JP2016222937A - 炭素繊維複合材料及びその製造方法 - Google Patents

炭素繊維複合材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、カーボンナノファイバーが分散している炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含む。また、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)30に対し、カーボンナノファイバーと、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物80と、を混合する混合工程を有し、せん断力によって第1及び第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)中にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を均一に分散する。
【選択図】図2

Description

本発明は、カーボンナノファイバーが分散している炭素繊維複合材料及びその製造方法に関するものである。
本発明者他が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーを用いることで、これまで困難とされていたカーボンナノファイバーの分散性を改善し、エラストマーにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1参照)。このような炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーの分散性を向上させている。
より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
また、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバーを配合した引裂き疲労特性に優れたシール部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。引裂き疲労特性は、ゴム組成物の耐摩耗性に関係があることがわかっている。ゴム組成物の耐摩耗性のさらなる向上が求められている。
さらに、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)にカーボンナノファイバーを配合した耐油性に優れた配管機材用シール部材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。このような配管機材用シール部材においても耐摩耗性のさらなる向上が求められている。
特開2005−97525号公報 国際公開第2011−077596号 特開2010−19380号公報
本発明の目的は、引裂き疲労寿命特性が向上したカーボンナノファイバーが分散している炭素繊維複合材料及びその製造方法を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、
炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことによって、カーボンナノファイバーの水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムに対する補強効果を向上させ、特に、引裂き疲労寿命特性を向上させることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含み、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記メタクリル酸亜鉛は、前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し4質量部〜20質量部であって、
120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーと、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物と、を混合する混合工程を有し、せん断力によって前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散することを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であって、
前記混合工程は、前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部となるように前記予混合物の配合量を決定することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、
炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことによって、カーボンナノファイバーの水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムに対する補強効果を向上させ、特に、引裂き疲労寿命特性を向上させた炭素繊維複合材料を製造することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料おいて、
前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含み、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であることができ
る。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記メタクリル酸亜鉛は、前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し10質量部〜40質量部であって、
120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーと、メタクリル酸亜鉛と、を混合する混合工程を有し、せん断力によってエチレン・プロピレンゴム(EPDM)中にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散することを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記混合工程は、前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記混合物中の前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を混合し、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。
一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーと、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した混合物と、を混合する混合工程を有し、せん断力によって前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散することを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーと、メタクリル酸亜鉛と、を混合する混合工程を有し、せん断力によってエチレン・プロピレンゴム(EPDM)中にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散することを特徴とする。
A.まず、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法について説明する。
図1〜図3は、一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)又はエチレン・プロピレンゴム(EPDM)(以下、単に「エラストマー」という。)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を混合する工程は、例えば、図1〜図3に示すように2本ロールのオープンロール2を用いて行うことができる。オープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
A−1.素練り
まず、図1に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマーの分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
A−2.混合
次に、図2に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、配合剤80を投入し、混練して混合物を得ることができる。ここで配合剤80は、少なくともカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を含む。
エラストマーが水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)である場合には、前記のように第1のロール10に巻き付けられた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を含む配合剤80を投入して混合することができ、その場合、例えば、混合前にあらかじめ水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛を混合(ポリマーアロイ)して得られた予混合物を配合剤80におけるメタクリル酸亜鉛として使用することができる。具体的には、まず、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物を準備する。次に、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバー及びこの予混合物を配合剤80として投入して混合する混合工程を有する。混合工程のせん断力によって第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を混合することができる。
図1〜図2の混合物36を得る工程については、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
また、エラストマーがエチレン・プロピレンゴム(EPDM)である場合には、例えば、第1の混練工程と第2の混練工程とを含むことができる。第1の混練工程は、エラストマーに配合剤を混合したものを、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で混合することができる。第1の温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の第1の温度であることができる。さらに、第1の混練工程によって得られた第1の混合物を別の混練機例えば密閉式混練機に投入し、第2の混練工程が行なうことができる。第2の混練工程では、エチレン・プロピレンゴムの分子を切断してラジカルを生成させるため、第1の温度よりも50〜100℃高い第2の温度で混練が行なうことができる。第2の温度は、用いられるエチレン・プロピレンゴムの種類によって適宜選択することができるが、50〜150℃とすることができる。このようにして第2の混練工程を行なうこと
で、エチレン・プロピレンゴムの分子が切断されてラジカルが生成し、第2のカーボンナノファイバーがエチレン・プロピレンゴム分子のラジカルと結合しやすくなる。
A−3.薄通し
さらに、図3に示すように、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール2を用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って未架橋の炭素繊維複合材料50を得る工程を行う。この工程では、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、図2で得られた混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回〜複数回行なうことができる。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、さらにエラストマーの弾性による復元力で図3のように大きく変形し、その際にエラストマーと共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm〜500μmのシート状に分出しされる。
この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃に設定して行うことができ、さらに5〜30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。エラストマーの実測温度も0〜50℃に調整されることができ、さらに5〜30℃調整されることができる。このような温度範囲に調整することによって、エラストマーの弾性を利用してカーボンナノファイバーを分散することができる。このようにして得られた剪断力により、エラストマーに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマーの分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー中に分散される。特に、エラストマーは、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に解繊し、分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの分子の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマーの分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマーの分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
A−4.配合量
炭素繊維複合材料において、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含むことができる。このとき、カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。また、炭素繊維複合材料におけるメタクリル酸亜鉛は、4質量部〜40質量部であることができ、さらに、4質量部〜20質量部であることができる。
前記A−2で説明したように、予混合物を用いる場合には、混合工程は、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、なるように予混合物の配合量を決定することができる。
炭素繊維複合材料おいて、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し、カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含むことができる。このとき、カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。また、炭素繊維複合材料におけるメタクリル酸亜鉛は、5質量部〜40質量部であることができ、さらに、10質量部〜40質量部であることができる。
B.炭素繊維複合材料について説明する。
B−1.炭素繊維複合材料
炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)又はエチレン・プロピレンゴム(EPDM)(以下、単に「エラストマー」という。)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバー及びその界面相がエラストマーを囲むことによって形成された小さなセル(cell)構造が多数形成され、また、界面相が3次元の網目のような連続立体構造に形成されている。界面相は、エラストマーとカーボンナノファイバーとの界面を含むカーボンナノファイバーの周囲に形成される、いわゆるバウンドラバーのようなものである。
カーボンナノファイバーの実用的な配合割合(硬度が高くなり過ぎない)における炭素繊維複合材料においては、セル構造が全体に均質に形成されるわけではなく、セル構造が複数集合したセル構造集合体が海−島状に形成される。そして、隣り合うセル構造集合体同士を接続するカーボンナノファイバーとその界面相によって形成されたタイ(tai)構造が形成される。タイ構造は、一方のセル構造集合体の中でセル構造を形成しなかったカーボンナノファイバーが、他方のセル構造集合体の中でセル構造を形成しなかったカーボンナノファイバーと複数寄り集まり、それらのカーボンナノファイバーの周囲に形成される界面相と共にセル構造集合体の間を帯状に接続している。
セル構造集合体とタイ構造は、炭素繊維複合材料の物理的強度と化学的強度に大きく影響すると考えられる。エラストマーに対するカーボンナノファイバーの配合量が少ないと、炭素繊維複合材料中におけるセル構造集合体がまばらになり、特に、タイ構造の中に含まれるカーボンナノファイバーの本数が少なくなるためタイ構造はセル構造に比べて補強効果が小さい。タイ構造をさらに補強することによって、炭素繊維複合材料の物理的強度と化学的強度を向上させることができる。
メタクリル酸亜鉛は、このタイ構造を補強すると考えられる。そのため、炭素繊維複合材料は、引裂き疲労寿命特性を向上することができる。
B−2.カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5nm以上250nm以下であることがで
き、さらに平均直径が9nm以上100nm以下であることができ、特に平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径が0.5nm以上250nm以下であると市場で入手可能であり、本実施の形態で加工可能である。カーボンナノファイバーの平均直径は、繊維の外径である。カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状、あるいは湾曲繊維状であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などが適宜用いられる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブや気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
B−3.エラストマー
エラストマーは、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)またはエチレン・プロピレンゴム(EPDM)である。
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)は、水素化ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴムあるいは水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどと呼ばれることがある。以下の説明では、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムをHNBRと省略する。H−NBRは、ニトリルゴム(NBR)に含まれる二重結合を水素添加することによって得ることができる。H−NBRは、比較的高温特性に優れ、耐摩耗性に優れる。H−NBRは、175℃未満の高温の環境においても使用可能であり、特に150℃までの環境において好適に用いることができる。H−NBRは、アクリロニトリル含有量が30〜50質量%、ムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が50〜100であることができる。
エチレン・プロピレンゴム(EPDM)は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体とも呼ばれる。以下の説明では、エチレン・プロピレンゴムをEPDMと省略する。EPDMは、エチリデンノルボルネンなどの第3成分を含み、かつ、エチレンとプロピレンの共重合比は、エチレン含量で45%〜80%のEPDMとすることができる。EPDMは、ムーニー粘度の異なる複数のEPDMを混合して用いることができる。EPDMの重量平均分子量は、通常5万以上のものが望ましく、より好ましくは7万以上、特に好ましくは10〜50万程度のものを用いることができる。EPDMの分子量がこの範囲であると、EPDM分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、EPDMは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。EPDMの分子量が5000より小さいと、EPDM分子が相互に充分に絡み合うことができず、後に説明する工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる傾向がある。また、EPDMの分子量が500万より
大きいと、EPDMが固くなりすぎて加工性が低下する傾向がある。
炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.2であることができる。炭素繊維複合材料は、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は炭素繊維複合材料よりも少なくなる。
架橋した炭素繊維複合材料は、柔軟性を維持したまま高い強度と高い剛性とを備えることができる。また、炭素繊維複合材料は、高い耐熱性を有すると共に、柔軟性と耐摩耗性とを備えることができる。特に、炭素繊維複合材料は、引裂き疲労寿命特性に優れることができる。
炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対しメタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部であって、120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上であることができる。
炭素繊維複合材料は、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対しメタクリル酸亜鉛が10質量部〜40質量部であって、120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上であることができる。
ここで説明した炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤、受酸剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、混合の過程の適切な時期にエラストマーに投入することができる。
以上のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1−1)実施例1〜5のサンプルの作製
オープンロール(ロール設定温度20℃)に、日本ゼオン社製水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムZetpol 2020(表1,2では「H−NBR」で示した。「ZETOPL」は登録商標。)を投入し素練り後、表1、2に示す所定量の平均直径15nmの多層カーボンナノファイバー(表1,2では「MWCNT」で示した。)及び日本ゼオン社製Zeoforte ZSC2295(表1,2では「ZSC」で示した。「ZEOFORTE」は登録商標。)をH−NBRに投入し混練りの後、ロールから混合物を取り出した。なお、各サンプルには架橋剤としてパーオキサイドが配合された。
次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。分出ししたシートを170℃、12分間圧縮成形して厚さ1mmのシート状の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
表1,2において、「H−NBR」は結合アクリロニトリル量中心値が36.2%、ヨウ素価(中心値mg/100mg)28、ムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が78であり、「ZSC」はH−NBRにメタクリル酸亜鉛45質量%を分散させたポリマーアロイでムーニー粘度85、JIS硬度95(shoreD:60)、ベースポリマーZetpol2020であった。なお、ZSCはH−NBRとメタクリル酸亜鉛とのアロイであるので、「H−NBR」と「ZSC」中に配合された「H−NBR」とを合わせたH−NBRの配合量を100質量部としたときのメタクリル酸亜鉛の配合量を参考値として「メタクリル酸亜鉛」の欄に括弧書きで記載した。
(1−2)比較例1〜4のサンプル作製
ZSCを配合しない点を除いて実施例1〜5と同様に、比較例1〜4の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
(1−3)基本特性試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS A))をJIS K6253試験に基づいて測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
各測定結果を表1、2に示した。
(1−4)熱時引張試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、120℃中における引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引裂き疲労寿命(表3,4において「引裂き疲労(回)」で示した。)として、試験サンプルを10mm×幅4mm×厚さ1mm(長辺が列理方向)の短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へカミソリ刃によって深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、試験片の両端の短辺付近をチャックにて保持して、120℃の大気雰囲気中、周波数1Hzの条件で繰り返し引張荷重(0N/mm〜4N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するまで回数を測定した。
各測定結果を表3、4に示した。
実施例1〜5のサンプルは、比較例1〜4の同程度の多層カーボンナノファイバーを配合したサンプルに比べて、高温における引裂き疲労寿命特性が向上した。
(2−1)実施例6〜13のサンプルの作製
オープンロール(ロール設定温度20℃)に、表5,6に示す所定量のエチレン・プロ
ピレンゴム(表5〜7では「EPDM1」及び「EPDM2」で示した。)を投入し素練り後、表5〜7に示す所定量の平均直径15nmの多層カーボンナノファイバー(表5〜7では「MWCNT」で示した。)及びメタクリル酸亜鉛(表5〜7では「メタクリル酸亜鉛」で示した。)をエチレン・プロピレンゴムに投入し混合工程の後、第1の混練工程を行いロールから取り出した。さらに、その混合物をロール温度100℃に設定されたオープンロールに再度投入し、第2の混練工程を行って取り出した。
次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られたシートを投入し、分出しした。なお、各サンプルには架橋剤としてパーオキサイドが配合された。
分出しして金型サイズに切り取ったシートを金型にセットし、170℃、12分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例6〜13及び比較例5〜7の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
表5〜7において、「EPDM1」はムーニー粘度(ML1+4、125℃)が20、エチレン含量50質量%、ENB含量4.9質量%のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)であり、「EPDM2」はムーニー粘度(ML1+4、125℃)が70、エチレン含量70質量%、ENB含量4.9質量%のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)であり、「メタクリル酸亜鉛」は金属分25〜27質量%、メタクリル酸分60〜64質量%であった。
(2−2)比較例5〜7のサンプル作製
メタクリル酸亜鉛を配合しない点を除いて実施例6〜13と同様に、比較例5〜7の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。なお、比較例7では、共架橋剤として、エチレングリコールジメタクリレートを配合した。
(2−3)基本特性試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS A))をJIS K6253試験に基づいて測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
各測定結果を表5〜7に示した。
(2−4)熱時引張試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、120℃中における引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引裂き疲労寿命(表8〜10において「引裂き疲労(回)」で示した。)として、試験サンプルを10mm×幅4mm×厚さ1mm(長辺が列理方向)の短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へカミソリ刃によって深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、試験片の両端の短辺付近をチャックにて保持して、120℃の大気雰囲気中、周波数1Hzの条件で繰り返し引張荷重(0N/mm〜4N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するまで回数を測定した。
各測定結果を表8〜10に示した。
実施例6〜13のサンプルは、比較例5〜6の同程度の多層カーボンナノファイバーを配合したサンプルに比べて、高温における引裂き疲労寿命特性が向上した。実施例10を比較例7と比較すると、メタクリル酸亜鉛がエチレングリコールジメタクリレートに比べて引裂き疲労寿命を長くする効果があることがわかった。また、特に、実施例10〜13のようにメタクリル酸亜鉛の配合量が10質量部以上になると引裂き疲労寿命特性が格段に向上した。
2 オープンロール、10 第1のロール、20 第2のロール、30 エラストマー、34 バンク、36 混合物、50 炭素繊維複合材料、80 配合剤、V1,V2 回転速度
本発明は、カーボンナノファイバーが分散している炭素繊維複合材料及びその製造方法に関するものである。
本発明者他が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーを用いることで、これまで困難とされていたカーボンナノファイバーの分散性を改善し、エラストマーにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1参照)。このような炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーの分散性を向上させている。
より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
また、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバーを配合した引裂き疲労特性に優れたシール部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。引裂き疲労特性は、ゴム組成物の耐摩耗性に関係があることがわかっている。ゴム組成物の耐摩耗性のさらなる向上が求められている。
特開2005−97525号公報 国際公開第2011−077596号
本発明の目的は、引裂き疲労寿命特性が向上したカーボンナノファイバーが分散している炭素繊維複合材料及びその製造方法を提供することにある。
(1)本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイ
バーを含む炭素繊維複合材料であって、
炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含み、
前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部と、を含み、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下の多層カーボンナノファイバーであり、
120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が950回以上であることを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことによって、カーボンナノファイバーの水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムに対する補強効果を向上させ、特に、引裂き疲労寿命特性を向上させることができる。
(2)本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
前記(1)の炭素繊維複合材料の製造方法であって、
第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、前記カーボンナノファイバーと、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に前記メタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物と、を混合する混合工程を有し、
前記混合工程で得られた混合物に対しオープンロールを用いてロール間隔が0.5mm以下、0℃ないし50℃で薄通しを行って、せん断力によって前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に前記カーボンナノファイバー及び前記メタクリル酸亜鉛を分散させ、
前記混合工程は、前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部となるように予混合物の配合量を決定することを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことによって、カーボンナノファイバーの水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムに対する補強効果を向上させ、特に、引裂き疲労寿命特性を向上させた炭素繊維複合材料を製造することができる。
一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(1)本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含み、前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部と、を含み、前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下の多層カーボンナノファイバーであり、120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が950回以上であることを特徴とする。
(2)本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、前記(1)の炭素繊維複合材料の製造方法であって、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、前記カーボンナノファイバーと、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に前記メタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した混合物と、を混合する混合工程を有し、前記混合工程で得られた混合物に対しオープンロールを用いてロール間隔が0.5mm以下、0℃ないし50℃で薄通しを行って、せん断力によって前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に前記カーボンナノファイバー及び前記メタクリル酸亜鉛を分散させ、前記混合工程は、前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部となるように予混合物の配合量を決定することを特徴とする。
A.まず、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法について説明する。
図1〜図3は、一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)(以下、単に「エラストマー」という。)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を混合する工程は、例えば、図1〜図3に示すように2本ロールのオープンロール2を用いて行うことができる。オープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
A−1.素練り
まず、図1に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマーの分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
A−2.混合
次に、図2に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、配合剤80を投入し、混練して混合物を得ることができる。ここで配合剤80は、少なくともカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を含む。
エラストマーが水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)である場合には、前記のように第1のロール10に巻き付けられた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を含む配合剤80を投入して混合することができ、その場合、例えば、混合前にあらかじめ水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛を混合(ポリマーアロイ)して得られた予混合物を配合剤80におけるメタクリル酸亜鉛として使用することができる。具体的には、まず、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物を準備する。次に、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバー及びこの予混合物を配合剤80として投入して混合する混合工程を有する。混合工程のせん断力によって第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を混合することができる。
図1〜図2の混合物36を得る工程については、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
A−3.薄通し
さらに、図3に示すように、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール2を用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って未架橋の炭素繊維複合材料50を得る工程を行う。この工程では、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、図2で得られた混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回〜複数回行なうことができる。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、さらにエラストマーの弾性による復元力で図3のように大きく変形し、その際にエラストマーと共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm〜500μmのシート状に分出しされる。
この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃に設定して行うことができ、さらに5〜30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。エラストマーの実測温度も0〜50℃に調整されることができ、さらに5〜30℃調整されることができる。このような温度範囲に調整することによって、エラストマーの弾性を利用してカーボンナノファイバーを分散することができる。このようにして
得られた剪断力により、エラストマーに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマーの分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー中に分散される。特に、エラストマーは、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に解繊し、分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの分子の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマーの分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマーの分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
A−4.配合量
炭素繊維複合材料において、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、メタクリル酸亜鉛が質量部〜20質量部と、を含む。このとき、カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下の多層カーボンナノファイバーである。
前記A−2で説明したように、予混合物を用いる場合には、混合工程は、第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、カーボンナノファイバーが20質量部〜45質量部と、メタクリル酸亜鉛が質量部〜20質量部と、なるように予混合物の配合量を決定することができる。
B.炭素繊維複合材料について説明する。
B−1.炭素繊維複合材料
炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)(以下、単に「エラストマー」という。)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含むことを特徴とする。
炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバー及びその界面相がエラストマーを囲むことによって形成された小さなセル(cell)構造が多数形成され、また、界面相が3次元の網目のような連続立体構造に形成されている。界面相は、エラストマーとカーボンナノファイバーとの界面を含むカーボンナノファイバーの周囲に形成される、いわゆるバウンドラバーのようなものである。
カーボンナノファイバーの実用的な配合割合(硬度が高くなり過ぎない)における炭素繊維複合材料においては、セル構造が全体に均質に形成されるわけではなく、セル構造が
複数集合したセル構造集合体が海−島状に形成される。そして、隣り合うセル構造集合体同士を接続するカーボンナノファイバーとその界面相によって形成されたタイ(tai)構造が形成される。タイ構造は、一方のセル構造集合体の中でセル構造を形成しなかったカーボンナノファイバーが、他方のセル構造集合体の中でセル構造を形成しなかったカーボンナノファイバーと複数寄り集まり、それらのカーボンナノファイバーの周囲に形成される界面相と共にセル構造集合体の間を帯状に接続している。
セル構造集合体とタイ構造は、炭素繊維複合材料の物理的強度と化学的強度に大きく影響すると考えられる。エラストマーに対するカーボンナノファイバーの配合量が少ないと、炭素繊維複合材料中におけるセル構造集合体がまばらになり、特に、タイ構造の中に含まれるカーボンナノファイバーの本数が少なくなるためタイ構造はセル構造に比べて補強効果が小さい。タイ構造をさらに補強することによって、炭素繊維複合材料の物理的強度と化学的強度を向上させることができる。
メタクリル酸亜鉛は、このタイ構造を補強すると考えられる。そのため、炭素繊維複合材料は、引裂き疲労寿命特性を向上することができる。
B−2.カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5nm以上250nm以下の多層カーボンナノファイバーであ、さらに平均直径が9nm以上100nm以下であることができ、特に平均直径が9nm以上20nm以下であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径が0.5nm以上250nm以下であると市場で入手可能であり、本実施の形態で加工可能である。カーボンナノファイバーの平均直径は、繊維の外径である。カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状、あるいは湾曲繊維状であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)である。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブや気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
B−3.エラストマー
エラストマーは、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)である。
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)は、水素化ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴムあるいは水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどと呼ばれることがある。以下の説明では、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムをHNBRと省略する。H−NBRは、ニトリルゴム(NBR)に含まれる二重結合を水素添加することによって得ることができる。H−NBRは、比較的高温特性に優れ、耐摩耗性に優れる。H−NBRは、175℃未満の高温の環境においても使用可能であり、特に150℃まで
の環境において好適に用いることができる。H−NBRは、アクリロニトリル含有量が30〜50質量%、ムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が50〜100であることができる。
炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.2であることができる。炭素繊維複合材料は、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は炭素繊維複合材料よりも少なくなる。
架橋した炭素繊維複合材料は、柔軟性を維持したまま高い強度と高い剛性とを備えることができる。また、炭素繊維複合材料は、高い耐熱性を有すると共に、柔軟性と耐摩耗性とを備えることができる。特に、炭素繊維複合材料は、引裂き疲労寿命特性に優れることができる。
炭素繊維複合材料は、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対しメタクリル酸亜鉛が4質量部〜20質量部であって、120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が950回以上であることができる。
ここで説明した炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤、受酸剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、混合の過程の適切な時期にエラストマーに投入することができる。
以上のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1−1)実施例1〜4及び参考例1のサンプルの作製
オープンロール(ロール設定温度20℃)に、日本ゼオン社製水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムZetpol 2020(表1,2では「H−NBR」で示した。「ZETOPL」は登録商標。)を投入し素練り後、表1、2に示す所定量の平均直径15nmの多層カーボンナノファイバー(表1,2では「MWCNT」で示した。)及び日本ゼオン社製Zeoforte ZSC2295(表1,2では「ZSC」で示した。「ZEOFORTE」は登録商標。)をH−NBRに投入し混練りの後、ロールから混合物を取り出した。なお、各サンプルには架橋剤としてパーオキサイドが配合された。
次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素
繊維複合材料を投入し、分出しした。分出ししたシートを170℃、12分間圧縮成形して厚さ1mmのシート状の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
表1,2において、「H−NBR」は結合アクリロニトリル量中心値が36.2%、ヨウ素価(中心値mg/100mg)28、ムーニー粘度(ML1+4100℃)の中心値が78であり、「ZSC」はH−NBRにメタクリル酸亜鉛45質量%を分散させたポリマーアロイでムーニー粘度85、JIS硬度95(shoreD:60)、ベースポリマーZetpol2020であった。なお、ZSCはH−NBRとメタクリル酸亜鉛とのアロイであるので、「H−NBR」と「ZSC」中に配合された「H−NBR」とを合わせたH−NBRの配合量を100質量部としたときのメタクリル酸亜鉛の配合量を参考値として「メタクリル酸亜鉛」の欄に括弧書きで記載した。
(1−2)比較例1〜4のサンプル作製
ZSCを配合しない点を除いて実施例1〜4及び参考例1と同様に、比較例1〜4の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
(1−3)基本特性試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、ゴム硬度(Hs(JIS A))をJIS K6253試験に基づいて測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
各測定結果を表1、2に示した。
(1−4)熱時引張試験
炭素繊維複合材料サンプルについて、120℃中における引張強さ(TS(MPa))、破断伸び(Eb(%))、25%変形時の応力(σ25(MPa))、50%変形時の応力(σ50(MPa))100%変形時の応力(σ100(MPa))及び破壊エネルギー(破壊E(J))を、JIS6号形のダンベル形状に打ち抜いた試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、引張速度500mm/minでJIS K6252に基づいて引張試験を行い測定した。
また、炭素繊維複合材料サンプルについて、引裂き疲労寿命(表3,4において「引裂き疲労(回)」で示した。)として、試験サンプルを10mm×幅4mm×厚さ1mm(長辺が列理方向)の短冊状の試験片に打ち抜き、その試験片の長辺の中心から幅方向へカミソリ刃によって深さ1mmの切込みを入れ、SII社製TMA/SS6100試験機を用いて、試験片の両端の短辺付近をチャックにて保持して、120℃の大気雰囲気中、周波数1Hzの条件で繰り返し引張荷重(0N/mm〜4N/mm)をかけて引裂き疲労試験を行い、試験片が破断するまで回数を測定した。
各測定結果を表3、4に示した。
実施例1〜のサンプルは、比較例1〜4の同程度の多層カーボンナノファイバーを配合したサンプルに比べて、高温における引裂き疲労寿命特性が向上した。
2 オープンロール、10 第1のロール、20 第2のロール、30 エラストマー、34 バンク、36 混合物、50 炭素繊維複合材料、80 配合剤、V1,V2 回転速度

Claims (10)

  1. 水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、
    炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含む、炭素繊維複合材料。
  2. 請求項1において、
    前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含み、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下である、炭素繊維複合材料。
  3. 請求項2において、
    前記メタクリル酸亜鉛は、前記水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し4質量部〜20質量部であって、
    120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上である、炭素繊維複合材料。
  4. 第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)に対し、カーボンナノファイバーと、第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛をあらかじめ混合した予混合物と、を混合する混合工程を有し、せん断力によって前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)及び前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散する、炭素繊維複合材料の製造方法。
  5. 請求項4において、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下であって、
    前記混合工程は、前記第1の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)と前記第2の水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)とを合わせた水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部となるように予混合物の配合量を決定する、炭素繊維複合材料の製造方法。
  6. エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料であって、
    炭素繊維複合材料は、共架橋剤としてメタクリル酸亜鉛を含む、炭素繊維複合材料。
  7. 請求項6おいて、
    前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を含み、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下である、炭素繊維複合材料。
  8. 請求項7において、
    前記メタクリル酸亜鉛は、前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し10質量部〜40質量部であって、
    120℃、最大引張応力4N/mm、周波数1Hzの引張疲労試験における破断回数が500回以上である、炭素繊維複合材料。
  9. エチレン・プロピレンゴム(EPDM)に対し、カーボンナノファイバーと、メタクリル酸亜鉛と、を混合する混合工程を有し、せん断力によってエチレン・プロピレンゴム(EPDM)中にカーボンナノファイバー及びメタクリル酸亜鉛を分散する、炭素繊維複合材料の製造方法。
  10. 請求項9において、
    前記混合工程は、前記エチレン・プロピレンゴム(EPDM)100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーが10質量部〜45質量部と、前記メタクリル酸亜鉛が0.5質量部〜40質量部と、を混合し、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が9nm以上20nm以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。
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