本願は、「TEMPERATURE SHIFT FOR HIGH YIELD EXPRESSION OF POLYPEPTIDES IN YEAST AND OTHER TRANSFORMED CELLS」と題する2013年3月15日出願の米国仮出願第61/791,471号の利益を主張し、2013年3月15日出願の米国仮出願第61/790,613号の利益も主張し、それらのそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
本願は、2014年3月13日に作成された、「43257o3413.txt」という名の、14,286バイトのサイズを有するファイル中に含有される、生物学的配列表を、その開示の一部として含み、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
以下にさらに記載されるように、出願者らは、酵母などの真核細胞中で生成される所望のタンパク質の収率を大幅に増加させる方法を特定した。すでに高度に最適化されている発現系に対してでさえ、本方法は、所望のタンパク質の収率を最大で約30%増加させた。
一態様では、本開示は、所望のタンパク質を生成する方法を提供し、(a)第1の温度で、上記の所望のタンパク質の発現を提供する、1つ以上の遺伝子を含む、真核細胞を培養することと、(b)第2の温度で上記の真核細胞を培養し、上記の真核細胞が上記の所望のタンパク質を生成することを可能にすることと、を含み、上記の第2の温度は、上記の第1の温度とは異なる。任意に、上記の培養は、(a)フェドバッチ発酵条件下で、培養培地中で酵母細胞集団を培養するステップであって、各酵母細胞は、ポリペプチドをコードするDNA断片を含み、上記のDNA断片は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)転写プロモータ及び転写ターミネータに作動可能に連結され、タンパク質は、グリセルアルデヒド−3−リン酸ではなく、発酵は、第1の供給速度での発酵性糖供給を含み、発酵は、第1の酸素移動速度で撹拌される、ステップと、(b)バッチ発酵中の集団の呼吸商(RQ)を測定し、それが所望の所定の範囲内であるか決定するステップであって、培養の開始後約20〜40時間におけるRQの所望の所定の範囲は、約1.08〜約1.35である、ステップと、(c)RQが所望の所定の範囲外であるとき、発酵性糖供給速度の第2の供給速度への調節または酸素移動速度の第2の酸素移動速度への調節のうちの片方または両方を行うステップと、(d)培養ステップ全体にわたって1回以上、ステップ(b)及び(c)を繰り返すステップと、(e)培養培地から酵母細胞を採取するステップと、(f)細胞及び/または培養培地からポリペプチドを回収するステップと、を含んでもよい。
上記の第1の温度は、約20℃〜約32℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約24℃〜約31.5℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約27℃〜約31℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約27.5℃〜約30℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約20℃〜約29.5℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約24℃〜約29℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約27℃〜約28.5℃であってもよい。
上記の第1の温度は、約27.5℃〜約28.5℃であってもよい。
上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約1℃〜約6℃高くてもよい。
上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約1℃〜約3℃高くてもよい。
上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約2℃〜約4℃高くてもよい。
上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約2℃〜約3℃高くてもよい。
上記の第2の温度は、約30℃〜約34℃であってもよい。
上記の第2の温度は、約30℃〜約32℃であってもよい。
上記の第2の温度は、約30℃〜約31.5℃であってもよい。
上記の第2の温度は、約30℃または約31℃であってもよい。
上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも高くてもよい。
上記の所望のタンパク質は、マルチサブユニット複合体を含む。
上記のマルチサブユニット複合体は、抗体を含んでもよい。
上記の抗体は、ヒトまたはヒト化であってもよい。
上記の抗体は、IL−6、TNFα、CGRP、PCSK9、HGF、またはNGFに特異的であってもよい。
上記の方法は、上記の所望のタンパク質の収率を増加させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、1つ以上の産物関連変異体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、サイズ排除クロマトグラフィまたはゲル電気泳動によって検出されるような、上記の所望のマルチサブユニット複合体よりも高いまたは低い見かけの分子量を有する、産物関連変異体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、異常なジスルフィド結合を有する複合体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、減少したシステインを有する複合体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、異常なグリコシル化を有する複合体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の方法は、上記の第1の温度と上記の第2の温度との間の差なしで達成される同じ方法に対して、1つ以上の産物関連変異体の相対存在量を減少させてもよい。
上記の真核細胞は、酵母細胞を含んでもよい。
上記の酵母細胞は、メチロトローフ酵母を含んでもよい。
上記のメチロトローフ酵母は、ピキア属であってもよい。
ピキア属の上記のメチロトローフ酵母は、ピキア・パストリスであってもよい。
ピキア属の上記のメチロトローフ酵母は、ピキア・アンガスタ、ピキア・ギリエルモンディイ、ピキア・メタノリカ、及びピキア・イノシトベラからなる群より選択されてもよい。
上記の所望のタンパク質の発現を提供する遺伝子は、1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれてもよい。
上記のゲノム遺伝子座のうちの少なくとも1つは、pGAP遺伝子座、3’AOX TT遺伝子座;PpURA5;OCH1;AOX1;HIS4;GAP;pGAP;3’AOX TT;ARG;及びHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択されてもよい。
上記の所望のタンパク質の上記のサブユニットをコードする遺伝子のうちの少なくとも1つは、誘導性または構成的プロモータの制御下で発現されてもよい。
上記の誘導性プロモータは、AOX1、CUP1、テトラサイクリン誘導性、チアミン誘導性、及びFLD1プロモータからなる群より選択されてもよい。
ステップ(a)は、グリセロールが枯渇するまで、上記のグリセロールを炭素源として含む培養培地中で、上記の真核細胞を培養することを含んでもよい。
上記の所望のタンパク質は、CUP1、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、FLD1、ADH1、アルコールデヒドロゲナーゼII、GAL4、PHO3、PHO5、及びPykプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、チアミン誘導性プロモータ、それから得られるキメラプロモータ、酵母プロモータ、哺乳類プロモータ、昆虫プロモータ、植物プロモータ、爬虫類プロモータ、両生類プロモータ、ウイルスプロモータ、及び鳥類プロモータからなる群より選択されるプロモータの制御下で発現されてもよい。
上記の真核細胞は、2倍体、4倍体細胞、または倍数体であってもよい。
方法は、上記の真核細胞から、または培養培地から上記の所望のタンパク質を精製することをさらに含んでもよい。
上記の所望のタンパク質は、上記の真核細胞の細胞内成分、細胞質、核質、または膜から精製されてもよい。
上記の真核細胞は、上記の所望のタンパク質を培養培地中に分泌してもよい。
ステップ(a)は、バッチ相を含んでもよい。
上記のバッチ相は、炭素源を含む培地中で真核細胞を培養することを含んでもよい。
上記のバッチ相の終了は、培養培地中の炭素源の枯渇によって決定されてもよい。
ステップ(b)は、フェドバッチ相を含んでもよい。
呼吸商(RQ)は、ステップ(b)中に指定値で、または指定範囲中で維持されてもよい。
上記の指定されたRQ値は、約1.12であってもよい。
上記の指定されたRQ範囲は、約1.0〜1.24、または約1.06〜1.18、または約1.09〜1.15であってもよい。
上記のRQ値または上記のRQ範囲は、供給速度、供給組成、送気流量、撹拌速度、及び/または送気の酸素濃度のうちの1つ以上を調整することによって維持されてもよい。
方法は、バッチ相及びフェドバッチ相を含んでもよい。
バッチ相は、上記の炭素源が枯渇するまで、炭素源で真核細胞を培養することを含んでもよい。上記の炭素源は、グリセロール、グルコース、エタノール、クエン酸塩、ソルビトール、キシロース、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース、メリビオース、ラクトース、マルトース、ラムノース、リボース、マンノース、マンニトール、及びラフィノースのうちの1つ以上を含んでもよく、好ましくはグリセロールを含む。
フェドバッチ相は、バッチ相後に開始されてもよい。
温度シフトは、バッチ相の終了時または終了間近、フェドバッチ相の開始時または開始間近、バッチ相とフェドバッチ相との間に達成されてもよい。
例えば、温度シフトは、炭素源の枯渇後、または供給物添加を開始する前、または供給物添加を開始した後に達成されてもよい。
好ましくは、温度シフトは、供給物添加を開始した後5時間未満、例えば、供給物添加を開始した後4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満、20分未満、または5分未満に達成される。しかしながら、温度シフトは、より早いまたは遅い時間に達成されてもよい。
方法は、培養物へのエタノールボーラス添加を含んでもよい。エタノールボーラスは、初期の培養物に添加される炭素源の枯渇と同時に添加されてもよく、それは、溶存酸素濃度(溶存酸素スパイク)の急速な増加によって、または他の手段によって検出されてもよい。
エタノールボーラスは、約0.01%〜約4%、約0.02%〜約3.75%、約0.04%〜約3.5%、約0.08%〜約3.25%、約0.1%〜約3%、約0.2%〜約2.75%、約0.3%〜約2.5%、約0.4%〜約2.25%、約0.5%〜約1.5%、約0.5%〜約2%、約0.6%〜約1.75%、約0.7%〜約1.5%、または約0.8%〜約1.25%の培養物(cutlture)中のエタノールの濃度をもたらしてもよい。
エタノールボーラスは、少なくとも約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、または0.9%(重量/体積)であってもよい培養物中のエタノールの濃度をもたらしてもよい。
エタノールボーラスは、最大で約4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.8%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.35%、0.3%、0.25%、0.2%、または0.15%(重量/体積)であってもよい培養物中のエタノールの濃度をもたらしてもよい。
エタノールボーラスを添加するステップは、上記の培養物にエタノールを添加すること、上記の培養物にエタノールを含む担体を添加すること、エタノールを含む培地もしくは担体に上記の細胞を添加すること、または培養培地の一部を交換することを含んでもよい。
上記の所望のタンパク質は、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む、1つ以上のポリペプチドを含有してもよい。
上記の所望のタンパク質は、マルチサブユニット複合体を含んでもよい。
上記のマルチサブユニット複合体は、抗体を含んでもよい。
方法は、温度シフトの非存在下で達成される同じ方法に対して、1つ以上の産物関連変異体の相対存在量を減少させてもよい。
方法は、温度シフトの非存在下で達成される同じ方法に対して、サイズ排除クロマトグラフィまたはゲル電気泳動によって検出されるような、上記の所望のマルチサブユニット複合体よりも高いまたは低い見かけの分子量を有する、産物関連変異体の相対存在量を減少させてもよい。
方法は、温度シフトの非存在下で達成される同じ方法に対して、異常な化学量論を有する複合体の相対存在量を減少させてもよい。
方法は、温度シフトの非存在下で達成される同じ方法に対して、異常なジスルフィド結合を有する複合体の相対存在量を減少させてもよい。
方法は、真核細胞に供給物を添加することを含んでもよい。
呼吸商(RQ)値は、指定値で、または指定範囲中で維持されてもよい。上記の指定されたRQ値は、1.12であってもよい。上記の指定されたRQ範囲は、例えば、1.0〜1.24、または1.06〜1.18、または1.09〜1.15であってもよい。
指定されたRQ値または範囲は、グルコースの濃度、酸素の利用率、撹拌の強度、ガス圧力、送気または他のガス混合物の流量、培養物の粘度、培養密度、送気または他のガス混合物中の酸素の濃度、及び温度のうちの1つ以上を調整(増加または減少)することによって維持されてもよい。例えば、供給物添加の速度(供給速度)は、例えば、指定されたRQ値または範囲を維持するために、呼吸商(RQ)を制御するために調整(増加または減少)されてもよい。
上記の供給物は、少なくとも1つの発酵性炭素源を含んでもよい。
上記の炭素源は、グリセロール、グルコース、エタノール、クエン酸塩、ソルビトール、キシロース、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース、メリビオース、ラクトース、マルトース、ラムノース、リボース、マンノース、マンニトール、及びラフィノースのうちの1つ以上を含んでもよい。
上記の所望のタンパク質の発現を提供する遺伝子は、1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれてもよい。
上記のゲノム遺伝子座のうちの少なくとも1つは、pGAP遺伝子座、3’AOX TT遺伝子座;PpURA5;OCH1;AOX1;HIS4;GAP;pGAP;3’AOX TT;ARG;及びHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択されてもよい。
マルチサブユニット複合体の上記のサブユニットをコードする遺伝子のうちの少なくとも1つは、誘導性または構成的プロモータの制御下で発現されてもよい。
上記の誘導性プロモータは、AOX1、CUP1、テトラサイクリン誘導性、チアミン誘導性、及びFLD1プロモータからなる群より選択されてもよい。
マルチサブユニット複合体の上記のサブユニットをコードする遺伝子のうちの少なくとも1つは、CUP1、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、FLD1、ADH1、アルコールデヒドロゲナーゼII、GAL4、PHO3、PHO5、及びPykプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、チアミン誘導性プロモータ、それから得られるキメラプロモータ、酵母プロモータ、哺乳類プロモータ、昆虫プロモータ、植物プロモータ、爬虫類プロモータ、両生類プロモータ、ウイルスプロモータ、及び鳥類プロモータからなる群より選択されるプロモータの制御下で発現されてもよい。
上記の真核細胞は、2倍体、4倍体細胞、または倍数体であってもよい。
方法は、上記の真核細胞から、または培養培地から上記のマルチサブユニット複合体を精製することをさらに含んでもよい。
上記のマルチサブユニット複合体は、上記の真核細胞の細胞内成分、細胞質、核質、または膜から精製されてもよい。
上記の真核細胞は、上記の所望のタンパク質を培養培地中に分泌する。
上記の所望のタンパク質は、上記の培養培地から精製されてもよい。
上記の所望のタンパク質は、単一特異性または二重特異性抗体を含んでもよい。
上記の所望のタンパク質は、ヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはそのフラグメントを含んでもよい。
上記のヒト化抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウシ由来であってもよい。
上記のヒト化抗体は、ウサギ由来であってもよい。
上記の所望のタンパク質は、一価、二価、または多価抗体を含んでもよい。
上記の抗体は、タンパク質A及び/またはタンパク質G親和性によって、上記の培養から精製されてもよい。
上記の所望のタンパク質の発現を提供する遺伝子のうちの少なくとも1つは、上記の真核細胞中の発現のために最適化されてもよい。
上記の所望のタンパク質は、抗体を含んでもよく、上記の抗体の純度は、予想される見かけの流体力学半径を有する抗体複合体中に含有され得る、予想される分子量を有する抗体複合体中に含有され得る、及び/または上記の抗体の標的に特異的に結合する、上記の真核細胞によって生成される抗体の分画を測定することによって評価されてもよい。
上記の所望のタンパク質は、抗体を含んでもよく、上記の抗体の収率は、異常にグリコシル化され得る、予想される見かけの流体力学半径を有する複合体以外の抗体複合体中に含有され得る、予想される分子量を有する抗体複合体中に含有され得る、及び/または上記の抗体の標的に特異的に結合することができない、任意の産物関連変異体を考慮に入れない、上記の真核細胞によって生成される抗体の量を決定することによって評価されてもよい。
上記の抗体複合体の分子量は、非還元SDS−PAGEによって決定されてもよい。
上記の所望のタンパク質は、抗体を含んでもよく、上記の方法は、上記の抗体を精製することをさらに含んでもよい。
上記の培養細胞は、少なくとも100mg/L、少なくとも150mg/L、少なくとも200mg/L、少なくとも250mg/L、少なくとも300mg/L、100〜300mg/L、100〜500mg/L、100〜1000mg/L、少なくとも1000mg/L、少なくとも1250mg/リットル、少なくとも1500mg/リットル、少なくとも約1750mg/リットル、少なくとも約2000mg/リットル、少なくとも約10000mg/リットル、またはそれ以上の上清抗体力価を生成してもよい。
上記の所望のタンパク質は、マルチサブユニット複合体を含んでもよく、上記のマルチサブユニット複合体の1つ以上のサブユニットは、2つ以上の遺伝子コピーから発現されてもよい。
上記の所望のタンパク質は、上記の抗体の軽鎖をコードする遺伝子の1〜10個のコピー、及び上記の抗体の重鎖をコードする遺伝子の1〜10個のコピーから発現されてもよい、抗体を含んでもよい。
上記の所望のタンパク質の発現を提供する遺伝子(複数可)は、上記の細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
上記の所望のタンパク質の発現を提供する遺伝子(複数可)は、染色体外要素、プラスミド、または人工染色体上に含有されてもよい。
上記の細胞は、上記の抗体の重鎖の発現を提供する遺伝子のコピーよりも多い、上記の抗体の軽鎖の発現を提供する遺伝子のコピーを含んでもよい。
上記の細胞中の上記の抗体の重鎖をコードする遺伝子のコピー数及び上記の抗体の軽鎖をコードする遺伝子のコピー数のそれぞれは、2及び2、2及び3、3及び3、3及び4、3及び5、4及び3、4及び4、4及び5、4及び6、5及び4、5及び5、5及び6、または5及び7であってもよい。
上記の細胞中の上記の抗体の重鎖をコードする遺伝子のコピー数及び上記の抗体の軽鎖をコードする遺伝子のコピー数のそれぞれは、2及び1、3及び1、4及び1、5及び1、6及び1、7及び1、8及び1、9及び1、10及び1、1及び2、2及び2、3及び2、4及び2、5及び2、6及び2、7及び2、8及び2、9及び2、10及び2、1及び3、2及び3、3及び3、4及び3、5及び3、6及び3、7及び3、8及び3、9及び3、10及び3、1及び4、2及び4、3及び4、4及び4、5及び4、6及び4、7及び4、8及び4、9及び4、10及び4、1及び5、2及び5、3及び5、4及び5、5及び5、6及び5、7及び5、8及び5、9及び5、10及び5、1及び6、2及び6、3及び6、4及び6、5及び6、6及び6、7及び6、8及び6、9及び6、10及び6、1及び7、2及び7、3及び7、4及び7、5及び7、6及び7、7及び7、8及び7、9及び7、10及び7、1及び8、2及び8、3及び8、4及び8、5及び8、6及び8、7及び8、8及び8、9及び8、10及び8、1及び9、2及び9、3及び9、4及び9、5及び9、6及び9、7及び9、8及び9、9及び9、10及び9、1及び10、2及び10、3及び10、4及び10、5及び10、6及び10、7及び10、8及び10、9及び10、10及び10であってもよい。
本開示の方法を使用して、望ましくない副産物(複数可)の相対存在量は、従来の方法に対して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%減少されてもよく、または初期の存在レベルと比較して検出不可能なレベルまで減少されてもよい。相対存在量がそのように減少され得る、例示的な望ましくない副産物は、所望のマルチサブユニット複合体とは異なる見かけの分子量を有する、1つ以上の種を含んでもよい。例えば、見かけの分子量は、化学量論、折り畳み、複合体集合、及び/またはグリコシル化の差の影響を受ける可能性がある。例えば、そのような望ましくない副産物は、サイズ排除クロマトグラフィ及び/またはゲル電気泳動を使用して検出されてもよく、所望のマルチサブユニット複合体よりも高いまたは低い見かけの分子量を有してもよい。例示的な実施形態では、望ましくない副産物は、還元条件下で検出されてもよい。他の例示的な実施形態では、望ましくない副産物は、非還元条件下で検出されてもよい。
例示的な実施形態では、本開示はまた、高い収率で、抗体及び他のマルチサブユニット複合体の組み換え生成を提供する、改善された方法及び組成物も提供する。例示的な実施形態では、収率は、本明細書に開示される方法を使用して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、またはそれ以上(従来の方法に対して)増加されてもよい。
例示的な実施形態では、所望のタンパク質が生成され得る真核細胞は、例えば、ピキア・パストリスもしくは別のメチロトローフ酵母などのピキア種の酵母、またはサッカロミセス・セレビシアなどのサッカロミセス種の酵母、もしくはシゾサッカロミセス(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ)などの別の酵母であってもよい。本発明で利用され得るメチロトローフ酵母の他の例としては、ピキア・アンガスタ(ハンセヌラ・ポリモルファとしても当該技術分野において既知)、ピキア・ギリエルモンディイ、ピキア・メタノリカ、ピキア・イノシトベラ、オガタエア・ニトラトアベルサ、及びカンジダ・ボインドニイ(Candida boidnii)が挙げられる。
真核細胞は、ピキア属の酵母などのメチロトローフ酵母など、酵母細胞であってもよい。ピキア属の例示的なメチロトローフ酵母としては、ピキア・パストリス、ピキア・アンガスタ、ピキア・ギリエルモンディイ、ピキア・メタノリカ、及びピキア・イノシトベラが挙げられる。宿主細胞は、接合することによって、例えば、マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子の1つ以上のコピーをそれぞれ含有する、2つの1倍体酵母細胞を接合することによって生成されてもよい。
好ましい実施形態では、ピキア属のメチロトローフ酵母は、ピキア・パストリスである。真核細胞は、1倍体、2倍体、または4倍体細胞であってもよい。
上記の所望のタンパク質をコードする遺伝子のうちの少なくとも1つは、CUP1(培地中の銅レベルによって誘導される。Koller et al.,Yeast 2000;16:651−656を参照されたい)、テトラサイクリン誘導性プロモータ(例えば、Staib et al.,Antimicrobial Agents And Chemotherapy,Jan.2008,p.146−156を参照されたい)、チアミン誘導性プロモータ、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、FLD1、ADH1、アルコールデヒドロゲナーゼII、GAL4、PHO3、PHO5、及びPykプロモータ、それから得られるキメラプロモータ、酵母プロモータ、哺乳類プロモータ、昆虫プロモータ、植物プロモータ、爬虫類プロモータ、両生類プロモータ、ウイルスプロモータ、及び鳥類プロモータなど、誘導性または構成的プロモータの制御下で発現されてもよい。
真核細胞は、上記の所望のタンパク質を培養培地中に分泌してもよい。例えば、上記の所望のタンパク質は、分泌シグナルペプチドを含んでもよい。あるいは、または加えて、上記の所望のマルチサブユニット複合体は、上記の宿主細胞中に保持されてもよく、それから単離されてもよい。
所望のタンパク質は、単一特異性または二重特異性抗体などの抗体を含んでもよい。抗体は、任意の抗原に特異的に結合する抗体であってもよい。
所望のタンパク質は、任意の種類の抗体を含んでもよい。例示的な抗体の種類としては、任意の哺乳類種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシなどの抗体が挙げられる。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、またはウサギ由来であってもよいヒト化抗体である。抗体は、一価、二価、または多価抗体であってもよい。
上記の真核細胞中の所望の抗体の軽鎖及び/または重鎖などの所望のタンパク質の発現を提供する上記の遺伝子のうちの少なくとも1つは、上記の宿主細胞中の発現のために最適化されてもよい(例えば、好ましいコドンを選択する、及び/またはコドン選択を通してATの割合を変化させることによって)。
所望の抗体などの上記の所望のタンパク質の純度は、非グリコシル化である、予想される見かけの流体力学半径及び/もしくは見かけの分子量(例えば、サイズ排除クロマトグラフィによって測定される)を有する複合体中に含有される、予想される電気泳動移動度(例えば、SDS−PAGEなどのゲル電気泳動、及び任意にウエスタンブロット法によって検出される)を有する、上記の宿主細胞によって生成される、所望のタンパク質の分画を測定することによって、ならびに/またはマルチサブユニット複合体の特異的活性(例えば、所望の抗体の標的への特異的結合)を測定することによって、評価されてもよい。
所望のタンパク質は、抗体であってもよく、上記の抗体の収率は、グリコシル化される、予想される見かけの分子量もしくは流体力学半径を有する複合体以外の抗体複合体中に含有される、及び/または上記の所望の抗体の標的に特異的に結合することができない、任意の産物関連変異体を考慮に入れない、上記の宿主細胞によって生成される所望の抗体の量を決定することによって評価されてもよい。
本発明の別の実施形態によると、酵母細胞中で抗体または抗体の抗原結合フラグメントなどの所望のタンパク質を生成する方法が提供される。酵母細胞集団は、培養培地中で、フェドバッチ発酵条件下で培養される。各酵母細胞は、抗体の重鎖ポリペプチドなどの所望のタンパク質をコードするDNA断片、及び任意に軽鎖ポリペプチドなどの第2の所望のタンパク質をコードするDNA断片を含む。1つ以上のDNA断片は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)転写プロモータ及び転写ターミネータに作動可能に連結される。発酵は、第1の供給速度での発酵性糖供給を含み、発酵は、第1の酸素移動速度で酸素化される。集団の呼吸商(RQ)は、フェドバッチ発酵の供給相中に測定され、それは、所望の所定の範囲と比較される。RQが所望の所定の範囲外であるとき、発酵性糖供給速度及び酸素移動速度のうちの片方または両方が、第2の速度に調節される。測定及び調節は、培養の全部または一部にわたって実施される。酵母細胞は、培養培地から採取される。酵母細胞によって生成される重鎖及び軽鎖ポリペプチドなどの所望のタンパク質は、酵母細胞枯渇培養培地から、または酵母細胞から回収される。
本発明の別の実施形態によると、ピキア酵母細胞中に2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む抗体を生成するための方法が提供される。ピキア酵母細胞集団は、培養培地中で、低酸素、フェドバッチ発酵条件下で培養される。各酵母細胞は、抗体の重鎖ポリペプチドをコードするDNA断片及び軽鎖ポリペプチドをコードするDNA断片を含む。DNA断片は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)転写プロモータ及び転写ターミネータに作動可能に連結される。酵母細胞は、培養培地から採取される。酵母細胞によって生成される抗体は、酵母細胞から、または酵母細胞枯渇培養培地から回収される。
本開示はまた、酸素化及び/または発酵性糖供給のレベルを調節する呼吸商測定を使用する、所望のタンパク質を作製するために、酵母細胞の発酵のためのフィードバック制御機構も提供する。フィードバック制御機構は、エタノールの毒性蓄積を回避しながら、十分な量の産物を生成する、よく制御された培養を可能にする。加えて、そのようにして生成された所望のタンパク質は、優れた均一性及び適切なサブユニット間集合など、優れた定性的性質を有する。例えば、本開示は、酵母細胞中で所望のタンパク質を生成するための方法を提供し、(a)培養培地中で、フェドバッチ発酵条件下で、酵母細胞集団を培養するステップであって、各酵母細胞は、ポリペプチドをコードするDNA断片を含み、上記のDNA断片は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)転写プロモータ及び転写ターミネータに作動可能に連結され、タンパク質は、グリセルアルデヒド−3−リン酸ではなく、発酵は、第1の供給速度での発酵性糖供給を含み、発酵は、第1の酸素移動速度で撹拌される、ステップと、(b)バッチ発酵中に集団の呼吸商(RQ)を測定し、それが所望の所定の範囲内であるか決定するステップであって、培養の開始後約20〜40時間におけるRQの所望の所定の範囲は、約1.08〜約1.35である、ステップと、(c)RQが所望の所定の範囲外であるとき、発酵性糖供給速度の第2の供給速度への調節または酸素移動速度の第2の酸素移動速度への調節のうちの片方または両方を行うステップと、(d)培養ステップ全体にわたって1回以上、ステップ(b)及び(c)を繰り返すステップと、(e)培養培地から酵母細胞を採取するステップと、(f)細胞及び/または培養培地からポリペプチドを回収するステップと、を含む。任意に、上記の方法は、(a)第1の温度で、上記の所望のタンパク質の発現を提供する1つ以上の遺伝子を含む、真核細胞を培養することと、(b)第2の温度で上記の真核細胞を培養し、上記の真核細胞が上記の所望のタンパク質を生成することを可能にすることと、を含んでもよく、上記の第2の温度は、上記の第1の温度とは異なってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約20℃〜約32℃、約24℃〜約31.5℃、約27℃〜約31℃、約27.5℃〜約30℃、約20℃〜約29.5℃、約24℃〜約29℃、約27℃〜約28.5℃、もしくは約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約1℃〜約6℃、上記の第1の温度よりも約1℃〜約3℃、上記の第1の温度よりも約2℃〜約4℃、もしくは上記の第1の温度よりも約2℃〜約3℃高くてもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、約30℃〜約34℃、約30℃〜約32℃、もしくは約30℃〜約31.5℃であってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約28℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃もしくは約31℃であってもよく、または上記の第1の温度は、約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃〜約31℃であってもよく、任意に、上記の第1の温度は、上記の第2の温度よりも高い。
上記のステップ(d)は、約3分の間隔でなど、約1〜5分の間隔で実施されてもよい。
上記のステップ(d)は、連続的に実施されてもよい。
供給速度に対する少なくとも1つの調節は、ステップ(c)において行われてもよい。
ステップ(c)は、RQを測定するデバイスに連結されるフィードバック制御機構を使用して、自動的に実施されてもよい。
酵母細胞は、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・アンガスタ、ピキア・サーモメタノリカ、及びサッカロミセス・セレヴィシエからなる群より選択される種からであってもよい。
方法は、約8.0〜約12.0g/Lのエタノールの発酵中のレベルを達成するために、培養の約10〜14時間において酵母細胞にエタノールを送達することをさらに含んでもよい。
培養の開始後約20〜40時間におけるRQの所望の所定の範囲は、約1.09〜約1.25であってもよい。
採取するステップは、培養の開始後約80〜110時間に実施されてもよい。
エタノール濃度は、培養ステップ中に測定されてもよく、調節は、約5g/L超及び約25g/L未満のエタノール濃度を安定させるために行われてもよく、上記の調節は、発酵性糖供給速度の第3の供給速度への調節または酸素移動速度の第3の酸素移動速度への調節のうちの片方または両方を行うことによって行われてもよい。例えば、上記の調節は、約5g/L超及び約17g/L未満のエタノール濃度を安定させるために行われてもよい。
発酵の20〜110時間におけるRQの所望の所定の範囲は、約1.08〜1.1;約1.08〜1.15;約1.08〜1.2;約1.08〜1.25;約1.08〜1.3;及び約1.08〜1.35からなる群より選択されてもよい。
測定するステップ(b)は、発酵の排出ガスをサンプリングすることによって実施されてもよい。
測定するステップ(b)は、質量分析計、赤外線分析器、または常磁性分析器を使用して実施されてもよい。
ステップ(c)において、酸素移動速度は、RQが高すぎる場合に酸素移動速度を増加させるか、あるいはRQが低すぎる場合に酸素移動速度を減少させることによって、調節されてもよい。
ステップ(c)において、発酵性糖供給速度は、RQが低すぎる場合に発酵性糖供給速度を増加させるか、あるいはRQが高すぎる場合に発酵性糖供給速度を減少させることによって、調節されてもよい。
ステップ(c)において、発酵性糖供給速度はまた、RQが低すぎる場合に発酵性糖供給速度を増加させ、かつRQが高すぎる場合に発酵性糖供給速度を減少させることによって、調節されてもよい。
ステップ(c)は、培養の撹拌速度を調整することによって実施されてもよい。
DNA断片は、抗体重鎖もしくは抗体軽鎖、または抗体のフラグメントをコードしてもよい。
ポリペプチドは、培養培地から採取されてもよい。
各酵母細胞は、抗体の重鎖ポリペプチドをコードするDNA断片及び軽鎖ポリペプチドをコードするDNA断片を含んでもよい。
別の態様では、本開示は、ピキア酵母細胞中の2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む抗体または抗体フラグメントを生成するための方法を提供し、(a)培養培地中で、低酸素、フェドバッチ発酵条件下で、ピキア酵母細胞集団を培養するステップであって、各酵母細胞は、抗体の重鎖ポリペプチドをコードするDNA断片及び軽鎖ポリペプチドをコードするDNA断片を含み、上記のDNA断片は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)転写プロモータ及び転写ターミネータに作動可能に連結されてもよい、ステップと、(b)培養培地から酵母細胞を採取するステップと、(c)酵母細胞枯渇培養培地から、酵母細胞によって生成される抗体を回収するステップと、を含む。任意に、上記の方法は、(a)第1の温度で、上記の所望のタンパク質の発現を提供する1つ以上の遺伝子を含む、真核細胞を培養することと、(b)第2の温度で上記の真核細胞を培養し、上記の真核細胞が上記の所望のタンパク質を生成することを可能にすることと、を含んでもよく、上記の第2の温度は、上記の第1の温度とは異なってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約20℃〜約32℃、約24℃〜約31.5℃、約27℃〜約31℃、約27.5℃〜約30℃、約20℃〜約29.5℃、約24℃〜約29℃、約27℃〜約28.5℃、もしくは約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約1℃〜約6℃、上記の第1の温度よりも約1℃〜約3℃、上記の第1の温度よりも約2℃〜約4℃、もしくは上記の第1の温度よりも約2℃〜約3℃高くてもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、約30℃〜約34℃、約30℃〜約32℃、もしくは約30℃〜約31.5℃であってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約28℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃もしくは約31℃であってもよく、または上記の第1の温度は、約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃〜約31℃であってもよく、任意に、上記の第1の温度は、上記の第2の温度よりも高い。
ピキア酵母細胞は、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・アンガスタ、及びピキア・サーモメタノリカからなる群より選択されてもよい。例えば、ピキア酵母細胞は、ピキア・パストリスであってもよい。
別の態様では、本開示は、(i)大規模、フェドバッチ発酵条件下で、酵母細胞を培養するステップであって、上記の培養された酵母細胞は、所望のタンパク質を発現させるように操作されてもよい、ステップと、(ii)フェドバッチ発酵中にRQ値を定期的または連続的に監視し、RQ値が指定範囲内に入るかどうか決定するステップと、(iii)フェドバッチ酵母培養のRQ値を調節または維持し、それによりRQ値が指定範囲内に入ることができるようにするために、フェドバッチ発酵中に少なくとも1回、少なくとも1つの培養パラメータを調節するステップと、(iv)酵母細胞または培養培地を採取し、ステップ(iii)の採取された細胞または培養培地から所望のタンパク質を回収するステップと、を含む、大規模の発酵過程を提供する。任意に、上記の方法は、(a)第1の温度で、上記の所望のタンパク質の発現を提供する1つ以上の遺伝子を含む、真核細胞を培養することと、(b)第2の温度で上記の真核細胞を培養し、上記の真核細胞が上記の所望のタンパク質を生成することを可能にすることと、を含んでもよく、上記の第2の温度は、上記の第1の温度とは異なってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約20℃〜約32℃、約24℃〜約31.5℃、約27℃〜約31℃、約27.5℃〜約30℃、約20℃〜約29.5℃、約24℃〜約29℃、約27℃〜約28.5℃、もしくは約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、上記の第1の温度よりも約1℃〜約6℃、上記の第1の温度よりも約1℃〜約3℃、上記の第1の温度よりも約2℃〜約4℃、もしくは上記の第1の温度よりも約2℃〜約3℃高くてもよく、及び/または任意に、上記の第2の温度は、約30℃〜約34℃、約30℃〜約32℃、もしくは約30℃〜約31.5℃であってもよく、例えば、上記の第1の温度は、約28℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃もしくは約31℃であってもよく、または上記の第1の温度は、約27.5℃〜約28.5℃であってもよく、上記の第2の温度は、約30℃〜約31℃であってもよく、任意に、上記の第1の温度は、上記の第2の温度よりも高い。
タンパク質は、抗体タンパク質または抗体フラグメントであってもよい。
タンパク質(例えば、抗体タンパク質または抗体フラグメント)は、酵母によって分泌されてもよい。
調節された培養パラメータは、(a)空気流量、(b)酸素濃度、(c)供給組成、(d)供給速度、(e)細胞密度、及び(f)撹拌のうちの1つ以上を含んでもよい。
調節された培養パラメータは、(a)供給組成、(b)供給速度、及び(c)酸素移動速度のうちの1つ以上を含んでもよく、培養パラメータは、RQ値が指定範囲内に入ることができるように、フェドバッチ酵母のRQ値を調節または維持するために、過程中少なくとも1回調節されてもよい。
方法は、フェドバッチ発酵培養に先行するバッチ発酵をさらに含んでもよい。
フェドバッチ発酵は、少なくとも50時間にわたって、または少なくとも70時間にわたって実施されてもよい。
酵母細胞は、倍数体、1倍体、または2倍体ピキア・パストリスなどのピキア・パストリスであってもよい。
フェドバッチ培養の細胞密度は、1〜700g/Lの細胞湿重量を構成してもよい。
ステップ(iii)において、供給速度は、RQ値を指定範囲内に入るように調節するために、増加または減少されてもよい。
ステップ(iii)において、供給組成は、RQ値を指定範囲内に入るように調節するために、少なくとも1つの発酵性糖または他の炭化水素の量を変化させることによって変化させられてもよい。
ステップ(iii)において、フェドバッチ発酵中の酸素量は、RQ値を指定範囲内に入るように調節するために、フェドバッチ発酵中に増加または減少されてもよい。
ステップ(iii)において、少なくとも1つの発酵性糖または他の発酵性炭化水素の量は、RQ値を指定範囲内に入るように調節するために、増加または減少されてもよい。
ステップ(iii)において、供給速度は、RQ値を指定範囲内に入るように調節するために、フェドバッチ発酵中に増加または減少されてもよい。
過程は、ステップ(iii)を含まないフェドバッチ過程に対して、抗体純度及び抗体生成から選択される特性の改善をもたらし得る。
ステップ(iii)におけるRQ値に対する指定範囲は、約1.08〜1.35、または約1.08〜1.2であってもよい。
本明細書を読むことによって当業者に明らかとなるであろう、これら及び他の実施形態は、当該技術分野に、改善された信頼性、予測可能性、効率性、及び品質を有する方法及び産物を提供する。
本開示は、抗体及び他のマルチサブユニットタンパク質を含む、組み換え発現されたタンパク質の収率及び/または純度を改善する方法を記載する。温度シフトが細胞培養中に達成される方法が提供される。温度シフトを含むことが、シフトの非存在下での発現と比較して、組み換え発現された抗体の収率及び純度を改善することが以下に実証される。
理論によって制限されることを意図しないが、温度シフトは、組み換えタンパク質生成の永続的な改善をもたらす遺伝子発現の持続的な変化を引き起こす可能性があることが仮定される。上記の改善は、例えば、熱ショックタンパク質の発現の持続的な増加による、タンパク質発現、安定性、折り畳み、翻訳後プロセシング、ならびに(抗体及び他のマルチサブユニット複合体の場合)適切なサブユニット集合の改善によって仲介されてもよい。
好ましい宿主細胞は酵母を含み、特に好ましい酵母としては、メチロトローフ酵母菌株、例えば、ピキア・パストリス、ハンセヌラ・ポリモルファ(ピキア・アンガスタ)、ピキア・ギリエルモンディイ、ピキア・メタノリカ、ピキア・イノシトベラなどが挙げられる(例えば、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,812,405号、同第4,818,700号、同第4,929,555号、同第5,736,383号、同第5,955,349号、同第5,888,768号、及び同第6,258,559号を参照されたい)。宿主細胞は、形質転換、接合、胞子形成など、当該技術分野において既知の方法によって生成されてもよい。
例示的な実施形態では、本開示は、1つ以上の望ましくない副産物の生成を減少させる方法を提供する。所望のタンパク質に対して、望ましくない副産物(複数可)は、化学量論の変化(マルチサブユニット複合体の場合)、異常なグリコシル化、見かけの分子量の差、ジスルフィド結合の差、流体力学半径、フラグメント、及び/または切断の差のうちの1つ以上を示す可能性がある。望ましくない副産物はまた、1つ以上の追加の差を示す可能性がある。望ましくない副産物はまた、調製に対するそれらの影響、例えば、特異的活性レベルの変化、免疫原性、または所望のマルチサブユニット複合体の物理的構造及び/もしくは機能に対する他の影響によって検出されてもよい。
例えば、所望のタンパク質が抗体である場合、望ましくない副産物としては、H1L1もしくは「半抗体」種(すなわち、重鎖及び軽鎖を含有し、重鎖は、ジスルフィド結合によって別の重鎖に結合していない)、ならびに/またはH2L1種(すなわち、2つの重鎖及び1つの軽鎖を含有するが、第2の軽鎖を欠いている)が挙げられ得る。
好ましい実施形態では、宿主細胞は、所望のタンパク質をコードする遺伝子またはそのサブユニットをコードする遺伝子のうちの1つ以上の2つ以上のコピーを含んでもよい。例えば、サブユニット遺伝子の複数のコピーは、1つ以上の染色体座にタンデムに組み込まれてもよい。タンデムに組み込まれた遺伝子コピーは、好ましくは、マルチサブユニット複合体の生成のための培養中に、安定したコピー数で保持される。例えば、US2013/0045888として公開された、共同所有された出願は、遺伝子コピー数が、軽鎖及び重鎖抗体遺伝子の3〜4つのタンデムに組み込まれたコピーを含有するピキア・パストリス菌株に対して概して安定していた、実験を記載する。
所望のタンパク質をコードする遺伝子のうちの1つ以上は、宿主細胞の1つまたは複数の染色体座に組み込まれてもよい。遺伝子間配列、プロモータ配列、コード配列、終止配列、調節配列などを含む組み込みのために、任意の好適な染色体座が利用されてもよい。ピキア・パストリスで使用され得る例示的な染色体座としては、PpURA5;OCH1;AOX1;HIS4;及びGAPが挙げられる。コードする遺伝子はまた、標的とされるよりもむしろ、1つ以上のランダム染色体座に組み込まれてもよい。例示的な実施形態では、染色体座は、pGAP遺伝子座、3’AOX TT、及びHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択される。さらなる例示的な実施形態では、異種タンパク質サブユニットをコードする遺伝子は、1つ以上の染色体外要素、例えば、1つ以上のプラスミドまたは人工染色体に含有されてもよい。
例示的な実施形態では、所望のタンパク質は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の同一のまたは異なるサブユニットを含む、マルチサブユニット複合体であってもよい。加えて、各サブユニットは、各マルチサブユニットタンパク質中に1回以上存在してもよい。例えば、所望のタンパク質は、2つの異なる軽鎖及び2つの異なる重鎖を含む二重特異性抗体など、多重特異性抗体を含んでもよい。さらなる例として、所望のタンパク質は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖を含む抗体を含んでもよい。
サブユニットは、単シストロン遺伝子、多シストロン遺伝子、またはこれらの任意の組合せから発現されてもよい。各多シストロン遺伝子は、同じサブユニットの複数のコピーを含んでもよく、または各異なるサブユニットの1つ以上のコピーを含んでもよい。
ピキア・パストリスの操作のために使用され得る例示的な方法(培養、形質転換、及び接合する方法を含む)は、米国特許出願第20080003643号、同第20070298500号、及び同第20060270045号を含む公開された出願、ならびにHiggins,D.R.,and Cregg,J.M.,Eds.1998.Pichia Protocols.Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.、及びCregg,J.M.,Ed.,2007,Pichia Protocols(2nd edition),Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.に開示され、それらのそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
利用され得る例示的な発現カセットは、分泌シグナルをコードする配列、続いて発現される遺伝子の配列、続いてピキア・パストリスアルコールオキシダーゼI遺伝子(AOX1)からのピキア・パストリス転写終止シグナルをコードする配列と融合する、グリセルアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(GAP遺伝子)プロモータからなる。ゼオシン耐性マーカー遺伝子は、より高いレベルのゼオシンに耐性を有する形質転換体を選択することによって、菌株中に発現ベクターの複数の組み込まれたコピーを含有する菌株に対する増菌の手段を提供し得る。同様に、G418またはカナマイシン耐性マーカー遺伝子は、より高いレベルのジェネティシンまたはカナマイシンに耐性を有する形質転換体を選択することによって、菌株中に発現ベクターの複数の組み込まれたコピーを含有する菌株に対する増菌の手段を提供するために使用され得る。
利用され得る宿主菌株としては、栄養要求性ピキア・パストリスまたは他のピキア菌株、例えば、met1、lys3、ura3、及びade1、または他の栄養要求性関連遺伝子の突然変異を有する菌株が挙げられる。好ましい突然変異は、任意の感知できるほどの頻度で復帰変異体を引き起こすことが不可能であり、好ましくは部分、またはさらにより好ましくは完全欠失変異体である。例えば、原栄養2倍体または4倍体菌株が、栄養要求性菌株の相補セットを接合することによって生成される。上記の菌株は、最小の培地上で成長することが可能であるという利点を有し、加えて上記の培地は、胞子形成を通して生じ得る1倍体細胞の成長に対して選択する傾向がある。
1倍体及び2倍体ピキア・パストリス菌株の形質転換、ならびにピキア・パストリス性周期の遺伝子操作は、上記のPichia Protocols(1998,2007)に記載されるように実施されてもよい。
形質転換の前に、各発現ベクターは、宿主細胞中の標的遺伝子座へのベクターの組み込みを誘導するために、標的ゲノム遺伝子座(例えば、GAPプロモータ配列)に相同の領域内の制限酵素切断によって線形化されてもよい。次いで、各ベクターの試料は、エレクトロポレーションまたは他の方法によって、所望の菌株の培養中に個々に形質転換されてもよく、形質転換体の成功は、選択可能なマーカー、例えば、抗生物質抵抗性または栄養要求性の相補性を用いて選択されてもよい。分離株が採取され、選択条件下で単一コロニーに対してストリーキングされ、次いで、各菌株から抽出されたゲノムDNAに対するサザンブロットまたはPCRアッセイによって、所望のタンパク質をコードする遺伝子のコピー数またはマルチサブユニット複合体(例えば、所望の抗体)のサブユニットを確認するために検査されてもよい。任意に、予想されるサブユニット遺伝子産物の発現は、例えば、FACS、ウエスタンブロット、コロニーリフト及び免疫ブロット、ならびに当該技術分野において既知の他の手段によって、確認されてもよい。任意に、分離株は、追加の異種遺伝子、例えば、所望のタンパク質をコードする遺伝子の追加のコピーを導入するために、追加の回数、形質転換されるか、またはマルチサブユニットタンパク質の場合、同じサブユニットをコードする遺伝子が、異なる遺伝子座において組み込まれてもよく、及び/または異なるサブユニットのコピーが組み込まれてもよい。菌株は、1倍体、2倍体、または他の倍数性(4倍体及びより高い倍数性を含む)として生成されてもよい。遺伝子コピー数、例えば、所望のタンパク質をコードする単一遺伝子のコピー数、またはマルチサブユニットタンパク質のサブユニットをコードする異なる遺伝子のコピー数の異なる組合せを迅速に試験するために、1倍体菌株が生成及び接合されてもよい。所望のタンパク質遺伝子または各予想されるサブユニット遺伝子の存在は、サザンブロット法、PCR、及び当該技術分野において既知の他の検出手段によって確認されてもよい。加えて、抗体または他の所望のタンパク質の発現もまた、コロニーリフト/免疫ブロット法(Wung et al.Biotechniques 21 808−812(1996))及び/またはFACSによって確認され得る。
形質転換は、異種遺伝子を第2の遺伝子座に標的化するために、任意に繰り返され、それは、第1の遺伝子座に標的化されたものと同じ遺伝子または異なる遺伝子であってもよい。第2の遺伝子座に組み込まれる構築物が、第1の遺伝子座によってコードされる配列と同一の、または高度に類似したタンパク質をコードするとき、その配列は、第1の遺伝子座への望ましくない組み込みの可能性を減少させるように変更されてもよい。そのような配列の差はまた、後続の組み換え事象の可能性を減少させることによって、遺伝子安定性を促進してもよい。例えば、第2の遺伝子座に組み込まれる配列は、第1の遺伝子座に組み込まれる配列に対して、プロモータ配列、終止配列、コドン使用の差、及び/または他の許容できる配列の差を有し得る。
ピキア・パストリス1倍体菌株を接合するために、交配される各菌株は、接合プレート上に一緒にパッチされ得る。例えば、複数の接合は、その成長に好適なプレートにわたって接合される各菌株をストリーキングすることによって、同時に便利に実施され得、接合パートナーは、第2のプレートにわたってストリーキングされてもよい(好ましくは、プレートは、YPDなどの富栄養培地である)。典型的には、30℃での1日または2日のインキュベーション後、2つのプレートからの細胞は、接合プレート上に交差してレプリカプレートされてもよく、同時にプレートされ、一対の元のストリーク線の交差点で接合する条件を有する、各対の菌株のとの斜交平行パターンをもたらす。次いで、接合プレートは、菌株間の接合の開始を促進するために、インキュベートされ得る(例えば、30℃で)。約2日後、接合プレート上の細胞は、所望の2倍体菌株に対して選択的な培地上に、ストリーキング、パッチ、またはレプリカプレートされ得る(例えば、接合された菌株が相補的独立栄養性を有する場合、ドロップアウトまたは最少培地プレートが使用されてもよい)。これらのプレートは、所望の2倍体菌株の選択成長を可能にするために好適な継続時間(例えば、約3日間)にわたって、インキュベートされ得る(例えば、30℃で)。生じるコロニーは、各2倍体菌株を単離及び精製するために、採取及び単一コロニーに対してストリーキングされ得る。
本発明の方法で使用するための発現ベクターは、選択可能な栄養要求性または形質転換された酵母菌株を同定するための薬物マーカーを含む、酵母特異的配列をさらに含んでもよい。薬物マーカーは、例えば、高濃度の薬物中で細胞集団を培養することによって、それにより高いレベルの耐性遺伝子を発現させる形質転換体を選択することによって、酵母宿主細胞中のベクターのコピー数を増幅するために、さらに使用されてもよい。
例示的な実施形態では、異種タンパク質サブユニットをコードする遺伝子のうちの1つ以上は、誘導性プロモータに結合される。好適な例示的なプロモータとしては、アルコールオキシダーゼ1遺伝子プロモータ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(FLD;米国特許出願第2007/0298500号を参照されたい)、及び当該技術分野において既知の他の誘導性プロモータが挙げられる。アルコールオキシダーゼ1遺伝子プロモータは、グルコース、グリセロール、またはエタノールなど、最も一般的な炭素源上の酵母の成長中にしっかりと抑制されるが、メタノール上の成長中に高度に誘導される(Tschopp et al.,1987;Stroman,D.W.,et alの米国特許第4,855,231号)。異種タンパク質の生成に対して、菌株は、バイオマスを生成するために抑制炭素源上で最初に増殖され、次いで、異種遺伝子の発現を誘導するために、唯一の(または主な)炭素及びエネルギー源として、メタノールに移行されてもよい。この調節系の1つの利点は、発現産物が細胞毒性を有する異種遺伝子で形質転換されたピキア・パストリス菌株が、抑制条件下で成長することによって維持され得るということである。
別の例示的な実施形態では、異種遺伝子のうちの1つ以上は、調節されたプロモータに結合されてもよく、その発現レベルは、適切な条件下で上方制御され得る。例示的な調節されたプロモータとしては、CUP1プロモータ(培地中の銅レベルによって誘導される)、テトラサイクリン誘導性プロモータ、チアミン誘導性プロモータ、AOX1プロモータ、及びFLD1プロモータが挙げられる。
別の態様では、本開示は、発酵の生産性を高めるために、特定の種類のフィードバック制御機構を採用し得る、酵母中で所望のタンパク質を作製するための過程を提供する。そのフィードバック制御機構は、所望の産物の最適な生成を促進する混合型の好気及び発酵代謝のロバストかつ精密な制御を可能にする。これは、酵母中で、具体的にはピキア・パストリス中で、及びより具体的にはグリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)プロモータを使用して、モノクローナル抗体などの組み換えタンパク質を生成するために効果的に使用され得る。
フィードバック制御機構を使用した過程は、完全長、正しく集合した組み換えモノクローナル抗体に、ならびに抗体フラグメント及び他の組み換えタンパク質、すなわちグリセルアルデヒド−3−リン酸ではないものの生成に適用できる。我々が採用する制御機構は、機械化及び自動化が容易であり、したがって発酵条件の監視及び調節におけるほとんどの作業を排除する。過程は、種々の抗体及び他の所望のタンパク質の生成に適用でき、商業的な、例えば、大規模の生成の必要性に応えるように容易に拡張可能である。
生成過程は、呼吸商(RQ)をフィードバック制御変数として使用してもよい。RQは、発酵代謝の副産物である、エタノールの毒性蓄積を阻止しながら、培養中の低酸素状態を維持するために、物質移動パラメータ及び/または発酵性糖供給速度の均衡をとるために使用され得る。RQは、培養中で消費された酸素のモル比で割られる、生成された二酸化炭素のモル比として定義される。それは、二酸化炭素及び酸素の含有量に対して発酵槽から生じる排出ガスを分析することによって測定され得る。この代謝パラメータは、容易に利用可能な手段を用いて、所望の成長相全体にわたって連続的または断続的に測定され得る。測定のための適切な間隔の例は、1時間毎、30分毎、15分毎、10分毎、5分毎、4分毎、3分毎、2分毎、1分毎である。測定中の期間は、培養の開始から採取まで成長条件によって変化し得る。例示的な測定及び制御期間は、発酵槽中の培養の開始後20〜40時間、10〜60時間、5〜70時間、及び20〜110時間である。
酵母細胞が、酸素の存在なしで、完全に嫌気状態で増殖される場合、それらは、成長するのに必要とするエネルギーを生成するために発酵代謝を使用していると言われる。この場合、グルコースからエタノールへの変換のための以下の化学量論式が適用される。
C6H12O6→2C2H5OH+2CO2+H2O+エネルギー
酵母細胞が、グルコースの好気代謝からのみそれらのエネルギーを得る場合、酸素は消費され、二酸化炭素及び水のみが生成される。
C6H12O6+3O2→3CO2+6H2O+エネルギー
酸素の存在下で、酵母細胞は、より効率的な好気代謝を使用し、すなわち、より多くのエネルギーが、発酵代謝下よりも好気代謝下で、1モルのグルコースから得られる。
グルコースからエタノールのみを生成する培養のRQは、無限大に近づき(酸素が消費されないため、RQの分母はゼロである)、一方でグルコースの純好気代謝に対して、RQは、1.0の値に近づく(3モルの二酸化炭素を生成するために、3モルの酸素が消費される)。したがって、1よりも高い値は、好気及び発酵代謝の両方が同時に行われている混合代謝条件を示す。典型的には、酸素移動速度及び/または発酵性糖供給速度は、この混合代謝を達成するために、フィードバック制御変数としてRQを使用して調節され得る。そのような混合型の代謝を使用して、低酸素条件は維持され得る。低酸素状態は、酸素移動速度及び発酵性糖供給速度の平衡によって制御される発酵代謝のレベルが低い場合に存在する。低酸素条件は、溶存酸素が約5%未満の、1.0を超えるRQによって定義され得る。
RQは、発酵槽からの排出ガス流中で測定され得る。消費された酸素及び生成された二酸化炭素のモル濃度を確認するための任意の既知の、かつ好適な方法が使用され得る。使用され得る例示的な技術は、質量分析法、赤外線分光学法、及び常磁性分析である。
低酸素成長は、ピキア中の抗体などの完全長の、適切に集合したタンパク質の生成に対して有益な効果を有する。我々は、単純に発酵中の撹拌速度の低減によって、溶存酸素濃度を減少させようと試みた。しかしながら、撹拌速度または発酵性糖供給速度の小さい差が、エタノールの毒性レベルの蓄積をすばやくもたらすため、この方法では信頼できる制御を得ることが不可能であった。
フィードバック制御機構はまた、例えば、撹拌速度による、発酵性糖供給速度及び/または酸素移動速度のいずれかの調整を通して、エタノール濃度を測定及び制御するために使用され得る。エタノールの蓄積の制御は、より安定した過程を可能にするはずである。エタノール濃度の監視するために、発酵槽中に挿入されたプローブを使用することができる。プローブは、連続的に発酵培養液中のエタノール濃度を監視することができる。しかしながら、そのようなプローブは、十分に較正され得る出力を有しないため、それを適正製造基準下で分子の商業的製造において使用することは、実行可能ではない。
RQが約1.1〜約2の狭い範囲で維持される場合、エタノール蓄積は、毒性ではないレベルで安定する。好ましくは、エタノールの濃度は、約5g/L〜17g/Lで維持される。さらに、これらの同じ条件は、GAPプロモータを刺激し、好気発酵条件よりも有意に増加した所望のタンパク質、例えば、抗体生成をもたらす。望ましくあり得るRQ範囲は、約1.08〜2.0;約1.08〜1.85;約1.08〜1.65;約1.08〜1.45;約1.08〜1.35;約1.08〜1.25;約1.08〜1.2;及び約1.08〜1.15を含む。グルコース以外の代替の炭素源は、1未満のRQを達成することができる。そのような炭素源としては、アセテート及びグリセロールが挙げられる。他の好適なRQ範囲は、1.08〜1.35及び1.15〜1.25を含む。RQは、発酵の任意の所望の部分の間、例えば、0〜110時間、20〜40時間、20〜70時間、20〜90時間、20〜110時間、または任意の他の所望の期間、監視及び制御され得る。
したがって、RQは、種々の炭素源の添加によって、種々の量の炭素源の添加によって、及び酸素レベルの操作によって、操作及び経時的に変化され得る。一実施形態では、酸素レベルは、撹拌を増加または減少させることによって操作される。別の実施形態では、気体供給中の酸素:窒素ガスの比は、制御される。酸素移動速度が調節され得る方法としては、空気流量、酸素濃度、細胞密度、温度、及び撹拌の変化が挙げられる。別の実施形態では、グルコースまたは他の発酵性糖供給は、RQに影響を及ぼすように調整される。供給中で使用され得る他の発酵性糖としては、フルクトース、スクロース、マルトース、及びマルトトリオースが挙げられるがこれらに限定されない。供給速度または組成は、RQに影響を及ぼすように調整され得る。RQの制御は、手動または自動であってもよい。
タンパク質をコードする核酸、例えば、コードする抗体は、組み換え構築物の単一または複数の連続または不連続断片上にあってもよい。抗体は、任意の種類のフラグメントまたは構築物または完全長であってもよい。これらは、例えば、Fab、F(ab’)2、Fc、及びScFvであってもよい。いくつかの実施形態では、鎖及び鎖フラグメントは、インビボで適切に集合する。集合が適切ではない場合、インビトロ集合が必要な可能性がある。望ましく作製され得る他のタンパク質は、異種または同種であるかを問わず、1つ以上のサブユニットを有するものである。典型的には、タンパク質は、診断または治療目的で有用である。タンパク質は、成長因子、サイトカイン、血液凝固因子、治療的毒素、再構成に有用な構造タンパク質、酵素などであってもよい。
抗体などのタンパク質は、当該技術分野において既知の任意の技術によって、細胞枯渇培養培地から、または細胞から回収されてもよい。典型的には、結合ステップは、調製物の容積を減少させるために使用される。結合は、便利なように、フィルタもしくはカラム、または他の固体担体上で行われ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質Aは、抗体捕捉剤として使用されてもよい。タンパク質Aは、ポリマーマトリクスに結合されてもよい。
サッカロミセス、ハンゼヌラ、及びピキア種を含む、任意の種類の酵母細胞が使用され得る。使用され得る、例示的であるが限定されない種は、ピキア・パストリス、P.メタノリカ、P.アングスタ、P.サーモメタノリカ、ハンセヌラ・ポリモルファ、及びサッカロミセス・セレビシアである。酵母は、1倍体または2倍体であってもよい。
GAPのような他のプロモータも同様に使用され得る。これらは、典型的には、ピキアなど、酵母細胞中の低酸素、グルコース制限成長で上方制御される遺伝子のためのプロモータである。使用され得る、そのようなプロモータとしては、遺伝子YHR140W、YNL040W、NTA1、SGT1、URK1、PGI1、YHR112C、CPS1、PET18、TPA1、PFK1、SCS7、YIL166C、PFK2、HSP12、ERO1、ERG11、ENO1、SSP120、BNA1、DUG3、CYS4、YEL047C、CDC19、BNA2、TDH3、ERG28、TSA1、LCB5、PLB3、MUP3、ERV14、PDX3、NCP1、TPO4、CUS1、COX15、YBR096W、DOG1、YDL124W、YMR244W、YNL134C、YEL023C、PIC2、GLK1、ALD5、YPR098C、ERG1、HEM13、YNL200C、DBP3、HAC1、UGA2、PGK1、YBR056W、GEF1、MTD1、PDR16、HXT6、AQR1、YPL225W、CYS3、GPM1、THI11、UBA4、EXG1、DGK1、HEM14、SCO1、MAK3、ZRT1、YPL260W、RSB1、AIM19、YET3、YCR061W、EHT1、BAT1、YLR126C、MAE1、PGC1、YHL008C、NCE103、MIH1、ROD1、FBA1、SSA4、PIL1、PDC1−3、THI3、SAM2、EFT2、及びINO1のためのプロモータが挙げられるがこれらに限定されない。
大規模発酵過程は、有用な産物を生成するための商業的過程で典型的に使用されるものである。典型的には、これらは、容積が100リットルよりも大きい。フェドバッチ発酵は、細胞密度及び産物蓄積に影響を及ぼすために、発酵中に栄養素が添加される過程である。
すでに公開された特許出願及び特許、US7927863、US8268582、米国特許出願第2012/0277408号の開示は、本明細書に明示的に組み込まれる。
本開示の大部分が、抗体の生成を記載するが、本明細書に記載される方法は、単一サブユニット及びマルチサブユニットタンパク質を含む、他の所望のタンパク質に容易に適応する。加えて、本方法は、マルチタンパク質複合体の生成に限定されず、テロメラーゼ、hnRNP、リボソーム、snRNP、シグナル認識粒子、原核及び真核RNase P複合体、ならびに複数の異なるタンパク質及び/またはRNAサブユニットを含有する、任意の他の複合体を含む、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体と使用するためにも容易に適応され得る。マルチサブユニット複合体を発現する宿主細胞は、当該技術分野において既知の方法によって生成されてもよい。例えば、遺伝子コピー数の異なる組合せを含有する2倍体または4倍体酵母細胞のパネルは、個々のサブユニット遺伝子の異なるコピー数を含有する細胞を接合することによって生成されてもよい(コピー数は、好ましくは、接合よりも前に既知である)。
定義
本発明は、記載される特定の方法、プロトコル、細胞株、動物種または属、及び試薬が異なり得るため、それらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を説明する目的であり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを目的としてないことも理解されたい。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「タンパク質(the protein)」への言及は、1つ以上のタンパク質及び当業者に既知のその同等物への言及を含むなどである。本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、明らかにそうでないと示されない限り、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
ボーラス添加:本開示において、「ボーラス添加」は概して、培養された細胞と接触している物質(エタノールなど)の濃度の急速な変化を指す(例えば、培養培地中)。例えば、物質は、単回添加で、2回以上の添加の連続で、培養された細胞に添加されてもよく、及び/またはある期間にわたって注入されてもよい(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、90、または120分間にわたって)。物質はまた、部分的または完全に培養培地を置き換えることによって、例えば、細胞を濃縮し(遠心分離、濾過、沈降、もしくは他の方法を使用して)、培地の一部もしくは全部を除去し、物質を添加することによって、または物質を含有する培地に細胞を添加することによって、添加されてもよい。物質は、担体(例えば、培養培地、水、生理食塩水など)と混合されてもよい。例えば、エタノールのボーラス添加は、所望の濃度を生成するために十分な量で、培養培地に純または濃縮エタノール(例えば、100%、95%、70%、50%、60%、40%、30%、20%、など)を添加することを含んでもよい。別の例として、細胞は、例えば、エタノールを含有する培地に細胞を含有する接種材料を添加することによって、エタノールを含有する培地に添加されてもよい。
ボーラス濃度:本開示において、「ボーラス濃度」は概して、物質(例えば、エタノール)のボーラス添加によって生じる濃度を指す。
接合コンピテント酵母種:本発明において、これは、培養中で成長し得る任意の2倍体または4倍体酵母を広く包含することを目的とする。そのような酵母の種は、1倍体、2倍体、または他の倍数体形態で存在してもよい。所与の倍数性の細胞は、適切な条件下で、その形態の不特定の世代数にわたって増殖し得る。2倍体細胞はまた、1倍体細胞を形成するために胞子形成することができる。連続接合は、2倍体菌株のさらなる接合または融合を通して4倍体菌株をもたらし得る。本発明は、1倍体酵母、ならびに例えば、接合または融合(例えば、スフェロプラスト融合)によって生成される、2倍体または他の倍数体酵母細胞の使用を考慮する。
本発明の一実施形態では、接合コンピテント酵母は、アルキシオザイマ属;アスコボトリオザイマ属;シテロミセス属;デバリオミセス属;デッケラ属;エレモテシウム属;イサチェンキア属;カザツタニア属;クルイベロミセス属;コダマエ属;ロッデロミセス属;パチソレン属;ピキア属;サッカロミセス属;サターニスポラ属;テトラピシスポラ属;トルラスポラ属;ウイリオプシス属;及びジゴサッカロミセス属を含む、サッカロミケス科のメンバーである。本発明で潜在的に有用な他の種類の酵母としては、ヤロウィア;ロドスポリジウム;カンジダ;ハンゼヌラ;フィロバシウム;スポリジオボーラス;ブレラ;ロイコスポリジウム及びフィロバシデラが挙げられる。
本発明の好ましい実施形態では、接合コンピテント酵母は、ピキア属のファミリーであるか、または別のメチロトローフである。本発明のさらなる好ましい実施形態では、ピキア属の接合コンピテント酵母は、以下の種のうちの1つである:ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、及びハンセヌラ・ポリモルファ(ピキア・アンガスタ)。本発明の特に好ましい実施形態では、ピキア属の接合コンピテント酵母は、ピキア・パストリス種である。
1倍体酵母細胞:その正常ゲノム(染色体)相補体の各遺伝子の単一コピーを有する細胞。
倍数体酵母細胞:その正常ゲノム(染色体)相補体の2つ以上のコピーを有する細胞。
2倍体酵母細胞:典型的には2つの1倍体細胞の融合(接合)過程によって形成される、その正常ゲノム相補体の本質的に全ての遺伝子の2つのコピー(対立遺伝子)を有する細胞。
4倍体酵母細胞:典型的には2つの2倍体細胞の融合(接合)過程によって形成される、その正常ゲノム相補体の本質的に全ての遺伝子の4つのコピー(対立遺伝子)を有する細胞。4倍体は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる発現カセットを担持してもよい。そのような4倍体は、選択的接合ホモ接合性異体性a/a及びアルファ/アルファ2倍体によって、サッカロミセス・セレビシア中で、及び栄養要求性2倍体を得るための1倍体の連続接合によって、ピキア中で得られ得る。例えば、[met his]1倍体は、2倍体[his]を得るために[ade his]1倍体と接合され得、[met arg]1倍体は、2倍体[arg]を得るために[ade arg]1倍体と接合され得、次いで、2倍体[his]は、4倍体原栄養体を得るために2倍体[arg]と接合され得る。2倍体細胞の利点及び使用への言及がまた、4倍体細胞にも適用し得ることが、当業者によって理解されるであろう。
酵母接合:2つの酵母細胞が単一の酵母細胞を形成するために融合する過程。融合した細胞は、1倍体細胞またはより高い倍数性の細胞であってもよい(例えば、4倍体細胞を生成するために2つの2倍体細胞を接合すること)。
減数分裂:2倍体酵母細胞が4つの1倍体胞子産物を形成するために還元的分裂を受ける過程。各胞子は次いで、発芽し、細胞株を栄養成長させる1倍体を形成してもよい。
選択可能なマーカー:選択可能なマーカーは、例えば形質転換事象を通したようなその遺伝子を受け取る細胞に、成長表現型(物理的成長特徴)を与える遺伝子または遺伝子フラグメントである。選択可能なマーカーは、その細胞が、その選択可能なマーカー遺伝子を受け取らない細胞が成長することができない条件下で、選択成長培地中で生存及び成長することを可能にする。選択可能なマーカー遺伝子は概して、抗生物質または他の薬物に対する抵抗性、2つの温度感受性(「ts」)突然変異体が交配されるか、もしくは1つのts突然変異体が形質転換される場合に温度に対する抵抗性を細胞に与える遺伝子などの、正の選択可能なマーカー遺伝子;その生合成遺伝子を有しない全ての細胞によって必要とされる特定の栄養素なしで、培地中で成長する能力を細胞に与える生合成遺伝子などの、負の選択可能なマーカー遺伝子、または野生型遺伝子を有しない細胞によって、細胞を成長できなくさせる突然変異生合成遺伝子などを含む、いくつかの種類に分類される。好適なマーカーとしては、ZEO;NEO(G418);LYS3;MET1;MET3a;ADE1;ADE3;URA3などが挙げられるがこれらに限定されない。
組み込まれる:生物の染色体に共有結合される遺伝要素(典型的には、異種遺伝要素)。
タンデムに組み込まれる:染色体中の隣接する位置に組み込まれる遺伝要素の2個以上のコピー。2個以上のコピーは、その配向を必ずしも有するとは限らず、例えば、転写遺伝子に対して、いくつかのコピーは、ワトソン鎖から転写されてもよく、他のコピーは、クリック鎖から転写されてもよい。
宿主細胞:本開示の文脈において、宿主細胞という用語は、異種遺伝子を含有する細胞(例えば、ピキア細胞などの真核細胞)を指す。例えば、異種遺伝子は、所望のマルチサブユニット複合体のサブユニット、タンパク質折り畳み(例えば、シャペロン)、発現、もしくは分泌に関与する遺伝子、及び/または別の所望の遺伝子の発現を提供し得る。異種遺伝子は、真核細胞のゲノムに組み込まれてもよく、またはプラスミドもしくは人工染色体などの染色体外要素中に含有されてもよい。
呼吸商(RQ)は、消費されたO2のモル数で割られる、生成されたCO2のモル数として定義される。炭水化物の完全な酸化に対して、RQ値は、1.0である。発酵は、1よりも大きいRQ値によって示され、O2を全くまたはほとんど利用することなく(例えば、分子酸素の非存在下での代謝に対して)、RQは、非常に大きいまたは理論的に無限の値に達し得る。
発現ベクター:これらのDNAベクターは、標的宿主細胞内の異種タンパク質の発現のための操作を促進する要素を含有する。便利に、形質転換のためのDNAの配列及び生成の操作は、最初に細菌宿主、例えば、大腸菌中で実施され、通常、ベクターは、複製の細菌起源及び適切な細菌選択マーカーを含む、そのような操作を促進するための配列を含む。選択マーカーは、選択培養培地中で成長する形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地中で生き残らない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素に対する抵抗性を与える、(b)栄養要求性不足を補う、または(c)複合培地からは入手不可能な重要栄養素を供給する、タンパク質をコードする。酵母の形質転換のための例示的なベクター及び方法は、例えば、Burke,D.,Dawson,D.,& Stearns,T.(2000).Methods in yeast genetics:a Cold Spring Harbor Laboratory course manual.Plainview,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の方法で使用するための発現ベクターは、形質転換された酵母菌株を同定するための選択可能な栄養要求性または薬物マーカーを含む、酵母特異的配列をさらに含んでもよい。薬物マーカーはさらに、酵母宿主細胞中のベクターのコピー数の増幅を選択するために使用されてもよい。
対象となるポリペプチドコード配列は、典型的には、酵母細胞中のポリペプチドの発現を提供する転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結される。これらのベクター成分としては、以下のうちの1つ以上が挙げられ得るがこれらに限定されない:エンハンサ要素、プロモータ、及び転写終止配列。例えば、シグナル配列などの、ポリペプチドの分泌のための配列もまた含まれ得る。発現ベクターが多くの場合、酵母ゲノムに組み込まれるため、複製の酵母起源は任意である。
任意ではあるが、本発明の一実施形態では、所望のタンパク質または所望のマルチサブユニット複合体のサブユニットは、培養培地への発現されたポリペプチドの分泌を提供する分泌配列に作動可能に連結または融合され、それは、所望のタンパク質または複合体の採取及び精製を促進することができる。さらにより好ましくは、分泌配列は、好ましいコドンを選択すること、及び/またはコドン選択を通してATの割合を変化させることなどを通して、宿主細胞(例えば、酵母2倍体細胞)からのポリペプチドの最適化された分泌を提供する。分泌効率性及び/または安定性が分泌配列の選択の影響を受ける可能性があり、最適な分泌配列が異なるタンパク質間で異なる可能性があることは、当該技術分野において既知である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Koganesawa et al.,Protein Eng.2001 Sep;14(9):705−10を参照されたい)。多くの潜在的に好適な分泌シグナルが当該技術分野において既知であり、特定の所望のタンパク質または複合体の収率及び/または純度に対するそれらの効果に対して、容易に試験され得る。酵母及び他の種の分泌されたタンパク質中に存在する分泌配列、ならびに操作された分泌配列を含む、任意の分泌配列が潜在的に使用され得る。利用され得る例示的な分泌シグナル配列としては、ニワトリリゾチーム(CLY)シグナルペプチド(MRSLLILVLCFLPLAALG(配列番号5))、CLY−L8(MRLLLLLLLLPLAALG(配列番号6))、サッカロミセス・セレビシアインベルターゼ(SUC2)シグナルペプチド(MLLQAFLFLLAGFAAKISA(配列番号7))、MF−α(Prepro)(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−EGVSLEKR(配列番号8))、MF−α(Pre)−apv(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APV(配列番号9))、MF−α(Pre)−apv−SLEKR(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVSLEKR(配列番号10))、MF−α(Prepro)−(EA)3(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−EGVSLEKR−EAEAEA(配列番号11))、αFシグナルペプチド(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−DETAQIPAEAVIGYSDLEGDFDVAVLPFSNSTNNGLLFINTTIASIAAKE−EGVSLEKR(配列番号12))、KILM1シグナルペプチド(MTKPTQVLVRSVSILFFITLLHLVVALNDVAGPAETAPVSLLPR(配列番号13))、抑制性酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルペプチド(MFSPILSLEIILALATLQSVFA(配列番号14))、A.ニガーGOXシグナルペプチド(MQTLLVSSLVVSLAAALPHYIR(配列番号15))、シュワニオミセス・オキシデンタリス・グルコアミラーゼ遺伝子(GAM1)シグナルペプチド(MIFLKLIKSIVIGLGLVSAIQA(配列番号16))、プロ配列を有するヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド(MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR(配列番号17))、プロ配列を有しないヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド(MKWVTFISLLFLFSSAYS(配列番号18))、ISNシグナルペプチド(MALWMRLLPLLALLALWGPDPAAA(配列番号19))、IFNシグナルペプチド(MKYTSYILAFQLCIVLGSLGCDLP(配列番号20))、HGHシグナルペプチド(MAADSQTPWLLTFSLLCLLWPQEPGA(配列番号21))、フィトヘマグルチニン(PHA)(MKKNRMMMMIWSVGVVWMLLLVGGSYG(配列番号22))、カイコリゾチーム(MQKLIIFALVVLCVGSEA(配列番号23))、ヒトリゾチーム(LYZ1)(MKALIVLGLVLLSVTVQG(配列番号24))、アクチビン受容体I型(MVDGVMILPVLIMIALPSPS(配列番号25))、アクチビンII型受容体(MGAAAKLAFAVFLISCSSG(配列番号26))、ピキア・パストリス免疫グロブリン結合タンパク質(PpBiP)(MLSLKPSWLTLAALMYAMLLVVVPFAKPVRA(配列番号27))、及びヒト抗体3D6軽鎖リーダー(MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKC(配列番号28))が挙げられる。Hashimoto et al.,Protein Engineering vol.11 no.2 pp.75−77,1998;Oka et al.,Biosci Biotechnol Biochem.1999 Nov;63(11):1977−83;Gellissen et al.,FEMS Yeast Research 5(2005)1079−1096;Ma et al.,Hepatology.2005 Dec;42(6):1355−63;Raemaekers et al.,Eur J Biochem.1999 Oct 1;265(1):394−403;Koganesawa et al.,Protein Eng.(2001)14(9):705−710;Daly et al.,Protein Expr Purif.2006 Apr;46(2):456−67;Damasceno et al.,Appl Microbiol Biotechnol(2007)74:381−389;及びFelgenhauer et al.,Nucleic Acids Res.1990 Aug 25;18(16):4927を参照されたく、それらのそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
所望のタンパク質または複合体はまた、分泌シグナルに作動可能に連結または融合されることなく、培養培地に分泌されてもよい。例えば、いくつかの異種ポリペプチドは、分泌シグナルに結合または融合さえされることなく、ピキア・パストリス中で発現されるとき、培養培地に分泌されることが実証されている。加えて、所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体は、当該技術分野において既知の方法を使用して、宿主細胞から精製されてもよい(それは、例えば、複合体が不十分に分泌されている場合、好ましくあり得る)。
所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体を含む培地または細胞は、培養から回収されてもよい。任意に、分泌されたタンパク質は、精製されてもよい。例えば、所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体を含む細胞は、機械的、化学的、酵素的、及び/または浸透圧方法(例えば、液体窒素による冷凍、ホモジナイザーの使用、スフェロプラスト化、超音波処理、ガラスビーズの存在下での撹拌、洗剤の使用など)を使用して溶解されてもよい。所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体は、当該技術分野において既知の方法を使用して、濃縮、濾過、透析などされてもよい。所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体は、例えば、その分子量(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ)、等電点(例えば、等電点電気泳動法)、電気泳動移動度(例えば、ゲル電気泳動)、疎水性相互作用クロマトグラフィ(例えば、HPLC)、電荷(例えば、イオン交換クロマトグラフィ)、親和性(例えば、抗体の場合、タンパク質A、タンパク質G、及び/もしくは所望の抗体が結合するエピトープへの結合)、ならびに/またはグリコシル化状態(例えば、レクチン結合親和性によって検出される)に基づき、精製されてもよい。複数の精製ステップは、所望の純度レベルを得るように実施されてもよい。例示的な実施形態では、所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体は、免疫グロブリン定常領域を含んでもよく、タンパク質Aまたはタンパク質G親和性、サイズ排除クロマトグラフィ、及び(グリコシル化形態を除去するための)レクチンへの結合の欠損を用いて、精製されてもよい。任意に、精製中にタンパク質分解を阻害するために、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)などのAプロテアーゼ阻害剤が添加されてもよい。
核酸は、別の核酸配列との機能的な関係に置かれるとき、「作動可能に連結される」。例えば、シグナル配列のためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現された場合、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結され、プロモータまたはエンハンサは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。概して、「作動可能に連結される」は、結合されているDNA配列が連続的であり、分泌リーダーの場合、連続的かつリーディングフレーム中であることを意味する。しかしながら、エンハンサは、連続的である必要はない。結合は、便利な制限部位での連結によって、あるいは当業者によく知られているPCR/組み換え方法を介して達成されてもよい(Gateway(登録商標)Technology;Invitrogen,Carlsbad Calif)。そのような制限部位が存在しない場合、従来の慣例に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用されてもよい。所望の核酸(作動可能に連結された配列を含む拡散を含む)はまた、化学合成によって生成されてもよい。
プロモータは、それらが作動可能に連結される特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(概して約100〜1000bp以内)に位置する非翻訳配列(5’)である。そのようなプロモータは、いくつかの種類に分類される:誘導性、構成的、及び抑制プロモータ(リプレッサの非存在に応答して転写レベルを増加する)。誘導性プロモータは、培養条件の何らかの変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在、または温度の変化に応答したそれらの制御下で、DNAからの増加したレベルの転写を開始し得る。
酵母プロモータフラグメントはまた、相同組み換え及び酵母ゲノム中の同一部位への発現ベクターの組み込みのための部位としての役割を果たし得る。あるいは、選択可能なマーカーが、相同組み換えのための部位として使用される。ピキア形質転換は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cregg et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376−3385に記載される。
ピキアからの好適なプロモータの例としては、CUP1(培地中の銅レベルによって誘導される)、テトラサイクリン誘導性プロモータ、チアミン誘導性プロモータ、AOX1プロモータ(Cregg et al.(1989)Mol.Cell.Biol.9:1316−1323);ICL1プロモータ(Menendez et al.(2003)Yeast 20(13):1097−108);グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ(GAP)(Waterham et al.(1997)Gene 186(1):37−44);及びFLD1プロモータ(Shen et al.(1998)Gene 216(1):93−102)が挙げられる。GAPプロモータは、強力な構成的プロモータであり、CUP1、AOX、及びFLD1プロモータは、誘導性である。各上記の参考文献の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
他の酵母プロモータとしては、ADH1、アルコールデヒドロゲナーゼII、GAL4、PHO3、PHO5、Pyk、及びそれから得られるキメラプロモータが挙げられる。加えて、哺乳類、昆虫、植物、爬虫類、両生類、ウイルス、及び鳥類プロモータなどの非酵母プロモータが、本発明で使用されてもよい。最も典型的には、プロモータは、哺乳類プロモータ(発現された遺伝子に対して潜在的に内因性)を含むか、または酵母系において効率的な転写を提供する酵母もしくはウイルスプロモータを含む。
対象となるポリペプチドは、直接的にだけではなく、異種ポリペプチド、例えば、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端における特異的切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組み換え生成され得る。一般的に、シグナル配列は、ベクターの一構成要素であってもよく、またはそれは、ベクターに挿入されるポリペプチドコード配列の一部であってもよい。好ましく選択される異種シグナル配列は、宿主細胞内で利用可能な標準的な経路のうちの1つを通して認識及び処理されるものである。サッカロミセス・セレビシアα因子プレプロシグナルは、ピキア・パストリスからの種々の組み換えタンパク質の分泌において有効であることが証明されている。他の酵母シグナル配列としては、α接合因子シグナル配列、インベルターゼシグナル配列、及び他の分泌された酵母ポリペプチドから得られるシグナル配列が挙げられる。加えて、これらのシグナルペプチド配列は、2倍体酵母発現系中の強化された分泌を提供するように操作されてもよい。対象となる他の分泌シグナルはまた、哺乳類シグナル配列を含み、それは、分泌されるタンパク質に対して異種であってもよく、または分泌されるタンパク質に対して天然配列であってもよい。シグナル配列は、プレペプチド配列を含み、場合によっては、プロペプチド配列を含んでもよい。免疫グロブリン鎖上などに見られるシグナル配列、例えば、K28プレプロ毒素配列、PHA−E、FACE、ヒトMCP−1、ヒト血清アルブミンシグナル配列、ヒトIg重鎖、ヒトIg軽鎖を含む、多くのそのようなシグナル配列は、当該技術分野において既知である。例えば、Hashimoto et.al.Protein Eng 11(2)75(1998);及びKobayashi et.al.Therapeutic Apheresis 2(4)257(1998)を参照されたく、それらのそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
転写は、ベクターに転写活性化配列を挿入することによって増加されてもよい。これらの活性化因子は、その転写を増加させるためにプロモータに作用する、通常約10〜300bpの、DNAのシスエレメントである。転写エンハンサは、イントロン内、ならびにコード配列自体のうちで、比較的配向及び位置に依存せず、転写単位に対して5’及び3’に見られている。エンハンサは、コード配列に対して位置5’または3’で発現ベクターにスプライスされてもよいが、好ましくは、プロモータから部位5’に位置する。
真核宿主細胞で使用される発現ベクターはまた、転写の終止及びmRNAの安定化に必要な配列も含有してもよい。そのような配列は、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの非翻訳領域中で、3’から翻訳終止コドンまで一般的に利用可能である。これらの領域は、mRNAの非翻訳部分においてポリアデニル化フラグメントとして転写されたヌクレオチド断片を含有する。
上記の構成要素のうちの1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、標準的な連結技術またはPCR/組み換え方法を採用する。単離されたプラスミドまたはDNAフラグメントは、必要とされるプラスミドを生成するのに所望の形態で、または組み換え方法を介して、切断、調整、及び再連結される。構築されるプラスミド中の正確な配列を確認するための分析に対して、宿主細胞を形質転換するために、連結混合物が使用され、成功した形質転換体は、適切な場合、抗生物質抵抗性(例えば、アンピシリンまたはゼオシン)によって選択される。形質転換体からのプラスミドが調製され、制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析され、及び/または配列される。
フラグメントの制限及び連結の代替方法として、att部位及び組み換え酵素に基づく組み換え方法が、ベクターにDNA配列を挿入するために使用されてもよい。そのような組み換え方法は、例えば、Landy(1989)Ann.Rev.Biochem.58:913−949によって記載され、当業者に既知である。そのような方法は、λ及び大腸菌によりコードされる組み換えタンパク質の混合物によって媒介される分子間DNA組み換えを利用する。組み換えは、相互作用するDNA分子上の特異的な付着(att)部位の間で生じる。att部位の記載については、Weisberg and Landy(1983)Site−Specific Recombination in Phage Lambda,in Lambda II,Weisberg,ed.(Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Press),pp.211−250を参照されたい。組み換え部位に隣接するDNA断片は、組み換え後に、att部位が各親ベクターにより供与される配列を含むハイブリッド配列になるように切り換えられる。組み換えは、任意のトポロジーのDNAの間で生じ得る。各上記の参考文献の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
Att部位は、対象となる配列を適切なベクターに連結すること;att B部位を含有するPCR産物を特異的プライマーの使用によって生成すること;att部位を含有する適切なベクターへクローン化されるcDNAライブラリを生成することなどによって、対象となる配列へ導入されてもよい。
単シストロン及び多シストロン遺伝子。単シストロン遺伝子は、単一のタンパク質のみを翻訳するために、遺伝子情報を含有するRNAをコードする。多シストロン遺伝子は、2つ以上のタンパク質を翻訳するために、遺伝子情報を含有するmRNAをコードする。多シストロン遺伝子でコードされたタンパク質は、同一もしくは異なる配列またはこれらの組合せを有してもよい。ジシストロニックまたはバイシストロニックは、2つのタンパク質をコードする多シストロン遺伝子を指す。多シストロン遺伝子は任意に、キャップ非依存性翻訳開始を促進するための1つ以上の内部リボソーム侵入部位(IRES)要素を含み、それは、mRNA分子の5’末端に結合される5’キャップ構造とは無関係に、下流タンパク質コード領域の翻訳を促すことができる位置に置かれてもよい。任意の既知のIRES配列(例えば、本来ウイルス、真核、または人工の)が使用され得る。例えば、Thompson et al.(2001)PNAS 98:12972−12977に記載されるように、遺伝子間領域(IGR)中のコオロギ麻痺ウイルスIRES配列が使用されてもよい。任意に、IRES機能は、遺伝子変化によって、例えば、eIF2キナーゼGCN2の構成的発現を引き起こすか、または破壊された2つの開始tRNA(met)遺伝子を破壊することによって強化されてもよい(同文献)。
本明細書で使用される折り畳みは、アミノ酸残基間の相互作用がその構造を安定化するように作用する、ポリペプチド及びタンパク質の三次元構造を指す。非共有相互作用が構造の決定において重要であるが、通常、対象となるタンパク質は、2つのシステイン残基によって形成される分子内及び/または分子間の共有ジスルフィド結合を有する。自然発生的なタンパク質及びポリペプチドまたはその誘導体及び変異体に対して、適切な折り畳みは、典型的には、最適な生物活性をもたらす配置であって、便利に、活性、例えば、リガンド結合、酵素活性などのアッセイによって監視され得る。
場合によっては、例えば、所望の産物が合成起源である場合、生物活性に基づくアッセイは、あまり意味がないであろう。そのような分子の適切な折り畳みは、物理特性、エネルギー的考察、モデリング試験などに基づき決定されてもよい。
発現宿主は、折り畳み及びジスルフィド結合形成を増強する1つ以上の酵素、すなわち、フォルダーゼ、シャペロニン、PDI、BIP、シクロフィリンなどをコードする配列の導入によってさらに修飾されてもよい。そのような配列は、当該技術分野において既知のベクター、マーカーなどを使用して、酵母宿主細胞中で構成的または誘導的に発現されてもよい。好ましくは、所望の発現パターンに十分な転写調節要素を含む配列は、標的化方法によって酵母ゲノムに安定的に組み込まれる。
例えば、真核PDIは、タンパク質システイン酸化及びジスルフィド結合異性化の効率的な触媒であるだけではなく、シャペロン活性も示す。PDIの同時発現は、複数のジスルフィド結合を有する活性タンパク質の生成を促進することができる。また、BIP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質);シクロフィリンなどの発現も対象となる。本発明の一実施形態では、マルチサブユニット複合体は、接合することによって生成される酵母菌株から発現されてもよく、1倍体の親株のそれぞれが異なる折り畳み酵素を発現し、例えば、一方の菌株がBIPを発現してもよく、もう一方の菌株がPDIまたはその組合せを発現してよい。
用語「所望のタンパク質」または「標的タンパク質」は、同じ意味で使用され、概して、本明細書に記載される抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその結合部分など、異種マルチサブユニットタンパク質を指す。
用語「抗体」は、エピトープに適し、かつそれを認識する、特定の形状を有する任意のポリペプチド鎖含有分子構造を含み、1つ以上の非共有結合相互作用は、分子構造とエピトープとの間で複合体を安定させる。典型的な抗体分子は、免疫グロブリンであり、全ての源、例えば、ヒト、齧歯動物、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳動物、ニワトリ、他の鳥類などからの全ての種類の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどが、「抗体」と見なされる。本発明に従った出発物質として有用な抗体を生成するのに好ましい源は、ウサギである。多数の抗体コード配列が記載されており、その他は、当該技術分野においてよく知られている方法によってもたらされてもよい。その例としては、キメラ抗体、ヒト抗体及び他の非ヒト哺乳類抗体、ヒト化抗体、scFvなどの一本鎖抗体、ラクダ抗体、ナノボディ、IgNAR(サメ由来の一本鎖抗体)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、及びFab、Fab’、F(ab’)2などの抗体フラグメントなどが挙げられる。Streltsov V A,et al.,Structure of a shark IgNAR antibody variable domain and modeling of an early−developmental isotype,Protein Sci.2005 November;14(11):2901−9.Epub 2005 Sep.30;Greenberg A S,et al.,A new antigen receptor gene family that undergoes rearrangement and extensive somatic diversification in sharks,Nature.1995 Mar.9;374(6518):168−73;Nuttall S D,et al.,Isolation of the new antigen receptor from wobbegong sharks,and use as a scaffold for the display of protein loop libraries,Mol Immunol.2001 August;38(4):313−26;Hamers−Casterman C,et al.,Naturally occurring antibodies devoid of light chains,Nature.1993 Jun.3;363(6428):446−8;Gill D S,et al.,Biopharmaceutical drug discovery using novel protein scaffolds,Curr Opin Biotechnol.2006 December;17(6):653−8.Epub 2006 Oct.19を参照されたい。各上記の参考文献の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
例えば、抗体または抗原結合フラグメントは、遺伝子操作によって生成されてもよい。他の方法と同様に、この技術において、抗体産生細胞は、所望の抗原または免疫原に感作される。抗体産生細胞から単離されたメッセンジャーRNAは、PCR増幅を使用してcDNAを作製するためのテンプレートとして使用される。それぞれが、初期の抗原特異性を保持する1つの重鎖遺伝子及び1つの軽鎖遺伝子を含有する、ベクターのライブラリは、発現ベクターへの増幅された免疫グロブリンcDNAへの適切な部分の挿入によって生成される。組合せライブラリは、軽鎖遺伝子ライブラリと重鎖遺伝子ライブラリを組み合わせることによって構築される。これは、重鎖及び軽鎖を同時発現させるクローンのライブラリをもたらす(抗体分子のFabフラグメントまたは抗原結合フラグメントに似ている)。これらの遺伝子を担持するベクターは、宿主細胞に同時形質転換される。抗体遺伝子合成が形質転換された宿主中に誘導されるとき、重鎖及び軽鎖タンパク質は、抗原または免疫原を用いたスクリーニングによって検出され得る活性抗体を生成するために、自己集合する。
対象となる抗体コード配列は、天然配列、ならびに遺伝子コードの縮退によって開示された核酸と配列が同一ではない核酸、及びその変異体によってコードされるものを含む。変異体ポリペプチドは、アミノ酸(aa)置換、付加、または欠失を含むことができる。アミノ酸置換は、保存アミノ酸置換、またはグリコシル化部位を改変するため、もしくは機能に必要ではない1つ以上のシステイン残基の置換もしくは欠失によって誤った折り畳みを最小限に抑えるためなどの、非必須アミノ酸を排除するための置換であってもよい。変異体は、タンパク質の特定の領域(例えば、機能ドメイン、触媒アミノ酸残基など)の増強された生物活性を保持するか、または有するように設計され得る。変異体はまた、本明細書に開示されるポリペプチドのフラグメント、特に、生物活性のあるフラグメント及び/または機能ドメインに対応するフラグメントを含む。クローン化遺伝子のインビトロ突然変異誘発のための技術が既知である。また、タンパク分解に対するそれらの抵抗性を改善するために、または溶解特性を最適化するために、またはそれらを治療薬剤としてより好適にするために、通常の分子生物学的技術を使用して修飾されたポリペプチドも、本発明に含まれる。
キメラ抗体は、ある種の抗体産生細胞から得られる可変軽鎖及び重鎖領域(VL及びVH)を、別の種からの定常軽鎖及び重鎖領域と組み合わせることによる組み換え手段によって、作製されてもよい。典型的には、キメラ抗体は、主にヒトドメインを有する抗体を生成するために、齧歯動物またはウサギの可変領域及びヒト定常領域を利用する。そのようなキメラ抗体は、当該技術分野においてよく知られており、標準的な手段によって達成され得る(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,624,659号に記載されるような)。さらに、本発明のキメラ抗体のヒト定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4定常領域から選択されてもよいことも考慮される。
ヒト化抗体は、さらにより多くのヒト様免疫グロブリンドメインを含有するように操作され、動物由来の抗体の相補性決定領域のみを組み込む。これは、モノクローナル抗体の可変領域の超可変ループの配列を注意深く検査し、それらをヒト抗体鎖の構造に適合させることによって達成される。表面的には複雑であるが、その過程は実際には単純である。例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれる、米国特許第6,187,287号を参照されたい。抗体をヒト化する方法は、交付済みの米国特許第7935340号にすでに記載され、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。場合によっては、活性を維持するために、追加のウサギフレームワーク残基が必要とされるかどうかの決定が必要である。場合によっては、ヒト化抗体は、いくつかの重要なウサギフレームワーク残基が、親和性または活性の喪失を最小限に抑えるために保持されることをなおも必要とする。これらの場合、所望の活性を有するために、ヒト生殖細胞系配列から再び元のウサギアミノ酸へと、単一または複数のフレームワークアミノ酸を変化させることが必要である。これらの変化は、どのウサギ残基が親和性及び活性を保存するために必要であるかを特定するために、実験的に決定される。
免疫グロブリン(またはそれらの組み換え対応物)全体に加えて、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリンフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2、または他のフラグメント)が、合成されてもよい。「フラグメント」または最小免疫グロブリンは、組み換え免疫グロブリン技術を利用して設計されてもよい。例えば、本発明で使用するための「Fv」免疫グロブリンは、融合された可変軽鎖領域及び可変重鎖領域を合成することによって生成されてもよい。例えば、2つの異なるFv特異性を含む二重特異性抗体など、抗体の組合せもまた対象となるものである。本発明の別の実施形態では、SMIP(小分子免疫製剤)、ラクダ抗体、ナノボディ、及びIgNARが、免疫グロブリンフラグメントによって包含される。
免疫グロブリン及びそのフラグメントは、翻訳後に修飾されてもよく、例えば、化学的リンカーなどのエフェクター部分、蛍光色素、酵素、毒素、基質、生物発光物質、放射性物質、化学発光部分などの検出可能部分、またはストレプトアビジン、アビジン、もしくはビオチンなどの特異的結合部分の付加が、本発明の方法及び組成物で利用され得る。追加のエフェクター分子の例は、以下に提供される。
産物関連変異体:所望の産物の調製物中に存在し、所望の産物に関連する、所望の産物(例えば、所望のマルチサブユニット複合体)以外の産物。例示的な産物関連変異体としては、短縮されたもしくは細長いペプチド、所望のグリコシル化とは異なるグリコシル化を有する産物(例えば、グリコシル化された産物が所望である場合、任意のグリコシル化された産物は、産物関連変異体であると見なされる)、異常な化学量論を有する複合体、不適切な集合、異常なジスルフィド結合、異常もしくは不完全な折り畳み、凝集、プロテアーゼ切断、または他の異常が挙げられる。例示的な産物関連変異体は、分子量(例えば、サイズ排除クロマトグラフィによって検出される)、等電点(例えば、等電点電気泳動法によって検出される)、電気泳動移動度(例えば、ゲル電気泳動によって検出される)、リン酸化状態(例えば、質量分析法によって検出される)、電荷質量比(例えば、質量分析法によって検出される)、タンパク質分解フラグメントの質量または同一性(例えば、質量分析法またはゲル電気泳動によって検出される)、疎水性(例えば、HPLCによって検出される)、電荷(例えば、イオン交換クロマトグラフィによって検出される)、親和性(例えば、抗体の場合、タンパク質A、タンパク質G、及び/または所望の抗体が結合するエピトープへの結合によって検出される)、ならびにグリコシル化状態(例えば、レクチン結合親和性によって検出される)のうちの1つ以上の変化を示し得る。所望のタンパク質が抗体である場合、産物関連変異体という用語は、グリコ重鎖変異体及び/または半抗体種を含んでもよい(以下に記載される)。
例示的な産物関連変異体は、異常なジスルフィド結合を含有する変異体形態を含む。例えば、ほとんどのIgG1抗体分子は、合計で16の鎖内及び鎖間ジスルフィド架橋によって安定化され、それらが、重鎖及び軽鎖の両方におけるIgGドメインの折り畳みを安定させると同時に、鎖間ジスルフィド架橋は、重鎖と軽鎖との間の会合を安定させる。他の抗体の種類も同様に、鎖内及び鎖間ジスルフィド結合を安定させる特徴を含む。さらに、いくつかの抗体(本明細書に開示されるAb−A及びAb−Bを含む)は、非標準的ジスルフィド結合と称される、追加のジスルフィド結合を含有する。したがって、異常な鎖間ジスルフィド結合は、共有結合の安定化がないことによる異常な複合体化学量論、及び/または追加のサブユニットへのジスルフィド結合をもたらす可能性がある。加えて、異常なジスルフィド結合(鎖間または鎖内であるかどうかにかかわらず)は、抗体の構造的安定性を減少させる可能性があり、それは、活性の減少、安定性の減少、凝集体を形成する傾向の増加、及び/または免疫原性の増加をもたらす可能性がある。異常なジスルフィド結合を含有する産物関連変異体は、非還元変性SDS−PAGE、キャピラリー電気泳動法、cIEX、質量分析法(任意に、遊離システインの質量シフトをもたらすための化学修飾を用いた)、サイズ排除クロマトグラフィ、HPLC、光散乱性変化、及び当該技術分野において既知の任意の他の好適な方法を含む、種々の方法で検出され得る。例えば、The Protein Protocols Handbook 2002,Part V,581−583,DOI:10.1385/1−59259−169−8:581を参照されたい。
半抗体、半抗体種、またはH1L1は、単一重及び単一軽抗体鎖を含むが、第2の重及び軽抗体鎖への共有結合を有しない、タンパク質複合体を指す。2つの半抗体は、いくつかの条件下で非共有結合したままであってもよいが、完全H2L2抗体とは分離したそれらの検出を促進するために、適切な条件(例えば、洗剤、塩、または温度)下で分離されてもよい。同様に、H2L1は、2つの重抗体鎖及び1つの軽抗体鎖を含むが、第2の軽抗体鎖への共有結合を有しない、タンパク質複合体を指し、これらの複合体もまた、別の軽抗体鎖と非共有結合し得る(同様に、完全抗体と同様の挙動を示す)。完全抗体のように、半抗体種及びH2L1種は、還元条件下で、個々の重鎖及び軽鎖に分解し得る。半抗体種及びH2L1種は、完全抗体よりも低い見かけの分子量で移動する種として、非還元SDS−PAGEゲルで検出され得、例えば、H1L1は、完全抗体の見かけの分子量の約半分で移動する(例えば、約75kDa)。
グリコ重鎖変異体は、時に抗体調製物中に存在し、少なくとも部分的なFc配列を含有する、グリコシル化された産物関連変異体を指す。グリコ重鎖変異体は、SDS−AGEによって観察可能な電気泳動移動度の減少(正常な重鎖に対して)、レクチン結合親和性、抗Fc抗体への結合、及びサイズ排除クロマトグラフィによって決定されるような、グリコ重鎖変異体を含有する抗体複合体のより高い見かけの分子量を特徴とする。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2011年8月31日出願の米国仮出願第61/525,307号(代理人整理番号67858.730200)を参照されたい。
用語「所望の分泌される異種ポリペプチドを安定的に発現するか、または長時間にわたって発現する、倍数体酵母」は、少なくとも数日〜1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月、なおより好ましくは少なくとも1〜6ヶ月間、及びさらにより好ましくは1年を超える間、典型的には、少なくとも50〜500mg/リットル(約90時間の培養後)、及び好ましくは実質的にそれ以上の発現の閾値レベルで、上記のポリペプチドを分泌する、酵母培養を指す。
用語「所望の量の組み換えポリペプチドを分泌する倍数体酵母培養」は、安定的に、または長時間にわたって、少なくとも50〜500mg/リットル、及び最も好ましくは500〜1000mg/リットル以上を分泌する培養を指す。
遺伝子コードに従ったポリヌクレオチド配列の翻訳がポリペプチド配列をもたらす(すなわち、ポリヌクレオチド配列がポリペプチド配列を「コードする」)場合、ポリヌクレオチド配列は、ポリペプチド配列に「対応し」、2つの配列が同じポリペプチド配列をコードする場合、一方のポリヌクレオチド配列は、他方のポリヌクレオチド配列に「対応する」。
DNA構築物の「異種」領域またはドメインは、本質的により大きい分子と関連して見られない、より大きいDNA分子内のDNAの同定可能な断片である。したがって、異種領域が哺乳類遺伝子をコードするとき、遺伝子は通常、元の生物のゲノム中の哺乳類ゲノムDNAに隣接しないDNAによって隣接される。異種領域の別の例は、コード配列自体が自然において見られない構築物である(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含有するcDNA、または本来の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子変異または自然発生的突然変異事象は、本明細書で定義されるDNAの異種領域を引き起こさない。
「コード配列」は、(遺伝子コードを考慮して)タンパク質またはペプチド配列に対応する、またはそれをコードするコドンのインフレーム配列である。2つのコード配列は、配列またはそれらの相補配列が同一のアミノ酸配列をコードする場合、互いに対応する。適切な調節配列と関連したコード配列は、ポリペプチドに転写及び翻訳されてもよい。ポリアデニル化シグナル及び転写終止配列は通常、コード配列に対して3’に位置する。「プロモータ配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼと結合し、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することが可能なDNA調節領域である。プロモータ配列は典型的には、コード配列の転写に影響を及ぼす調節分子(例えば、転写因子)の結合のための追加の部位を含有する。コード配列は、RNAポリメラーゼが細胞中のプロモータ配列と結合し、コード配列をmRNAに転写し、次いで、それがコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳されるとき、プロモータ配列の「制御下」にあるか、またはプロモータに「作動可能に連結」される。
DNA、RNA、またはタンパク質などの異種物質を生物または宿主細胞に導入するために、ベクターが使用される。典型的なベクターとしては、組み換えウイルス(ポリヌクレオチドに対して)及びリポソーム(ポリペプチドに対して)が挙げられる。「DNAベクター」は、別のポリヌクレオチド断片が、付着した断片の複製をもたらすために付着され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミッドなどのレプリコンである。「発現ベクター」は、適切な宿主細胞によるポリペプチド合成を促す調節配列を含有する、DNAベクターである。これは通常、RNAポリメラーゼと結合し、mRNAの転写を開始するプロモータ、ならびにmRNAのポリペプチド(複数可)への翻訳を促すリボソーム結合部位及び開始シグナルを意味する。適切な部位における、かつ正しいリーディングフレーム中の、ポリヌクレオチド配列の発現ベクターへの組み込み、それに続くベクターによる適切な宿主細胞の形質転換は、上記のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの生成を可能にする。
ポリヌクレオチド配列の「増幅」は、特定の核酸配列の複数のコピーのインビトロ生成である。増幅された配列は通常、DNAの形態である。そのような増幅を実施するための種々の技術は、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、以下の総説に記載される:Van Brunt 1990,Bio/Technol.,8(4):291−294;及びGill and Ghaemi,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2008 Mar;27(3):224−43。ポリメラーゼ連鎖反応またはPCRは、核酸増幅の典型であり、本明細書でのPCRの使用は、他の好適な増幅技術を例示するものと見なされるべきである。
ほとんどの脊椎動物(哺乳動物を含む)における抗体の全体構造が、ここでよく理解される(Edelman,G.M.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,190:5(1971))。従来の抗体は、分子量が約23,000ダルトン(「軽鎖」)の2つの同一の軽ポリペプチド鎖、及び分子量が53,000〜70,000(「重鎖」)の2つの同一の重鎖からなる。4つの鎖は、「Y」構成においてジスルフィド結合によって結合され、軽鎖は、「Y」構成の開口部から開始し、重鎖を囲む。「Y」構成の「分岐」部分は、Fab領域に指定され、「Y」構成のステム部分は、FC領域に指定される。アミノ酸配列配向は、「Y」構成の最上部のN末端から各鎖の底部のC末端に達する。N末端は、それを誘発した抗原に対する特異性を有する可変領域有し、長さが約100のアミノ酸であり、軽鎖と重鎖との間、及び抗体間でわずかな変動がある。
可変領域は、鎖の残りの長さに延在し、特定の種類の抗体(すなわち、それを誘発する抗原)内で、抗体の特異性によって変化しない定常領域に、各鎖中で結合される。免疫グロブリン分子の種類を決定する、5つの既知の主な種類の定常領域がある(γ、μ、α、δ、及びε重鎖定常領域に対応する、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE)。定常領域または種類が、相補体の活性化(Kabat,E.A.,Structural Concepts in Immunology and Immunochemistry,2nd Ed.,p.413−436,Holt,Rinehart,Winston(1976))、及び他の細胞応答(Andrews,D.W.,et al.,Clinical Immunobiology,pp 1−18,W.B.Sanders(1980);Kohl,S.,et al.,Immunology,48:187(1983))を含む、抗体の後続のエフェクター機能を決定する一方で、可変領域は、それが反応する抗原を決定する。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。各重鎖の種類は、κまたはλ軽鎖のいずれかと対になり得る。軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合し、2つの重鎖の「尾」部分は、免疫グロブリンがハイブリドーマまたはB細胞のいずれかによって生成される場合、共有ジスフィルド結合によって互いに結合する。
「可変領域」または「VR」という表現は、抗原への抗体の結合に直接関与する、抗体中の軽鎖及び重鎖の各対内のドメインを指す。各重鎖は一端に、多くの定常ドメインが後に続く可変ドメイン(VH)を有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)、及びそのもう一端に定常領域を有し、軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常ドメインと整合し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整合する。
「相補性決定領域」、「超可変領域」、または「CDR」という表現は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域において見られる超可変または相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を指す(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,(1987)を参照されたい)。これらの表現は、Kabat et al.によって定義されるような超可変領域(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat E.,et al.,US Dept.of Health and Human Services,1983)、または抗体の三次元構造中の超可変ループ(Chothia and Lesk,J Mol.Biol.196 901−917(1987))を含む。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によってごく接近して保持され、他の鎖からのCDRと共に、抗原結合部位の形成に寄与する。CDR内には、抗体−抗原相互作用においてCDRによって使用される重要な接触残基を表す選択的決定領域(SDR)として記載されている選択アミノ酸がある(Kashmiri,S.,Methods,36:25−34(2005))。
「フレームワーク領域」または「FR」という表現は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内のフレームワーク領域のうちの1つ以上を指す(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,(1987)を参照されたい)。これらの表現は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内のCDR間に挿入されたアミノ酸配列領域を含む。
「安定したコピー数」という表現は、長期間にわたって(例えば、少なくとも1日、少なくとも1週間、もしくは少なくとも1ヶ月、もしくはそれ以上)、または長期にわたる増殖世代数にわたって(例えば、少なくとも30、40、50、75、100、200、500、もしくは1000世代、もしくはそれ以上)、遺伝子(抗体鎖遺伝子など)のコピー数を実質的に維持する宿主細胞を指す。例えば、所与の時点または世代数において、培養物中の少なくとも50%、及び好ましくは少なくとも70%、75%、85%、90%、95%、またはそれ以上の細胞が、開始細胞中と同じ遺伝子のコピー数を維持し得る。好ましい実施形態では、宿主細胞は、所望のタンパク質をコードする、または所望のマルチサブユニット複合体の各サブユニット(例えば、抗体)をコードする遺伝子の安定したコピー数を含有する。
「安定発現する」という表現は、長期間にわたって(例えば、少なくとも1日、少なくとも1週間、もしくは少なくとも1ヶ月、もしくはそれ以上)、または長期にわたる増殖世代数にわたって(例えば、少なくとも30、40、50、75、100、200、500、もしくは1000世代、もしくはそれ以上)、遺伝子またはタンパク質(抗体など)の同様の発現レベルを維持する宿主細胞を指す。例えば、所与の時点または世代数において、遺伝子またはタンパク質の生成または収率の速度が、初期の生成速度の少なくとも50%、及び好ましくは少なくとも70%、75%、85%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。好ましい実施形態では、宿主細胞は、所望のタンパク質またはマルチサブユニット複合体(例えば、抗体)を安定発現する。
実施例
以下の実施例は、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示され、本発明と見なされる範囲を制限することを目的としていない。使用される数値(例えば、量、温度、濃度など)に関する正確さを確実にするための努力が行われてきたが、一部の実験誤差及び偏差は認められるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は、大気または大気付近である。
上記の開示は概して、本発明を記載する。本明細書に開示される全ての参考文献は、参照により明示的に組み込まれる。例示目的のみで本明細書に提供され、本発明の範囲を制限するよう意図しない、以下の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解が得られ得る。
実施例1
実施例1〜10は、4つの異なるヒト化モノクローナル抗体の生成に対する方法の適用性を示す。各抗体は、グリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)プロモータ系を使用して、ピキア・パストリス中で生成される。
我々は、抗体Mab2の好気及び低酸素培養の間の力価の差を発見した。発酵槽中の撹拌速度を減少させることによる培養物への酸素可用性の制限は、産物形成の有意な増加をもたらした。これは、低酸素条件が、完全長抗体の生成に適用されるとき、完全に集合した、適切にジスルフィド結合した、ヒト化モノクローナル抗体に対する産物形成の有意な増加をもたらすことの、我々の最初の確認である。図37を参照されたい。
実施例2
エタノール濃度が毒性レベルに達しないことを確実にするために、制御された方法で低酸素条件の混合代謝を促進するために、それぞれが異なるコピー数を有する、抗体Mab1の3つの異なる菌株を、RQ制御戦略(RQを所望のレベル(この場合、1.12の値)で維持するために撹拌速度を調整するフィードバック制御を使用した、撹拌の調整)を使用して、20リットルの発酵槽中で増殖させた。それぞれの場合において、フィードバック制御機構のロバストな性質が、エタノールの毒性レベルの蓄積(典型的には20g/Lを超える)なしで混合代謝を可能にする。(図1〜5を参照されたい)。
実施例3
Mab1は、RQに対する3つの異なる制御設定値でのRQ制御戦略を使用して、低酸素条件下で培養される。この場合、RQ設定値の増加は、エタノール蓄積のレベルを増加させ、細胞の蓄積を減少させるが、産物蓄積全体には有意な影響を有しない。これは、1.09〜1.35の範囲の設定値における、RQ方法の利用を示す(図6〜10を参照されたい)。
実施例4
我々は、Mab1に関して、好気条件下での同じ過程に対して、RQ制御によって達成されるような低酸素成長の効果を比較した。好気過程は、より低いエタノール生成(予想通り)、及び著しく低い産物形成をもたらす。(図11〜16を参照されたい)。
実施例5
各重鎖及び軽鎖のコピー数が異なる生成菌株を有するMab2の発酵に対して、RQ制御戦略を実施した。この研究は、エタノールの蓄積を制御すると同時に、混合代謝のための低酸素環境を提供する上での、RQ戦略のロバストな性質を示す(図17〜21を参照されたい)。
実施例6
各重鎖及び軽鎖のコピー数が異なる生成菌株を有するMab3の発酵に対して、RQ制御戦略を実施した。この研究は、エタノールの蓄積を制御すると同時に、混合代謝のための低酸素環境を提供する上での、RQ戦略のロバストな性質を示す(図22〜26を参照されたい)。
実施例7
重鎖及び軽鎖の異なるコピーを含有するMab3の菌株は、RQ制御戦略を使用するが、異なるグルコース供給速度を取り入れ、増殖される。この場合も同様に、RQ戦略は、エタノール濃度の効果的な制御を可能にし、非常に似た産物蓄積速度をもたらす。これは、種々の発酵条件に対するRQ戦略のロバスト性のさらなる証拠を提供する。(図27〜31を参照されたい)。
実施例8
RQ戦略は、MAb1と同じ標的に結合するが、MAb1とは異なるそのCDRにおける配列を有する、MAb4に関して立証される。我々は、グルコース供給の2つの異なる速度を比較した。この場合も、戦略は、安定したエタノール濃度及び同様の抗体蓄積速度を可能にした。(図32〜36を参照されたい)。
実施例9
この実施例は、抗体または抗原結合発酵培地の生成のための発酵過程を記載する。
接種培地は、以下の表1に記載される。
*同じモル濃度を維持しながら、任意の化学物質(X nH2O;n≧0)は、同じ活性成分を含有するが種々の量の水を含有する、別の化学物質(X kH2O;k≠n)によって置き換えられ得る。
種発酵培地
培地は、以下の表2に記載される。
*同じモル濃度を維持しながら、任意の化学物質(X nH2O;n≧0)は、同じ活性成分を含有するが種々の量の水を含有する、別の化学物質(X kH2O;k≠n)によって置き換えられ得る。
微量ミネラル溶液は、以下の表3に記載される。
*同じモル濃度を維持しながら、任意の化学物質(X nH2O;n≧0)は、同じ活性成分を含有するが種々の量の水を含有する、別の化学物質(X kH2O;k≠n)によって置き換えられ得る。
全ての成分が完全にDI水に溶解されると、滅菌0.2μmフィルタを通して濾過滅菌する。
生成培養バッチ培地は、以下の表4に記載される。
*同じモル濃度を維持しながら、任意の化学物質(X nH2O;n≧0)は、同じ活性成分を含有するが種々の量の水を含有する、別の化学物質(X kH2O;k≠n)によって置き換えられ得る。
上記は、最小で20分間、121℃で加熱滅菌することによって滅菌される。滅菌及び冷却後、4.35mL/Lの微量ミネラル溶液(PTM1)が生成培養バッチ培地に添加される。発酵槽への接種前に、4.35mL/LのPTM1を含有する生成培養バッチ培地は、24〜30%のNH4OHでpH6.0に調節されるべきである。上記の値は、培地及び接種培養の両方を含む、発酵開始総容積に基づくべきである。
グルコース/酵母抽出供給液は、以下の表5に記載される。
*同じモル濃度を維持しながら、任意の化学物質(X nH2O;n≧0)は、同じ活性成分を含有するが種々の量の水を含有する、別の化学物質(X kH2O;k≠n)によって置き換えられ得る。
エタノールボーラス組成は、以下の表6に記載される。
*任意に、同じ最終濃度を達成するために、エタノールのより希薄な溶液が使用され得る。
発酵過程
抗体または抗原結合フラグメントの生成のための発酵過程は、ピキア・パストリスなどの酵母によって達成される。発酵は、ワーキングセルバンクの冷凍バイアルの解凍から開始される。次いで、解凍された細胞は、振とうフラスコ中で増殖される。次いで、振とうフラスコからの培養物は、接種ステップ、それに続いて抗体の生成のためのフェドバッチ過程に使用される。任意に、接種材料は、種バッチ発酵中で細胞を増殖させるために使用され得、それは次いで、生成発酵槽に接種するために使用される。
1.接種ステップ
ワーキングセルバンクの解凍された細胞は、フラスコ接種培地の作業容積の8〜20%を含有する、バッフル振とうフラスコ(1〜4バッフル)に移される。解凍されたワーキングセルバンクは、接種培地の容積の0.1〜1.0%で振とうフラスコに添加される。接種培養物は、220〜260rpmの撹拌速度で29〜31℃でインキュベートされる。種培養物は、いったん15〜30(最適には20〜30)の600nm(OD600)の吸光度に相関する細胞密度に達すると、採取される。培養時間は、通常20〜26時間(最適には23〜25時間)である。
2.種発酵バッチ発酵(任意)
発酵槽は、「接種ステップ」からの接種材料が接種される。
接種材料=種発酵培地容積の0.3%
温度:30℃
%DO:30%
pH:6.0
撹拌:100〜490RPMのカスケード戦略
空気流:1vvm((空気の体積/開始発酵培地の体積)/分)
圧力:0.2バール
酸素補充は、30%の所望の%DO設定値を維持するために、一定のvvmを維持するために、空気流の対応する減少と共に最大撹拌が達成されたときに生じる
DOスパイクの連続的監視
撹拌の減少及びDOの増加によって示される、DOスパイクが生じており、炭素源(グリセロールまたはグルコース)が完全に利用され、測定された光学的濃度OD600が、20よりも大きいことを示すとき、生成発酵槽開始バッチ容積の1.0〜10%に等しい種バッチ発酵または接種培養の容積を移す。
3.バッチ培養相
バッチ培養は、発酵槽への種培養物の接種によって開始され、グリセロールの枯渇で終了する。発酵槽は、最大作業容積の30〜40%の調製された生成培養バッチ培地を含有する。発酵槽内で1〜10%の接種材料を生成するために、種培養物が使用される。初期の操作パラメータは、以下の通りに設定される。
温度:27〜29℃
撹拌(P/V):2〜16KW/m3
ヘッドスペース圧力:0.7〜0.9バール
空気流:0.9〜1.4VVM(開始体積に基づく、空気の体積/培養物の体積/分)
DO:制御なし
pH:5.9〜6.1、24〜30%NH4OHによって制御される
開始撹拌速度及び空気流は、初期電力/体積(P/V)及び体積/体積/分(VVM)要件を満たすために、バッチ培養相中に一定に保たれる。バッチ培養相は、グリセロールが枯渇したときに供給を開始することによって終了する。グリセロールの枯渇は、溶存酸素(DO)値スパイクで示される。DOスパイクは、DOの値が数分以内に30%超増加するときとして定義される。バッチ培養相は通常、10〜15時間(最適には11〜13時間)続く。
4.エタノールボーラス添加(任意)
上記のようなDOスパイクの観察後、ボーラスとして200度の8〜16g/Lのエタノールが、発酵槽に添加される。これは通常、バッチ培養相の12〜14時間以内に生じる。
5.フェドバッチ培養相
発酵槽へのグルコース/酵母抽出供給液の供給は、DOスパイク後、及びエタノールボーラス添加後、バッチ培養相内の約12〜14時間に開始され、発酵の終了まで続く。グルコース/酵母抽出供給液の供給速度は、1時間当たりの6〜11gのグルコース/Lの開始体積を可能にするように設定される。グルコース/酵母抽出供給液の開始は、フェドバッチ培養相を開始する。
6.RQ制御開始
呼吸商(RQ)制御は、フェドバッチ培養相の開始の8時間後に開始する。初期RQ設定値は、1.09〜1.35の範囲内である。撹拌は、RQを制御するために使用される。撹拌は、RQ制御設定値からカスケードされる。RQ制御は、バッチ培養相の開始から約20〜22時間で開始され、発酵の終了まで続く。RQ制御の継続時間は、約60〜90時間続く。
撹拌は、RQの設定レベルを維持するために調節される。RQ制御戦略は、以下の通りに詳述される。
RQ高制御設定値:1.35
RQ低制御設定値:1.08
最大撹拌設定値:255〜950rpm
最小撹拌設定値:150〜300rpm
撹拌ステップ変更(各待ち時間間隔における変更):3〜25rpm
待ち時間(評価間の時間):3〜10分
エタノール/RQ制御戦略
この戦略は、エタノール濃度が細胞に対して毒性であり得る最大値を超えず、産物発現を低減し得る最小値を超えないことを確実にするために組み込まれている。
実施例10
図38は、低酸素及び好気条件の両方の下で生成される、Mab1のSDS−PAGEゲルを示す。非還元ゲルに対して、150kDでの主なバンドに加えて、主なバンドよりも低い追加のバンドが、鎖間ジスルフィド架橋のレベルに対する産物の不均一性を示す。これらのゲルは、不均一性のレベルが低酸素条件の使用によって低減されることを示す。完全長の完全に架橋した産物の増加した均一性は、存在する他のタンパク質に対して、増加した純度、すなわち、増加した所望の産物を示す。
図38はまた、同一試料に対する還元SDS−PAGEゲルを示す。この場合、25kD及び50kDの予想されるバンドは、抗体の重鎖及び軽鎖を表す。追加のバンド、特に約55kDの重鎖よりも上のバンドは、抗体の変異体種の存在を表す。これらのゲルは、好気培養と比較して、細胞が低酸素条件下で増殖されるとき、この変異体の存在の劇的な減少を示す。
実施例11
本実施例は、ピキア・パストリスから発現された抗体の収率及び純度に対する温度シフトの効果を試験する。抗体収率は、培養中にもたらされた上方温度シフトによって、最大で約30%増加した。加えて、純度は、産物関連変異体及び異常な複合体の存在度の減少によって示されるように、温度シフトによって増加した。
方法
Ab−Aを、重鎖遺伝子の4つの組み込まれたコピー及び軽鎖遺伝子の3つの組み込まれたコピー(それぞれ配列番号1及び2)を含有する、ピキア・パストリス菌株から発現させた。接種材料を以下の栄養素(%w/v)を含む培地を使用して膨張させた:酵母抽出物3%、グリセロール2%、YNB1.34%、ビオチン0.004%、及び27.2g/Lのリン酸一カリウム。発酵槽のための接種材料を生成するために、細胞を30℃及び300rpmで、シェーカーインキュベータ中で約24〜28時間増殖させた。
Ab−A配列は、以下の通りである。
Ab−A重鎖ポリヌクレオチド配列:
Ab−A軽鎖ポリヌクレオチド配列:
次いで、6L滅菌成長培地を含有するApplikonの17Lの作業容積の容器に、10%の接種材料を添加した。成長培地は、以下の栄養素を含んだ:硫酸カリウム18.2g/L、リン酸一アンモニウム35.6g/L、リン酸二カリウム12.8g/L、硫酸マグネシウム七水和物3.72g/L、クエン酸ナトリウム二水和物10g/L、グリセロール40g/L、酵母抽出物30g/L、PTM1微量金属4.35mL/L、及び消泡剤204 1.67mL/L。PTM1微量金属溶液は、以下の成分を含んだ:硫酸銅五水和物6g/L、ヨウ化ナトリウム0.08g/L、硫酸マンガン水和物3g/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物(sodium molybdate dihyrate)0.2g/L、ホウ酸0.02g/L、塩化コバルト0.5g/L、塩化亜鉛20g/L、硫酸第一鉄七水和物65g/L、ビオチン0.2g/L、及び硫酸5mL/L。バイオリアクタ過程制御パラメータを以下:撹拌950rpm、空気流1.35標準リットル/分、温度28℃、のように設定し、pHを、水酸化アンモニウムを使用して制御した(6で)。酸素補充は提供しなかった。
DOスパイクと称される、溶存酸素の濃度の急速な増加によって検出した、初期グリセロールの消費まで、発酵培養を28℃で約12〜16時間増殖させた。DOスパイクを検出した直後、約1.1%エタノール(重量/体積)の最終濃度を達成するために、1リットルの培養物当たり11グラムの100%エタノールのボーラスを反応器に添加した。発酵培養を20分間平衡化した。次いで、発酵の継続時間にわたって、供給物添加を11gのグルコース/L/時間の一定速度で開始した。供給物添加を開始した約8時間後、500rpmの最小撹拌速度及び950rpmの最大撹拌速度での撹拌フィードバック制御を使用して、RQ制御を開始し、それにより発酵の残りの間、1.12のRQ設定値を維持した。供給物は、以下の成分からなった:酵母抽出物50g/L、デキストロース無水500g/L、硫酸マグネシウム七水和物3g/L、及びPTM1微量金属12mL/L。任意に、クエン酸ナトリウム二水和物(1.66g/L)も供給物に添加した。供給pHは、6.0であった。
供給開始5分後、培養温度を5つの異なる温度(25℃、29.5℃、31℃、32.5℃、及び34℃)のうちの1つまで急速にシフトした。加えて、対照培養を28℃、すなわち、温度シフトなしで維持した。発酵総時間は、約86〜87時間であった。
発酵全体を通して、各培養から試料を回収し、全培養液力価を決定し、本願の図面の間で一貫している任意単位で表示した。加えて、試験の終了時に、UV検出器具を有するAgilent(Santa Clara,CA)1200 Series HPLCを使用して、還元及び非還元試料に対して実施されるサイズ排除クロマトグラフィ(SE−HPLC)によって、抗体純度を決定した(タンパク質A精製後)。試料分離には、Tosoh Bioscience(King of Prussia,PA)からのTSKgel Guard SWx1 6x40mMと接続したTSKgel GS3000SWx17.8x300mMカラムを使用した。イソクラティックモードで、0.5mL/分の流速を有する移動相として、100mMのリン酸ナトリウム、200mMの塩化ナトリウム、pH6.5を使用し、UV215nmでの吸光度を監視した。試料の注入前に、安定したベースラインが達成されるまで、カラムを平衡化した。移動相を使用して、試料を1mg/mLの濃度まで希釈し、30μLの体積を注入した。カラム性能を監視するために、BioRad(Hercules,CA)ゲル濾過標準を使用した。
結果
Ab−Aを発現させるように操作されたピキア・パストリスを、炭素源としてグリセロールを用いた初期成長相中に、28℃で維持された培養中で増殖させた。グリセロールの枯渇後、連続グルコース供給を開始し、培養温度を、25℃〜34℃の新しい設定温度まで上方または下方に急速にシフトし、それを培養の継続時間にわたって維持した。1つの培養を対照として28℃で維持した。
抗体生成を監視するために、(分泌シグナルを含むことによって、抗体が分泌された)培養培地を、86〜87時間の最終時点まで定期的にサンプリングした。全培養液抗体力価(任意単位)が決定され、図40に、各培養温度に対してグラフで示される。図示されるように、31℃で維持された培養に対して、最高の最終力価が達成された。32.5℃で維持された培養に対して、わずかに高い力価が最初に達成されたが、全培養液力価は横ばい状態になり、65〜70時間の間に減少し始め、最終力価は、非シフト培養に対して観察されたものよりも低かった。29.5℃で維持された培養で、2番目に高い最終力価が観察された。34℃まで上方にシフトされた培養及び25℃まで下方にシフトされた培養の両方が、28℃で維持された培養よりも低い力価を生成した。
加えて、培養の終了時(すなわち、86〜87時間)での抗体純度を決定した。具体的に、各培養からのタンパク質A精製抗体を、排除クロマトグラフィ(SEC)及びクマシー染色を用いたゲル電気泳動によって評価し(図42〜47)、それらを還元及び非還元試料の両方に対して実施した。非還元試料のSEC分析は、単一の重鎖及び単一の軽鎖を含有する75kDA「半抗体」種、ならびに2つの重鎖及び単一の軽鎖を含有する「HHL」複合体を含む、異常な化学量論を有する複合体の相対存在量を検出した。還元試料のSEC分析は、無傷重鎖及び軽鎖、ならびに約9.8、10.15、及び10.8分の溶出時間を有する異常なサブユニット(抗体重鎖のグリコシル化形態に対応すると考えられる)の相対存在量を検出した。
SEC結果は、図41A〜Bに要約される。非還元SEC分析は、総タンパク質の同様の割合が、非シフト培養(すなわち、28℃で維持された)及び29.5℃及び31℃までシフトされた培養に対する主な抗体ピークに含まれたことを実証し、全ての3つの条件は、完全抗体ピーク内で総タンパク質の88〜89%を維持した(図41A)。したがって、誤って集合した複合体に対して、29.5℃及び31℃への上方シフトは、純度に悪影響を及ぼさなかった。さらに、還元SEC分析は、非シフト培養と比較して、重鎖及び軽鎖ピーク中に含まれる総タンパク質の割合が、29.5℃にシフトされた培養に対して同様のままであり、より高い温度シフトに対して、約4%増加したことを実証した。
それに基づき、29.5℃または31℃への上方温度シフト(すなわち、1.5℃〜3℃)が、最終抗体収率を増加させたことが結論付けられる。加えて、純度は、31℃にシフトされた培養中で増加したが、純度は、29.5℃にシフトされた培養に対しては悪影響を受けなかった。
実施例12
本実施例は、ピキア・パストリスから発現された抗体の収率及び純度に対する温度シフトの効果を試験する。低及び高生産菌株の2つの異なる菌株を試験した。高生産菌株に対して、抗体収率は、培養中にもたらされた上方温度シフトによって、約28%増加した。それに基づき、すでに高度に最適化された菌株からの生成は、温度シフトによって実質的に利益を得たことが結論付けられる。加えて、純度は、ほとんどの場合における産物関連変異体の存在度の減少によって示されるように、温度シフトによって増加した。
方法
Ab−Bを、重鎖遺伝子の3または4つの組み込まれたコピー及び軽鎖遺伝子の3つの組み込まれたコピー(それぞれ配列番号3及び4)を含有する、ピキア・パストリス菌株から発現させた。接種材料を以下の栄養素(%w/v)を含む培地を使用して膨張させた:酵母抽出物3%、グリセロール2%、YNB1.34%、ビオチン0.004%、及び27.2g/Lのリン酸一カリウム。発酵槽のための接種材料を生成するために、細胞を30℃及び300rpmで、シェーカーインキュベータ中で約24〜28時間増殖させた。
Ab−B配列は、以下の通りである。
Ab−B重鎖ポリヌクレオチド配列:
Ab−B軽鎖ポリヌクレオチド配列:
次いで、6L滅菌成長培地を含有するApplikonの17Lの作業容積の容器に、10%の接種材料を添加した。成長培地は、以下の栄養素を含んだ:硫酸カリウム18.2g/L、リン酸一アンモニウム35.6g/L、リン酸二カリウム12.8g/L、硫酸マグネシウム七水和物3.72g/L、クエン酸ナトリウム二水和物10g/L、グリセロール40g/L、酵母抽出物30g/L、PTM1微量金属4.35mL/L、及び消泡剤204 1.67mL/L。PTM1微量金属溶液は、以下の成分を含んだ:硫酸銅五水和物6g/L、ヨウ化ナトリウム0.08g/L、硫酸マンガン水和物3g/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物(sodium molybdate dihyrate)0.2g/L、ホウ酸0.02g/L、塩化コバルト0.5g/L、塩化亜鉛20g/L、硫酸第一鉄七水和物65g/L、ビオチン0.2g/L、及び硫酸5mL/L。バイオリアクタ過程制御パラメータを以下:撹拌950rpm、空気流1.35標準リットル/分、温度28℃、のように設定し、pHを、水酸化アンモニウムを使用して制御した(6で)。酸素補充は提供しなかった。
DOスパイクと称される、溶存酸素の濃度の急速な増加によって検出した、初期グリセロールの消費まで、発酵培養を28℃で約12〜16時間増殖させた。次いで、8時間にわたって、供給物添加を15gのグルコース/L/時間の速度で開始した。供給物添加を開始した約8時間後、供給物添加速度を、発酵の継続時間にわたって、13gのグルコース/L/時間まで減少させた。また、1.12のRQ設定値を維持するために、500rpmの最小撹拌及び950rpmの最大撹拌での撹拌フィードバック制御を使用して、この時点でRQ制御を開始した。供給物は、以下の成分を含んだ:酵母抽出物50g/L、デキストロース無水500g/L、硫酸マグネシウム七水和物3g/L、及びPTM1微量金属12mL/L。任意に、クエン酸ナトリウム二水和物(1.66g/L)も供給物に添加した。
供給開始後、2つの発現菌株のそれぞれの1つの培養に対して、30℃まで急速に培養温度をシフトした。加えて、2つの菌株のそれぞれの2つの培養に対して、対照培養を28℃、すなわち、温度シフトなしで維持した。発酵総時間は、約86時間であった。
発酵全体を通して、各培養から試料を回収し、全培養液力価を決定し、本願の図面の間で一貫している任意単位で表示した。加えて、試験の終了時に、実施例11に記載される方法を使用して、サイズ排除クロマトグラフィ(SE−HPLC)によって、抗体純度を決定した(タンパク質A精製後)。
結果
Ab−Bを、軽鎖コード遺伝子の3つのコピー及び重鎖コード遺伝子の3つのコピー(H3/L3)、または軽鎖コード遺伝子の3つのコピー及び重鎖コード遺伝子の4つのコピー(H4/L3)を含有する、操作されたピキア・パストリス菌株から発現させた。炭素源としてグリセロールを用いて、培養を28℃で最初に増殖させた。グリセロールの枯渇後、連続グルコース供給を開始し、培養温度を、30℃まで上方に急速にシフトし、それを培養の継続時間にわたって維持したか、または対照として28℃で維持した。
ベースラインにおいて、H4/L3菌株(図48A)は、H3/L3菌株(図48B)よりも高い抗体力価を発現し、非シフト培養(すなわち、28℃で維持された)に対する平均最終全培養液力価は、H4/L3菌株に対するものよりも12%高かった。
30℃までシフトされたH4/L3培養は、最終力価のさらなる28%の増加を示した(28℃で維持された、すなわち、シフトなしの2つのH4/L3培養からの平均力価に対して)。H3/L3菌株に対して、観察された最終収率の増加は、幾分顕著ではなかったが、30℃までシフトされたH3/L3菌株からの収率は、28℃で維持された(すなわち、シフトなしの)2つのH3/L3培養からの平均最終収率に対して、約5%増加した。
図52は、培養中の時間に対して表示される、各培養物の温度を示す。予想通り、温度シフト後、細胞は、30℃の新しい設定温度に迅速に達し、シフト及び非シフト培養の両方が、培養全体にわたってそれらの設定温度を維持した。
SE−HPLCを使用して、各培養から抗体純度も評価した。実施例11に記載されるように、非還元試料は、異常な複合体(1つの重鎖及び1つの軽鎖を含有する75kDa「半抗体」、ならびに2つの重鎖だが1つの軽鎖のみを含有するHHL複合体)の存在度の検出を可能にした。完全抗体(「主ピークIgG」)に含まれるタンパク質の分画は、30℃までシフトされた2つの試料に関して、それらのそれぞれの非シフト対照の平均と比較して増加し、それは、非シフト試料の平均に対して、シフトされた試料中の75kDA HL種及びピーク前HHL種の両方の減少に起因した。具体的には、シフトされたH4/L3試料に関する83.44%、4.75%、及び6.15%のそれぞれと比較して、非シフトH4/L3試料に関して、完全抗体ピークに含まれるタンパク質の平均分画は、74.39%であり、ピーク前HHLにおいて、4.26%であり、75kD HLは12.65%であった。非シフトH3/L3試料に関して同様に、91.63%、2.94%、及び1.44%のそれぞれと比較して、完全抗体ピークに含まれるタンパク質の平均分画は、82.80%であり、ピーク前HHLにおいて、5.31%であり、75kD HLは4.76%であった。結論として、非還元SEC分析は、温度シフトが、(1)完全抗体ピークに含まれる抗体の平均量を増加し、(2)4つの事例のうち3つにおいて、異常な複合体の平均量を減少させたことを実証した。
また、実施例11に記載されるように、還元された試料は、完全長重鎖及び軽鎖に含まれるタンパク質、ならびに3つの異なる溶出ピークにおいて観察された産物関連変異体の相対存在量の検出を可能にする。非還元分析で観察された異常な複合体の観察された減少とは異なり、還元された試料は、完全長重鎖及び軽鎖に含まれる抗体の量の一貫した改善を示さなかった。全体として、2つの菌株に関して、重鎖の平均相対存在量は、非シフト培養の平均と比較して、シフトされた培養において約1〜3%増加し、軽鎖の平均相対存在量は、2つの菌株に関して、変化しなかったか、または約0.9%減少した。
実施例13
本実施例は、ピキア・パストリスから発現された抗体の収率及び純度に対する温度シフトの効果を試験する。抗体収率は、培養中にもたらされた上方温度シフトによって、平均で47%増加した。
方法
5つの培養を28℃で維持し(すなわち、非シフト)、4つの培養を30℃までシフトしたことを除いて、実施例11に記載されるように、Ab−Aを、重鎖遺伝子の4つの組み込まれたコピー及び軽鎖遺伝子の3つの組み込まれたコピーを含有する、ピキア・パストリス菌株から発現させた。実施例11にあるように、供給開始5分後に、一度に温度シフトをもたらした。発酵総時間は、約87時間であった。
実施例11に記載される方法を使用して、発酵全体を通して、各培養から試料を回収し、全培養液力価を決定し、本願の図面の間で一貫している任意単位で表示し、還元及び非還元試料に対して実施されるサイズ排除クロマトグラフィ(SE−HPLC)によって、最終時点(タンパク質A精製後)において、抗体純度を各培養に対して決定した。
結果
Ab−Aを発現させるように操作されたピキア・パストリスを、炭素源としてグリセロールを用いた初期成長相中に、28℃で維持された培養中で増殖させた。グリセロールの枯渇後、連続グルコース供給を開始し、培養温度を、28℃の新しい設定値まで上方に急速にシフトし、それを培養の継続時間にわたって維持した(N=4)。5つの対照培養を28℃で維持した(すなわち、非シフト)。
全培養液抗体力価を定期的にサンプリングすることによって決定し、図50にグラフで示される(任意単位)。図示されるように、30℃にシフトされた4つの培養のそれぞれは、28℃で維持された非シフト培養の全てよりも高い最終力価を生成した。平均で、最終力価は、非シフト培養よりもシフトされた培養に関して47%高かった。
加えて、SE−HLPCによって純度を評価し、シフト及び非シフト培養に対して比較した。非還元試料は、平均で、主な抗体ピークに含まれるタンパク質の相対量の約2%の増加を明らかにし、ピーク前HHLは、平均で約21%減少し、75kDa HLピークは、57%増加した。還元された試料は、純度の全体的な改善、及び3つの不純物ピーク全ての平均相対存在量の減少を明らかにした。具体的に、非シフト試料に対して、シフトされた試料は、RT9.80ピークの26%の減少、RT10.16ピークの74%の減少、及びRT10.80ピークの70%の減少を示した。結論として、非還元SEC分析は、温度シフトが、(1)完全抗体ピークに含まれる抗体の平均量を増加し、(2)3つの異常な複合体のうち2つの平均量を減少させたことを実証した。還元SEC分析は、3つの検出された不純物ピークのそれぞれの相対存在量の大幅な減少を明らかにした。
それに基づき、28℃または30℃からの上方温度シフト(すなわち、2℃)が、最終抗体収率を再生可能な方法で、平均で25〜30%増加させたことが結論付けられる。さらに、キャピラリー電気泳動法分析によって反映されるような抗体の純度はまた、還元比較においてより顕著な、非シフト培養と比較したときの温度シフトされた培養中の純度の増加を反映した。
本発明の種々の例示された実施形態の上記の記載は、包括的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。本発明の特定の実施形態及び実施例は、例示目的で本明細書に記載されるが、種々の同等の修正が、当業者が認識するように、本発明の範囲内で可能である。本発明の本明細書に提供される教示は、上記の実施例以外の他の目的にも適用され得る。
本発明は、上記の説明及び実施例に具体的に記載されるもの以外の方法で実施されてもよい。本発明の多数の修正及び変更が上記の教示を考慮して可能であり、したがって添付の特許請求の範囲内である。
上記の詳述を考慮して、これら及び他の変更が本発明に行われ得る。概して、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、本発明を、本明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。したがって、本発明は、本開示によって限定されず、むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるものである。
抗原特異的B細胞のクローン集団を得るための方法に関する、ある特定の教示は、2006年5月19日出願の米国仮特許出願第60/801,412号、及び米国特許出願第2012/0141982号に開示され、それらのそれぞれの開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
ウサギ由来モノクローナル抗体のヒト化、及び抗原結合親和性を維持するための好ましい配列修飾に関する、ある特定の教示は、2008年5月21日出願の「Novel Rabbit Antibody Humanization Methods and Humanized Rabbit Antibodies」と題する、WO/2008/144757に対応する、国際出願PCT/US2008/064421に開示され、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
接合コンピテント酵母を使用した抗体またはそのフラグメントの生成、及び対応する方法に関する、ある特定の教示は、2006年5月8日出願の米国特許出願第11/429,053号(米国特許出願公開US2006/0270045)に開示され、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
背景技術、発明の概要、発明を実施するための形態、及び実施例に列挙される各文書を含む、本明細書に列挙される各文書の全開示(特許、特許出願、学術論文、要約、マニュアル、書籍、または他の開示を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。