本発明は、エンジンの付属装置を駆動するための駆動機構に関する。特に、これに限定されるものではないが、スーパーチャージャーやその他の装置用の駆動機構に応用され、無段階変速装置(CVT)を含む駆動システムを介して、内燃エンジンからスーパーチャージャーに駆動力が伝達される機構を有する。
本発明は、特に乗用車や軽量貨物車に応用される。これは、本発明の唯一の応用ではないけれども、この応用は、本発明がどのように実施されるかを説明するための基礎として用いられる。これに関して、本発明の実施形態は、一般的に、フットペダルを用いることにより、運転者によって制御されるエンジンに用いられ、フットペダルは、一般的に、運転者が車両の変速機に伝達されるエンジンの総トルクを制御することを可能にする。ガソリンエンジンの場合、このペダルは、直接的に又は間接的に、エンジン内部への空気の流れを調節するスロットルの位置を制御し、一方、ディーゼルエンジンの場合、このペダルは、直接的に又は間接的に、エンジンの内部に噴射される燃料の量を制御する。そのため、この明細書においては、エンジンの操作における実際の物理的な効果とは無関係に、一般的にこのようなペダルを指す、広く用いられている「アクセルペダル」という語句を用いる。
内燃エンジンの効率を改善し、その結果二酸化炭素排出量を減らすために重要な貢献を果たすものとして、過給器が考えられる。特に、(排気によって駆動されるターボチャージャーと比較して)エンジンから駆動されるスーパーチャージャーは、いつでもエンジン内に入ってくる空気量に対して非常に大きな制御を可能にし、さらに、排ガスの減少と合わせて、エンジンのパワー及び駆動レスポンスの改良された制御を提供することができる。
一般的に、スーパーチャージャーが駆動される回転速度は、エンジンのクランクシャフトの回転数よりも何倍も大きい。例えば、一般的な乗用車用のガソリンエンジンは、750〜6000rpmの間の速度で操作されるが、遠心型スーパーチャージャーは、40000〜250000rpmの間で操作する必要がある。現在までは、一般的に、クランクシャフトとスーパーチャージャーとの間に、固定された比率の増速歯車列を設けることによって達成されている。
スーパーチャージャーをクランクシャフトの速度に対して固定された倍率で駆動することは、最適でないことは明らかである。もしも、このスーパーチャージャーシステムが、低いエンジン速度のときに、可能な限り最大のエンジントルクを出力するように構成されていたとしたら、高いエンジン速度のときには、動力が無駄になる。もしも、このスーパーチャージャーシステムが、高いエンジン速度のときに、可能な限り最大のエンジントルクを供給するように構成されていたとしたら、低いエンジン速度のときには、エンジントルクは不十分であるかもしれない。クランクシャフトとスーパーチャージャーの間に設けられた変動比率駆動は、低いエンジン速度での最大エンジントルクを出力しつつ、スーパーチャージャーに供給される無駄なエネルギーの総量を少なくするために用いることができることは明らかであり、無段階変速駆動は、比率を段階的に変更する駆動に対して有利であることは明らかである。
ここで、エンジンの利用可能なトルクのほんの一部を用いて、車両をほぼ一定の速度で駆動するように、エンジンが操作されているという状況、及び、例えば、低速車両を追い越すために、運転者は、アクセルペダルを急に押し下げる状況を考える。理想的には、最大エンジントルクという運転者の要求に応えるために、スーパーチャージャーは、可能な限り短い時間で最大速度まで加速されるであろう。このような要求に応えるために、変動比率駆動が、すぐさま低い比率から高い比率に上昇されるならば、エンジンの出力トルクの大部分は、まさしくスーパーチャージャーを加速するために必要とされ、そのため、車両を加速するために利用することはできない。適切な制御がなされないならば、このようにたくさんのトルクがスーパーチャージャーの駆動によって吸収され、急なアクセルペダルの押し込みは、駆動輪に伝達されるトルクの一時的な低下を引き起こすという状況を容易に想像することができる。このことは、非常に望ましくない。
トルク制御された可変装置を組み込んだ無段階変速システムは、この制御の問題に対して直接的な回答を提供する。このような可変装置は、例えば国際公開第2004090382号に開示されているように、この分野の当業者にとっては公知であり、一般的には、しかし、これに限定されないけれども、トロイダルトラクションドライブ型のものである。変速機に対する制御入力は、スーパーチャージャーに伝達されるトルクを制御することができ、これは、所定の最大値又は現在の総エンジントルクに対する比例(固定又は可変とすることができる)に設定することができ、それによって、正味のエンジンの出力トルクは、運転者の要求を満たすのに十分であることを保証する。しかしながら、トルク制御された可変装置は、一般的に、それらのトルク伝達部品を作動させる作動力を必要とし、結果的に、制御アクチュエーターのような制御要素は、一般的に、比較的大きく、高価である。このことは、商用車の変速機の主駆動装置のような大きなシステムにおいては問題にはならないけれども、出力の小さなものにトルク制御されたシステムを用いることは、不釣り合いに大きなアクチュエーターのパワー消費をもたらす可能性がある。そのため、トルク制御された変速機は、制御の目的としては望ましいけれども、例えば、オイルポンプ、発電機、スーパーチャージャー、送水ポンプ、パラーステアリング装置、及び予備のファン駆動装置などの速度可変式のフロントエンジンの付属駆動装置(FEAD)のような費用と重量を最小限に維持しなければならないところでは、受け入れ可能な解決策を提供することはないであろう。
本発明は、内燃エンジンから無段階変速機を介してスーパーチャージャーのようなフロントエンジンの付属品が駆動され、費用、重量及び複雑さを最小限に維持しつつ、効果的な動作のために必要とされる一定の制御を提供することが可能な構造を提供することを目的としている。
この目的のために、本発明の第1の態様は:
回転駆動入力部を有するスーパーチャージャーと、
内燃エンジンからの駆動力を受け入れるための回転駆動入力部と、前記スーパーチャージャーの入力部に結合された回転駆動出力部を有する変速機と、
を備えた内燃エンジンのための過給機構であって、
前記変速機は、前記変速機の入力部と出力部の間に動作可能なように接続された可変装置を含み、その可変装置は、入力部に対してある動作比率で駆動される出力部と、前記可変装置の前記動作比率を設定するための制御手段を有し、
前記制御システムは、エンジンに、前記制御システムに対する入力状態によって示された動作状態をとらせるように動作し、
前記制御手段は、前記可変装置の前記動作比率を設定するように動作されることが好ましい。
本発明に至るまで、発明者らは、明らかに好ましいトルク制御と比較して、比率制御に基づく変速装置の動作の欠点よりも、比較可能な、所定の比率制御を実行させる動作に要求される簡単さ及び低出力によって達成される費用の節約と重量の軽減の方が優先することに気付いた。比率制御は、かなり大きな技術的課題を提供するけれども、トルク制御に基づく動作は、制御システムを簡単に実現することを可能にする(しなければならないことは、エンジン又はスーパーチャージャーに適用されるトルクの上限を設定することだけである)。
一般的に、この制御システムは、制御システムに対する1又は複数の入力の状態によって示された動作状態をエンジンにとらせるように動作しなければならない。
エンジンの動作状態は、エンジントルクの状態、正味のエンジントルクの状態、エンジンの「負荷」、速度、加速度、燃料―空気の動作比率、及び、排気目標値のうちの1又は複数であり、排気目標値は、二酸化炭素、微粒子、NOx又は好ましいであろうその他の排気目標値、触媒コンバーターを点火(有害な排気を外の少ない化合物に変換させるのに有効となる触媒コンバーターが動作温度に達する点)させるためのガスの温度及び組成を含む排気状態、又は、選択還元触媒(SCR)のような排ガスの後処理を手助けする排ガス状態であり、これらは、特に、商用車用のディーゼルエンジンにおいて普及している。この文脈において、「エンジントルク」の語句は、スーパーチャージャー機構によって加えられる負荷よりも手前のクランクでのトルクを意味し、「正味のエンジントルク」の語句は、スーパーチャージャー機構によって加えられる負荷よりも後のクランクでのトルクを意味することを考慮するべきである。「エンジン負荷」の語句は、所定のエンジン動作速度において利用可能な全ての正味のエンジントルクに対する割合のことをいう。
制御システムに対する1又は複数の入力は、(車両のアクセルペダルなど)人によって、自動速度制御装置や自動操縦装置などの自動化された制御によって、(安定制御システムのような)その他の車両制御システムによって、(それ自体は機械的であってもよいし、あるいはエンジン制御システムの不可分な一部分であってもよい)エンジン調速機によって、又は車両伝導機構システムによって、直接的に決定され、車両伝導機構は、1又は複数の自動式又は自動化された変速装置、無段階変速機及び(例えば、機械的、電気的又は油圧式変速装置を含む)CVT、((例えばフライホイールなどの)機械的、(例えば電池などの)電気的又は(例えばアキュミュレーターなどの)油圧式)エネルギー貯蔵システム、あるいは、例えばエアー圧縮機、空調システム、交流発電機、油圧ポンプ、及何らかの出力取り出し駆動装置などのその他の被駆動装置を備えていてもよい。このこと、及びエンジン、電動機構及び車両の瞬間的な動作状態の知識から、この制御システムは、この過給機構を伴った内燃エンジンの動作状態を代表する、制御変数の目標値を計算する。
以下の説明において、「関数」という語句は、制御変数、可変装置の比率及び可変装置の比率を変化の割合を調節するために、制御作動力を発生させるために用いられる変数及びアルゴリズムを説明するために用いられる。誤差という語句は、変数の目標値とその変数の実際の値との差を示すために用いられる。この文脈において、関数は、一般的に(直接の又は間接の)比例項又はスルーレート成分を含み、一般的に、誤差の値が増加するにつれて増加し、誤差の値が減少するにつれて減少する制御装置の作動力を発生させる。固定された関数、誤差に伴って変化する関数、任意の他の1つのシステムの変数又は複数のシステムの変数であってもよい。随意的に、関数は、誤差の積分及び微分のいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
制御変数は、スーパーチャージャーの速度、圧縮機の速度、可変装置の出力速度、スーパーチャージャーの給気圧、マニホールドの空気圧、空気流の総量、エンジンの出力速度、エンジンのトルク、エンジンの負荷、及び排気酸素の量のうちの1つ又は複数であってもよい。目標値と実際の(又は推定された)値との差である制御変数誤差が生じる。制御システムは、制御変数の誤差の関数として、制御変数に近づける変化の割合を決定し、制御変数の目標値にうまく近づけるために、可変装置の比率の変化に応じた割合及び可変装置の比率の一方又は両方を決定するために動作する。
随意的に、要求された可変装置の比率の変化の割合及び可変装置の比率は、閉ループ制御(すなわち、いわゆるフィードバック制御)を用いることによって実現してもよい。あるいは、コスト及び複雑さを低減させる(例えば、可変装置の入力部及び出力部の速度センサーなどの)センサーの使用を最少化するのに有利である、開ループ制御を用いてもよい。開ループ可変装置制御の一例は、フィードバック点を有しないステッピングモーターであり、一方、開ループ可変装置の変化の割合の制御の一例は、送りねじ及びナット機構を備えたDCモーターであり、電流を供給すると、モーターの電流に関連する割合で、ナットを所定距離だけ移動させる。閉ループ可変装置制御の一例は、フィードバックを有するステッピングモーター、又はエンコーダーを用いたフィードバック点を有する、送りねじ及びナット機構を備えたDCモーターである。開ループ可変装置の比率の割合及び可変装置の比率の制御の一方又は両方は、簡素化及び低コスト化の解決策を提供するので、好ましい。
制御変数は、開ループ制御又は閉ループ(すなわち、フィードバック)制御のいずれかを用いて調整されてもよい。開ループ制御は、制御変数が推定されるときに達成されてもよい。一例として、スーパーチャージャーの給気圧が制御変数であり、エンジン速度及び可変装置の比率がわかっている(可変装置の比率は、それ自体、開ループによる推定又は直接測定することによってわかる)場合を考えると、圧縮機の速度がわかる。圧縮機マップがわかった上で、圧縮機の速度及びエンジン速度の両方がわかると、制御システムは、特定の圧力センサーを必要とすることなく、給気圧を推定することができる。あるいは、直接給気圧を測定するために圧力センサーを用い、制御システムがこの変数に閉ループ制御を実行するためにセンサーの信号をフィートバックしてもよい。
制御変数の不適切な調整は、望ましくない特性を引き起こす可能性がある、例えば正味のエンジントルクにおける急速な変化の割合(これは、「ジャーク」と名付けられている)のような操縦性を備えた、望ましくない車両の駆動特性を引き起こす。関数は、先に述べたような多くの選択肢を含むけれども、目標値に近づけるための変化の割合は誤差の関数であることが好ましく、何らかの誤差の比例関数であることが好ましい。目標制御変数は、ほぼ漸近線的に近づくことが好ましい。例えば、目標マニホールド圧力をほぼ漸近線的に近づけると、最終的な正味のエンジントルク状態に近づける割合と同様になり、実際のところ、滑らかさと連続性の両方において望ましい。
また、クランクに伝わるスーパーチャージャー機構の慣性トルクが閾値を超えていると、車両の駆動輪に伝達される正味のエンジントルクが瞬間的に増加し又は減少するか、あるいは、いずれにせよ乱れ、再度、運転者が感じるであろう望ましくないトルク特性を引き起こすことを認識されるであろう。エンジンの加速度は、仮にエンジンが急激に加速したとしても、慣性トルクのこの成分は正味のエンジントルクにのみ衝撃を与えるにすぎないので、運転者によって体験されるトルクに対してはあまり大きな衝撃を与えない。しかしながら、制御変数の目標値を達成するために加えられる可変装置の比率の急激な変化の割合は、エンジン速度が固定されているときであっても、正味のエンジントルクに大きな乱れを生じさせる。クランクシャフトに伝わる慣性トルクの乱れは、以下のように表される。
安定状態のスーパーチャージャーのトルク及びスーパーチャージャー機構からの慣性負荷に起因するトルクの乱れの合計は、閾値以下に維持されることが望ましい。他のシステム変数の状態及び動作条件に応じて、この閾値は可変であってもよい。閾値は、固定値であってもよいし、現在のエンジントルクに比例して可変であってもよい。スーパーチャージャーのトルクの合計(クランクに伝わる慣性トルク及び安定状態のトルク)は、エンジントルクよりも少ないことが好ましく、それによって、正味のエンジントルクが、極めて望ましくないエンジントルクと反対の符号にならないことを保証する。スーパーチャージャーのトルクの合計は、エンジントルクの50%未満であることが、より好ましい。トルクの変化の割合すなわち、ジャークの閾値は、所定の限界以下となるように制御される。
この問題は、クランクに伝わるスーパーチャージャー機構のトルクが閾値レベル以下となるように、可変装置の比率の変化の割合を管理又は制限することによって、解決される。これは、制御変数用の多数の変数が、可変装置の比率の何らかの比例関数として関連している場合であり、例えば、可変装置の比率が給気圧に、スロットルが開いているときはマニホールド圧力に、緊密に関連していることを示している。このことから、可変装置の比率の変化の割合も、また、制御変数の大部分のタイプの変化の割合にも関連していることがわかる。それゆえ、滑らかで連続的であり、制御利得が適度に選択されることを条件に、制御変数の目標(例えば、マニホールド圧力)に近づける割合に目標を設定することにより、比率の変化の割合及びその後のクランクに加えられる慣性トルクは、これらの望ましい特性をさらに示すと思われる。そのため、制御変数の目標値に近づける条件は、好ましくは、また、一般的には、クランクに伝わるスーパーチャージャー機構のトルク(慣性負荷における因子)を必要な閾値以下にすることを保証する。この方法は、また、慣性トルクの変化の割合の制御を含み、それによってジャークが所定レベル以下に維持されることが好ましい。
しかしながら、制御変数に近づける割合は、トルクの慣性成分がクランクに伝わるスーパーチャージャー機構のトルクが閾値レベルを超えさせないように、可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率の信号を生じさせることが可能である。一例として、制御変数と可変装置の比率の間に大きな非線形関数が存在したり、あるいは、制御変数の目標値への接近を支配する利得が、特定の状況の下で高い可変装置の比率を生じさせたりすることが起こるかもしれない。このため、以下のような表現を用いて、制御装置が、可変装置の比率の変化の割合の目標及び可変装置の比率信号から生じる慣性トルクを推定することが有利である。
このクランクに伝わる慣性トルクは、過給機構による総クランク負荷トルクを生じさせるために、クランクに伝わるスーパーチャージャー機構からの安定状態の負荷トルクと合算されてもよい。スーパーチャージャーの安定状態の負荷トルクは、スーパーチャージャー特性マップのような他の利用可能なデータと共に、推測又は測定された制御変数から、及び推定された又は実際のエンジン動作点から、推定又は計算されてもよい。
もし、必要であれば、スーパーチャージャーの負荷(トルクの乱れを含む)が前記閾値を超えるか、又は望ましくないジャークを生じるような場合には、制御システムは、前記可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率信号の一方又は両方を変形、調整又は制限してもよい。
また、スーパーチャージャー及び/又は可変装置の動作限界によっては、制御装置は、可変装置の比率の変化の割合又は可変装置の比率信号の一方又は両方を変形させる必要があるかもしれない。先に述べたように、可変装置によって支えられた負荷は、可変装置の比率、隣接する駆動装置の比率、エンジンの加速度、可変装置の比率の変化の割合、エンジンの速度、空気の流量(それ自体はスロットルを開くことによって制御される)、圧縮機の圧力比、スーパーチャージャーの給気圧及び慣性のうちの1又は複数の関数である。スーパーチャージャーに伝えられる点火パルスは、また、瞬間的な高いエンジンの加速を生じ、これらは、全て、可変装置及びスーパーチャージャーの実行可能な動作限界を越えないように管理されなければならない。潜在的興味深い出来事の一例は、可変装置の比率の目標値における突然の増加を導くエンジントルク要求であり、これは、スーパーチャージャーの高い加速度に起因して可変装置に高い負荷を生じさせる。監視していなければ、このような負荷は、可変装置を破損したり、耐久性を減少させたりするであろう。危険な出来事の2例目は、例えば、変速ギヤがニュートラルのときに、全エンジントルクを加えることによるエンジンの高い加速度である。これは、可変装置に高い負荷を生じさせ、さらに、スーパーチャージャーの「過速度状態」と呼ばれるスーパーチャージャーが動作可能速度限界を超えるかもしれないといった付加的な危険を生じさせる。このような限界は、一般的に、圧縮機の求心性負荷限界又は軸受け速度限界に起因して生じ、その限界を超えると、機械的な損傷や危険な車両の動作を引き起こす。さらに、ある種の圧縮機は、ある動作状態にあるときに、望ましくない特性を示し、これらを回避することが好ましい。例えば、動圧縮機は、質量流量が少なく、圧縮比が高いときに、サージとして知られる現象に直面し、この現象はスーパーチャージャーの非効率な動作と破損を生じる。さらに、最も回避しなければならない圧縮機の非効率なその他の動作領域が存在する。1つの提案された解決策は、可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合の信号の一方又は両方を、可変装置及びスーパーチャージャーのそれぞれの所定の閾値を超えないように、管理することである。このようなスーパーチャージャーの閾値は、速度限界、サージ限界、圧縮比限界、給気圧限界及び駆動トルク限界の内の1又は複数を含んでいてもよい。可変装置の閾値は、クランプ負荷、入力トルク、出力トルク、反作用トルク、入力、出力、入力速度、出力速度、可変装置の比率及び接触牽引限界に関する1又は複数の限界を含んでいてもよい。従って、可変スーパーチャージャーシステムの回復動作を保証するために、制御装置は、さらに、可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率信号を変形させることが有利である。
先に述べたように、可変装置の比率の変化の割合の目標値信号及び可変装置の比率信号を変形させるために、制御システムは、エンジン速度信号、及び好ましくはエンジン速度信号の変化の割合信号を用いてもよい。エンジン速度の変化の割合を測定する場合、一般的に、エンジン速度信号の数値的微分が必要である。このような技術は、それ自体の問題点を生じさせることがよく知られている。というのは、測定された制御信号は、電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic compatibility)インターフェース(しばしば「ノイズ」と呼ばれる)から、及びバックラッシし又は剛性(ワインドアップと呼ばれる)及び点火パルスの乱れのような機械的な影響から生じる無関係に重畳された信号を含んでおり、これら全ては、微分されたとき、加えられるべき制御作動力が不必要に攻撃的で散発的になる原因となる増幅された信号ノイズを生じさせる。この問題の一般的な解決策は、エンジン速度信号のフィルタリングであるが、これは、安定余裕と応答性の妥協である、制御システムに遅れをもたらす。提案された解決策は、全負荷のパーセンテージから、又は、変速比のような変速機及び車両の動作体制の知識と共に、既知の寄生又は補助駆動装置、伝導機構又は慣性負荷と組み合わせて伝達される正味のエンジントルク、からエンジンの平均加速度を予測することである。このことは、制御装置にエンジンの瞬間的な加速度の正確な推定値を提供し、可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合を要求されたように変形させることを手助けするために、フィルター処理されたエンジンの加速信号と任意に組み合わせてもよい。
それゆえ、前述の解決策を組み合わせた効果は、スーパーチャージャー制御システムの1又は複数の入力信号が、最終的に可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合信号に変換され、さらに、制御手段を介して可変装置の入力に変換され、目標値に近づけるための1又は複数の変数を生じ、さらに、低コストで軽量であるけれども、十分に反応しうる可変装置システムを用いて、可能な限り素早く、正確に、エンジンを要求されている動作状態に適合させることである。
スーパーチャージャーシステムの最適な制御を達成するためには、可変装置の比率を速やかに変化させる必要がある。可変装置の比率を、大体−0.4から−2.5に変化させるためには、一般的に200ms以下であることが要求され、このことは、クランクにおけるトルク応答が400ms以内に達成されることを可能にする。このような応答性は、より大型で、小型化されていない自然吸気エンジンと調和しているように思われる。しかしながら、大きさ、コスト及び重さをそれぞれ最小化するには、可変装置のアクチュエーターのパワー要求を最小化する必要がある。このことは、スーパーチャージャーを含む自動車のFEADにとって、特に重要である。比率制御の選択肢は、高い応答性と組み合わされた低いパワーでの動作の可能性を提案しているけれども、実際のところ、広く普及するように、適当な可変装置技術が用いられることが重要である。
この可変装置は、(ポンプ及びモーターを組み込んだ)油圧型、電動発電機CVT、可変ベルト駆動CVT、可変チェーン駆動CVT、(例えば、Kopp可変装置として知られる可変装置を含む)ボールベアリングトラクション駆動であってもよく、機械的な駆動の場合、摩擦駆動又はトラクション駆動型であってもよい。一般的な例としては、可変装置はトロイダル型可変装置である。最も一般的には、可変装置は、その可変装置の部品間での駆動がトラクション流体を介して生じる、フルトロイダル型可変装置であってもよい。具体的には、可変装置は、一般的に、入力面と出力面であって、この入力面と出力面は、可変装置の軸に対して回転するように、同軸に取り付けられたものと、複数の作用面の間に形成されたトロイダルキャビティーと、前記入力面と前記出力面の間に配置され、これらの面との接触領域において係合駆動される複数の回転部品とを備えており、各回転部品は、それぞれ1つの回転軸に対して回転するように、キャリッジアッセンブリー上に取り付けられており、各回転部品は、それぞれ1つのチルト軸に対して自由に旋回することができ、前記チルト軸は前記回転軸に対して垂直に前記回転部品を通り、前記回転部品の中心で前記回転軸と交差しており、傾斜角が変化することによって、前記軌道輪の回転速度の比率である、前記可変装置の比率の変化を生じさせる。
可変装置の構成を選択することによって、費用と重量をさらに最適化することができる。特に、比率変更中の動作にあまり動力を必要としない可変装置が有利である。このことは、例えば電動アクチュエーターなど、安価なアクチュエーターを用いて可変装置を動作させることを可能にする。回転部品をピッチ軸に対して回転させることによって比率の変更を成し遂げる可変装置、すなわち、本出願人が「チルトスティーア」と呼ぶ機構は、特にこの用途に適する。そのため、本発明の好適な実施形態において、可変装置における各キャリッジアッセンブリーは、旋回運動を生じさせ、ピッチ軸に対する旋回運動は回転部品のピッチ角の変化を生じさせ、ピッチ軸は、回転部品の中心及び接触領域を通る。この可変装置は、各キャリッジアッセンブリーに前記旋回運動を開始させ、それによってピッチ角を変化させ、前記複数の回転部品をそのチルト軸に対して旋回させ、それによって可変装置の比率の変化をもたらすように動作しうる制御部材をさらに備えている。
可変装置の前記各トロイダルキャビティーは、有利なことに、2つの回転駆動部品しか含んでいない。この可変装置は、さらに、前記複数の回転部品に動作可能に結合された反作用部材を備え、この反作用部材は、前記トロイダルキャビティーの内部で前記回転部品からの反作用トルクを受け止める。
本発明の実施形態において、可変装置は、2つの類似したキャビティーを含んでいてもよく、それによって、前記可変装置は:第2のトロイダルキャビティーを形成する第2の入力面とそれに対向する第2の出力面と;前記第2の入力面と前記第2の出力面の間に配置され、これらの面と駆動係合される複数の第2の回転部品であって、各回転部品は、前記可変装置の比率を変化させるために、それぞれそのキャリッジアッセンブリー上に回転可能に取り付けられており、その回転部品の中心を通る1つの軸に対して旋回可能であり、前記回転部品の中心を通り、前記チルト軸まで、前記回転部品を垂直に突き抜けており、前記回転部品の回転軸に垂直で、且つ、前記比率変更軸にも垂直な軸に対して前記回転部品にピッチングを生じさせる旋回運動のために取り付けられているものと;チルト角の変化及び可変装置の比率の変化を生じさせるように前記各回転部品をピッチングさせるように、前記各キャリッジアッセンブリーを動作させるための制御部材と;第1のキャビティー内で前記複数の回転部品に動作可能に結合された第1の反作用部材及び第2のキャビティー内で前記複数の第2の回転部品に動作可能に結合された第2の反作用部材であって、前記第1及び第2の反作用部材は前記各回転部品から生じる反作用負荷をうけとめるもの;を備えている。
この可変装置は、さらに、前記反作用部材からの前記反作用トルクをバランスさせるように、前記第1及び第2のキャビティーも反作用部材に動作可能に連結された、荷重分散アッセンブリーを備えていてもよい。
本発明の一般的な実施形態は、さらに、前記可変装置に直列に接続された増速歯車列を備えている。この増速歯車列は、一般的には、前記可変装置と前記スーパーチャージャーとの間に接続されている。この増速歯車列は、トラクション駆動遊星歯車を備えていてもよく、前記可変装置のトラクション流体と共用であってもよい。
この可変装置は、前記可変装置によって前記スーパーチャージャーに作用されるトルクが閾値を超えたときに、前記可変装置の比率を少なくするように動作可能なトルク検出機構を含んでいてもよい。この機構は、過剰なトルクからのダメージに対して前記可変装置を保護する役目を果たすことができる。
この可変装置は、以下のものを備えた「ツイン−ローラー」構成を有していてもよい。
作用面を有する入力軌道輪及び出力軌道輪であって、これらの軌道輪は可変装置の軸に対して回転するように同軸に取り付けられており、トロイダルキャビティーが前記作用面の間に形成されているもの;
前記軌道輪の間で2つ1組になって配置された複数の回転部品であって、各組の回転部品は、それぞれ、互いに傾斜した複数の回転軸に対して回転するように、キャリッジアッセンブリー上に取り付けられており、各組の回転部品は互いに駆動係合されており、各組の回転部品は、それぞれ一方の作用面にそれぞれ駆動係合されており、各キャリッジアッセンブリーは、チルト軸に対して自由に旋回することができ、前記キャリッジアッセンブリーのチルトの変化により前記回転部材と前記軌道輪の間の接触の半径を変化させ、それによって前記可変装置の比率を変化させるもの。
前記スーパーチャージャーは、(例えば、遠心圧縮機や軸流圧縮機などの)動圧縮機、又は(例えば、スクリュー式ポンプ、スクロール式ポンプ又はローブポンプ)などの容積式圧縮機を組み込んでいてもよく、複数の同じような又は異なったタイプの圧縮機を含んでいてもよい。好適な実施形態は、遠心圧縮機を備えている。
本発明の第2の態様は、内燃エンジンを備えた車両用の動力伝達系を提供し、その動力伝達系は、本発明の第1の態様の実施形態による過給機構を組み込んだ吸気系統を有している。
図1は、本発明の一実施形態に係るスーパーチャージャーを含む車両駆動システム及びスーパーチャージャーの駆動機構を示す図である。
図2は、図1の実施形態の構成要素である駆動ユニットを示す図である。
図3は、本発明の実施形態での使用に適する第1の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図4は、図3に示す可変装置の一部分の制御アッセンブリーを示す図である。
図5は、図3に示す可変装置の一部分の平面図である。
図6は、図3に示す可変装置の一部分の側面図である。
図7は、本発明の実施形態での使用に適する第2の可変装置の一部分を示す部分破断斜視図である。
図8は、本発明の実施形態での使用に適する第2の可変装置の一部分を示す部分破断斜視図である。
図9は、本発明の実施形態での使用に適する第3の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図10は、本発明の実施形態での使用に適する第4の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図11は、図10に示す可変装置の軸方向から見た図である。
図12は、図10に示す可変装置の平面図である。
図13は、本発明の実施形態での使用に適する第5の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図14は、本発明の実施形態での使用に適する第5の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図15は、本発明の実施形態に係る駆動システムにおける可変装置の一般的な制御原理を示すフロー図である。
図16は、本発明の一実施形態に係る駆動システムにおける可変装置の制御を示す図である。
図17は、本発明の固有の実施形態の動作を示すフロー図である(左側の各グラフは補正しないシステムを示しており、一方、右側の各グラフは補正されたシステムの応答を示す)。
本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1を参照して、乗用車などの車両用駆動システムは、普通はガソリンやディーゼル燃料が供給されるけれども、その代わりに、鉱油ガス、エタノール、あるいはその他の可燃燃料が供給されることもある、内燃エンジン70を備えている。一般的には、クランクシャフトの一端の出力部から出力される、エンジン70からの主な駆動力は、一般的には、摩擦クラッチやトルクコンバーターなどの軸継手74を介して、変速機72の入力部に結合されている。変速機72は、最小比率と最大比率との間で無段階に変速されてもよく、又は、複数の離散的な比率を有していてもよく、あるいは、運転者による手動により又は自動的に制御されてもよい。変速機72が無段階変速である実施形態では、その入力部の速度に関わりなく、出力部が静止している「ギアード・ニュートラル」比率を有していてもよい。そのような実施形態では、軸継手74は省略される。変速機72の出力部は、最終駆動システムの入力部に結合されており、同様にして、車両の駆動輪に駆動力が伝達される。最終駆動システムは、車両の2つの駆動輪(2つの前輪又は2つの後輪)を駆動してもよいし、あるいは、一般的には、動力分配装置を介して、駆動力を分割して、車両の全ての車輪を駆動してもよい。
上記は、本発明を具体化する駆動システムの一般的な構成の範囲を説明したに過ぎない。異なる構造の変速機又は最終駆動を用いて、異なる構造にすることも可能であり、この駆動システムは、内燃エンジンが主要な原動力である広範囲な用途において、駆動装置に組み込むことができる。
内燃エンジン70は、過給機構を有する吸気系統を有している。この過給機構はスーパーチャージャー80を備えている。スーパーチャージャー80は、適切な周囲の大気圧で、吸気口を介して空気を吸い込み、スーパーチャージャー80の駆動軸84の回転速度によって決まる圧力差によって、吸気口の圧力よりも高い圧力で、エンジン70の吸入マニホールド82に空気を供給する。スーパーチャージャー80を通過する空気は、通常はエアーフィルター及び空気流量計、及び、火花点火エンジンの場合、スロットル本体をさらに通過する。これらの構成要素のいずれか又は全ては、スーパーチャージャー80の下流側又は上流側に配置されていてもよい。
スーパーチャージャーの駆動軸84は、エンジン70のクランクシャフトから又は変速駆動ユニット90の出力軸から駆動される。駆動ユニット90は、エンジン70のクランクシャフトによって駆動される入力軸を有している。この実施形態では、駆動ユニット90の入力軸は、エンジン70のクランクシャフトの一端に取り付けられたクランクシャフトプーリー94に駆動ベルト96を介して接続されたプーリー92が取り付けられている。駆動ベルト96は、交流発電機、空調ポンプ、パワーステアリングのポンプなどの、その他の付属物を駆動してもよい。
駆動ユニット90の目的は、スーパーチャージャー80の駆動軸84が、車両駆動システムの動作の任意の条件に対して、最適条件に限りなく近い速度で回転することを保証することにある。駆動力は、エンジンのクランクシャフトからスーパーチャージャー80の駆動軸84に伝達されるので、駆動速度が変化される3つの主要な段階が存在する。第1は、クランクシャフトからの駆動力は、駆動ユニット90の入力部を比率R1で駆動し、第2は、駆動ユニット90の内部に可変比率RVの段階が存在し、第3は、駆動ユニットの内部に固定された比率R2の段階が存在する。そのため、スーパーチャージャー80の駆動軸84の瞬間速度ωSは、クランクシャフトの速度ωCから、ωS=ωCR1R2RVで計算される。R1R2は、駆動システムの設計の一部として計算された一定値であるので、駆動システムの制御は、RVの瞬間的な最適値の計算と、可変比率段階をRVの値の比率で操作させることを含む。
これには限定されないが、特に遠心型スーパーチャージャーに用いる好適な実施形態では、駆動ユニットの可変比率段階RVは、比率制御されたフルトロイダル可変装置を備え、比率固定段階R2は、トラクション遊星駆動系を備えている。そのため、駆動ユニット90の軸は、可変装置の入力部を駆動し、可変装置は、遊星歯車列の入力部を駆動する出力部を有し、遊星歯車列は、スーパーチャージャー80の駆動軸84に結合された出力部を有している。
本発明の実施形態では、必要な速度範囲で動作可能であり、必要な動力を処理することができる様々な種類の比率制御された可変装置を使用することができるけれども、特に自動車の用途に用いられたときに、製造コスト及び動作に必要なパワーを最小にするという強い動機が存在する。可変装置内部のローラーのピッチを変えることによって比率が制御される可変装置の範囲は、特に有利であることがわかった。それらのいくつかの可変装置についてこれから説明する。
図3〜6は、本発明の実施形態の可変装置の一部分を異なった場所からの眺めを示す。この可変装置は、一般的には環状である入力軌道輪10を備えている。この入力軌道輪10は内周面を有しており、内周面の内側には、入力軌道輪10の作用面を提供するように弓形断面の環状凹部12が形成されている。この可変装置は、入力軌道輪10とほぼ同じであり、図4において破線で示された出力軌道輪14をさらに備えている。入力軌道輪10と出力軌道輪14は、可変装置の軸V上に同軸に配置されており、それらの作用面は互いに対向し、それによって、これらの軌道輪10と14の間に、これらの作用面によって結合されたトロイダルキャビティーを形成する。各軌道輪10及び14は、それぞれ可変装置の軸Vに対して回転するように取り付けられている。
回転部品、この場合、好ましい形状の外側回転面を有するほぼ円筒状のローラー20,22は、トロイダルキャビティーの内部で動作するように配置されている。この実施形態では、このようなローラーが2つ存在するけれども、その代わりにより多くの数が設けられうることは理解されるべきである。
各ローラー20,22は、それぞれローラーキャリッジアッセンブリー24,26に取り付けられている。各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26は、ステム28,30及びフォーク32,34を含む。各フォーク32,34には、ローラー20,22が、それぞれ取り付けられており、ローラー20,22は、その中心を通って伸びた回転軸に対して回転するように軸受け上を回転することができる。各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26の内部において、各フォーク32,34は、その回転軸に対して垂直なチルト軸に対して、それぞれ、そのステム28,30上で回転することができる。
各キャリッジアッセンブリー24,26は、図4に示すように、ステム28,30のチルト軸が、平面Pに対して傾斜するように、取り付けられている。平面Pは、図4に示すように、キャスター角として知られている角度「α」の位置で、この可変装置の軸に対して垂直である。各ローラー20,22は、それぞれ、ローラー20,22の中心を通り、ステム28,30の縦軸であるチルト軸に対して自由に旋回することができ、換言すれば、キャスター角は、チルト角と可変装置の中心軸の間の角度である。
入力軌道輪10は、2つの軌道輪の間に駆動係合されたローラー20,22によって駆動され、ローラー20,22を介して駆動力を出力軌道輪14に伝達する。
この可変装置は、支持体44上に支持されたスライダー42を備えた制御アッセンブリー40を含む。スライダー42は、固定された部分44に対して、相対的に往復直線運動をするように構成されている。杭46は、支持体44から溝48を突き抜けてスライダー42の内部に突出しており、支持体上でのスライダー42の動作範囲を制限するためのストッパーとして作用する。制御アッセンブリー40は、並進運動によってこの可変装置の制御動作を行うように構成されている。スライダー42は、可変装置の軸に対して垂直な平面上を、矢印Cで示された方向に支持体44に沿って前進及び後進することができる。この実施形態では、スライダー42は、可変装置の軸Vに平行な円筒面の半径方向に外側で、且つ、入力軌道輪10及び出力軌道輪14の大きな方の外周に対して接線方向の位置で、各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26に結合されている。他の実施形態では、キャリッジアッセンブリー24,26は、それぞれ、それら独自の駆動装置によって駆動されてもよい。支持体44は、それぞれ、可変装置の軸Vに対して垂直な可変装置の中心面に対してキャスター角αで傾斜した反作用面50,52を有している。
制御アッセンブリー40は、作動連結部56,58によってキャリッジアッセンブリー24,26に動作可能に結合されている。作動連結部56,58は、ステム28,30をスライダー32に対して旋回可能としながら、スライダー32と共に直線的に動くように、各ステム28,30の上端部を拘束している。一つの制御アッセンブリー40で、両方のキャリッジアッセンブリー24,26を同時に制御する。キャリッジアッセンブリー24,26は、また、それぞれの反作用点において、制御アッセンブリー40に結合されている。各反作用点は、支持体44の各反作用面50,52の内部に伸びた弓形の溝60,62を備えている。各キャリッジアッセンブリー24,26のステム28,30は、溝60,62の内側を各反作用ピン64,66が自由に摺動するのを可能にしつつ、十分密着するように摺動するように、各弓形の溝の内部に伸びた突き出た反作用ピン64,66を有している。ステムには、溝とスムーズな係合及び回転可能な係合をするように、ローラーが取り付けられていてもよい。
(他の構造においては、弓形の溝は、ステムが溝を突き抜け、ローラーキャリッジアッセンブリーの位置決めをするために、溝と共同して係合部を形成するように、ステム28,30に対して垂直に配置されていてもよい。)
各ローラー20,22及びそのキャリッジアッセンブリー24,26は、入力軌道輪の作用面上及び出力軌道輪14の作用面上でのローラー20,22との間の接触、作動連結部58,58での制御アッセンブリー40との接触、及び、反作用ピン64,66及びそれらの溝60,62を介した反作用点での接触の、全体として可変装置との4つの接触点を有している。各キャリッジアッセンブリー24,26は、制御アッセンブリー40との2つの接触点及び入力軌道輪及び出力軌道輪の作用面とローラーとの接触によって、トロイダルキャビティーの内側に位置している。これらの接触点は、キャリッジアッセンブリー24,26が、ローラー20,22の中心を通り、スライダー44の動作面に対して垂直な各操舵軸A−A’及びB−B’に対するピッチ角を変化させるように、旋回可能に取り付けられていることを意味する。この操舵軸は、キャリッジアッセンブリーのチルト軸に対して垂直である。キャリッジアッセンブリー24,26は、ローラーの旋回軸から半径方向に離れた位置にある作動連結部56,58を介して動かされ、それによって、キャリッジアッセンブリー24,26が軸A−A’及びB−B’を中心とする円弧に沿って移動する。ローラーは、係合部14,24と溝33,34の係合によってガイドされている。ローラーキャリッジアッセンブリー24,26は、反作用点に対して反作用ピン64,66がそれらの溝60,62に係合されることによって旋回運動が拘束される。
スライダー44の動作を生じさせるキャリッジアッセンブリーの旋回運動は、それらの(すなわち、ローラーの中心を通り、可変装置の軸Vと平行な)チルト軸に対する回転成分を、ローラー20,22に分け与える。この旋回運動は、また、比率変更軸と呼ばれる、チルト軸に垂直な軸に対する回転成分を分け与える。この回転は、各ローラー20,22が速度比率を変化させるようにそのチルトを変化させることを可能にし、入力面及び出力面からの接触力に瞬間的に直面するかもしれない。作動軸に対して回転してもよいように、フォーク32,34にローラー20,22を取り付けることにより、可変装置の比率を変化させるように、各平衡点に達するまでの抵抗が最も小さくなる軌道を求めるように、ローラー20,22がチルトすることを可能にする。このように、キャリッジアッセンブリーの旋回運動とチルト軸に対する自由な回転の組合せを介して、可変装置における速度比の変化をもたらすように、ローラーはチルト運動を自由にできる。そのため、ローラー20,22は、可変装置の軸に平行な軸に対してピッチングすることによって、作動力に応じて、その向きを変える(すなわち、そのチルト量を変化させる)ことができ、また、可変装置の速度比を変化させるために、その位置を変化させることができる。ローラーのチルトを変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように作用するいずれかの成分を最小にする、最適な旋回運動を達成するために、溝60,62は、その形状が可変装置の軸に垂直な面に投影されたときに、可変装置の軸を中心とする円弧状となるように、形成されている。
他の実施形態では、各キャリッジアッセンブリーは、ジンバルを介してステムの端部に取り付けられた複数のローラーを有する1つのステムのみを備えている。この構造において、各ローラー20,22は、ローラーがチルト軸に対して自由にチルトするように、ローラーの中心を通るピボット継手によって、それぞれのキャリッジアッセンブリーに取り付けられている。ステムは、ちょうど可変装置の中心面P上に位置しており、ジンバル構造は、ローラー20,22が自由にチルトするように、キャスター角と自由度を提供する。
図7及び8は、入力軌道輪110と出力軌道輪(図示せず)との間で駆動力を伝達するローラー120,122に動作可能に結合された反作用部材160を含む可変装置の一部分を示す。反作用部材の目的は、ローラー120,122からの反作用トルクを受け止めることにある。ローラー120,122は、キャリッジアッセンブリー162,164に取り付けられている。各キャリッジアッセンブリーは、搬送体166,168及び取付部品170,172を備えている。各ローラー120,122は、各搬送体166,168上で、その軸に対して回転するように搬送される。各搬送体166,168は、各取付部品170,172に旋回可能に結合されている。
各取付部品170,172は、制御部材174に沿った直線運動が防止されるように、細長い制御部材174上に保持されている。制御部材174は、取付部品170,172も一緒にC方向に動くように、C方向に往復直線的に動く。(この実施形態では、制御部材は、図1〜4に示すスロット構造を有する可動部及び固定部を備えていない。)各キャリッジアッセンブリーは、取付部品170,172と制御部材174の間の結合、及び、ローラー120,122が反作用部材160と接触することによる、その中心の反作用点によって、トロイダルキャビティーの内部に位置している。この実施形態では、反作用トルクは、制御部材174ではなく、反作用部材160によって受け止められる。
反作用部材160は、可変装置の入力軸及び/又は出力軸が隙間を空けて貫通する開口182を有する本体180を備えている。反作用軸184,190は、本体180から同軸に、且つ、反対方向に突出しており、可変装置の中心面内で可変装置の軸に対して垂直に、一列に並べられている。各反作用軸184,190の端部は、それぞれ、可変装置の筐体100及び筐体100に固定された取付ブロック194に形成された開口内で保持され、軸184,190は開口内で回転することができる。反作用部材160には偶力が作用するので、軸184,190を無理矢理回転させようとする回転が生じる。しかしながら、軸184,190の端部を開口内で拘束することにより、反作用トルクが打ち消される。反作用部材160は、ローラー120,122からの反作用トルクが反作用部材160に伝達され、ローラー120,122と反作用部材160の間の相対的な旋回運動を可能とするように、球面継手186,188によってローラー120,122の中心に動作可能に連結されている。反作用部材160は、ディスクの回転中、ディスク/ローラーの接触によって生じる反作用トルクを受けて、可変装置の軸に対して回転し、それによって可変装置の比率を変更するように取り付けられている。
制御部材174は開口192で反作用部材160を貫通しているが、それには連結されていない。反作用トルクが受け止められ、反作用部材が可変装置の軸に対して回転するように、詰まりを防止するために、制御部材174と開口192の間に十分な隙間が設けられている。
反作用部材160は、可変装置の軸の半径方向に動くことができ、反作用部材160がトロイダルキャビティーの内部で各ローラー120,122により発生された反作用負荷をバランスさせるように、半径方向でない方向に動いてもよい。
反作用部材160は、例えば可変装置の軸に対して半径方向の本体180の動きを減衰させるダンパーを含んでいてもよい。可変装置の軸に対して半径方向の反作用部材160の動きを制限するために、機械的なストッパーを設けてもよい。
図9は、本発明を具体化したツインキャビティー型の可変装置の一部分を示す。この可変装置は、1つの入力軌道輪210と、可変装置の軸方向で、入力軌道輪210の反対側に配置された(1つだけしか示していないが)同様の第1及び第2の出力軌道輪214を備えている。各出力軌道輪214は、入力軌道輪210に対向する作用面216を有している。入力軌道輪210は、第1及び第2の出力軌道輪214にそれぞれ対向する第1及び第2の作用面212を有している。それゆえ、2つのトロイダルキャビティーが、第1のものは入力軌道輪210と第1の出力軌道輪214の間、第2のものは入力軌道輪210と第2の出力軌道輪の間に形成される。
第1組のローラー220,222は、入力軌道輪210と第1の出力軌道輪の間で駆動力を伝達するように、第1のトロイダルキャビティー内に設けられ、第2組のローラー220’,222’は、入力軌道輪210と第2の出力軌道輪214の間で駆動力を伝達するように、第2のトロイダルキャビティー内に設けられている。各ローラー220,222;220’,222’は、それぞれキャリッジアッセンブリー224,226;224’,226’に取り付けられている。各キャリッジアッセンブリーは、搬送体266と取付部品270を備えている。ローラー220は、搬送体266上で回転するように取り付けられている。搬送体は、ローラー220,222;220’,222’のチルト角を変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように、チルト運動が自由にできるように、取付部品270に結合されている。各キャリッジアッセンブリー224,226;224’,226’は、各ローラーの中心を通る軸に対して旋回運動するように取り付けられている。
各アクチュエーター280,280’は、各キャビティーに結合されている。各アクチュエーター280,280’は、可変装置の筐体200に固定された本体282,282’と、場合に応じて、電気信号又は油圧流体を各アクチュエーター280,280’に適当に加えることによって直線的に本体に出入りするように駆動されるアクチュエーターロッド284,284’を備えている。
各キャビティーの内部で、2つのキャリッジアッセンブリー224,226;224’226’の取付部品270は、共通の制御ロッド274,274’に結合されており、取付部品は直線運動に逆らって制御ロッドに固定されているが、制御ロッドに対しては旋回可能である。各制御ロッド274,274’は、制御ロッドとアクチュエーターロッドの間の旋回動作を許容する継手288,288’を介してアクチュエーターロッド284,284’にそれぞれ結合されている。そのため、アクチュエーター284,284’の動作は、制御ロッド274,274’の直線運動及び、それによるキャリッジアッセンブリー224,226;224’226’の直線運動を生じさせる。
先に説明した実施形態と同様に、各キャビティーは、各ローラーから生じた反作用負荷を反作用部材が受け止めるように、球面継手によってローラー220,222;220’,222’が動作可能に結合された反作用部材260,260’を有している。先に説明した実施形態と同様に、各反作用部材260,260’は、複数の反作用軸を有しており、その一つの端部は可変装置の筐体200の開口中に保持されている。その他の反作用軸は、制御ロッド274,274’か貫通する開口を有するヨーク286,286’によって固定されている。
反作用部材260,260’は、荷重分散アッセンブリーによって動作可能に連結されている。荷重分散アッセンブリーは、軸受け292によって筐体286に取り付けられた棒290を備えている。棒290は、軸受け292に対して対称に、ヨーク286,286’に旋回可能に結合されている。そのため、等しく反対向きの力が、ヨークを介して各反作用部材に対して加えられ、2つのトロイダルキャビティー内で、ローラー220,222;220’,222に対して等しい反作用トルクが加えられることを保証する。
図10〜12は、本発明の他の実施形態を示す。この可変装置は、入力軌道輪310と、可変装置の軸方向で、且つ、入力軌道輪310とは反対側に配置された、同様の第1及び第2出力軌道輪314(一方のみを示す)を備えている。これらの軌道輪の間に形成された2つのトロイダルキャビティーのそれぞれの内部には、3つのローラー320,322,324;320’,322’(もう1つは図面には示されていない)が存在している。
この可変装置は、各キャビティーの内部に、反作用部材360,360’を備えている。反作用部材360,360’は、可変装置の筐体300の旋回可能に取り付けられた棒390を含む荷重分散アッセンブリーによって互いに連結されており、各反作用部材360は、軸受け392に対して対称に回転可能に棒390に結合されている。
各ローラー320,322,324;320’,322は、それぞれキャリッジアッセンブリー326,328,330;326’,328’(もう1つは図面には示されていない)によって旋回するように搬送される。各ローラーキャリッジアッセンブリー320,322,324;320’,322は、搬送体366及び取付部品370を備えている。ローラー320は、搬送体366上に回転するように取り付けられている。搬送体366は、ローラー320,322,324;320’,322’のチルト角を変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように、チルト運動が自由にできるように、取付部品370に結合されている。制御杭372は、各取付部から突出している。
環状の制御部材340,340’が、各キャビティーの内部に設けられている。各制御部材340,340’は、3つの放射方向の溝342を有し、それらには、それぞれ1つの制御杭372が受け入れられている。この可変装置は、さらに、各キャビティーに結合されたアクチュエーターを含む。各アクチュエーターは、可変装置の筐体300に固定された本体382,382’と、場合に応じて、電気信号又は油圧流体をアクチュエーターに適当に加えることによって直線的にシリンダーの出し入れを駆動することができるアクチュエーターロッド384(もう1つは図面には示されていない)を備えている。各アクチュエーターロッド384は、それぞれ軸受け344,344’によって制御部材340,340’に結合されている。この構造により、アクチュエーターの動作は、制御部材340,340’を回転させ、さらに制御杭370の動きを生じさせ、それによって各取付部品370上の搬送体366の回転を生じさせる。
図13及び14において、反作用部材460は、所定のレベルよりも上の反作用トルクに応答して、可変装置の軸に対して回転するように取り付けられている。反作用部材460は、可変装置の入力軸及び/又は出力軸が隙間を空けて貫通する開口482を有する本体480を備えている。反作用軸484,490は、本体480から同軸に、且つ、反対方向に突出しており、可変装置の中心面内で可変装置の軸に対して垂直に、一列に並べられている。第2実施形態のように、反作用軸490の一方はヨーク486を介してアクチュエーター480に結合されている。他方の反作用軸490は、弾性取付アッセンブリー430に結合されている。
この実施形態では、弾性取付アッセンブリー430は、反作用軸490が結合された支持棒432と、可変装置の筐体に結合されたクレイドル434を含む。支持棒432は、それに対して反作用軸490が反作用トルクの力を加える圧縮ばね436によってクレイドルの内部に保持されている。反作用トルクは、支持棒432上に偶力を生じさせ、その回転は反作用軸490の変速機を変位させる。ばね436は、加えられる力が特定の閾値を超えるときに歪められるように設定されていてもよい。例えば、制御部材が検出された反作用トルクを減少させ、それによって可変装置を通過するトルクを減少させるように作用するように、分配された力を検出し、制御部材470への入力信号を用意するために使用されてもよい。
直ぐ上の段落で説明したように、可変装置を組み込んだ本発明の実施形態では、その可変装置は、閾値を超えたトルクが制御システムの動作を補完するように作用するときは、反作用部材によって結果的に比率を小さくするように構成されている。そのため、動作条件における一時的な変化がエンジンを急激な加速又は減速させるとしても、このような構成を備えた可変装置は、過給機構の部品及びそれに結合された部品を、過剰なトルクによる破損から保護することができる。
これらの実施形態のそれぞれにおいて、回転部品のピッチングを生じさせる可変装置の動作が、ほとんど又は完全に回転部品の半径方向外向きに発生されていることがわかる。そのため、動作を実行するために責任を負う構成部品は最小化され、回転部品間の空間内には侵入しない。これらの実施形態のそれぞれにおいて、回転部品にピッチングを生じさせる可変装置の動作が、可変装置の軸に平行な方向における軌道輪内の空間で発生され、軌道輪を越えて拡がることはない。多くの場合、可変装置が大きな変速システムの一部分として用いられるときは、構成部品を収納することができる利用可能な空間は、可変装置の軸方向における軌道輪の外側にはほとんど又は全くない。また、各実施形態において、それの周りにピッチング回転が生じる軸は、シャフトなどの物理的な部品とは一致せず、その代わりに、軸は、チルト軸から離れた(作用点又は反作用点などの)構成要素によって搬送体の動きに課された制約によって決定される。
過給機構は、内燃エンジン70の動作を最適化することを目的として、スーパーチャージャーを特定の比率RVで動作させるために、可変装置のアクチュエーターに適用される信号を生成するように動作する制御システムをさらに含む。
好適な制御方法を描いた一般的なフローチャートを図15に示す。具体例を図16に示し、その動作を説明する。
この制御システムは、車両の運転者の意図を実現するために必要な所望のエンジン動作をさせる、車両のアクセルペダルのような動作制御の位置(又は、自動速度制御装置のようなその他の制御機構)に反応する。この制御システムは、スーパーチャージャーの圧縮機の速度、スーパーチャージャーの空気圧、空気の流量又は直接的にエンジンのトルク出力であるかもしれない、スーパーチャージャーの制御変数要求を発生させる。そして、選択された制御変数要求は、制御方法における主要な制御入力として機能し、制御方法は閉ループ又は開ループであってもよい。この実施形態では、このことは、スーパーチャージャー80の出力側に現れる空気圧を計算することによって達成される。この制御システムは、スーパーチャージャーの空気圧要求400を発生させる。そして、制御システムは、現在のエンジン速度ωCでのスーパーチャージャー空気圧要求を達成するために必要な空気流量を計算する。開ループの具体例では、空気流量要求を達成するであろうスーパーチャージャーの速度を決定するためにスーパーチャージャーの圧縮機マップ412が用いられ、そして、それから開ループのスーパーチャージャーの安定状態の速度要求を発生される。これから、可変装置の比率の目標値(又は安定状態の可変装置の比率)(この具体例では、有効な制御変数であるとみなされる)は、ステージ414に入力される。
一般的に、先に述べた理由(正味のエンジントルクの輪郭は滑らかでも連続的でもなく、過大な慣性トルク又はジャークがクランク上に現れるので)により、制御変数要求に段階的な又は段階的に近い変化を適用することは望ましくない。その代わりに、クランクに加えられる慣性トルクが、(クランクに伝わる)スーパーチャージャーの全負荷が閾値を超えないように、変化の割合を伴った瞬間的な可変装置の比率の目標値を決定するために、可変装置の比率の目標値要求を変形させる。これは、安定状態における可変装置の比率の目標値に漸近線的に近づけることによって達成されることが好ましい。それゆえ、ステージ414は、好ましく変形された可変装置の比率及び可変装置の比率の変化の割合の信号を出力する。この例では、また、信号は、瞬間的な動作パラメーター420の範囲に応じた飽和限界内で減少するように、ステージ416において補正される。これらのパラメーターは(潜在的に他のものに混じって)、
・(測定された可変装置の入力速度と出力速度から導き出された)可変装置の比率であって、その要求が、可変装置にその動作範囲外の比率を採用しようと試みさせないことを保証するためのもの;
・可変装置の出力速度であって、その要求が、可変装置にその最大出力速度を越えようと試みさせないことを保証するためのもの;
・スーパーチャージャーの速度であって、その要求が、可変装置にその最大動作速度を越えようと試みさせないことを保証するためのもの;
・(空気流量要求及びスーパーチャージャーの空気圧要求から導き出すことができる)可変装置によって伝達される動力とトルクであって、これらが最大動作値を超えないことを保証するもの
を含む。
そして、瞬間的な目標値は、制御手段ステージ422を決定するために用いられ、この目標値は、直接的に可変装置の比率を制御するアクチュエーター424を駆動させるために供給される線型位置要求である出力を有している。線型位置は、可変装置の比率に関する信号であると理解される。このステージは、ステッピングモーターなどの公知の線型位置を有するアクチュエーターが用いられるときは開ループであり、非線型アクチュエーターが用いられるときは閉ループであり、この実施形態は後者の構成を採用している。閉ループ制御ステージ422は、また、出力側に現れる線型位置要求と測定された線型位置426との差である誤差入力を有している。
さらに、閉ループ制御ステージ422への入力は、測定された空気流量430及び測定されたスーパーチャージャーの圧力の比率432を含み、これらは、可変装置のトルクを示す信号を導き出すために、ステージ434で結合処理される。
この慣性トルクの値は、制限ステージ440で、安定状態のトルク値と結合される。
同様に、可変装置の比率それ自体は、スーパーチャージャー又は圧縮機の最大速度を超えないように、ステージ440で制限される。
図17は、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込んだように、可変装置の入力を急激に変化させるための制御システムの動作を示す。このグラフの左側欄は、飽和限界を考慮しない反応を示し、一方、右側欄は、上で説明した飽和限界の効果を示す。
本発明は、エンジンの付属装置を駆動するための駆動機構に関する。特に、これに限定されるものではないが、スーパーチャージャーやその他の装置用の駆動機構に応用され、無段階変速装置(CVT)を含む駆動システムを介して、内燃エンジンからスーパーチャージャーに駆動力が伝達される機構を有する。
本発明は、特に乗用車や軽量貨物車に応用される。これは、本発明の唯一の応用ではないけれども、この応用は、本発明がどのように実施されるかを説明するための基礎として用いられる。これに関して、本発明の実施形態は、一般的に、フットペダルを用いることにより、運転者によって制御されるエンジンに用いられ、フットペダルは、一般的に、運転者が車両の変速機に伝達されるエンジンの総トルクを制御することを可能にする。ガソリンエンジンの場合、このペダルは、直接的に又は間接的に、エンジン内部への空気の流れを調節するスロットルの位置を制御し、一方、ディーゼルエンジンの場合、このペダルは、直接的に又は間接的に、エンジンの内部に噴射される燃料の量を制御する。そのため、この明細書においては、エンジンの操作における実際の物理的な効果とは無関係に、一般的にこのようなペダルを指す、広く用いられている「アクセルペダル」という語句を用いる。
内燃エンジンの効率を改善し、その結果二酸化炭素排出量を減らすために重要な貢献を果たすものとして、過給器が考えられる。特に、(排気によって駆動されるターボチャージャーと比較して)エンジンから駆動されるスーパーチャージャーは、いつでもエンジン内に入ってくる空気量に対して非常に大きな制御を可能にし、さらに、排ガスの減少と合わせて、エンジンのパワー及び駆動レスポンスの改良された制御を提供することができる。
一般的に、スーパーチャージャーが駆動される回転速度は、エンジンのクランクシャフトの回転数よりも何倍も大きい。例えば、一般的な乗用車用のガソリンエンジンは、750〜6000rpmの間の速度で操作されるが、遠心型スーパーチャージャーは、40000〜250000rpmの間で操作する必要がある。現在までは、一般的に、クランクシャフトとスーパーチャージャーとの間に、固定された比率の増速歯車列を設けることによって達成されている。
スーパーチャージャーをクランクシャフトの速度に対して固定された倍率で駆動することは、最適でないことは明らかである。もしも、このスーパーチャージャーシステムが、低いエンジン速度のときに、可能な限り最大のエンジントルクを出力するように構成されていたとしたら、高いエンジン速度のときには、動力が無駄になる。もしも、このスーパーチャージャーシステムが、高いエンジン速度のときに、可能な限り最大のエンジントルクを供給するように構成されていたとしたら、低いエンジン速度のときには、エンジントルクは不十分であるかもしれない。クランクシャフトとスーパーチャージャーの間に設けられた変動比率駆動は、低いエンジン速度での最大エンジントルクを出力しつつ、スーパーチャージャーに供給される無駄なエネルギーの総量を少なくするために用いることができることは明らかであり、無段階変速駆動は、比率を段階的に変更する駆動に対して有利であることは明らかである。
ここで、エンジンの利用可能なトルクのほんの一部を用いて、車両をほぼ一定の速度で駆動するように、エンジンが操作されているという状況、及び、例えば、低速車両を追い越すために、運転者は、アクセルペダルを急に押し下げる状況を考える。理想的には、最大エンジントルクという運転者の要求に応えるために、スーパーチャージャーは、可能な限り短い時間で最大速度まで加速されるであろう。このような要求に応えるために、変動比率駆動が、すぐさま低い比率から高い比率に上昇されるならば、エンジンの出力トルクの大部分は、まさしくスーパーチャージャーを加速するために必要とされ、そのため、車両を加速するために利用することはできない。適切な制御がなされないならば、このようにたくさんのトルクがスーパーチャージャーの駆動によって吸収され、急なアクセルペダルの押し込みは、駆動輪に伝達されるトルクの一時的な低下を引き起こすという状況を容易に想像することができる。このことは、非常に望ましくない。
トルク制御された可変装置を組み込んだ無段階変速システムは、この制御の問題に対して直接的な回答を提供する。このような可変装置は、例えば国際公開第2004090382号に開示されているように、この分野の当業者にとっては公知であり、一般的には、しかし、これに限定されないけれども、トロイダルトラクションドライブ型のものである。変速機に対する制御入力は、スーパーチャージャーに伝達されるトルクを制御することができ、これは、所定の最大値又は現在の総エンジントルクに対する比例(固定又は可変とすることができる)に設定することができ、それによって、正味のエンジンの出力トルクは、運転者の要求を満たすのに十分であることを保証する。しかしながら、トルク制御された可変装置は、一般的に、それらのトルク伝達部品を作動させる作動力を必要とし、結果的に、制御アクチュエーターのような制御要素は、一般的に、比較的大きく、高価である。このことは、商用車の変速機の主駆動装置のような大きなシステムにおいては問題にはならないけれども、出力の小さなものにトルク制御されたシステムを用いることは、不釣り合いに大きなアクチュエーターのパワー消費をもたらす可能性がある。そのため、トルク制御された変速機は、制御の目的としては望ましいけれども、例えば、オイルポンプ、発電機、スーパーチャージャー、送水ポンプ、パラーステアリング装置、及び予備のファン駆動装置などの速度可変式のフロントエンジンの付属駆動装置(FEAD)のような費用と重量を最小限に維持しなければならないところでは、受け入れ可能な解決策を提供することはないであろう。
本発明は、内燃エンジンから無段階変速機を介してスーパーチャージャーのようなフロントエンジンの付属品が駆動され、費用、重量及び複雑さを最小限に維持しつつ、効果的な動作のために必要とされる一定の制御を提供することが可能な構造を提供することを目的としている。
この目的のために、本発明の第1の態様は:
回転駆動入力部を有するスーパーチャージャーと、
内燃エンジンからの駆動力を受け入れるための回転駆動入力部と、前記スーパーチャージャーの入力部に結合された回転駆動出力部を有する変速機と、
を備えた内燃エンジンのための過給機構であって、
前記変速機は、前記変速機の入力部と出力部の間に動作可能なように接続された可変装置を含み、その可変装置は、入力部に対してある動作比率で駆動される出力部と、前記可変装置の前記動作比率を設定するための制御システムを有し、
前記制御システムは、エンジンに、前記制御システムに対する入力状態によって示された動作状態をとらせるように動作し、
前記制御システムは、前記可変装置の前記動作比率を設定するように動作されることが好ましい。
本発明に至るまで、発明者らは、明らかに好ましいトルク制御と比較して、比率制御に基づく変速装置の動作の欠点よりも、比較可能な、所定の比率制御を実行させる動作に要求される簡単さ及び低出力によって達成される費用の節約と重量の軽減の方が優先することに気付いた。比率制御は、かなり大きな技術的課題を提供するけれども、トルク制御に基づく動作は、制御システムを簡単に実現することを可能にする(しなければならないことは、エンジン又はスーパーチャージャーに適用されるトルクの上限を設定することだけである)。
一般的に、この制御システムは、制御システムに対する1又は複数の入力の状態によって示された動作状態をエンジンにとらせるように動作しなければならない。
エンジンの動作状態は、エンジントルクの状態、正味のエンジントルクの状態、エンジンの「負荷」、速度、加速度、燃料―空気の動作比率、及び、排気目標値のうちの1又は複数であり、排気目標値は、二酸化炭素、微粒子、NOx又は好ましいであろうその他の排気目標値、触媒コンバーターを点火(有害な排気を外の少ない化合物に変換させるのに有効となる触媒コンバーターが動作温度に達する点)させるためのガスの温度及び組成を含む排気状態、又は、選択還元触媒(SCR)のような排ガスの後処理を手助けする排ガス状態であり、これらは、特に、商用車用のディーゼルエンジンにおいて普及している。この文脈において、「エンジントルク」の語句は、過給機構によって加えられる負荷よりも手前のクランクでのトルクを意味し、「正味のエンジントルク」の語句は、過給機構によって加えられる負荷よりも後のクランクでのトルクを意味することを考慮するべきである。「エンジン負荷」の語句は、所定のエンジン動作速度において利用可能な全ての正味のエンジントルクに対する割合のことをいう。
制御システムに対する1又は複数の入力は、(車両のアクセルペダルなど)人によって、自動速度制御装置や自動操縦装置などの自動化された制御によって、(安定制御システムのような)その他の車両制御システムによって、(それ自体は機械的であってもよいし、あるいはエンジン制御システムの不可分な一部分であってもよい)エンジン調速機によって、又は車両伝導機構システムによって、直接的に決定され、車両伝導機構は、1又は複数の自動式又は自動化された変速装置、無段階変速機及び(例えば、機械的、電気的又は油圧式変速装置を含む)CVT、((例えばフライホイールなどの)機械的、(例えば電池などの)電気的又は(例えばアキュミュレーターなどの)油圧式)エネルギー貯蔵システム、あるいは、例えばエアー圧縮機、空調システム、交流発電機、油圧ポンプ、及何らかの出力取り出し駆動装置などのその他の被駆動装置を備えていてもよい。このこと、及びエンジン、電動機構及び車両の瞬間的な動作状態の知識から、この制御システムは、この過給機構を伴った内燃エンジンの動作状態を代表する、制御変数の目標値を計算する。
以下の説明において、「関数」という語句は、制御変数、可変装置の比率及び可変装置の比率を変化の割合を調節するために、制御作動力を発生させるために用いられる変数及びアルゴリズムを説明するために用いられる。誤差という語句は、変数の目標値とその変数の実際の値との差を示すために用いられる。この文脈において、関数は、一般的に(直接の又は間接の)比例項又はスルーレート成分を含み、一般的に、誤差の値が増加するにつれて増加し、誤差の値が減少するにつれて減少する制御装置の作動力を発生させる。固定された関数、誤差に伴って変化する関数、任意の他の1つのシステムの変数又は複数のシステムの変数であってもよい。随意的に、関数は、誤差の積分及び微分のいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
制御変数は、スーパーチャージャーの速度、圧縮機の速度、可変装置の出力速度、スーパーチャージャーの給気圧、マニホールドの空気圧、空気流の総量、エンジンの出力速度、エンジンのトルク、エンジンの負荷、及び排気酸素の量のうちの1つ又は複数であってもよい。目標値と実際の(又は推定された)値との差である制御変数誤差が生じる。制御システムは、制御変数の誤差の関数として、制御変数に近づける変化の割合を決定し、制御変数の目標値にうまく近づけるために、可変装置の比率の変化に応じた割合及び可変装置の比率の一方又は両方を決定するために動作する。
随意的に、要求された可変装置の比率の変化の割合及び可変装置の比率は、閉ループ制御(すなわち、いわゆるフィードバック制御)を用いることによって実現してもよい。あるいは、コスト及び複雑さを低減させる(例えば、可変装置の入力部及び出力部の速度センサーなどの)センサーの使用を最少化するのに有利である、開ループ制御を用いてもよい。開ループ可変装置制御の一例は、フィードバック点を有しないステッピングモーターであり、一方、開ループ可変装置の変化の割合の制御の一例は、送りねじ及びナット機構を備えたDCモーターであり、電流を供給すると、モーターの電流に関連する割合で、ナットを所定距離だけ移動させる。閉ループ可変装置制御の一例は、フィードバックを有するステッピングモーター、又はエンコーダーを用いたフィードバック点を有する、送りねじ及びナット機構を備えたDCモーターである。開ループ可変装置の比率の割合及び可変装置の比率の制御の一方又は両方は、簡素化及び低コスト化の解決策を提供するので、好ましい。
制御変数は、開ループ制御又は閉ループ(すなわち、フィードバック)制御のいずれかを用いて調整されてもよい。開ループ制御は、制御変数が推定されるときに達成されてもよい。一例として、スーパーチャージャーの給気圧が制御変数であり、エンジン速度及び可変装置の比率がわかっている(可変装置の比率は、それ自体、開ループによる推定又は直接測定することによってわかる)場合を考えると、圧縮機の速度がわかる。圧縮機マップがわかった上で、圧縮機の速度及びエンジン速度の両方がわかると、制御システムは、特定の圧力センサーを必要とすることなく、給気圧を推定することができる。あるいは、直接給気圧を測定するために圧力センサーを用い、制御システムがこの変数に閉ループ制御を実行するためにセンサーの信号をフィートバックしてもよい。
制御変数の不適切な調整は、望ましくない特性を引き起こす可能性がある、例えば正味のエンジントルクにおける急速な変化の割合(これは、「ジャーク」と名付けられている)のような操縦性を備えた、望ましくない車両の駆動特性を引き起こす。関数は、先に述べたような多くの選択肢を含むけれども、目標値に近づけるための変化の割合は誤差の関数であることが好ましく、何らかの誤差の比例関数であることが好ましい。目標制御変数は、ほぼ漸近線的に近づくことが好ましい。例えば、目標マニホールド圧力をほぼ漸近線的に近づけると、最終的な正味のエンジントルク状態に近づける割合と同様になり、実際のところ、滑らかさと連続性の両方において望ましい。
また、クランクに伝わる
過給機構の慣性トルクが閾値を超えていると、車両の駆動輪に伝達される正味のエンジントルクが瞬間的に増加し又は減少するか、あるいは、いずれにせよ乱れ、再度、運転者が感じるであろう望ましくないトルク特性を引き起こすことを認識されるであろう。エンジンの加速度は、仮にエンジンが急激に加速したとしても、慣性トルクのこの成分は正味のエンジントルクにのみ衝撃を与えるにすぎないので、運転者によって体験されるトルクに対してはあまり大きな衝撃を与えない。しかしながら、制御変数の目標値を達成するために加えられる可変装置の比率の急激な変化の割合は、エンジン速度が固定されているときであっても、正味のエンジントルクに大きな乱れを生じさせる。クランクシャフトに伝わる慣性トルクの乱れは、以下のように表される。
安定状態のスーパーチャージャーのトルク及び過給機構からの慣性負荷に起因するトルクの乱れの合計は、閾値以下に維持されることが望ましい。他のシステム変数の状態及び動作条件に応じて、この閾値は可変であってもよい。閾値は、固定値であってもよいし、現在のエンジントルクに比例して可変であってもよい。スーパーチャージャーのトルクの合計(クランクに伝わる慣性トルク及び安定状態のトルク)は、エンジントルクよりも少ないことが好ましく、それによって、正味のエンジントルクが、極めて望ましくないエンジントルクと反対の符号にならないことを保証する。スーパーチャージャーのトルクの合計は、エンジントルクの50%未満であることが、より好ましい。トルクの変化の割合すなわち、ジャークの閾値は、所定の限界以下となるように制御される。
この問題は、クランクに伝わる過給機構のトルクが閾値レベル以下となるように、可変装置の比率の変化の割合を管理又は制限することによって、解決される。これは、制御変数用の多数の変数が、可変装置の比率の何らかの比例関数として関連している場合であり、例えば、可変装置の比率が給気圧に、スロットルが開いているときはマニホールド圧力に、緊密に関連していることを示している。このことから、可変装置の比率の変化の割合も、また、制御変数の大部分のタイプの変化の割合にも関連していることがわかる。それゆえ、滑らかで連続的であり、制御利得が適度に選択されることを条件に、制御変数の目標(例えば、マニホールド圧力)に近づける割合に目標を設定することにより、比率の変化の割合及びその後のクランクに加えられる慣性トルクは、これらの望ましい特性をさらに示すと思われる。そのため、制御変数の目標値に近づける条件は、好ましくは、また、一般的には、クランクに伝わる過給機構のトルク(慣性負荷における因子)を必要な閾値以下にすることを保証する。この方法は、また、慣性トルクの変化の割合の制御を含み、それによってジャークが所定レベル以下に維持されることが好ましい。
しかしながら、制御変数に近づける割合は、トルクの慣性成分がクランクに伝わる
過給機構のトルクが閾値レベルを超えさせないように、可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率の信号を生じさせることが可能である。一例として、制御変数と可変装置の比率の間に大きな非線形関数が存在したり、あるいは、制御変数の目標値への接近を支配する利得が、特定の状況の下で高い可変装置の比率を生じさせたりすることが起こるかもしれない。このため、以下のような表現を用いて、制御装置が、可変装置の比率の変化の割合の目標及び可変装置の比率信号から生じる慣性トルクを推定することが有利である。
このクランクに伝わる慣性トルクは、過給機構による総クランク負荷トルクを生じさせるために、クランクに伝わる過給機構からの安定状態の負荷トルクと合算されてもよい。スーパーチャージャーの安定状態の負荷トルクは、スーパーチャージャー特性マップのような他の利用可能なデータと共に、推測又は測定された制御変数から、及び推定された又は実際のエンジン動作点から、推定又は計算されてもよい。
もし、必要であれば、スーパーチャージャーの負荷(トルクの乱れを含む)が前記閾値を超えるか、又は望ましくないジャークを生じるような場合には、制御システムは、前記可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率信号の一方又は両方を変形、調整又は制限してもよい。
また、スーパーチャージャー及び/又は可変装置の動作限界によっては、制御装置は、可変装置の比率の変化の割合又は可変装置の比率信号の一方又は両方を変形させる必要があるかもしれない。先に述べたように、可変装置によって支えられた負荷は、可変装置の比率、隣接する駆動装置の比率、エンジンの加速度、可変装置の比率の変化の割合、エンジンの速度、空気の流量(それ自体はスロットルを開くことによって制御される)、圧縮機の圧力比、スーパーチャージャーの給気圧及び慣性のうちの1又は複数の関数である。スーパーチャージャーに伝えられる点火パルスは、また、瞬間的な高いエンジンの加速を生じ、これらは、全て、可変装置及びスーパーチャージャーの実行可能な動作限界を越えないように管理されなければならない。潜在的興味深い出来事の一例は、可変装置の比率の目標値における突然の増加を導くエンジントルク要求であり、これは、スーパーチャージャーの高い加速度に起因して可変装置に高い負荷を生じさせる。監視していなければ、このような負荷は、可変装置を破損したり、耐久性を減少させたりするであろう。危険な出来事の2例目は、例えば、変速ギヤがニュートラルのときに、全エンジントルクを加えることによるエンジンの高い加速度である。これは、可変装置に高い負荷を生じさせ、さらに、スーパーチャージャーの「過速度状態」と呼ばれるスーパーチャージャーが動作可能速度限界を超えるかもしれないといった付加的な危険を生じさせる。このような限界は、一般的に、圧縮機の求心性負荷限界又は軸受け速度限界に起因して生じ、その限界を超えると、機械的な損傷や危険な車両の動作を引き起こす。さらに、ある種の圧縮機は、ある動作状態にあるときに、望ましくない特性を示し、これらを回避することが好ましい。例えば、動圧縮機は、質量流量が少なく、圧縮比が高いときに、サージとして知られる現象に直面し、この現象はスーパーチャージャーの非効率な動作と破損を生じる。さらに、最も回避しなければならない圧縮機の非効率なその他の動作領域が存在する。1つの提案された解決策は、可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合の信号の一方又は両方を、可変装置及びスーパーチャージャーのそれぞれの所定の閾値を超えないように、管理することである。このようなスーパーチャージャーの閾値は、速度限界、サージ限界、圧縮比限界、給気圧限界及び駆動トルク限界の内の1又は複数を含んでいてもよい。可変装置の閾値は、クランプ負荷、入力トルク、出力トルク、反作用トルク、入力、出力、入力速度、出力速度、可変装置の比率及び接触牽引限界に関する1又は複数の限界を含んでいてもよい。従って、可変スーパーチャージャーシステムの回復動作を保証するために、制御装置は、さらに、可変装置の比率の変化の割合の目標値及び可変装置の比率信号を変形させることが有利である。
先に述べたように、可変装置の比率の変化の割合の目標値信号及び可変装置の比率信号を変形させるために、制御システムは、エンジン速度信号、及び好ましくはエンジン速度信号の変化の割合信号を用いてもよい。エンジン速度の変化の割合を測定する場合、一般的に、エンジン速度信号の数値的微分が必要である。このような技術は、それ自体の問題点を生じさせることがよく知られている。というのは、測定された制御信号は、電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic compatibility)インターフェース(しばしば「ノイズ」と呼ばれる)から、及びバックラッシし又は剛性(ワインドアップと呼ばれる)及び点火パルスの乱れのような機械的な影響から生じる無関係に重畳された信号を含んでおり、これら全ては、微分されたとき、加えられるべき制御作動力が不必要に攻撃的で散発的になる原因となる増幅された信号ノイズを生じさせる。この問題の一般的な解決策は、エンジン速度信号のフィルタリングであるが、これは、安定余裕と応答性の妥協である、制御システムに遅れをもたらす。提案された解決策は、全負荷のパーセンテージから、又は、変速比のような変速機及び車両の動作体制の知識と共に、既知の寄生又は補助駆動装置、伝導機構又は慣性負荷と組み合わせて伝達される正味のエンジントルク、からエンジンの平均加速度を予測することである。このことは、制御装置にエンジンの瞬間的な加速度の正確な推定値を提供し、可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合を要求されたように変形させることを手助けするために、フィルター処理されたエンジンの加速信号と任意に組み合わせてもよい。
それゆえ、前述の解決策を組み合わせた効果は、スーパーチャージャー制御システムの1又は複数の入力信号が、最終的に可変装置の比率の目標値及び可変装置の比率の変化の割合信号に変換され、さらに、制御手段を介して可変装置の入力に変換され、目標値に近づけるための1又は複数の変数を生じ、さらに、低コストで軽量であるけれども、十分に反応しうる可変装置システムを用いて、可能な限り素早く、正確に、エンジンを要求されている動作状態に適合させることである。
スーパーチャージャーシステムの最適な制御を達成するためには、可変装置の比率を速やかに変化させる必要がある。可変装置の比率を、大体−0.4から−2.5に変化させるためには、一般的に200ms以下であることが要求され、このことは、クランクにおけるトルク応答が400ms以内に達成されることを可能にする。このような応答性は、より大型で、小型化されていない自然吸気エンジンと調和しているように思われる。しかしながら、大きさ、コスト及び重さをそれぞれ最小化するには、可変装置のアクチュエーターのパワー要求を最小化する必要がある。このことは、スーパーチャージャーを含む自動車のFEADにとって、特に重要である。比率制御の選択肢は、高い応答性と組み合わされた低いパワーでの動作の可能性を提案しているけれども、実際のところ、広く普及するように、適当な可変装置技術が用いられることが重要である。
この可変装置は、(ポンプ及びモーターを組み込んだ)油圧型、電動発電機CVT、可変ベルト駆動CVT、可変チェーン駆動CVT、(例えば、Kopp可変装置として知られる可変装置を含む)ボールベアリングトラクション駆動であってもよく、機械的な駆動の場合、摩擦駆動又はトラクション駆動型であってもよい。一般的な例としては、可変装置はトロイダル型可変装置である。最も一般的には、可変装置は、その可変装置の部品間での駆動がトラクション流体を介して生じる、フルトロイダル型可変装置であってもよい。具体的には、可変装置は、一般的に、入力面と出力面であって、この入力面と出力面は、可変装置の軸に対して回転するように、同軸に取り付けられたものと、複数の作用面の間に形成されたトロイダルキャビティーと、前記入力面と前記出力面の間に配置され、これらの面との接触領域において係合駆動される複数の回転部品とを備えており、各回転部品は、それぞれ1つの回転軸に対して回転するように、キャリッジアッセンブリー上に取り付けられており、各回転部品は、それぞれ1つのチルト軸に対して自由に旋回することができ、前記チルト軸は前記回転軸に対して垂直に前記回転部品を通り、前記回転部品の中心で前記回転軸と交差しており、傾斜角が変化することによって、前記入力面と出力面の回転速度の比率である、前記可変装置の比率の変化を生じさせる。
可変装置の構成を選択することによって、費用と重量をさらに最適化することができる。特に、比率変更中の動作にあまり動力を必要としない可変装置が有利である。このことは、例えば電動アクチュエーターなど、安価なアクチュエーターを用いて可変装置を動作させることを可能にする。回転部品をピッチ軸に対して回転させることによって比率の変更を成し遂げる可変装置、すなわち、本出願人が「チルトスティーア」と呼ぶ機構は、特にこの用途に適する。そのため、本発明の好適な実施形態において、可変装置における各キャリッジアッセンブリーは、旋回運動を生じさせ、ピッチ軸に対する旋回運動は回転部品のピッチ角の変化を生じさせ、ピッチ軸は、回転部品の中心及び接触領域を通る。この可変装置は、各キャリッジアッセンブリーに前記旋回運動を開始させ、それによってピッチ角を変化させ、前記複数の回転部品をそのチルト軸に対して旋回させ、それによって可変装置の比率の変化をもたらすように動作しうる制御部材をさらに備えている。
可変装置の前記各トロイダルキャビティーは、有利なことに、2つの回転駆動部品しか含んでいない。この可変装置は、さらに、前記複数の回転部品に動作可能に結合された反作用部材を備え、この反作用部材は、前記トロイダルキャビティーの内部で前記回転部品からの反作用トルクを受け止める。
本発明の実施形態において、可変装置は、2つの類似したキャビティーを含んでいてもよく、それによって、前記可変装置は:第2のトロイダルキャビティーを形成する第2の入力面とそれに対向する第2の出力面と;前記第2の入力面と前記第2の出力面の間に配置され、これらの面と駆動係合される複数の第2の回転部品であって、各回転部品は、前記可変装置の比率を変化させるために、それぞれそのキャリッジアッセンブリー上に回転可能に取り付けられており、その回転部品の中心を通る1つの軸に対して旋回可能であり、前記回転部品の中心を通り、前記チルト軸まで、前記回転部品を垂直に突き抜けており、前記回転部品の回転軸に垂直で、且つ、前記比率変更軸にも垂直な軸に対して前記回転部品にピッチングを生じさせる旋回運動のために取り付けられているものと;チルト角の変化及び可変装置の比率の変化を生じさせるように前記各回転部品をピッチングさせるように、前記各キャリッジアッセンブリーを動作させるための制御部材と;第1のキャビティー内で前記複数の回転部品に動作可能に結合された第1の反作用部材及び第2のキャビティー内で前記複数の第2の回転部品に動作可能に結合された第2の反作用部材であって、前記第1及び第2の反作用部材は前記各回転部品から生じる反作用負荷をうけとめるもの;を備えている。
この可変装置は、さらに、前記反作用部材からの前記反作用トルクをバランスさせるように、前記第1及び第2のキャビティーも反作用部材に動作可能に連結された、荷重分散アッセンブリーを備えていてもよい。
本発明の一般的な実施形態は、さらに、前記可変装置に直列に接続された増速歯車列を備えている。この増速歯車列は、一般的には、前記可変装置と前記スーパーチャージャーとの間に接続されている。この増速歯車列は、トラクション駆動遊星歯車を備えていてもよく、前記可変装置のトラクション流体と共用であってもよい。
この可変装置は、前記可変装置によって前記スーパーチャージャーに作用されるトルクが閾値を超えたときに、前記可変装置の比率を少なくするように動作可能なトルク検出機構を含んでいてもよい。この機構は、過剰なトルクからのダメージに対して前記可変装置を保護する役目を果たすことができる。
この可変装置は、以下のものを備えた「ツイン−ローラー」構成を有していてもよい。
作用面を有する入力軌道輪及び出力軌道輪であって、これらの軌道輪は可変装置の軸に対して回転するように同軸に取り付けられており、トロイダルキャビティーが前記作用面の間に形成されているもの;
前記軌道輪の間で2つ1組になって配置された複数の回転部品であって、各組の回転部品は、それぞれ、互いに傾斜した複数の回転軸に対して回転するように、キャリッジアッセンブリー上に取り付けられており、各組の回転部品は互いに駆動係合されており、各組の回転部品は、それぞれ一方の作用面にそれぞれ駆動係合されており、各キャリッジアッセンブリーは、チルト軸に対して自由に旋回することができ、前記キャリッジアッセンブリーのチルトの変化により前記回転部材と前記軌道輪の間の接触の半径を変化させ、それによって前記可変装置の比率を変化させるもの。
前記スーパーチャージャーは、(例えば、遠心圧縮機や軸流圧縮機などの)動圧縮機、又は(例えば、スクリュー式ポンプ、スクロール式ポンプ又はローブポンプ)などの容積式圧縮機を組み込んでいてもよく、複数の同じような又は異なったタイプの圧縮機を含んでいてもよい。好適な実施形態は、遠心圧縮機を備えている。
本発明の第2の態様は、内燃エンジンを備えた車両用の動力伝達系を提供し、その動力伝達系は、本発明の第1の態様の実施形態による過給機構を組み込んだ吸気系統を有している。
図1は、本発明の一実施形態に係るスーパーチャージャーを含む車両駆動システム及びスーパーチャージャーの駆動機構を示す図である。
図2は、図1の実施形態の構成要素である駆動ユニットを示す図である。
図3は、本発明の実施形態での使用に適する第1の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図4は、図3に示す可変装置の一部分の制御アッセンブリーを示す図である。
図5は、図3に示す可変装置の一部分の平面図である。
図6は、図3に示す可変装置の一部分の側面図である。
図7は、本発明の実施形態での使用に適する第2の可変装置の一部分を示す部分破断斜視図である。
図8は、本発明の実施形態での使用に適する第2の可変装置の一部分を示す部分破断斜視図である。
図9は、本発明の実施形態での使用に適する第3の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図10は、本発明の実施形態での使用に適する第4の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図11は、図10に示す可変装置の軸方向から見た図である。
図12は、図10に示す可変装置の平面図である。
図13は、本発明の実施形態での使用に適する第5の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図14は、本発明の実施形態での使用に適する第5の可変装置の一部分を示す斜視図である。
図15は、本発明の実施形態に係る駆動システムにおける可変装置の一般的な制御原理を示すフロー図である。
図16は、本発明の一実施形態に係る駆動システムにおける可変装置の制御を示す図である。
図17は、本発明の固有の実施形態の動作を示すフロー図である(左側の各グラフは補正しないシステムを示しており、一方、右側の各グラフは補正されたシステムの応答を示す)。
本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1を参照して、乗用車などの車両用駆動システムは、普通はガソリンやディーゼル燃料が供給されるけれども、その代わりに、鉱油ガス、エタノール、あるいはその他の可燃燃料が供給されることもある、内燃エンジン70を備えている。一般的には、クランクシャフトの一端の出力部から出力される、エンジン70からの主な駆動力は、一般的には、摩擦クラッチやトルクコンバーターなどの軸継手74を介して、変速機72の入力部に結合されている。変速機72は、最小比率と最大比率との間で無段階に変速されてもよく、又は、複数の離散的な比率を有していてもよく、あるいは、運転者による手動により又は自動的に制御されてもよい。変速機72が無段階変速である実施形態では、その入力部の速度に関わりなく、出力部が静止している「ギアード・ニュートラル」比率を有していてもよい。そのような実施形態では、軸継手74は省略される。変速機72の出力部は、最終駆動システムの入力部に結合されており、同様にして、車両の駆動輪に駆動力が伝達される。最終駆動システムは、車両の2つの駆動輪(2つの前輪又は2つの後輪)を駆動してもよいし、あるいは、一般的には、動力分配装置を介して、駆動力を分割して、車両の全ての車輪を駆動してもよい。
上記は、本発明を具体化する駆動システムの一般的な構成の範囲を説明したに過ぎない。異なる構造の変速機又は最終駆動システムを用いて、異なる構造にすることも可能であり、この駆動システムは、内燃エンジンが主要な原動力である広範囲な用途において、駆動装置に組み込むことができる。
内燃エンジン70は、過給機構を有する吸気系統を有している。この過給機構はスーパーチャージャー80を備えている。スーパーチャージャー80は、適切な周囲の大気圧で、吸気口を介して空気を吸い込み、スーパーチャージャー80の駆動軸84の回転速度によって決まる圧力差によって、吸気口の圧力よりも高い圧力で、エンジン70の吸入マニホールド82に空気を供給する。スーパーチャージャー80を通過する空気は、通常はエアーフィルター及び空気流量計、及び、火花点火エンジンの場合、スロットル本体をさらに通過する。これらの構成要素のいずれか又は全ては、スーパーチャージャー80の下流側又は上流側に配置されていてもよい。
スーパーチャージャー80の駆動軸84は、エンジン70のクランクシャフトから又は変速駆動ユニット90の出力軸から駆動される。駆動ユニット90は、エンジン70のクランクシャフトによって駆動される入力軸を有している。この実施形態では、駆動ユニット90の入力軸は、エンジン70のクランクシャフトの一端に取り付けられたクランクシャフトプーリー94に駆動ベルト96を介して接続されたプーリー92が取り付けられている。駆動ベルト96は、交流発電機、空調ポンプ、パワーステアリングのポンプなどの、その他の付属物を駆動してもよい。
駆動ユニット90の目的は、スーパーチャージャー80の駆動軸84が、車両駆動システムの動作の任意の条件に対して、最適条件に限りなく近い速度で回転することを保証することにある。駆動力は、エンジンのクランクシャフトからスーパーチャージャー80の駆動軸84に伝達されるので、駆動速度が変化される3つの主要な段階が存在する。第1は、クランクシャフトからの駆動力は、駆動ユニット90の入力部を比率R1で駆動し、第2は、駆動ユニット90の内部に可変比率RVの段階が存在し、第3は、駆動ユニットの内部に固定された比率R2の段階が存在する。そのため、スーパーチャージャー80の駆動軸84の瞬間速度ωSは、クランクシャフトの速度ωCから、ωS=ωCR1R2RVで計算される。R1R2は、駆動システムの設計の一部として計算された一定値であるので、駆動システムの制御は、RVの瞬間的な最適値の計算と、可変比率段階をRVの値の比率で操作させることを含む。
これには限定されないが、特に遠心型スーパーチャージャーに用いる好適な実施形態では、駆動ユニットの可変比率段階RVは、比率制御されたフルトロイダル可変装置を備え、比率固定段階R2は、トラクション遊星駆動系を備えている。そのため、駆動ユニット90の軸は、可変装置の入力部を駆動し、可変装置は、遊星歯車列の入力部を駆動する出力部を有し、遊星歯車列は、スーパーチャージャー80の駆動軸84に結合された出力部を有している。
本発明の実施形態では、必要な速度範囲で動作可能であり、必要な動力を処理することができる様々な種類の比率制御された可変装置を使用することができるけれども、特に自動車の用途に用いられたときに、製造コスト及び動作に必要なパワーを最小にするという強い動機が存在する。可変装置内部のローラーのピッチを変えることによって比率が制御される可変装置の範囲は、特に有利であることがわかった。それらのいくつかの可変装置についてこれから説明する。
図3〜6は、本発明の実施形態の可変装置の一部分を異なった場所からの眺めを示す。この可変装置は、一般的には環状である入力軌道輪10を備えている。この入力軌道輪10は内周面を有しており、内周面の内側には、入力軌道輪10の作用面を提供するように弓形断面の環状凹部12が形成されている。この可変装置は、入力軌道輪10とほぼ同じであり、図6において破線で示された出力軌道輪14をさらに備えている。入力軌道輪10と出力軌道輪14は、可変装置の軸V上に同軸に配置されており、それらの作用面は互いに対向し、それによって、これらの軌道輪10と14の間に、これらの作用面によって結合されたトロイダルキャビティーを形成する。各軌道輪10及び14は、それぞれ可変装置の軸Vに対して回転するように取り付けられている。
回転部品、この場合、好ましい形状の外側回転面を有するほぼ円筒状のローラー20,22は、トロイダルキャビティーの内部で動作するように配置されている。この実施形態では、このようなローラーが2つ存在するけれども、その代わりにより多くの数が設けられうることは理解されるべきである。
各ローラー20,22は、それぞれローラーキャリッジアッセンブリー24,26に取り付けられている。各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26は、ステム28,30及びフォーク32,34を含む。各フォーク32,34には、ローラー20,22が、それぞれ取り付けられており、ローラー20,22は、その中心を通って伸びた回転軸に対して回転するように軸受け上を回転することができる。各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26の内部において、各フォーク32,34は、その回転軸に対して垂直なチルト軸に対して、それぞれ、そのステム28,30上で回転することができる。
各キャリッジアッセンブリー24,26は、図6に示すように、ステム28,30のチルト軸が、平面Pに対して傾斜するように、取り付けられている。平面Pは、図6に示すように、キャスター角として知られている角度「α」の位置で、この可変装置の軸に対して垂直である。各ローラー20,22は、それぞれ、ローラー20,22の中心を通り、ステム28,30の縦軸であるチルト軸に対して自由に旋回することができ、換言すれば、キャスター角は、チルト角と可変装置の中心軸の間の角度である。
入力軌道輪10は、2つの軌道輪の間に駆動係合されたローラー20,22によって駆動され、ローラー20,22を介して駆動力を出力軌道輪14に伝達する。
この可変装置は、支持体44上に支持されたスライダー42を備えた制御アッセンブリー40を含む。スライダー42は、固定された部分44に対して、相対的に往復直線運動をするように構成されている。杭46は、支持体44から溝48を突き抜けてスライダー42の内部に突出しており、支持体上でのスライダー42の動作範囲を制限するためのストッパーとして作用する。制御アッセンブリー40は、並進運動によってこの可変装置の制御動作を行うように構成されている。スライダー42は、可変装置の軸に対して垂直な平面上を、矢印Cで示された方向に支持体44に沿って前進及び後進することができる。この実施形態では、スライダー42は、可変装置の軸Vに平行な円筒面の半径方向に外側で、且つ、入力軌道輪10及び出力軌道輪14の大きな方の外周に対して接線方向の位置で、各ローラーキャリッジアッセンブリー24,26に結合されている。他の実施形態では、キャリッジアッセンブリー24,26は、それぞれ、それら独自の駆動装置によって駆動されてもよい。支持体44は、それぞれ、可変装置の軸Vに対して垂直な可変装置の中心面に対してキャスター角αで傾斜した反作用面50,52を有している。
制御アッセンブリー40は、作動連結部56,58によってキャリッジアッセンブリー24,26に動作可能に結合されている。作動連結部56,58は、ステム28,30をスライダー42に対して旋回可能としながら、スライダー42と共に直線的に動くように、各ステム28,30の上端部を拘束している。一つの制御アッセンブリー40で、両方のキャリッジアッセンブリー24,26を同時に制御する。キャリッジアッセンブリー24,26は、また、それぞれの反作用点において、制御アッセンブリー40に結合されている。各反作用点は、支持体44の各反作用面50,52の内部に伸びた弓形の溝60,62を備えている。各キャリッジアッセンブリー24,26のステム28,30は、溝60,62の内側を各反作用ピン64,66が自由に摺動するのを可能にしつつ、十分密着するように摺動するように、各弓形の溝の内部に伸びた突き出た反作用ピン64,66を有している。ステムには、溝とスムーズな係合及び回転可能な係合をするように、ローラーが取り付けられていてもよい。
(他の構造においては、弓形の溝は、ステムが溝を突き抜け、ローラーキャリッジアッセンブリーの位置決めをするために、溝と共同して係合部を形成するように、ステム28,30に対して垂直に配置されていてもよい。)
各ローラー20,22及びそのキャリッジアッセンブリー24,26は、入力軌道輪10の作用面上及び出力軌道輪14の作用面上でのローラー20,22との間の接触、作動連結部56,58での制御アッセンブリー40との接触、及び、反作用ピン64,66及びそれらの溝60,62を介した反作用点での接触の、全体として可変装置との4つの接触点を有している。各キャリッジアッセンブリー24,26は、制御アッセンブリー40との2つの接触点及び入力軌道輪及び出力軌道輪の作用面とローラーとの接触によって、トロイダルキャビティーの内側に位置している。これらの接触点は、キャリッジアッセンブリー24,26が、ローラー20,22の中心を通り、スライダー42の動作面に対して垂直な各操舵軸A−A’及びB−B’に対するピッチ角を変化させるように、旋回可能に取り付けられていることを意味する。この操舵軸は、キャリッジアッセンブリーのチルト軸に対して垂直である。キャリッジアッセンブリー24,26は、ローラーの旋回軸から半径方向に離れた位置にある作動連結部56,58を介して動かされ、それによって、キャリッジアッセンブリー24,26が軸A−A’及びB−B’を中心とする円弧に沿って移動する。ローラーは、係合部と溝の係合によってガイドされている。ローラーキャリッジアッセンブリー24,26は、反作用点に対して反作用ピン64,66がそれらの溝60,62に係合されることによって旋回運動が拘束される。
スライダー42の動作を生じさせるキャリッジアッセンブリーの旋回運動は、それらの(すなわち、ローラーの中心を通り、可変装置の軸Vと平行な)チルト軸に対する回転成分を、ローラー20,22に分け与える。この旋回運動は、また、比率変更軸と呼ばれる、チルト軸に垂直な軸に対する回転成分を分け与える。この回転は、各ローラー20,22が速度比率を変化させるようにそのチルトを変化させることを可能にし、入力面及び出力面からの接触力に瞬間的に直面するかもしれない。作動軸に対して回転してもよいように、フォーク32,34にローラー20,22を取り付けることにより、可変装置の比率を変化させるように、各平衡点に達するまでの抵抗が最も小さくなる軌道を求めるように、ローラー20,22がチルトすることを可能にする。このように、キャリッジアッセンブリーの旋回運動とチルト軸に対する自由な回転の組合せを介して、可変装置における速度比の変化をもたらすように、ローラーはチルト運動を自由にできる。そのため、ローラー20,22は、可変装置の軸に平行な軸に対してピッチングすることによって、作動力に応じて、その向きを変える(すなわち、そのチルト量を変化させる)ことができ、また、可変装置の速度比を変化させるために、その位置を変化させることができる。ローラーのチルトを変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように作用するいずれかの成分を最小にする、最適な旋回運動を達成するために、溝60,62は、その形状が可変装置の軸に垂直な面に投影されたときに、可変装置の軸を中心とする円弧状となるように、形成されている。
他の実施形態では、各キャリッジアッセンブリーは、ジンバルを介してステムの端部に取り付けられた複数のローラーを有する1つのステムのみを備えている。この構造において、各ローラー20,22は、ローラーがチルト軸に対して自由にチルトするように、ローラーの中心を通るピボット継手によって、それぞれのキャリッジアッセンブリーに取り付けられている。ステムは、ちょうど可変装置の中心面P上に位置しており、ジンバル構造は、ローラー20,22が自由にチルトするように、キャスター角と自由度を提供する。
図7及び8は、入力軌道輪110と出力軌道輪(図示せず)との間で駆動力を伝達するローラー120,122に動作可能に結合された反作用部材160を含む可変装置の一部分を示す。反作用部材の目的は、ローラー120,122からの反作用トルクを受け止めることにある。ローラー120,122は、キャリッジアッセンブリー162,164に取り付けられている。各キャリッジアッセンブリーは、搬送体166,168及び取付部品170,172を備えている。各ローラー120,122は、各搬送体166,168上で、その軸に対して回転するように搬送される。各搬送体166,168は、各取付部品170,172に旋回可能に結合されている。
各取付部品170,172は、制御部材174に沿った直線運動が防止されるように、細長い制御部材174上に保持されている。制御部材174は、取付部品170,172も一緒にC方向に動くように、C方向に往復直線的に動く。(この実施形態では、制御部材は、図1〜4に示すスロット構造を有する可動部及び固定部を備えていない。)各キャリッジアッセンブリーは、取付部品170,172と制御部材174の間の結合、及び、ローラー120,122が反作用部材160と接触することによる、その中心の反作用点によって、トロイダルキャビティーの内部に位置している。この実施形態では、反作用トルクは、制御部材174ではなく、反作用部材160によって受け止められる。
反作用部材160は、可変装置の入力軸及び/又は出力軸が隙間を空けて貫通する開口182を有する本体180を備えている。反作用軸184,190は、本体180から同軸に、且つ、反対方向に突出しており、可変装置の中心面内で可変装置の軸に対して垂直に、一列に並べられている。各反作用軸184,190の端部は、それぞれ、可変装置の筐体100及び筐体100に固定された取付ブロック194に形成された開口内で保持され、軸184,190は開口内で回転することができる。反作用部材160には偶力が作用するので、軸184,190を無理矢理回転させようとする回転が生じる。しかしながら、軸184,190の端部を開口内で拘束することにより、反作用トルクが打ち消される。反作用部材160は、ローラー120,122からの反作用トルクが反作用部材160に伝達され、ローラー120,122と反作用部材160の間の相対的な旋回運動を可能とするように、球面継手186,188によってローラー120,122の中心に動作可能に連結されている。反作用部材160は、ディスクの回転中、ディスク/ローラーの接触によって生じる反作用トルクを受けて、可変装置の軸に対して回転し、それによって可変装置の比率を変更するように取り付けられている。
制御部材174は開口192で反作用部材160を貫通しているが、それには連結されていない。反作用トルクが受け止められ、反作用部材が可変装置の軸に対して回転するように、詰まりを防止するために、制御部材174と開口192の間に十分な隙間が設けられている。
反作用部材160は、可変装置の軸の半径方向に動くことができ、反作用部材160がトロイダルキャビティーの内部で各ローラー120,122により発生された反作用負荷をバランスさせるように、半径方向でない方向に動いてもよい。
反作用部材160は、例えば可変装置の軸に対して半径方向の本体180の動きを減衰させるダンパーを含んでいてもよい。可変装置の軸に対して半径方向の反作用部材160の動きを制限するために、機械的なストッパーを設けてもよい。
図9は、本発明を具体化したツインキャビティー型の可変装置の一部分を示す。この可変装置は、1つの入力軌道輪210と、可変装置の軸方向で、入力軌道輪210の反対側に配置された(1つだけしか示していないが)同様の第1及び第2の出力軌道輪214を備えている。各出力軌道輪214は、入力軌道輪210に対向する作用面216を有している。入力軌道輪210は、第1及び第2の出力軌道輪214にそれぞれ対向する第1及び第2の作用面212を有している。それゆえ、2つのトロイダルキャビティーが、第1のものは入力軌道輪210と第1の出力軌道輪214の間、第2のものは入力軌道輪210と第2の出力軌道輪の間に形成される。
第1組のローラー220,222は、入力軌道輪210と第1の出力軌道輪214の間で駆動力を伝達するように、第1のトロイダルキャビティー内に設けられ、第2組のローラー220’,222’は、入力軌道輪210と第2の出力軌道輪214の間で駆動力を伝達するように、第2のトロイダルキャビティー内に設けられている。各ローラー220,222;220’,222’は、それぞれキャリッジアッセンブリー224,226;224’,226’に取り付けられている。各キャリッジアッセンブリーは、搬送体266と取付部品270を備えている。ローラー220は、搬送体266上で回転するように取り付けられている。搬送体は、ローラー220,222;220’,222’のチルト角を変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように、チルト運動が自由にできるように、取付部品270に結合されている。各キャリッジアッセンブリー224,226;224’,226’は、各ローラーの中心を通る軸に対して旋回運動するように取り付けられている。
各アクチュエーター280,280’は、各キャビティーに結合されている。各アクチュエーター280,280’は、可変装置の筐体200に固定された本体282,282’と、場合に応じて、電気信号又は油圧流体を各アクチュエーター280,280’に適当に加えることによって直線的に本体に出入りするように駆動されるアクチュエーターロッド284,284’を備えている。
各キャビティーの内部で、2つのキャリッジアッセンブリー224,226;224’226’の取付部品270は、共通の制御ロッド274,274’に結合されており、取付部品は直線運動に逆らって制御ロッドに固定されているが、制御ロッドに対しては旋回可能である。各制御ロッド274,274’は、制御ロッドとアクチュエーターロッドの間の旋回動作を許容する継手288,288’を介してアクチュエーターロッド284,284’にそれぞれ結合されている。そのため、アクチュエーター280,280’の動作は、制御ロッド274,274’の直線運動及び、それによるキャリッジアッセンブリー224,226;224’226’の直線運動を生じさせる。
先に説明した実施形態と同様に、各キャビティーは、各ローラーから生じた反作用負荷を反作用部材が受け止めるように、球面継手によってローラー220,222;220’,222’が動作可能に結合された反作用部材260,260’を有している。先に説明した実施形態と同様に、各反作用部材260,260’は、複数の反作用軸を有しており、その一つの端部は可変装置の筐体200の開口中に保持されている。その他の反作用軸は、制御ロッド274,274’か貫通する開口を有するヨーク286,286’によって固定されている。
反作用部材260,260’は、荷重分散アッセンブリーによって動作可能に連結されている。荷重分散アッセンブリーは、軸受け292によってヨーク286に取り付けられた棒290を備えている。棒290は、軸受け292に対して対称に、ヨーク286,286’に旋回可能に結合されている。そのため、等しく反対向きの力が、ヨークを介して各反作用部材に対して加えられ、2つのトロイダルキャビティー内で、ローラー220,222;220’,222に対して等しい反作用トルクが加えられることを保証する。
図10〜12は、本発明の他の実施形態を示す。この可変装置は、入力軌道輪310と、可変装置の軸方向で、且つ、入力軌道輪310とは反対側に配置された、同様の第1及び第2出力軌道輪314(一方のみを示す)を備えている。これらの軌道輪の間に形成された2つのトロイダルキャビティーのそれぞれの内部には、3つのローラー320,322,324;320’,322’(もう1つは図面には示されていない)が存在している。
この可変装置は、各キャビティーの内部に、反作用部材360,360’を備えている。反作用部材360,360’は、可変装置の筐体300の旋回可能に取り付けられた棒390を含む荷重分散アッセンブリーによって互いに連結されており、各反作用部材360は、軸受け392に対して対称に回転可能に棒390に結合されている。
各ローラー320,322,324;320’,322’は、それぞれキャリッジアッセンブリー326,328,330;326’,328’(もう1つは図面には示されていない)によって旋回するように搬送される。各ローラーキャリッジアッセンブリー326,328,330;326’,328’は、搬送体366及び取付部品370を備えている。ローラー320は、搬送体366上に回転するように取り付けられている。搬送体366は、ローラー320,322,324;320’,322’のチルト角を変化させ、それによって可変装置の比率を変化させるように、チルト運動が自由にできるように、取付部品370に結合されている。制御杭372は、各取付部から突出している。
環状の制御部材340,340’が、各キャビティーの内部に設けられている。各制御部材340,340’は、3つの放射方向の溝342を有し、それらには、それぞれ1つの制御杭372が受け入れられている。この可変装置は、さらに、各キャビティーに結合されたアクチュエーターを含む。各アクチュエーターは、可変装置の筐体300に固定された本体382,382’と、場合に応じて、電気信号又は油圧流体をアクチュエーターに適当に加えることによって直線的にシリンダーの出し入れを駆動することができるアクチュエーターロッド384(もう1つは図面には示されていない)を備えている。各アクチュエーターロッド384は、それぞれ軸受け344,344’によって制御部材340,340’に結合されている。この構造により、アクチュエーターの動作は、制御部材340,340’を回転させ、さらに制御杭370の動きを生じさせ、それによって各取付部品370上の搬送体366の回転を生じさせる。
図13及び14において、反作用部材460は、所定のレベルよりも上の反作用トルクに応答して、可変装置の軸に対して回転するように取り付けられている。反作用部材460は、可変装置の入力軸及び/又は出力軸が隙間を空けて貫通する開口を有する本体482を備えている。反作用軸484,490は、本体482から同軸に、且つ、反対方向に突出しており、可変装置の中心面内で可変装置の軸に対して垂直に、一列に並べられている。第2実施形態のように、反作用軸490の一方はヨーク486を介してアクチュエーター480に結合されている。他方の反作用軸490は、弾性取付アッセンブリーに結合されている。
この実施形態では、弾性取付アッセンブリーは、反作用軸490が結合された支持棒432と、可変装置の筐体に結合されたクレイドル434を含む。支持棒432は、それに対して反作用軸490が反作用トルクの力を加える圧縮ばね436によってクレイドルの内部に保持されている。反作用トルクは、支持棒432上に偶力を生じさせ、その回転は反作用軸490の変速機を変位させる。ばね436は、加えられる力が特定の閾値を超えるときに歪められるように設定されていてもよい。例えば、制御部材が検出された反作用トルクを減少させ、それによって可変装置を通過するトルクを減少させるように作用するように、分配された力を検出し、制御部材470への入力信号を用意するために使用されてもよい。
直ぐ上の段落で説明したように、可変装置を組み込んだ本発明の実施形態では、その可変装置は、閾値を超えたトルクが制御システムの動作を補完するように作用するときは、反作用部材によって結果的に比率を小さくするように構成されている。そのため、動作条件における一時的な変化がエンジンを急激な加速又は減速させるとしても、このような構成を備えた可変装置は、過給機構の部品及びそれに結合された部品を、過剰なトルクによる破損から保護することができる。
これらの実施形態のそれぞれにおいて、回転部品のピッチングを生じさせる可変装置の動作が、ほとんど又は完全に回転部品の半径方向外向きに発生されていることがわかる。そのため、動作を実行するために責任を負う構成部品は最小化され、回転部品間の空間内には侵入しない。これらの実施形態のそれぞれにおいて、回転部品にピッチングを生じさせる可変装置の動作が、可変装置の軸に平行な方向における軌道輪内の空間で発生され、軌道輪を越えて拡がることはない。多くの場合、可変装置が大きな変速システムの一部分として用いられるときは、構成部品を収納することができる利用可能な空間は、可変装置の軸方向における軌道輪の外側にはほとんど又は全くない。また、各実施形態において、それの周りにピッチング回転が生じる軸は、シャフトなどの物理的な部品とは一致せず、その代わりに、軸は、チルト軸から離れた(作用点又は反作用点などの)構成要素によって搬送体の動きに課された制約によって決定される。
過給機構は、内燃エンジン70の動作を最適化することを目的として、スーパーチャージャーを特定の比率RVで動作させるために、可変装置のアクチュエーターに適用される信号を生成するように動作する制御システムをさらに含む。
好適な制御方法を描いた一般的なフローチャートを図15に示す。具体例を図16に示し、その動作を説明する。
この制御システムは、車両の運転者の意図を実現するために必要な所望のエンジン動作をさせる、車両のアクセルペダルのような動作制御の位置(又は、自動速度制御装置のようなその他の制御機構)に反応する。この制御システムは、スーパーチャージャーの圧縮機の速度、スーパーチャージャーの空気圧、空気の流量又は直接的にエンジンのトルク出力であるかもしれない、スーパーチャージャーの制御変数要求を発生させる。そして、選択された制御変数要求は、制御方法における主要な制御入力として機能し、制御方法は閉ループ又は開ループであってもよい。この実施形態では、このことは、スーパーチャージャー80の出力側に現れる空気圧を計算することによって達成される。この制御システムは、スーパーチャージャーの空気圧要求400を発生させる。そして、制御システムは、現在のエンジン速度ωCでのスーパーチャージャー空気圧要求を達成するために必要な空気流量を計算する。開ループの具体例では、空気流量要求を達成するであろうスーパーチャージャーの速度を決定するためにスーパーチャージャーの圧縮機マップ412が用いられ、そして、それから開ループのスーパーチャージャーの安定状態の速度要求を発生される。これから、可変装置の比率の目標値(又は安定状態の可変装置の比率)(この具体例では、有効な制御変数であるとみなされる)は、ステージ414に入力される。
一般的に、先に述べた理由(正味のエンジントルクの輪郭は滑らかでも連続的でもなく、過大な慣性トルク又はジャークがクランク上に現れるので)により、制御変数要求に段階的な又は段階的に近い変化を適用することは望ましくない。その代わりに、クランクに加えられる慣性トルクが、(クランクに伝わる)スーパーチャージャーの全負荷が閾値を超えないように、変化の割合を伴った瞬間的な可変装置の比率の目標値を決定するために、可変装置の比率の目標値要求を変形させる。これは、安定状態における可変装置の比率の目標値に漸近線的に近づけることによって達成されることが好ましい。それゆえ、ステージ414は、好ましく変形された可変装置の比率及び可変装置の比率の変化の割合の信号を出力する。この例では、また、信号は、瞬間的な動作パラメーター420の範囲に応じた飽和限界内で減少するように、ステージ416において補正される。これらのパラメーターは(潜在的に他のものに混じって)、
・(測定された可変装置の入力速度と出力速度から導き出された)可変装置の比率であって、その要求が、可変装置にその動作範囲外の比率を採用しようと試みさせないことを保証するためのもの;
・可変装置の出力速度であって、その要求が、可変装置にその最大出力速度を越えようと試みさせないことを保証するためのもの;
・スーパーチャージャーの速度であって、その要求が、可変装置にその最大動作速度を越えようと試みさせないことを保証するためのもの;
・(空気流量要求及びスーパーチャージャーの空気圧要求から導き出すことができる)可変装置によって伝達される動力とトルクであって、これらが最大動作値を超えないことを保証するもの
を含む。
そして、瞬間的な目標値は、制御手段ステージ422を決定するために用いられ、この目標値は、直接的に可変装置の比率を制御するアクチュエーター424を駆動させるために供給される線型位置要求である出力を有している。線型位置は、可変装置の比率に関する信号であると理解される。このステージは、ステッピングモーターなどの公知の線型位置を有するアクチュエーターが用いられるときは開ループであり、非線型アクチュエーターが用いられるときは閉ループであり、この実施形態は後者の構成を採用している。閉ループ制御ステージ422は、また、出力側に現れる線型位置要求と測定された線型位置426との差である誤差入力を有している。
さらに、閉ループ制御ステージ422への入力は、測定された空気流量430及び測定されたスーパーチャージャーの圧力の比率432を含み、これらは、可変装置のトルクを示す信号を導き出すために、ステージ434で結合処理される。
この慣性トルクの値は、制限ステージ440で、安定状態のトルク値と結合される。
同様に、可変装置の比率それ自体は、スーパーチャージャー又は圧縮機の最大速度を超えないように、ステージ440で制限される。
図17は、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込んだように、可変装置の入力を急激に変化させるための制御システムの動作を示す。このグラフの左側欄は、飽和限界を考慮しない反応を示し、一方、右側欄は、上で説明した飽和限界の効果を示す。