JP2017015205A - 断熱材およびその製造方法、その断熱材を使用した電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維にシリカエアロゲルを担持させた断熱材において、熱伝導率を悪化させないで、断熱材表面において不織布の開口部に存在しているシリカエアロゲル片が脱離・破壊し、大量のシリカエアロゲル微粉が電子機器内に飛散することを抑制できる断熱材を提供する。
【解決手段】繊維11にシリカエアロゲル12を担持させた断熱材10の少なくとも片側の表面に、熱融着した空隙率が65%以下、最大開口径が100μm未満である融着層14を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、断熱材とその製造方法とその断熱材を使用した電子機器に関するものである。特に、放熱材と積層される断熱材とその製造と、その断熱材を用いた電子機器に関するものである。
近年、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどの電子機器の高性能化とともに発熱部品からの発熱密度が急激に増加しており、これらの電子機器における熱拡散技術が必須となってきている。
例えば、モバイル機器の表示素子においては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが使用されているが、これらの表示素子は熱に弱い。発熱部品からの発熱がこれら表示素子に伝わると、ディスプレイの輝度ムラや寿命低下の要因となる。このため、モバイル機器の高性能化と小型・薄型化を両立させるためには、表示素子への伝熱を効果的に低減させる必要がある。
従って、今後益々機器の小型化やモバイル化が進んでいく状況において、機器表面の温度を1℃でも低く抑えることが最重要の課題である。
このような中で、機器表面の温度上昇を防ぐ方法として、狭いスペースにおいても十分な断熱効果を発揮する断熱材のシリカエアロゲルシートと、発熱部品から筐体への伝熱を効果的に低減する放熱材のグラファイトシートとを、積層した複合シートを機器筐体内部に設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
グラファイトシートは、厚み方向の熱伝導率よりも面内の熱伝度率が高く、10倍以上の異方性を持つため、発熱部品からの発熱を面内に散らすことができる。また、シリカエアロゲルシートは、不織布にナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルを坦持させたものである。
シリカエアロゲルとは、図6に示すように、1nm程度の径をもつシリカ1次粒子51が集合して形成された10nm前後の径を持つシリカ2次粒子52が、10〜60nm程度の粒子間距離の空隙53をもつ網目構造の集合体である。
この粒子間距離が空気(窒素分子)の平均自由工程以下であるため、熱伝導率は0.015〜0.024W/mKと非常に低くなり、常温の静止空気の熱伝導率である0.026W/mK以下にすることができる。従って、熱伝導率の低いエアロゲルシートを積層することにより、グラファイトシートで面内に散らした熱が筐体に伝わるのを抑制することができる。
しかしながら、不織布にナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルを坦持させたシリカエアロゲルシートは、シリカエアロゲルのシリカ2次粒子52同士の結合力が小さく極めて脆弱であるため、外部から応力が加わると、シリカエアロゲルシート表面の不織布の開口部に存在している100μm〜200μm角のシリカエアロゲル片が電子機器内に脱離する。
さらに、電子機器内に脱離したシリカエアロゲル片は、外部からの応力を緩和する不織布に坦持されていない状態となるため、粉砕されて大量のシリカ粒子の微粉となり、電子機器内に飛散し、接触不良等の不具合を引き起こす。
一方で、電子機器内においてシリカ粒子の微粉が飛散するのを防止するため、放熱材と断熱材をラミネートした状態で電子機器内に配置することも出来る。しかし、ラミネートの製造工程において、エアロゲルシート表面の不織布の開口部に存在しているシリカエアロゲル片が脱離・粉砕されて大量のシリカ粒子の微粉が工場内に飛散すること、ラミネート材を介することにより温度上昇の抑制の効果が減少すること、ラミネート材の種類により使用温度域が制限されることなどの問題がある。
従って、エアロゲルシートの少なくとも片面、つまり放熱材と接していない方の表面において、不織布の開口部に存在しているシリカエアロゲル片が、外部応力が加わった際に電子機器内に脱離するのを抑制することが必要である。
上記課題を解決する方法として、不織布にシリカエアロゲルを担持させた断熱材の表面に、コロイダルアルミナまたはヒュームドアルミナの水分散液に界面活性剤及び親水性有機溶媒の少なくとも1種を添加してなる塗布液を塗布・乾燥することにより、断熱材をアルミナからなるコーティング層で被覆する例も示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2では、シリカエアロゲルを繊維に担持させた断熱材の表面に、塗布液を塗布・乾燥して、アルミナからなるコーティング層を設ける。このことにより、エアロゲルシート表面において、不織布の開口部に存在しているシリカエアロゲル片は、脱離し、電子機器内にシリカ微粒子が飛散することを抑制することができる。
特開2015−84402号公報 特開2011−162902号公報
しかしながら、特許文献2では、断熱材の表面に、アルミナからなるコーティング層を設けるために、断熱材への濡れ性改善を目的して添加した界面活性剤入りの塗布液を塗布すると、表面張力の大きい水がシリカエアロゲルの細孔内に浸透する。
その後の乾燥工程において細孔内の水を揮発させる際に、シリカエアロゲル骨格の収縮を促進する毛管力が働き、収縮してしまう。このことにより細孔を潰してしまう為、固体熱伝導率が高くなり、熱伝導率が悪化することになる。
そこで、本発明では、上記課題に鑑み、シリカエアロゲルの構造を保持して熱伝導率を悪化させないようにしながら、断熱材表面において不織布の開口部に存在しているシリカエアロゲル片が脱離・破壊し、大量のシリカエアロゲル微粉が電子機器内に飛散することを抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、繊維同士が融着された融着層と、融着層と積層され、繊維とシリカエアロゲルを含む複合層と、を含み、融着層の最大開口径が100μm未満である断熱材を用いる。
繊維にシリカエアロゲルを含浸させる含浸工程と、繊維の内、シリカエアロゲルを含有率が5%以下の繊維部分の表面を、繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱して融着させる融着工程と、を含む断熱材の製造方法を用いる。
上記断熱材が放熱材とともに、発熱箇所と筐体の間に配置されている電子機器を用いる。
以上のように、本願発明の断熱材およびその製造方法によれば、シリカエアロゲルの構造とそれに紐づく熱伝導率を保持したまま、断熱材の表面付近のシリカエアロゲル片が脱離・破壊するのを抑制することができる。結果、熱伝導率が低くかつシリカ微粉の脱離量を大幅に抑制できる断熱材を実現できる。
実施の形態の断熱材の図 スマートフォンの断面図 (a)〜(b)不織布を用いて作製した断熱材の表層を示すSEM図 融着層の平面図 (a)実施の形態の断熱材の含浸工程を説明する図、(b)実施の形態の断熱材の表面の熱融着させる部分以外の繊維がゾル液で含浸された繊維を示す図、(c)実施の形態の断熱材の表面の熱融着させる部分以外の繊維がシリカエアロゲルで充填された繊維を示す図、(d)実施の形態の断熱材の表面の熱融着された融着層とシリカエアロゲルで充填された融着層からなる断熱材を示す図、(e)〜(g)(d)の変形例を示す断面図 シリカエアロゲルの一部を拡大した模式図
以下に、実施の形態について、図を参照しながら説明する。
(実施の形態)
<断熱材10の構成>
図1に実施の形態の断熱材10の断面図を示す。図1において、断熱材10は、繊維11にシリカエアロゲル12を坦持させた複合層13と、複合層13の少なくとも片側の表面に繊維11を熱融着した融着層14と、を有する。
<断熱材10の熱伝導率>
この実施の形態では、携帯機器などのスペースが限られた空間に用いる断熱材10を目的としている。断熱材10の電子機器への適用例を説明する為、スマートフォンの断面図を図2に示す。筐体31の間に、液晶パネル32、基板33とそれに設置されたCPU34およびIC部品35、CPU34に接触して配置されるグラファイトシート36が配置されている。
断熱材10を挿入するのは、グラファイトシート36と筐体31の間、またはIC部品35と筐体31の間であり、その隙間の厚みは0.5mm以下が求められている。
0.5mm以下のスペースで断熱材10を使用する場合には、断熱材10の熱伝導率は好ましくは0.01〜0.05W/m・Kの範囲内が良い。
熱伝導率が0.05W/m・Kより大きくなると、厚さ方向の断熱効果が低下し、必要な断熱効果を得る為に断熱材10の厚みを0.5mmより厚くしなければならない為である。
また、断熱材10は、繊維11の空隙をナノサイズの多孔質を有するシリカエアロゲル12を担持させたものである。シリカエアロゲル12単体の熱伝導率は、0.01W/m・K〜0.015W/m・Kである。このため、断熱材10の熱伝導率は、少なくとも0.01mW/m・K以上になる。
また、0.3mm以下のスペースで断熱材10を使用する場合には、上記と同じ理由で、断熱材10の熱伝導率は、0.01〜0.03mW/m・Kがよい。
断熱材10の熱伝導率が0.03W/m・Kより大きくなると、厚さ方向の断熱効果が低下し、必要な断熱効果を得る為に断熱材10の厚みを0.3mmより厚くしなければならない為である。
<繊維11>
繊維11の繊維径は、0.1〜30μmであることが望ましい。
繊維11の繊維径が30μmより大きくなると、繊維11を通じて熱が伝達しやすくなるため、熱伝導率が上昇し、断熱性が悪化してしまうためである。
また、繊維11の繊維径が0.1μmより小さくなると、断熱材に外力が付加された際に、シリカエアロゲル12に応力が付加するのを緩和することが出来ず、シリカエアロゲル12が破壊されやすくなる。
また、繊維11の嵩密度は0.05(下限値追記)〜0.3g/mであることが望ましい。
繊維11の嵩密度が0.3g/mより大きくなると、繊維11間に充填できるシリカエアロゲル12が少なくなるため、熱伝導率が上昇し、断熱性が悪化してしまうためである。
また、繊維11の嵩密度が0.05g/mより小さくなると、断熱材に外力が付加された際に、シリカエアロゲル12に応力が付加するのを緩和することが出来ず、シリカエアロゲル12が破壊されやすくなる。
さらに、繊維11の材質としては、無機繊維系のグラスウールやロックウール、天然系の羊毛断熱材やセルロース断熱材、発泡セラミックス、炭化発泡コルク、樹脂系断熱材としてのウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォームなどを利用することができる。これらの中でも、放熱材であるグラファイト層との良好な接着性を考慮すれば、樹脂系断熱材がより好ましい。
<シリカエアロゲル12>
シリカエアロゲル12は、背景技術の図6に示したように、1nm程度の径をもつシリカ1次粒子51が集合して形成された10nm前後の径を持つシリカ2次粒子52が、10〜60nm程度の粒子間距離の空隙53をもつ網目構造の集合体である。
シリカエアロゲル12は、水ガラスやテトラメトキシシランのような金属アルコキシドをゲル原料として、水やアルコールなどの溶媒と必要に応じて触媒を混合することで、溶媒中でゲル原料と反応させ湿潤ゲルを形成し、内部の溶媒を乾燥させたものである。
しかしながら、湿潤ゲルを普通に熱風乾燥させたものは、溶媒が乾燥するときの表面張力により、収縮してしまい空隙53を潰してしまい、断熱材として機能しない。
従って、溶媒が乾燥するときに表面張力がほとんど働かないように、超臨界乾燥、あるいは湿潤ゲルの表面のシラノール基を、シリル化剤を用いてシリル化することにより疎水化した後に熱風乾燥することが必要になる。
<複合層13>
繊維11にシリカエアロゲル12を坦持させた複合層13は、繊維11の隙間の空間にシリカエアロゲル12を充填することにより坦持させたものである。
ゲル原料を繊維11に含浸した後、ゲル原料を反応させて湿潤ゲルを形成し、湿潤ゲル表面を疎水化、熱風乾燥することにより得られる。
<融着層14>
繊維11を熱融着した融着層14は、シリカエアロゲル12は含まず、繊維11を熱で溶かした層である。繊維11は、糸状の繊維が、絡まりあっている。繊維同士の間は空間である。
融着層14の製法は、後で説明している。融着層14中の繊維11は、複合層13中の繊維11と同じものを、熱で融着させている。融着層14は、複合層13で発生するシリカエアロゲル12の子片を外部へ出さないため、繊維11において、最大の開口径は100μm未満であることが望ましい。つまり、開口径100μm以上の粒子は、その開口でトラップされる。以下に、開口径が100μm未満の理由を説明する。
(1)最大の開口径の定義
融着層14の開口径とは、融着層14を貫通する貫通する通路の断面で、円近似した時の直径である。最大の開口径とは、全通路の全断面の中で、最大の円を描いた時の直径である。図4は、融着層14の断面図である。最も大きい円は、円61である。この円である開口径は、開口径62である。この時、開口径62以上の粒子は、融着層14を通過できないことを意味する。
(2)実施例
図3(a)、図3(b)に、従来の断熱材の表層のSEM写真を示す。図3(a)は、繊維径10μm、嵩密度0.098g/cmの不織布を用いて作製した断熱材の表層である。図3(b)は、繊維径10μm、嵩密度0.23g/cmの不織布を用いて作製した断熱材の表層である。
また、図3(a)、図3(b)において、白色で記載された矢印と数値が、ひび割れたシリカエアロゲル12片のサイズを示している。繊維径が0.1〜30μm、嵩密度0.3g/m以下の繊維を使用した場合、図3(a)および図3(b)に示すように、断熱材10の表面の繊維11の開口部にシリカエアロゲル12の2次粒子52(図5)同士の結合が破壊されて出来た100μm〜200μm角のひび割れたシリカエアロゲル12片が存在している。
その為、断熱材10表面に外部から応力が付加された場合、この断熱材10の表面の繊維の開口部に存在する100μm〜200μm角のひび割れたシリカエアロゲル12片が電子機器内に脱離する。さらには、脱離したシリカエアロゲル12の片は、外部からの応力を緩和する繊維11に坦持されていない状態で落下するため破壊され易くなり、大量の微細シリカ粉が飛散する。
(3)結果
従って、融着層14中の繊維11の最大の開口径は、100μm未満にする。このことで、上記ひび割れたシリカエアロゲル12の片を融着層14中に保持できる。断熱材10の外部へシリカエアロゲル12の片を放出しない。シリカエアロゲル12の片の外部への影響を防止できる。
この時、融着層14中繊維の空隙率は、上記繊維径の条件下、最大の開口径を100μm未満にするには、計算上、65%以下にする必要がある。
ここで、空隙率とは、熱融着した融着層14において、融着層の中で空間が占める体積割合、つまり融着層の中で繊維以外が占める体積割合を示す。
さらに、熱融着した融着層14に付着しているシリカエアロゲル12の体積は、融着層14の体積の5%以下であることが望ましい。これは、融着層14に付着しているシリカエアロゲル12の体積が5%より大きくなると、繊維11を加熱し熱融着させる工程において、シリカエアロゲル12が伝熱を阻害し、繊維11を均一に熱融着させにくくなるためである。さらには、外部から応力が付加された際に、最表面である熱融着した融着層14にシリカエアロゲル12が存在すると、電子機器内に脱離し、破壊して、シリカ微粉が飛散する。
<断熱材10の製造方法>
断熱材10の製造方法の一例を図5(a)〜図5(d)に示す。図5(a)〜図5(c)が断熱材10の少なくとも片側の表面にシリカエアロゲル12の体積が繊維の体積の5%以下の融着層41を形成する工程である。図5(d)は、融着層41の表面を繊維のガラス点移転温度以上、融点以下の温度で加熱して融着させる工程である。
まず、はじめに、図5(a)に示すように、必要なゾル液42を容器に入れ、その中に不織布繊維(材質PET、厚み仕様90μm(繊維11、目付12g/m、寸法12cm□)を浸漬させる。このことにより、ゾル液42を繊維11内に含浸させる。結果、図5(b)に示すように、断熱材10の表面の熱融着させる部分以外の繊維11がゾル液42で含浸された繊維11を形成する。
ここで、ゾル液42は、高モル珪酸ソーダ(珪酸水溶液、Si濃度14%)に触媒として濃塩酸(12N)を1.4wt%添加し攪拌することにより調合する。
次に、室温23℃で約20分間放置し、ゾルをゲル化させる。
次に、容器に、乾燥防止のために純水を注ぎ、80℃の恒温槽に12時間入れて、シラノールの脱水縮合反応を促進することにより、シリカ粒子を成長させ、多孔質構造を形成する。
次に、ゲルシートを塩酸(6〜12規定)に浸漬後、常温23℃で1時間放置してゲルシートの中に塩酸を取り込む。
次に、ゲルシートを、例えばシリル化剤であるオクタメチルトリシロキサンと2−プロパノール(IPA)の混合液に浸漬させて、55℃の恒温槽に入れて2時間反応さをせる。トリメチルシロキサン結合が形成され始めると、ゲルシートから塩酸が排出され、上層がトリシロキサン、下層が塩酸水に2液分離する。
次に、ゲルシートを150度の恒温槽に移して2時間乾燥させることにより、図5(c)に示すように、繊維11にナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲル12を坦持させた複合層13と、その表面にシリカエアロゲル12を坦持させていない融着層41と、を有するシートが出来る。
なお、別の方法もある。図5(a)において、繊維全体にゾル液を含浸させた後、同様の工程を経て、従来の断熱材である繊維11に、ナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲル12を坦持させた層のみのシートを作製する。その後、粘着テープで繊維11の表面付近のシリカエアロゲル12を剥離する方法である。
次に、本実施の形態の特徴とする所は、図5(c)に示すシートの表面のシリカエアロゲル12を坦持させていない融着層41の表面を、融着することである。
つまり、ヒートガン等による熱風を用いて、シリカエアロゲル12を破壊しないように、繊維11の表面を熱処理する。非接触で繊維11のガラス転移点以上、融点以下の温度で加熱し、繊維11を融着することにより、図5(d)に示すような空隙率が65%以下、平均開口径が100μm未満である熱融着した融着層14を形成することができる。
それにより、シリカエアロゲル12の構造を保持し、熱伝導率を悪化させない。かつ、断熱材10の表面において、繊維11の開口部に存在しているシリカエアロゲル12の片が脱離・破壊し、大量のシリカエアロゲル12の微粉が電子機器内に飛散することを抑制することができる。
さらには、開放系で、加熱(熱処理)することにより、シリカエアロゲル12に存在する残存シロキサン(シリル化剤と塩酸を反応させる工程において副生成物として生成する環状・鎖状シロキサン)の量を大幅に低減させ、電子機器内の接点障害を低減することも可能になる。
図5(e)から図5(g)は、図5(d)の構造の変形例である。
図5(e)では、融着層14が複合層13の両面にある。複合層13の両面に融着層14があるので、さらに、シリカエアロゲル12の片の脱離がない。作製は、上記に示したように粘着テープで繊維11の表面付近のシリカエアロゲル12を剥離する方法を用いることができる。
図5(f)では、融着層14が複合層13の両面と側面にある。複合層13の全表面が融着層14で覆われており、さらに、シリカエアロゲル12の片の脱離がない。製造方法は、上記の製造方法組み合わせでできる。
図5(g)では、融着層が2種類ある。融着層は、内側の第1融着層114と、外側の第2融着層115である。第2融着層115は、第1融着層114より、空隙率、平均開口径が小さい。外へ向けて、段階的に空隙率、平均開口径を小さくしており、効率的に、シリカエアロゲル12の片の脱離を防ぐ。段階的でなく、傾斜的に、空隙率、平均開口径を小さくしてもよい。融着層が薄くとも、シリカエアロゲル12の片の脱離を防ぐことができる。製造方法は、上記熱処理条件を変化させる方法を用いることができる。
(なお書き)
上記実施の形態、実施例は、それぞれ組み合わせることができる。
本発明の製造方法によって製造される断熱材は、熱伝導率を保持したまま表面のシリカゲル片の脱離を抑制できるものであって、広く電子機器内に利用される。情報機器、携帯電話、ディスプレイなど、熱に関わる製品へ応用される。
10 断熱材
11 繊維
12 シリカエアロゲル
13 複合層
14 融着層
31 筐体
32 液晶パネル
33 基板
34 CPU
35 IC部品
36 グラファイトシート
41 融着層
42 ゾル液
51 シリカ1次粒子
52 シリカ2次粒子
53 空隙
61 円
62 開口径
114 第1融着層
115 第2融着層

Claims (8)

  1. 繊維同士が融着された融着層と、
    前記融着層と積層され、繊維とシリカエアロゲルを含む複合層と、を含み、
    前記融着層の最大開口径が100μm未満である断熱材。
  2. 前記融着層に、前記シリカエアロゲルが付着し、
    前記シリカエアロゲルの密度は、前記融着層の体積の5体積%以下である請求項1に記載の断熱材。
  3. 前記複合層の両面に前記融着層がある請求項1または2記載の断熱材。
  4. 前記融着層は、複数あり、各層で、空隙率と平均開口径とが異なる請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱材。
  5. 前記繊維の繊維径は、0.1〜30μmであり、
    前記繊維の嵩密度は、0.05〜0.3g/m以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱材。
  6. 前記断熱材の熱伝導率が、0.01〜0.1W/m・Kである請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱材。
  7. 繊維にシリカエアロゲルを含浸させる含浸工程と、
    前記繊維の内、前記シリカエアロゲルを含有率が5%以下の繊維部分の表面を、前記繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱して融着させる融着工程と、
    を含む断熱材の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに1項に記載の前記断熱材が放熱材とともに、
    発熱箇所と筐体の間に配置されている電子機器。






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