関連出願の開示
本出願は、2011年8月19日に出願し、「形質転換した微生物、例えばピキア・パストリス中で抗体などのマルチサブユニットタンパク質を高濃度かつ高純度で生産するための多コピー法(MULTI−COPY STRATEGY FOR HIGH−TITER AND HIGH−PURITY PRODUCTION OF MULTI−SUBUNIT PROTEINS SUCH AS ANTIBODIES IN TRANSFORMED MICROBES SUCH AS PICHIA PASTORIS)」という名称の米国特許出願番号第61/525,307号(代理人明細書番号67858.730200)およびその一部継続出願である、2012年5月8日に出願した、「形質転換した微生物、例えばピキア・パストリス中におけるマルチサブユニットタンパク質の高純度生産(HIGH−PURITY PRODUCTION OF MULTI−SUBUNIT PROTEINS SUCH AS ANTIBODIES IN TRANSFORMED MICROBES SUCH AS PICHIA PASTORIS)」という名称の米国特許出願番号第13/466,795号(代理人明細書番号75820.711001)の優先権を主張し、この全体はそれぞれ、参照することにより本明細書に組み入れられる。
本出願は、2012年8月16日に作成された、「67858o730201.txt」という名称のファイルに含まれ、ASCII形式でEFS−Webを介して提出されている43,651バイトの配列表を含み、その全体は参照することにより本明細書に組み入れられる。
本開示は基本的に、形質転換細胞中で異種タンパク質を生産する方法に関する。具体的には、本開示は、抗体や他のマルチサブユニットタンパク質、例えばホルモンや受容体を含み、分泌されても分泌されなくてもよいマルチサブユニットタンパク質を、高収量かつ望ましくない副産物の量を抑えて生産するための改良法を提供する。例示的な実施形態では、形質転換細胞は酵母、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)または出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である。
標準的な抗体は、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖で構成される四量体タンパク質である。特定の型の純粋なヒト抗体は、天然の供給源から多くの使用目的に十分な量で精製することが難しいか、あるいは精製することができない。そのためバイオテクノロジーや医薬品に関連する企業は、抗体を大規模で準備するのに組換えDNAを使用した方法を用いてきた。機能性抗体の生産には通常、単に2種類のポリペプチドを合成するだけでなく、多数の翻訳後事象、例えばN末端にある分泌シグナル配列のタンパク質分解;正確な折り畳みおよびポリペプチドを四量体に配置すること;ジスルフィド結合の形成;ならびに、典型的には、特定のN結合型グリコシル化が含まれる。これらの事象は全て、真核細胞の分泌経路、真核細胞に固有のオルガネラの複合体で行われる。
そのような複雑なタンパク質の組換え合成は通常、高等真核細胞を培養して生物学的に活性な材料を生産させることに依存しており、哺乳類の培養細胞が最も一般的に使用されている。しかしながら、哺乳類の組織培養に基づく生産システムには、微生物の発酵過程に関連した、相当量の余分な費用と様々な要素が必要である。加えて、哺乳類の培養細胞に由来する生産物には、培養細胞中に含まれる得る哺乳類の病原体(ウイルスを含む)または培養に使用した動物由来の製品(例えば血清)を含まないことを確認するためのさらなる安全性検査が必要とされる場合がある。
以前の研究は、研究、診断、および治療用途に適している可能性のある機能性抗体を生成するための費用効率の高いプラットフォームとしての酵母(ピキア・パストリス)の確立を補助するものであった。共有している米国特許第7,935,340号および同第7,927,863号を参照のこと。この全体はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。方法は、組換えタンパク質を発現させるためのP.pastorisの発酵の設計および最適化、例えば細胞密度、ブロス容量、基質供給量および反応の各段階の長さの最適化に関する文献中でも実証されている。Cregg,J.M.編,2007,Pichia Protocols(第二版),Methods in Molecular Biology,vol.389,Humana Press,Totowa,N.J.,43〜63頁のZhang et al.,「Rational Design and Optimization of Fed−Batch and Continuous Fermentations」を参照のこと。
組換えマルチサブユニットタンパク質は培養細胞からも生産することができるが、望ましくない副産物も一緒に生産される。例えば、培養細胞は、所望のマルチサブユニットタンパク質と共に、遊離した単量体、化学量論的に正しくない複合体、または望ましくないもしくは異常なグリコシル化を含むタンパク質を生産する可能性がある。所望のマルチサブユニットタンパク質の精製には余分な費用がかかる場合があり、また、精製に伴う工程で、活性な複合体の総収量が減る場合がある。さらに、精製した後でも望ましくない副産物が問題を引き起こすような量で含まれる可能性も排除できない。例えば、グリコシル化された副産物は、投与後の免疫反応のリスクを高めるような量で含まれる可能性があり、異常な複合体または凝集対は特定の活性を低下させる場合があり、かつ、免疫原性をもつ可能性もある。
本開示は、マルチサブユニットタンパク質、例えば抗体、ホルモンおよび受容体ならびに他のマルチサブユニット複合体の組換えによる生産を高収率で提供するための改良法および組成物を提供する。これらのマルチユニットポリペプチドは、同じであっても異なっていてもよい2つ以上のサブユニットを含み得る(すなわちホモ重合体またはヘテロ重合体ポリペプチド)。例示的な実施形態では、このようなマルチサブユニットタンパク質の分泌量または細胞内収量は、本明細書で開示した方法を用いると、標準的な方法と比較して、少なくとも50%、少なくとも100%、またはそれ以上増加する。
本発明はまた、抗体および他のマルチサブユニットタンパク質の組換えによる生産を、望ましくない副産物の生産を抑えて提供するための改良法および組成物も開示する。例示的な実施形態では、望ましくない副産物とはグリコシル化された抗体重鎖などのグリコシル化されたタンパク質であってよく、その量は、本明細書で開示の方法を用いると、標準的な方法と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または検出できないレベルまで低下し得る。そのように相対量が低下し得る望ましくない副産物の例としては、所望のマルチサブユニット複合体よりとは見かけの分子量が異なる1種類以上の種が含まれ得る。見かけの分子量は例えば、化学量論の違い、折り畳み、複合体の配置、および/またはグリコシル化に影響され得る。そのような望ましくない副産物は例えば、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはゲル電気泳動で検出することができ、また、所望のマルチサブユニット複合体よりも大きいまたは小さい見かけの分子量を有し得る。例示的な実施形態では、望ましくない副産物は還元条件下で検出することができる。他の例示的な実施形態では、望ましくない副産物を非還元条件下で検出してもよい。
例示的な実施形態において本開示は、抗体および他のマルチサブユニット複合体の組換え的な生産をより高収量で提供するための改良法および組成物も提供する。例示的な実施形態では、本明細書に開示の方法を用いると、標準的な方法と比較して、収量が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、またはそれ以上増加する。
例示的な実施形態では、マルチサブユニットタンパク質を生産させることができる宿主細胞は酵母、例えばピキア種の酵母、例えばP.pastorisもしくは別のメチロトローフ酵母、またはサッカロミセス種の酵母、例えば出芽酵母(S.cerevisiae)、あるいは別の酵母、例えばシゾサッカロミセス、例えば分裂酵母(S.pombe)であってよい。本発明で使用することができるメチロトローフ酵母の他の例としては、ピキア・アングスタ(Pichia angusta、当該分野ではハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)としても知られている)、ピキア・グイレルモルジィ(Pichia guillermordii)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・イノシトベラ(Pichia inositovera)、オガタエア・ニトラトアベルサ(Ogataea nitratoaversa)、およびカンジダ・ボイドニィ(Candida boidnii)が挙げられる。
一側面では、本開示は、より高い収量で所望の抗体または他の所望のマルチサブユニット複合体を生産する宿主細胞を同定するための改良法を提供し、この方法は、(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが前記マルチサブユニット複合体のサブユニット(例えば、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖)の発現を提供する遺伝子を含む、少なくとも2種類の宿主細胞を含む、工程;(b)前記宿主細胞を、マルチサブユニット複合体を発現させる条件下で培養する工程であって、ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞中の遺伝子は、前記所望のマルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットを様々なレベルで発現させる、工程;(c)前記宿主細胞のそれぞれによって生産されたマルチサブユニット複合体の収量を測定する工程;および(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高収量で生産する宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体をより高い収量で生産する宿主細胞として同定する工程、を含んでいてもよい。
別の側面では、本開示は、より高純度の所望の抗体または他の所望のマルチサブユニット複合体を生産している宿主細胞を同定するための改良法を提供し、この方法は、(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが前記マルチサブユニット複合体のサブユニット(例えば、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖)の発現を提供する遺伝子を含む、少なくとも2種類の宿主細胞を含む、工程;(b)前記宿主細胞を、マルチサブユニット複合体を発現させる条件下で培養する工程であって、ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞中の遺伝子は、前記所望のマルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットを様々なレベルで発現させる、工程;(c)前記宿主細胞のそれぞれによって生産された前記マルチサブユニット複合体の純度を測定する工程;および(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高純度で生産している宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体をより高純度で生産する宿主細胞として同定する工程、を含んでいてもよい。
宿主細胞は、真核細胞、例えば酵母細胞、例えばメチロトローフ酵母、例えばピキア属の酵母であってよい。ピキア属のメチロトローフ酵母の例としては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・グイレルモルジィ(Pichia guillermordii)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、およびピキア・イノシトベラ(Pichia inositovera)が挙げられる。宿主細胞を交配によって、例えば、半数対で、それぞれがマルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子を1コピー以上含んでいる酵母細胞を2つ交配することによって生成してもよい。例えば、前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを、既知で、異なる数のコピー数含む多数の半数体細胞を生成し、半数体細胞をそれぞれの組み合わせで交配することによって、それぞれのパネルが、予め選択しておいたコピー数の、マルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている遺伝子を含む、二倍体細胞のパネルを速やかに作成することができる。加えて、1つ以上を、既知で、異なるコピー数の前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを含む多数の二倍体細胞を生成し、二倍体細胞を異なる組み合わせで交配することによって、それぞれのパネルが、予め選択しておいたコピー数の、マルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている遺伝子を含む、四倍体細胞のパネルを速やかに作成することができる。
好ましい実施形態では、ピキア属のメチロトローフ酵母は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。宿主細胞は二倍体細胞であっても四倍体細胞であってもよい。
所望のマルチサブユニット複合体の前記サブユニット、例えば、前記所望の抗体軽鎖および/または重鎖をコードしている少なくとも1つの前記遺伝子を、CUP1(培地中の銅レベルによって誘導される;Koller et al.、Yeast 2000;16:651−656を参照のこと)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(例えば、Staib et al.,Antimicrobial Agents And Chemotherapy,Jan.2008,p.146−156を参照のこと)、チアミン誘導性プロモーター、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAP)、FLD1、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、およびPykプロモーター、それらに由来するキメラプロモーター、酵母プロモーター、哺乳類プロモーター、昆虫プロモーター、植物プロモーター、は虫類プロモーター、両生類プロモーター、ウイルスプロモーター、および鳥類プロモーターなどの誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターの制御下で発現させてもよい。
所望のマルチサブユニット複合体の前記サブユニット、例えば前記所望の抗体軽鎖および/または重鎖をコードしている少なくとも1つの遺伝子を、CUP1、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAP)、FLD1、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、およびPykプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター、チアミン誘導性プロモーター、それらに由来するキメラプロモーター、酵母プロモーター、哺乳類プロモーター、昆虫プロモーター、植物プロモーター、は虫類プロモーター、両生類プロモーター、ウイルスプロモーター、および鳥類プロモーターなどの誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターの制御下で発現させてもよい。
宿主細胞は前記所望のマルチサブユニット複合体を培地中に分泌してもよい。あるいはまたはそれに加えて、前記所望のマルチサブユニット複合体は前記宿主細胞中に保持されても、それらから単離されてもよい。
前記宿主細胞は、二倍体であっても、四倍体細胞であっても、または倍数体であってもよい。
方法は、前記マルチサブユニット複合体を前記宿主細胞または培地から精製する工程をさらに含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体を、前記宿主細胞の細胞内成分、細胞質、核質、または膜から精製してもよい。
所望のマルチサブユニット複合体は抗体を、例えば単一特異性抗体または二重特異性抗体を含んでいてもよい。抗体は具体的には、いかなる抗原に結合する抗体であってもよい。
前記マルチサブユニット複合体はヒト抗体もしくはヒト化抗体またはその断片を含んでいてもよい。
前記ヒト化抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウシに由来するものであってよい。
前記ヒト化抗体はウサギに由来するものであってよい。
前記マルチサブユニット複合体は、一価抗体、二価抗体または多価抗体を含んでいてもよい。
前記抗体を、プロテインAおよび/またはプロテインGアフィニティで前記培養から精製してもよい。
前記パネル中の少なくとも1つの前記真核細胞に含まれている前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを発現させる少なくとも1つの遺伝子を、前記真核細胞中で発現させるために最適化してもよい。
前記パネル中の少なくとも2種類の宿主細胞は、異なるコピー数の前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている遺伝子、例えば、異なるコピー数の所望の抗体重鎖および/または前記所望の抗体軽鎖をコードしている遺伝子を含んでいてもよい。
前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞は、少なくとも2コピーの前記マルチサブユニットのサブユニットをコードしている遺伝子、例えば、少なくとも2コピーの所望の抗体重鎖および/または前記所望の抗体軽鎖をコードしている遺伝子を含んでいてもよい。
前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞は、前記パネル中の別の宿主細胞に含まれる対応する遺伝子の発現を誘導するプロモーターとは別のプロモーターによって発現され得る前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている遺伝子(例えば所望の抗体重鎖または所望の抗体軽鎖)を含んでいてもよい。
前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞は、前記所望のマルチサブユニット複合体の1つ以上のサブユニットをコードしている2つ以上の配列を含むポリシストロン性の遺伝子を含んでいてもよい。
所望のマルチサブユニット複合体は所望の抗体を、具体的にはいかなる抗原に結合してもよい抗体を含んでいてもよい。非限定的な例としては、IL−6、TNF−α、CGRP、PCSK9、またはNGFが挙げられる。
所望のマルチサブユニット複合体は、いかなる型の抗体を含んでいてもよい。抗体の型の例としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシなどの、いかなる哺乳類の抗体をも含まれ得る。抗体は好ましくは、ウサギに由来してもよいヒト抗体またはヒト化抗体である。所望の抗体は一価抗体、二価抗体、または多価抗体であってもよい。
所望のマルチサブユニット複合体のサブユニット、例えば所望の抗体の軽鎖および/または重鎖を、前記パネル中の少なくとも1つの前記宿主細胞中で発現させる少なくとも1つの前記遺伝子を、前記宿主細胞で発現させるために最適化してもよい(例えば、好ましいコドンを選択することによっておよび/またはコドンを選択することでATのパーセンテージを変化させることによって)。
実施例で示すようにいくつかの実施形態では、抗体の収量および/または純度は、軽鎖よりも重鎖のコピー数が多い、重鎖よりも軽鎖のコピー数が多い、または軽鎖と重鎖のコピー数が同じ発現用宿主細胞を使用することでさらに最適化されている。
前記所望のマルチサブユニット複合体、例えば所望の抗体の純度は、前記宿主細胞によって生産され、グリコシル化されておらず、予想した見かけの流体力学半径および/または見かけの分子量をもち(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される)、予測した電気泳動での移動度を有する(例えば、ゲル電気泳動、例えばSDS−PAGE、および必要に応じてウェスタンブロットで検出される)複合体中に含まれる所望のマルチサブユニット複合体の画分を測定することで、および/またはマルチサブユニット複合体の特定の活性(例えば、所望の抗体の標的への特異的な結合)を測定することで評価してもよい。
所望のマルチサブユニット複合体は抗体であってよく、また、前記抗体の収量は、グリコシル化されており、予測した見かけの分子量または流体力学半径を有する複合体とは別の抗体複合体に含まれていて、および/または前記所望の抗体の標的と特異的に結合しない生産に伴う変異体を計算にいれずに、前記宿主細胞によって生産された所望の抗体の量を決定することで評価してもよい。
別の側面において本開示は、所望のマルチサブユニット複合体、例えば所望の抗体を組換えによって生産する方法を提供し、この方法は、(a)前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を含む宿主細胞を提供する工程、ここで前記宿主細胞は、本明細書に記載のいずれかの方法によって、より高い収量および/または重度で所望の抗体を生産する宿主細胞であると同定されている;ならびに(b)前記宿主細胞を前記軽鎖および重鎖遺伝子が発現できる条件で培養する工程、を含む。この方法は、前記所望の抗体を精製する工程をさらに含んでいてもよい。
別の側面において本開示は、所望のマルチサブユニット複合体、例えば所望の抗体を組換えによって生産する方法を提供し、この方法は、(a)前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を多コピー含み、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている前記遺伝子を1コピーしか含まない同質の宿主細胞よりも高い収量および/または純度で所望の抗体を生産する宿主細胞を提供する工程;および(b)前記宿主細胞を前記軽鎖および重鎖遺伝子が発現できる条件で培養する工程を含む。この方法は、前記所望の抗体を精製する工程をさらに含んでいてもよい。
前記方法は、2012年5月8日に出願した、「形質転換した微生物、例えばピキア・パストリス中におけるマルチサブユニットタンパク質の高純度生産(HIGH−PURITY PRODUCTION OF MULTI−SUBUNIT PROTEINS SUCH AS ANTIBODIES IN TRANSFORMED MICROBES SUCH AS PICHIA PASTORIS)」という名称の継続している米国特許出願一連番号第13/466,795号(代理人明細書番号75820.711001)に記載されている方法および/または条件を使用して培養する工程をさらに含んでいてもよい。米国特許出願一連番号第13/466,795号の全体は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、前記培養には、培養にエタノールボーラスを、例えば最終濃度が約1重量%になるように添加することが含まれ得る。
例えば、本開示のある側面では、マルチサブユニット複合体の生産方法を提供し、この方法は(a)前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを発現させる遺伝子を多コピー含む真核細胞を含む培養を提供する工程;(b)前記培養にエタノールのボーラスを添加する工程;および(c)前記培養を培養して前記マルチサブユニット複合体を生産する工程、を含む。
エタノールボーラスは、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、安定なジスルフィド結合の形成を向上させ得る。
前記マルチサブユニット複合体は、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む1つ以上のポリペプチドを含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体は抗体を含んでいてもよい。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、生産に伴う1つ以上の変異体の相対量を減らす場合がある。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、サイズ排除クロマトグラフィーまたはゲル電気泳動で検出される見かけの分子量が前記所望のマルチサブユニット複合体よりも大きいまたは小さい、生産に伴う変異体の量を減らす場合がある。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、化学量論が異常な複合体の相対量を減らす場合がある。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、異常なジスルフィド結合を有する複合体の相対量を減らす場合がある。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、還元されたシステインを含む複合体の相対量を減らす場合がある。
この方法は、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、グリコシル化が異常な複合体の相対量を減らす場合がある。
この方法は、重鎖間のジスルフィド結合の形成または安定性を調節し得る。
この方法は、軽鎖と重鎖の間のジスルフィド結合の形成または安定性を調節し得る。
この方法によって、エタノールのボーラスを加えないで行う同じ方法と比較して、1種類以上の生産に伴う変異体の相対量が低下し得る。
前記生産に伴う変異体には、H1L1、H2L1、およびH4L4生産関連変異体のうちの1種類以上が含まれ得る。
この方法では、前記エタノールのボーラスを加えないで行う前記方法と比較して、前記抗体の純度が高まる。
工程(b)は工程(c)の前に行ってもよい。
工程(b)は工程(c)の後に行ってもよい。
工程(b)は工程(c)と同時に行ってもよい。
工程(b)によって、前記培養中のエタノールの濃度は約0.01%〜約4%(w/v)となり得る。
工程(b)によって、前記培養中のエタノールの濃度は約0.01%〜約4%、約0.02%〜約3.75%、約0.04%〜約3.5%、約0.08%〜約3.25%、約0.1%〜約3%、約0.2%〜約2.75%、約0.3%〜約2.5%、約0.4%〜約2.25%、約0.5%〜約1.5%、約0.5%〜約2%、約0.6%〜約1.75%、約0.7%〜約1.5%、または約0.8%〜約1.25%となり得る。
工程(b)によって、前記培養中のエタノールの濃度は少なくとも約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%または0.9%(w/v)となり得る。
工程(b)によって、前記培養中のエタノールの濃度は最大約4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.8%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.35%、0.3%、0.25%、0.2%、または0.15%(w/v)となり得る。
工程(b)は、エタノールを前記培養に添加すること、エタノールを含む担体を前記培養に添加すること、前記細胞を培地もしくはエタノールを含む担体に添加すること、または培地の一部を置き換えること、を含んでいてもよい。
前記エタノールのボーラスを、1〜20分間かけて培地に添加してもよい。
工程(c)は酸素を前記細胞に供給することを含んでいてもよい。
前記酸素の供給は、前記培養を撹拌することを含んでいてもよい。
前記酸素の供給は、前記培養を酸素を含むガス混合物に接触させることを含んでいてもよい。
工程(c)は、炭素源を含む栄養素を前記培養に添加することを含んでいてもよい。
前記栄養素は、発酵可能な炭素源を少なくとも1つ含んでいてもよい。
前記栄養素は、グルコース、エタノール、クエン酸、ソルビトール、キシロース、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース、メリビオース、乳糖、麦芽糖、ラムノース、リボース、マンノース、マンニトール、およびラフィノースのうちの1種類以上を含んでいてもよい。
方法は、工程(c)を行っている間のエタノールの濃度を、より高い設定値とより低い設定値の間に維持することをさらに含んでいてもよい。
前記より低い設定値は、約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%または0.9%(w/v)であってよい。
前記より高い設定値は、約4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.8%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.35%、0.3%、0.25%、0.2%、または0.15%(w/v)であってよい。
前記より高い設定値は最大約1.5%、1.4%、1.3、1.2%、または1.1%(w/v)であってよい。
方法は、工程(c)を行っている間のエタノールの濃度を設定値に維持することをさらに含んでいてもよい。
前記設定値は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、または1.5%(w/v)であってよい。
工程(c)は、前記培養中のエタノールの濃度を約0.01%〜約4%、約0.02%〜約3.75%、約0.04%〜約3.5%、約0.08%〜約3.25%、約0.1%〜約3%、約0.2%〜約2.75%、約0.3%〜約2.5%、約0.4%〜約2.25%、約0.5%〜約2%、約0.6%〜約1.75%、約0.7%〜約1.5%、または約0.8%〜約1.25%に維持することを含んでいてもよい。
前記培養中のエタノールの濃度は、前記細胞によるエタノールの生産を制御することまたはエタノールを前記培養に添加することによって、維持することができる。
エタノールの生産を制御する工程は、グルコースの濃度、酸素の利用率、撹拌の強度、ガス圧、供給される大気または他のガス混合物の流速、培養の粘度、培養密度、供給される大気または他のガス混合物中の酸素の濃度、および温度のうちの1つ以上を制御することを含んでいてもよい。
工程(a)と工程(b)の時間間隔は、約72時間未満、約48時間未満、約24時間未満、約12時間未満、約9時間未満、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、約3時間未満、約90分未満、約30分未満、約5分未満、または約1分未満であってよい。
工程(b)と工程(c)の時間間隔は、約10時間未満、約9時間未満、約8時間未満、約7時間未満、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、約3時間未満、約2時間未満、約90分未満、約80分未満、約70分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分未満、約20分未満、約10分未満、約5分未満、または約1分未満であってよい。
工程(a)の培養は、前記培養に炭素源を添加すること、および前記培養を炭素源が枯渇し得るまで培養することによって製造することができる。
前記炭素源は、グリセロール、グルコース、エタノール、クエン酸、ソルビトール、キシロース、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース、メリビオース、乳糖、麦芽糖、ラムノース、リボース、マンノース、マンニトール、およびラフィノースのうちの1種類以上を含み得る。
炭素源の枯渇は、前記真核細胞の代謝活性の低下を検出することで決定することができる。
前記真核細胞の代謝活性の前記低下は、前記真核細胞による酸素の消費量の低下を検出すること、培養中のpHの上昇を検出すること、湿潤細胞質量の安定化を検出すること、または培養中のアンモニアの濃度の上昇を検出することで同定することができる。
前記真核細胞による酸素消費量の前記低下は、前記培養中に溶解している酸素濃度の上昇を検出することで同定することができる。
前記真核細胞は酵母細胞を含んでいてもよい。
前記酵母細胞はメチロトローフ酵母を含んでいてもよい。
前記メチロトローフ酵母はピキア属の酵母であってもよい。
前記ピキア属のメチロトローフ酵母はピキア・パストリス(Pichia pastoris)であってよい。
前記ピキア属のメチロトローフ酵母は、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・グイレルモルジィ(Pichia guillermordii)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、およびピキア・イノシトベラ(Pichia inositovera)からなる群より選択してもよい。
前記マルチサブユニット複合体を発現させる遺伝子は、1箇所以上のゲノムの遺伝子座に組み込まれていてもよい。
少なくとも1箇所の前記ゲノムの遺伝子座は、pGAP遺伝子座、3’AOX TT遺伝子座;PpURA5;OCH1;AOX1;HIS4;GAP;pGAP;3’AOX TT;ARG;およびHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択してもよい。
マルチサブユニット複合体の前記サブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子は、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターの制御下で発現させてもよい。
前記誘導性プロモーターは、AOX1、CUP1、テトラサイクリン誘導性、チアミン誘導性、およびFLD1プロモーターからなる群より選択してもよい。
マルチサブユニット複合体の前記サブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子を、CUP1、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAP)、FLD1、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、およびPykプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター、チアミン誘導性プロモーター、それらに由来するキメラプロモーター、酵母プロモーター、哺乳類のプロモーター、昆虫プロモーター、植物プロモーター、は虫類プロモーター、両生類プロモーター、ウイルスプロモーター、および鳥類プロモーターからなる群より選択されるプロモーターの制御下で発現させてもよい。
前記真核細胞は二倍体、四倍体細胞または倍数体であってよい。
方法は、前記マルチサブユニット複合体を前記真核細胞または培地から精製する工程をさらに含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体を、前記真核細胞の細胞内成分、細胞質、核質、または膜から精製してもよい。
前記真核細胞は、前記マルチサブユニット複合体を培地中に分泌する。
前記マルチサブユニット複合体は、前記培地から精製してもよい。
前記マルチサブユニット複合体は単一特異性または二重特異性抗体を含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体はヒト抗体もしくはヒト化抗体またはその断片を含んでいてもよい。
前記ヒト化抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウシに由来する抗体であってよい。
前記ヒト化抗体はウサギに由来する抗体であってよい。
前記マルチサブユニット複合体は一価抗体、二価抗体、または多価抗体を含み得る。
前記抗体は、プロテインAおよび/またはプロテインGアフィニティで前記培養から精製することができる。
前記パネル中の少なくとも1つの前記真核細胞に含まれている前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを発現させる少なくとも1つの遺伝子を前記真核細胞で発現させるために最適化してもよい。
前記マルチサブユニット複合体は抗体を含んでいてもよく、また、前記抗体の純度は、予測した見かけの流体力学半径を有する抗体複合体に含まれ得、予測した分子量を有する抗体複合体に含まれ得、および/または前記抗体の標的に特異的に結合する、前記真核細胞によって生産された抗体画分を測定することによって評価してもよい。
前記マルチサブユニット複合体は抗体を含んでいてもよく、また、前記抗体の収量は、グリコシル化が異常になっていて、予測した見かけの流体力学半径を有する複合体とは別の抗体複合体に含まれていて、予測した分子量を有する抗体複合体に含まれ、前記抗体の標的と特異的に結合しない可能性のある生産に伴ういかなる変異体も計算に入れずに、前記真核細胞によって生産された抗体の量を決定することによって評価してもよい。
前記抗体複合体の分子量は、非還元SDS−PAGEによって決定することができる。
前記マルチサブユニット複合体は抗体を含んでいてもよく、前記方法は、前記抗体を精製することをさらに含んでいてもよい。
前記培養細胞は、力価が少なくとも100mg/L、少なくとも150mg/L、少なくとも200mg/L、少なくとも250mg/L、少なくとも300mg/L、100〜300mg/L、100〜500mg/L、100〜1000mg/L、少なくとも1000mg/L、少なくとも1250mg/リットル、少なくとも1500mg/リットル、少なくとも約1750mg/リットル、少なくとも約2000mg/リットル、少なくとも約10000mg/リットル、またはそれ以上の上清抗体を生産し得る。
前記マルチサブユニット複合体の1つ以上サブユニットは、2つ以上の遺伝子コピーから発現する場合もある。
前記マルチサブユニット複合体は、前記抗体の軽鎖をコードしている1〜10コピーの遺伝子と前記抗体の重鎖をコードしている1〜10コピーの遺伝子から発現し得る抗体を含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体を発現させる遺伝子を、前記細胞のゲノムに組み込んでもよい。
前記マルチサブユニット複合体を発現させる遺伝子を、染色体外成分、プラスミド、または人工染色体中に含めてもよい。
前記細胞は、前記抗体の重鎖を発現させる遺伝子のコピー数よりも多いコピー数の前記抗体の軽鎖を発現させる遺伝子を含んでいてもよい。
前記細胞中に含まれる、前記抗体の重鎖をコードしている遺伝子のコピー数と前記抗体の軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数はそれぞれ、2および2、2および3、3および3、3および4、3および5、4および3、4および4、4および5、4および6、5および4、5および5、5および6、または5および7であってよい。
前記細胞中に含まれる、前記抗体の重鎖をコードしている遺伝子のコピー数と前記抗体の軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数はそれぞれ、2および1、3および1、4および1、5および1、6および1、7および1、8および1、9および1、10および1、1および2、2および2、3および2、4および2、5および2、6および2、7および2、8および2、9および2、10および2、1および3、2および3、3および3、4および3、5および3、6および3、7および3、8および3、9および3、10および3、1および4、2および4、3および4、4および4、5および4、6および4、7および4、8および4、9および4、10および4、1および5、2および5、3および5、4および5、5および5、6および5、7および5、8および5、9および5、10および5、1および6、2および6、3および6、4および6、5および6、6および6、7および6、8および6、9および6、10および6、1および7、2および7、3および7、4および7、5および7、6および7、7および7、8および7、9および7、10および7、1および8、2および8、3および8、4および8、5および8、6および8、7および8、8および8、9および8、10および8、1および9、2および9、3および9、4および9、5および9、6および9、7および9、8および9、9および9、10および9、1および10、2および10、3および10、4および10、5および10、6および10、7および10、8および10、9および10、10および10であってよい。
工程(c)の培養は、生産培地中で生育させることができる。
前記生産培地は最少培地であってもよい。
前記最少培地は選択剤を含まない。
前記最少培地は、予め形成されているアミノ酸または他の複雑な生体分子を含まない。
生産培地は複合培地であってもよい。
複合培地は、酵母抽出物、ダイズペプトン、および他の植物のペプトンのうちの1種類以上を含み得る。
工程(c)の培養は、高細胞密度まで生育させることができる。
前記高細胞密度は、少なくとも50g/Lであってよい。
前記高細胞密度は、少なくとも100g/Lであってよい。
前記高細胞密度は、少なくとも300g/Lであってよい。
前記高細胞密度は、少なくとも400g/Lであってよい。
前記高細胞密度は、少なくとも500g/Lであってよい。
前記高細胞密度は、少なくとも750g/Lであってよい。
酵母細胞は少なくとも20回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも20回の分裂後も前記マルチサブユニット複合体の発現を高いレベルに維持し得る。
工程(c)の細胞は、少なくとも50回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも50回の分裂後も前記マルチサブユニット複合体の発現を高いレベルに維持し得る。
工程(c)の細胞は、少なくとも100回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも100回の分裂後も前記マルチサブユニット複合体の発現を高いレベルに維持し得る。
前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットは分泌シグナルを含んでいてもよい。
前記マルチサブユニット複合体は抗体を含んでいてもよい。
対象方法は、力価が少なくとも100mg/L、少なくとも150mg/L、少なくとも200mg/L、少なくとも250mg/L、少なくとも300mg/L、100〜300mg/L、100〜500mg/L、100〜1000mg/Lまたは1000mg/Lを上回る、例えば、1200mg/Lにもなる、10,000mg/Lにもなる、またはそれ以上になる上清抗体を生産し得る。
別の側面において本開示は、前述したいずれかの方法によって、所望のマルチサブユニット複合体(例えば所望の抗体)をより高い収量および/または純度で生産する宿主細胞であると同定された、宿主細胞を提供する。この宿主細胞は、ピキア属、例えばピキア・パストリスの二倍体細胞または四倍体細胞であってよい。別の側面において本開示は、前述の宿主細胞に由来する、二倍体または四倍体の酵母培養を提供する。前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニット(例えば所望の抗体の軽鎖および重鎖)を発現させる遺伝子を、前記宿主細胞のゲノムに組み込んでもよい。前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニット(例えば所望の抗体の軽鎖および重鎖)を発現させる遺伝子を染色体外成分、プラスミド、または人工染色体に含めてもよい。所望のマルチサブユニット複合体が抗体の場合、宿主細胞は、重鎖を発現させる遺伝子のコピー数よりも多くのコピー数の軽鎖を発現させる遺伝子を含んでいてもよい。例示的な実施形態では、宿主細胞は、軽鎖をコードしている1〜10コピーの遺伝子と、重鎖をコードしている1〜10コピーの遺伝子を含んでいてもよい。前記宿主細胞中に含まれる重鎖をコードしている遺伝子のコピー数と軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数はそれぞれ、2および2、2および3、3および3、3および4、3および5、4および3、4および4、4および5、4および6、5および4、5および5、5および6、または5および7、であってよい。重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数の組み合わせについてのその他の例を図37に挙げる。この図では、重鎖遺伝子および/または軽鎖遺伝子が10コピーまでの組み合わせを挙げており、それぞれの系統には以下の様な識別番号をつけた:H2×L1、H3×L1、H4×L1、H5×L1、H6×L1、H7×L1、H8×L1、H9×L1、H10×L1、H1×L2、H2×L2、H3×L2、H4×L2、H5×L2、H6×L2、H7×L2、H8×L2、H9×L2、H10×L2、H1×L3、H2×L3、H3×L3、H4×L3、H5×L3、H6×L3、H7×L3、H8×L3、H9×L3、H10×L3、H1×L4、H2×L4、H3×L4、H4×L4、H5×L4、H6×L4、H7×L4、H8×L4、H9×L4、H10×L4、H1×L5、H2×L5、H3×L5、H4×L5、H5×L5、H6×L5、H7×L5、H8×L5、H9×L5、H10×L5、H1×L6、H2×L6、H3×L6、H4×L6、H5×L6、H6×L6、H7×L6、H8×L6、H9×L6、H10×L6、H1×L7、H2×L7、H3×L7、H4×L7、H5×L7、H6×L7、H7×L7、H8×L7、H9×L7、H10×L7、H1×L8、H2×L8、H3×L8、H4×L8、H5×L8、H6×L8、H7×L8、H8×L8、H9×L8、H10×L8、H1×L9、H2×L9、H3×L9、H4×L9、H5×L9、H6×L9、H7×L9、H8×L9、H9×L9、H10×L9、H1×L10、H2×L10、H3×L10、H4×L10、H5×L10、H6×L10、H7×L10、H8×L10、H9×L10、H10×L10。例えば、規定されたコピー数の重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を、単一の遺伝子座に直列にして組み込んでもよく、または複数の遺伝子座に組み込んでもよい(そのいずれかまたは全てが2コピー以上の遺伝子を含み得る)。場合により、ゲノムの遺伝子座はそれぞれ、3または4コピー以下の直列に組み込まれた遺伝子を含んでいてもよく、それによって、増殖および/または抗体生産中のコピー数の安定性が促される。
培養する工程はたいていの場合、細胞をエネルギー源酸素、および栄養素と共に試験することを含む。方法は、組換えタンパク質を発現させるためのP.pastorisの発酵の設計および最適化、例えば細胞密度、ブロス容量、基質供給量および反応の各段階の長さの最適化に関する文献中でも実証されている。Cregg,J.M.編,2007,Pichia Protocols(第二版),Methods in Molecular Biology,vol.389,Humana Press,Totowa,N.J.,43〜63頁のZhang et al.,「Rational Design and Optimization of Fed−Batch and Continuous Fermentations」を参照のことを参照のこと。培養を、酸素を含有するガス混合物、例えば酸素を補充したまたは補充していない大気と共に試験してもよい。酵母培養を培地中で培養してもよく、培地は、最少培地であっても、選択剤を含まないものであっても、および/または予め形成されたアミノ酸もしくは他の複雑な生体分子を含まないものであってもよい。培地は複合培地(例えば、酵母抽出物および/または植物ペプトンを含むもの)であってもよい。培地は窒素源(例えば、メチルアミン塩化物、NH4SO4、酵母抽出物、ダイズペプトン、他の植物ペプトンなど)を含んでいてもよい。最少培地の例としては、最少デキストロース培地(MD)(1.34%酵母用窒素源含有基本培地(YNB、アミノ酸を含まない)、4×10-5%ビオチン、および2%グルコース)、緩衝最少グリセロール複合培地(BMGY)(1%酵母抽出物、2%ペプトン、1%グリセロール、1.34%YNB(アミノ酸を含まない)、4×10-5%ビオチンおよび100mMリン酸カリウム(pH6.0))が挙げられる。培地は1種類以上の塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝剤(例えばリン酸カリウム、Tris、またはHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、汚染物質の成長を阻害するためおよび/または選択マーカーを維持するために加えられる)、微量元素、ならびにグルコースまたは別のエネルギー源を含んでいてもよい。当業者には知られている、適切な濃度での任意の捕捉および置換も包含される。
この培養を高細胞密度、例えば、少なくとも50g/L、少なくとも100g/L、少なくとも300g/L、少なくとも400g/L、少なくとも500g/L、または少なくとも700g/Lまで生育させてもよい。これらの培養密度は限界というよりも説明のためのもので、当業者であれば、好適な培養密度を容易に判断することができる。
酵母細胞は少なくとも20回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも20回の分裂後も前記抗体の発現を高いレベルに維持できる。
酵母細胞は少なくとも50回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも50回の分裂後も前記抗体の発現を高いレベルに維持できる。
酵母細胞は少なくとも100回分裂するまで培養することができ、前記少なくとも100回の分裂後も前記抗体の発現を高いレベルに維持できる。
別の側面において本開示は、前述した方法のいずれかに従って生産した、安定な二倍体ピキア酵母を含有する培地を提供し、この培地は、少なくとも約50mg/リットル、100mg/リットル、500mg/リットル、750mg/リットル、1000mg/リットル、1250mg/リットル、1500mg/リットル、1750mg/リットル、2000mg/リットル、またはmoreの発現レベルの前記所望の抗体を含み得る。これらの収量の値は、限界というよりも説明的なものである。場合により、例えばZhangら(2007)上記に記載されている方法および一般的な方法を使用して、収量を最適化してもよい。例えば、温度、pH、培地組成(例えば、炭素源、炭素源濃度、2種類以上の炭素源の混合物、窒素源および濃度、塩や他の栄養素(KH2PO4;K2HPO4;MgSO4;硫酸カリウム;クエン酸ナトリウム;微量金属、例えば塩化コバルト、硫酸第二銅、ヨウ化ナトリウム、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸、塩化亜鉛、硫酸第一鉄;ビタミン類、例えばビオチン;イノシトール、チアミン、ペプトン、酵母抽出物、カザアミノ酸、尿素、リン酸アンモニウムまたは他のアンモニウムイオン、L−アルギニン−塩酸塩を含む)の濃度)、時間、培養密度、酸素添加、および収量に影響を及ぼす他の要因を変化させることで、収量を最適化することができる。例えば、所望のマルチサブユニット複合体の収量、発現、および/または純度はいくつかの例では、温度を所望の設定値に、例えば、約15℃〜約30℃、例えば約17℃〜約25℃の設定値に維持することで改善することができる。理論によって制限されることを意図しないが、温度を制御することは、折り畳みや翻訳後プロセシング経路を介した細胞間輸送を補助し、および/または細胞内プロテアーゼの活性を低下させる可能性がある。同様に、所望のマルチサブユニット複合体の収量、発現、および/または純度は、いくつかの例においては、培地のpHを所望の設定値、例えば、pH3〜pH8の設定値、例えばpH4〜pH7に維持することで改善することができる。
別の側面において本開示は、前記所望の抗体を培地中に発現する、前述の方法のいずれかに従って精算した細胞由来の、安定な二倍体ピキア・パストリス酵母培養を含有する培地を提供し、ここで前記培養中の前記二倍体細胞の細胞密度は、少なくとも約50g/L、100g/L、300g/L、400g/L、500g/L、700g/Lまたはそれ以上でありうる。これらの培養密度は、制限というよりも説明的なものであって、当業者であれば、好適な培養密度を容易に決定することができる。
前記抗体または他のマルチサブユニットタンパク質の少なくとも1つのサブユニットは、分泌シグナル、例えば、トリリゾチーム(CLY)シグナルペプチド;CLY−L8;出芽酵母(S.cerevisiae)インベルターゼ(SUC2)シグナルペプチド;MF−α(プレプロ);MF−α(プレ)−apv;MF−α(プレ)−apv−SLEKR;MF−α(プレプロ)−(EA)3;αFシグナルペプチド;KILM1シグナルペプチド;抑制性酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルペプチド;黒色コウジ菌(A.niger)GOXシグナルペプチド;シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)グルコアミラーゼ遺伝子(GAM1)シグナルペプチド;プロ配列を含まないヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;プロ配列を含むヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;ISNシグナルペプチド;IFNシグナルペプチド;HGHシグナルペプチド;フィトヘマグルチニン(PHA);カイコリゾチーム;ヒトリゾチーム(LYZ1);アクチビンI型受容体;アクチビンII型受容体;ピキア・パストリス免疫グロブリン結合タンパク質(PpBiP);ヒト抗体3D6軽鎖リーダー配列;およびそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
宿主細胞は、それぞれが、前記抗体または他のマルチサブユニットタンパク質の1つ以上サブユニットをコードしている遺伝子を1コピー以上含んでいる、2つの半数体酵母細胞を交配することで生成することができる。
図1では、具体的に目標としたコピー数の所望の抗体軽鎖および/または重鎖をコードしている遺伝子を含有する半数体の株を得る方法、および半数体の株を交配して、具体的に目標としたコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子から所望の抗体を発現させる、二倍体の株のパネルを得る方法の例示的な方法の概要を提供する。
図2では、Ab−Aの軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を多コピー含む二倍体の株から選択した抗体の相対的な総収量をH3×L3株と比較した図を示す。H3×L3の収量を100%とした。培養液全体の抗体の相対的な力価は基本的に、コピー数の合計が増えるに連れて上昇し、H3×L4からH3×L3、H4×L4、H4×L6、H5×L4、H5×L5、H5×L7の順となった。
図3は、Ab−Bの軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を多コピー含む株から選択した培養液全体の抗体の相対的な収量を、H3×L3株と比較した図を示す。H3×L3の抗体の収量を100%とした。培養液全体の抗体の相対的な力価は基本的に、抗体のコピー数が増えるに連れて上昇し、H3×L3からH3×L4、H4×L3、H4×L5、H4×L6の順となった。
図4は、Ab−Cの軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を多コピー含む株から選択した培養液全体の抗体の相対的な収量を、H3×L3株と比較した図を示す。H3×L3の抗体の収量を100%とした。培養液全体の抗体の相対的な力価は基本的に、抗体のコピー数が増えるに連れて上昇し、Ab−C−H3×L4からAb−C−H4×L3、Ab−C−H4×L4、Ab−C−H4×L5、Ab−C−H5×L5、Ab−C−H5×L4、Ab−C−H5×L6、Ab−C−H6×L5の順となった。
図5は、プロテイン−Aによって捕捉され、HPLCで決定した、H4×L4株とH4×L6株が生産したAb−Aの溶出液の純度を示している。15.5分に現れる生産に伴う変異体のレベル(総面積のパーセンテージとして測定した)は、1/5未満に減少した(H4×L4では8.81だったのがH4×L6では1.58%に低下した)。
同上。
同上。
図6は、プロテイン−Aによって捕捉され、HPLCで決定した、H4×L3株とH4×L5株が生産したAb−Bの溶出液の純度を示している。15.5分に現れる生産に伴う変異体のレベル(総面積のパーセンテージとして測定した)は、約59%減少した(H4×L3では6.26%だったのがH4×L5では2.54%に低下した)。
同上。
同上。
図7は、プロテイン−Aによって捕捉され、HPLCで決定した、HexL3株とH5×L5株が生産したAb−Cの溶出液の純度を示している。15.2〜16.1分に現れる生産に伴う変異体のレベル(総面積のパーセンテージとして測定した)は、約39%減少した(H3×L3で6.55%だったのがH5×L5では4.00%に低下した)。
同上。
同上。
図8は、H4×L4株とH4×L6株によって生産されたAb−Aの、染色したSDS−PAGEゲルを示している。軽鎖のコピー数がより多い株に由来する調製物では、「移動度の小さい生産に伴う変異体」(矢印)の量が少ないことが分かった。
図9は、H4×L5株とH4×L6株によって生産され、プロテイン−Aで精製したAb−Bの、染色したSDS−PAGEゲルを示している。Ab−Aに関しては、「移動度の小さい生産に伴う変異体」(矢印)の量が、軽鎖のコピー数がより多い株に由来する調製物で少ないことが分かった。
図10は、H3×L3株とH5×L5株によって生産され、プロテイン−Aで精製したAb−Cの、染色したSDS−PAGEゲルを示している。Ab−AおよびAb−Bに関しては、「移動度の小さい生産に伴う変異体」(矢印)が抗体鎖のコピー数がより多い株に由来する調製物で少ないことが分かった。
図11は、移動度の小さい生産に伴う変異体が、ヒトFcに関連し、グリコシル化されたタンパク質であることの同定を示している(レクチンカラムによる選択的な濃縮と抗Fc抗体による特異的な認識によって示した)。抗体調製物(「ロード」)はレクチン樹脂に結合し、溶出した(「レクチン溶出液」)。SDS−PAGE(図11A)は、レクチンカラムによる移動度の小さい生産に伴う変異体の選択的な濃縮を示している。抗HuFc抗体を用いたウェスタンブロットによって移動度の小さい生産に伴う変異体が検出され(図11A)、このことは、この変異体が少なくとも部分的にヒトFc配列を含むことを示している。本明細書では、この生産に伴う変異体を「グリコ−高分子変異体」と呼ぶ。加えて、この生産に伴う変異体の量は、H4×L3株に由来する調製物よりもH4×L5株のもので目に見えて少なかった。
図12では、HPLCで観察された生産に伴う変異体(保持時間はおよそ15.5分)がレクチンカラムの溶出液中に選択的に濃縮されたことを示している。これは、グリコ−高分子変異体がこの生産に伴う変異体の構成成分であることを意味している。抗体Ab−Bは、H4×L3株とH4×L5株から調製した。
同上。
図13では、HPLCで観察された生産に伴う変異体(保持時間はおよそ15.5分)がレクチンカラムの溶出液中に選択的に濃縮されたことを示している。これは、グリコ−高分子変異体がこの生産に伴う変異体の構成成分であることを意味している。抗体Ab−Bは、H4×L3株とH4×L5株から調製した。
同上。
図14は、Ab−AまたはAb−Bの抗体重鎖配列を、pGAP遺伝子座(遺伝子座#1)を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図15は、Ab−AまたはAb−Bの抗体軽鎖配列を、pGAP遺伝子座(遺伝子座#1))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図16は、Ab−AまたはAb−Bの抗体重鎖配列を、HIS4 TT遺伝子座(遺伝子座#2))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図17は、Ab−AまたはAb−Bの抗体軽鎖配列を、HIS4 TT遺伝子座(遺伝子座#2))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図18は、Ab−Cの抗体重鎖配列を、AOX1 TT遺伝子座(遺伝子座#1))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図19は、Ab−Cの抗体軽鎖配列を、AOX1 TT遺伝子座(遺伝子座#1))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図20は、Ab−Cの抗体重鎖配列を、HIS4 TT遺伝子座(遺伝子座#2))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図21は、Ab−Cの抗体軽鎖配列を、HIS4 TT遺伝子座(遺伝子座#2))を標的として組み込むのに使用した構築物のマップを示している。
図22は、単一の遺伝子座に組み込んだ抗体のコピー数と、サザンブロットで検出した予測される断片のサイズとの相関を示している。
図23は、Ab−Aの鎖をコードしている遺伝子で形質転換した複数の単離体における、抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子それぞれのコピー数の検出するために使用したサザンブロットを示している。
図24は、Ab−Aの鎖をコードしている遺伝子で形質転換した複数の単離体における、抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子それぞれのコピー数の検出するために使用したサザンブロットを示している。
図25は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、pGAP遺伝子座に存在する、Ab−Aの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図26は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、pGAP遺伝子座遺伝子座に存在する、Ab−Aの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図27は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、HIS4 TT遺伝子座に存在する、Ab−Aの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図28A−Bは、Ab−Bの鎖をコードしている遺伝子で形質転換した複数の単離体における、抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子それぞれのコピー数の検出するために使用したサザンブロットを示している。
図29は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、pGAP遺伝子座に存在する、Ab−Bの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図30は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、pGAP遺伝子座に存在する、Ab−Bの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図31は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、HIS4 TT遺伝子座に存在する、Ab−Bの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図32は、Ab−Cの鎖をコードしている遺伝子で形質転換した複数の単離体における、抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子それぞれのコピー数の検出するために使用したサザンブロットを示している。
図33は、Ab−Cの鎖をコードしている遺伝子で形質転換した複数の単離体における、抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子それぞれのコピー数の検出するために使用したサザンブロットを示している。
図34は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、3’AOX TT遺伝子座に存在する、Ab−Cの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図35は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、3’AOX TT遺伝子座に存在する、Ab−Cの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図36は、形質転換した半数体株同士を交配することによって生成した、二倍体の株のパネル中で、HIS4 TT遺伝子座に存在する、Ab−Cの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数を確認するのに使用したサザンブロットを示している。
図37は、本開示の実施形態に従って用いることができる、軽鎖および重鎖遺伝子のコピー数の、例示的かつ非限定的な組み合わせを示してる。
図38は、Ab−Aの軽鎖および重鎖をコードしているポリヌクレオチドの配列およびそれらがコードしているポリペプチド、ならびにそこに含まれるCDR配列を示している。
同上。
同上。
図39は、Ab−Bの軽鎖および重鎖をコードしているポリヌクレオチドの配列およびそれらがコードしているポリペプチド、ならびにそこに含まれるCDR配列を示している。
同上。
同上。
図40は、Ab−Cの軽鎖および重鎖をコードしているポリヌクレオチドの配列およびそれらがコードしているポリペプチドを示している。
同上。
本発明を実施するための形態
本開示は、高収量の所望の異種マルチサブユニット複合体を生産するおよび/または高純度の所望の異種マルチサブユニット複合体を生産することのできる宿主細胞を生成および同定する方法を提供する。好ましい実施形態では、この異種マルチサブユニット複合体は、2つの重鎖サブユニットと2つの軽鎖サブユニットから構成される抗体または抗体断片、例えばヒト化抗体である。好ましい宿主細胞には酵母が含まれ、特に好ましい酵母としてはメチロトローフ酵母株、例えば、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Pichia angusta)、ピキア・グイレルモルジィ、ピキア・メタノリカ、ピキア・イノシトベラなどが挙げられる(例えば、米国特許第4,812,405号、同第4,818,700号、同第4,929,555号、同第5,736,383号、同第5,955,349号、同第5,888,768号、および同第6,258,559号を参照のこと。その全体はそれぞれ、参照により組み込まれる)。宿主細胞を当該分野で知られている方法によって生成してもよい。例えば、遺伝子のコピー数の組み合わせが異なる二倍体または四倍体酵母細胞のパネルは、個々のサブユニット遺伝子のコピー数がそれぞれ異なる(このコピー数は交配前に分かっていることが好ましい)細胞を交配することによって生成することができる。
出願人らは予想外にも、培養が、所望のマルチサブユニット複合体をコードしている遺伝子のコピー数を、高く安定に維持できることを発見した。実施例では、6または7コピーまでの抗体重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子を維持している細胞を示している。これらの細胞は、長期間培養しても、所望の抗体を安定に発現することができる。加えて、この細胞は長期間培養しても、所望のマルチサブユニット複合体の高い収量と発現を維持することができる。
好ましい実施形態では、宿主細胞は、異種タンパク質サブユニットをコードしている1つ以上の遺伝子を、2コピー以上含み得る。例えば、複数のコピーのサブユニット遺伝子を、1箇所以上の染色体の遺伝子座に、直列に組み込むことができる。マルチサブユニット複合体を生産するために培養している間、直列状に組み込んだ遺伝子のコピーは、一定のコピー数で好ましく保持される。例えば以下に記載する実施例では、3〜4コピーの軽鎖および重鎖抗体遺伝子を組み込んだP.pastoris株では、遺伝子のコピー数は基本的に安定していた。
異種タンパク質サブユニットをコードしている1つ以上の遺伝子は、宿主細胞の1箇所以上の染色体の遺伝子座に組み込まれることが好ましい。組み込みには、任意の好適な染色体上の遺伝子座、例えば遺伝子間配列、プロモーター配列、コード配列、終止配列、制御配列などを使用することができる。P.pastoris中の使用可能な染色体上の遺伝子座の例としては、PpURA5;OCH1;AOX1;HIS4;およびGAPが挙げられる。コードしている遺伝子を、標的とした遺伝子座とは別の、1つ以上の無作為な染色体上の遺伝子座に組み込んでもよい。好ましい実施形態では、染色体上の遺伝子座は、pGAP遺伝子座、3’AOX TT遺伝子座およびHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択される。その他の例示的な実施形態では、異種タンパク質サブユニットをコードしている遺伝子を、1つ以上の染色体外成分、例えば1つ以上のプラスミドまたは人工染色体に含めてもよい。
例示的な実施形態では、マルチサブユニットタンパク質は、2、3、4、5、6、またはそれ以上の数の同一ではないサブユニットを含んでいてもよい。加えて、各サブユニットが各マルチサブユニットタンパク質中に1つ以上存在してもよい。例えば、マルチサブユニットタンパク質は、2つの同一ではない軽鎖と2つの同一ではない重鎖から構成される二重特異的抗体のような多重特異的抗体であってもよい。遺伝子のコピー数の組み合わせが異なる二倍体または四倍体酵母細胞のパネルは、個々のサブユニット遺伝子のコピー数がそれぞれ異なる細胞同士を交配することで、迅速に生成することができる。その後、パネル中の各株による抗体生産を評価し、所望のマルチサブユニットタンパク質の収量または望ましくない副産物に対する所望のマルチサブユニットタンパク質の純度などの特徴に基づいて、その後使用するための株を同定することができる。
サブユニットは、モノシストロン性の遺伝子、ポリシストロン性の遺伝子、またはその任意の組み合わせから発現させることができる。ポリシストロン性の遺伝子はそれぞれ、複数のコピーの同じサブユニットを含んでいてもよく、あるいはそれぞれ異なるサブユニットを1コピー以上含んでいてもよい。
ピキア・パストリスの操作(培養、形質転換および交配の方法など)に使用することができる方法の例は、米国特許出願第20080003643号、同第20070298500号、および同第20060270045号などの公開出願、ならびにHiggins,D.R.およびCregg,J.M.編,1998,Pichia Protocols,Methods in Molecular Biology,Humana Press,Totowa,N.J.、およびCregg,J.M.編,2007,Pichia Protocols(第二版),Methods in Molecular Biology,Humana Press,Totowa,N.J.に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により組み込まれる。
使用することができる発現カセットの例には、グリセルアルデヒド脱水素酵素遺伝子(GAP遺伝子)プロモーター、それに融合させた分泌シグナルのコード配列、その下流に発現される遺伝子の配列、さらにその下流にP.pastorisアルコール酸化酵素I遺伝子(AOX1)由来のP.pastoris転写終結シグナルのコード配列、を含むものがある。ゼオシン耐性マーカー遺伝子は、より高いレベルのゼオシンに耐性をもつ形質転換体を選抜することで、多コピーの発現ベクターが組み込まれた株を濃縮するための手段となり得る。同様に、G418またはカナマイシン耐性マーカー遺伝子の使用も、より高いレベルのジェネティシンまたはカナマイシンに耐性をもつ形質転換体を選抜することで、多コピーの発現ベクターが組み込まれた株を濃縮するための手段となり得る。
使用することができる宿主の株としては、栄養要求性のP.pastorisまたは他のピキア株、例えば、met1、lys3、ura3およびade1または他の栄養要求性関連遺伝子に突然変異を有する株が挙げられる。好ましい突然変異とは、認識できる任意の頻度で復帰突然変異を生じることのできない変異、および好ましくは部分的欠損変異、より好ましくは完全欠損変異である。補完し合う栄養要求性株を交配することで、独立栄養性の二倍体または四倍体の株を生成することが好ましい。
半数体P.pastoris株の形質転換およびP.pastoris性周期の遺伝的操作は、Pichia Protocols(1998、2007)上記に記載されているように実施することができる。
形質転換の前に、宿主細胞内の標的遺伝子座にベクターの組み込むために、それぞれの発現ベクターを、標的とするゲノム遺伝子座と相同の領域内で(例えば、GAPプロモーター配列)、制限酵素を用いた切断によって直線化してもよい。次いで、各ベクターの試料をそれぞれ個別に、エレクトロポレーション法または他の方法によって、所望の株の培養中に形質転換してもよく、その後、形質転換が成功した株を選択マーカー、例えば、抗生物質耐性または栄養要求性の相補性によって選抜することができる。単離体を拾い、選択条件で画線培養して単一のコロニーを単離し、その後、各株からゲノムDNAを抽出してサザンブロットまたはPCRアッセイで、マルチサブユニット複合体(例えば、望の抗体)のサブユニットをコードしている遺伝子のコピー数を確認することができる。必要に応じて、予測されるサブユニット遺伝子産物の発現を、例えばFACS、ウェスタンブロット、コロニーリフトと免疫ブロット、および当該分野で知られている他の手段によって確認してもよい。場合により、異種遺伝子をさらに導入するために、例えば、別の遺伝子座に組み込まれた同じサブユニットのコピー、および/または別のサブユニットのコピーを導入するために、半数体の単離体をさらに何回か形質転換する。半数体の株をその後交配して、マルチタンパク質複合体を合成することができる二倍体の株(または多倍数性の株)を生成する。それぞれの予測されるサブユニット遺伝子の有無は、サザンブロット法、PCR、および当該分野で知られている他の検出方法によって確認することができる。所望のマルチタンパク質複合体が抗体の場合、その発現は、コロニーリフト/免疫ブロット法(Wung et al.Biotechniques 21 808−812(1996)および/またはFACSによっても確認することができる。
異種遺伝子を第二の遺伝子座に組み込むために、必要に応じてこの形質転換プロトコールを繰り返す。この異種遺伝子は、第一の遺伝子座に組み込んだ遺伝子と同じであっても異なっていてもよい。第二の遺伝子座に組み込まれる構築物がコードしているタンパク質が、第一の遺伝子座によってコードされている配列と同じであるか、または非常に相同性が高い場合、第一の遺伝子座への望ましくない組み込みの可能性を低下させるために、その配列を変化させてもよい。例えば、第二の遺伝子座に組み込まれる配列は、第一の遺伝子座に組み込まれている配列とは異なるプロモーター配列、終止配列、コドン使用頻度、および/または他の耐性配列の違いを有する場合がある。
P.pastorisの半数体株同士を交配するためには、掛け合わせるそれぞれの株を交配培地上で一緒に培養することができる。例えば、複数種の交配も、交配するそれぞれの株をその生育に適したプレートに画線し、交配相手を第二のプレート(このプレートは富栄養培地、例えばYPDであることが好ましい)に画線することで、同時に簡便に行うことができる。通常、30℃で1日か2日インキュベートした後、2枚のプレート上の細胞を、複製を作るために、交配培地に十字模様にプレーティングし、一緒にプレーティングする株の対がプレート上で網目模様になり、対の最初の画線が交差している場所で、交配する機会をもつことができる。その後、交配プレートをインキュベートし(例えば、30℃で)、株を刺激して交配を誘導することができる。およそ2日後、交配プレート上の細胞を、所望の二倍体株を選択するための培地上に、画線、培養、または複製することができる(例えば、交配した株が相補的に栄養要求性の場合には、ドロップアウトプレートまたは最少培地のプレートを使用してもよい)。これらのプレートを適当な期間(例えば、約3日間)インキュベート(例えば、30℃で)し、所望の二倍体株を選択的に生育させることができる。生じたコロニーを拾い、各二倍体株を単離、純化するために、単一のコロニーが得られるように画線培養することができる。
本発明の方法で使用するための発現ベクターは、酵母特異的配列、例えば、形質転換した酵母株を同定するために栄養要求性選択性マーカーまたは薬剤マーカーをさらに含んでいてもよい。薬剤マーカーは、酵母宿主細胞中のベクターのコピー数を増幅するために、例えば、高濃度の薬剤中で細胞集団を培養し、それによって、高レベルの耐性遺伝子を発現している形質転換体を選抜することによってコピー数を増幅するために、さらに用いることができる。
例示的な実施形態では、異種タンパク質サブユニットをコードしている1つ以上の遺伝子を誘導性プロモーターに連結する。好適なプロモーターの例としては、アルコール酸化酵素1遺伝子プロモーター、ホルムアルデヒド脱水素酵素遺伝子(FLD;米国特許出願第2007/0298500号を参照のこと)、および当該分野で知られている、他の誘導性プロモーターが挙げられる。アルコール酸化酵素1遺伝子プロモーターは、一般的な炭素源、例えばグルコース、グリセロール、またはエタノール上で酵母を生育させている間には非常に厳密に抑制されるが、メタノール上で生育させている間は非常に誘導性が高い(Tschopp et al.、1987;Stroman、D.W.らに付与された米国特許第4,855,231号)。外来性タンパク質を生産させるためには、最初、株を炭素源を含まない条件で生育させてバイオマスを増やし、その後、唯一の(または主な)炭素源およびエネルギー源としてメタノールを含む条件にうつして、外来性遺伝子の発現を誘導することができる。この制御システムの利点の1つは、外来性遺伝子で形質転換されたP.pastoris株ではあるが、その発現産物が細胞にとって有毒な株も、抑圧条件では維持できるということである。
別の例示的な実施形態では、1つ以上の異種遺伝子を、適切な条件ではその発現レベルが上昇し得る制御的なプロモーターに連結してもよい。制御的プロモーターの例としては、CUP1プロモーター(培地中の銅レベルによって誘導される)、テトラサイクリン誘導性プロモーター、チアミン誘導性プロモーター、AOX1プロモーター、およびFLD1プロモーターが挙げられる。
本開示の大部分では、抗体産生について記載するが、本明細書に記載の方法は同様に、他のマルチサブユニット複合体にも容易に適用される。理論によって制限されることを意図しないが、マルチサブユニット複合体の収量と純度は、それぞれのサブユニットの生産を担う遺伝子の発現レベルに影響を受ける、サブユニットの濃度および化学量論に大きく左右されると考えられている。本明細書で開示する方法は、2津以上の異なるサブユニットを含むいかなる組換えマルチサブユニット複合体の収量および/または純度を改善するのにも、容易に利用することができる。加えて、本開示の方法は、マルチタンパク質複合体の生産には限定されず、テロメラーゼ、hnRNP、リボソーム、snRNP、シグナル認識粒子、原核性および真核性RNaseP複合体を含むリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体、ならびに複数の別個のタンパク質および/またはRNAサブユニットを含む他のいかなる複合体の使用にも、容易に適用することができる。マルチサブユニット複合体を発現する宿主細胞は、当該分野で知られている方法によって生成することができる。例えば、含んでいる遺伝子のコピー数の組み合わせが異なる二倍体または四倍体酵母細胞のパネルは、様々なコピー数の個々のサブユニット遺伝子(この数は交配の前に分かっていることが好ましい)を含む細胞同士を交配することで生成することができる。
定義
当然のことながら、本発明は、特定の方法、プロトコール、細胞株、動物の種または属、および記載した試薬に限定されず、それらを変えることもできる。本明細書で使用する用語は特定の実施形態を説明する目的ためだけのものであり、本発明の範囲を限定する目的ではなく、本発明は、添付の請求項によってのみ限定されることも理解されたい。
本明細書で使用する場合、単数形態の「1つ」、「および」、および「この」は、文脈からそうでないことが明かでない限り、複数の対象物も含む。従って、例えば、「1つの細胞」という言及は、複数のそのような細胞を含み、また、「このタンパク質」という言及は、1つ以上のタンパク質および当業者であれば知っているその均等物などへの言及をも含む。本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、そうでないことが明らかに示されていない限り、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
ボーラス添加:本開示では通常、「ボーラス添加」とは、培養細胞が接触している(例えば培地中の)物質(例えばエタノール)の濃度が速やかに変化することを指す。例えば、培養細胞に物質を、1回の添加で、2回以上の添加を行うことで、および/または一定の時間をかけて(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、90、または120分かけて)注入することで、添加することができる。物質はまた、例えば細胞を濃縮して(遠心分離機、濾過、沈殿または他の方法により)、培地の一部または全量を置換することで、もしくは培地の一部または全量を除去し、その後物質を添加することで、または物質を含有している培地を細胞を添加することで、添加してもよい。物質を担体(例えば、培地、水、生理食塩水など)に混合してもよい。例えば、エタノールのボーラス添加には、所望の濃度にするのに十分な量の純粋なまたは濃縮したエタノール(例えば、100%、95%、70%、50%、60%、40%、30%、20%など)を培地に添加することが含まれ得る。別の例としては、例えば、細胞を含む接種材料をエタノール含有培地に添加することで、細胞をエタノール含有培地に添加してもよい。
ボーラス濃度:本開示では通常、「ボーラス濃度」とは、物質(例えば、エタノール)のボーラス添加によってもたらされる濃度を指す。
交配能力のある酵母種:本発明においてこの用語は、培養中で生育可能ないかなる二倍体または四倍体酵母をも、広く包含することを目的としている。そのような酵母の種は、半数体、二倍体、または他の倍数体の形態で存在し得る。指定の倍数性を有する細胞は、適切な条件下では、その形態のまま、何世代にもわたって増殖する。二倍体細胞を半数体の細胞から形成することもできる。連続して交配させることで、交配を重ねること、または二倍体株が融合することによって、四倍体の株を得ることができる。本発明では、例えば、交配または融合(例えば、スフェロプラストの融合)によって生成した半数体酵母、ならびに二倍体酵母または他の倍数性を有する酵母細胞の使用を想定する。
本発明の一実施形態では、交配能力のある酵母は、サッカロミセス科のメンバーの酵母であり、アルキシオジマ属(Arxiozyma);アスコボトリオジマ属(Ascobotryozyma);シテロミセス属(Citeromyces);デバリオミセス属(Debaryomyces);デッケラ属(Dekkera);エレモテシウム属(Eremothecium);イサトチェンキア属(Issatchenkia);カザクスタニア属(Kazachstania);クロイベロミセス属(Kluyveromyces);コダマエ属(Kodamaea);ロデロミセス属(Lodderomyces);パキソレン属(Pachysolen);ピキア属(Pichia);サッカロミセス属(Saccharomyces);サツルニスポラ属(Saturnispora);テトラピシスポラ属(Tetrapisispora);トルラスポラ属(Torulaspora);ウィリオプシス属(Williopsis);およびジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)が含まれる。本発明において有用な可能性のある他の型の酵母としては、ヤロウィア属(Yarrowia)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、フィロバシウム属(Filobasium)、フィロバシデラ属(Filobasidellla)、スポリジオボルス属(Sporidiobolus)、ブレラ属(Bullera)、ロイコスポリジウム属(Leucosporidium)およびフィロバシデラ属(Filobasidella)が挙げられる。
本発明の好ましい実施形態では、交配能力のある酵母はピキア属のメンバーであるか、別のメチロトローフ酵母である。本発明のさらに好ましい実施形態では、ピキア属の交配能力のある酵母は、以下に挙げる種のうちの1つである:ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、およびハンセヌラ・ポリモルファ(ピキア・アングスタ)。本発明の特に好ましい実施形態では、ピキア属の交配能力のある酵母は、ピキア・パストリス種である。
半数体酵母細胞:正常なゲノム(染色体)相補鎖の各遺伝子を1コピーだけ有する細胞。
多倍数性酵母細胞:正常なゲノム(染色体)相補鎖を2コピー以上有する細胞。
二倍体酵母細胞:本質的に全ての遺伝子がその正常なゲノム相補鎖である、2コピー(対立遺伝子)の遺伝子を含む細胞。大抵の場合、2つの半数体細胞を融合(交配)する過程で形成される。
四倍体酵母細胞:本質的に全ての遺伝子がその正常なゲノム相補鎖である、4コピー(対立遺伝子)の遺伝子を含む細胞。大抵の場合、2つの二倍体細胞を融合(交配)する過程で形成される。四倍体は、2、3、4、またはそれ以上の異なる発現カセットを含み得る。そのような四倍体は、出芽酵母では、ホモ接合性異体性a/aおよびアルファ/アルファ二倍体を選択的に交配させることによって、そしてピキア属では、一倍体を連続交配して、栄養要求性二倍体を得ることによって、得ることができる。例えば、[met his]半数体を[ade his]半数体と交配させて二倍体[his]得ることができ;[met arg]半数体を[ade arg]半数体と交配させて二倍体[arg]を得ることができ;その後、この二倍体[his]を二倍体[arg]と交配させて、四倍体の原栄養体を得ることができる。当業者にとっては当然であるが、二倍体細胞の利点および使用への言及は、四倍体細胞の利点および使用にも当てはまる。
酵母の交配:2つの酵母細胞が融合して単一の酵母細胞を形成する過程を指す。融合させる細胞は、半数体細胞であってもより倍数性の多い細胞(例えば、2つの二倍体細胞を交配させて四倍体細胞を生成する)であってもよい。
減数分裂:二倍体の酵母細胞が、染色体が半減する核分裂をして、4つの半数体胞子を生産する過程。各胞子はその後発芽し、半数体の栄養生長する細胞株を形成する。
選択マーカー:選択マーカーとは、例えば形質転換事象を通じて、その遺伝子を受け取る細胞に対して、成長に関する表現型(成長に関する物理的特性)を付与する遺伝子または遺伝子断片である。選択マーカーは、その選択マーカー遺伝子を受け取っていない細胞が生育できない条件の選択成長培地中で、細胞が生存し、増殖することを可能にする。選択マーカー遺伝子は、一般的に、いくつかの種類に分類でき、これには、抗生物質または他の薬剤に対する耐性を付与する遺伝子、2つのts突然変異体を交雑させるかまたはts突然変異体を形質転換した場合は温度に対する耐性を細胞に付与する遺伝子などの陽性選択マーカー;その生合成遺伝子を持たないすべての細胞が必要とする特定の栄養素なしに培地中で増殖する能力を細胞に与える生合成遺伝子、または野生型遺伝子を持たない細胞による増殖を不能にする能力を細胞に与える突然変異生合成遺伝子などの陰性選択マーカー遺伝子などが含まれる。好適なマーカーには、ZEO;NEO(G418);LYS3;MET1;MET3a;ADE1;ADE3;URA3などが含まれるがこれらには限定されない。
組み込まれた:生物の染色体中に共有結合された遺伝要素(通常は異種の遺伝要素)。
直列に組み込まれた:染色体中の隣接した部位に組み込まれた、2コピー以上の遺伝要素。この2コピー以上の遺伝要素は方向性をもっている必要はない。例えば、翻訳される遺伝子の場合、いくつかのコピーがワトソン鎖から転写され、その他のコピーがクリック鎖から転写されてもよい。
宿主細胞:本開示中では、宿主細胞という用語は異種遺伝子を含む細胞(例えば、真核細胞、例えばピキア細胞)を指す。例えば、異種遺伝子は、所望のマルチサブユニット複合体のサブユニット、タンパク質の折り畳み(例えば、シャペロン)、発現、もしくは分泌に関わる遺伝子、および/または別の所望の遺伝子を発現させ得る。異種遺伝子は、真核細胞のゲノム中に組み込んでも、染色体外成分、例えばプラスミドまたは人工染色体に含めてもよい。
発現ベクター:これらのDNAベクターは、標的宿主細胞中での外来性タンパク質の発現に関わる操作を容易にするエレメントを含んでいる。形質転換用の配列の操作およびDNAの生産は、最初は細菌宿主、例えばE.coliで都合のよいように行われ、ベクターは通常、そのような操作を容易にする配列、例えば細菌の複製起点および適切な細菌の選択マーカーを含む。選択マーカーは、形質転換された宿主細胞が選択培地中で生存または成長するのに必要なタンパク質をコードしている。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、そのような培地中では生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒物に対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性の欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地からは利用できない必須の栄養素を供給するタンパク質をコードしている。ベクターと酵母の形質転換法の例は例えば、Burke,D.,Dawson,D.,&Stearns,T.(2000)Methods in yeast genetics:a Cold Spring Harbor Laboratory course manual.Plainview,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されており、その全体は参照により本明細書においては組み込まれる。
本発明の方法で使用するための発現ベクターはさらに、酵母特異的配列、例えば、形質転換された酵母株を同定するための選択可能な栄養要求性または薬剤マーカーを含んでいてもよい。薬剤マーカーはさらに、酵母宿主細胞に含まれるベクターのコピー数の増加を選択するために使用することができる。
目的のポリペプチドをコードしている配列は通常、酵母細胞内でそのポリペプチドを発現させる、転写・翻訳制御配列に操作可能に連結されている。これらのベクター成分には、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終止配列などのうちの1つ以上が含まれるが、ベクター成分はこれらには限定されない。ポリペプチドを分泌させるための配列、例えばシグナル配列を含めてもよい。発現ベクターは酵母ゲノムに組み込まれることが多いため、酵母の複製起点を含めてもよい。
必要に応じて、本発明の一実施形態では、マルチサブユニット複合体の1つ以上サブユニットを、発現したポリペプチドを培地中に分泌する分泌配列に操作可能に連結または融合させる。このことによって異種マルチサブユニット複合体の回収および精製を容易にすることができる。この分泌配列は、より好ましくは、例えば好ましいコドンの選択および/またはコドンの選択によるATパーセンテージの改変を通じて、宿主細胞(例えば、酵母二倍体細胞)からのポリペプチドの最適な分泌をもたらすものである。分泌の効率および/または安定性は、分泌配列の選択に影響される可能性があること、また、それぞれのタンパク質によって、最適な分泌配列が変わる場合もあることが、当該分野では知られている(例えば、Koganesawa et al.,Protein Eng.2001 Sep;14(9):705−10を参照のこと。この全体は参照により本明細書に組み込まれる)。多くの使用可能な好適な分泌シグナルが当該分野では分かっており、また、特定の異種マルチサブユニット複合体の収量および/または純度にそれらが与える影響については速やかに試験することができる。酵母や他の種の分泌タンパク質に存在する配列、ならびに改変した分泌配列を含む、いずれの分泌配列も使用可能である。使用可能な分泌配列の例としては、トリリゾチーム(CLY)シグナルペプチド(MRSLLILVLCFLPLAALG(配列番号31))、CLY−L8(MRLLLLLLLLPLAALG(配列番号32))、出芽酵母インベルターゼ(SUC2)シグナルペプチド(MLLQAFLFLLAGFAAKISA(配列番号33))、MF−α(プレプロ)(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−EGVSLEKR(配列番号34))、MF−α(プレ)−apv(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APV(配列番号35))、MF−α(プレ)−apv−SLEKR(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVSLEKR(配列番号36))、MF−α(プレプロ)−(EA)3(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−EGVSLEKR−EAEAEA(配列番号37))、αFシグナルペプチド(MRFPSIFTAVLFAASSALA−APVNTTTE−DETAQIPAEAVIGYSDLEGDFDVAVLPFSNSTNNGLLFINTTIASIAAKE−EGVSLEKR(配列番号38))、KILM1シグナルペプチド(MTKPTQVLVRSVSILFFITLLHLVVALNDVAGPAETAPVSLLPR(配列番号39))、抑制性酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルペプチド(MFSPILSLEIILALATLQSVFA(配列番号40))、黒色コウジ菌GOXシグナルペプチド(MQTLLVSSLVVSLAAALPHYIR(配列番号41))、シュワンニオミセス・オシデンタリスのグルコアミラーゼ遺伝子(GAM1)シグナルペプチド(MIFLKLIKSIVIGLGLVSAIQA(配列番号42))、プロ配列を含むヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド(MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR(配列番号43))、プロ配列を含まないヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド(MKWVTFISLLFLFSSAYS(配列番号44))、ISNシグナルペプチド(MALWMRLLPLLALLALWGPDPAAA(配列番号45))、IFNシグナルペプチド(MKYTSYILAFQLCIVLGSLGCDLP(配列番号46))、HGHシグナルペプチド(MAADSQTPWLLTFSLLCLLWPQEPGA(配列番号47))、フィトヘマグルチニン(PHA)(MKKNRMMMMIWSVGVVWMLLLVGGSYG(配列番号48))、カイコリゾチーム(MQKLIIFALVVLCVGSEA(配列番号49))、ヒトリゾチーム(LYZ1)(MKALIVLGLVLLSVTVQG(配列番号50))、アクチビンI型受容体(MVDGVMILPVLIMIALPSPS(配列番号51))、アクチビンII型受容体(MGAAAKLAFAVFLISCSSG(配列番号52))、ピキア・パストリス免疫グロブリン結合タンパク質(PpBiP)(MLSLKPSWLTLAALMYAMLLVVVPFAKPVRA(配列番号53))、およびヒト抗体3D6軽鎖リーダー配列(MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAKC(配列番号54))が挙げられる。Hashimoto et al., Protein Engineering vol. 11 no. 2 pp.75-77, 1998; Oka et al., Biosci Biotechnol Biochem. 1999 Nov; 63(11):1977−83; Gellissen et al., FEMS Yeast Research 5 (2005) 1079-1096; Ma et al., Hepatology. 2005 Dec;42(6):1355−63; Raemaekers et al., Eur J Biochem. 1999 Oct 1;265(1):394−403; Koganesawa et al., Protein Eng. (2001) 14 (9): 705−710; Daly et al., Protein Expr Purif. 2006 Apr;46(2):456−67 ; Damasceno et al., Appl Microbiol Biotechnol (2007) 74:381-389; and Felgenhauer et al., Nucleic Acids Res. 1990 Aug 25;18(16):4927を参照のこと。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。マルチサブユニット複合体を、分泌シグナルに操作可能に連結または融合させることなく、培地中に分泌させてもよい。例えば、ある種の異種ポリペプチドはP.pastoris中で発現させた場合、分泌シグナルに連結または融合させなくても培地中に分泌されることが分かっている。加えて、当該分野で知られている方法を使って、宿主細胞からマルチサブユニット複合体を精製してもよい(これは例えば、複合体があまり分泌されない場合に好ましい場合がある)。
所望のマルチサブユニット複合体を含んでいる培地または細胞を培養から回収することができる。必要に応じて、分泌されたタンパク質を精製してもよい。例えば、所望のマルチサブユニット複合体を含んでいる細胞を、機械的、化学的、酵素的、および/または浸透圧を使った方法(例えば、液体窒素での凍結、ホモジナイザーを使って、スフェロプラスト化、超音波処理、ガラスビーズを使った撹拌、界面活性剤を使って、など)によって、溶解することができる。所望のマルチサブユニット複合体を、当該分野で知られている方法により、濃縮、濾過、透析などすることができる。所望のマルチサブユニット複合体を、例えばその質量(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、等電点(例えば、等電点電気泳動)、電気泳動での移動度(例えば、ゲル電気泳動)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、HPLC)、電荷(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)、親和性(例えば、抗体の場合にはプロテインA、プロテインGに対する結合親和性、および/または所望の抗体が結合するエピトープへの親和性)、および/またはグリコシル化の状態(例えば、レクチン結合アフィニティで検出される状態)に基づいて、精製してもよい。複数の精製工程を経て所望の純度レベルにすることができる。例示的な実施形態では、所望のマルチサブユニット複合体は、免疫グロブリン定常ドメインを含んでいてもよく、プロテインAまたはプロテインGアフィニティ、サイズ排除クロマトグラフィー、およびレクチンへの結合性の欠如(グリコシル化された形態のものを除去するため)を使って精製することができる。必要に応じて、精製している間のタンパク質分解を阻害するために、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)などのAプロテアーゼ阻害剤を加えてもよい。
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に配置される場合、「操作可能に連結」されている。例えば、シグナル配列のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関わる前駆タンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、それがその配列に転写に影響を及ぼす場合、コード配列に操作可能に連結されている。基本的に、「操作可能に連結されている」とは、連結されるDNA配列同士が連続していて、分泌リーダーの場合には、連続していて、かつ、インフレームである。しかしながら、エンハンサーは連続している必要は無い。連結は、都合のよい制限酵素部位でのライゲーションまたは、当業者であればよく知っているPCR/組換え法(Gateway(登録商標)Technology;Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア)を介して達成され得る。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、標準的な技法に従って使用してもよい。所望の核酸(操作可能に連結した配列を含んでいる核酸など)を化学合成によって生産してもよい。
プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置する非翻訳配列で(一般的におよそ100〜1000bp)、操作可能に連結している特定の核酸配列の転写と翻訳を制御する配列である。このようなプロモーターは、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、および抑制性プロモーター(抑制因子の欠損に反応して転写のレベルを上昇させる)に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件におけるある種の変化、例えばある栄養素の有無または温度変化に応答して、それらの制御にあるDNAから高いレベルの転写を開始させ得る。
酵母プロモーターの断片は、相同的組換え部位としておよび酵母ゲノム中の同じ部位への発現ベクターの組み込み部位としても役立つ場合がある;あるいは、選択マーカーを相同的組換え部位として用いる。ピキアの形質転換については、Cregg et al.(1985)Mol. Cell. Biol.5:3376−3385に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
ピキア由来の好適なプロモーターの例としては、CUP1(培地中の銅レベルによって誘導される)、テトラサイクリン誘導性プロモーター、チアミン誘導性プロモーター、AOX1プロモーター(Cregg et al.(1989)Mol. Cell. Biol. 9:1316−1323);ICL1プロモーター(Menendez et al.(2003)Yeast 20(13):1097−108);グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素プロモーター(GAP)(Waterham et al.(1997)Gene 186(1):37−44);およびFLD1プロモーター(Shen et al.(1998)Gene 216(1):93−102)が挙げられる。GAPプロモーターは強力な構成的プロモーターであり、また、CUP1、AOXおよびFLD1プロモーターは誘導性である。前述した参考文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
他の酵母プロモーターとしては、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、Pyk、およびそれらに由来するキメラプロモーターがある。加えて、非酵母プロモーター、例えば、哺乳類、昆虫、植物、は虫類、両生類、ウイルス、および鳥類プロモーターを本発明で使用してもよい。プロモーターは大抵の場合、哺乳類のプロモーター(発現させる遺伝子によって内生のものである可能性がある)を含むか、あるいは酵母の系で効率的な転写を提供する酵母またはウイルスプロモーターを含み得る。
目的のポリペプチドは、直接的にだけでなく、異種ポリペプチド、例えばシグナル配列または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特定の開裂部位を有する他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして組換え的に生産することができる。通常、シグナル配列はベクターの成分であってよく、またはベクターに組み込まれるポリペプチドのコード配列の一部であってもよい。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞内で利用可能な標準的な経路のうちの1つによって認識およびプロセシングされるシグナル配列であることが好ましい。出芽酵母α因子プレプロシグナルが、P.pastorisからの様々な組換えタンパク質の分泌に有効であることが実証されている。他の酵母シグナル配列としては、α交配因子シグナル配列、インベルターゼシグナル配列、および他の分泌される酵母ポリペプチド由来野シグナル配列が挙げられる。加えて、二倍体酵母発現系での分泌を向上させるために、これらのシグナルペプチド配列を改変してもよい。他の目的の分泌シグナルには、分泌されるタンパク質にとって異種であってもよい、または分泌されるタンパク質にとって天然の配列であってもよい哺乳類のシグナル配列が含まれる。シグナル配列はプレペプチド配列を含み、またいくつかの例では、プロペプチド配列を含み得る。そのようなシグナル配列の多くが当該分野では知られており、このようなシグナル配列には、免疫グロブリン鎖に見られるシグナル配列、例えば、K28プレプロトキシン配列、PHA−E、FACE、ヒトMCP−1、ヒト血清アルブミンシグナル配列、ヒトIg重鎖、ヒトIg軽鎖などが含まれる。例えば、Hashimoto et. al. Protein Eng 11(2) 75 (1998); およびKobayashi et. al. Therapeutic Apheresis 2(4) 257 (1998)を参照のこと。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ベクターに転写活性化配列を挿入することで、転写を高めてもよい。これらの活性化因子は、一般におよそ10〜300bpのDNAのシス作用性エレメントであり、プロモーターに作用して転写を高めるものである。転写エンハンサーは方向に関連していて位置には依存せず、転写単位の5’および3’、イントロン中、ならびにコード配列自体で見つかっている。エンハンサーは、コード配列の5’または3’の位置で発現ベクター中に切り出される場合があるが、プロモーターの5’の部位に位置することが好ましい。
真核宿主細胞で使用される発現ベクターは、転写を終結させ、mRNAを安定化させるのに必須の配列を含んでいてもよい。そのような配列は一般的に、翻訳終止コドンの3’、真核またはウイルスのDNAもしくはcDNAの非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、mRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含んでいる。
上で挙げた成分のうちの1つ以上を含有する好適なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術またはPCR/組換え法を用いる。単離したプラスミドまたはDNA断片を開裂し、目的に合わせて処理し、その後、所望される形態のまま再度ライゲーションするか、または組換え法を介して必要とされるプラスミドを生成する。構築したプラスミド中の配列が正しいかを確認するための解析には、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞を形質転換し、必要に応じて、形質転換がうまくいった形質転換体を抗生物質耐性を指標に選抜する(例えばアンピシリンまたはゼオシン)。形質転換体からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化および/または配列解析によって解析する。
断片の制限消化とライゲーションの代わりに、att部位と組換え酵素を使用した組換え法を使用して、ベクターにDNA配列を挿入することもできる。そのような方法は例えば、Landy(1989)Ann.Rev.Biochem.58:913−949に記載されており、また、当業者には知られている。そのような方法では、ラムダと大腸菌がコードしている組換えタンパク質との混合物によって仲介される分子間DNA組換えが使用される。組換えは、相互作用しているDNA分子同士の特定の接着(att)部位の間で起こる。att部位に関する説明については、Weisberg編「Lambda II」(Cold Spring Harbor, N.Y.:Cold Spring Harbor Press),pp.211−250に記載のWeisberg and Landy(1983)Site−Specific Recombination in Phage Lambdaを参照のこと。組換え部位に隣接しているDNAセグメントは、組換えの後にattが各親ベクターによって持ち込まれる配列からなるハイブリッド配列となるように、置き換わる。組換えは、どのような配列のDNA同士の間にも起こる。前述の参考文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
Att部位を、目的の配列を適切なベクターに導入することで;特異的なプライマーを使用してattB部位を含むPCR産物を生成することで;att部位を含む適切なベクターにクローニングしたcDNAライブラリーを生成することなどによって、目的の配列に導入してもよい。
モノシストロン性およびポリシストロン性の遺伝子。モノシストロン性遺伝子は、単一のタンパク質のみを翻訳するための遺伝情報を含むRNAをコードしている。ポリシストロン性の遺伝子は、2つ以上のタンパク質を翻訳するための遺伝情報を含むmRNAをコードしている。ポリシストロン性の遺伝子によってコードされるタンパク質は、同じもしくは異なる配列、またはその組み合わせを有し得る。2シストロン性またはバイシストロン性とは、2つのタンパク質をコードしているポリシストロン性の遺伝子を指す。ポリシストロン性の遺伝子は必要に応じて、cap非依存的な翻訳を促進するための、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを1つ以上含む。このエレメントは、mRNA分子の5’末端に結合している5’−cap構造から独立して、下流にあるタンパク質のコード領域の翻訳を誘導できる場所に位置している可能性がある。分かっているIRES配列(例えば、ウイルス由来、真核由来、または人工由来の配列)はいずれも使用することができる。例えば、コオロギ麻痺(cricket paralysis)ウイルスの遺伝子間領域(IGR)にあるIRES配列を、Thompson et al.(2001)PNAS 98:12972−12977に記載されているように使用してもよい。必要に応じて、IRESの機能を遺伝子変異によって、例えば、eIF2キナーゼGCN2の構成的な発現を誘導すること、または2つの離れた(id.)イニシエーターであるtRNA(met)遺伝子を破壊することによって、増強してもよい。
本明細書で使用する場合、折り畳みとは、アミノ酸残基間の相互作用によって構造が安定化している、ポリペプチドおよびタンパク質の三次元構造を指す。非共有相互作用は構造を規定するのに重要であるが、通常、目的のタンパク質は、2つのシステイン残基によって形成されている、分子内部のおよび/または分子間の共有ジスルフィド結合を有する。天然に存在するタンパク質およびポリペプチドまたはその誘導体および変異体については、正確な折り畳みとは通常、最適な生物学的活性を生じる配置であり、活性に関するアッセイ、例えばリガンド結合アッセイ、酵素活性に関するアッセイなどで簡便にモニタリングすることができる。
いくつかの例では、例えば、所望の産物が合成したものである場合、生物学的活性に基づくアッセイは意味をなさない可能性がある。そのような分子の正確な折り畳みは、物理的特性、エネルギーの検討、モデル化試験などによって決定することができる。
折り畳みやジスルフィド結合の形成を高める1つ以上の酵素、すなわちフォルダーゼ(foldases)、シャペロニング(chaperoning)などをコードしている配列を導入することによって、発現宿主をさらに改変してもよい。当該分野で知られているように、ベクターやマーカーなどを使用して、そのような配列を酵母宿主細胞中で構成的にまたは誘導的に発現させることができる。配列、例えば所望のパターンで発現させるのに有効な転写制御エレメントは、標的指向化法により、酵母ゲノム中に安定に組み込まれることが好ましい。
例えば、真核性のPDIは、タンパク質のシステイン酸化およびジスルフィド結合の異性化の触媒として有効なだけでなく、シャペロン活性も示す。PDIを共発現させることで、複数のジスルフィド結合を有する活性なタンパク質の生産を促進することができる。BIP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質);シクロフィリン;などを発現させることも注目に値する。本発明の一実施形態では、マルチサブユニット複合体を、別個の折り畳み酵素を発現している半数体の親株を、例えば一方の株がBIPを発現させている場合があり他方の株がPDIを発現し得る親株同士を、またはその組み合わせの親株同士を交配することで生成した酵母株で発現させることができる。
「所望のタンパク質」または「標的タンパク質」という用語は同じ意味で使用され、通常は、本明細書に記載のヒト化抗体またはその結合部分などの異種マルチサブユニットタンパク質を指す。
「抗体」という用語は、エピトープに適合し、エピトープを認識する特定の形状を有する分子構造を含み、この分子構造とエピトープとの複合体が1つ以上の非共有結合的な相互作用によって安定化される、いかなるポリペプチド鎖をも含む。典型的な抗体分子は免疫グロブリンであり、また、全供給源、例えばヒト、齧歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳類、トリ、他の鳥類などに由来する、全ての方の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどが「抗体」であると見なされる。出発材料として、本発明による有用な抗体を生産するのに好ましい供給源はウサギである。多数の抗体をコードしている配列について記載されてきており、またその他のものは、当該分野において周知の方法によって得ることができる。その例としては、キメラ抗体、ヒト抗体および他の非ヒト哺乳類の抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、例えばscFvs、キャメルボディ(camelbody)、ナノボディ、IgNAR(サメ由来の一本鎖抗体)、小モジュール免疫薬(SMIP)、および抗体断片、例えばFabs、Fab’、F(ab’)2などが挙げられる。Streltsov V A, et al., Structure of a shark IgNAR antibody variable domain and modeling of an early−developmental isotype, Protein Sci. 2005 November; 14(11):2901−9. Epub 2005 Sep. 30; Greenberg A S, et al., A new antigen receptor gene family that undergoes rearrangement and extensive somatic diversification in sharks, Nature. 1995 Mar. 9; 374(6518):168−73; Nuttall S D, et al., Isolation of the new antigen receptor from wobbegong sharks, and use as a scaffold for the display of protein loop libraries, Mol Immunol. 2001 August; 38(4):313−26; Hamers−Casterman C, et al., Naturally occurring antibodies devoid of light chains, Nature. 1993 Jun. 3; 363(6428):446−8; Gill D S, et al., Biopharmaceutical drug discovery using novel protein scaffolds, Curr Opin Biotechnol. 2006 December; 17(6):653−8. Epub 2006 Oct. 19を参照のこと。前述した参考文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
例えば、抗体または抗原結合断片を、遺伝子操作によって産生してもよい。この技術では、他の方法と同様に、抗体産生細胞を、所望の抗原または免疫原で感作する。抗体産生細胞から単離したメッセンジャーRNAを鋳型として利用し、PCR増幅によってcDNAを合成する。増幅した免疫グロブリンcDNAの適切な部分を発現ベクターに挿入することで、ベクターそれぞれが本来の抗原特異性を保持している1つの重鎖遺伝子と1つの軽鎖遺伝子を含んでいる、ベクターのライブラリーを作成する。組合せライブラリーは重鎖遺伝子ライブラリーと軽鎖遺伝子ライブラリーを結合させることにより構築される。このことによって、重鎖と軽鎖(抗体分子の断片または抗原結合断片と類似の)を共に発現しているクローンのライブラリーが得られる。これら遺伝子を保有しているベクターを一緒に、宿主細胞に形質転換する。抗体遺伝子の合成を形質転換した宿主中で誘導する場合には、重鎖および軽鎖タンパク質は自己組織化して、抗原または免疫原を使ったスクリーニングで検出することができる活性な抗体を産生する。
目的の抗体をコードしている配列としては、天然の配列ならびに核酸によってコードされている配列があるが、遺伝コードの縮重により、配列は、開示の核酸およびその変異体と同一の配列ではない。変異体ポリペプチドには、アミノ酸(aa)置換、付加または欠損を含めることができる。アミノ酸置換は同類アミノ酸置換であっても、または非必須アミノ酸を除くための置換(例えばグリコシル化部位を変化させるための置換)、置換による誤った折り畳みを最小限に抑えるため、または機能に必要のない1つ以上システイン残基を削除するための置換であってもよい。タンパク質の特定の領域(例えば、機能性ドメイン、触媒的なアミノ酸残基など)の生物学的活性を保持しているまたは高い生物学的活性を有している限り、変異体と呼ぶことができる。変異体にはまた、本明細書で開示するポリペプチドの断片、特に生物学的に活性な断片および/または機能性ドメインに対応している断片も含まれる。クローニングした遺伝子にインビトロで突然変異を生成するための技術が知られている。対象発明にはまた、一般的な分子生物学的技法を使って改変し、タンパク質分解に対する抵抗性を高めた、または溶解特性を最適化した、または治療薬としてより好適にしたポリペプチドも含まれる。
キメラ抗体は、別種のものに由来する軽鎖定常領域と重鎖領域を有する1種の抗体産生細胞から得られた軽鎖可変領域と重鎖可変領域(VLとVH)を組み合わせる組換え技術によって作成することができる。典型的なキメラ抗体では、大部分がヒトドメインとなる抗体を産生するために、齧歯類またはウサギの可変領域とヒトの定常領域が使用される。そのようなキメラ抗体の産生は当該分野で周知であり、標準的な技術によって達成することができる(例えば、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第5,624,659号に記載されているように)。さらに、本発明のキメラ抗体のヒト定常領域を、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6、IgG7、IgG8、IgG9、IgG10、IgG11、IgG12、IgG13、IgG14、IgG15、IgG16、IgG17、IgG18またはIgG19定常領域から選択してもよいことも想定する。
ヒト化抗体を改変して、より多くのヒト様免疫グロブリンドメインを含め、動物由来抗体の相補性決定領域のみを組み入れる。この改変は、モノクローナル抗体の可変領域の超可変ループの配列を注意深く調べ、それらをヒト抗体鎖の構造に合わせることで達成される。表面的には複雑であるが、この過程は実際行う上では簡単である。例えば、その全体が参照することで本明細書に組み込まれる、米国特許第6,187,287号を参照のこと。抗体をヒト化する方法は、これまでにも、米国特許第7935340号に記載されており、その全文は参照することにより本明細書に組み入れられる。いくつかの例では、より多くのウサギフレームワーク残基が活性の維持に必要であるか否かを決定することが要求される。いくつかの例では、親和性または活性の消失を最低限に抑えるために、ヒト化抗体には、ウサギフレームワーク中のいくつかの重要な残基がさらに必要である。このような例では、所望の活性をもたせるために、1つまたは複数のフレームワークの残基をヒト生殖系列の配列から、もともとのウサギアミノ酸に戻すことが必要である。親和性と活性を維持するのにどのウサギ残基が必要かを同定するために、これらの変更を実験的に決定する。
免疫グロブリン全体(またはその相当する組換え体)に加えて、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリン断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、または他の断片)を合成してもよい。「断片」または最少免疫グロブリンは、組換え免疫グロブリン技術によって設計され得る。例えば、本発明で使用する「Fv」免疫グロブリンを、融合した軽鎖可変領域と重鎖可変領域を合成することで生産してもよい。抗体の組み合わせ、例えば2種類の異なるFv特異性を含むディアボディもまた対象である。本発明の別の実施形態では、SMIP(低分子免疫薬)、キャメルボディ、ナノボディ、およびIgNARもまた、免疫グロブリン断片に包含される。
免疫グロブリンおよびその断片を翻訳後に改変してもよい。例えば、エフェクター部分(例えば化学リンカー)、検出部分(例えば蛍光色素)、酵素、毒素、基質、生物発光性物質、放射性物質、化学発光部分などを加えるように改変してもよく、または特定の結合部分、例えばストレプトアビジン、アビジン、またはビオチンなどを本発明の方法および組成物で使用してもよい。さらなるエフェクター分子の例を以下に記載する。
生産に伴う変異体:所望の産物(例えば、所望のマルチサブユニット複合体)以外の産物であって、所望の産物の調製に伴われ、かつ、所望の産物に関連するものである。生産に伴う変異体の例としては、切断型または伸長したペプチド、所望のグリコシル化とは異なるグリコシル化を有する産物(例えば、グリコシル化されていない産物が所望される場合、グリコシル化された産物はいずれも生産に伴う変異体と見なされる)、異常な化学量論の複合体、不適当な配置、異常なジスルフィド結合、異常なもしくは不完全な折り畳み、凝集、プロテアーゼ開裂、または他の異常が含まれる。例示的な生産に伴う変異体は、質量(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーで検出される)、等電点(例えば、等電点電気泳動で検出される)、電気泳動での移動度(例えば、ゲル電気泳動で検出される)、リン酸化の状態(例えば、質量分析で検出される)、電荷対質量の比(例えば、質量分析で検出される)、質量もしくはタンパク質分解断片の同一性(例えば、質量分析もしくはゲル電気泳動で検出される)、疎水性(例えば、HPLCで検出される)、電荷(例えば、イオン交換クロマトグラフィーで検出される)、親和性(例えば抗体の場合には、プロテインA、プロテインGおよび/または所望の抗体が結合するエピトープに対する結合親和性で検出される)、およびグリコシル化の状態(例えば、レクチン結合アフィニティで検出される)のうちの1つ以上に違いを示し得る。所望のタンパク質が抗体の場合、生産に伴う変異体という用語には、グリコ−高分子変異体および/または半抗体種(下記)が含まれ得る。
例示的な生産に伴う変異体には、異所性のジスルフィド結合を含む変異体形態も含まれる。例えば、IgG1抗体分子の大部分は、合計で16の鎖内および鎖間ジスルフィド架橋で安定化する。このうち、鎖間ジスルフィド架橋は重鎖および軽鎖両方におけるIgGドメインの折り畳みを安定化し、鎖内ジスルフィド架橋は重鎖と軽鎖との間の相互作用を安定化する。他の型の抗体も同様に、特徴的な、安定化鎖内および鎖間ジスルフィド結合を含む。さらに、いくつかの抗体(本明細書で開示するAb−AおよびAb−Bを含む)は、非正規のジスルフィド結合と呼ばれる、さらなるジスルフィド結合を含む。従って、異所性の鎖内ジスルフィド結合によっては、安定化する共有結合がないためにおよび/またはさらなるサブユニットへのジスルフィド結合があるために、複合体の化学量が異常となる可能性がある。加えて、異所性のジスルフィド結合(鎖内であっても鎖間であっても)によって、抗体の構造安定性が損なわれる可能性があり、それによって、活性の低下、安定性の低下、凝集体を形成する傾向の増加、および/または免疫原性の上昇が生じる場合がある。異所性のジスルフィド結合を含む生産に伴う変異体は、様々な方法で検出することができ、それらの方法には、非還元変性SDS−PAGE、キャピラリー電気泳動、cIEX、質量分析(必要に応じて化学修飾して、遊離システインの質量をシフトさせる)、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLC、光散乱の変化、および当該分野で知られている任意の他の好適な方法が含まれる。例えば、The Protein Protocols Handbook 2002, Part V, 581−583, DOI: 10.1385/1−59259−169−8:581を参照のこと。
半抗体、半抗体種、またはH1L1とは、単一の抗体重鎖と単一の抗体軽鎖を含むが、第二の抗体重鎖と第二の抗体軽鎖への共有結合を欠損しているタンパク質複合体を指す。2つの半抗体は、一定の条件では、非共有的に相互さようし得る(それによって、完全な抗体と同様の挙動、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した見かけの分子量を示し得る)。同様に、H2L1とは、2つの抗体重鎖と1つの抗体軽鎖を含むが、第二の抗体軽鎖への共有結合を欠損しているタンパク質複合体を指し、このような複合体もまた、別の抗体軽鎖と非共有的に相互作用し得る(そして同様に、完全な抗体と同様の挙動を示す)。完全抗体と同様に、半抗体種およびH2L1種も、還元条件下では、個々の重鎖および軽鎖に分離することができる。半抗体種およびH2L1種は、非還元SDS−PAGEゲルを使い、完全抗体よりも見かけの分子量が小さい移動度を示す種として検出することができる。例えば、H1L1は、完全抗体(例えば、約75kDa)のおよそ半分の見かけの分子量のところまで移動する。
グリコ−高分子変異体とは、抗体調製物中に存在することがあり、少なくともFc配列の一部を含む、グリコシル化された生産に伴う変異体を指す。グリコ−高分子変異体は、SDS−PAGEで観察される電気泳動の移動度の低下(正常な重鎖と比較して)、レクチン結合親和性、抗Fc抗体への結合、およびサイズ排除クロマトグラフィーによって決定されるグリコ−高分子変異体含有抗体複合体の見かけの分子量がより大きいことを特徴とする。その全体が参照することで本明細書に組み込まれる、2011年8月31日に出願の米国特許出願番号第61/525,307号(代理人明細書番号67858.730200)を参照のこと。
「所望の分泌型異種ポリペプチド安定して発現するまたは長期間発現する倍数性の酵母」という用語は、少なくとも数日から1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月、さらに好ましくは少なくとも1〜6ヶ月間、その上さらに好ましくは1年を超えて、閾値の発現レベルで、典型的には少なくとも50〜500mg/リットル(培養して約90時間後)のレベルで、好ましくは実質的にそれを上回るレベルで、前記ポリペプチドを分泌する酵母培養を指す。
「所望される量の組換えポリペプチドを分泌する倍数性酵母の培養」という用語は、組換えポリペプチドを安定して分泌する、または少なくとも50〜500mg/リットルの、より好ましくは500〜1000mg/リットル以上の組換えポリペプチドを長期間分泌する培養を指す。
あるポリヌクレオチド配列が遺伝暗号に従って翻訳されるとあるポリペプチド配列が生じる場合、このポリヌクレオチド配列はこのポリペプチド配列に「対応している」(つまり、このポリヌクレオチド配列はこのポリペプチド配列を「コードしている」)。2種類の配列が同じポリペプチド配列をコードしている場合、1つのポリヌクレオチド配列は別のポリヌクレオチド配列に「対応している」。
DNA構築物の「異種」領域またはドメインとは、より大きなDNA分子に含まれている同定可能なDNAセグメントであるが、天然では、そのより大きな分子との関連は認められないものである。従って、異種領域が哺乳類の遺伝子をコードしている領域の場合、この遺伝子は通常、本来の生物のゲノム中では、哺乳類のゲノムDNAとは隣接していないDNAと隣接する。異種領域の別の例としては、このコード配列自体が天然には存在しないものである構築物が挙げられる(例えば、ゲノムのコード配列がイントロンを含んでいるcDNA、または天然の遺伝子とは違うコドンを含んでいる合成の配列)。対立変異または天然に存在する突然変異事象によって、本明細書で定義するDNAの異種領域が生じることはない。
「コード配列」とは、タンパク質またはペプチド配列に対応しているまたはそれらをコードしている(遺伝暗号の観点で)、インフレームになっているコドンの配列である。ある配列またはその相補的な配列が同じアミノ酸配列をコードしている場合、この2種類のコード配列は互いに対応している。適切な制御配列と関連しているコード配列は、転写され、ポリペプチドに翻訳され得る。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は一般的に、コード配列の3’に位置している。「プロモーター配列」は、細胞中でRNAポリメラーゼを結合させ、下流の(3’方向の)コード配列の転写を開始させることができるDNA制御領域である。プロモーター配列は通常、コード配列の転写に影響を及ぼす制御分子(例えば、転写因子)が結合するための部位をさらに含んでいる。RNAポリメラーゼが細胞内であるプロモーター配列に結合し、あるコード配列をmRNAに転写し、その後、このコード配列によってコードされているタンパク質に翻訳される場合、このコード配列は、このプロモーター配列の「制御下にある」かまたはこのプロモーターに「操作可能に連結されている」。
外来性の物質、例えばDNA、RNAまたはタンパク質をある生物または宿主細胞に導入するためには、ベクターが使用される。一般的にベクターは、組換えウイルス(ポリヌクレオチドの場合)およびリポソーム(ポリペプチドの場合)を含んでいる。「DNAベクター」とは、連結した別のポリヌクレオチドセグメントを含み、連結させたセグメントの複製を生じることができるレプリコン、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドである。「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞によるポリペプチドの合成を誘導する制御配列を含むDNAベクターである。このことは基本的に、プロモーターにRNAポリメラーゼが結合してmRNAの転写が開始すること、ならびにリボソーム結合部位と開始シグナルによってmRNAからポリペプチドへの翻訳が誘導されることを意味する。ポリヌクレオチド配列を発現ベクターの積雪な部位に正しい読み枠で組み込み、その後このベクターを使って適切な宿主細胞に形質転換することで、前記ポリヌクレオチド配列によってコードされているポリペプチドを生産することができる。
ポリヌクレオチド配列の「増幅」とは、複数のコピーの特定の核酸配列をインビトロで生産することである。増幅された配列は通常、DNAの形態である。そのような増幅を実施するための様々な技術が以下の総説に記載されており、これらの参考文献はそれぞれ、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる:Van Brunt 1990, Bio/Technol., 8(4):291−294;およびGill and Ghaemi, Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 2008 Mar;27(3):224−43。ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPCRとは、核酸増幅の典型例であり、本明細書では、他の適した増幅技術の中でも、PCRの使用を重要視する。
現在では、大部分の脊椎動物(哺乳類を含む)の抗体の基本構造はよく分かっている(Edelman, G. M., Ann. N.Y. Acad. Sci., 190: 5 (1971))。標準的な抗体は、分子量がおよそ23,000ダルトンの2つの同一の軽いポリペプチド鎖(「軽鎖」)、と分子量が53,000〜70,000の2つの同一の重い鎖(「重鎖」)から構成されている。この4つの鎖はジスルフィド結合で繋がって「Y」字の形態をとっており、「Y」字の分かれている部分で、軽鎖が重鎖を支えている。「Y」字の「枝分かれてしている」部分はFab領域と呼ばれており;「Y」字の幹の部分はFC領域と呼ばれている。アミノ酸配列の方向は、「Y」字の先端がN末端で、各鎖の下部がC末端となっている。N末端には、長さがおよそ100アミノ酸の、抗体を惹起する抗原に対する特異性を有する可変領域があり、抗体によって、軽鎖と重鎖の間に僅かな違いがある。
それぞれの鎖にある可変領域は、鎖の残りの長さを構成している定常領域に連結している。特定のクラスの抗体に含まれている定常領域は、抗体(つまりそれを惹起する抗原)の特異性にあまり差がない。定常領域には大きく5つのクラスがあることが分かっており、それによって、免疫グロブリン分子のクラスが決定される(γ、μ、α、δ、およびε重鎖定常領域に対応する、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)。定常領域すなわちクラスによって、続く抗体のエフェクター機能、例えば補体活性化(Kabat,E.A.,Structural Concepts in Immunology and Immunochemistry,第二版,p.413−436,Holt, Rinehart,Winston(1976))、や他の細胞応答(Andrews,D.W.,et al.,Clinical Immunobiology,pp 1−18,W.B.Sanders(1980);Kohl,S.,et al.,Immunology,48:187(1983))が決まり、可変領域によって、抗体が反応する抗原が決定される。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖のクラスはそれぞれ、κまたはλ軽鎖と対を形成することができる。軽鎖および重鎖は互いに共有結合しており、免疫グロブリンをハイブリドーマまたはB細胞から生成した場合には、2つの重鎖の「尾」部は、互いに共有ジスルフィド結合で結合している。
「可変領域」または「VR」という表現は、抗体の軽鎖と重鎖のそれぞれの対に含まれるドメインで、抗体の抗原への結合に直接関わるドメインを指す。各重鎖の一端には可変ドメイン(VH)があり、それに複数の定常ドメインが繋がっている。各軽鎖の一端には可変ドメイン(VL)があり、もう一方の端に定常ドメインがある。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと整列していて、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。
「相補性決定領域、」「超可変領域、」または「CDR」という表現は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域に見られる、1つ以上の超可変領域または相補性決定領域(CDR)を指す(Kabat, E. A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., (1987)を参照のこと)。これらの表現には、Kabatらによって定義される超可変領域(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Kabat E.,et al.,US Dept. of Health and Human Services,1983)または抗体の三次元構造中に見られる超可変ループ(Chothia and Lesk, J Mol. Biol.196 901−917(1987))も含まれる。それぞれの鎖の中でCDR同士はフレームワーク領域によって密接な関係に保たれており、別の鎖のCDRと一緒に、抗原結合部位の形成に寄与している。CDRには、選択性決定領域(SDR)と説明されてきたいくつかのアミノ酸があり、SDRは、抗体と抗原が相互作用上で、CDRが接触するのに重要な残基を表している(Kashmiri, S., Methods,36:25−34 (2005))。
「フレームワーク領域」または「FR」という表現は、抗体の軽鎖と重鎖の可変領域に含まれる、1つ以上のフレームワーク領域を指す(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,(1987)を参照のこと)。これらの表現には、抗体の軽鎖と重鎖の可変領域中のCDR同士の間に挿入したアミノ酸配列の領域も含まれる。
「安定なコピー数」という表現は、実質的に一定のコピー数の遺伝子(例えば抗体鎖の遺伝子)を、長期間にわたって(例えば少なくとも1日、少なくとも1週間、もしくは少なくとも1ヶ月、またはそれ以上)あるいは何世代にもわたる増幅の間(例えば、少なくとも30、40、50、75、100、200、500、もしくは1000世代、またはそれ以上)維持している宿主細胞を指す。例えば、所定の時点または所定の世代で、少なくとも50%、このましくは少なくとも70%、75%、85%、90%、95%、またはそれ以上の培養中の細胞が、出発細胞と同数のコピーの遺伝子を維持し得る。好ましい実施形態では、宿主細胞は、安定なコピー数の、所望のマルチサブユニット複合体(例えば、抗体)の各サブユニットを含む。
「安定に発現する」という表現は、遺伝子またはタンパク質(例えば抗体)の発現レベルを、長期間にわたって(例えば少なくとも1日、少なくとも1週間、もしくは少なくとも1ヶ月、またはそれ以上)あるいは何世代にもわたる増幅の間(例えば、少なくとも30、40、50、75、100、200、500、もしくは1000世代、またはそれ以上)、同程度に維持している宿主細胞を指す。例えば、所定の時点または所定の世代で、遺伝子またはタンパク質の生産率または収量は最初の生産率の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、75%、85%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。好ましい実施形態では、宿主細胞は、所望のマルチサブユニット複合体(例えば、抗体)を安定に発現する。
以下の実施例は、本発明のどのように作成し、使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示するものであり、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。使用した数字(例えば量、温度、濃度など)に関しては正確さを心がけたが、ある程度の実験誤差や偏差は許容されるべきである。別段の指定のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり;および圧は大気圧かまたは大気圧付近である。
実施例1
重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることによる、抗体収量の増加
この実施例では、重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることで、P.pastoris中で産生される組換え抗体の収量を非常に高めることができることを示す。具体的には、この実施例では、本方法によって、そのような株を生成する標的指向化交配ができることを示す。それぞれの株が異なるコピー数の重鎖および軽鎖遺伝子に由来するヒト化抗体を発現している、二倍体P.pastoris株のパネルを生成し、高い収量で抗体を産生する遺伝子コピー数の組み合わせを同定するために試験を行った。図1では、二倍体株のパネルを効率的に生成するのに用いた方法の概要を示している(方法の詳細については下記実施例4を参照のこと)。簡単に説明すると、分泌シグナルに融合させたプロモーターの制御下にある重鎖遺伝子または軽鎖遺伝子のいずれかをコードしている遺伝子で半数体株を形質転換した。P.pastorisゲノム中の特定の遺伝子座に組み込むために、標的遺伝子座と相同な配列中でプラスミドを直線化した。この実施例では、構築物をpGAP、3’AOX TTおよびHIS4 TT遺伝子座に組み込んだが、他の遺伝子座も使用することができる。直列に組み込まれた複数の抗体鎖遺伝子を含む形質転換体をサザンブロットで同定し、規定のコピー数の軽鎖または重鎖遺伝子を含む半数体株を選抜してそれ以降の実験に使用した。必要に応じて、同じ抗体鎖のコピーをさらに、この半数体株の第二の遺伝子座に組み込んだ。これらの半数体株を交配することで、規定の数の軽鎖および重鎖遺伝子を様々な組み合わせで含む二倍体株を効率的に生成した。交配した後、これら二倍体株中の遺伝子コピーの数をサザンブロット法で確認した。
これらの方法を用いて、3種類のヒト化抗体、Ab−A、Ab−B、およびAb−Cをコードしている重鎖および軽鎖遺伝子を含む二倍体P.pastoris株を生成した。抗体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列を図38(Ab−A)、図39(Ab−B、および図40(Ab−C))に示す。Ab−A、Ab−BおよびAb−Cは、3種類の別々のウサギ抗体から誘導したヒト化抗体である。Ab−Cは、Ab−AおよびAb−Bの抗原とは別の抗原に対する特異性を有する。
二倍体株を下記表1、2、および3にまとめた。それぞれの株の識別番号の前についている接頭語は産生される抗体を表しており、HおよびLの後に続く数字はそれぞれ、組み込まれた重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数を指す。例えば、Ab−A−H3×L4という名前の株はAb−A抗体を発現し、3コピーの重鎖遺伝子と4コピーの軽鎖遺伝子を含んでいる。pGAP、3’AOX TTおよびHIS4 TTという見出しの列には、それぞれの遺伝子座に組み込まれた遺伝子のコピー数を示した。2回挙げられている遺伝子座はそれぞれ、相同染色体(それぞれの親半数体株に由来する)への組み込みを反映している。
選抜した二倍体株を、実施例5に記載したのと同様に、バイオリアクター中で、抗体を産生し、分泌する条件で培養した。各抗体鎖をGAPプロモーターで制御した。この場合、抗体鎖の発現は、グリセロール炭素源を、一定量のグルコースをエタノールへと変換する(酸素利用率が低い)グルコース炭素源に置き換えることで亢進した。各抗体鎖遺伝子を分泌配列にインフレームで融合させることで、発現した抗体を培地中に分泌させた。培養開始からおよそ90時間後(T90)に培地を回収し、実施例6に記載したのと同様に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って抗体の収量を決定した。
下記表1の右列に、選択したAb−A発現株におけるT90での相対的な抗体収量を示し、これをグラフ化したものを図2に示している。H3×L3株を基準とし、この株での発現を100%に設定した。全ブロスの抗体力価は基本的に、抗体のコピー数が増えるほど上昇し、Ab−A−H3×L4からAb−A−H3×L3、Ab−A−H4×L4、Ab−A−H4×L6、Ab−A−H5×L4、Ab−A−H5×L5、およびAb−A−H5×L7という順になった。全3種類のAb−A−H5株での収量は、Ab−A−H4株のものよりも多く、Ab−A−H4株の収量は、2つのAb−A−H3株を上回っていた。重鎖のコピー数が同じ株を見てみると、総収量は、軽鎖のコピー数が増えるほど上昇したが、ただし、H3×L4株の収量はH3×L3株の収量よりもおよそ13%低かった。
Ab−Bを発現している株についても同様の結果が得られた。これ下記表2の右列で示しており、図3にグラフを示す。H3×L3株を基準として使用し、その発現量を100%に設定した。Ab−Aと同様に、Ab−Bの収量も基本的に、抗体のコピー数が増えるほど上昇し、Ab−B−H3×L3からAb−B−H3×L4、Ab−B−H4×L3、Ab−B−H4×L5、およびAb−B−H4×L6の順となった。全3種類のAb−B−H4株の収量は、Ab−B−H3株の収量を上回った。
表3の右列および図4のグラフに示すように、Ab−C抗体の収量も同様に、抗体のコピー数が増えるほど増加した。抗体の収量は基本的に、抗体のコピー数とともに増加し、Ab−C−H3×L4からAb−C−H4×L3、Ab−C−H4×L4、Ab−C−H4×L5、Ab−C−H5×L5、Ab−C−H5×L4、Ab−C−H5×L6、およびAb−C−H6×L5の順となった。重鎖のコピー数が5以上になると、収量の増加は比較的少なくなった。加えて、Ab−C−H6×L6株の収量は、Ab−C−H6×L5株とAb−C−H5×L6株の収量よりも実質的に少なく、この株の収量は、Ab−C−H4×L4株と同程度であった。
これらの結果は、重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることで、3種類の異なる抗体の収量を非常に増加させることができるということを示している。さらにこの結果は、規定したコピー数の重鎖遺伝子を含んでいる半数体株と規定したコピー数の軽鎖遺伝子を含んでいる半数体株とを交配することで、様々な(規定した)コピー数の重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を含む株のパネルが生成できることを示している。示した株の中では、収量が2倍を上回る場合もあった(例えば、図2のH3×L4とH5×L7を比較されたい)。この実施例では、より少数のコピー数の遺伝子を含む株は扱わなかったが、そのようなコピー数がさらに少ない株と比較しても、収量の改善率はより高いと予測される。さらに、ここで示したものよりも遺伝子のコピー数をさらに増やすことで、さらなる収量の改善が達成可能であるとも考えられるが、コピー数が最適な値を超えてしまえば収量が低下する可能性もある。
実施例2
重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることによる、抗体純度の向上
この実施例では、重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることで、P.pastoris中で産生される組換え抗体の純度を非常に高めることができることを示す。規定したコピー数の重鎖遺伝子を含んでいる半数体株と規定したコピー数の軽鎖遺伝子を含んでいる半数体株とを交配することで、様々な(規定した)コピー数の重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を含む株を生成した。比較した株同士の間では、望ましくない副産物の総生産量がおよそ20%低下した。加えて、最も量の多い単一の副産物の生産量は、比較した株の間で、およそ82%低下した。
抗体純度は培地中に分泌された抗体をプロテインAで精製し、その後、実施例6に記載にした方法でHPLCを行うことによって決定した。試料は、組み合わさった抗体複合体の保持していると見込まれる天然の状態を維持しており、組み合わさった複合体に影響をおよぼす異常(例えば不正確な化学量論、不適切な配置、凝集、プロテアーゼ開裂、および他の異常)の検出が可能であった。予想される抗体に相当するピーク(保持時間約16.7分)中で観察されるシグナル全体の割合を測定することで、総体的な純度を決定した。Ab−A−H4×L4株(図5Aおよび図5Bの拡大図)ならびにAb−A−H4×L6株(図5Cおよび図5Dの拡大図)から調製したAb−Aの典型的なHPLCのチャートを示す。各チャート中で検出された全てのシグナルを、主要ピークの前の溶出液に対応する部分(保持時間0〜14.6分)、主要な産物変異体ピーク(保持時間15.5分)、予測した抗体のピーク(保持時間16.7分)、および予測した抗体のピークの後の溶出液に対応する部分(18〜22分)(図5E)の4つの領域に分けて定量した。Ab−A−H4×L4株から調製した抗体の純度は約83.7%であり、Ab−A−H4×L6株から調製した抗体の純度は約87.0%であった。この方法では、軽鎖遺伝子のコピー数を増やすことで、不純物の総体的なレベルが約20%低下した(16.3%〜13%)。主要な産物変異体のピーク(15.5分保持時間)は、軽鎖遺伝子のコピー数を増やすことで、8.81%〜1.58%へ、劇的に減少した(82%の減少)。
Ab−B調製物のHPLC解析からも同様の結果が得られた。Ab−B−H4×L3株(図6Aおよび図6Bの拡大図)ならびにAb−B−H4×L5株(図6Cおよび図6Dの拡大図)から調製した抗体の、典型的なHPLCのチャートを示す。Ab−B−H4×L3から調製した抗体の純度は約90.05%であり、Ab−B−H4×L5から調製した抗体の純度は約92.18%であった。この方法では、軽鎖遺伝子のコピー数を増やすことで、不純物のレベルが約21%に低下した(約10%〜約7.8%)。Ab−Aと同様に、主要な産物変異体のピークの保持時間は約15.5分であった。この主要な変異体の量は、軽鎖遺伝子のコピー数を増やすことで約59%に低下した(6.26%〜2.54%)(図6E)。
Ab−C調製物の純度についてもHPLCで解析した。Ab−C−H3×L3株(図7Aおよび図7Bの拡大図)ならびにAb−C−H5×L5株(図7Cおよび図7Dの拡大図)から要請した抗体の典型的なHPLCのチャートを示す。主要な産物変異体のピークの保持時間は15.2〜16.1分であった。この主要な変異体の量は、軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子のコピー数を増やすことで約39%に減少した(6.55%〜4.00%)(図7E)。
Ab−A(図8)、Ab−B(図9)、およびAb−C(図10)調製物に含まれる産物変異体もタンパク質ゲルで可視化した。試料を変性・還元条件に置いたため、この方法では個々の抗体鎖の構成に影響を及ぼす異常を検出することができるが、他の種の異常(例えば、不正確な化学量論を有する複合体、凝集、プロテアーゼ開裂、不適切なジスルフィド結合、または他の配置に関する誤り)を検出することはできないと考えられる。実施例7に記載したように抗体をプロテイン−Aアフィニティクロマトグラフィーで精製し、その後、SDS−PAGEで分離して、クマシーブルーで染色した。予測していた通り、主要なバンドは、予測した分子量の重鎖と軽鎖に対応していた(図8中で、「標準物質」として純粋な抗体の標準物質を泳動したレーンによって確認した)。各試料中に、単一で主な生産に伴う変異体を容易に観察することができる(図8、9、および10。「移動度の小さい生産に伴う変異体」とした矢印)。移動度の小さい生産に伴う変異体の電気泳動での移動度は、重鎖よりも小さい。この生産に伴う変異体の量は、軽鎖のコピーを数多く含む株から調製した抗体では、目に見えて減少した。具体的には、Ab−A−H4×L6株から調製したAb−AではAb−A−H4×L4株に由来するものよりも(図8)、Ab−B−H4×L6から調製したAb−BではAb−B−H4×L5株に由来するものよりも(図9)、Ab−C−H5×L5株から調製したAb−CではAb−C−H3×L3株に由来するものよりも、生産に伴う変異体の量が少なかった。
従って、3種類の異なる抗体に関し、不純物を検出するための2種類の相補的な方法(HPLCおよびSDS−PAGE)の両方で、抗体軽鎖のコピー数を増やすと、抗体の純度が高まることが示された。以降の実験では(下記実施例3に記載)、この両方の方法によって検出された主な生産に伴う変異体の構成成分が、グリコシル化された重鎖変異体(「グリコ−高分子変異体」)であることが分かった。
実施例3
重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることによる、グリコシル化された重鎖変異体の生産の減少
この実施例では、これまでの実施例における組換え抗体の調製物中に認められた、最も量の多い生産に伴う変異体を解析する。具体的には、この生産に伴う変異体が、少なくとも部分的にヒトFcを含有する、グリコシル化されたポリペプチド(「グリコ−高分子変異体」)であることが分かった。グリコ−高分子変異体の生産量が、軽鎖遺伝子のコピーを数多く含む株で減少することが示された。糖タンパク質は、グリコシル化されていない形態のタンパク質よりも免疫原性が高いため、いくつかの用途に対しては、そのようなタンパク質の生産量を減らすために宿主細胞を操作することが特に有益である場合がある。
これまでの実施例で記載してきた移動度の小さい生産に伴う変異体が糖タンパク質であることが、レクチン含有樹脂に対するその特異的な結合によって示された。2種類のAb−B調製物(H4×L5株とH4×L3株由来)から糖タンパク質を精製し、実施例8に記載の方法により、SDS−PAGEとウェスタンブロットで解析した。図11Aに、クマシーブルーで染色したSDS−PAGEによる、負荷した材料(左図、「ロード」)とレクチンカラムからの溶出液(右図、「レクチン溶出液)の解析結果を示す。レクチンカラムからの溶出液では、移動度の小さい生産に伴う変異体(矢印)、および軽鎖ポリペプチドと重鎖ポリペプチドの、3つの主要なバンドが検出された。移動度の小さい生産に伴う変異体(矢印)は、負荷した材料(図11A、左図)と比較するとレクチンカラムからの溶出液中で非常に濃縮されていた(図11A、右図)。これらの結果は、移動度の小さい生産に伴う変異体が糖タンパク質であったことを示している。加えて、軽鎖ポリペプチドと重鎖ポリペプチドと一緒に精製されてきたことは、移動度の小さい生産に伴う変異体がこれらのポリペプチドと物理的に関連があることを示唆している。図11Bでは、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した抗HuFc抗体(ヤギ抗HuFC−HRP、1:10,000)を使ったウェスタンブロットにより、負荷した材料(左図、「ロード」)とレクチンカラムからの溶出液(右図、「レクチン溶出液」)をさらに解析した結果を示している。この抗体は、予測した通り、ヒト重鎖ポリペプチドに含まれるFc配列に特異的に結合した(図11B、下のバンド)。移動度の小さい生産に伴う変異体が特異的に検出された(図11B、矢印)ことは、これが重鎖のFc配列を少なくとも部分的に含んでいたことを示している。さらに、ウェスタンブロットにおける移動度の小さい生産に伴う変異体のシグナルは、レクチンカラムからの溶出液中で高く濃縮されていたことから、レクチンカラムで濃縮されたバンドとFc含有バンドが同じものであることが確認された。そのため我々は、この移動度の小さい生産に伴う変異体が少なくとも重鎖のFc部分を含んでいる糖タンパク質であり、軽鎖と重鎖を含む複合体と関連している可能性があると結論付け、これを本明細書では「グリコ−高分子変異体」と呼ぶことにする。
グリコ−高分子変異体の相対量もAb−B−H4×L5に由来する調製物ではAb−B−H4×L3に由来するものよりも減少していることが分かった。それぞれの株から調製し、プロテイン−Aで精製した抗体をクマシーブルーで染色したゲル上で比較した(図11A、左図)。グリコ−高分子変異体の量は、H4×L5の調製物で目に見えて減少していた。これらの結果と一致して、H4×L5調製物中のグリコ−高分子変異体の量は、レクチンカラムからの溶出液でもH4×L3調製物よりも目に見えて減少していた(図11A、右図)。グリコ−高分子変異体を抗HuFc抗体を使って検出した場合にも同じ結果となった(図11B)。これらの結果は、抗体鎖遺伝子のコピー数を変化させることで、グリコ−高分子変異体の生産量を調節することができることを示している。
次に、レクチンで精製したAb−B調製物を下記実施例8に記載した方法を使って、HPLCで解析した。レクチンで精製する前には、H4×L3株(図12Aおよび図12Bの拡大図)ならびにH4×L5株(図13Aおよび図13Bの拡大図)の両方に由来する調製物の主要なピークは、予測した抗体(保持時間:約16.7分)に対応していた。この両方の調製物において、最も量の多い生産に伴う変異体は、保持時間が約15.5分のところで観察された。レクチンで精製した後、生産に伴う変異体は高く濃縮され、H4×L3株(図12Cおよび図12Dの拡大図)およびH4×L5株(図13Cおよび図13Dの拡大図)由来の調製物中で、より優勢になっていた。レクチンカラムからの溶出液中で高く濃縮されたことから、還元タンパク質ゲルを使って観察したこのグリコ−高分子形態の産物が、保持時間が15.5分の生産に伴う変異体の構成成分であると結論付けた。
図12と図13で見られた、予測したピークとグリコ−高分子のピークに含まれていた画分の総量を下記表4に示す。抗体の純度およびグリコ−高分子形態の割合を、レクチンでの精製を行う前の抗体調製物(「ロード」の列)と比較して定量的に示している。H4×L5株に由来する調製物中でのグリコ−高分子形態の相対量は2.7%で、H4×L3株由来の調製物での量(6%)の半分未満であった。
まとめると、これらの結果は重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数を変化させることで、グリコシル化された重鎖の割合を変化させることができることを示している。従って、軽鎖および重鎖遺伝子のコピー数を操作することで、必要に応じてグリコシル化された抗体の生産量を減少させることができ、また、このことは、選抜した半数体株を直接交配させることで達成することができる。
実施例4
様々なコピー数の抗体遺伝子を含む細胞パネルの生成方法
この実施例では、異種マルチサブユニットタンパク質のそれぞれのサブユニットをコードしている遺伝子を、様々なコピー数で含んでいる形質転換した酵母細胞のパネルを生成するための方法、および様々なコピー数の遺伝子に由来するマルチサブユニットタンパク質を発現している二倍体細胞のパネルを生成するために形質転換細胞を交配する方法を説明する。この株生成法の概要を図1に示す。
重鎖および軽鎖用ピキア・パストリス発現ベクターの構築
軽鎖および重鎖の断片を工業的に合成し、pGAP発現ベクター中にサブクローニングした(図14、15、18、および20)。pGAP発現ベクターはGAPプロモーターを使って免疫グロブリン鎖の発現を誘導する。さらに、このベクターは一般的なエレメント、例えば細菌の複製起点や抗生物質耐性の発現カセットも含んでいる。Ab−AとAb−Bの場合には、GAP遺伝子座への標的組み込みにGAPプロモーター配列(長さ約500塩基対)を使用した。このベクターは、P.pastoris中で抗生物質G418に対する耐性を付与するカナマイシン耐性遺伝子のコピーを含んでいる。Ab−Cの場合には、AOX1転写終結配列(長さ約350塩基対)を使用して、この遺伝子座への標的組み込みを行った。このベクターは、抗生物質でアルゼオシン(登録商標)(フレオマイシン)への耐性を付与するShble遺伝子のコピーを含んでいる。G418およびゼオシン(登録商標)は、ゲノム中に所望の発現ベクターが組み込まれた株の選抜手段となる。最終的に、Ab−A、Ab−BおよびAb−Cの2回目の組み込みに使用したベクターはHIS4転写終結因子周辺の660塩基対のP.pastorisゲノム配列を含み、このベクターをHIS4遺伝子座への標的組み込みに使用した(図13、14、16、および17)。Ab−AおよびAb−Bの場合、2回目の形質転換に使用したベクターはShble遺伝子のコピーを含む。Ab−Cの場合、2回目の形質転換に使用したベクターは、カナマイシン耐性遺伝子のコピーを含む。
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の半数体met1宿主株および半数体lys3宿主株への発現ベクターの導入
Pichiaプロトコール、SecondEdition(方法in分子生物学、Cregg、JM、Ed。2007.HumanaPress、Totowa、NJ)を改変したプロトコールに従って、P.pastorisの細胞をエレクトロポレーション法で形質転換した。形質転換した株をJC231(Lys−)またはJC239(Met−)で誘導した。各宿主株用に、3-mLのYPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース)培養にP.pastorisのコロニーを播種し、撹拌しながら30℃で一晩生育させた。次に、これらの培養を、トムソン社製の2Lの振とうフラスコに入れた400-mLのYPD培養に加えて、出発材料のOD600が0.01になるようにした。OD600が1.0〜2.0に達したら細胞を回収し、0.2MのHEPES(pH8.0)と0.025MのDTTを含有する100mLのYPD培地に再懸濁した。細胞を30℃で30分間インキュベートし、1Mの冷ソルビトールで容量を最大400mLにした。細胞を400mLの冷ソルビトール(1M)中で1回、次いで30mLの冷ソルビトールで3回洗浄し、その後、最終容量1mLの冷ソルビトール(1M)に再懸濁した。
Ab−AまたはAb−BのGAPプロモーターへの好ましい組み込みのために、形質転換する前に各ベクター(図14〜15)をAvrII制限エンドヌクレアーゼを使ってGAPプロモーター配列中で切断して直線状にし、ベクターのP.pastorisゲノムのGAPプロモーター遺伝子座への組み込む誘導する。Ab−CのAOX1転写終結因子への好ましい組み込みには、各ベクター(図18〜19)をBsiWI(重鎖の場合)またはPvuII(軽鎖の場合)を使って3’AOX TT配列内で切断して直線状にした。Ab−AおよびAb−Bの場合、G418含有YPDS(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース、2%寒天、1Mソルビトール)寒天プレートで形質転換が上手くいった個体を選抜した。Ab−Cの場合には、ゼオシン(登録商標)含有YPDS寒天プレートで形質転換が上手くいった個体を選抜した。これは、第一の遺伝子座への組み込みを意味する。Ab−AおよびAb−C場合、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して、重鎖または軽鎖のコピー数がより多いクローンの割合を高めた。簡単に説明すると、形質転換プレートを掻き出しておよそ5mLのPBSに入れた。重鎖または軽鎖のいずれかに特異的な蛍光検出抗体で細胞を染色した。陽性の細胞は、目的の遺伝子が分泌シグナルに融合していたとしても、FACSによって検出可能であった。これは明らかに、一定量のタンパク質が少なくとも一過的には細胞表面に保持されたためである。染色された細胞のうち、最も良かった20〜40%を保存し、これを25mLのBYED(3%酵母抽出物、4%無水デキストロース、1.34%酵母窒素基本成分、0.004%ビオチン、および100mMリン酸カリウム)振とうフラスコ培養に播種した。振とうしながら、30℃で一晩生育させた後、細胞を回収し、染色し、FACSを使用して2回濃縮した。染色された細胞のうち、最も良かった10〜20%の細胞をG418(Ab−Aの場合)またはゼオシン(登録商標)(Ab−Cの場合)を含むYPDプレート上で画線培養し、単一のコロニーを得た。Ab−Bについては、FACS濃縮アッセイは行わなかった。
標的遺伝子座に直列状に組み込まれた、様々なコピー数の構築物(図22に図示)。半数体株の重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を、サザンブロット解析で決定した。簡単に説明すると、組み込み部位に隣接した配列を切断する制限酵素でゲノムDNAを消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、膜に移し、組み込んだ配列を含むプローブにハイブリダイズさせた。組み込まれたコピー数が多くなるにつれて、制限酵素断片の大きさは直線的に大きくなる(図22を参照のこと)。組み込む前のゲノムの制限酵素断片の大きさがYで、組み込んだ配列の長さがXだとすると、Nコピーを組み込んだあとの断片の大きさはY+NXとなる。この関係に基づいて、検出された断片の長さから、各形質転換体のコピー数を決定した。
次に、所望のコピー数を含む半数体株を交配し、2つの栄養要求性マーカー(つまりリシンとメチオニン)を含まないBYNB(1.34%酵母窒素基本成分、2.5%寒天、2%デキストロース、0.1Mリン酸カリウム、pH6.0)寒天プレートにおける生育能力によって選抜した。その後、得られた二倍体クローンをサザンブロットで解析して、重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数を確認した。完全長モノクローナル抗体を発現している二倍体クローンはさらに、4%の酵母抽出物を含有する1mLのBSM(基礎塩類培地、10g/Lクエン酸ナトリウム二水和物、36.4g/Lリン酸一アンモニウム、18.2g/L硫酸カリウム、12.8g/Lリン酸二水素カリウム、3.7g/L硫酸マグネシウム七水和物、40g/Lデキストロース、40g/L酵母抽出物、4.35mL/LPTM1溶液、pH6.0)を入れた深底プレートで48時間生育させることで解析した。次に、バイオレイヤー干渉プロテインAバイオセンサー(Octet、ForteBio)を要して、上清中の抗体濃度を定量した。
ゲノム中の第二の遺伝子座に組み込むには、上述したプロトコールの通りに、規定したコピー数の重鎖または軽鎖を含む半数体株を使って、形質転換用のコンピテント細胞を調製した。HIS4 TT遺伝子座への好ましい組み込みには、Sca1制限エンドヌクレアーゼを使って、それぞれの発現ベクター(図16〜17および20〜21)をHIS4 TT組み込み配列内で切断して直線状にし、ベクターのその遺伝子座への組み込みを誘導した。Ab−AおよびAb−Bの場合には、ゼオシン(登録商標)を含有するYPDS寒天プレートで、形質転換が上手くいった個体を選抜した。Ab−Cの場合には、G418含有YPDS寒天プレートを使って、形質転換が上手くいった個体を選抜した。サザンブロット法により、HIS4 TT遺伝子座に組み込まれた重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子のコピー数を決定した。半数体株を交配させ、上述したように二倍体の株を選抜した。最後にサザンブロットを行って、組み込んだ遺伝子座それぞれでの重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を確認した。プロテインAバイオセンサーでクローンを選抜し、発現をモニターした(Octet、ForteBio)。
サザンブロット法
半数体株の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子のコピー数をサザンブロット解析で決定した。YPD寒天プレートから単一のコロニーを選択し、これを3mLのYPD培養に播種した。培養を振とうしながら30℃で一晩、飽和するまでインキュベートした。各培養のうちの1.8mLからゲノムDNAをMasterPure Yeast DNA Purification Kit (Epicentre)を使って、製造業者によるプロトコールに従って抽出した。pGAP遺伝子座については、1μgのDNAをClaIで消化し、0.8%のTAEアガロースゲルで分離した。電気泳動した後、ゲルを変性緩衝液(0.5M NaOH;1.5M NaCl)で45分間、中和緩衝液(0.5M Tris−HCl、pH7.2;1.5M NaCl;1mM EDTA)で30分間処理した。その後DNAを、正に荷電したナイロン膜(BioRad)に毛細管現象によって移し、UVクロスリンカーで固定した。pGAP配列に対応するジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブで、膜を一晩、41℃でハイブリダイズさせた。ストリンジェンシーの高い条件で膜を洗浄し、DIG High Prime Labeling and Detection Kit(Roche Applied Science)を使って検出した。膜をX線フィルムに曝露することで、ハイブリダイズしたバンドを可視化した。
3’AOX TTまたはHIS4 TT遺伝子座に組み込まれた重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を、上述した工程にいくつかの変更を加えて、サザンブロットで決定した。AOX1転写終結因子遺伝子座については、HindIII制限エンドヌクレアーゼを使ってゲノムDNAを消化し、3’AOX TT配列に対応するDIG標識プローブをハイブリダイゼーションに使用した。HIS4 TT遺伝子座の場合には、SspI制限エンドヌクレアーゼを使ってゲノムDNAを消化し、HIS4 TT配列に対応するDIG標識プローブをハイブリダイゼーションに使用した。
前述した方法を用いて、様々なコピー数の個々のサブユニットを含む、形質転換体のパネルを得る。例えば、H3、H4、H5およびH6という名前をつけた株はそれぞれ、3、4、5および6コピーの抗体重鎖を含み、L3からL7の名前をつけた株はそれぞれ、3〜7コピーの抗体軽鎖を含む。次にこれらの形質転換体を交配して、様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含む二倍体を得る。必要に応じて、遺伝子のコピー数をサザンブロットで再確認する。既知で、様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含む二倍体細胞をこのようにして生成する。必要に応じて、目的の抗体を発現しているクローンをバイオレイヤー干渉法プロテイン−Aバイオセンサーで選抜して、発現をモニタリングした(Octet、ForteBio)。通常、得られた半数体および/または二倍体株の凍結ストックを作成して、抗体の収量、産生率、および純度を評価するために形質転換体を増殖させる。
Ab−Aをコードしている様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含むP.pastoris株のパネルの生成
上述した方法により、様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含むAb−Aを発現させるためのP.pastoris株のパネルを生成した。2〜5コピーの重鎖遺伝子と2〜7コピーの軽鎖遺伝子を含む二倍体株が合計13株得られた。最初に、規定したコピー数の軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子を含む半数体株を生成し(それぞれの半数体株は、Lys−またはMet−のいずれかである)、その後、これらの半数体株を交配に使用して、既知のコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含む二倍体の原栄養株を生成した。発現カセットとしては、それぞれが、グリセルアルデヒド脱水素酵素遺伝子(GAP遺伝子)プロモーター、それに融合させた分泌シグナルのコード配列、その下流に発現される遺伝子の配列、さらにその下流にP.pastorisアルコール酸化酵素I遺伝子(AOX1)由来のP.pastoris転写終結シグナルのコード配列を単独で、またはHIS4 TT配列と組み合わせたものから構成されているものを使用した(図14〜21に図示する)。
Ab−Aの重鎖をコードしている遺伝子がpGAP遺伝子座に組み込まれた形質転換体を、Hc47〜Hc60の識別番号に割り当てた。精製したゲノムDNAを、pGAP遺伝子座に隣接した部位で切断する制限酵素で消化し、サザンブロット法(標識したpGAP配列を使用した)で、上述したように、組み込まれたコピーの数を決定した(図23)。最も右側のレーン1とレーン2は、標識されたDNAラダーを含むものである(断片の大きさはブロットの左端に記載した)。レーン2〜レーン15はそれぞれ、Hc47〜Hc60に対応している。ブロットの右端のA〜Cの表示はそれぞれ、組み込まれた配列が1〜3コピーの株に由来する、予想される断片の大きさを示している。Hc58およびHc51株で検出された断片は、これらの株がそれぞれ、2および3コピーの重鎖遺伝子を含んでいることを示した。Hc58およびHc51を交配用に選抜した。
同様に、様々なコピー数のAb−Aの軽鎖をコードしているゲノムの遺伝子が、これもまたpGAP遺伝子座に組み込まれている、半数体P.pastoris株のパネルを生成した。この株は、Lc1〜Lc27という識別番号に割り当てた。pGAP遺伝子座に隣接した部位を切断する制限酵素で精製したゲノムDNAを消化し、サザンブロット法(標識したpGAP配列を用いた)で、それぞれの株に組み込まれたコピーの数を決定した(図24)。最も右側のレーン1とレーン22は、標識されたDNAラダーを含むものである(断片の大きさはブロットの左端に記載した)。レーン2〜21および23〜29はそれぞれ、Lc1〜Lc27の株に対応している。ブロットの右端のA〜Fの表示はそれぞれ、組み込まれた配列が1〜5コピーの株、および6コピー以上の株に由来する、予想される断片の大きさを示している。Lc17、Lc7、およびLc27株で検出された断片から、これらの株がそれぞれ、2、3、および4コピーの軽鎖遺伝子を含んでいることが分かった。Lc17、Lc7、およびLc27株を交配用に選抜した。
パネル中で利用可能な重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数をさらに増やすために、第二の遺伝子座に遺伝子のコピーをさらに組み込んだ。そのため、特異的に組み込まれた遺伝子のコピー数の合計は、両方の遺伝子座に組み込まれたコピー数を合算することで算出される。具体的には、pGAP遺伝子座に既に3コピーのAb−A重鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Aの重鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込んだ。それによって、重鎖遺伝子がさらに1または2コピー導入され、合計で4または5コピーとなった。同様に、pGAP遺伝子座に既に3コピーのAb−A軽鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Aの軽鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込み、それによって、軽鎖遺伝子をさらに1〜4コピー導入して、合計で4〜7コピーとした。
その後、重鎖遺伝子を含む株と軽鎖遺伝子を含む株を交配することで、二倍体株を生成した。2〜5コピーの重鎖遺伝子と2〜7コピーの軽鎖遺伝子を含む、それぞれ異なる株を合計で13株生成した。各二倍体株については、重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を株の識別番号で示しており(例えば、Ab−B−H4×L5は4コピーの重鎖遺伝子と5コピーの軽鎖遺伝子を表している)、また、どの遺伝子座から遺伝子が発現しているかは、上記表1で示している。
交配によって各二倍体株の単離体を複数生成し、コピー数をサザンブロット法で確認して、その後の解析に使用する特定の単離体を選抜した。図25では、Ab−A−H3×L3、Ab−A−H3×L4、Ab−A−H2×L3、およびAb−A−H2×L2株(それぞれ、レーン2〜6、7〜11、12〜15、および16〜19)の候補株について、遺伝子のコピー数を確認するために行ったサザンブロットの結果を示している。アスタリスクで示した株をその後の解析用に選抜した。レーン1は、標識されたDNAラダーを含むものである(断片の大きさはブロットの左端に記載した)。ブロットの右端のA、C、およびEの表示はそれぞれ、2〜4コピーの軽鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、BとDの表示はそれぞれ、2または3コピーの重鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図26は、表1に示している株の単離体について、pGAP遺伝子座での遺伝子コピー数を確認するために行ったサザンブロットの結果を示しており、アスタリスクで示している株が、今後の解析用に選抜した株である。ブロットの右端のA、C、およびEの表示はそれぞれ、1〜3コピーの重鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、BおよびDの表示は、2または3コピーの軽鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示している。同様に、図27では、HIS4 TT遺伝子座に抗体遺伝子が組み込まれていると予想した株について(表1で同定した)、この遺伝子座に組み込まれた遺伝子のコピー数を確認するために行ったサザンブロットの結果を示している。ブロット右側のAの表示は、内因性のHIS4 TT遺伝子座を含む断片の予想サイズを示しており、B、D、F、およびGの表示はそれぞれ、1〜4コピーの軽鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示し、CおよびEの表示は、1または2コピーの重鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示している。
Ab−Bをコードしている様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含むP.pastoris株のパネルの生成
Ab−Bの重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子(pGAP遺伝子座を標的とした)を含む半数体株を、Ab−Aについて記載した方法と本質的に同じ方法によって生成した。サザンブロット(pGAP配列プローブを使用して)により、Hc3およびHc4株がそれぞれ、2および3コピーのAb−B重鎖遺伝子を含み(図28A)、Lc5、Lc11、Lc12、およびLc9株がそれぞれ、2〜5コピーのAb−B軽鎖遺伝子を含む(図28B)ことを同定した。図28Aのブロットの右端のA、C、E、およびGの表示はそれぞれ、pGAP遺伝子座に組み込まれた、0〜3コピーのAb−B重鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、図28Bのブロット左側のA、B、D、F、H、およびIの表示はそれぞれ、pGAP遺伝子座に組み込まれた0〜5コピーのAb−B軽鎖遺伝子を含む株に由来する、予想される断片の大きさを示している。アスタリスクは、その後の交配のために選抜した半数体株を示している。
パネル中で利用可能な重鎖遺伝子のコピー数をさらに増やすために、pGAP遺伝子座に既に3コピーのAb−B重鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Bの重鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込んだ。それによって、重鎖遺伝子がさらに1または2コピー導入され、合計で4または5コピーとなった。同様に、pGAP遺伝子座に既に3コピーのAb−B軽鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Bの軽鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込み、それによって、軽鎖遺伝子をさらに1〜4コピー導入して、合計で4〜7コピーとした。
その後、重鎖遺伝子を含む株と軽鎖遺伝子を含む株を交配することで、二倍体株を生成した。2〜5コピーの重鎖遺伝子と2〜7コピーの軽鎖遺伝子を含む、それぞれ異なる株を合計で14株生成した。各二倍体株については、重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を株の識別番号で示しており(例えば、H4×L5は4コピーの重鎖遺伝子と5コピーの軽鎖遺伝子を表している)、また、どの遺伝子座から遺伝子が発現しているかは、上記表2で示している。これらの二倍体株中の遺伝子のコピー数を、図29〜30(pGAPプローブ)および図31(HIS4 TTプローブ)に示すサザンブロットで再確認した。それぞれの二倍体株について複数の単離体を生成した。図29〜31のアスタリスクは、その後の使用に選抜した単離体を示している。図29のブロット右側のA、C、およびEの表示はそれぞれ、1から3コピーのAb−B重鎖遺伝子がpGAP遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、B、D、F、およびGの表示はそれぞれ、2から5コピーのAb−B軽鎖遺伝子がpGAP遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図30のブロット右側のA、B、C、およびEの表示はそれぞれ、0〜3コピーのAb−B重鎖遺伝子がpGAP遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、AおよびDの表示は、0〜3コピーのAb−B軽鎖遺伝子がpGAP遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図31のA、C、およびEの表示はそれぞれ、0〜2コピーのAb−B重鎖遺伝子がHIS4 TT遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、A、B、D、F、およびGの表示はそれぞれ、0〜4コピーのAb−B軽鎖遺伝子がHIS4 TT遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。
Ab−Cをコードしている様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含むP.pastoris株のパネルの生成
様々なコピー数の軽鎖および重鎖遺伝子を含むAb−Cを発現させるためのP.pastoris株のパネルを、Ab−AおよびAb−Bについて記載した方法と本質的に同じ方法によって生成した。サザンブロット(3’AOX TT配列プローブを使用して)により、半数体株であるHc19、Hc25、Hc13、およびHc17がそれぞれ、1、2、3、および4コピーのAb−C重鎖遺伝子を含むこと(図32)、および、Lc7、Lc6、Lc11、Lc19、Lc15、およびLc17株がそれぞれ、1〜6コピーのAb−C軽鎖遺伝子を含むこと(図33)を同定した。図32のブロット右側のA、B、C、およびDの表示はそれぞれ、1から4コピーのAb−C重鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図33のブロット右側のA、B、C、D、E、およびFの表示はそれぞれ、1から6コピーのAb−C軽鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。アスタリスクは、その後の交配のために選抜した半数体株を示している。
パネル中で利用可能な重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数をさらに増やすために、第二の遺伝子座に遺伝子のコピーをさらに組み込んだ。そのため、特異的に組み込まれた遺伝子のコピー数の合計は、両方の遺伝子座に組み込まれたコピー数を合算することで算出される。具体的には、AOX1転写終結因子遺伝子座に既に3または4コピーのAb−C重鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Cの重鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込んだ。それによって、重鎖遺伝子がさらに1または2コピー導入され、合計で5または6コピーとなった。同様に、AOX1転写終結因子遺伝子座に既に3または4コピーのAb−C軽鎖遺伝子が組み込まれている株のHIS4 TT遺伝子座に、Ab−Cの軽鎖をコードしている遺伝子のコピーをさらに組み込んで軽鎖遺伝子をさらに2コピー導入して、合計5または6コピーとした。
その後、重鎖遺伝子を含む半数体と軽鎖遺伝子を含む半数体を交配することで二倍体株を生成した。3〜6コピーの重鎖遺伝子と3〜6コピーの軽鎖遺伝子を含む、それぞれ異なる株を合計で9株生成した。各二倍体株については、重鎖および軽鎖遺伝子のコピー数を株の識別番号で示しており(例えば、Ab−C−H4×L5は、4コピーの重鎖遺伝子と5コピーの軽鎖遺伝子を表している)、また、どの遺伝子座から遺伝子が発現しているかは、上記表3で示している。これらの二倍体株中の遺伝子のコピー数を、図34〜35(3’AOX TTプローブ)および図36(HIS4 TTプローブ)に示すサザンブロットで再確認した。それぞれの二倍体株について複数の単離体を生成した。図34〜36のアスタリスクは、その後の使用に選抜した単離体を示している。図34のブロット右側のBおよびDという表示はそれぞれ、3または4コピーのAb−C重鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、A、CおよびEの表示は、3から5コピーのAb−C軽鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図35のブロット右側のA、C、およびEの表示はそれぞれ、2から4コピーのAb−C重鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、BおよびDの表示はそれぞれ、3および4コピーのAb−C軽鎖遺伝子がAOX1転写終結因子遺伝子座に組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。図36のAの表示は、HIS4 TT遺伝子座にAb−C重鎖遺伝子も軽鎖遺伝子も組み込まれなかった株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、Bの表示は、HIS4 TT遺伝子座に2コピーのAb−C軽鎖遺伝子が組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示しており、そしてCの表示は、HIS4 TT遺伝子座に2コピーのAb−C重鎖遺伝子が組み込まれた株に由来する、予想される断片の大きさを示している。
Ab−C−H3×L3を発現している株は、多少異なる方法で構築した。ベクターをGAPプロモーター遺伝子座に組み込むため、形質転換する前に、各発現ベクター(図18-19)をpGAP配列内にあるAvrIIで消化して直線状にした。次に、P.pastorisの半数体JC231(Lys−)またはJC239(Met−)細胞をそれぞれ個別に、直線化した重鎖ベクターまたは軽鎖ベクターのそれぞれで形質転換した。形質転換は、Pichia Protocols(第二版)(Methods in Molecular Biology、Cregg,J.M.編,2007,Humana Press,Totowa,N.J.)からの改変プロトコールに従って、エレクトロポレーション法によって行った。上手く形質転換された形質転換体を、ゼオシン(登録商標)含有YPDS寒天プレートで選抜した。完全長Ab−Cを発現している二倍体クローンのライブラリーを生成するために、半数体の形質転換コロニーをプールし、合わせて、交配用の寒天培地に蒔いた。これらのプレートを24時間30℃でインキュベートした。交配プレートで生育させた細胞を次に、BYNB寒天プレートで画線培養して二倍体クローンを選抜した。各二倍体クローンの完全長抗体を発現する能力を、コロニーリフト/免疫ブロット法(Wung et al.Biotechniques 21 808−812(1996))で評価した。簡単に説明すると、クローンが産生し、分泌された抗体を、ニトロセルロース膜をプレートと接触させることで膜に移した。ウェスタンブロットのプロトコールに従い、ヤギ抗ヒトF(ab’)2HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)検出抗体を使用して、フィルターを処理した。化学発光法を使った検出により、フィルム上の高いレベルのAb−Cを発現するコロニーを可視化した。コロニーの大部分を、300μLのBYPD(1%酵母窒素基本成分、2%ペプトン、2%グルコース、0.1Mリン酸カリウム、pH6、および50μg/mLゼオシン(登録商標))を入れた深底の96ウェルプレートに入れた。一定の速度で振とうさせながら、培養を30℃で60時間生育させた。得られた上清を、標準的な酵素免疫検定法(ELISA)でアッセイした。この一連の操作から、Ab−Cを高発現している二倍体クローンを1クローン選抜した。その後、上述した方法に従って、最終クローンをサザンブロット解析にかけ、重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のコピー数を決定した。
実施例5
バイオリアクター中で抗体を発現させるための方法
この実施例では、さらなる解析または使用目的のために、バイオリアクター中で抗体を産生する方法を説明する。
まず、研究用細胞バンクを使い、種菌を増やした。ここで使用した培地には以下の成分を加えた(重量/容量%):酵母抽出物(3%)、無水デキストロース(4%)、YNB(1.34%)、ビオチン(0.004%)およびリン酸カリウム(100mM)。発酵槽用の種菌を準備するために、細胞バンクをおよそ24時間、振とうインキュベーター中(300rpm)、30℃で増殖させた。次に10%の種菌を、1Lの無菌成長培地を入れた、可動容量が2.5LのLabforsのベッセルに加えた。成長培地には以下の成分を加えた:硫酸カリウム(18.2g/L)、リン酸一アンモニウム(36.4g/L)、リン酸二水素カリウム(12.8g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(3.72g/L)、ナトリウムクエン酸二水和物(10g/L)、グリセロール(40g/L)、酵母抽出物(30g/L)、PTM1微量金属(4.35mL/L)、およびアンチフォーム204(1.67mL/L)。PTM1微量金属溶液は、以下の成分を含む:硫酸第二銅五水和物(6g/L)、ヨウ化ナトリウム(0.08g/L)、硫酸マンガン水和物(3g/L)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(0.2g/L)、ホウ酸(0.02g/L)、塩化コバルト(0.5g/L)、塩化亜鉛(20g/L)、硫酸第一鉄七水和物(65g/L)、ビオチン(0.2g/L)、および硫酸(5mL/L)。
バイオリアクター手順の制御指標は以下のように設定した。撹拌:1000rpm、気流:標準1.35リットル/分、温度:28℃。pHは、水酸化アンモニウムを使って6に調製した。酸素の供給は行わなかった。
発酵培養を、およそ12〜16時間、最初に入れたグリセロールが消費されるまで(酸素のスパイクの消失によって示される)生育させた。酸素のスパイクが消失した後、培養をおよそ3時間飢餓状態にした。この飢餓期間の後、リアクターにエタノールをボーラス添加し、エタノールを1%(w/v)とした。発酵培養を15分から30分、平衡化させた。エタノールをボーラス添加した30分後から栄養素の供給を始め、1mL/分の速度で40分間行った後、供給ポンプをエタノール感知器(エタノールsensing probe、RavenBiotech)で制御して、残りの期間はエタノールの濃度が1%に維持されるようにした。栄養素には以下の成分を加えた:酵母抽出物(50g/L)、デキストロース一水和物(500g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(3g/L)、およびPTM1微量金属(12mL/L)。必要に応じて、クエン酸ナトリウム二水和物(0.5g/L)も栄養素に加えた。発酵の時間は合計でおよそ90時間(T90)であった。
その後抗体収量を、分析高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し、プロテインAアフィニティカラムにかけることによって決定した。精製した抗体試料を使い、HPLCのピークの280nmでの吸光度(A280)を結ぶことで検量線を決定した。
実施例6
HPLCを使った抗体収量および純度の決定方法
プロテインAで精製した抗体調製物の純度を分析するために、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)を使用した。簡単に説明すると、Agilent社(サンタクララ、カリフォルニア州)の1200シリーズのHPLCとUV検出装置を使用した。試料を分離するには、TSKgel GS3000SWx1、7.8×300mMカラムとTSKgel GuardSWx1、6×40mM(TosohBioscience、キング・オブ・プロシア、ペンシルベニア州)を繋いだものを使用した。移動相としては100mMのリン酸ナトリウム、200mMの塩化ナトリウム(pH6.5)の均一溶媒を使用し、流速は0.5mL/分とし、UV215nmでの吸収をモニタリングした。試料を注入する前に、ベースラインが安定するまでカラムを平衡化した。試料を移動相で1mg/mLの濃度に希釈し、30μLの容量を注入した。カラム性能のモニタリングには、BioRad(ヘラクレス、カリフォルニア州)のゲル濾過標準物質を使用した。
実施例7
プロテインAアフィニティを使用した抗体の精製方法
ピキア・パストリスが発現した抗体を解析するために、プロテインAによる精製を行った。簡単に説明すると、回収した発酵ブロス由来のおよそ20mLの0.2μ清澄化上清を当量の平衡緩衝液(20mMヒスチジン、pH6)で希釈した。この希釈したブロスのうちの20mLを、予め平衡化しておいた、1mLのHiTrap MabSelect Sureカラム(GE、ピスカタウェイ、NJ)に負荷した。次いで、カラム体積の30倍の平衡緩衝液でカラムを洗浄した。溶出液を段階的に100%溶出緩衝液(100mMクエン酸pH3.0)にしていくことで、カラムに結合した抗体を溶出した。1mLの画分を回収し、直ちに100μLのTris緩衝液(2M、pH8.0)で中和した。280nMでの吸収を測定することで、タンパク質含有画分を決定し、タンパク質含有画分をプールした。
実施例8
SDS−PAGE、ウェスタンブロット、およびレクチンカラムを使った精製による、不純物の分析方法
SE−HPLCにより、それぞれの株における生産に伴う変異体では、軽鎖と重鎖の発現の比が変化していることを定量することができた。この生産に伴う変異体の特性を解析するために、ウェスタンブロット解析とアフィニティレクチンカラムを使用した精製を行った。簡単に説明すると、ウェスタンブロット解析用には、LDS試料負荷緩衝液とNuPAGE還元剤(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を使って5μgの試料を準備し、70Cで10分間加熱した。次に4μg当量の試料を4〜12%BisTris勾配ゲルに負荷し、泳動相としてMES緩衝液(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を用い、電気泳動で分離した。ゲル中で分離されたタンパク質を次に、I−Blot(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を使ってニトロセルロース膜にブロットし、ブロッキング溶液(10%の脱脂粉乳をDPBS−T[0.1%のTween−20(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を含むDPBS溶液]に溶解したもの)で60分間ブロッキングした。次に、ブロッキングした膜を、ブロッキング溶液で1:10、000に希釈した、ヤギ抗ヒトFCペルオキシダーゼ結合抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories,Inc.、ウェストグローブ、PA)で30分間探索した。ブロットを、DPBS0.1%Tween溶液で4回、各回につき5分間洗浄した。発色にはECLアドバンス化学発光試薬(Amersham/GE、ピスカタウェイ、NJ)を使用し、CCDカメラ(Alpha Innotech/Cell Biosciences、サンタクララ、カリフォルニア州)で画像を収集した。
生産に伴う変異体についてさらに解析するために、アガロース結合型スノードロップ(Galanthus nivalis)レクチン(Vector Laboratories, Inc,バーリンガム、カリフォルニア州)を使用した。スノードロップレクチンは、マンノース含有タンパク質に結合し、結合にCa++またはMn++を必要としない、低分子量のタンパク質である。結合させるには、2mLの樹脂を14mLのDBSで4回、再懸濁と遠心分離を繰り返すことで洗浄した。洗浄した後ビーズを再懸濁し、最終的濃度が50%のスラリーになるようにDPBSに溶解し、その内の400μLを、プロテインAで精製した抗体(1.5〜4mgのタンパク質を含む)に加えた。次に、アガロース結合型レクチンを抗体と共に、室温で2.5時間、混合し続けながらインキュベートした。インキュベーションが終わったら試料を短時間遠心分離し、上清を回収して、これを「フロースルー」とした。次いでビーズを空のBio−Rad(ヘラクレス、カリフォルニア州)のドリップカラムに移し、DPBSを使い、自然落下で洗浄した。各時点で0.5mLを使用した洗浄に合計で6mLを使い、280nmでの吸収をモニタリングした。結合したタンパク質は0.2Mのメチル−α−D−マンノピラノシドで溶出した。その後、試料、負荷したもの、および溶出されてきたタンパク質をSDS−PAGEと、抗ヒトFc特異的試薬を使ったウェスタンブロット、およびSE−HPLCで解析した。SDS−PAGEは、4%〜12%ポリアクリルアミド勾配を含む既製のポリアクリルアミドゲル(NuPAGE(登録商標)Bis−TrisGels)を使用し、泳動相にはNuPAGE(登録商標)MES SDS泳動用緩衝液とNuPAGE(登録商標)LDS試料緩衝液(全てInvitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州から購入)を使い、製造業者の説明に従って行った。負荷する前に、試料をNuPAGE(登録商標)Sample Reducing Agent(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)で、製造業者の説明に従って還元した。
様々な、例示した本発明の実施形態に関する上記の記載は、完全なものであることも、本発明を開示した正確な型に制限することを意図するものでもない。本発明の具体的な実施形態および例が、例示する目的のために本明細書に記載される一方、関連する分野の当業者であれば認識できるように、本発明の範囲内でも様々な均等な変更が可能である。本明細書で提供する本発明の教示は、上述した例以外の他の目的にも適用可能である。
本発明は、これまでの説明および実施例で具体的に記載してきたものとは異なる方法によって実施してもよい。上記の教示を考慮して、本発明に多数の修飾および変更を施すことができ、それらもまた、添付の請求項の範囲内である。
上記の詳細な説明を考慮して、これらのおよび他の変更を本発明に施すことができる。一般的に、以下の請求項において使用される用語は、明細書および特許請求の範囲で開示される具体的な実施形態に、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。従って、本発明は開示によっては限定されず、その代わり、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるものとする。
抗原特異的B細胞のクローン集団を得る多面の方法に関する特定の教示は、2006年5月19日に出願の、米国仮特許出願第60/801,412号に開示されており、その開示の全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
抗原結合アフィニティを維持するための、ウサギ由来モノクローナル抗体のヒト化および好ましい配列修飾に関する特定の教示が、2008年5月21日に出願の、「新規ウサギ抗体のヒト化法およびヒト化ウサギ抗体(Novel Rabbit Antibody Humanization Methods and Humanized Rabbit Antibodies)」という名称の国際公開第2008/144757号に相当する、国際公開第PCT/US2008/064421号で開示されており、その開示の全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
交配能力のある酵母を使用して抗体またはその断片を産生すること、および対応する方法に関する特定の教示が、2006年5月8日に出願の米国特許出願第11/429,053号(米国特許出願公報第US2006/0270045号)に開示されており、その開示の全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
発明の背景、発明の概要、詳細な説明、および実施例を含む、本明細書で引用する各文書(特許、特許出願、雑誌論文、要約、マニュアル、書籍、または他の開示を含む)の全開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1] 高い収量で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法であって:
(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが、該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子を含む少なくとも2種類の宿主細胞を含み;
ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞はそれぞれ、2つの親細胞を交配することまたは融合させることによって生成され、各親細胞は、前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子を1コピー以上含む、工程;
(b)該マルチサブユニット複合体を発現させるために各前記宿主細胞を培養する工程であって、ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞に含まれる該遺伝子は、前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットを様々なレベルで発現する、工程;
(c)各前記宿主細胞が産生した該マルチサブユニット複合体の収量を測定する工程;および
(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高い収量を産生する該宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体を高い収量で産生する宿主細胞であると同定する工程、を含む、高い収量で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法。
[態様2] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、および前記該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子が、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を含む、態様1の方法。
[態様3] スクリーニングした細胞の該パネルが、該マルチサブユニット複合体を含んでいる該サブユニットをコードする該遺伝子を、様々なコピー数の組み合わせで発現する宿主細胞を含んでいる、態様1の方法。
[態様4] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を15コピーまで発現させ、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様5] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を12コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様6] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を10コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様7] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を8コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様8] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を6コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様9] 該宿主細胞のパネルが、抗体である該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を10コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様3の方法。
[態様10] 該宿主細胞が二倍体酵母細胞である、態様1〜9のいずれか1項に記載の方法。
[態様11] 前記二倍体酵母がピキア細胞である、態様10の方法。
[態様12] 前記ピキアがピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である、態様11の方法。
[態様13] 前記二倍体酵母細胞が、メチロトローフ酵母、ピキア属の酵母、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・グイレルモルジィ(Pichia guillermordii)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、またはピキア・イノシトベラ(Pichia inositovera)である、態様10の方法。
[態様14] 高い純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法であって:
(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが、該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子を含む少なくとも2種類の宿主細胞を含み;
ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞はそれぞれ、2つの親細胞を交配することまたは融合させることによって生成され、各親細胞は、前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子を1コピー以上含む、工程;
(b)該マルチサブユニット複合体を発現させるために各前記宿主細胞を培養する工程であって、ここで前記少なくとも2種類の宿主細胞に含まれる該遺伝子は、前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットを様々なレベルで発現する、工程;
(c)各前記宿主細胞が産生した該マルチサブユニット複合体の純度を測定する工程;および
(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高い純度で産生する該宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体を高い純度で産生する宿主細胞であると同定する工程、を含む、高い純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法。
[態様15] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、および前記該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子が、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を含む、態様14の方法。
[態様16] 前記純度が、1種類以上のグリコシル化された抗体鎖の相対的な割合を測定することで決定される、態様15の方法。
[態様17] 前記1種類以上のグリコシル化された抗体鎖がグリコ−高分子変異体を含む、態様16の方法。
[態様18] スクリーニングした細胞の該パネルが、該マルチサブユニット複合体を含んでいる該サブユニットをコードする該遺伝子を、様々なコピー数の組み合わせで発現する宿主細胞を含んでいる、態様1の方法。
[態様19] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を15コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様14の方法。
[態様20] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を12コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様14の方法。
[態様21] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を10コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様14の方法。
[態様22] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を8コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様14の方法。
[態様23] 該宿主細胞のパネルが、該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を6コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様13の方法。
[態様24] 該宿主細胞のパネルが、抗体である該マルチサブユニット複合体をコードする各遺伝子を10コピーまで発現し、および、実質的に、各サブユニットのその他のサブユニットに対する全ての可能なコピー数の組み合わせを構成している細胞を含む、態様14の方法。
[態様25] 該宿主細胞が二倍体酵母細胞である、態様14〜24のいずれか1項に記載の方法。
[態様26] 前記二倍体の酵母がピキア細胞である、態様25の方法。
[態様27] 前記ピキアがピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である、態様26の方法。
[態様28] 高い収量で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法であって:
(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが、該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる1つ以上の遺伝子を様々なコピー数で含む少なくとも2種類の宿主細胞を含む、工程;
(b)該マルチサブユニット複合体を発現させるために各前記宿主細胞を培養する工程;(c)各前記宿主細胞が産生した該マルチサブユニット複合体の収量を測定する工程;および
(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高い収量を産生する該宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体を高い収量で産生する宿主細胞であると同定する工程、を含む、高い収量で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法。
[態様29] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、および前記該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子が、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を含む、態様28の方法。
[態様30] 高い純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法であって:
(a)宿主細胞のパネルを提供する工程であって、前記パネルは、それぞれが、該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる1つ以上の遺伝子を様々なコピー数で含む少なくとも2種類の宿主細胞を含む、工程;
(b)該マルチサブユニット複合体を発現させるために各前記宿主細胞を培養する工程;
(c)各前記宿主細胞が産生した該マルチサブユニット複合体の純度を測定する工程;および
(d)前記宿主細胞のパネル中で、別の宿主細胞よりも高い純度を産生する該宿主細胞を、所望のマルチサブユニット複合体を高い純度で産生する宿主細胞であると同定する工程、を含む、高い純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞を同定する方法。
[態様31] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、および前記該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる遺伝子が、前記所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードしている遺伝子を含む、態様30の方法。
[態様32] 前記純度が、1種類以上のグリコシル化された抗体鎖の相対的な割合を測定することで決定される、態様31の方法。
[態様33] 前記1種類以上のグリコシル化された抗体鎖がグリコ−高分子変異体を含む、態様32の方法。
[態様34] 前記宿主細胞が二倍体酵母細胞である、態様28〜33のいずれか1項に記載の方法。
[態様35] 前記二倍体酵母細胞が、メチロトローフ酵母、ピキア属の酵母、ピキア・パストリス、ピキア・アングスタ、ピキア・グイレルモルジィ、ピキア・メタノリカ、またはピキア・イノシトベラである、態様34の方法。
[態様36] 前記宿主細胞のパネルが、前記マルチサブユニット複合体の1つ以上のサブユニットをコードしている遺伝子を様々なコピー数で含む半数体細胞を交配または融合させ、前記交配によって前記マルチサブユニット複合体の該サブユニットをコードしている遺伝子を様々なコピー数で含む二倍体細胞を作出することで生成される、態様34または35の方法。
[態様37] 該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる前記遺伝子が、半数体細胞のゲノム中に組み込まれている、態様36の方法。
[態様38] 前記宿主細胞が倍数体の酵母細胞である、態様28〜33のいずれか1項に記載の方法。
[態様39] 前記宿主細胞が四倍体酵母細胞である、態様28〜33のいずれか1項に記載の方法。
[態様40] 前記二倍体酵母細胞が、メチロトローフ酵母、ピキア属の酵母、ピキア・パストリス、ピキア・アングスタ、ピキア・グイレルモルジィ、ピキア・メタノリカ、またはピキア・イノシトベラである、態様39の方法。
[態様41] 前記宿主細胞のパネルが、前記マルチサブユニット複合体の1つ以上のサブユニットをコードしている遺伝子を様々なコピー数で含む二倍体細胞を交配または融合させ、前記交配によって前記マルチサブユニット複合体の該サブユニットをコードしている遺伝子を様々なコピー数で含む四倍体細胞を作出することで生成されている、態様39または40の方法。
[態様42] 該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる前記遺伝子が、二倍体細胞のゲノム中に組み込まれている、態様41の方法。
[態様43] 前記同定した宿主細胞を生産培養を展開するために使用する、態様1〜42のいずれか1項に記載の方法。
[態様44] 前記宿主細胞が真核細胞である、態様1〜43のいずれか1項に記載の方法。
[態様45] 前記真核細胞が酵母細胞である、態様44の方法。
[態様46] 前記親細胞がそれぞれ半数体、二倍体または倍数体の酵母細胞である、態様45の方法。
[態様47] 前記酵母細胞がメチロトローフ酵母である、態様45または46の方法。
[態様48] 前記メチロトローフ酵母がピキア属である、態様47の方法。
[態様49] 前記ピキア属のメチロトローフ酵母がピキア・パストリスである、態様48の方法。
[態様50] 前記ピキア属のメチロトローフ酵母が、ピキア・アングスタ、ピキア・グイレルモルジィ、ピキア・メタノリカ、およびピキア・イノシトベラからなる群より選択される、態様48の方法。
[態様51] 該マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる前記遺伝子が、pGAP、3’AOX TT、PpURA5、OCH1、AOX1、HIS4、GAP、ARG、およびHIS4 TT遺伝子座からなる群より選択される1つ以上のゲノムの遺伝子座に組み込まれている、態様48の方法。
[態様52] 該マルチサブユニット複合体の前記サブユニットをコードしている少なくとも1つの前記遺伝子が、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターの制御下で発現している、態様1〜51のいずれか1項に記載の方法。
[態様53] 前記誘導性プロモーターが、GAP、CUP1、AOX1、およびFLD1プロモーターからなる群より選択される、態様52の方法。
[態様54] 少なくとも1つの該マルチサブユニット複合体の前記サブユニットをコードしている前記遺伝子が、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸塩脱水素酵素(GAP)、FLD1、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、およびPykプロモーター、それらに由来するキメラプロモーター、酵母プロモーター、哺乳類のプロモーター、昆虫プロモーター、植物プロモーター、は虫類プロモーター、両生類プロモーター、ウイルスプロモーター、ならびに鳥類プロモーターからなる群より選択されるプロモーターの制御下で発現している、態様1〜53のいずれか1項に記載の方法。
[態様55] 前記宿主細胞が二倍体細胞または四倍体細胞である、態様1〜54のいずれか1項に記載の方法。
[態様56] 前記所望のマルチサブユニット複合体を前記細胞からまたは培地から精製する、態様1〜55のいずれか1項に記載の方法。
[態様57] 前記所望のマルチサブユニット複合体を前記細胞の細胞内成分、細胞質、核質、または膜から精製する、態様56の方法。
[態様58] 前記宿主細胞が前記所望のマルチサブユニット複合体を該培地に分泌する、態様56の方法。
[態様59] 前記所望のマルチサブユニット複合体を前記培地から精製する、態様58の方法。
[態様60] 前記所望のマルチサブユニット複合体が単一特異性抗体または二重特異性抗体である、態様1〜59のいずれか1項に記載の方法。
[態様61] 前記少なくとも2種類の宿主細胞が、前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている遺伝子を異なるコピー数含む、態様1〜60のいずれか1項に記載の方法。
[態様62] 前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞が、該マルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットをコードしている前記遺伝子を少なくとも2コピー含む、態様61の方法。
[態様63] 前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞が、前記パネル中の別の宿主細胞に含まれている対応する遺伝子の発現を誘導するプロモーターとは別のプロモーターによって発現が誘導されるマルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットをコードしている遺伝子を含む、態様1〜62のいずれか1項に記載の方法。
[態様64] 前記パネル中の少なくとも1種類の宿主細胞が、該マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている2つ以上の配列を含んでいるポリシストロン性の遺伝子を含む、態様1〜63のいずれか1項に記載の方法。
[態様65] 前記所望のマルチサブユニット複合体が、IL−6、TNF−α、CGRP、PCSK9、またはNGFに特異的に結合する抗体を含む、態様1〜64のいずれか1項に記載の方法。
[態様66] 前記所望のマルチサブユニット複合体が、ヒト抗体もしくはヒト化抗体またはそれらの断片を含む、態様1〜65のいずれか1項に記載の方法。
[態様67] 前記ヒト化抗体が、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウシに由来する抗体である、態様66の方法。
[態様68] 前記ヒト化抗体がウサギ由来の抗体である、態様66の方法。
[態様69] 前記所望のマルチサブユニット複合体が、一価抗体、二価抗体、または多価抗体を含む、態様1〜68のいずれか1項に記載の方法。
[態様70] 前記パネル中の少なくとも1つの前記宿主細胞に含まれている前記マルチサブユニット複合体のサブユニットを発現させる少なくとも1つの前記遺伝子が、前記宿主細胞中での発現用に最適化されている、態様1〜69のいずれか1項に記載の方法。
[態様71] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、前記所望の抗体の純度が、前記宿主細胞によって産生され、グリコシル化されておらず、予測した見かけの流体力学半径を有する抗体複合体中に含まれており、および/または前記所望の抗体の標的に特異的に結合する所望の抗体の画分を測定することで評価される、態様1〜70のいずれか1項に記載の方法。
[態様72] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、前記所望の抗体の収量が、グリコシル化されており、予測した見かけ流体力学半径を有する複合体とは別の抗体複合体に含まれていて、および/または前記所望の抗体の標的と特異的に結合しない生産に伴う変異体をいずれも計算にいれずに、前記宿主細胞によって産生された所望の抗体の量を決定することで評価される、態様1〜71のいずれか1項に記載の方法。
[態様73] 所望のマルチサブユニット複合体を組換え的に産生する方法であって、
(a)該マルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている1つ以上の遺伝子を含んでいる宿主細胞を提供する工程であって、ここで前記宿主細胞は、態様1〜72のいずれか1項に記載の方法によって、高い収量および/または純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞であると同定される、工程;ならびに
(b)前記マルチサブユニット複合体を発現させるために前記宿主細胞を培養する工程、
を含む、産生方法。
[態様74] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様73の方法。
[態様75] 前記所望の抗体を精製する工程をさらに含んでいる、態様74の方法。
[態様76] 前記宿主細胞が、少なくとも100mg/L、少なくとも150mg/L、少なくとも200mg/L、少なくとも250mg/L、少なくとも300mg/L、100〜300mg/L、100〜500mg/L、100〜1000mg/L、少なくとも1000mg/L、少なくとも1250mg/リットル、少なくとも1500mg/リットル、1750mg/リットル、2000mg/リットル、またはそれ以上の力価の抗体を産生する、態様74または75の方法。
[態様77] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が20世代にわたって安定な、態様1〜76のいずれか1項に記載の方法。
[態様78] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が50世代にわたって安定な、態様1〜77のいずれか1項に記載の方法。
[態様79] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が100世代にわたって安定な、態様1〜78のいずれか1項に記載の方法。
[態様80] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が500世代にわたって安定な、態様1〜79のいずれか1項に記載の方法。
[態様81] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が1000世代にわたって安定な、態様1〜80のいずれか1項に記載の方法。
[態様82] 前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つの該サブユニットをコードしている遺伝子のコピーが、2つ以上の遺伝子座に組み込まれている、態様1〜81のいずれか1項に記載の方法。
[態様83] 前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つの該サブユニットをコードしている遺伝子のコピーが、3つ以上の遺伝子座に組み込まれている、態様1〜82のいずれか1項に記載の方法。
[態様84] 各遺伝子座が5コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様82または83の方法。
[態様85] 各遺伝子座が4コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様82または83の方法。
[態様86] 各遺伝子座が3コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様82または83の方法。
[態様87] 態様1〜86のいずれか1項に記載の方法によって、高い収量および/または純度で所望のマルチサブユニット複合体を産生する宿主細胞であると同定された宿主細胞であって、前記宿主細胞は、2つの親細胞を交配することまたは融合させることによって生産された宿主細胞であり、各親細胞が前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている少なくとも1つの遺伝子を1コピー以上含んでいる、前記宿主細胞。
[態様88] それぞれが前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている、2種類の異なる遺伝子各々の少なくとも1コピーが、前記宿主細胞の相同染色体の2つの同じ遺伝子座に組み込まれている、態様77の宿主細胞。
[態様89] ピキア属の二倍体細胞または四倍体細胞である、態様87または88の宿主細胞。
[態様90] ピキア・パストリス細胞である、態様89の宿主細胞。
[態様91] 態様87〜90のいずれか1項に記載の宿主細胞に由来する、二倍体または四倍体酵母培養。
[態様92] 前記所望のマルチサブユニット複合体を発現させる少なくとも1つの遺伝子が前記宿主細胞のゲノムに組み込まれている、態様87〜91のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様93] 前記所望のマルチサブユニット複合体を発現させる少なくとも1つの遺伝子が、1つ以上の染色体外成分、プラスミド、または人工染色体に含まれている、態様87〜92のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様94] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様87〜93のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様95] 前記宿主細胞が、前記所望の抗体の重鎖を発現させる遺伝子のコピー数よりも多いコピー数の前記所望の抗体の軽鎖を発現させる遺伝子を含む、態様94の宿主細胞。
[態様96] 前記宿主細胞が、前記所望の抗体の軽鎖を発現させる遺伝子のコピー数よりも多いコピー数の前記所望の抗体の重鎖を発現させる遺伝子を含む、態様94の宿主細胞。
[態様97] 前記宿主細胞が、前記所望の抗体の軽鎖を発現させる遺伝子のコピーと前記所望の抗体の重鎖を発現させる遺伝子のコピーを同数含む、態様94の宿主細胞。
[態様98] 前記所望の抗体の軽鎖をコードしている遺伝子を1〜10コピーと、前記所望の抗体の重鎖をコードしている遺伝子を1〜10コピー含む、態様94の宿主細胞。
[態様99] 前記宿主細胞に含まれる、前記所望の抗体の重鎖をコードしている遺伝子のコピー数と、前記所望の抗体の軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数がそれぞれ、2および2、2および3、3および3、3および4、3および5、4および3、4および4、4および5、4および6、5および4、5および5、5および6、または5および7である、態様94の宿主細胞。
[態様100] 前記宿主細胞に含まれる、前記所望の抗体の重鎖をコードしている遺伝子のコピー数と、前記所望の抗体の軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数がそれぞれ、2および1、3および1、4および1、5および1、6および1、7および1、8および1、9および1、10および1、1および2、2および2、3および2、4および2、5および2、6および2、7および2、8および2、9および2、10および2、1および3、2および3、3および3、4および3、5および3、6および3、7および3、8および3、9および3、10および3、1および4、2および4、3および4、4および4、5および4、6および4、7および4、8および4、9および4、10および4、1および5、2および5、3および5、4および5、5および5、6および5、7および5、8および5、9および5、10および5、1および6、2および6、3および6、4および6、5および6、6および6、7および6、8および6、9および6、10および6、1および7、2および7、3および7、4および7、5および7、6および7、7および7、8および7、9および7、10および7、1および8、2および8、3および8、4および8、5および8、6および8、7および8、8および8、9および8、10および8、1および9、2および9、3および9、4および9、5および9、6および9、7および9、8および9、9および9、10および9、1および10、2および10、3および10、4および10、5および10、6および10、7および10、8および10、9および10、10および10である、態様94の宿主細胞。
[態様101] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が20世代にわたって安定な、態様87〜100のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様102] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が50世代にわたって安定な、態様87〜100のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様103] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が100世代にわたって安定な、態様87〜100のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様104] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が500世代にわたって安定な、態様87〜100のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様105] 該所望のマルチサブユニット複合体をコードしている該遺伝子のコピー数および/または前記所望のマルチサブユニット複合体の収量が1000世代にわたって安定な、態様87〜100のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様106] 前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つの該サブユニットをコードしている遺伝子のコピーが、2つ以上の遺伝子座に組み込まれている、態様87〜105のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様107] 前記マルチサブユニット複合体の少なくとも1つの該サブユニットをコードしている遺伝子のコピーが、3つ以上の遺伝子座に組み込まれている、態様87〜105のいずれか1項に記載の宿主細胞。
[態様108] 各遺伝子座が5コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様106または107の宿主細胞。
[態様109] 各遺伝子座が4コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様104または105の宿主細胞。
[態様110] 各遺伝子座が3コピー以下の所定のサブユニットを含む、態様106または107の宿主細胞。
[態様111] 生産培地中で生育している、態様91の酵母培養。
[態様112] 前記生産培地が最少培地である、態様111の培養。
[態様113] 前記最少培地が選択剤を含んでいない、態様112の培養。
[態様114] 前記最少培地が予め形成されているアミノ酸または他の複雑な生体分子を含んでいない、態様112の培養。
[態様115] 高細胞密度まで生育する、態様91の培養。
[態様116] 前記高細胞密度が少なくとも50g/Lである、態様115の培養。
[態様117] 前記高細胞密度が少なくとも100g/Lである、態様115の培養。
[態様118] 前記高細胞密度が少なくとも300g/Lである、態様115の培養。
[態様119] 前記高細胞密度が少なくとも400g/Lである、態様115の培養。
[態様120] 前記高細胞密度が少なくとも500g/Lである、態様115の培養。
[態様121] 前記高細胞密度が少なくとも750g/Lである、態様115の培養。
[態様122] 該酵母細胞が少なくとも20回分裂するまで培養され、かつ、前記少なくとも20回分裂した後も、前記所望のマルチサブユニット複合体の発現を高レベルに維持している、態様91の培養。
[態様123] 該酵母細胞が少なくとも50回分裂するまで培養され、かつ、前記少なくとも50回分裂した後も、前記所望のマルチサブユニット複合体の発現を高レベルに維持している、態様91の培養。
[態様124] 該酵母細胞が少なくとも100回分裂するまで培養され、かつ、前記少なくとも100回分裂した後も、前記所望のマルチサブユニット複合体の発現を高レベルに維持している、態様91の培養。
[態様125] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様122〜124のいずれか1項に記載の培養。
[態様126] 態様1〜86のいずれか1項に記載の方法に従って生成した細胞に由来する、安定な二倍体ピキア酵母培養を含んでいる培地であって、ここで該培地が含む前記所望のマルチサブユニット複合体の発現レベルが少なくとも約50mg/リットル、100mg/リットル、500mg/リットルまたは1000mg/リットル、1500mg/リットルまたはそれ以上である、培地。
[態様127] 前記所望のマルチサブユニット複合体を培地中に発現している、態様1〜86のいずれか1項に記載の方法に従って生成した細胞に由来する、安定な二倍体ピキア・パストリス酵母を含んでいる培地であって、ここで前記培養中での前記二倍体細胞の細胞密度が少なくとも約50g/L、100g/L、300g/L、400g/L、500g/L、700g/L、またはそれ以上である、培地。
[態様128] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様126または127の培地。
[態様129] 前記所望のマルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットが分泌シグナルを含む、態様1〜128のいずれか1項に記載の方法または組成物。
[態様130] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様129の方法または組成物。
[態様131] 該分泌シグナルが、トリリゾチーム(CLY)シグナルペプチド;CLY−L8;出芽酵母(S.cerevisiae)インベルターゼ(SUC2)シグナルペプチド;MF−α(プレプロ);MF−α(プレ)−apv;MF−α(プレ)−apv−SLEKR;MF−α(プレプロ)−(EA)3;αFシグナルペプチド;KILM1シグナルペプチド;抑制性酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルペプチド;A.nigerGOXシグナルペプチド;シュワンニオミセス・オシデンタリ(Schwanniomyces occidentalis)グルコアミラーゼ遺伝子(GAM1)シグナルペプチド;プロ配列を含むヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;プロ配列を含まないヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;ISNシグナルペプチド;IFNシグナルペプチド;HGHシグナルペプチド;フィトヘマグルチニン(PHA);カイコリゾチーム;ヒトリゾチーム(LYZ1);アクチビンI型受容体;アクチビンII型受容体;ピキア・パストリス(P.pastoris)免疫グロブリン結合タンパク質(PpBiP);ヒト抗体3D6軽鎖リーダー配列;およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるポリペプチドを含む、態様129または130の方法または組成物。
[態様132] 前記親細胞がそれぞれ、半数体、二倍体または倍数体酵母細胞である、態様1〜131のいずれか1項に記載の方法または組成物。
[態様133] 所望のマルチサブユニット複合体を組換え的に産生する方法であって:
(a)前記所望のマルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている遺伝子を2〜10コピー含んでいる宿主細胞を提供する工程;および
(b)前記所望のマルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている前記遺伝子を発現させるために、前記宿主細胞を培養する工程、を含み、
ここで前記宿主細胞は2つの親細胞を交配または融合させることで生成され、各親細胞は、前記マルチサブユニット複合体の1つ以上のサブユニットをコードしている遺伝子を1コピー以上含む、
所望のマルチサブユニット複合体を組換え的に産生する方法。
[態様134] 所望のマルチサブユニット複合体を組換え的に産生する方法であって:
(a)前記所望のマルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている遺伝子を2〜10コピー含んでいる宿主細胞を提供する工程;および
(b)前記所望のマルチサブユニット複合体の各サブユニットをコードしている前記遺伝子を発現させるために、前記宿主細胞を培養する工程を含む、
所望のマルチサブユニット複合体を組換え的に産生する方法。
[態様135] それぞれが前記マルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている、2種類の異なる遺伝子各々の少なくとも1コピーが、前記宿主細胞の相同染色体の2つの同じ遺伝子座に組み込まれている、態様133または134の方法。
[態様136] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含む、態様133〜135のいずれか1項に記載の方法。
[態様137] 前記宿主細胞が真核細胞である、態様133〜136のいずれか1項に記載の方法。
[態様138] 前記真核細胞が酵母細胞である、態様137の方法。
[態様139] 前記酵母細胞がメチロトローフ酵母である、態様138の方法。
[態様140] 前記メチロトローフ酵母がピキア属の酵母である、態様139の方法。
[態様141] 前記ピキア属の酵母であるメチロトローフ酵母がピキア・パストリスである態様140の方法。
[態様142] 前記ピキア属の酵母であるメチロトローフ酵母が、ピキア・アングスタ、ピキア・グイレルモルジィ、ピキア・メタノリカ、およびピキア・イノシトベラからなる群より選択される、態様140の方法。
[態様143] 前記マルチサブユニット複合体の該サブユニットを発現させる少なくとも1つの前記遺伝子が、該pGAP遺伝子座および該HIS4 TT遺伝子座からなる群より選択される1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれている、態様140の方法。
[態様144] 前記所望のマルチサブユニット複合体をコードしている少なくとも1つの前記遺伝子が、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターの制御下で発現される、態様133〜143のいずれか1項に記載の方法。
[態様145] 前記誘導性プロモーターが、GAP、AOX1、CUP1、およびFLD1プロモーターからなる群より選択される、態様144の方法。
[態様146] 前記所望の抗体軽鎖および/または重鎖をコードしている少なくとも1つの前記遺伝子が、AOX1、ICL1、グリセルアルデヒド−3−リン酸塩脱水素酵素(GAP)、FLD1、ADH1、アルコール脱水素酵素II、GAL4、PHO3、PHO5、およびPykプロモーター、それらに由来するキメラプロモーター、酵母プロモーター、哺乳類のプロモーター、昆虫プロモーター、植物プロモーター、は虫類プロモーター、両生類プロモーター、ウイルスプロモーター、および鳥類プロモーターからなる群より選択されるプロモーターの制御下で発現される、態様133〜145のいずれか1項に記載の方法。
[態様147] 前記宿主細胞が二倍体または四倍体細胞である、態様133〜146のいずれか1項に記載の方法。
[態様148] 前記宿主細胞が前記所望の抗体を該培地中に分泌する、態様133〜147のいずれか1項に記載の方法。
[態様149] 前記所望の抗体が単一特異性または二重特異性抗体である、態様133〜148のいずれか1項に記載の方法。
[態様150] 前記所望の抗体がIL−6、TNF−α、CGRP、PCSK9、またはNGFに特異的に結合する、態様133〜149のいずれか1項に記載の方法。
[態様151] 前記所望の抗体がヒト抗体もしくはヒト化抗体またはそれらの断片である、態様133〜150のいずれか1項に記載の方法。
[態様152] 前記ヒト化抗体がウサギに由来する抗体である、態様151の方法。
[態様153] 前記所望のマルチサブユニット複合体が一価抗体、二価抗体、または多価抗体を含む、態様133〜152のいずれか1項に記載の方法。
[態様154] 前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている遺伝子の少なくとも1つの前記コピーが、前記宿主細胞中での発現用に最適化されている、態様133〜153のいずれか1項に記載の方法。
[態様155] 前記所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、かつ、前記所望の抗体の軽鎖をコードしている遺伝子のコピー数が、前記所望の抗体の重鎖をコードしている遺伝子の前記コピー数よりも多いか、またはそれと同じである、態様133〜154のいずれか1項に記載の方法。
[態様156] 前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている各遺伝子を1コピーしか含まない株よりも、高い収量の前記所望のマルチサブユニット複合体を産生する、態様133〜155のいずれか1項に記載の方法。
[態様157] 前記所望のマルチサブユニット複合体のサブユニットをコードしている各遺伝子を1コピーしか含まない株よりも、高い純度で前記所望のマルチサブユニット複合体を産生する、態様133〜156のいずれか1項に記載の方法。
[態様158] 所望のマルチサブユニット複合体が所望の抗体を含み、かつ、前記純度が、重鎖および/または軽鎖ポリペプチドの総質量に占める、グリコシル化された重鎖および/または軽鎖ポリペプチドの質量をパーセンテージで測定することによって決定される、態様157の方法。
[態様159] 前記所望のマルチサブユニット複合体の少なくとも1つのサブユニットが分泌シグナルを含む、態様133〜158のいずれか1項に記載の方法。
[態様160] 該分泌シグナルが、トリリゾチーム(CLY)シグナルペプチド;CLY−L8;出芽酵母(S.cerevisiae)インベルターゼ(SUC2)シグナルペプチド;MF−α(プレプロ);MF−α(プレ)−apv;MF−α(プレ)−apv−SLEKR;MF−α(プレプロ)−(EA)3;αFシグナルペプチド;KILM1シグナルペプチド;抑制性酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルペプチド;A.nigerGOXシグナルペプチド;シュワンニオミセス・オシデンタリ(Schwanniomyces occidentalis)グルコアミラーゼ遺伝子(GAM1)シグナルペプチド;プロ配列を含むヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;プロ配列を含まないヒト血清アルブミン(HSA)シグナルペプチド;ISNシグナルペプチド;IFNシグナルペプチド;HGHシグナルペプチド;フィトヘマグルチニン(PHA);カイコリゾチーム;ヒトリゾチーム(LYZ1);アクチビンI型受容体;アクチビンII型受容体;ピキア・パストリス(P.pastoris)免疫グロブリン結合タンパク質(PpBiP);ヒト抗体3D6軽鎖リーダー配列;およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるポリペプチドを含む、態様159の方法。