JP2017001920A - リチウム組成物の製造方法および硫化物固体電解質材料の製造方法 - Google Patents

リチウム組成物の製造方法および硫化物固体電解質材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多硫化物の発生を抑制することができるリチウム組成物の製造方法の提供。
【解決手段】硫化リチウム(LiS)及びヨウ化リチウム(LiI)を少なくとも含有するリチウム組成物の製造方法であって、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸及び水を含有する還元性水溶液とを、pH5.5〜10.21の条件で、加熱により反応させ、第一水溶液を形成する第一水溶液形成工程と、前記第一水溶液に、酸化カルシウムを添加し、第二水溶液を形成する第二水溶液形成工程と、前記第二水溶液に、炭酸リチウムを添加し、第三水溶液(水酸化リチウム(LiOH)とヨウ化リチウム(LiI))を形成する第三水溶液形成工程と、前記水酸化リチウムを硫化し、水硫化リチウム(LiHS)を形成し、その後、前記水硫化リチウム(LiHS)から硫化水素を脱離させ、前記硫化リチウムを形成するLiS形成工程と、を有するリチウム組成物の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、多硫化物の発生を抑制することができるリチウム組成物の製造方法に関する。
硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用である。硫化物固体電解質材料の原料として、例えば、LiSおよびLiIを含有するリチウム組成物が知られている。
特許文献1には、単一のLi源から、LiHSおよびLiX(Xは、F、Cl、BrまたはIである)を含有する原料混合物を調製し、原料混合物におけるLiHSから硫化水素を脱離させLiSとするリチウム組成物の合成方法が開示されている。また、特許文献1には、原料混合物を得る方法として、金属(Me)の水酸化物(例えば水酸化カルシウム)とハロゲン(例えばヨウ素)と蟻酸とを反応させて、Meの水酸化物、および、Meのハロゲン化物を含有する水溶液を作製する還元処理と、MeをLiに置換して水酸化リチウムおよびハロゲン化リチウムとする置換処理と、水酸化リチウムを硫化して水硫化リチウムとする硫化処理と、を行なうことが開示されている。
特開2014−179265号公報
リチウム組成物は、例えば、硫化物固体電解質材料の原料となることから、不純物が少ないことが望まれる。しかしながら、従来のリチウム組成物の製造方法では、硫化処理の際に多硫化物が発生する場合がある。
多硫化物(例としてHS 、S 2−)は不定量の硫黄が鎖状または環状に連なったものであり、多硫化物を由来とした微粒生成物として硫黄コロイドが生成すると考えられる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、多硫化物の発生を抑制することができるリチウム組成物の製造方法、およびこれを用いた硫化物固体電解質材料の製造方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、硫化リチウム(LiS)およびヨウ化リチウム(LiI)を少なくとも含有するリチウム組成物の製造方法であって、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とを、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で、加熱により反応させ、ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第一水溶液を形成する第一水溶液形成工程と、上記第一水溶液に、酸化カルシウムを添加し、水酸化カルシウム(Ca(OH))および上記ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第二水溶液を形成する第二水溶液形成工程と、上記第二水溶液に、炭酸リチウムを添加し、水酸化リチウム(LiOH)およびヨウ化リチウム(LiI)を含有する第三水溶液を形成する第三水溶液形成工程と、上記水酸化リチウム(LiOH)を硫化し、水硫化リチウム(LiHS)を形成し、その後、上記水硫化リチウム(LiHS)から硫化水素を脱離させ、上記硫化リチウム(LiS)を形成するLiS形成工程と、を有することを特徴とするリチウム組成物の製造方法を提供する。
本発明によれば、第一水溶液形成工程において、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とをpHが中性付近で反応させることで、多硫化物の発生を抑制したリチウム組成物を得ることができる。
上記発明においては、上記第一水溶液形成工程において、上記ヨウ素および水を含有するヨウ素含有水溶液を加熱し、上記加熱したヨウ素含有水溶液に対して上記還元性水溶液を添加することが好ましい。
上記発明においては、上記第一水溶液形成工程において、加熱した水に対して、上記ヨウ素および上記還元性水溶液をそれぞれ添加することが好ましい。
上記発明においては、上記加熱した水に対して、上記ヨウ素を複数回に分けて添加することが好ましい。
上記発明においては、上記第三水溶液形成工程および上記LiS形成工程の間に、上記第三水溶液に、LiX(XはF、ClまたはBrである)を添加するLiX添加工程を有することが好ましい。
また、本発明においては、上述したリチウム組成物の製造方法により、リチウム組成物を準備する準備工程と、上記リチウム組成物と、LiS以外の硫化物とを反応させ、硫化物固体電解質材料を合成する合成工程と、を有することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法を提供する。
本発明によれば、特定のリチウム組成物を用いることにより、不純物の少ない硫化物固体電解質材料を合成することができる。
本発明のリチウム組成物の製造方法は、多硫化物の発生を抑制することができるという効果を奏する。
本発明のリチウム組成物の製造方法を説明するフローチャートである。 従来のリチウム組成物の製造方法の一例を説明するフローチャートである。 本発明における第一水溶液形成工程から第三水溶液形成工程の一例を説明するフローチャートである。 本発明における第一水溶液形成工程から第三水溶液形成工程の一例を説明するフローチャートである。 本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法を説明するフローチャートである。 実施例1〜3および比較例2の初期pHおよびヨウ素減少量(重量%)の関係を示すグラフである。
以下、本発明のリチウム組成物の製造方法、および硫化物固体電解質材料の製造方法の詳細を説明する。
A.リチウム組成物の製造方法
図1は、本発明のリチウム組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。本発明は、硫化リチウム(LiS)およびヨウ化リチウム(LiI)を少なくとも含有するリチウム組成物の製造方法である。図1では、ヨウ素(I)と、酸化カルシウム(CaO)、蟻酸(HCOOH)および水(HO)を含有する還元性水溶液とを、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で、加熱により反応させ、ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第一水溶液を形成する(第一水溶液形成工程)。次に、第一水溶液に、酸化カルシウム(CaO)を添加し、水酸化カルシウム(Ca(OH))およびヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第二水溶液を形成する(第二水溶液形成工程)。次に、第二水溶液に、炭酸リチウムを添加し、水酸化リチウム(LiOH)およびヨウ化リチウム(LiI)を含有する第三水溶液を形成する(第三水溶液形成工程)。次に、第三水溶液に、LiX(例えば、LiBr)を添加する(LiX添加工程)。次に、水酸化リチウム(LiOH)を硫化し、水硫化リチウム(LiHS)を形成し、その後、水硫化リチウム(LiHS)から硫化水素を脱離させ、硫化リチウム(LiS)を形成する(LiS形成工程)。
本発明によれば、第一水溶液形成工程において、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とをpHが中性付近で反応させることで、多硫化物の発生を抑制したリチウム組成物を得ることができる。
従来の方法では、例えば図2に示すように、水に、ヨウ素、蟻酸、酸化カルシウムを添加し、その後、加熱を行うことで、水酸化カルシウム(Ca(OH))およびヨウ化カルシウム(CaI)を含有する水溶液A(本発明における第二水溶液に相当)を形成する。しかしながら、この方法の場合、その後の工程(第三水溶液形成工程およびLiS形成工程)が本発明と同じであったとしても、得られるリチウム組成物に多硫化物が発生する。この理由については、以下のように推定される。すなわち、図2においては、水に、ヨウ素、蟻酸、酸化カルシウムを添加した段階でpHが12以上になる。このようなアルカリ過剰条件下で還元反応を行うと、反応時に、酸化性物質であるヨウ素酸が発生する。ヨウ素酸は、硫化処理の際に使用する硫化水素と反応し、不純物である多硫化物が生成すると推測される。また、多硫化物由来の硫黄コロイドが生じると、組成ずれの原因にもなる。
これに対して、本発明においては、第一水溶液形成工程において、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とをpHが中性付近で反応させる。基本的には、CaI(LiIの原料)を形成するための酸化カルシウムと、Ca(OH)(LiSの原料)を形成するための酸化カルシウムとを、分けて添加する。これにより、ヨウ素および還元性水溶液を反応させる際のpH増加を抑制でき、ヨウ素酸の発生を抑制できる。さらに、本発明においては、還元性水溶液が、酸化カルシウムおよび蟻酸を含有している。蟻酸を組み合わせることで、酸化カルシウムによるpH増加を緩和でき、ヨウ素酸の発生を抑制できる。本発明においては、還元性水溶液が、アルカリである酸化カルシウムを含有するため、pHが増加し過ぎないように、還元性水溶液を少量ずつヨウ素と反応させる。
以下、本発明のリチウム組成物の製造方法における各工程について説明する。
1.第一水溶液形成工程
本発明における第一水溶液形成工程は、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とを、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で、加熱により反応させ、ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第一水溶液を形成する工程である。具体的には、下記反応式1の反応が生じる。
Ca(OH)+I+HCOOH → CaI+2HO+CO (反応式1)
なお、本発明における「水溶液」とは、溶媒として少なくとも水を含有する溶液をいい、水のみを溶媒としていても良く、水以外の溶媒をさらに含有していても良い。特に、上記水溶液は、全溶媒における水の割合が50重量%以上であることが好ましい。これらの点は、第一水溶液に限らず、後述する他の水溶液においても同様である。
第一水溶液形成工程では、ヨウ素および還元性水溶液を、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で反応させる。「pH5.5以上、pH10.21以下の条件」とは、ヨウ素と還元性水溶液とが反応する直前における溶液のpHをいう。具体的には、還元性水溶液を最初に添加する直前の溶液のpHである。第一水溶液形成工程におけるpHは、通常、pH10.21以下であり、8以下であっても良い。一方、第一水溶液形成工程におけるpHは、例えば、5.5以上であり、7以上であっても良い。
第一水溶液形成工程では、ヨウ素および還元性水溶液を、加熱により反応させる。加熱温度は、ヨウ素および還元性水溶液が反応する温度であれば良いが、ヨウ素と、水酸化カルシウムと、蟻酸とが反応する温度であれば良く、例えば、60℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましい。一方、加熱温度としては、例えば、90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。なお、ヨウ素は揮発性が強いために単純に加熱した場合でも蒸発して失われる場合がある。そのため還元反応が開始する温度付近で溶液温度を制御することが望ましい。
(1)ヨウ素
本発明においては、ヨウ素と、還元性水溶液とを反応させる。還元性水溶液と反応させる際に、ヨウ素を単独で用いても良く、ヨウ素および水を含有するヨウ素含有水溶液を用いても良い。なお、前者の態様としては、例えば、加熱された水に対して、ヨウ素および還元性水溶液をそれぞれ添加する態様を挙げることができる。一方、ヨウ素含有水溶液では、ヨウ素の少なくとも一部が水に溶解していれば良い。また、ヨウ素含有水溶液は、水およびヨウ素を少なくとも含有するが、pH5.5以上、pH10.21以下を維持できる範囲において、他の化合物を含有していても良い。他の化合物としては、例えば、酸化カルシウムが挙げられる。酸化カルシウムを添加すると、通常、pHは大幅に増加するため、添加できる酸化カルシウムは、通常、僅かである。
(2)還元性溶液
本発明における還元性水溶液は、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する。酸化カルシウム(CaO)は、通常、還元性水溶液中で水酸化カルシウム(Ca(OH))として存在する。
還元性水溶液における酸化カルシウムの含有量は、反応させるヨウ素の量に応じて調整することが好ましい。1molのヨウ素に対して、酸化カルシウムは、例えば、1.00mol〜1.10molの範囲内であり、1.00mol〜1.05molの範囲内であることが好ましい。一方、還元性水溶液における蟻酸の含有量は、ヨウ素の還元反応が十分に生じる量であることが好ましい。1molのヨウ素に対して、蟻酸は、例えば、1.0mol〜1.1molの範囲内であり、1.0mol〜1.05molの範囲内であることが好ましい。
還元性水溶液における酸化カルシウムおよび蟻酸の濃度は、それぞれ、例えば、0.3mol/L〜0.6mol/Lの範囲内である。また、還元性水溶液のpHは、例えば、11以上である。
(3)ヨウ素と還元性水溶液との反応
第一水溶液形成工程は、ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とを、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で、加熱により反応させる。
ヨウ素と還元性水溶液とを反応させる方法は、ヨウ素に対し還元性水溶液を少量ずつ反応させることができる方法であることが好ましい。ヨウ素と還元性水溶液とを反応させる方法の一例としては、図3に示すように、ヨウ素および水を含有するヨウ素含有水溶液を加熱し、加熱したヨウ素含有水溶液に対して還元性水溶液を添加する方法を挙げることができる。還元性水溶液を添加する方法としては、還元性水溶液を少量ずつ添加する方法が挙げられる。例えば、単位時間(分)当たりの還元性水溶液の添加量は、例えば、1mL〜10mLの範囲内としても良い。また、還元性水溶液の添加時間としては、例えば、1時間〜10時間の範囲内である。
ヨウ素と還元性水溶液とを反応させる方法の他の例としては、図4に示すように、加熱した水に対して、ヨウ素および還元性水溶液をそれぞれ添加する方法を挙げることができきる。中でも、加熱した水に対して、ヨウ素を複数回に分けて添加することが好ましい。ヨウ素の蒸発を抑制することで、リチウム組成物の組成ずれの発生を抑制できるからである。
ヨウ素の蒸発は、以下の理由により生じると推定される。すなわち、pHが低い条件(pH5.5未満)で反応を行うと、遊離ヨウ素が多く発生し、同時に起こっている還元反応で発生した二酸化炭素に運ばれて、昇華性を有するヨウ素も蒸発するためであると推測される。pH5.5は、通常の水のうち最も低いpHであり、炭酸が飽和している水のpHである。
溶液のpHが高い(アルカリ性が強い)場合、ヨウ素と水酸化物イオンの反応によってヨウ素酸が発生すると推定される。
+6OH→5I+IO
ヨウ素酸はアルカリ性では酸化力が弱いが酸性〜中性域では強い酸化剤となりヨウ素イオンを酸化してヨウ素(I)を生じる。溶液pHをアルカリ性条件で維持すると合成物中にヨウ素酸を残すこととなり、後工程で多硫化物発生の原因となる。また、一度に還元性溶液を添加すると局所的にpHがアルカリ性となり、ヨウ素酸が発生すると考えられる。その後、撹拌によって溶液pHが中性付近に推移するとヨウ素イオンを酸化してヨウ素を生じ、蒸発によって失われる量が多くなると推定される。そのため、溶液pHを中性付近で維持しながら還元反応を行う必要がある。
ヨウ素を複数回分けて添加する場合、例えば、還元性水溶液の添加開始と同時か、添加開始の前に、初回分のヨウ素を添加することが好ましい。溶液のpHを低く維持できるからである。例えば、ヨウ素を2回〜10回に分けて添加することが好ましい。また、ヨウ素を複数回分けて添加する場合、ヨウ素を単独で添加しても良く、ヨウ素および水を含有するヨウ素含有水溶液を添加しても良い。
2.第二水溶液形成工程
本発明における第二水溶液形成工程は、上記第一水溶液に、酸化カルシウムを添加し、水酸化カルシウム(Ca(OH))および上記ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第二水溶液を形成する工程である。添加した酸化カルシウムは、通常、第二水溶液中で水酸化カルシウムとして存在する。
第二水溶液形成工程で添加する酸化カルシウムは、主に、LiSを形成するための原料として用いられる。酸化カルシウムの添加量は、リチウム組成物におけるLiSの割合に応じて、適宜選択することができる。
3.第三水溶液形成工程
本発明における第三水溶液形成工程は、上記第二水溶液に、炭酸リチウムを添加し、水酸化リチウム(LiOH)およびヨウ化リチウム(LiI)を含有する第三水溶液を形成する工程である。具体的には、下記反応式2、3の反応が生じる。
CaI+LiCO → 2LiI+CaCO (反応式2)
Ca(OH)+LiCO → 2LiOH+CaCO (反応式3)
炭酸リチウムの添加量としては、第二水溶液中に含有される水酸化カルシウムおよびヨウ化カルシウムの量に応じて適宜調整される。
第三水溶液において、LiIに対するLiOHのモル比(MLiOH/MLiI)は、目的とするリチウム組成物に含まれるLiIの割合によって、適宜選択することができ、例えば、1以上であることが好ましく、4以上であることが好ましい。LiI−LiOH系の状態図を考えると、LiI:LiOH=1:1の場合、およびLiI:LiOH=1:4の場合に安定相を形成することが示唆される。特に、LiI:LiOH=1:4の安定相は、340℃まで固体を維持できると推測される。
本発明においては、第三水溶液形成工程と、後述するLiS形成工程との間に、第三水溶液に、LiX(XはF、ClまたはBrである)を添加するLiX添加工程を有していても良い。LiXの添加量については、目的とするリチウム組成物に応じて適宜選択することができる。
4.LiS形成工程
本発明におけるLiS形成工程は、上記水酸化リチウム(LiOH)を硫化し、水硫化リチウム(LiHS)を形成し、その後、上記水硫化リチウム(LiHS)から硫化水素を脱離させ、上記硫化リチウム(LiS)を形成する工程である。
LiS形成工程は、少なくとも、LiOHを硫化してLiHSを形成する硫化処理と、LiHSからHSを脱離させ、LiSを形成する硫化処理とを行なう。また、硫化処理の前に、第三水溶液を乾燥する乾燥処理を行うことが好ましい。
(1)乾燥処理
乾燥処理では、第三水溶液を乾燥し水分を除去することにより、LiOHおよびLiIを少なくとも含有する前駆体混合物を得る。
乾燥方法は特に限定されるものではないが、加熱乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)、凍結乾燥、スプレー乾燥およびこれらの任意の組み合わせ等を挙げることができる。なお、凍結乾燥は、通常、対象物を凍結させ、真空ポンプにて減圧し、溶媒を昇華させて乾燥する方法である。加熱乾燥の場合、加熱温度は、例えば、50℃〜200℃の範囲内であり、120℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。
(2)硫化処理
硫化処理では、LiOHを硫化してLiHSを形成し、LiHSおよびLiIを少なくとも含有する原料混合物を得る。
LiOHの硫化方法としては、例えば、前駆体混合物に硫化ガスを反応させる方法を挙げることができる。硫化ガスとしては、例えば、HS、CS、単体硫黄蒸気等を挙げることができ、中でも、HSまたはCSが好ましい。単体硫黄蒸気は、条件によっては、凝集する可能性や高分子硫黄を生成する可能性があるからである。なお、硫化ガスは、アルゴンガス等の不活性ガスにより希釈されていても良い。硫化ガスを反応させる際の温度は、例えば、0℃〜200℃の範囲内であり、100℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。また、硫化ガスを反応させる時間は、例えば、10分〜180分の範囲内である。
LiOHの硫化は、前駆体混合物を溶媒に溶解もしくは分散させた状態、または、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、中でも前者が好ましい。なお、本発明における溶媒とは、溶質が溶解した厳密な意味での溶媒のみならず、分散媒の意味も包含する。特に、本発明においては、極性溶媒中で、LiOHの硫化を行うことが好ましい。LiOHの硫化を効率良く行うことができるからである。極性溶媒としては、具体的には、プロトン性の極性溶媒を挙げることができる。プロトン性の極性溶媒の一例としては、炭素数が1〜8のアルコールを挙げることができる。上記アルコールとしては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール等を挙げることができる。プロトン性の極性溶媒の他の例としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類等を挙げることができる。
(3)脱硫化水素処理
脱硫化水素処理では、LiHSから硫化水素を脱離させLiSを形成する。具体的には、2LiHS→LiS+HSの反応が生じる。
脱硫化水素処理は、特に限定されるものではないが、例えば、加熱処理を挙げることができる。加熱処理の温度は、例えば、150℃〜220℃の範囲内であり、170℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。加熱処理の時間は、例えば、15分間〜6時間の範囲内であり、30分間〜5時間の範囲内であることが好ましい。また、加熱処理は、原料混合物を溶媒に溶解もしくは分散させた状態、または、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。前者の場合、特に、溶媒として非プロトン性溶媒を用いることが好ましく、無極性の非プロトン性溶媒がより好ましい。中でも、脱硫化水素処理に用いられる溶媒は、25℃で液体のアルカンであることが好ましい。
また、本発明においては、硫化処理および脱硫化水素処理を、一つの反応として行っても良い。具体的には、LiOHおよびLiIを含有する前駆体混合物におけるLiOHを硫化する際の温度を比較的高く設定することで、硫化および脱硫化水素を連続的に行うことができる。また、硫化処理および脱硫化水素処理を、溶媒に溶解もしくは分散させた状態で連続的に行っても良い。
B.硫化物固体電解質材料の製造方法
図5は、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、本発明においては、まず、上述した製造方法により、LiSおよびLiIを少なくとも含有するリチウム組成物を準備する(準備工程)。次に、リチウム組成物と、P(LiS以外の硫化物)とを反応させ、硫化物固体電解質材料を合成する(合成工程)。具体的には、リチウム組成物を非極性溶媒に分散させ、Pを添加し、非晶質化する。その後、非極性溶媒を乾燥により除去することで、硫化ガラスである硫化物固体電解質材料が得られる。また、硫化ガラスを作製した後に熱処理を行なうことで、ガラスセラミックスである硫化物固体電解質材料が得られる。
本発明によれば、特定のリチウム組成物を用いることにより、不純物の少ない硫化物固体電解質材料を合成することができる。
1.準備工程
本発明における準備工程は、上述したリチウム組成物の製造方法により、リチウム組成物を準備する工程である。詳細については、上記「A.リチウム組成物の製造方法」に記載した内容と同様である。
2.合成工程
本発明における合成工程は、リチウム組成物と、LiS以外の硫化物とを反応させ、硫化物固体電解質材料を合成する工程である。
LiS以外の硫化物としては、所望の硫化物固体電解質材料を得ることができれば特に限定されないが、例えば、A元素(Aは、P、Si、Ge、AlまたはBである)およびS元素を含有する組成物であることが好ましい。具体的には、P、P、SiS、GeS、Al、B等を挙げることができる。
硫化物固体電解質材料の組成は、特に限定されるものではない。例えば、LiS、PおよびLiIを含有する原料を用いて硫化物固体電解質材料を合成する場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましい。化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。LiSの上記割合は、Pの代わりに、Al、Bを用いた場合も同様である。
一方、LiS、SiSおよびLiIを含有する原料を用いて硫化物固体電解質材料を合成する場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、62.5mol%〜70.9mol%の範囲内であることが好ましい。化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。LiSの上記割合は、SiSの代わりに、GeSを用いた場合も同様である。
LiIの割合は、例えば1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましく、10mol%〜30mol%の範囲内であることが特に好ましい。なお、LiIの割合は、硫化物固体電解質材料全体に対するLiIの割合をいう。例えば、xLiI・(100−x)(LiPS)におけるxをいう。
硫化物固体電解質材料を合成する合成処理は、所望の硫化物固体電解質材料を得ることができる処理であれば特に限定されるものではない。合成処理の一例として、非晶質化処理を挙げることができる。熱処理工程により、硫化物ガラスである硫化物固体電解質材料が得られる。非晶質化処理としては、例えば、メカニカルミリングおよび溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリングが好ましい。また、メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであっても良く、湿式メカニカルミリングであっても良い。
必要に応じて、非晶質化処理の後に熱処理工程を行なっても良い。熱処理工程により、ガラスセラミックスである硫化物固体電解質材料が得られる。熱処理温度は、例えば160℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。熱処理時間は、例えば1分間〜24時間の範囲内であることが好ましい。また、熱処理は、不活性ガス雰囲気(例えばArガス雰囲気)で行うことが好ましい。熱処理の方法は、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。また、リチウム組成物と、LiS以外の硫化物とを含有する混合物に固相反応処理を行っても良い。固相反応処理により、結晶質材料である硫化物固体電解質材料が得られる。
3.硫化物固体電解質材料
本発明により得られる硫化物固体電解質材料は、少なくともLiIを有し、通常は、LiI以外のイオン伝導体(例えば、LiPS)を有する。また、LiIの少なくとも一部は、LiI成分としてイオン伝導体の構造中に取り込まれた状態で存在することが好ましい。また、硫化物固体電解質材料は、LiX(Xは、F、ClまたはBrである)を有していても良い。LiXの少なくとも一部は、LiX成分としてイオン伝導体の構造中に取り込まれた状態で存在することが好ましい。
上記イオン伝導体は、例えば、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、およびSを有することが好ましく、中でも、オルト組成またはその近傍組成を有することがより好ましい。化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。具体的には、上記イオン伝導体が、オルト組成のアニオン構造(PS 3−構造、SiS 4−構造、GeS 4−構造、AlS 3−構造、BS 3−構造)を主体として含有することが好ましい。オルト組成のアニオン構造の割合は、イオン伝導体における全アニオン構造に対して、60mol%以上であることが好ましい。なお、オルト組成のアニオン構造の割合は、ラマン分光法、NMR、XPS等により決定することができる。
硫化物固体電解質材料は、LiSおよび架橋硫黄を実質的に含有しないことが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。「LiSを実質的に含有しない」ことは、X線回折により確認することができる。具体的には、LiSのピーク(2θ=27.0°、31.2°、44.8°、53.1°)を有しない場合は、LiSを実質的に含有しないと判断することができる。一方、架橋硫黄とは、LiSと上記Aの硫化物とが反応してなる化合物における架橋硫黄をいう。例えば、LiSおよびPが反応してなるSP−S−PS構造の架橋硫黄が該当する。「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定により、確認することができる。例えば、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、SP−S−PS構造のピークが、通常402cm−1に表れる。そのため、このピークが検出されないことが好ましい。
硫化物固体電解質材料の形状としては、例えば、粒子状を挙げることができる。硫化物固体電解質材料の平均粒径(D50)は、例えば、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、25℃におけるLiイオン伝導度は、例えば1×10−4S/cm以上であり、1×10−3S/cm以上であることが好ましい。また、硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導を利用する任意の用途に用いることができ、中でも電池に用いることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[比較例1]
比較例1では、従来の方法でリチウム組成物を作製した。4つ口フラスコに純水600mlおよび酸化カルシウム1.523gを添加した。続いて、ヨウ素0.530g、蟻酸0.114g(濃度88%)を添加し、80℃に加熱した。pHは少なくとも12以上であった。ヨウ素の溶解を確認後、炭酸リチウム2.006gを添加した。加熱停止後、3時間以上撹拌してろ過した。ろ液に対し、臭化リチウム0.363gを添加した。次に、ろ液をエバポレータにて濃縮乾燥した。得られた粉末は白色であった。
得られた粉末をトリデカン−ペンタノール混合溶液に添加した。得られた溶液を撹拌しながら、120℃でHSガスを2時間流通させた(硫化処理)。HSガスを吹き込んだ直後から溶液は緑色呈色し、時間とともに呈色が強くなった。HSガスを流通させた状態で190℃、4時間維持してアルコールを除去した。その後、Arガスを流通させた状態で、190℃で5時間程度撹拌を行い、LiHSから硫化水素を脱離させた(脱硫化水素処理)。その結果、濃緑色のスラリーが得られ、このスラリーをろ過して、黒色粉末を得た。
一方、ヨウ化リチウム(購入試薬)と水酸化リチウム(購入試薬)とを混合して、ヨウ化リチウムおよび水酸化リチウムの混合材料を作製した。具体的には、購入試薬を純水に溶解させ、エバポレータで濃縮したのちにアルゴン気流中で150℃で乾燥したものを混合材料とした。この混合材料に対し、硫化処理をしたところ、白色粉末が得られた。すなわち、水系合成を得ない混合材料に対し、硫化処理をしたところ、白色粉末が得られた。それぞれ購入した試薬を純水に溶解させた。この溶液をエバポレータで濃縮したのちにアルゴン気流中で150℃で乾燥した。
水系合成を経ない混合材料との対比から、比較例1における濃緑色スラリーは、硫黄コロイドの混入が想定された。そこで、濃緑色スラリーのろ過液を元素分析したところ硫黄が確認された。これらの結果等から、硫黄コロイドの発生は、合成系内に、ヨウ素酸が発生し、ヨウ素酸が硫化水素と反応したためと推定される。そこで、ヨウ素酸の発生を抑制するため、ヨウ素添加時の溶液pHを中性領域にすることが有効であるかを、以下のように確認した。
[実施例1]
実施例1では、ヨウ化リチウム合成における溶液のpHが高くなることを抑制するために、ヨウ素含有水溶液に対して還元性溶液を徐々に添加し、リチウム組成物を作製した。4つ口フラスコに純水400mlおよびヨウ素0.530gを添加し、その後80℃に加熱した。pHは7であった。事前に純水200mlに酸化カルシウム0.117g、蟻酸0.114g(濃度88%)を混合した還元性溶液を用意し、4つ口フラスコに1時間以上かけて添加した。ヨウ素の溶解を確認後、酸化カルシウム1.406g、炭酸リチウム2.006gを添加した。加熱停止後、3時間以上撹拌してろ過した。ろ液に対し、臭化リチウム0.363gを添加した。次に、ろ液をエバポレータにて濃縮乾燥した。得られた粉末は白色であった。
得られた粉末に対して、比較例1と同様の硫化処理および脱硫化水素処理を行った。その結果、硫化処理後の呈色は、極僅か、または、ほぼ無い状態であった。また、脱硫化水素処理後の粉末は、薄灰色であった。なお、還元性溶液の添加時に、ヨウ素の盛んな蒸発が確認された。
[実施例2]
実施例2では、ヨウ化リチウム合成における溶液のpHの上限を調べるために、ヨウ素含有水溶液に、使用する酸化カルシウムの一部を添加し、リチウム組成物を作製した。4つ口フラスコに純水400ml、ヨウ素0.530g、酸化カルシウム1mgを添加し、その後80℃に加熱した。pHは10.21であった。事前に純水200mlに酸化カルシウム0.117g、蟻酸0.114g(濃度88%)を混合した還元性溶液を用意し、4つ口フラスコに1時間以上かけて添加した。ヨウ素の溶解を確認後、酸化カルシウム1.405g、炭酸リチウム2.006gを添加した。加熱停止後、3時間以上撹拌してろ過した。ろ液に対し、臭化リチウム0.363gを添加した。次に、ろ液をエバポレータにて濃縮乾燥した。得られた粉末は白色であった。
得られた粉末に対して、比較例1と同様の硫化処理および脱硫化水素処理を行った。その結果、硫化処理後の呈色は、極僅か、または、ほぼ無い状態であった。また、脱硫化水素処理後の粉末は、薄灰色であった。なお、還元性溶液の添加時に、ヨウ素の蒸発が確認された。
[比較例2]
比較例2では、ヨウ化リチウム合成における溶液のpHの上限を調べるために、ヨウ素含有水溶液に、使用する酸化カルシウムの一部を添加し、リチウム組成物を作製した。4つ口フラスコに純水400ml、ヨウ素0.530gを添加し、事前に純水200mlに酸化カルシウム0.117g、蟻酸0.114g(濃度88%)を混合した還元性溶液をさらに添加し、その後80℃に加熱した。pHは11.50であった。ヨウ素の溶解を確認後、酸化カルシウム1.406g、炭酸リチウム2.006gを添加した。加熱停止後、3時間以上撹拌してろ過した。ろ液に対し、臭化リチウム0.363gを添加した。次に、ろ液をエバポレータにて濃縮乾燥した。得られた粉末は白色であった。
得られた粉末に対して、比較例1と同様の硫化処理および脱硫化水素処理を行った。その結果、硫化水素を吹き込んだ直後から溶液は緑色呈色し、時間とともに呈色が強くなった。脱硫化水素処理により濃緑色のスラリーが得られ、このスラリーをろ過した粉末は、灰黒色であった。なお、還元性溶液の添加時に、ヨウ素の盛んな蒸発は確認されなかった。
[実施例3]
実施例3では、ヨウ化リチウム合成における溶液のpHを中性付近で維持、さらにヨウ素を分割して投入し、リチウム組成物を作製した。4つ口フラスコに純水400mlを添加し、その後80℃に加熱した。pHは7であった。ヨウ素0.530gを6分割し、約20分間隔で4つ口フラスコに添加した。また、事前に純水200mlに酸化カルシウム0.117g、蟻酸0.114g(濃度88%)を混合した還元性溶液を用意し、最初のヨウ素投入と同時に注入を始め、約2時間かけて全量を添加した。ヨウ素の溶解を確認後、酸化カルシウム1.406g、炭酸リチウム2.006gを添加した。加熱停止後、3時間以上撹拌してろ過した。ろ液に対し、臭化リチウム0.363gを添加した。次に、ろ液をエバポレータにて濃縮乾燥した。得られた粉末は白色であった。
得られた粉末に対して、比較例1と同様の硫化処理および脱硫化水素処理を行った。その結果、硫化処理後の呈色は、極僅か、または、ほぼ無い状態であった。また、脱硫化水素処理後の粉末は、薄灰色であった。なお、還元性溶液の添加時に、ヨウ素の蒸発が確認された。なお、還元性溶液の添加時に、ヨウ素の盛んな蒸発は確認されなかった。実施例1〜3、比較例1、2の実験条件を表1に示す。
Figure 2017001920
[評価]
(多硫化物の抑制の有無)
実施例1〜3では、硫化処理による呈色が抑制されており、薄灰色粉末が得られていることから、多硫化物の発生を抑制することができることが確認できた。
(ヨウ素の組成ずれの有無)
実施例1〜実施例3、比較例2で得られた粉末について元素分析を行ない、ヨウ素減少量(仕込み量からのずれ量、重量%)を算出した。秤量したサンプルをアルカリ溶液に溶解させた。なお、サンプルは純水に溶解させてもよい。定容後にICP発光分析法にて測定を実施した。LiおよびIの割合を臭化リチウムの重量で規格化した。
ヨウ素減少量と、初期pH(第一水溶液形成工程のpH)とを図6に示す。図6に示すように、実施例1、2、比較例2の結果に着目すると、pHが高いほどヨウ素の蒸発を抑制できることが示唆された(なお、pHが高いほど多硫化物は多量に生成する)。一方、実施例1、3の結果に着目すると、実施例3では、中性域でも、ヨウ素の蒸発を抑制できた。すなわち、実施例3では、多硫化物の発生の抑制と、ヨウ素の蒸発の抑制とを両立できた。また、実施例1、3の組成変化を表2に示す。なお、表2中のかっこ内の数値は、理論値の数値からのずれ量(重量%)を示している。
Figure 2017001920
表2に示すように、実施例1では、理論値(仕込み量)に対して、Iが5重量%程度ずれていた。これに対して、実施例1では、理論値(仕込み量)とほぼ同じ値となった。このように、実施例3では、ヨウ素の蒸発を抑制できることが確認された。このように、ヨウ素減少量は、5重量%未満であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。

Claims (6)

  1. 硫化リチウム(LiS)およびヨウ化リチウム(LiI)を少なくとも含有するリチウム組成物の製造方法であって、
    ヨウ素と、酸化カルシウム、蟻酸および水を含有する還元性水溶液とを、pH5.5以上、pH10.21以下の条件で、加熱により反応させ、ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第一水溶液を形成する第一水溶液形成工程と、
    前記第一水溶液に、酸化カルシウムを添加し、水酸化カルシウム(Ca(OH))および前記ヨウ化カルシウム(CaI)を含有する第二水溶液を形成する第二水溶液形成工程と、
    前記第二水溶液に、炭酸リチウムを添加し、水酸化リチウム(LiOH)およびヨウ化リチウム(LiI)を含有する第三水溶液を形成する第三水溶液形成工程と、
    前記水酸化リチウム(LiOH)を硫化し、水硫化リチウム(LiHS)を形成し、その後、前記水硫化リチウム(LiHS)から硫化水素を脱離させ、前記硫化リチウム(LiS)を形成するLiS形成工程と、
    を有することを特徴とするリチウム組成物の製造方法。
  2. 前記第一水溶液形成工程において、前記ヨウ素および水を含有するヨウ素含有水溶液を加熱し、前記加熱したヨウ素含有水溶液に対して前記還元性水溶液を添加することを特徴とする請求項1に記載のリチウム組成物の製造方法。
  3. 前記第一水溶液形成工程において、加熱した水に対して、前記ヨウ素および前記還元性水溶液をそれぞれ添加することを特徴とする請求項1に記載のリチウム組成物の製造方法。
  4. 前記加熱した水に対して、前記ヨウ素を複数回に分けて添加することを特徴とする請求項3に記載のリチウム組成物の製造方法。
  5. 前記第三水溶液形成工程および前記LiS形成工程の間に、前記第三水溶液に、LiX(XはF、ClまたはBrである)を添加するLiX添加工程を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のリチウム組成物の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のリチウム組成物の製造方法により、リチウム組成物を準備する準備工程と、
    前記リチウム組成物と、LiS以外の硫化物とを反応させ、硫化物固体電解質材料を合成する合成工程と、
    を有することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法。
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