JP7374693B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
トナーの低温定着性向上に有効な結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂が検討されている。
特許文献1には、剥がれが発生しにくく、且つ長期保管後でも画質が低下しにくいトナーの提供を課題として、結着樹脂、着色剤、離型剤及び結晶性ポリエステルを含有するトナー粒子を有するトナーであって、透過型電子顕微鏡によるトナー粒子の断面観察において、該結晶性ポリエステルのドメイン、及び該離型剤のドメインが一粒子中に観察されるトナー粒子の割合が、トナー中70個数%以上であり、該離型剤のドメインの最大径の相加平均値が1.0μm以上4.0μm以下であり、該結晶性ポリエステルのドメイン、及び該離型剤のドメインが一粒子中に観察されるトナー粒子からなる粒子群において、所定の条件を満たしていることを特徴とするトナーが開示されている。
特開2017-198980号公報
特許文献1では、結着樹脂の主成分としてスチレンアクリル系樹脂が用いられているが、結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂は一般的に相溶性が低く、低温定着性を向上させるためには結晶性ポリエステル樹脂の運動性を高める必要がある。しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂の低分子量化により低温定着性は向上するが、トナーのガラス転移温度(Tg)が低下するため、帯電安定性や画像耐熱性が低下すると考えられる。
本発明は、低温定着性、画像耐熱性及び帯電安定性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
本発明は、
〔1〕 結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂を含有する結着樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーの25モル%以上40モル%以下が炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物及び炭素数10以上22以下の脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の長鎖脂肪族モノマーであり、前記結晶性ポリエステルの重量平均分子量が2,000以上5,000以下である、静電荷像現像用トナー、並びに
〕 前記〔1〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法
に関する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性、画像耐熱性及び帯電安定性において優れた効果を奏するものである。
本発明の静電荷像現像用トナーは、結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂を含有する結着樹脂及び着色剤を含有し、結晶性ポリエステル樹脂が、1価の長鎖脂肪族モノマーを用いられた、低分子量のポリエステル樹脂である点に大きな特徴を有する。かかる結晶性ポリエステル樹脂は、低分子量であるため、高温下では運動性が高くスチレンアクリル樹脂と相溶してトナーの低温定着性が向上する一方で、定着後の室温条件下では、樹脂の末端にある長鎖脂肪族モノマーに由来する部位とスチレンアクリル樹脂との相溶性が低くなるため、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化によってトナーのガラス転移温度の低下を抑制することができるため、画像耐熱性及び帯電安定性が向上するものと推察される。
結晶性ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸系化合物との重縮合により得られ、1価の長鎖脂肪族モノマーと、ジオール成分及びジカルボン酸成分を含む原料モノマーの重縮合物である。
1価の長鎖脂肪族モノマーは、炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物及び炭素数10以上22以下の脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、低温定着性、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物が好ましい。
炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸系化合物の炭素数は、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上であり、そして、低温定着性の観点から、22以下であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。ここで、脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
炭素数10以上22以下の脂肪族モノアルコールとしては、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
脂肪族モノアルコールの炭素数は、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上であり、そして、低温定着性の観点から、22以下であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
1価の長鎖脂肪族モノマーの含有量は、原料モノマー中、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、25モル%以上であり、好ましくは30モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、40モル%以下であり、好ましくは38モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。
ジオール成分は、脂肪族ジオールを含むことが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられ、1種であっても、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、1,6-ヘキサンジオール又は1,10-デカンジオールが好ましい。
脂肪族ジオールは、低温定着性の観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有しているα,ω-脂肪族ジオールであることが好ましく、α,ω-直鎖アルカンジオールであることがより好ましい。
脂肪族ジオールの炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
他のジオール成分としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等が挙げられる。
ジオール成分の含有量は、原料モノマー中、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下である。
ジカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン二酸(炭素数:12)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましく、ドデカン二酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。ここで、脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
他のジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸成分の含有量は、原料モノマー中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
原料モノマーには、3価以上のモノマー成分が含まれていてもよい。
3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物及び炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
3価以上のモノマー成分の含有量は、低温定着性の観点から、原料モノマー中、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコールとカルボン酸系化合物を含む原料モノマーを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、製造性及び帯電安定性の観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは4mgKOH/g以下、さらに好ましくは3mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは0.1mgKOH/g以上である。
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、酸価と同様に製造性及び帯電安定性の観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは12mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは8mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは0.1mgKOH/g以上である。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価と水酸基価の和は、製造性及び帯電安定性の観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは12mgKOH/g以下、さらに好ましくは9mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは0.1mgKOH/g以上である。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、2,000以上であり、好ましくは2,500以上、より好ましくは3,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、5,000以下であり、好ましくは4,500以下、より好ましくは4,000以下である。結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1価の長鎖脂肪族モノマーの使用量や、3価以上の原料モノマー(3価以上のカルボン酸系化合物及び3価以上のアルコール)の使用量によって調整することができる。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーを含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体等が挙げられ、これらの中ではスチレンが好ましい。
スチレン系モノマーの含有量は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー中、耐熱保存性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして、低温定着性及び粉砕性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及びそのアルキルエステル等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。
アクリル系モノマーの含有量は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー中、低温定着性の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、耐熱保存性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
スチレンアクリル樹脂の原料モノマーには、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマー以外の原料モノマー、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
スチレンアクリル樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/スチレンアクリル樹脂)は、低温定着性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは7/93以上であり、そして、画像耐熱性の観点から、好ましくは20/80以下、より好ましくは15/85以下、さらに好ましくは13/87以下である。
結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂の総含有量は、結着樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
結着樹脂には、結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂以外の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよく、他の樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂以外のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられる。
結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
本発明の静電荷像現像用トナーには、結着樹脂及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、懸濁重合法により得られたトナーが好ましい。懸濁重合法によりトナーを製造することにより、低温定着性に優れ、さらに画像耐熱性と帯電安定性に優れるトナーが得られる。
従って、本発明の静電荷像現像用トナーは、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む方法により製造することが好ましい。
重合性単量体組成物は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーに、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の添加剤を混合し、加熱等により、結晶性ポリエステル樹脂を溶解させて調製することが好ましい。連鎖移動剤や可塑剤や油剤を添加してもよい。
水系媒体は、水を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上含有するものである。水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。水と混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ(登録商標)類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
水系媒体量は、トナー粒子の粒径制御の観点から、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーの好ましくは3質量倍以上、より好ましくは5質量倍以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは10質量倍以下、より好ましくは8質量倍以下である。
重合性単量体組成物を、水系媒体と混合し、撹拌して懸濁液とした後、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーを懸濁重合することが好ましい。
重合性単量体組成物と水系媒体の撹拌には、ホモミキサー、高速攪拌機、超音波分散機等の高速分散機を用いることができ、これにより、重合性単量体を水系媒体中に均一に分散させ、容易に懸濁液を調製することができる。
重合性単量体組成物と水系媒体の撹拌は、窒素雰囲気下、加熱条件下で行うことが好ましい。
スチレンアクリル樹脂の原料モノマーの懸濁重合は、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、かつ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行うことが好ましい。
懸濁重合は、分散安定剤の存在下で行うことが好ましく、分散安定剤は、予め水系媒体に添加しておくことが好ましい。分散安定剤としては、トナー粒子の製造性の観点から、リン酸塩又は界面活性剤が好ましく、これらはそれぞれ単独で又は両者を併用して用いることができる。従って、懸濁重合は、リン酸塩及び界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
リン酸塩としては、リン酸三カルシウム(第三リン酸カルシウム)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等が挙げられ、これらの中ではリン酸三カルシウムが好ましい。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。ここで、リン酸三カルシウムの分子式の例としては、Ca3(PO4)2、3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2、3Ca3(PO4)2・Ca(OH)2、Ca10(PO4)6(OH)2等が挙げられる。
リン酸塩の使用量は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー100質量部に対して、製造安定性の観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、そして、製造時のコストの観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等が挙げられる。
水系媒体中の界面活性剤濃度は、トナー粒子の製造性の観点から、好ましくは10-3M以下、より好ましくは10-2M以下、さらに好ましくは10-3M以下であり、そして、好ましくは0M以上である。
懸濁重合の温度は、製造性及び発色性の観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、そして、トナーの熱物性の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
懸濁重合の時間は、重合反応を終了させる観点から、好ましくは4時間以上、より好ましくは6時間以上であり、そして、微粒子凝集抑制の観点から、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下である。
懸濁重合は、必要に応じて、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられ、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーに溶解するものが好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は、製造性及び発色性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
重合開始剤の使用量は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合反応の終了は、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーが、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上反応した時点とすることが好ましい。また、反応終了時の残存モノマー量は、生成したスチレンアクリル樹脂に対して、5000ppm(wt/wt)以下であることが好ましい。
重合後、常法により、残存モノマーを除去し、撹拌を続けながら室温まで冷却し、洗浄、乾燥することで、トナー粒子が得られる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
〔樹脂の酸価及び水酸基価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、クロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に変更する。
〔樹脂の重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量を求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度をワックスの融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂製造例
表1に示す原料モノマー、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃から210℃まで8時間かけて昇温を行った。その後210℃で、8.0kPaにて表1に示す融点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂A1~A4)を得た。
Figure 0007374693000001
実施例1、2及び比較例1、2
300mL容のガラスビーカー中で、表2に示す結晶性ポリエステル樹脂10g、スチレンアクリル樹脂の原料モノマーとしてスチレン81gとn-ブチルアクリレート9g、着色剤「ピグメントブルー15:3」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー)5g、荷電制御剤「ボントロンE-88」(オリエント化学工業(株)製、サリチル酸アルミニウム)1g、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋(株)製、パラフィンワックス、融点:75℃)15gを、撹拌混合し、60℃に昇温して均一に溶解させた。その後、重合開始剤「V-65」(和光純薬工業(株)製、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、10時間半減期温度:51℃)4gを添加し、樹脂溶液を調製した。1リットル容のガラスビーカーに、イオン交換水150g、第三リン酸カルシウム(3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2)10質量%スラリー「TCP-10・U」(太平化学産業(株)製)500g、及びアニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004gを添加し、撹拌して水系媒体(界面活性剤濃度:1.1×10-5M)を調製した。水系媒体を60℃に加温し、60℃を保ちながら、樹脂溶液を一気に加え、ホモミキサーMARKII 2.5型(プライミクス(株)製)で、12,000r/minにて4分間撹拌し、懸濁液を得た。
懸濁液をセパラブルフラスコに移し、70℃、200r/minで撹拌しながら7時間重合した。その後、80℃に昇温し、減圧下で残存モノマーを留去した。撹拌を続けながら20℃まで冷却し、系内のpHが1以下になるまで塩酸を入れた。洗浄、乾燥を経て体積中位粒径(D50)8.0μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆(株)製、幅:18mm、JIS Z 1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。なお、印刷に用いた紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ(株)製、75g/m2)を使用した。
テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。結果を表2に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
試験例2〔画像耐熱性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を160℃に設定し未定着状態の印刷物の定着を行った。なお、印刷に用いた紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ(株)製、75g/m2)を使用した。
定着画像同士を重ね合わせて、100g/cm2の加重下、温度60℃、湿度50%の条件下にて、5日間放置し、5日後に引き剥がしたときの印刷物の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って画像耐熱性を評価した。
〔評価基準〕
A:定着画像の剥がれ(ドキュメントオフセット)が確認できない。
B:定着画像の剥がれは確認できないが、剥がす際にわずかに張り付きが生じる。
C:剥がす際に張り付きが生じ、定着画像にわずかな剥がれ(白抜け等)が確認できる。
D:剥がす際に張り付きが生じ、定着画像側に白抜けがはっきりと確認できる。
E:紙同士が固着しており、引き剥がすと紙が破損する。
試験例3〔帯電安定性〕
トナー0.6質量部とシリコーンコートフェライトキャリア(関東電化工業(株)社製)19.4質量部を混合した。所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後の帯電量と混合時間600秒後の帯電量の比率(混合時間600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出した。結果を表2に示す。帯電量の比率が1に近いほど、帯電安定性に優れ、その比率は0.82以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
Figure 0007374693000002
以上の結果より、実施例1、2では、低温定着性、画像耐熱性及び帯電安定性がいずれも良好であることが分かる。
これに対し、結晶性ポリエステル樹脂における1価の長鎖脂肪族モノマー量が少なく、重量平均分子量が高すぎる比較例1では、特に低温定着性の低下が顕著であり、1価の長鎖脂肪族モノマー量が多く、重量平均分子量が低すぎる比較例2では、画像耐熱性及び帯電安定性の低下が顕著であることが分かる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (4)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂を含有する結着樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物及び炭素数10以上22以下の脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の長鎖脂肪族モノマーと、ジオール成分及びジカルボン酸成分を含有し、該1価の長鎖脂肪族モノマーの含有量が25モル%以上40モル%以下である原料モノマーの重縮合物であり、前記結晶性ポリエステルの重量平均分子量が2,000以上5,000以下である、静電荷像現像用トナー。
  2. 結晶性ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以下、酸価と水酸基価の和が15mgKOH/g以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/スチレンアクリル樹脂)が、3/97以上20/80以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、スチレンアクリル樹脂の原料モノマー、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
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