JP2017015466A - 液滴噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 実施形態は、溶液と接触する液滴噴射装置の内面の洗浄時間が短い液滴噴射装置を提供することが課題である。【解決手段】実施形態の液滴噴射装置は、基板と、ノズルと、アクチュエータと、溶液保持容器と、を有する。基板は、内部に圧力室が形成される。ノズルは、前記圧力室に連通し、前記圧力室内の溶液を吐出する。アクチュエータは、前記圧力室内の圧力を変化させ、前記圧力室内の溶液を前記ノズルから吐出させる。溶液保持容器は、上面に溶液を受ける溶液受け口、下面に前記圧力室内に連通する溶液出口をそれぞれ有し、前記基板の上に積層される。前記溶液受け口は前記溶液出口より大きく、前記溶液出口は前記圧力室の開口より大きい。前記溶液保持容器から前記圧力室内を経て前記ノズルから液体を吐出させる液体流路全体を光照射可能にした。【選択図】図6
Description
本発明の実施形態は、液滴噴射装置に関する。
生物学、薬学などの分野の研究開発や医療診断や検査、農業試験において、ピコリットル(pL)からマイクロリットル(μL)の液体を分注する操作を行うことがある。例えばガン細胞に対して、効果的に攻撃するのに必要な化合物の濃度を決定するステージにおいて、低容量の液体の分注は重要な作業である。
これらは一般に用量応答実験と呼ばれ、化合物の有効濃度を決定するため、多くの異なった濃度の化合物をマイクロプレートのウエルなどの容器内に作成する。このような用途で使用されるオンデマンド型の液滴噴射装置がある。この液滴噴射装置は、例えば、溶液を保持する溶液保持容器と、溶液を吐出するノズルと、溶液保持容器とノズルとの間に配置される圧力室と、圧力室内の溶液の圧力を制御するアクチュエータとを備える。
この液滴噴射装置は、ノズルから吐出される1滴の液量がpLオーダーであり、滴下回数を制御することにより、各ウエルにpLからμLのオーダーの液体を滴下することが可能である。そのため、用量応答実験に代表される多くの異なった濃度の化合物を分注する作業やpLからナノリットル(nL)の極微少量の分注作業に適した装置である。
溶液と接触する液滴噴射装置の液体流路の内面には、主に有機物が付着していることが一般的である。液滴噴射装置から不純物の少ない溶液を吐出するためには、液滴噴射装置の液体流路の内面の有機物を除去するための洗浄を行う必要がある。液滴噴射装置の液体流路の内面の洗浄は、主に洗浄液を使用した洗浄液洗浄が行われている。
この洗浄液洗浄では、洗浄液充填洗浄工程と、洗浄液除去洗浄工程と、それに続く乾燥工程の3つの工程が必要である。洗浄液充填洗浄工程は、液滴噴射装置の液体流路に洗浄液を充填して洗浄する。洗浄液除去洗浄工程は、液滴噴射装置の液体流路から洗浄液を排出した後、液滴噴射装置の液体流路に精製水等を流入させることで洗浄液を除去する。乾燥工程は、液滴噴射装置の液体流路から精製水等を流出させた後、液滴噴射装置の液体流路の内面を乾燥させる。
従来の液滴噴射装置では、液滴噴射装置の内面の洗浄は、主に洗浄液を使用した洗浄液洗浄が行われている。この洗浄液洗浄では、洗浄液充填洗浄工程と、洗浄液除去洗浄工程と、乾燥工程の3つの工程が必要であるため、洗浄を完了するまでに比較的時間がかかる傾向がある。
実施形態が解決しようとする課題は、溶液と接触する液滴噴射装置の内面の洗浄時間が短い液滴噴射装置を提供することである。
実施形態の液滴噴射装置は、基板と、ノズルと、アクチュエータと、溶液保持容器と、を有する。基板は、内部に圧力室が形成される。ノズルは、前記圧力室に連通し、前記圧力室内の溶液を吐出する。アクチュエータは、前記圧力室内の圧力を変化させ、前記圧力室内の溶液を前記ノズルから吐出させる。溶液保持容器は、上面に溶液を受ける溶液受け口、下面に前記圧力室内に連通する溶液出口をそれぞれ有し、前記基板の上に積層される。前記溶液受け口は前記溶液出口より大きく、前記溶液出口は前記圧力室の開口より大きい。前記溶液保持容器から前記圧力室内を経て前記ノズルから液体を吐出させる液体流路全体を光照射可能にした。
以下実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の液滴噴射装置の一例について図1乃至図7を参照して説明する。図1は、溶液滴下装置1で使用される第1の実施形態の液滴噴射装置2の使用例を示す斜視図である。図2は、液滴噴射装置2の上面図であり、図3は液滴噴射装置2の液滴を噴射する面である下面図を示す。図4は、図2のF4−F4線の縦断面図を示す。図5は、第1の実施形態の液滴噴射装置2の液滴噴射アレイ27を示す平面図である。図6は、図5のF6−F6線の縦断面図である。図7は、液滴噴射装置2のノズル110の周辺構造を示す縦断面図である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の液滴噴射装置の一例について図1乃至図7を参照して説明する。図1は、溶液滴下装置1で使用される第1の実施形態の液滴噴射装置2の使用例を示す斜視図である。図2は、液滴噴射装置2の上面図であり、図3は液滴噴射装置2の液滴を噴射する面である下面図を示す。図4は、図2のF4−F4線の縦断面図を示す。図5は、第1の実施形態の液滴噴射装置2の液滴噴射アレイ27を示す平面図である。図6は、図5のF6−F6線の縦断面図である。図7は、液滴噴射装置2のノズル110の周辺構造を示す縦断面図である。
溶液滴下装置1は、矩形平板状の基台3と、液滴噴射装置装着モジュール5と、を有する。本実施形態では、生化学分野の分析や臨床検査などで一般的に用いられているマイクロプレートの中で、96穴のマイクロプレート4へ溶液を滴下する実施形態について説明する。
マイクロプレート4は、基台3の中央位置に固定されている。基台3の上には、マイクロプレート4の両側に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール6a、6bを有する。各X方向ガイドレール6a、6bの両端部は、マイクロプレート4上に突設された、固定台7a、7bに固定されている。
X方向ガイドレール6a、6b間には、Y方向に延設されたY方向ガイドレール8が架設されている。Y方向ガイドレール8の両端は、X方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台9にそれぞれ固定されている。
Y方向ガイドレール8には、液滴噴射装置装着モジュール5がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動可能なY方向移動台10が設けられている。このY方向移動台10には、液滴噴射装置装着モジュール5が装着されている。この液滴噴射装置装着モジュール5には、本実施形態の液滴噴射装置2が固定されている。これにより、Y方向移動台10がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台9がX方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、液滴噴射装置2は、直交するXY方向に移動可能に支持されている。
第1の実施形態の液滴噴射装置2は、平板状のベース部材21を有する。図2に示すようにこのベース部材21の表面側には、複数、本実施形態では8個の溶液保持容器22が一列に並設されている。溶液保持容器22は、図4に示すように上面が開口された有底円筒形状の容器である。ベース部材21の表面側には、各溶液保持容器22と対応する位置に円筒形状の凹陥部21aが形成されている。溶液保持容器22の底部は、この凹陥部21aに接着固定されている。さらに、溶液保持容器22の底部には、中心位置に溶液出口となる開口部22aが形成されている。上面開口部22bの開口面積は、溶液出口の開口部22aの開口面積よりも大きくなっている。
図3に示すようにベース部材21の裏面側には、溶液保持容器22と同数の電装基板23が一列に並設されている。電装基板23は、矩形状の平板部材である。ベース部材21の裏面側には、図3に示すように電装基板23の装着用の矩形状の凹陥部21bと、この凹陥部21bと連通する液滴噴射アレイ部開口21dとが形成されている。凹陥部21bの基端部は、ベース部材21の図3中で上端部位置(図4中で右端部位置)まで延設されている。凹陥部21bの先端部は、図4に示すように溶液保持容器22の一部と重なる位置まで延設されている。電装基板23は、凹陥部21bに接着固定されている。
電装基板23には、電装基板配線24がパターニング形成されている。電装基板配線24の一端部には、外部からの制御信号を入力するための制御信号入力端子25が形成されている。電装基板配線24の他端部には、電極端子接続部26を備える。電極端子接続部26は、図5に示す後述する液滴噴射アレイ27に形成された下部電極端子部131c及び上側電極端子部133cと接続するための接続部である。
また、ベース部材21には、制御信号入力端子部開口21cと液滴噴射アレイ部開口21dの各貫通穴が設けられている。制御信号入力端子部開口21cは、ベース部材21の表面側に凹陥部21bの基端部と重なる位置に形成されている。この制御信号入力端子部開口21cから電装基板配線24の制御信号入力端子25が露出されている。液滴噴射アレイ部開口21dは、図3に示すように矩形状の開口部で、ベース部材21の裏面側に溶液保持容器22の凹陥部21aと重なる位置に形成されている。
溶液保持容器22の下面には、溶液保持容器22の開口部22aを覆う状態で図5に示す液滴噴射アレイ27が接着固定されている。この液滴噴射アレイ27は、ベース部材21の液滴噴射アレイ部開口21dと対応する位置に配置されている。
図6に示すように液滴噴射アレイ27は、ノズルプレート100と、圧力室構造体200とが積層されて形成されている。ノズルプレート100には、溶液を吐出する複数のノズル110が配設されている。本実施形態では、図5に示すように複数のノズル110は、ノズルプレート100に例えば3×3列に配列される。ノズルプレート100の隣接するノズル110の中心間距離は250μmとする。
ノズルプレート100は、振動板120上に、駆動部である駆動素子130と、保護層である保護膜150と、撥液膜160とを備える。振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成される。圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理すると、シリコンウエハ201の表面にSiO2(酸化シリコン)膜が形成される。振動板120は、酸素雰囲気で加熱処理して形成されるシリコンウエハ201の表面の厚さ4μmのSiO2(酸化シリコン)膜を用いる。振動板120は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。
振動板120の膜厚は、1〜50μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO2(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al2O3(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
駆動素子130は、各ノズル110毎に形成されている。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状の形状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でも良い。
図7に示すように駆動素子130は、圧電体である圧電体膜132を挟んで下部電極131の電極部131aと、上部電極133の電極部133aとを備える。電極部131aと、圧電体膜132及び電極部133aは、ノズル110と同軸であり、同じ大きさの円形パターンである。
下部電極131は、円形の複数のノズル110と同軸の円形の複数の電極部131aをそれぞれ備える。例えば、ノズル110の直径を20μmとし、電極部131aの外径を133μm、内径を42μmとする。図5に示すように下部電極131は、複数の電極部131aを接続する配線部131bを備え、配線部131bの端部に端子部131cを備える。
駆動素子130は、下部電極131の電極部131a上に例えば厚さ2μmの圧電材料である圧電体膜132を備える。圧電体膜132は、PZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。圧電体膜132は、例えばノズル110と同軸であって、電極部131aと同一形状の外径が133μm、内径が42μmの円環状の形状である。圧電体膜132の膜厚は、概ね1〜5μmの範囲となる。圧電体膜132は、例えばPTO(PbTiO3:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、ZnO、AlN等の圧電材料を用いることもできる。
圧電体膜132は、厚み方向に分極を発生する。分極と同じ方向の電界を圧電体膜132に印加すると、圧電体膜132は、電界方向と直交する方向に伸縮する。言い換えると、圧電体膜132は、膜厚に対して直交する方向に収縮し、或いは伸長する。
駆動素子130の上部電極133は、圧電体膜132上にノズル110と同軸であって、圧電体膜132と同一形状の外径が133μm、内径が42μmの円環状の形状である。図5に示すように上部電極133は、複数の電極部133aを接続する配線部133bを備え、配線部133bの端部に二つの端子部133cを備える。上部電極133を一定電圧に接続した場合は、下部電極131へ電圧制御信号を印加する。
下部電極131は、例えばスパッタリング法によりTi(チタン)とPt(白金)を積層して厚さ0.5μmに形成する。下部電極131の膜厚は、概ね0.01〜1μmの範囲となる。下部電極131は、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Au(金)、SrRuO3(ストロンチウムルテニウム酸化物)等の他の材料を使用できる。下部電極131は、各種金属を積層して使用することもできる。
上部電極133は、Pt薄膜で形成した。薄膜の成膜はスパッタリング法を用い、膜厚0.5μmとした。上部電極133の他の電極材料として、Ni、Cu、Al、Ti、W、Mo、Au、SrRuO3などを利用することも可能である。他の成膜法として、蒸着、鍍金を用いることも可能である。上部電極133は、各種金属を積層して使用することもできる。上部電極133の望ましい膜厚は0.01から1μmである。
ノズルプレート100は、下部電極131と、上部電極133とを絶縁する絶縁膜140を備える。絶縁膜140は、例えば、厚さ0.5μmのSiO2(酸化シリコン)を用いる。絶縁膜140は、駆動素子130の領域にあっては、電極部131aと、圧電体膜132及び電極部133aの周縁を覆う。絶縁膜140は、下部電極131の配線部131bを覆う。絶縁膜140は、上部電極133の配線部133bの領域で振動板120を覆う。絶縁膜140は、上部電極133の電極部133aと配線部133bを電気的に接続するコンタクト部140aを備える。
ノズルプレート100は、駆動素子130を保護する例えばポリイミドの保護膜150を備える。保護膜150は、振動板120のノズル110に連通する溶液通過部141を備える。溶液通過部141は、振動板120のノズル110の直径と同じ直径20μmである。
保護膜150は、他の樹脂またはセラミックス等の他の絶縁性の材料を利用することもできる。他の樹脂として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、オイルエーテルサルフォン等がある。セラミックスとして、例えばジルコニア、炭化シリコン、窒化シリコン等がある。保護膜150の膜厚は、概ね2〜50μmの範囲にある。
保護膜150の材料選択においては、ヤング率、耐熱性、絶縁性(導電率の高い溶液を使用した状態で駆動素子130を駆動時に、上部電極133と接触することによる溶液変質の影響を考慮)、熱膨張係数、平滑性、溶液に対する濡れ性も考慮する。
ノズルプレート100は、保護膜150を覆う撥液膜160を備える。撥液膜160は、溶液をはじく特性のある例えばシリコーン系樹脂をスピンコーティングして形成される。撥液膜160は、フッ素含有樹脂等の溶液をはじく特性を有する材料で形成することもできる。撥液膜160の厚さは、例えば0.5μmである。
圧力室構造体200は、例えば厚さ525μmのシリコンウエハ201を用いて形成される。圧力室構造体200は、振動板120と対向する面に、反り低減層である反り低減膜220を備える。圧力室構造体200は、反り低減膜220を貫通して振動板120の位置に達し、ノズル110と連通する圧力室210を備える。圧力室210は、例えばノズル110と同軸上に位置する直径190μmの円形に形成される。圧力室210の形状、及びサイズは限定されない。
但し第1の実施形態のように、圧力室210は溶液保持容器22の開口部22aに連通する開口部を備えている。圧力室210の開口部の幅方向のサイズDより、深さ方向のサイズLを大きくすることが好ましい。深さ方向のサイズL>幅方向のサイズDとすることにより、ノズルプレート100の振動板120の振動により、圧力室210内の溶液にかかる圧力が、溶液保持容器22へ逃げるのを遅らせる。
圧力室210の振動板120が配置される側を第1の面とし、反り低減膜220が配置される側を第2の面とする。圧力室構造体200の反り低減膜220側には例えばエポキシ系接着剤により溶液保持容器22が接着される。圧力室構造体200の圧力室210は、反り低減膜220側で、溶液保持容器22の開口部22aに連通する。溶液保持容器22の開口部22aの開口面積は、圧力室210の溶液保持容器22の開口部22aに連通する開口部の開口面積より大きくなっている。
反り低減膜220は、例えば圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理して、シリコンウエハ201の表面に形成される厚さ4μmのSiO2(酸化シリコン)膜を用いる。反り低減膜220は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。反り低減膜220は、液滴噴射アレイ27に生じる反りを低減する。
反り低減膜220は、シリコンウエハ201の振動板120側と対向する側にあって、シリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、圧力室構造体200と振動板120との膜応力の違い、更には、駆動素子130の各種構成膜の膜応力の違い等によるシリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、成膜プロセスを用いて液滴噴射アレイ27の構成部材を作成する場合に、液滴噴射アレイ27が反るのを低減する。
反り低減膜220の材料及び膜厚等は振動板120と異なるものであっても良い。但し、反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、シリコンウエハ201の両面にての振動板120との膜応力の違いと反り低減膜220との膜応力の違いは同じになる。反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、液滴噴射アレイ27に生じる反りをより効果的に低減する。
振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。液滴噴射装置は、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210内に発生する圧力変化によって、ノズル110に供給された溶液を吐出する。
液滴噴射アレイ27の製造方法の一例について述べる。液滴噴射アレイ27は、先ず圧力室構造体200を形成するためのシリコンウエハ201の両面の全面に、SiO2(酸化シリコン)膜を成膜する。シリコンウエハ201の一方の面に形成したSiO2(酸化シリコン)膜を振動板120として用いる。シリコンウエハ201の他方の面に形成したSiO2(酸化シリコン)膜を反り低減膜220として用いる。
例えばバッチ式の反応炉を用いて、酸素雰囲気で加熱処理する熱酸化法によって、例えば円板状のシリコンウエハ201の両面にSiO2(酸化シリコン)膜を形成する。成膜プロセスにより、円板状のシリコンウエハ201に複数個のノズルプレート100及び圧力室210を形成する。ノズルプレート100及び圧力室210を形成後、円板状のシリコンウエハ201を切って、ノズルプレート100と一体の、複数の圧力室構造体200に分離する。円板状のシリコンウエハ201を用いて、複数個の液滴噴射アレイ27を一度に量産できる。シリコンウエハ201は円板状でなくても良い。1枚の矩形のシリコンウエハ201を用いて、一体のノズルプレート100と圧力室構造体200とを個別に形成しても良い。
シリコンウエハ201に形成される振動板120を、エッチングマスクを用いてパターニングしてノズル110を形成する。パターニングは、エッチングマスクの材料として、感光性レジストを用いる。振動板120の表面に感光性レジストを塗布後、露光及び現像して、ノズル110に相当する開口部をパターニングしたエッチングマスクを形成する。エッチングマスク上から振動板120を圧力室構造体200に達するまでドライエッチングして、ノズル110を形成する。振動板にノズル110を形成後、例えば剥離液を用いてエッチングマスクを除去する。
次にノズル110が形成された振動板120の表面に、駆動素子130、絶縁膜140、保護膜150および撥液膜160を形成する。駆動素子130、絶縁膜140、保護膜150および撥液膜160の形成は、成膜工程と、パターニングする工程を繰り返す。成膜工程は、スパッタリング法或いはCVD法、スピンコーティング法等により行う。パターニングは、例えば感光性レジストを用いて膜上にエッチングマスクを形成し、膜材料をエッチングした後、エッチングマスクを除去することで行う。
振動板120の上に、下部電極131、圧電体膜132及び上部電極133の材料を積層成膜する。下部電極131の材料として、膜厚0.05μmのTi(チタン)膜と膜厚0.45μmのPt(白金)膜をスパッタリング法により順に成膜する。Ti(チタン)及びPt(白金)膜は、蒸着法或いは鍍金により形成しても良い。
下部電極131の上に、圧電体膜132の材料として、膜厚2μmのPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を基板温度350℃にてRFマグネトロンスパッタリング法により成膜する。PZTを成膜後、500℃で3時間熱処理することによりPZTは、良好な圧電性能を得る。PZT膜は、CVD(化学的気相成膜法)、ゾルゲル法、AD(エアロゾルデポジション)法、水熱合成法により形成しても良い。
圧電体膜132の上に、上部電極133の材料として、膜厚0.5μmのPt(白金)膜をスパッタリング法により成膜する。成膜したPt(白金)膜上に、下部電極131の材料膜を残して、上部電極133の電極部133aと圧電体膜132を残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Pt(白金)とPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)の膜を除去し、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成する。
次に、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成した下部電極131材料の上に、下部電極131の電極部131a、配線部131b及び端子部131cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Ti(チタン)及びPt(白金)の膜を除去し、下部電極131を形成する。
下部電極131、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成した振動板120上に、絶縁膜140の材料として、膜厚0.5μmのSiO2(酸化シリコン)膜を成膜する。SiO2(酸化シリコン)膜は、例えばCVD法により低温成膜して良好な絶縁性を得る。成膜したSiO2(酸化シリコン)膜をパターニングして絶縁膜140を形成する。
絶縁膜140を形成した振動板120上に、上部電極133の配線部133b及び端子部133cの材料として、膜厚0.5μmのAu(金)をスパッタリング法により成膜する。Au(金)膜は、蒸着法或いはCVD法、又は鍍金により形成しても良い。成膜したAu(金)膜上に上部電極133の電極配線部133b及び端子部133cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Au(金)の膜を除去し、上部電極133の電極配線部133b及び端子部133cを形成する。
上部電極133を形成した振動板120上に、膜厚4μmの保護膜150の材料であるポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜は、振動板120上にポリイミド前駆体を含む溶液をスピンコーティング法により塗布し、ベークによる熱重合及び溶剤を除去して成膜する。成膜したポリイミド膜をパターニングして、溶液通過部141、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する保護膜150を形成する。
保護膜150上に撥液膜160の材料であるシリコーン系樹脂膜を膜厚0.5μmにスピンコーティング法により塗布し、ベークによる熱重合及び溶剤を除去して成膜する。成膜したシリコーン系樹脂膜をパターニングして、ノズル110、溶液通過部141、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する撥液膜160を形成する。
撥液膜160上に、例えばシリコンウエハ201のCMP(化学機械研磨)用の裏面保護テープを、カバーテープとして貼り付けて撥液膜160を保護し、圧力室構造体200をパターニングする。シリコンウエハ201の反り低減膜220上に、圧力室210の直径190μmを露出するエッチングマスクを形成し、まず、反り低減膜220をCF4(4フッ化カーボン)とO2(酸素)の混合ガスによってドライエッチングする。次に、例えばSF6(6フッ化硫黄)とO2の混合ガスで、シリコンウエハ専用の垂直深堀ドライエッチングをする。ドライエッチングは、振動板120に当接する位置で止め、圧力室構造体200に圧力室210を形成する。
圧力室210を形成するエッチングは、薬液を用いるウェットエッチング法、プラズマを用いてのドライエッチング法等で行っても良い。エッチング終了後、エッチングマスクを除去する。撥液膜160上に貼り付けたカバーテープに紫外線を照射して接着性を弱めてから、カバーテープを撥液膜160から剥がし、円板状のシリコンウエハ201を切断することにより、複数個の液滴噴射アレイ27が分離形成される。
次に、液滴噴射装置の製造方法について説明する。液滴噴射アレイ27と溶液保持容器22を接着させる。このとき、液滴噴射アレイ27における圧力室構造体200の反り低減膜220側に、溶液保持容器22の開口部22a側の面を接着する。
その後、液滴噴射アレイ27と接着した溶液保持容器22を、ベース部材21の凹陥部21aに接着する。続いて、電装基板23にパターニング形成された電装基板配線24の片側の端子である電極端子接続部26に導電性ペーストを塗布する。次に、図4に示すように、電装基板23をベース部材21に接着する。このとき、電極端子接続部26は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cに接続させる。電装基板配線24のもう一方の端子は、制御信号入力端子25であり、ベース部材21に設けられた制御信号入力端子部開口21cにより、例えば、制御信号入力する板バネコネクタと接触できる形状となっている。これにより液滴噴射装置2が形成される。
次に、上記構成の作用について説明する。本実施形態の液滴噴射装置2は、溶液の滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5に固定して使用される。液滴噴射装置2の使用時には、まず、溶液保持容器22の上面開口部22bから図示しないピペッターなどにより、溶液を所定量、溶液保持容器22に供給する。溶液は、溶液保持容器22の内面で保持される。溶液保持容器22の底部の開口部22aは、液滴噴射アレイ27と連通している。溶液保持容器22に保持された溶液は、溶液保持容器22の開口部22aを介して液滴噴射アレイ27の各圧力室210へ充填される。
この状態で、電装基板配線24の制御信号入力端子25に入力された電圧制御信号は、電装基板配線24の電極端子接続部26から下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cへ送られる。このとき、駆動素子130への電圧制御信号の印加に対応して、振動板120が変形して圧力室210の容積を変化させることにより、液滴噴射アレイ27のノズル110から溶液が溶液滴として吐出される。そして、ノズル110から、マイクロプレート4の各ウエル4bに所定量の液体を滴下する。
ノズル110から吐出される1滴の液量は、2から5ピコリットルである。そのため、滴下回数を制御することにより、各ウエル4bにpLからμLのオーダーの液体を滴下制御することが可能となる。
液滴噴射装置2において、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面に有機不純物が付着していた場合、吐出する溶液中への不純物の混入や、溶液中の成分が不純物と反応して変質する恐れがある。そのため、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面の洗浄を行うことが好ましい。
第1の実施形態の液滴噴射装置2においては、図4と図6に示すように、溶液と接触する溶液保持容器22の内面と圧力室210の内面、及びノズル110の内面が外部に露出している。すなわち、溶液保持容器22から圧力室210内を経てノズル110から液体を吐出させる液体流路全体を光照射可能に設けている。そのため、溶液保持容器22の上面開口部22bから底部側に向けて紫外線を照射することにより、溶液と接触する溶液保持容器22の内面と圧力室210の内面、及びノズル110の内面を紫外線照射洗浄することができる。紫外線照射洗浄では、溶液保持容器22の内面に紫外線を照射させることで、溶液保持容器22の内面に付着している有機物を二酸化炭素等の揮発性物質へ化学変化させて揮発除去することができる。
したがって、洗浄液を用いた洗浄液洗浄のように洗浄液充填洗浄工程、精製水等による洗浄液除去洗浄工程、それに続く乾燥工程の3つの工程が必要な場合に比べて、紫外線照射洗浄は、洗浄時間が短くなる。
上記構成の第1の実施形態の液滴噴射装置2においては、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面を紫外線照射洗浄によって短時間で洗浄できるため、生産性の高い液滴噴射装置2を提供することができる。
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態(図1乃至図7参照)の液滴噴射装置2の構成を次の通り変更した変形例である。第1の実施形態では、ノズルプレート100の保護膜150に振動板120のノズル110に連通する溶液通過部141を形成する構成を示した。これに替えて第2の実施形態では、保護膜150に直径d1のノズル230を形成する。なお、第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図8は、第2の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態(図1乃至図7参照)の液滴噴射装置2の構成を次の通り変更した変形例である。第1の実施形態では、ノズルプレート100の保護膜150に振動板120のノズル110に連通する溶液通過部141を形成する構成を示した。これに替えて第2の実施形態では、保護膜150に直径d1のノズル230を形成する。なお、第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図8に示すように、液滴噴射装置2のノズルプレート100の振動板120は、直径d1のノズル230と同軸位置に開口である直径d2の周孔231を備える。周孔231の直径d2は、ノズル230の直径d1より大きい。本実施形態のノズルプレート100の保護膜150は、振動板120の周孔231の直径d2よりも直径d1が小径な例えば直径20μmのノズル230を有する。これにより、保護膜150のノズル230の周壁部が振動板120の周孔231の内周面を覆い、圧力室210に連通する。
液滴噴射装置2の製造時、圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201と一体の振動板120を、エッチングマスクを用いてパターニングして周孔231を形成する。振動板120に駆動素子130を形成した上に保護膜150であるポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜をパターニングして、ノズル230を備える保護膜150を形成する。保護膜150は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。
例えば、第1の実施形態では、同軸且つ同径のノズル110と溶液通過部141とを夫々にパターニングしていることから、振動板120のノズル110と、保護膜150の溶液通過部141の形状が不均一になる恐れがある。ノズル110と溶液通過部141とが不均一である場合、ノズル110から吐出する溶液滴の滴下位置がずれる恐れがある。
これに対して、第2の実施形態のノズル230は、保護膜150に施す1回のパターニングにより形成する。したがって、ノズル230の内周面を均一に形成出来るので、ノズル230から吐出した溶液滴の滴下位置がずれる恐れがなく、液滴噴射装置2を用いた溶液滴下時に、高い滴下位置精度を得る。
第2の実施形態によれば、液滴噴射装置2は、第1の実施形態と同様、溶液保持容器22の上面開口部22b側から紫外線照射することにより、溶液保持容器22、圧力室210の内面、及びノズル230の内面を紫外線照射洗浄することができる。そのため、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面を短時間で洗浄できるため、生産性の高い液滴噴射装置2を提供することが可能である。
更に、液滴噴射装置2は、振動板120の周孔231の内周面を覆う保護膜150に、1回のパターニングによりノズル230を形成する。これにより、圧力室210に連通するノズル230の内周面を均一に出来、ノズル230から吐出する溶液滴の滴下位置精度を良好に保持する。
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態を示す。本実施形態は第1の実施形態(図1乃至図7参照)の液滴噴射装置2のさらなる変形例である。なお、第3の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図9は、第3の実施形態を示す。本実施形態は第1の実施形態(図1乃至図7参照)の液滴噴射装置2のさらなる変形例である。なお、第3の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態では、液滴噴射装置のノズルプレート100の振動板120上に、直径d3のノズル241を形成している。保護膜150には、振動板120のノズル241と同軸であってノズル241の直径d3より大きい直径d4の溶液通過部242を形成している。例えば、ノズル241の直径d3を20μmとし、溶液通過部441の直径d4を30μmとする。
ノズルプレート100は、保護膜150上に撥液膜160を備える。撥液膜160は、保護膜150の溶液通過部242の表面を覆う被覆部243を有する。これにより、溶液通過部242は、撥液膜160の被覆部243を介してノズル241と連通する。
液滴噴射装置2の製造時には、ノズル241を有する振動板120の駆動素子130を形成した上にポリイミド膜である保護膜150を成膜する。このとき、ポリイミド膜をパターニングして溶液通過部242を備える保護膜150を形成する。保護膜150は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。
続いて、保護膜150上に撥液膜160の材料であるシリコーン系樹脂膜を成膜する。成膜したシリコーン系樹脂膜をパターニングして、撥液膜160を形成する。撥液膜160は、ノズル241の内周面に付着することなく、保護膜150の表面を覆う。下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cは露出される。
例えば第1の実施形態では、同軸且つ同径のノズル110と溶液通過部141のパターニングが不均一である場合に、ノズル110から吐出した溶液滴の滴下位置がずれる恐れがある。これに対して、第3の実施形態では、保護膜150の溶液通過部242の直径d4が振動板120のノズル241の直径d3より大きい。そのため、振動板120のノズル241と、保護膜150の溶液通過部242のパターニングの中心位置が多少ずれた場合でも、溶液滴の滴下位置がずれる恐れがない。
第3の実施形態によれば、液滴噴射装置2は、第1の実施形態と同様、溶液保持容器22の上面開口部22b側から紫外線照射することにより、溶液と接触する溶液保持容器22、圧力室210の内面、及びノズル241の内面を紫外線照射洗浄することが可能である。そのため、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面を短時間で洗浄できるため、生産性の高い液滴噴射装置2を提供することが可能である。
更に第3の実施形態の液滴噴射装置2では、保護膜150に形成する溶液通過部242の直径d4を振動板120のノズル241の直径d3より大きく形成する。ノズル241と溶液通過部242のパターニングの中心位置がずれたとしても、ノズル241から吐出する溶液滴は、溶液通過部242の影響を受けない。したがって、ノズル241からの溶液滴は、滴下位置精度を良好に保持する。
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態を示す。本実施形態は第3の実施形態(図9参照)の液滴噴射装置2の変形例である。なお、第4の実施形態にあって、第3の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図10は、第4の実施形態を示す。本実施形態は第3の実施形態(図9参照)の液滴噴射装置2の変形例である。なお、第4の実施形態にあって、第3の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第3の実施形態では、保護膜150に形成する溶液通過部242は、内周面の直径d4を軸方向に同径に形成した円筒形状の構成を示した。これに替えて第4の実施形態の液滴噴射装置2では、保護膜150に形成する溶液通過部242の内周面に外側(液滴の噴射方向)に向かうにしたがって直径が大きくなる状態に傾斜させたテーパー面242aを形成する。
図10に示すように、液滴噴射装置2のノズルプレート100は、振動板120上に、直径d3のノズル241及び駆動素子130を備え、更に保護膜150及び撥液膜160を備える。保護膜150の材料はネガ型感光性ポリイミドとする。保護膜150は、ノズル241と同軸であって、振動板120側の端面部分の開口部がノズル241の直径d3より大きい直径d5の溶液通過部242を備える。この溶液通過部242の断面形状は、台形状になっている。
例えば、ノズル241の直径d3を20μmとし、溶液通過部242の振動板120側の端面部分の開口部の直径d5を30μmとする。溶液通過部242は、撥液膜160側に向かって広くなる断面が台形状に形成される。撥液膜160は、保護膜150の溶液通過部242のテーパー面242aの表面を覆い、ノズル241に連通する被覆部243aを有する。溶液通過部242は、撥液膜160の被覆部243aを介してノズル241と連通する。
液滴噴射装置2の製造時、ノズル241を有する振動板120の駆動素子130を形成した上にネガ型感光性ポリイミド膜を、例えば膜厚4μmに成膜する。ネガ型感光性ポリイミド膜をパターニングして溶液通過部242を備える保護膜150を形成する。保護膜150は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。
保護膜150上に撥液膜160の材料であるシリコーン系樹脂膜を成膜する。成膜したシリコーン系樹脂膜をパターニングして、撥液膜160を形成する。撥液膜160は、ノズル241の内周面に付着することなく、保護膜150の表面を覆う。下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cは露出される。
一般にネガ型感光性ポリイミド膜のパターニング時、露光々は、エッチングマスクに対して極力垂直方向に照射される。しかしながら、エッチングマスクを通過後、露光々はネガ型感光性ポリイミド膜内で平面方向に広がる。露光々がネガ型感光性ポリイミド膜内で平面方向に広がると、ネガ型感光性ポリイミド膜の膜厚が厚い場合は、エッチング面が傾斜する恐れがある。
溶液通過部242の断面形状を、撥液膜160側に広くなる断面が台形状とし、更に溶液通過部242の振動板120側の直径d5をノズル241の直径d3より大きくする。溶液通過部242のパターニング時にエッチング面が傾斜した場合でも、溶液通過部242の開口を広くして、ノズル241から吐出した溶液滴の滴下位置が溶液通過部242の影響によりずれるのを防止する。
第4の実施形態によれば、液滴噴射装置2は、第3の実施形態と同様、溶液保持容器22の上面開口部22b側から紫外線照射することにより、溶液保持容器22、圧力室210の内面、及びノズル241の内面を紫外線照射洗浄することが可能である。そのため、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面を短時間で洗浄できるため、生産性の高い液滴噴射装置2を提供することが可能である。
更に第4の実施形態の液滴噴射装置2は、保護膜150に形成する溶液通過部242を、断面形状が、撥液膜160側に広くなる台形状に形成する。溶液通過部242の振動板120側の直径d5をノズル241の直径d3より大きく形成する。パターニング時に、ノズル241と溶液通過部242のパターニングの中心位置が多少ずれた場合でも、ノズル241から吐出する溶液滴は、溶液通過部242の影響を受けない。ノズル241からの溶液滴は、滴下位置精度を良好に保持する。
以上説明した実施形態では、駆動部である駆動素子130を円形としたが、駆動部の形状は限定されない。駆動部の形状は、例えばひし形或いは楕円等であっても良い。また圧力室210の形状も円形に限らず、ひし形或いは楕円形、更には矩形等であっても良い。
また、実施形態では、駆動素子130の中心にノズル110を配置したが、圧力室210の溶液を吐出可能であれば、ノズル110の位置は限定されない。例えばノズル110を、駆動素子130の領域内ではなく、駆動素子130の外側に形成しても良い。ノズル110を駆動素子130の外側に配置した場合には、駆動素子130の複数の膜材料を貫通してノズル110或いはノズル110に連通する溶液通過部141等をパターニングする必要がない。駆動素子130の複数の膜材料は、ノズル110に対応する位置の開口パターニングが不要であり、振動板120と、保護膜150をパターニングするのみで、ノズル110及び溶液通過部141等を形成でき、パターニングが容易となる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、液滴噴射装置2は、溶液保持容器22側から紫外線照射することにより、溶液保持容器22、圧力室210の内面、及びノズル110の内面を紫外線照射洗浄することが可能である。そのため、溶液と接触する液滴噴射装置2の内面を短時間で洗浄できるため、生産性の高い液滴噴射装置2を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…滴下装置、2…液滴噴射装置、3…基台、4…マイクロプレート、4a…プレート本体、4b…ウエル、5…液滴噴射装置装着モジュール、6a…X方向ガイドレール、6b…X方向ガイドレール、7a…固定台、7b…固定台、8…Y方向ガイドレール、9…X方向移動台、10…Y方向移動台、21…ベース部材、21a…凹陥部、21b…凹陥部、21c…制御信号入力端子部開口、21d…液滴噴射アレイ部開口、22…溶液保持容器、22a…開口部、22b…上面開口部、23…電装基板、24…電装基板配線、25…制御信号入力端子、26…電極端子接続部、27…液滴噴射アレイ、100…ノズルプレート、110…ノズル、120…振動板、130…駆動素子、131…下部電極、131a…電極部、131b…配線部、131c…端子部、132…圧電体膜、133…上部電極、133a…電極部、133b…配線部、133c…端子部、140…絶縁膜、140a…コンタクト部、141…溶液通過部、150…保護膜、160…撥液膜、200…圧力室構造体、201…シリコンウエハ、210…圧力室、220…反り低減膜、230…ノズル、231…周孔、241…ノズル、242…溶液通過部、242…テーパー面、242a…溶液通過部、243…被覆部、243a…被覆部、441…溶液通過部。
Claims (5)
- 内部に圧力室が形成された基板と、
前記圧力室に連通し、前記圧力室内の溶液を吐出するノズルと、
前記圧力室内の圧力を変化させ、前記圧力室内の溶液を前記ノズルから吐出させるアクチュエータと、
上面に溶液を受ける溶液受け口、下面に前記圧力室内に連通する溶液出口をそれぞれ有し、前記基板の上に積層される溶液保持容器と、を有し、
前記溶液受け口は前記溶液出口より大きく、前記溶液出口は前記圧力室の開口より大きい液滴噴射装置。 - 前記溶液保持容器から前記圧力室内を経て前記ノズルから液体を吐出させる液体流路全体を光照射可能にした請求項1記載の液滴噴射装置。
- 前記基板は、前記圧力室が複数形成されており、
前記溶液出口は、複数の前記圧力室に連通されている請求項1または2記載の液滴噴射装置。 - 前記アクチュエータは、
前記圧力室に積層された振動板と、
前記振動板の前記圧力室と反対側の面に形成される下部電極と、
前記下部電極に接して形成される圧電部材と、
前記圧電部材に接して形成される上部電極と、
前記上部電極の前記圧力室と反対側に形成される保護膜と
を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液滴噴射装置。 - 前記ノズルは、前記アクチュエータに形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液滴噴射装置。
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