアクリル樹脂(A)から、結晶性樹脂(B)が離脱しにくくなり、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性に優れると考えられる。
炭素数2〜14の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられ、α、ω-脂肪族ジオールが好ましい。
炭素数2〜14の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、ノンビジュアルオフセット性の観点から、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
他のアルコールとしては、炭素数15以上の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール、後述する1価のアルコール等が挙げられる。
ポリエステル樹脂部分(B1)のカルボン酸成分は、炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物(化合物には、カルボン酸及び炭素数1〜3のアルキルエステルを含む)を含有する。かかる脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性に優れる観点から、10以上であり、保存性の観点から、12以上が好ましい。また、低温定着性の観点から、14以下であり、12以下が好ましい。炭素数が大きくなるにつれて、樹脂がより疎水的になり、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)の重合時に、スチレンアクリル樹脂(A)から、結晶性樹脂(B)が離脱しにくくなるとともに、結晶性も向上し、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れると考えられる。本発明において、脂肪族カルボン酸化合物の炭素数にアルキルエステル部の炭素数は含まれない。
炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン二酸(炭素数:12)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、ノンビジュアルオフセット性の観点から、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。
他のカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2〜9の脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸化合物、後述する1価のカルボン酸化合物等が挙げられる。
ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーは、1価のアルコール及び1価のカルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有していてもよい。即ち、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよく、本発明では、低温定着性の観点から、アルコール成分及びカルボン酸成分の両方に、それぞれ含有していることが好ましい。1価のアルコールと1価のカルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、16以上が好ましく、18以上がより好ましい。また、保存性の観点から、22以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
従って、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーが、炭素数16〜22の1価のアルコール及び炭素数16〜22の1価のカルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有していることが好ましく、両方を含有していることがより好ましい。
炭素数16〜22の1価のアルコールとしては、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族アルコール等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリルアルコールがより好ましい。
炭素数16〜22の1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族カルボン酸化合物等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリン酸がより好ましい。
1価のアルコール及び1価のカルボン酸化合物は、低温定着性の観点から、脂肪族が好ましい。但し、後述する、両反応性モノマーに用いられる、エチレン性不飽和基(反応性不飽和基)を有する化合物を除く。
炭素数16〜22の1価のアルコールと炭素数16〜22の1価のカルボン酸化合物の合計含有量は、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー中、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、低温定着性の観点から、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましい。また、保存性の観点から、15モル%以下が好ましく、12モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、8モル%以下がさらに好ましい。
重縮合に用いるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、転写性の観点から、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましい。また、高温高湿下での現像安定性の観点から、1.03以下が好ましく、1.00以下がより好ましく、0.95以下がさらに好ましい。なお、上記のモル比を計算する際に、1価のアルコール、1価のカルボン酸化合物のモル数は、反応性の観点から、1/2で計算する。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、ノンビジュアルオフセット性の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物との存在下で行うことがより好ましい。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫等が挙げられるが、本発明では、ノンビジュアルオフセット性の観点から、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物及びチタン化合物が好ましく、これらはそれぞれ単独で又は両者を併用して用いることができる。
Sn−C結合を有していない錫触媒としては、上記の観点から、Sn−C結合を有しておらず、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が好ましい。
チタン化合物としては、Ti-O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Ti-O結合を有するチタン化合物としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6153N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6153N)2(C511O)2〕が好ましい。これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕が好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができ、又は、ニッソー社等の市販品としても入手できる。
上記チタン化合物及び錫(II)化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記エステル化触媒の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.0質量部が好ましく、0.1〜0.6質量部がより好ましい。
また、ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有する化合物であり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。
重縮合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、重縮合反応に供される原料モノマー100質量部に対して、0.001〜1.0質量部が好ましく、0.005〜0.4質量部がより好ましく、0.01〜0.2質量部がさらに好ましい。
ピロガロール化合物とエステル化触媒の質量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、樹脂の耐久性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、例えば、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。具体的には、例えば樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応促進させてもよい。
一方、付加重合系樹脂部分(B2)は、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性の観点から、スチレン系樹脂が好ましく、スチレンアクリル樹脂がより好ましい。
従って、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーとしては、スチレン化合物を含み、好ましくはスチレン化合物及びアルキル(メタ)アクリレートを含む公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。スチレン化合物、アルキル(メタ)アクリレート及び他のラジカル性重合体単量の具体例は、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と同じである。
また、スチレン系樹脂、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーは、本発明の効果を損なわない限り、耐高温オフセット性の改善を目的として、少量の多官能性単量体を含有していてもよい。
スチレン化合物としては、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性の観点から、スチレンが好ましい。
スチレン化合物の含有量は、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー中、保存性の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。また、ノンビジュアルオフセット性、低温定着性、保存性、及び発色性の観点から、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。これらの観点から、アルキル(メタ)アクリレートとしては、ブチルアクリレートが好ましく、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートの含有量、好ましくはn-ブチルアクリレートの含有量は、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー中、白色粒子の発生を抑制し、ノンビジュアルオフセット性を向上する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、保存性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、ノンビジュアルオフセット性、低温定着性、保存性及び発色性に優れる観点から、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーと、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)は、少なくともその一部が一致していることが好ましい。
付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーとスチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)の一致率は、上記の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
なお、本発明において、原料モノマーの一致については、例えば、n-ブチルアクリレートとn-ブチルメタクリレートとは異なるものであり、n-ブチルアクリレートと分岐構造のt-ブチルアクリレートも異なるものである。
「一致率が60質量%以上」とは、同じ種類のモノマーで一致する質量%が、60質量%以上ということである。原料モノマーが複数種からなる場合は、それらの一致する質量を合計する。
例えば、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーがスチレン80質量%とn-ブチルアクリレート20質量%とからなり、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)がスチレン85質量%とn-ブチルアクリレート15質量%とからなる場合は、スチレンは80質量%一致し、n-ブチルアクリレートは15質量%一致するので、合計95質量%の一致率である。
また、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーがスチレン90質量%とアクリル酸2-エチルヘキシル10質量%とからなり、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)がスチレン85質量%とn-ブチルアクリレート15質量%とからなる場合は、スチレンの85質量%が一致しているが、n-ブチルアクリレートは一致していないため、合計85質量%の一致率である。
付加重合系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができる。
また、付加重合反応は、必要に応じて、重合開始剤等の存在下で行ってもよい。重合開始剤としては、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、付加重合系樹脂部分の原料モノマー100質量部に対して、4〜12質量部が好ましく、5〜8質量部がより好ましい。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、付加重合系樹脂部分の原料モノマー100質量部に対して、10〜50質量部程度が好ましい。
複合樹脂は、例えば、(1)カルボキシ基や水酸基を有する付加重合系樹脂の存在下で、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーを重縮合させる方法(カルボキシ基や水酸基は後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤など由来のものを用いることができる)、(2)反応性不飽和結合を有するポリエステル樹脂の存在下で、付加重合系樹脂部分の原料モノマーを付加重合させる方法等で得ることができる。
上記複合樹脂は、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性の観点から、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーと、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーと、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー及び付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーとを重合させて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。従って、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー及び付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、重縮合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介してポリエステル樹脂部分(B1)と付加重合系樹脂部分(B2)とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、ポリエステル樹脂部分(B1)と付加重合系樹脂部分(B2)とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
これらから、複合樹脂は、(イ)炭素数2〜14の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー、(ロ)付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー、及び(ハ)ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー及び付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られるハイブリッド樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等の多価カルボン酸は、重縮合系のモノマーとして機能する場合がある。
両反応性モノマーの使用量は、ノンビジュアルオフセット性、白色粒子の発生の抑制、発色性の観点から、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、保存性の観点から、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
複合樹脂は、
工程1:ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーの一部を重縮合する工程、
工程2:工程1の反応物の存在下で付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを付加重合する工程、及び
工程3:工程2の反応物の存在下でポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーの残りを重縮合する工程
を含む方法により得られたものが好ましい。なお、両反応性モノマーは、低温定着性の観点から、付加重合系樹脂部分の原料モノマーとともに用いることが好ましい。
工程1に供する原料モノマーにおいて、カルボン酸成分の量は、複合樹脂の製造に用いるカルボン酸成分総量の、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
また、工程1に供する原料モノマーにおいて、アルコール成分の量は、カルボン酸成分のモル数以上であることが好ましく、複合樹脂の製造に用いるアルコール成分の全量であることが、未反応のアルコール成分が工程2を行う際の溶媒となるため好ましい。
工程1における重縮合反応の温度は、反応性の観点から、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。また、230℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。重縮合反応の圧力は、常圧であってもよい。
工程1の反応の終了は、工程1に供した原料モノマーが、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上反応した時点とすることが好ましい。
工程2における付加重合反応の温度は、反応性の観点から、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。また、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
なお、工程2で付加重合反応に供する付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを予め工程1で反応系に添加してもよいが、その場合、重合開始剤を工程2で添加すればよい。
工程2の反応の終了時は、付加重合系樹脂部分(B2)の残存原料モノマーが、工程2で得られる樹脂に対して1000ppm(wt/wt)以下であることが好ましい。
工程3における重縮合反応の温度は、反応性の観点から、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、230℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。重縮合反応の圧力は、常圧であってもよい。
工程1〜3を行うことで、結晶性樹脂(B)中のポリエステル樹脂部分(B1)と付加重合系樹脂部分(B2)とが適度な分散状態となり、ポリエステル樹脂部分(B1)による低温定着性と付加重合系樹脂部分(B2)によるノンビジュアルホットオフセット性、保存性、白色粒子の抑制、及び発色性の低下の抑制の効果を発揮することができる。
工程3の後、重縮合反応を進行させて、複合樹脂の酸価を好ましい範囲にまで低下させる観点から、さらに、
工程4:減圧下で重縮合反応する工程
を行うことが好ましい。
工程4における重縮合反応の温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、230℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。
減圧とは、常圧(101.3kPa)未満の圧力であり、好ましくは80kPa以下、より好ましくは50kPa以下、さらに好ましくは20kPa以下の圧力を意味する。生成した複合樹脂が後述する好ましい酸価になるまで減圧工程を行うことが好ましい。
工程4は前記エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。
工程1〜3又は工程1〜4は、同一容器内で行うことが好ましい。
なお、複合樹脂は、結晶性樹脂(B)の付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを重合した後、結晶性樹脂(B)のポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーを重縮合する製造方法によって得ることもできる。しかし、この方法では、付加重合系樹脂部分(B2)が高分子量になり、結晶性樹脂(B)中の付加重合系樹脂部分(B2)の分散性が低下するため、ノンビジュアルオフセット性、低温定着性、保存性、白色粒子発生の抑制、及び発色性が、工程1〜3を行う前記方法に比べると低下する。
また、複合樹脂は、結晶性樹脂(B)のポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーを重縮合した後、結晶性樹脂(B)の付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを付加重合する製造方法によって得ることもできる。しかし、この方法では、ポリエステル樹脂部分(B1)への付加重合系樹脂部分(B2)の結合性が低下し、ポリエステル樹脂部分(B1)に結合しない、付加重合系樹脂部分(B2)が生成しやすいため、ノンビジュアルオフセット性、低温定着性、白色粒子発生の抑制、及び発色性が、工程1〜3を行う前記方法に比べると低下する。
複合樹脂において、ポリエステル樹脂部分(B1)と付加重合系樹脂部分(B2)の質量比((B1)/(B2))は、低温定着性と保存性の観点から、60/40以上であり、70/30以上が好ましく、75/25以上がより好ましい。また、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性に優れ、白色粒子の発生を抑制する観点から、96/4以下であり、93/7以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、85/15以下がさらに好ましい。なお、この質量比は、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーと付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーの質量比(ポリエステル樹脂部分(B1)の合計原料モノマー量/付加重合系樹脂部分(B2)の合計原料モノマー量)から算出するものとする。また、この質量比において、両反応性モノマー及び重合開始剤の質量は、ポリエステル樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれにも含めない。
結晶性樹脂(B)の軟化点は、ノンビジュアルオフセット性の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
また、結晶性樹脂(B)の融点は、ノンビジュアルオフセット性の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、75℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がより好ましい。
結晶性樹脂(B)の酸価は、低温定着性の観点から、1.0mgKOH/g以上が好ましく、1.5mgKOH/g以上がより好ましく、2.0mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、ノンビジュアルオフセット性及び低温定着性の及び白色粒子の発生を抑制する観点から、10mgKOH/g以下が好ましく、8.0mgKOH/g以下がより好ましく、6.0mgKOH/g以下がさらに好ましく、4.0mgKOH/g以下がさらに好ましい。
結晶性樹脂の軟化点、融点及び酸価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と前記結晶性樹脂(B)の質量比((a)/(B))は、ノンビジュアルオフセット性、保存性、及び発色性に優れ、白色粒子の発生を抑制する観点から、60/40以上であり、70/30以上が好ましく、75/25以上がより好ましく、80/20以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、96/4以下であり、90/10以下が好ましく、88/12以下がより好ましく、85/15以下がさらに好ましい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と結晶性樹脂(B)の総量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
本発明のトナーは、懸濁重合法により得られるものであり、結着樹脂として、スチレンアクリル樹脂(A)と結晶性樹脂(B)を含有する。上記方法により懸濁重合法により、トナー粒子を製造することで、スチレンアクリル樹脂(A)と結晶性樹脂(B)とが相溶せず境界を有する構造に制御することができる。
懸濁重合法による本発明のトナーは、具体的には、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)、結晶性樹脂(B)及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合する工程を含む方法により得られる。
重合性単量組成物には、前記のスチレンアクリル樹脂(A)と結晶性樹脂(B)以外の公知のトナー用結着樹脂が含まれていてもよい。即ち、本発明のトナーは、結着樹脂として、本発明の効果を損なわない範囲で、前記のスチレンアクリル樹脂(A)と結晶性樹脂(B)以外の公知のトナー用結着樹脂、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂が併用されていてもよいが、前記のスチレンアクリル樹脂と結晶性樹脂(B)の総含有量は、結着樹脂中、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。
また、重合性単量体組成物には、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
重合性単量体組成物は、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)に、結晶性樹脂(B)及び着色剤と、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の添加剤を混合し、加熱等により、結晶性樹脂(B)に溶解させて調製することが好ましい。連鎖移動剤や可塑剤や油剤を添加してもよい。
水系媒体は、水を好ましくは50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上含有するものである。水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。水と混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ(登録商標)類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
水系媒体量は、トナー粒子の粒径制御の観点から、重合性単量体組成物量の2.5質量倍以上、好ましくは3.0質量倍以上が好ましく、生産性の観点から6質量倍以下、好ましくは5質量倍以下が好ましい。
重合性単量体組成物を、水系媒体と混合し、撹拌して懸濁液とした後、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)を重合することが好ましい。
重合性単量体組成物と水系媒体の撹拌には、ホモミキサー、高速攪拌機、超音波分散機等の高速分散機を用いることができ、これにより、重合性単量体を水系媒体中に均一に分散させ、容易に懸濁液を調製することができる。
重合性単量体組成物と水系媒体の撹拌は、窒素雰囲気下、50〜90℃程度の加熱条件下で行うことが好ましい。
原料モノマー(a)の重合は、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、かつ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行うことが好ましい。
重合は、分散安定剤の存在下で行うことが好ましく、分散安定剤は、予め水系媒体に添加しておくことが好ましい。
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、一般的な界面活性剤等が挙げられる。分散安定剤の量は、原料モノマー(a)100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。なお、一般的な界面活性剤の具体例としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
重合の温度は、重合速度の観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、重合速度、水蒸散防止の観点から、95℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましい。
重合の時間は、重合反応を終了する観点から、4時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましい。また、微粒子凝集抑制の観点から、20時間以下が好ましく、15時間以下がより好ましい。
重合性単量体組成物の重合は、例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合反応の終了は、原料モノマー(a)が、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上反応した時点とすることが好ましい。また、反応終了時の残存モノマー量は、生成したスチレンアクリル樹脂(A)に対して、5000ppm(wt/wt)以下であることが好ましい。
重合後、常法により、残存モノマーを除去し、撹拌を続けながら室温まで冷却し、洗浄、乾燥することで、トナー粒子が得られる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度50℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの頂点の温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の数平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔樹脂の製造〕
結晶性樹脂の製造例1(製法A)
<工程1>
表1〜5に示すポリエステル樹脂部分の原料モノマー(カルボン酸成分については(1)のみ)を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、135℃から160℃まで6時間かけて昇温した後、160℃で2時間反応を行った。
<工程2>
次に、表1〜5に示す付加重合樹脂部分の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、160℃で60分間保持したのち、20kPaの減圧下で1時間かけて反応させた。
<工程3>
その後、残りのカルボン酸成分(2)を加え160℃にて4時間反応させた後、200℃まで5時間かけて昇温した。さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを加えて、200℃で1時間反応させた。
<工程4>
その後、200℃で8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、複合樹脂(樹脂A、D〜P、R〜Z)を得た。得られた樹脂の物性を表1〜5に示す。
結晶性樹脂の製造例2(製法B)
表1に示すポリエステル樹脂部分のアルコール成分を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、160℃まで昇温、160℃に保持した上で、表1に示す付加重合樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、160℃で60分間保持したのち、20kPaの減圧下で1時間かけて反応させた。次に135℃まで降温し、カルボン酸成分を加え、200℃まで10時間かけて反応させた後、さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを加えて、1時間反応させた後、8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、複合樹脂(樹脂B)を得た。
結晶性樹脂の製造例3(製法C)
表1に示すポリエステル樹脂部分の原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した後、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを加えて、1時間反応させた後、8kPaにて4時間反応させた。その後160℃に降温し、160℃に保った状態で、表1に示す付加重合樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、160℃で60分間保持したのち、200℃まで昇温し、8kPaの減圧下で1時間かけて反応させて、複合樹脂(樹脂C)を得た。
結晶性樹脂の製造例4(製法D)
表3に示すポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した後、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g没食子酸2gを加えて、1時間反応させた後、8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、ポリエステル樹脂(樹脂Q)を得た。
結晶性樹脂の製造例5(製法E)
表5に示すポリエステル樹脂部分の原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、160℃まで昇温、160℃に保持した上で、表5に示す付加重合樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、160℃で60分間保持したのち、20kPaの減圧下で1時間かけて反応させた。次に2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを加えて、200℃まで2時間かけて昇温、その後、200℃にて5時間、210℃にて5時間反応させた後、8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、複合樹脂(樹脂AA)を得た。
Figure 0006341744
Figure 0006341744
Figure 0006341744
Figure 0006341744
Figure 0006341744
〔電子写真用トナーの製造〕
実施例1〜27及び比較例1〜6
60℃に加温したイオン交換水900gに、リン酸三カルシウム(松尾薬品産業社製)3gを添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000r/minにて撹拌し、水系媒体を調製した。
一方、ガラスビーカーに、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーとして、スチレン170g及びn-ブチルアクリレート30g、表6、7に示す結晶性樹脂(比較例1では使用せず)、着色剤としてピグメントブルー15:3 10g、荷電制御剤として、サリチル酸アルミニウム「ボントロンE-88」(オリエント化学社製)2g、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋製、融点:77℃)15gを混合した。60℃に加温し、着色剤以外の固体成分を均一に溶解させた。その後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)「V-65」(和光純薬工業社製)8質量部を滴下して、良く混合し、重合性単量体組成物を調製した。
得られた水系媒体に重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素ガスフロー下において、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)で15分撹拌した。
上記懸濁物をセパラブルフラスコに移し、70℃、150r/minで撹拌しながら8時間重合した。その後80℃に昇温し、減圧下で残存モノマーを留去した。撹拌を続けながら20℃まで冷却し、洗浄、乾燥して、体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
トナー粒子100質量部に対して、外添剤「アエロジルR-972」(疎水性シリカ、疎水化処理剤:DMDS、平均粒径:16nm、日本アエロジル社製)1.0質量部、「アエロジル R-976」(疎水性シリカ、疎水化処理剤:DMDS、平均粒径:8nm、日本アエロジル社製)0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D50)6.5μmのトナーを得た。
Figure 0006341744
Figure 0006341744
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、トナー付着量が0.5mg/cm2となるように未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を90℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で前記未定着状態の印刷物の定着試験を行った。
500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、定着機を通して定着された画像を5往復こすり、こする前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(こすり後/こすり前)が最初に70%を越える定着ローラの温度を最低定着温度とした。結果を表8に示す。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れ、最低定着温度は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましく、128℃以下がさらに好ましい。
試験例2〔保存性〕
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、50℃及び相対湿度60%の環境で72時間保持した。パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー質量WA(g)を、篩いB上に残存したトナー質量WB(g)を、篩いC上に残存したトナー質量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)をもとに、保存性を評価した。結果を表8に示す。値(α)が100に近いほど、耐熱保存性に優れ、値(α)は、65以上が好ましく、75以上がより好ましく、85以上がさらに好ましく、90以上がさらに好ましく、95以上がさらに好ましい。
α=100-(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10×100
試験例3−1〔ノンビジュアルオフセット性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)で、160℃定着条件に設定した。定着ローラ表面をエタノールを用いて清掃した後、印字媒体にJ紙(富士ゼロックス製)を用いて、5%印字濃度画像を1000枚印字した。
印字後、定着ローラ表面を2cm角のエタノールを染み込ませた白布で拭き取り、拭き取った後、布の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて3カ所測定し、平均値を算出した。結果を表8に示す。光学反射密度が低いほど、ノンビジュアルオフセット性に優れ、光学反射密度は、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましく、0.15以下がさらに好ましく、0.10以下がさらに好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
試験例3−2〔白色粒子の発生〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、KOKUYO社製のVF-1411 OHPフィルム上に、トナー付着量が0.5mg/cm2となるように5cm角のべた画像を未定着の状態で印刷物を得た。
得られた印字物を光学顕微鏡KEYENCE VK-X100にて観察した。
100μm四方の部位において、最大径8μm以上の透明又は白色の粒子の個数を確認、3部位で確認し平均を求めた。結果を表8に示す。白色粒子の発生が抑制されることにより、ノンビジュアルオフセット性が向上し、白色粒子数は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、7個以下がさらに好ましく、5個以下がさらに好ましく、3個以下がさらに好ましく、0個がさらに好ましい。
試験例4〔発色性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、トナー付着量が0.5mg/cm2となるように未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を160℃で定着試験を行った。
光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定し、発色性を確認した。結果を表8に示す。光学反射密度が高いほど、発色性に優れ、1.10以上が好ましく、1.20以上がより好ましく、1.30以上がさらに好ましく、1.38以上がさらに好ましい。
Figure 0006341744
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性のいずれも良好であることが分かる。ノンビジュアルオフセット性は白色粒子の発生個数と関連しており、白色粒子の発生がノンビジュアルオフセットの発生の要因となっていることが分かる。
実施例1〜3、比較例1、2の対比から、スチレンアクリル樹脂(A)/結晶性樹脂(B)の質量比が100/0から、98/2、95/5、91/9、83/17に小さくなるにつれて、低温定着性に優れることがわかる。
実施例1、4、5の対比から、スチレンアクリル樹脂(A)/結晶性樹脂(B)の質量比が71/29から、77/23、83/17に大きくなるにつれて、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れることがわかる。
実施例1と実施例6との対比から、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性の観点から製法Aが、製法Bより優れていることがわかる。
実施例1と実施例7との対比から、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性の観点から、製法Aが製法Cより優れていることがわかる。
実施例1、10、11の対比から、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーとの一致率が65質量%、75質量%、95質量%と上昇するにつれて、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れることがわかる。
実施例1、9の対比から、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーとして、スチレンとn-ブチルアクリレートと用いた方が、スチレンだけ用いるよりも、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れることがわかる。
実施例1、12の対比から、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーにおいて、炭素数8の2-エチルヘキシル基より、炭素数4のブチル基を有する(メタ)アクリレートが、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性の観点から優れることがわかる。
実施例1、13、14の対比から、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー100質量部に対する両反応性モノマーの質量比が2.3から5.3と大きくなると、ノンビジュアルオフセット性及び発色性に優れ、10.6から5.3と小さくなると、保存性に優れることがわかる。
実施例1、15、16の対比から、結晶性樹脂(B)の酸価が、1.3mgKOH/gから2.6mgKOH/gと大きくなると、低温定着性に優れ、9.4mgKOH/gから2.6mgKOH/gと小さくなると、ノンビジュアルオフセット性及び低温定着性に優れることがわかる。
実施例1、17〜20の対比から、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー中、炭素数16〜20の1価の酸又はアルコールの含有モル率が、0モル%、2.6モル%、5.1モル%と大きくなるにつれて、低温定着性に優れ、14.5モル%、9.9モル%、5.1モル%と小さくなるにつれて、保存性に優れることがわかる。
実施例1、21〜23、比較例3の対比から、結晶性樹脂(B)中、ポリエステル樹脂部分(B1)/付加重合系樹脂部分(B2)(質量比)が、96/4、91/9、82/18と小さくなるにつれて、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れ、58/42、68/32、82/18と大きくなるにつれて、低温定着性及び保存性に優れることがわかる。
実施例1、24、比較例5より、結晶性樹脂(B)中のポリエステル樹脂部分(B1)の脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、8、10、12と大きくなるにつれて、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れることがわかる。
実施例1、26、27の対比から、結晶性樹脂(B)中のポリエステル樹脂部分(B1)の脂肪族ジオールの炭素数は、2、6、12と大きくなるにつれて、低温定着性、保存性、ノンビジュアルオフセット性、及び発色性に優れることがわかり、また、実施例24、25の対比から、結晶性樹脂(B)中のポリエステル樹脂部分(B1)の脂肪族ジオールの炭素数は、14より12の方が、低温定着性に優れることがわかる。
比較例6より、結晶性樹脂(B)のポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーに、芳香族ジカルボン酸化合物を用いた場合、低温定着性、ノンビジュアルオフセット性及び発色性が低下することがわかる。
本発明の電子写真用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるものである。

Claims (7)

  1. スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)、結晶性樹脂(B)及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合する工程を含む、電子写真用トナーの製造方法であって、
    前記結晶性樹脂(B)が、炭素数2〜14の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数10〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分を含む原料モノマーを重縮合して得られるポリエステル樹脂部分(B1)と、スチレンを含む原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂部分(B2)を有する複合樹脂であって、該ポリエステル樹脂部分(B1)と該付加重合系樹脂部分(B2)の質量比((B1)/(B2))が60/40〜96/4であり、
    前記スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)と前記結晶性樹脂(B)の質量比((a)/(B))が60/40〜96/4である、
    電子写真用トナーの製造方法
  2. 付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーと、スチレンアクリル樹脂(A)の原料モノマー(a)が、60質量%以上一致する、請求項1記載の電子写真用トナーの製造方法
  3. ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーが、炭素数16〜22の1価のアルコール及び炭素数16〜22の1価のカルボン酸化合物の少なくともいずれかを、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、1〜15モル%含有する、請求項1又は2記載の電子写真用トナーの製造方法
  4. 結晶性樹脂(B)の酸価が、1.0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である、請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナーの製造方法
  5. 結晶性樹脂(B)が、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーと、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーと、ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマー及び付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーとを重合させて得られる樹脂であり、該両反応性モノマー量が、付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマー100質量部に対して1〜15質量部である、請求項1〜4いずれか記載の電子写真用トナーの製造方法
  6. 付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーが、スチレンとブチルアクリレートとを含有する、請求項1〜5いずれか記載の電子写真用トナーの製造方法
  7. 結晶性樹脂(B)が、
    工程1:ポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーの一部を重縮合する工程、
    工程2:工程1の反応物の存在下で付加重合系樹脂部分(B2)の原料モノマーを付加重合する工程、及び
    工程3:工程2の反応物の存在下でポリエステル樹脂部分(B1)の原料モノマーの残りを重縮合する工程
    を含む方法により得られたものである、請求項1〜6いずれか記載の電子写真用トナーの製造方法。
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