以下、添付図面を参照して、本願の開示する衛生洗浄装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.衛生洗浄装置の構成>
図1は、実施形態に係る衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を模式的に示す斜視図である。なお、図1には、説明を分かり易くするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
図1に示すように、トイレ装置1は、洋式大便器(以下「便器」と記載する)10と、衛生洗浄装置20とを備え、トイレ室内に設置される。便器10は、貯水タンク11に貯留された水で洗浄を行うロータンク式であるが、これに限定されるものではなく、たとえばフラッシュバルブ式であってもよい。また、図1に示す例では、床置き式の便器10を示したが、これに限られず、壁掛け式などであってもよい。
衛生洗浄装置20は、便器10の上部に設けられる。衛生洗浄装置20は、本体部30と、便蓋300と、図示しない便座とを備える。便蓋300および便座はともに、開閉可能なように本体部30に取り付けられる。
本体部30は、ケース31と、ノズルユニット40とを備える。ケース31は、ノズルユニット40などを収納する。かかるケース31の詳しい構成については後に説明する。
図2は、ノズルユニット40を含む衛生洗浄装置20の構成の一例を示す説明図である。図2に示すように、ノズルユニット40は、水を使用者の局部等へ吐出する吐出ノズル41を備える。なお、本明細書において、「水」なる表現は、必ずしも冷水の意味ではなく、温水を含む意味で使用する場合がある。
吐出ノズル41は、先端に吐出孔42が開口される。また、吐出ノズル41は、ケース31(図1参照)に対して進退可能に構成される。詳しくは、たとえば、吐出ノズル41には、図示しないモータなどの駆動源が接続される。吐出ノズル41は、駆動源の駆動により、便器10のボウル12内へ進出した位置と、ケース31内に後退して格納される位置との間で進退させられる。なお、吐出ノズル41は、進出した位置で水を使用者の身体へ吐出させて局部を洗浄する。
衛生洗浄装置20はさらに、給水部50と、制御部200と、着座センサ210と、操作部220とを備える。なお、上記した給水部50、制御部200および着座センサ210は、本体部30に設けられるものとする。
給水部50は、給水源である水道管Aからの水をノズルユニット40へ供給する。具体的には、給水部50は、第1流路60と、貯湯式熱交換器70(以下「熱交換器70」と記載する)と、第2流路100とを備える。
第1流路60は、水道管Aから熱交換器70までの流路であり、第2流路100は、熱交換器70からノズルユニット40までの流路である。熱交換器70は、タンク80を備え、水道管Aから第1流路60を介して供給された水を貯留する。タンク80内では、貯留された水が加熱されて温水が生成され、生成された温水が第2流路100を介してノズルユニット40へ供給される。
ところで、衛生洗浄装置20には、汚水が第1流路60などを逆流して水道管Aを汚染することを防止するために逆流防止機構を付ける必要がある。逆流防止機構は、水道管Aからノズルユニット40までの流路の途中に大気開放した空間(エアギャップ)を形成して流路を分断する機構である。
従来技術にあっては、熱交換器のタンクの上流側に開放式タンクを別に設け、かかる開放式タンクに、垂直方向に水を吐出する垂直式逆流防止機構を設けていた。そして、開放式タンクに貯留された水は、開放式タンクの下流側に設けられたポンプで熱交換器のタンクへ圧送された後、ノズルユニットへ供給されていた。
しかしながら、上記した垂直式逆流防止機構は、空間を確保するために高さ方向に大きいことから、衛生洗浄装置の小型化を図る観点からは改善の余地があった。また、従来技術における衛生洗浄装置にあっては、開放式タンクの設置スペースの分だけ装置が大型化するおそれがあった。
さらに、上記した開放式タンクは、ポンプの空転を防止するために常時満水の状態とされるとともに、開放式タンクにおける所定の水位を超えた余剰水は便器のボウルへ捨てられる構成である。そのため、従来技術には、節水の観点からも改善の余地があった。
そこで、本実施形態に係る衛生洗浄装置20においては、小型化を図るとともに、節水することができるような構成とした。
また、上記したように、本実施形態に係る衛生洗浄装置20のタンク80内では、貯留された水が加熱されて温水が生成される。ここで、貯留された水、すなわち、水道管Aから供給された水が、たとえばカルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含有する硬水である場合、加熱によってスケールが発生しやすく、タンク80にスケールが溜まることがあった。かかるスケールが、タンク80の下流側の第2流路100や吐出ノズル41などへ流れると、流路詰まりを引き起こす可能性があった。
そこで、本実施形態に係る衛生洗浄装置20においては、タンク80内のスケールを容易に排出することができるような構成とした。
また、衛生洗浄装置20にあっては、タンク80で生成された温水が効率良く取り出されることが好ましい。すなわち、たとえば、逆流防止機構をタンク80に設ける構成とした場合に、タンク80内の温水が使用者の洗浄に使われると、タンク80内の水位が徐々に低下して水道管Aから冷水が補給される。
そこで、本実施形態に係る衛生洗浄装置20においては、加熱された水をタンク80から効率良く取り出すことができるような構成とした。以下、衛生洗浄装置20の構成について、詳しく説明する。
図2に示すように、第1流路60には、上流側から順に、水道用ストレーナ61、電磁弁62および定流量弁63が設けられる。水道用ストレーナ61は、水道管Aから供給される水に混入したゴミなどの異物を除去する。電磁弁62は、非通電時に閉状態となるノーマルクローズ式のバルブであり、制御部200からの制御信号に応じて第1流路60を開閉する。定流量弁63は、水道管Aから流入された水を、所定の流量以下に調整して流出させる。
熱交換器70は、上記したタンク80と、タンク80の上流側に設けられる逆流防止機構90とを備える。かかるタンク80と逆流防止機構90とは、一体的に形成されるが、これについては後述する。
タンク80には、発熱体71と、フロートスイッチ72と、サーミスタ73と、バイメタル74とが設けられる。発熱体71は、タンク80内部の底面80b付近に配置される。発熱体71は、制御部200からの制御信号によって通電されて発熱し、タンク80に貯留された水を加熱する。なお、発熱体71としては、たとえばシーズヒータを用いることができるが、これに限定されるものではなく、たとえばセラミックヒータなどその他の種類の発熱装置であってもよい。
フロートスイッチ72は、タンク80の上方付近の所定の位置に配置され、タンク80内の水位が所定の位置以上に上昇した場合に、図示しないフロートが浮き上がって所定の信号を出力する。すなわち、フロートスイッチ72は、タンク80内に貯留された水の水位を検知する機能を有する。なお、本実施形態においては、タンク80内の水位が所定の位置以上の場合にON信号を出力するフロートスイッチ72を用いるが、かかるフロートスイッチ72については、図14を用いて後述することとする。
サーミスタ73およびバイメタル74は、タンク80の内部に取り付けられる。かかるサーミスタ73およびバイメタル74の取り付け位置については、後に説明する。
サーミスタ73は、タンク80内の水の温度を検出し、検出された温度を示す信号を出力する。バイメタル74は、発熱体71への通電回路(図示せず)に介挿される。そして、バイメタル74は、タンク80内の水が所定の温度を超える場合に通電回路における接点を開放して、発熱体71への通電を遮断する。なお、所定の温度は、任意に設定可能であるが、たとえば、タンク内の水の過度な温度上昇を検出可能な値に設定されることが好ましい。
これにより、バイメタル74は、タンク80内の水が発熱体71によって過度に加熱されることを防止する安全装置として機能する。なお、バイメタル74にあっては、通電を遮断した後にタンク80内の水が所定の温度を下回った場合に、上記した接点を自動復帰して閉じることで、発熱体71による加熱を再開するように構成してもよい。
衛生洗浄装置20において、タンク80と第2流路100との間には、ストレーナ110が介挿される。また、第2流路100には、ポンプ130が設けられる。ストレーナ110は、タンク80からポンプ130へ流出する水を濾過する。具体的には、ストレーナ110は、タンク80から流出する水に含まれるスケールなどの異物を除去する。なお、ストレーナ110は、タンク80に対して着脱可能に構成されるが、これについては後述する。
ポンプ130は、タンク80およびストレーナ110の下流側に設けられる。ポンプ130は、制御部200からの制御信号に応じて駆動し、タンク80に貯留された水を吐出ノズル41へ供給する。
また、第2流路100において、タンク80の下流側、かつ、吐出ノズル41の上流側の位置に、バキュームブレーカ140が接続される。かかるバキュームブレーカ140には、一端が大気開放された大気開放経路141が接続される。このように構成されたバキュームブレーカ140により、たとえば第2流路100に負圧が生じた場合に、吐出ノズル41から熱交換器70等へ逆流が生じることを防止することができる。
また、第2流路100の管径は、吐出ノズル41の吐出孔42の径よりも大きくなるように設定される。このように、タンク80から吐出ノズル41へ至る流路の管径を大きくすることで、スケール詰まりを抑制することができる。
着座センサ210は、たとえばケース31(図1参照)の適宜位置に設けられ、使用者が便座に座ったことを検知する。着座センサ210は、着座が検知された場合、着座を示す所定の信号を出力する。かかる着座センサ210としては、たとえば、投受光式の距離センサを用いることができる。
なお、着座センサ210は、上記した距離センサに限られず、たとえば便座に作用する使用者の荷重を検出する荷重センサなど他の種類のセンサを用いてもよい。また、着座センサ210は、必ずしもケース31に設けられることを要せず、たとえばトイレ室の壁面などに設けられていてもよい。なお、本実施形態においては、使用者の着座が検知された場合、ON信号を出力する着座センサ210を用いるが、かかる着座センサ210については、図14を用いて後述することとする。
操作部220は、人体の洗浄を開始する開始指示や洗浄を停止する停止指示が使用者によって入力される操作ボタンや操作ツマミなどを備え、トイレ室の適宜位置に設けられる。操作部220は、使用者から操作ボタン等を介して入力された開始指示等を示す信号を出力する。なお、操作部220としては、たとえばリモートコントローラを用いることができるが、これに限られず、本体部30に取り付けるものであってもよい。
上記したフロートスイッチ72、サーミスタ73、着座センサ210および操作部220から出力される各種の信号は、制御部200に入力される。制御部200は、衛生洗浄装置20全体を制御し、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などの図示しない演算処理装置や、RAM(Random Access Memory)などの図示しない記憶装置を備える。
制御部200は、入力される各種の信号に基づいて電磁弁62、発熱体71、ポンプ130およびノズルユニット40などを制御する処理を行うが、かかる処理の内容については後に詳説する。なお、図2において、説明していない符号については、他の図面を用いて説明することとし、図2では、かかる他の図面と対応させるため符号を付した。
<2.衛生洗浄装置の具体的な構成>
次いで、上記した衛生洗浄装置20について、図3以降を参照してより詳しく説明する。図3は、衛生洗浄装置20の斜視図である。なお、図3以降において衛生洗浄装置20の構成を示す図は、いずれも模式図である。
図3に示すように、衛生洗浄装置20のケース31は、熱交換器70のタンク80、逆流防止機構90、吐出ノズル41、ポンプ130、および、制御部200などの各種部品を収納する。
詳しくは、ケース31は、ケースプレート31aと、ケースカバー31bとを備える。ケースプレート31a(以下、「プレート31a」という)は、平板状の底面31a1を備え、便器10(図1参照)の上部に載置される。プレート31aは、上面視においてX軸が長手方向、Y軸が短手方向となる形状に形成される。プレート31a上には、タンク80などの各種部品が配置される。
ケースカバー31bは、プレート31aに対して着脱可能に構成され、プレート31aに配置された各種部品の上方を覆うようにして取り付けられる。なお、図3では、理解の便宜のため、ケースカバー31bを想像線で示し、ケース31の内部を透視して示した。
ここで、ケース31内における各種部品の配置位置について説明する。ケース31の中央部分31cには、吐出ノズル41を含むノズルユニット40が配置される。なお、図3では、吐出ノズル41が、円筒状の収納ケース43に収納された状態を示した。
ケース31の内部空間において、タンク80およびポンプ130などは、吐出ノズル41の左側に並べて配置される。なお、本明細書では、「左側」「右側」など方向を表す語句は、便器10に取り付けられた状態の衛生洗浄装置20において、ボウル12側を手前にして上面視したときの「左側」「右側」を意味する。具体的には、X軸負方向を「左側」、X軸正方向を「右側」ということとする。さらには、Y軸負方向を「前方」、Y軸正方向を「後方」ということとする。
また、ケース31内において、吐出ノズル41に対して右側には、制御部200などの電子部品が配置される。このように、ケース31の内部空間を、吐出ノズル41を境界にして左右の領域に分け、一方の領域にタンク80などを含む給水部50が配置され、他方の領域に制御部200などの電子部品が配置される。これにより、たとえば、給水部50で生じる水滴などを電子部品へ飛散しにくくすることができる。
なお、上記した他方の領域には、脱臭ユニットなども配置されるが、図3では図示を省略した。また、図3などに示す各種部品の配置位置は、あくまでも例示であって、限定されるものではない。
<3.タンクおよび逆流防止機構の構成>
次いで、熱交換器70のタンク80および逆流防止機構90の構成について、さらに詳しく説明する。図4は、図3に示す熱交換器70付近を拡大して示す正面図であり、図5は、図3に示す熱交換器70付近を拡大して示す平面図である。なお、図4および図5では、ケースカバー31bをプレート31aから取り外した状態を示した。
図4および図5に示すように、逆流防止機構90は、タンク80の上面に設けられる。詳しくは、逆流防止機構90は、タンク80の右上部分、言い換えれば、タンク80の上面において吐出ノズル41側に設けられる。なお、上記では、逆流防止機構90をタンク80の上面に設けるようにしたが、これに限られず、たとえば逆流防止機構90をタンク80から所定距離離間した上方の位置に設けるようにしてもよい。
図6は、図5のVI−VI線断面図である。なお、図6では、プレート31aの図示を省略した。図6に示すように、逆流防止機構90は、吐出口91と、受水口92と、排水口93とを備える。
図7は、図6に示す逆流防止機構90付近を拡大して示す図である。図7に示すように、吐出口91は、水道管A(図2参照)と連通する第1流路60の終端60aに設けられる。また、吐出口91は、水道管Aから供給された水を水平方向(たとえばX軸正方向)へ向けて吐出する。
なお、図7では、吐出口91から吐出された水を破線の矢印D1で示した。また、本明細書において「水平」や「垂直」などの語句は、必ずしも数学的に厳密な精度を必要とするものではなく実質的な公差や誤差などについては許容されるものである。
受水口92は、大気開放した空間94を介して吐出口91と対向するように配置される開口である。かかる受水口92は、吐出口91から吐出された水を受水する。受水口92で受水された水はタンク80へ流入される。なお、図7に示す例では、受水口92は、開口面が垂直となるように形成されるが、これに限定されるものではなく、たとえば開口面が傾斜するように形成されていてもよい。
このように、本実施形態に係る逆流防止機構90は、大気開放された空間94へ水平方向に水を吐出する水平式逆流防止機構であり、大気開放した空間94を介して流路を分断した部位Bに設けられたエアギャップ94a(図6参照)を有する。
なお、空間94において吐出口91から受水口92までの距離C1は、衛生洗浄装置20が設置される国や場所において定められた規格を満たす値に設定され、たとえば、20mm以上に設定される。
排水口93は、空間94に残留する水を排水する。詳しくは、排水口93は、吐出口91と受水口92との間にある空間94の下方に配置される開口である。そして、図7に一点鎖線の矢印D21で示すように、排水口93には、吐出口91から吐出された水のうちの一部、たとえば、水勢が不足して受水口92に受水されない水、言い換えれば、受水口92に届かずに空間94に残留した水を受けて排水する。
さらに、排水口93には、一点鎖線の矢印D22で示すように、タンク80の中から逆流してきた水を排水する。排水口93に排水された水は、タンク80に形成された排水路85を通って便器10へ排水されるが、これについては後述する。
このように、本実施形態に係る衛生洗浄装置20は、上記した逆流防止機構90を設けることにより、たとえば、タンク80から水道管Aへの逆流を防止することができる。
また、本実施形態では、逆流防止機構90が水平式逆流防止機構であるため、衛生洗浄装置20の小型化を図ることができる。すなわち、たとえば仮に、逆流防止機構90が、垂直方向に水を吐出する垂直式逆流防止機構であった場合、上記した空間94の距離C1を垂直方向に確保することとなる。そのため、垂直式逆流防止機構を用いた場合、空間94の距離C1の分だけ衛生洗浄装置20の高さが大きくなるおそれがある。
本実施形態では、逆流防止機構90が、空間94の距離C1を水平方向に確保する水平式逆流防止機構であるため、高さを抑えることができ、よってタンク80の上部に設けられた場合であっても、衛生洗浄装置20の小型化を図ることができる。
また、上記した逆流防止機構90は、タンク80と一体的に形成されることで、衛生洗浄装置20の小型化をより一層図ることができる。
詳しく説明すると、図6に示すように、タンク80は、側断面視において、内部に水を貯留可能な空間を有する矩形状または略矩形状に形成される。タンク80は、流入口81aと、入水管81と、流出口82bと、出水管82と、排水孔83と、反射部84と、排水路85とを備える。
タンク80の流入口81aは、第1流路60から逆流防止機構90を通って供給された水が流入される。かかる流入口81aは、上記した逆流防止機構90の受水口92である。すなわち、本実施形態では、受水口92が、タンク80の流入口81aを兼ねるようにした。また、受水口92がタンク80の流入口81aを兼ねることで、逆流防止機構90の空間94(エアギャップ94a)もタンク80の上方に形成されるようにした。
このように、逆流防止機構90の一部あるいは全ての構成要素が、タンク80に一体的に形成されることで、たとえば、部品点数を削減することができる。これにより、タンク80の上部に逆流防止機構90を設けた場合であっても、高さを抑えることができ、結果として衛生洗浄装置20をより一層小型化することができる。
また、逆流防止機構90がタンク80に一体的に形成されるため、衛生洗浄装置20を製作する工程において、逆流防止機構90をタンク80に取り付ける工数も削減することが可能となる。
なお、図6では、吐出口91がタンク80に取り付けられる例を示したが、これに限られず、タンク80と一体的に形成されるようにしてもよい。また、上記では、受水口92が流入口81aを兼用するように構成したが、これに限定されるものではなく、流入口81aに別体の受水口92を取り付けるように構成してもよい。
反射部84は、タンク80において、流入口81aに対して吐出口91とは反対側に対向する位置、言い換えれば、受水口92を兼ねる流入口81aを通過した水が当たる位置に形成される。
図7に示すように、反射部84は、吐出口91からの水の吐出方向であるX軸に対して所定の仰角αを有する反射面84aを備える。かかる所定の仰角αは、たとえば、0度より大きく、かつ、90度より小さい値に設定される(0°<α<90°)。従って、矢印D1で示すように、反射部84は、吐出口91から吐出されて受水口92(流入口81a)を通過した水を下向きに反射させる。これにより、受水した水を効率良くタンク80へ導くことができる。
入水管81は、図6によく示すように、流入口81aに連通され、Z軸負方向へ向けて延伸されて形成される。入水管81の出口81bは、流入口81aよりも下方に配置される。具体的には、たとえば、入水管81の出口81bは、タンク80の底面80b付近で、さらには発熱体71の近傍に位置される。なお、図6においては、想像線で示す出口181bも示したが、かかる出口181bについては、後述する変形例で説明する。
ここで、入水管81の形状について図8を参照して説明する。図8は、図5のVIII−VIII線断面図である。図8では、入水管81の縦断面を示している。
図8に示すように、入水管81は、出口81bに近い部位(たとえば、符号81b1で示す部位)の断面積が、遠い部位81a1の断面積以上となるように形成される。なお、図8では、遠い部位81a1の一例として、流入口81a付近の部位を示した。
入水管81にあっては、上方にある流入口81aから下方にある出口81bに向けて水が流れ、かかる水の流れ方向において流路の幅が拡幅するように形成される。すなわち、入水管81は、出口81bに近い部位81b1の流路の幅W81b1が、遠い部位81a1の流路の幅W81a1以上となるように形成される。
これにより、流入する水を、流速を落としつつタンク80内へ導くことができる。なお、図8では、流速の高低を矢印D3,D4の長さで示した。すなわち、図8では、出口81bに近い部位81b1の流速(矢印D4)が、遠い部位81a1の流速(矢印D3)よりも低下していることを示している。
このように、流速が低下した水をタンク80内へ導くことで、たとえば、タンク80内のスケールの浮き上がりを防止することができるとともに、加熱前の水をタンク80の下方へとどめることができる。
図6の説明に戻ると、流出口82bは、タンク80の下方において、Z軸方向(鉛直方向)に沿って穿設された開口であり、タンク80内の水をストレーナ110を介して第2流路100(図2参照)へ流出させる。なお、図6では、流出口82bの中心線を符号82cで示した。
出水管82は、流出口82bに連通されるとともに、Z軸正方向へ向けて延伸されて上向きの入口82aが形成される。このように、出水管82にあっては、入口82aが上向きであるため、たとえば、ケース31の底面80bに蓄積したスケールを入りにくくすることができる。
また、出水管82は、入口82aが入水管81の出口81bよりも所定の距離C2高い位置に配置される。さらに、出水管82は、入口82aが、タンク80において入水管81の出口81bが配置される側面とは反対側の側面付近の上方に位置される。
従って、逆流防止機構90を通過した水は、入水管81に導かれてタンク80の下方へ流入し、発熱体71で加熱される。そして、加熱された水は、矢印D5に示すように、タンク80内で上方へ向けて対流しながら、出水管82の入口82aへ向かって流れ、出水管82を通って流出口82bから流出する。
このように、本実施形態に係る衛生洗浄装置20にあっては、加熱された水が上方へ向けて対流しながら順次、流出口82bから流出するため、加熱される前の水が流出しにくく、よって加熱された水をタンク80から効率良く取り出すことができる。なお、所定の距離C2は、タンク80の容量やポンプ130の性能などに基づいて適宜設定される。
また、本実施形態に係る衛生洗浄装置20にあっては、熱交換器70のタンク80を上記のように構成したことから、従来技術のように逆流防止機構を有する開放式タンクを別に設けて余剰水を捨てるような構成を要せず、よって節水化を図ることができる。
また、図6に示すように、上記したバイメタル74およびサーミスタ73は、出水管82の入口82aよりも低い位置に設けられる。従って、たとえば、吐出ノズル41によって人体の洗浄が行われて、タンク80の水位が低下した場合であっても、バイメタル74等はタンク80の水から露出することはない。これにより、本実施形態にあっては、バイメタル74やサーミスタ73が空気の温度を誤検知することを確実に防止することができる。
排水孔83は、タンク80の側面の下方に設けられ、ストレーナ110によって封止されている。なお、ストレーナ110による封止については後述する。また、図6に示す排水孔83の位置は、例示であって限定されるものではない。
そして、たとえば、タンク80の清掃などを行うために水抜きをする際、排水孔83は、ストレーナ110によって封止されない状態、すなわち開放状態とされ、タンク80に貯留された水を外部へ排出する。
排水孔83は、図6に示すように、タンク80内における開口の少なくとも一部が発熱体71よりも下方に配置される。これにより、本実施形態では、タンク80内のスケールを効率良く排出することができる。
具体的には、たとえば図6に示すように、長尺の円筒状の発熱体71がタンク80の側方から挿入されて配置される場合、排水孔83は、中心線83cが発熱体71の中心線71aよりも下方となるように配置される。ここで、排水孔83の中心線83cとは、タンク80における開口面の中心を通る線である。また、発熱体71の中心線71aとは、たとえば、発熱体71の軸方向に対して垂直な方向の断面の中心を通る線である。
発熱体71は温度が比較的高いため、発熱体71の付近にはスケールが発生しやすい。本実施形態にあっては、上記のように構成することで、タンク80内の水は、矢印D6で示すように、発熱体71の周囲を回り込むようにして流れ、発熱体71付近のスケールを巻き込みながら排水孔83から排水されることから、タンク80内のスケールを効率良く排出することができる。
次いで、排水路85について説明する。排水路85は、上記した逆流防止機構90の排水口93と連通する。また、排水路85は、図3〜図5などに示すように、タンク80の側面の外壁80aに設けられ、部分的に露出するように形成される。
排水路85がタンク80の外壁80aに設けられる点について図9を参照して説明する。図9は、図4のIX−IX線断面図である。なお、図4においては、排水路85の一部にカバー95が取り付けられているが、図9では、かかるカバー95を取り外した状態を示した。また、図9では、タンク80の外壁80aと、タンク80内に形成される仕切り壁80cとを区別するため、仕切り壁80cを破線で示した。
図9に示すように、排水口93および排水路85は、タンク80の外壁80aをタンク80の内側に凹ませた形状とすることで形成される。これにより、逆流防止機構90を含む熱交換器70においては、排水路85を別部材として取り付けることを要しないため、部品点数を少なくすることができるとともに、タンク80の小型化を図ることができる。
また、図9に示すように、入水管81は、タンク80の外壁80aを周面の一部とするように形成される。図9では、入水管81が周面の一部とする外壁80aを符号81cを付して示した。そして、排水路85は、入水管81が周面の一部とする外壁81c(80a)を挟んで入水管81と隣接して配置される。なお、図9では、排水口93から排出されて排水路85を流れる水を矢印D7で示した。
これにより、排水路85は、熱交換器70のタンク80の中では比較的温度の低い入水管81に隣接して沿うように配置されることとなる。そのため、排水路85を流れる水、すなわち、タンク80に流入されなかった冷水が、タンク80の中の温水の熱を奪って冷やしてしまうことを抑制することができる。
また、図3〜図5などに示すように、排水口93および排水路85は、タンク80における吐出ノズル41寄りの位置に配置される。これにより、逆流防止機構90の排水路85の長さを短くすることができる。
上記した排水路85を短くすることができる理由について説明するために、ここで、ケース31における排水機能等について図5を参照して説明する。
図5に示すように、ケース31は、排出孔32と、水抜き経路33と、取出し孔34とを備える。排出孔32は、たとえば、プレート31aの底面31a1において、ケース31の中央部分31c付近に複数個(図5では2個示す)穿設される。
これにより、たとえば吐出ノズル41など水滴が生じやすい部材は、ケース31の中央部分31c付近に配置されるため、かかる水滴を排出孔32から容易に排出することができる。
また、排出孔32は、たとえば、便器10のボウル12(図2参照)を臨む位置に設けられる。これにより。排出孔32を通過した水は、ボウル12へと排水されることとなる。なお、図5などに示す排出孔32の個数や配置位置、形状は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
水抜き経路33は、タンク80の水抜き時に用いられる排水流路である、具体的には、水抜き経路33は、プレート31aの底面31a1に立設する樋状の壁部である。タンク80の水抜きは、後述するように、ストレーナ110が取り付けられたタンク80の排水孔83から水を排出することで行われる。従って、水抜き経路33は、矢印D8で示すように、排水孔83で排出された水を排出孔32まで導くような形状とされる。
これにより、排水孔83から流出した水を排出孔32などを介して容易に便器10へ排水することができる。なお、プレート31aの底面31a1には、排出孔32へ向かって傾斜する勾配が付けられることが好ましい。これにより、底面31a1の水を排出孔32へ向けてスムーズに排水させることができる。
取出し孔34は、図3にもよく示すように、ケース31の側面に設けられた開口であり、ストレーナ110が配置される位置と対応する部位に設けられる。従って、取出し孔34は、ストレーナ110を取り外して清掃する際に、ストレーナ110をタンク80から取り出すための孔である。なお、取出し孔34は、開口部の一例である。
上記したように、ケース31において排出孔32は吐出ノズル41の付近に設けられる一方、排水口93および排水路85もタンク80における吐出ノズル41寄りの位置に配置される。これにより、排水路85の長さを短くすることができる。
<4.タンクの空気孔の構成>
図6に示すように、タンク80は、大気開放された逆流防止機構90に接続された入水管81を介して水が供給される。そのため、入水管81から水が供給されてタンク80の水位が上昇したときにタンク80内の上方の空気を逃がしたり、タンク80内の水が流出して水位が低下したときにタンク80内に空気を入れたりする機構が必要である。
そこで、本実施形態に係るタンク80にあっては、上方に空気孔86を設けるようにした。空気孔86は、タンク80内の水面の変動に伴って出入りする空気を通過させる。これにより、タンク80内の空気を逃がしたり、タンク80内に空気を入れたりすることができる。
そして、空気孔86には、吸排気経路87が接続される。吸排気経路87としては、たとえばチューブなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
かかる吸排気経路87は、図3〜図5に示すように、プレート31aの底面31a1の排出孔32近傍まで配策される。これにより、空気孔86からタンク80外へ出る水分は、吸排気経路87を通って排出孔32から排出されるため、水分がケース31内に拡散することを防止することができる。
また、図2や図6などに示すように、吸排気経路87は、バキュームブレーカ140の大気開放経路141を兼ねるように構成される。なお、図2および図6では、吸排気経路87と大気開放経路141とが合流する位置を符号Pで示した。
このように、吸排気経路87は、空気孔86の大気開放経路としての機能に加え、バキュームブレーカ140の大気開放経路141としても機能するようにした。これにより、吸排気経路87および大気開放経路141を部分的に共用することができるため、部品点数を削減できるとともに、低コスト化を図ることができる。
<5.ストレーナおよびカバーの構成>
次いで、タンク80の流出口82bの下流側に設けられるストレーナ110、および、カバー120の構成について説明する。
図6に示す例では、流出口82bの下流側は排水孔83および第2流路100(図6で見えず)と連通するが、排水孔83には、上記したようにストレーナ110が取り付けられて封止されている。従って、排水孔83がストレーナ110によって封止された状態にあるときは、後述するように、タンク80内の水は流出口82bからストレーナ110を通って第2流路100へ流れる。また、タンク80は、カバー120を備え、かかるカバー120は排水孔83に取り付けられる。
図10はストレーナ110の斜視図であり、図11はカバー120の斜視図である。また、図12Aは、図6のXII−XII線断面図である。
図10に示すように、ストレーナ110は、頭部111と、軸部112と、キャップ113とを備える。頭部111は、円柱状または略円柱状に形成されるとともに、操作ツマミ111aと、鍔部111bとを備える。
操作ツマミ111aは、頭部111において一方の端部111cに形成される。操作ツマミ111aは、端部111cから離間する方向へ向けて突設された突起であり、かかる突起が使用者や工具によって摘まれて回転操作される。
なお、上記した操作は、衛生洗浄装置20による人体の洗浄時以外のタイミングで行われることから、ここでの「使用者」は、身体が洗浄される使用者とは異なっていてもよい。また、図10などに示す操作ツマミ111aの形状は、例示であって限定されるものではなく、たとえば凹状などその他の形状であってもよい。
鍔部111bは、頭部111の他方の端部111dに形成されるとともに、円柱状の頭部111の軸線方向に対して垂直な方向に延設される。
軸部112は、頭部111から連続するように形成され、頭部111よりも小径な円筒状または略円筒状に形成される。また、軸部112は、雄ネジ部112aと、平坦部112bと、フィルタ枠112cとを備える。
雄ネジ部112aは、軸部112の頭部111側に設けられる。詳しくは、雄ネジ部112aは、軸部112において頭部111側に部分的に設けられる。これにより、たとえば、使用者は、後述するストレーナ110の排水孔83に対する着脱を、比較的少ない回転操作で行うことができる。なお、雄ネジ部112aは、係合部の一例である。
平坦部112bは、軸部112の頭部111側において、雄ネジ部112aが軸方向に沿って形成されない平坦な部位である。平坦部112bは、たとえば、雄ネジ部112aの呼び径よりも低い位置となるように形成される。上記した平坦部112bの機能については、後述する。
フィルタ枠112cは、軸部112において頭部111とは反対側の端部112d付近に設けられる開口である。かかるフィルタ枠112cには、フィルタ114が張られる。
フィルタ114は、水を通過させる一方、スケール等の異物を通過させない素材とされる。なお、フィルタ114としては、たとえば不織布やメッシュ等を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、図10などに示すフィルタ枠112cおよびフィルタ114の数や形状は、例示であって限定されるものではない。
キャップ113は、図12Aによく示すように、軸部112よりも小径な円筒状または略円筒状に形成されるとともに、封止部113aを備える。封止部113aは、円盤状または略円盤状に形成され、キャップ113の端部113bに設けられる。封止部113aの径は、たとえば、タンク80内における排水孔83の開口径よりも僅かに小さい値に設定される。
上記のように構成されたキャップ113は、封止部113aが設けられる端部113bとは反対側の端部113c(図12A参照)を先頭にして、軸部112の中空部分に挿入されて嵌合される。なお、キャップ113の長さは、たとえば、軸部112に嵌合された状態で、封止部113aが軸部112から露出するとともに、ストレーナ110が排水孔83に取り付けられた状態で、封止部113aがタンク80内の排水孔83の開口に位置する値に設定される。
なお、上記では、キャップ113が頭部111および軸部112に対して別体となるストレーナ110を用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば、頭部111と軸部112とキャップ113とが一体であってもよい。さらには、頭部111、軸部112およびキャップ113において、互いに別体であってもよく、また、いずれか一つが別体であってもよい。
ストレーナ110はさらに、第1シール部材116aと、第2シール部材116bとを備える。第1、第2シール部材116a,116bとしては、たとえばOリングを用いることができるが、これに限定されるものではない。
第1シール部材116aは、軸部112の頭部111側に取り付けられる。そして、第1シール部材116aは、ストレーナ110が排水孔83を封止する位置にあるとき、軸部112と排水孔83との間を水密に封止する。
また、第2シール部材116bは、キャップ113の封止部113aに取り付けられる。そして、第2シール部材116bは、ストレーナ110が排水孔83を封止する位置にあるとき、封止部113aと排水孔83との間を水密に封止する。
カバー120は、図11に示すように、周面120aと、係止部120bと、開口120cとを備える。周面120aは、円筒状または略円筒状に形成される。また、周面120aにおいて、一方の端部120d付近には、固定用孔120eが穿設される。
一方、図12Aに示すように、排水孔83の出口側には、固定用孔120eに対応する形状の固定用突起83aが形成される。従って、カバー120は、固定用孔120eに固定用突起83aを挿入させつつ排水孔83に取り付けることで、排水孔83の出口側に固定される。
カバー120の係止部120bは、図11に示すように、周面120aにおいて他方の端部120f側に設けられた切欠き120gに配置される。係止部120bは、たとえば、周面120aにおいて略等間隔に複数個(たとえば2個)配置される。また、係止部120bの先端には、径方向内側へ向かって突設する爪部120b1が形成される。
なお、図11では、係止部120bは、周面120aにおいて互いに対向する位置に2個配置されるようにしたが、係止部120bの個数や配置位置は例示であって限定されるものではない。
また、カバー120は、可撓性を有する材料(たとえば樹脂など)を用いて製作される。これにより、係止部120bを含むカバー120は可撓性を有し、よって係止部120bは径方向に向けて弾性変形可能とされる。
開口120cは、下面視において矩形状に形成されるとともに、カバー120が排水孔83に取り付けられた状態において、周面120aの下側に複数個(たとえば2個)形成される。かかる開口120cは、タンク80から排水孔83を介して排出された水が通る流路として機能するが、これについては後述する。
なお、図11では、開口120cの形状を矩形状としたが、これに限られず、たとえば円形状や楕円形状などその他の形状であってもよい。また、開口120cの個数も、図11に示す例に限定されるものではなく、1個あるいは3個以上であってもよい。
ここで、ストレーナ110に対するカバー120の寸法について説明する。図12Aに示すように、カバー120の周面120aの内径E1は、ストレーナ110の鍔部111bの外径よりも大きくなるように設定される。
また、カバー120において対向配置される爪部120b1の間隔E2は、鍔部111bの外径よりも小さくなるように設定される。なお、鍔部111bの外径は、ストレーナ110において最大径となる部位である。
上記のように構成されたカバー120が排水孔83に取り付けられることで、カバー120の一方の端部120dが排水孔83と連通する。
また、タンク80の排水孔83には、雄ネジ部112aに係合可能な雌ネジ部83bが形成される。従って、ストレーナ110は、雄ネジ部112aを雌ネジ部83bに係合させることで、排水孔83に取り付けられる。そして、ストレーナ110は、雄ネジ部112aを雌ネジ部83bに対して緩めることで、排水孔83から取り外される。
このように、ストレーナ110は、排水孔83に対して着脱可能とされ、よってストレーナ110を排水孔83から取り外すことで、タンク80内のスケールを確実に排出することができる。
<6.ストレーナの具体的な機能>
次に、ストレーナ110の具体的な機能について説明する。以下では、衛生洗浄装置20において、人体の洗浄などを行う通常動作の場合と、タンク80の水抜きを行う場合と、ストレーナ110の清掃を行う場合とに分けて説明する。
図12Aは、通常動作の場合のストレーナ110の位置を示している。また、図12Bは、タンク80の水抜きを行う場合のストレーナ110の位置を、図12Cはストレーナ110の清掃を行う場合に、取り外された状態のストレーナ110を示す図である。
衛生洗浄装置20において、通常動作の場合、図12Aに示すように、ストレーナ110は、排水孔83に係合されて取り付けられ、排水孔83を封止する位置とされる。
ここで、タンク80の流出口82bは、ストレーナ110のフィルタ114付近に位置されるものとする。なお、流出口82bは、中心線82cが排水孔83の中心線83cと直交するように位置されることが好ましい。これにより、たとえば、中心線82c,83cが互いに直交しない場合、すなわち、ねじれの位置にある場合に比べて、タンク80用の金型を容易に製作することができる。
そして、たとえば人体の洗浄が行われる場合、タンク80から供給される水は、矢印D9に示すように、流出口82bからフィルタ114を通過し、フィルタ114を通過する際に、水中に含まれるスケールが捕捉される。フィルタ114を通過した水は、第2流路100へ流れた後、ポンプ130を介して吐出ノズル41から吐出される。
次に、タンク80の水抜きを行う場合について図12Bを参照して説明する。図12Bに示すように、ストレーナ110は、雄ネジ部112aを雌ネジ部83bに対して緩められる。これにより、ストレーナ110は、軸部112の一部が排水孔83から抜け出すとともに、排水孔83との係合が解除されるとともに、封止されていた排水孔83が開放される。排水孔83が開放されると、タンク80の水は、矢印D10で示すように、ストレーナ110と排水孔83との間を通って流れ出す。
ここで、上記したように、カバー120の周面120aの内径E1は、ストレーナ110の鍔部111bの外径よりも大きく、かつ、爪部120b1の間隔E2は、鍔部111bの外径よりも小さくなるように設定される。
従って、ストレーナ110は、軸部112の一部が排水孔83から抜け出すものの、軸部112の残余の部分(たとえばフィルタ114が形成される部位)などは、排水孔83に挿入されたままの状態となる。言い換えれば、ストレーナ110は、排水孔83との係合が解除されても、一部が排水孔83に挿入されたままで空回りする状態となる。
そして、カバー120は、雄ネジ部112aの排水孔83との係合が解除されたストレーナ110の頭部111が他方の端部120fを塞ぐ位置で頭部111に外側から係止部120bの爪部120b1で当接する。これにより、排水孔83から流れ出た水は、鍔部111bによってせき止められることから、ストレーナ110を排水孔83から取り外す際に、タンク80から流出する水が、端部120f側から飛び散ることを防止することができる。
また、ストレーナ110は、排水孔83からの水圧によって水平方向(正確にはX軸負方向)へ押されて、係止部120bの爪部120b1に圧着されて係止されるため、タンク80から流出する水が飛び散ることをより一層防止することができる。また、軸部112の一部が排水孔83に残っているので、排水時もストレーナ110ががたつくことはない。
カバー120の下側には、開口120cが設けられることから、鍔部111bによってせき止められた水は、開口120cを通って外部へ流出する。このように、開口120cは、タンク80から排水孔83を介して排出された水が通る流路として機能する。なお、開口120cから排出された水は、プレート31aに落ち、上記した水抜き経路33によって排出孔32まで導かれてボウル12へと排水される(図5の矢印D8参照)。このように、プレート31aに水抜き経路33を設けることで、排水孔83から流出した水を便器10のボウル12へ排水することができる。
また、ストレーナ110の軸部112には、上記したように、平坦部112bが形成される。これにより、排水孔83の雌ネジ部83bと平坦部112bとの間に間隙が形成されることとなる。従って、水抜きを行う際、雄ネジ部112aを緩めると、かかる間隙を通って水が流れ出し始めるとともに、雄ネジ部112aを緩めるにつれて間隙から流れ出す水の量は徐々に増加することとなる。このように、本実施形態では、ストレーナ110の軸部112に平坦部112bを設けることで、水の排水流量を調節することができる。
また、排水孔83の径は、第2流路100や流出口82bの径よりも大きくなるように設定される。これにより、タンク80内の比較的大きなスケールも外部へ容易に排出することができる。なお、上記した水抜きを行う際、ポンプ130は駆動しないことから、水抜き時のタンク80の水が第2流路100へ流出することはない。
このように、タンク80に着脱可能なストレーナ110を用いて水抜きを行うことで、タンク80内に蓄積されたスケールを外部へ容易に排出することができる。
次に、タンク80の水抜きが終わった後に、ストレーナ110で捕捉したスケールを取り除く清掃を行う場合について図12Cを参照して説明する。
図12Cに示すように、ストレーナ110の清掃を行う場合、ストレーナ110がカバー120から取り外される。詳しくは、ストレーナ110が使用者によって水平方向(正確にはX軸負方向)へ引っ張られると、鍔部111bが係止されていた爪部120b1を外周方向へ押し広げつつカバー120の外方へ引き抜かれ、排水孔83およびカバー120から取り外される。
ケース31には、上記した取出し孔34(図3参照)が設けられることから、ストレーナ110はかかる取出し孔34を介して取り外されることとなる。このように、ケース31に取出し孔34を設けることで、ケースカバー31bなどを取り外すことなく、ストレーナ110をタンク80から取り外すことができる。
なお、外周方向へ押し広げられた係止部120bは、鍔部111bが通過した後、弾性変形によって復元する。また、図示は省略するが、ストレーナ110において、フィルタ114のスケールが取り除かれて清掃が完了すると、ストレーナ110は、キャップ113の封止部113aを先頭にしてカバー120、排水孔83に挿入される。そして、ストレーナ110は、雄ネジ部112aを排水孔83の雌ネジ部83bに係合させることで、排水孔83に取り付けられて固定される。
<7.ポンプの配置位置>
次いで、ケース31の内部空間において、タンク80およびポンプ130などが配置される位置についてさらに詳しく説明する。図13は、図5のXIII−XIII線断面図である。
図13に示すように、ケース31のケースカバー31bは、矩形部36と、傾斜部37とを備える。矩形部36は、プレート31aの後方(Y軸正方向)を覆うように位置される。矩形部36は、側面視であるX軸方向視において前面36aおよび背面36bが垂直方向に延設されるとともに、矩形状または略矩形状の内部空間38が形成される。かかる内部空間38には、タンク80が配置される。
傾斜部37は、プレート31aの前方(Y軸負方向)を覆うように位置される。傾斜部37は、上面37aが矩形部36と連続するように形成される。詳しくは、傾斜部37の上面37aは、基端37a1側が矩形部36の前面36aに連続し、先端37a2側ほど下方に向かう前下がり傾斜とされる。
言い換えると、図13に想像線で示すように、先端37a2側に便器10のボウル12が配置されることから、上記した傾斜部37は、側面視で便器10のボウル12側へ向けて上面37aが下がり傾斜となるように形成される。
上記のように構成された傾斜部37は、側面視において台形状または略台形状の内部空間39が形成される。かかる内部空間39は、比較的狭く、形状も異形であるため、デッドスペースとなり易い。しかしながら、本実施形態に係る衛生洗浄装置20にあっては、傾斜部37の先端37a2側に上記したポンプ130を収納するようにした。これにより、ケース31のデッドスペースを有効利用することができる。
また、上記のように構成することで、ポンプ130をタンク80に対して下方に位置させることができる。これにより、ポンプ130内の配管がタンク80からの水で満たされた状態となり、よってたとえばポンプ130が非自吸式ポンプであっても、起動後早期に水の吐出を開始することが可能となる。
<8.制御部の構成>
次いで、図2示す制御部200の構成について説明する。制御部200は、状態検出部201と、給水制御部202と、発熱体制御部203とを備える。上記した状態検出部201と、給水制御部202と、発熱体制御部203とは互いに通信自在に接続される。
状態検出部201は、使用者の着座の状態や使用者からの動作指示、タンク80の状態を検出する。詳しくは、状態検出部201は、着座センサ210からON信号が出力される場合に使用者の着座を検出する一方、OFF信号が出力される場合に使用者の離座を検出する。また、状態検出部201は、操作部220から出力される、人体の洗浄を開始する開始指示や洗浄を停止する停止指示を検出する。
また、状態検出部201は、フロートスイッチ72からON信号が出力される場合にタンク80内の水位が所定の位置以上であることを検出する。一方、状態検出部201は、フロートスイッチ72からOFF信号が出力される場合にタンク80内の水位が所定の位置未満であることを検出する。また、状態検出部201は、サーミスタ73から出力される信号に基づき、タンク80内の水の温度を検出する。
給水制御部202は、状態検出部201で検出された各種状態に基づいて、電磁弁62およびポンプ130の動作を制御する。具体的には、給水制御部202は、電磁弁62を動作させてタンク80へ水を供給するとともに、ポンプ130を駆動させてタンク80の水を吐出ノズル41から吐出させる。
発熱体制御部203は、状態検出部201によって検出されたタンク80内の水の温度が基準の温度未満の場合に発熱体71を作動させてタンク80内の水を加熱する。他方、発熱体制御部203は、タンク80内の水の温度が基準の温度以上の場合に発熱体71の作動を停止させる。
ところで、従来技術にあっては、タンク80内の水、正確には温水を有効に利用するという観点において改善の余地があった。そこで、実施形態に係る衛生洗浄装置20においては、タンク80内の温水を可能な限り有効に利用することができるようにした。以下、この点について詳しく説明する。
<9.衛生洗浄装置の具体的な動作>
次いで、上記のように構成された衛生洗浄装置20の動作について、図14以降を参照して説明する。図14は、実施形態に係る衛生洗浄装置20の処理手順の一例を示すタイミングチャートである。
図14においては、上から順に、着座センサ210の出力信号、ポンプ130の駆動状態、フロートスイッチ72の出力信号、ポンプ130の駆動累積時間、電磁弁62の開閉状態、離座後経過時間、および、フロートスイッチON時間を示している。
また、図15A〜図15Gは、タンク80内の水の状態を示す説明図である。以下、タンク80へ水を供給するタイミングを中心に詳しく説明する。
図14において、まず時刻T1で使用者が着座すると、状態検出部201は、着座センサ210からのON信号を検出する。次いで、時刻T2で使用者から操作部220を介して洗浄を開始する指示が入力されると、給水制御部202は、ポンプ130を駆動させ、タンク80の水(温水)を吐出ノズル41から吐出させる。
これにより、タンク80内の水位は、図15Aに示すように、徐々に低下していく。なお、図15A〜図15Gにおいて、タンク80内の温水は符号HWを付すとともにドットで示し、冷水は符号CWを付すとともに斜線で示すようにした。また、ここでは、温水HWは、発熱体71によって加熱されて温度が基準の温度近傍にある水を意味し、冷水CWは、たとえば、入水管81を介してタンク80内に入水された直後で温度が基準の温度に到達していない水を意味するものとする。
図14の説明を続けると、上記したタンク80内の水位の低下に伴い、時刻T3でフロートスイッチ72の出力がON信号からOFF信号に切り替わると、給水制御部202は、ポンプ駆動累積時間を計測するタイマを始動させる。
給水制御部202は、ポンプ駆動累積時間が第1の所定時間A1を超えると、電磁弁62を開弁してタンク80への水の供給を開始する。これにより、図15Bに示すように、冷水CWがタンク80の下方付近に溜まり始める。なお、ここでは、タンク80への水の供給量は、吐出ノズル41から吐出される水の吐出量よりも多いものとする。
また、上記した第1の所定時間A1は、ポンプ130の性能などに応じて設定される。具体的には、第1の所定時間A1は、たとえば、タンク80内の水位が低下して出水管82の入口82aが水から露出する前に、水の供給が開始されるような値に設定される。これにより、吐出ノズル41から吐出される水が切れることを防止することができる。
続いて、給水制御部202は、タンク80への水の供給によって水位が上昇し、時刻T5でフロートスイッチ72の出力がOFF信号からON信号に切り替わると、電磁弁62を閉弁して水の供給を停止する(図15C参照)。
さらに、使用者に対する洗浄が継続されると、タンク80内の水位が再度低下し、時刻T6でフロートスイッチ72の出力がON信号からOFF信号に切り替わる。かかるタイミングで給水制御部202は、ポンプ駆動累積時間を計測するタイマを再度始動させる。
給水制御部202は、ポンプ駆動累積時間が時刻T7で第1の所定時間A1を超えると、図15Dに示すように、電磁弁62を開弁してタンク80への水の供給を開始する。
このように、本実施形態では、フロートスイッチ72の出力がON信号からOFF信号に切り替わるタイミングではなく、ポンプ駆動累積時間が第1の所定時間A1を超える場合に、水の供給を開始するようにした。これにより、タンク80への水の供給を開始させるタイミングを可能な限り遅らせることが可能となる、すなわち、タンク80内の温水HWを可能な限り利用した後に水の供給を開始させることができる。
続いて、たとえば時刻T8で使用者から操作部220を介して洗浄を停止する指示が入力されると、給水制御部202は、ポンプ130を停止させて吐出ノズル41からの水の吐出を停止する。また、給水制御部202は、電磁弁62を閉弁してタンク80への水の供給も停止する(図15E参照)。
次いで、時刻T9で使用者が離座すると、給水制御部202は、着座センサ210の出力がON信号からOFF信号に切り替わるタイミングで、離座後経過時間を計測する。続いて、給水制御部202は、離座後経過時間が時刻T10で第2の所定時間A2を超えると、電磁弁62を開弁してタンク80への水の供給を開始する。第2の所定時間A2は、任意な値に設定可能であるが、たとえば、数秒から数十秒の値に設定される。
このように、本実施形態では、離座後すぐにタンク80への水の供給を開始せず、第2の所定時間A2が経過してから水の供給を開始するようにした。これにより、タンク80内の温水HWを可能な限り有効に利用することができる。
すなわち、たとえば、使用者が腰を掛け直すなど、一瞬だけ離座するような場合に水の供給が開始されると、タンク80内において温水HWに対する冷水CWの割合が増加し、結果として利用できる温水HWの量が減少することがある。これに対し、本実施形態では、一瞬だけ離座するような場合には水の供給が開始されることがないため、タンク80内の温水HWを可能な限り利用することができる。
続いて、タンク80への水の供給によって水位が上昇し、時刻T11でフロートスイッチ72の出力がOFF信号からON信号に切り替わると、給水制御部202は、フロートスイッチON時間を計測するタイマを始動させる。上記したフロートスイッチON時間は、離座後で、かつ、フロートスイッチ72の出力がON信号となっている時間である。すなわち、図15Fに示すように、本実施形態にあっては、フロートスイッチ72の出力がON信号となっても、タンク80への水の供給を継続する。
このように、タンク80への水の供給を継続すると、図15Gに示すように、フロートスイッチ72のフロートを水没させることが可能になる。これにより、フロートの乾燥を防止することができる。また、タンク80内ではスケールが水面に浮かぶことがあるが、フロートを水没させることで、スケールがフロートに付着することを防止することができる。
次いで、給水制御部202は、フロートスイッチON時間が時刻T12で第3の所定時間A3を超えると、電磁弁62を閉弁してタンク80への水の供給を停止する。第3の所定時間A3は、任意な値に設定可能であるが、たとえば、数秒から数十秒の値に設定される。
<10.変形例>
次に、実施形態に係る衛生洗浄装置20の変形例について説明する。上記した実施形態では、入水管81の出口81bは、発熱体71の近傍に位置される。詳しくは、図6に示すように、入水管81は、出口81bが発熱体71の中心線71aよりも上方となるように配置されるが、これに限定されるものではない。
変形例に係る衛生洗浄装置20においては、図6に想像線で示すように、入水管81は、出口181bが発熱体71よりも低い位置に配置される。具体的には、入水管81は、出口181bが発熱体71の中心線71aよりも下方となるように配置される。これにより、変形例にあっては、入水管81からタンク80へ供給された水が発熱体71周辺にとどまりやすくなり、よって水をより一層効率良く加熱することが可能となる。
上述してきたように、実施形態に係る衛生洗浄装置20は、タンク80と、吐出ノズル41と、逆流防止機構90とを備える。タンク80は、発熱体71が内部に設けられ、水を貯留する。吐出ノズル41は、タンク80の水を使用者の局部へ向けて吐出する。逆流防止機構90は、タンク80の上流側であって、大気開放した空間94を介して流路を分断した部位Bに設けられたエアギャップ94aを有する。
また、逆流防止機構90は、吐出口91と、受水口92と、排水口93とを備える。吐出口91は、水道管Aと連通する第1流路60の終端60aに設けられ、水平方向へ水を吐出する。受水口92は、大気開放した空間94を介して吐出口91と対向するように配置され、吐出口91から吐出された水を受水するとともに、タンク80の流入口81aを兼ねる。排水口93は、空間94に残留する水を排水する。
このように、逆流防止機構90が水平式であるとともに、逆流防止機構90の受水口92がタンク80の流入口81aを兼ねるようにしたことから、衛生洗浄装置20を小型化することができる。
なお、上記した実施形態においては、フロートスイッチ72の出力がON信号からOFF信号に切り替わってから第1の所定時間A1が経過した後、タンク80への水の供給を開始するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、フロートスイッチ72の出力がON信号からOFF信号に切り替わった時点で、タンク80への水の供給を開始するようにしてもよい。
また、上記では、使用者の離座後に第2の所定時間A2が経過した後、タンク80への水の供給を開始するようにしたが、これに限られるものではなく、たとえば、離座後すぐに水の供給を開始してもよい。
また、上記では、使用者の離座後で、かつ、フロートスイッチ72の出力がON信号となっている時間が第3の所定時間A3が経過してから、タンク80への水の供給を停止するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、使用者の離座後で、かつ、フロートスイッチ72の出力がON信号を出力した時点でタンク80への水の供給を停止するようにしてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。