JP7265429B2 - 電子写真用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に開示されている重合体は結晶性変性ポリプロピレン重合体であって、これを使用すると、帯電性や画像濃度の点で改善が望まれる。
更に、特許文献3に開示されているポリヒドロキシアミン化合物は高極性であるために、これをトナー中に含有することで顔料分散性が向上するが、ワックス分散性が低下する傾向にあり、耐ホットオフセット性と耐久性が悪化する傾向にある。
そこで、本発明は、耐ホットオフセット性、耐久性、及び画像濃度に優れる電子写真用トナーの製造方法に関する。
本発明は、ポリエステル樹脂A、重合性単量体、離型剤及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む電子写真用トナーの製造方法であって、前記ポリエステル樹脂Aは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gを含むカルボン酸成分との重縮合物である、電子写真用トナーの製造方法に関する。
本発明の電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、ポリエステル樹脂A、重合性単量体、離型剤及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む。
そして、ポリエステル樹脂Aは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物G(以下、「酸変性α-オレフィン重合体G」、又は「重合体G」ともいう)を含むカルボン酸成分由来の構成単位とを有する。
以上の製造方法により、耐ホットオフセット性、耐久性、及び画像濃度に優れる電子写真用トナーの製造方法を提供できる。
懸濁重合法による電子写真用トナーの製造においては、重合性単量体中での顔料の分散性が低く、顔料が凝集する結果、十分な画像濃度が得られないという問題があった。また、印刷の高速化に伴い、電子写真用トナーには耐久性が求められるが、重合性単量体中での離型剤の分散性が十分でないために、耐久性及び耐ホットオフセット性が不十分となる傾向があった。
本発明では、ポリエステル樹脂Aがポリエステル樹脂部分と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gに由来する構成単位を有するため、顔料及び離型剤との親和性が高く、重合性単量体中での顔料及び離型剤の分散性が向上する結果、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度が向上したと考えられる。特に、酸変性α-オレフィン重合体Gが非晶質であることにより、定着時の離型剤のブリードアウトがしやすく耐ホットオフセット性が向上すると考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶質であるかについては、室温で固体の場合は結晶性指数により判定される。室温(25℃)で液体もしくは粘調体の場合は非晶質と判断する。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶質樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その例示の化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
明細書中、結着樹脂成分とは、ポリエステル樹脂A等の樹脂成分及び重合性単量体の重合物を含む、トナー粒子の樹脂成分を形成する成分を意味する。
本発明の製造方法としては、例えば、
水系媒体中で、重合性単量体組成物の懸濁液を得る工程(以下、「工程1」ともいう)と、
当該懸濁液により、重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程(以下、「工程2」ともいう)と、
を有する方法が挙げられる。
以下、上述の製造方法を例にとり、本発明について詳細に説明する。
(水系媒体)
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましい。
水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水系媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
重合性単量体組成物は、ポリエステル樹脂A、重合性単量体、離型剤及び着色剤を含む。
重合性単量体組成物は、例えば、荷電制御剤、重合開始剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤を含んでいてもよい。
ポリエステル樹脂Aは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gを含むカルボン酸成分との重縮合物である。
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である)で表される化合物が好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、ポリエステル樹脂における特定の原料化合物に由来する構成単位の割合は、アルコール成分及びカルボン酸成分に含まれる該特定の原料化合物の含有量と同義とする。
ランダムグラフト変性型の酸変性物は、例えば、α-オレフィンの重合体分子内にラジカルを発生させ、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物と反応させることで得られる。
酸変性α-オレフィン重合体Gとしては、ポリイソブテンの片末端が無水マレイン酸で変性されたポリイソブテン無水コハク酸が好ましい。
酸変性α-オレフィン重合体Gの結晶性は、前述の通り結晶性指数([軟化点/吸熱の最高ピーク温度])によって表わされる。非晶質の酸変性α-オレフィン重合体Gは、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上のものであるか、又は、0.6未満、好ましくは0.5以下のものである。また、吸熱の最高ピーク温度が検出されないものも非晶質であると判断する。更に、室温(25℃)で液体又は粘調体の場合は非晶質と判断する。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、酸変性α-オレフィン重合体G以外のカルボン酸成分中、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。
(i)反応初期から酸変性α-オレフィン重合体Gを存在させ、アルコール成分と、カルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合する、
(ii)反応の途中から酸変性α-オレフィン重合体Gを存在させ、アルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合する、
(iii)アルコール成分と酸変性α-オレフィン重合体G以外のカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合した後に、酸変性α-オレフィン重合体Gと反応させる、
(iv)アルコール成分と酸変性α-オレフィン重合体G以外のカルボン酸化合物とを重縮合して得られたポリエステル系樹脂を加熱溶解させ、温度180℃以上250℃以下の条件で酸変性α-オレフィン重合体Gと反応させる、
方法が挙げられる。
これらの中でも、製造容易性の観点から、(ii)の方法が好ましい。
重縮合温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは190℃以上であり、そして、好ましくは240℃以下である。
重合性単量体は、例えば、不飽和二重結合を有する重合性単量体である。
重合性単量体組成物は、重合性単量体として、例えば、スチレン化合物、及び(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
スチレン化合物の量は、重合性単量体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは4である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニルが挙げられる。これらの中でも、好ましくは(メタ)アクリル酸ブチル、より好ましくはアクリル酸ブチルである。
ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。また、アルキル部位について「(イソ)」とは、ノルマルアルキル又はイソアルキルを意味する。
着色剤としては、顔料及び染料が用いられ、発色性の効果をより向上させる観点から、顔料が好ましい。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用できるが、有機顔料が好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、無機系複合酸化物が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料が挙げられる。
マゼンタ有機顔料としては、例えば、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられ、より具体的には、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:1,48:2,48:3,48:4,57:1,57:3,81:1,122,144,146,150,166,169,177,184,185,202,206,220,221,238,254,269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。これらの中でも、キナクリドン化合物が好ましく、C.I.ピグメントレッド122がより好ましい。
なお染料としては、例えば、アクリジン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジゴ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系の染料が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
重合性単量体組成物は、トナーの耐ホットオフセット性をより向上させる観点から、好ましくは離型剤を含む。ポリエステル樹脂Aとの組み合わせで、離型剤が含まれることで、トナー粒子中での分散性が良好になり、耐ホットオフセット性が向上する。
離型剤としては、例えば、ワックスが挙げられる。ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。
これらの中でも、トナーの離型性の観点から、炭化水素ワックス又はエステルワックスが好ましく、炭化水素ワックスがより好ましく、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックスが更に好ましく、パラフィンワックスが更に好ましい。
離型剤の融点は、実施例に記載の方法によって求められる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ジラウリルパーオキシド等の脂肪族ジアシル過酸化物系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジtert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素-第1鉄系、BPO-ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩-アルコール系等のレドックス開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、アゾ系重合開始剤、脂肪族ジアシル過酸化物系重合開始剤が好ましく、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジラウリルパーオキシドがより好ましい。
重合性単量体組成物は、荷電制御剤を含有していてもよい。荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、ベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
工程1は、好ましくは、下記工程1-1及び工程1-2を含む工程である。
工程1-1:ポリエステル樹脂A、重合性単量体、離型剤及び着色剤を混合し、重合性単量体組成物を得る工程
工程1-2:前記重合性単量体組成物を、水系媒体中に投入して、懸濁液を得る工程
なお、重合開始剤は、工程1-1において、重合性単量体組成物に添加することが好ましい。
工程1-1において、重合性単量体組成物は、各成分を加熱して混合し、各成分が均一に溶解した混合液とすることが好ましい。
ここで、荷電制御剤を混合することが好ましい。
混合温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
各成分が相溶した重合性単量体組成物を得た後に、重合開始剤を添加して混合することが好ましい。
工程1-2において、水系媒体は、分散安定剤、界面活性剤と混合された混合水系媒体であってもよい。
(分散安定剤)
分散安定剤としては、例えば、炭酸塩、リン酸金属塩、硫酸塩、金属水酸化物が挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。リン酸金属塩としては、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛が挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄が挙げられる。これらの中でも、リン酸カルシウムが好ましい。
分散安定剤の量は、混合水系媒体中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の各種界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、陰イオン性界面活性剤が好ましい。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが更に好ましい。
界面活性剤の量は、混合水系媒体中、好ましくは1質量ppm以上、より好ましくは3質量ppm以上、更に好ましくは5質量ppm以上であり、そして、好ましくは30質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下、更に好ましくは10質量ppm以下である。
当該工程で使用する装置としては、例えば、高剪断力を有する撹拌機を設置した竪型撹拌槽で行なうことができる。高剪断力を有する撹拌機の市販品としては、例えば、「ハイシェアミキサー」(IKA社製)、「T.K.ホモミクサー」、「ホモミクサー MARK II」、「T.K.フィルミックス」(以上、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)が挙げられる。
回転速度は、好ましくは1,000r/min以上、より好ましくは5,000r/min以上、更に好ましくは8,000r/min以上であり、そして、好ましくは30,000r/min以下、より好ましくは20,000r/min以下、更に好ましくは15,000r/min以下である。
工程2では、懸濁液中で重合性単量体を重合する。
重合する温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
重合は、撹拌しながら行うことが好ましい。使用する装置は、特に限定されない。回転速度は、好ましくは50r/min以上、より好ましくは100r/min以上、更に好ましくは150r/min以上であり、そして、好ましくは1,000r/min以下、より好ましくは500r/min以下、更に好ましくは300r/min以下である。
鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸などが挙げられる。
重合後、固液分離してトナー粒子を得ることが好ましい。固液分離後、洗浄、乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
トナー粒子のCV値は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
体積中位粒径(D50)及びCV値は、実施例に記載の方法により測定される。
トナー粒子のガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定される。
トナーの製造方法は、得られたトナー粒子と外添剤を混合する工程を更に有していてもよい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤の平均粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、そして、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
<樹脂の酸価>
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱ピークのピークトップの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。離型剤の場合、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。また、非晶質樹脂の場合、吸熱の最高ピーク温度をガラス転移温度とする。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求める。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、単分散ポリスチレン(「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×104)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製))の中から数種類を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(以上、東ソー株式会社製)
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は以下の方法で測定した。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
また、CV値(%)は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径DV)×100
外添剤の平均粒径は、個数平均粒径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、ポリイソブテン無水コハク酸を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させ、更に235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。その後、200℃まで冷却し、無水トリメリット酸を添加し、200℃で5時間重縮合反応させ、更に200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、ポリエステル樹脂A-1~A-4(樹脂A-1~A-4)を得た。
なお、使用したポリイソブテン無水コハク酸は、Dover社製、H1000であり、室温で粘調体のため非晶質であり、ポリイソブテンの片末端を無水マレイン酸で変性することで得られたものである。また、使用したポリイソブテン無水コハク酸の重量平均分子量は、2400であった。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、非晶質のPP/PE-g-MA(ランダムグラフト無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体、トーヨータックPMA-T、東洋紡株式会社製、融点=93℃)を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させた後、200℃まで冷却し、無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、更に200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質のポリエステル樹脂(樹脂A-5)を得た。
実施例1~10、比較例1~2
<工程1-1>
300mL容のガラスビーカーに、表2に示すスチレンアクリル樹脂の原料モノマー(重合性単量体)及びポリエステル樹脂A、着色剤7g、荷電制御剤「ボントロンE-88」(オリヱント化学工業株式会社製、サリチル酸アルミニウム)1g、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:76℃)10gを添加し、撹拌混合し、60℃に昇温して均一に溶解した。その後、重合開始剤「V-65」(富士フイルム和光純薬株式会社製、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))4gを添加し、重合性単量体組成物(ポリエステル樹脂A溶液)を調製した。
<工程1-2>
1リットル容のガラスビーカーに、イオン交換水150g、第三リン酸カルシウム(化学式:3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2)10質量%スラリー「TCP-10・U」(太平化学産業株式会社製)500g及びアニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004gを添加し、撹拌して水系媒体を調製した。水系媒体を60℃に加温し、60℃を保ちながら、樹脂溶液を一気に加え、ホモミクサー「MARK II 2.5型」(プライミクス株式会社製)で、12,000r/minにて4分間撹拌し、懸濁液を得た。
懸濁液をセパラブルフラスコに移し、70℃まで昇温し、70℃、200r/minで撹拌しながら8時間重合した。その後、80℃に昇温し、減圧下で残存モノマーを留去した。撹拌を続けながら20℃まで冷却し、系内のpHが1以下になるまで塩酸を入れた。洗浄、乾燥を経て表2に示す体積中位粒径(D50)のトナー粒子を得た。
トナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル株式会社製、平均粒径:16nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3,600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。得られたトナーについて評価を行い、表2に示した。
・A-1~A-5:上記製造例A1~A5で作製したポリエステル樹脂A-1~A-5
・離型剤B1:HNP-9、日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:76℃
・着色剤C1:ECB-301、大日精化工業株式会社製、ピグメントブルー15:3
・着色剤M1:スーパーマゼンタR、DIC株式会社製、ピグメントレッド122
・着色剤Y1:トナーイエローHG、クラリアントケミカルズ社製、ピグメントイエロー180
・着色剤K1:REGAL 330R、キャボット社製、カーボンブラック
・荷電制御剤D1:ボントロンE-88、オリヱント化学工業株式会社製
<試験例1:耐ホットオフセット性>
未定着画像を取れるように改造した、プリンター「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。「OKI MICROLINE 3010」(株式会社沖データ製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度150mm/secにて、定着ロールの温度を100℃から200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。得られた100℃~200℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロールの最高温度を最高定着温度とした。得られた温度が高いほど耐ホットオフセット性に優れる。
現像ローラを目視で見ることができるように改造した株式会社沖データ製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを実装し、温度30℃、湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラフィルミングを目視にて観察した。フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。耐久性は現像ローラフィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、ベタ画像を20枚印刷した。その画像サンプルの画像濃度を画像濃度測定器「Gretag SPM50」(GretagMacbeth社製)を用いて5点測定し、それらの平均値を画像濃度(OD)として評価した。画像濃度が高いほど優れる。
実施例1と比較例1の対比から、原料モノマーとして酸変性α-オレフィン重合体Gを含むポリエステル樹脂を用いることで、ワックスと顔料の分散性が向上し、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度が向上していることがわかる。
実施例1~4の対比から、ポリエステル樹脂に用いる酸変性α-オレフィン重合体Gを増量することで、ワックスと顔料の分散性がより向上し、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度がより向上していることがわかる。
実施例3、5~7の対比から、酸変性α-オレフィン重合体Gを用いたポリエステル樹脂を増量することで、ワックスと顔料の分散性がより向上し、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度がより高いレベルで向上していることがわかる。
実施例3、8~10の対比から、顔料種類を変更した場合においても、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度が向上していることがわかる。
比較例2は、実施例1と比較して、ポリエステル樹脂に酸変性α-オレフィン重合体Gを用いていないため、耐ホットオフセット性、耐久性及び画像濃度が悪化することがわかる。
Claims (4)
- ポリエステル樹脂A、重合性単量体、離型剤及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁重合する工程を含む電子写真用トナーの製造方法であって、
前記ポリエステル樹脂Aは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むアルコール成分と、非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gを含むカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gが、該非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の片末端がマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸により変性された酸変性物である、
電子写真用トナーの製造方法。 - 前記非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィンの重合体の酸変性物Gの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記重合性単量体が、不飽和二重結合を有する重合性単量体である、請求項1又は2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記重合性単量体が、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項3に記載の電子写真用トナーの製造方法。
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