JP2017002248A - ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を含む臭素系難燃剤を用いても、高度な難燃性及び十分な酸素指数を有すると共に、発泡体の黒点や黄変が発生しにくく、再生原料として発泡体の製造に再利用可能なポリスチレン系樹脂発泡体を製造できる、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法を提供することを、その課題とするものである。
【解決手段】 ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂、物理発泡剤、臭素系難燃剤、及び熱安定剤を含む発泡性樹脂溶融物を押出発泡させて発泡体を製造する方法において、該臭素系難燃剤が臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を含み、
該熱安定剤がフェノール系熱安定剤とホスファイト系熱安定剤とを含み、該フェノール系熱安定剤の融点が60℃未満である。
【選択図】 なし
Description
[1]ポリスチレン系樹脂、物理発泡剤、臭素系難燃剤、及び熱安定剤を含む発泡性樹脂溶融物を押出発泡させて発泡体を製造する方法において、
該臭素系難燃剤が臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を含み、
該熱安定剤がフェノール系熱安定剤とホスファイト系熱安定剤とを含み、
該フェノール系熱安定剤の融点が60℃未満であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
[2]前記フェノール系熱安定剤と前記ホスファイト系熱安定剤の重量比が、2:8〜8:2であることを特徴とする、前記1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
[3]前記臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、フェノール系熱安定剤、及びホスファイト系熱安定剤を、これらを溶融混練してなる難燃剤組成物として押出機に供給することを特徴とする、前記1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
[4]前記フェノール系熱安定剤が、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートであることを特徴とする、前記1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
また、特定の融点を有するフェノール系熱安定剤を用いることで、従来のフェノール系熱安定剤と併用しても効果が得られにくかったホスファイト系熱安定剤を用いた場合でも、発泡体の黒点や黄変の発生を抑制することが可能となる。
さらに、フェノール系熱安定剤とホスファイト系熱安定剤とを併用する際に、特定の融点を有するフェノール系熱安定剤を用いることで、高価なホスファイト系熱安定剤の配合量を減らした場合でも、発泡体の黒点や黄変の発生を抑制することが可能となる。
なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート、ネオペンチルグリコール変性ポリエチレンテレフタレート、スピログリコール変性ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
その他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂等が挙げられる。また、エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体や、それらの水添物などのスチレン系エラストマーが挙げられる。
その他の樹脂やエラストマーの配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部(その他の樹脂やエラストマーを含む)に対して、概ね30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明で用いられる難燃剤は臭素系難燃剤である。該臭素系難燃剤としては、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤等が挙げられる。本発明で用いられる臭素系難燃剤は、これらの内の臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を含むものである。但し、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体に、他の臭素系難燃剤を組み合わせて使用することができる。
なお、スチレン系単量体としては、スチレン、臭素化スチレン、塩素化スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが例示できる。
(式中、X、Y及びZは、正の整数である。)
また、臭素系難燃剤中における臭素化ブタジエン−スチレン共重合体以外の難燃剤の配合割合は、70重量%以下であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。ただし、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体とそれ以外の難燃剤の合計は100重量%である。
該難燃助剤の配合量は、難燃剤100重量部に対して、その配合量の下限は1重量部が好ましく、より好ましくは3重量部であり、その上限は20重量部が好ましく、より好ましくは15重量部、更に好ましくは10重量部である。
フェノール系熱安定剤の融点は、例えば、JIS K 7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して得られるDSC曲線に基づいて求めることができる。
なお、特許文献1に記載されているように、従来、融点が60℃未満のフェノール系熱安定剤を臭素系難燃剤と共に用いて発泡体を製造しようとした場合、押出機内での送り不良等の問題が生じるおそれがあった。しかし、本発明においては、そのような問題が生じることはなく、ホスファイト系熱安定剤と組合わせて使用することにより、発泡体の黒点や黄変の発生を抑制する効果を得ることができる。
これらの中では、60℃未満のフェノール系熱安定剤と併用した際の黒点、黄変発生抑制の観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、3、9−ビス[2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
前記フェノール系熱安定剤の配合量は、前記難燃剤の総配合量100重量部に対して、その下限は0.5重量部が好ましく、より好ましくは1重量部であり、その上限は15重量部が好ましく、より好ましくは10重量部である。
前記ホスファイト系熱安定剤の配合量は、前記難燃剤の合計配合量100重量部に対して、その配合量の下限は0.5重量部が好ましく、より好ましくは1重量部であり、その上限は15重量部が好ましく、より好ましくは10重量部である。
本発明においては、特定のフェノール系熱安定剤を用いることにより、ホスファイト系熱安定剤の重量比を従来技術よりも低く、その下限をフェノール系熱安定剤:ホスファイト系熱安定剤=8:2まで下げることができる。
他の熱安定剤としては、例えばエポキシ樹脂系熱安定剤、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
溶融混練時の温度は、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体からの臭素の遊離を効果的に抑制するために低いほど好ましく、概ね190℃以下、好ましくは185℃以下である。
また、難燃剤組成物は、計量性、取扱の容易性等からカットするなどしてペレット状にしておくことが好ましい。
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。これらの飽和炭化水素は、単独又は2種以上混合して使用することができる。これらの飽和炭化水素の中では、発泡性の観点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の観点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に、長期にわたる断熱性能の観点からi−ブタンが好ましい。
飽和炭化水素以外の有機物理発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチルなどの蟻酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどの塩化アルキル類などが挙げられる。また、オゾン破壊係数が0、かつ地球温暖化係数の小さいトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンなどのフッ化不飽和炭化水素、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどの塩化フッ化不飽和炭化水素を用いることもできる。
前記他の発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性などの点からは、塩化メチル、塩化エチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、メタノール、エタノール、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、水、二酸化炭素が好ましい。
これらの他の発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法によりポリスチレン系樹脂の重量平均分子量を求めた。その測定条件を以下に示す。
<GPC分析の測定条件>
使用機器:株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
カラム:昭和電工株式会社製カラム、商品名ShodexGPC KF−806、同KF−805、同KF−803をこの順に直列に連結して使用
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0mL/分
濃度:0.15w/v%
注入量:0.2ml
検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波長254nm)
分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:1.2×107〜5.2×103
(1)臭素化スチレン−ブタジエン共重合体、ケムチュラ製、商品名「Emerald3000」(臭素含有率65重量%)、略称「Emerald3000」
(2)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、鈴裕化学製、商品名「FCP660」(臭素含有率66重量%)、略称「FCP660」
(1)ノボラック型エポキシ系熱安定剤:DIC製、商品名「EPICLON N680」、略称「N680」
(2)ヒンダードフェノール系熱安定剤:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、BASF製、商品名「Irganox1076」、略称「Irganox1076」
(融点:52℃)
(3)ヒンダードフェノール系熱安定剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]BASF製、商品名「Irganox1010」、略称「Irganox1010」
(融点:115℃)
(4)リン系熱安定剤:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、ADEKA製、商品名「PEP36」、略称「PEP36」
(5)リン系熱安定剤:3,9−ビス[2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、商品名「Doverphos S9228」」(Dover Chemical製 )略称「Doverphos S9228」
なお、フェノール系熱安定剤の融点は、フェノール系熱安定剤から採取した測定試料1〜4mgをJIS K 7122(1987年) に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、加熱速度10℃/minにて30℃から200℃まで加熱溶融させることで得られたDSC曲線から、最も高い融解ピークの頂点温度をフェノール系熱安定剤の融点として求めた。
ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、United Initiators社製、商品名「CCPIB」、略称「CCPIB」
表1に示す種類、量の臭素化ブタジエン-スチレン共重合体等の難燃剤、難燃助剤、熱安定剤を二軸押出機(内径20mm、L/D=48)に供給し、溶融混練部の最高温度190℃、押出時の樹脂温度175℃となるように温度を調整して、吐出10kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることにより難燃剤組成物を作製した。
第1押出機に、表2に示す配合量となるように、ポリスチレン系樹脂、難燃剤組成物及び気泡調整剤(タルク)を供給し、第1押出機内で200℃まで加熱して、これらを混練し、第1押出機の先端付近に設けられた物理発泡剤注入口から、表1に示す配合組成、量の物理発泡剤を圧入した。
次に、第1押出機内でさらに混練して発泡性溶融樹脂組成物とし、続く第2押出機に移送して樹脂温度を、発泡適性温度(121℃:この発泡樹脂温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性溶融樹脂組成物の温度である)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップから25mmの間隙で平行に配置されたガイダー内に押出し、発泡させながらガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し、板状の発泡体を製造した。
また、各発泡体の再生樹脂は、得られた発泡体を押出機に供給可能な大きさに破砕し、その破砕物を内径90mm、L/D=50の単軸押出機に供給して最高温度220℃で溶融混練し、その溶融樹脂を吐出量250kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることで製造した。
実施例4は、臭素系難燃剤として、臭素化スチレン−ブタジエン共重合体と臭素化イソシアヌレート系難燃剤を組み合わせて使用したものである。このような臭素系難燃剤を使用した場合でも、黒点、黄変の発生を防止できることが判る。
発泡体の見掛け密度は、次のようにして求めた。得られた発泡体の幅方向の中央部、両端部付近から50×50×20mmの直方体の試料を各々切り出して重量を測定し、該重量を体積で割算することにより各々の試料の見掛け密度を求め、それらの算術平均値を当該見掛け密度とした。
発泡体の幅方向中央部付近において、等間隔に5点の厚みを測定し、それらの測定値の算術平均値を発泡体の厚み(mm)とした。
発泡体の独立気泡率は、次のようにして求めた。まず、発泡体を幅方向に5等分し、それらの中央部付近から25mm×25mm×20mmのサイズに成形表皮を持たないカットサンプル(計5個)を切り出した。次に、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、各カットサンプルの真の体積Vxを測定し、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算し、それら計算値の算術平均値を発泡体の独立気泡率とした。なお、測定装置として東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用した。
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm3)(発泡体のカットサンプルを構成する樹脂組成物の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
Va:測定に使用されたカットサンプルの外形寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡体を構成する樹脂組成物の密度(g/cm3)
製造直後の発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、発泡体から試験片を切り出し、JIS K7201−2:2007に準拠して測定し、難燃性を評価した。点火器の熱源の種類は、液化石油ガス(LPG)を使用し、点火手順はA法を使用し、試験片を試験機内の所定の位置に自立させて行った。試験場所の温度は23℃、湿度50%で行った。
製造直後の発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、発泡体から試験片を無作為に5個切り出して(N=5)、JIS A9511:2006Rの5.13.1「測定方法A」に基づいて燃焼性を測定し、5個の試験片の平均燃焼時間により、発泡体の難燃性を評価した。
発泡体を押出方向に対して垂直に切断した断面5箇所において目視にて観察した。
○:0〜5個
×:6個以上
それぞれの実施例にて得られた発泡体、及び発泡体をリサイクル用の押出機にて溶融しリペレット化した再生樹脂の重量平均分子量を、段落[0058〕に記載の測定方法を用いてGPC分析法により測定した。
再生樹脂の黄変度合い(YI:イエローインデックス)は、次のように評価した。
まず、180℃に加熱したヒートプレス機を用いて、再生樹脂をプレス加工して、縦×横×厚み=40×40×2mmの板状の試験片を作製した。分光式色差計(日本電色工業株式会社製SE−2000)を用いてASTM D1925に基づき反射法にて該試験片のYI値を測定した(n=5)。
Claims (4)
- ポリスチレン系樹脂、物理発泡剤、臭素系難燃剤、及び熱安定剤を含む発泡性樹脂溶融物を押出発泡させて発泡体を製造する方法において、
該臭素系難燃剤が臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を含み、
該熱安定剤がフェノール系熱安定剤とホスファイト系熱安定剤とを含み、
該フェノール系熱安定剤の融点が60℃未満であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
- 前記フェノール系熱安定剤と前記ホスファイト系熱安定剤の重量比が、2:8〜8:2であることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
- 前記臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、フェノール系熱安定剤、及びホスファイト系熱安定剤を、これらを溶融混練してなる難燃剤組成物として押出機に供給することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
- 前記フェノール系熱安定剤が、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
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