JP2016215603A - フッ素樹脂積層体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カルボニル基含有基を有し、融点が230℃未満である含フッ素重合体(i)の層(I)と、前記層(I)に接して設けられる層(II)とを有するフッ素樹脂積層体。層(II)は、アミノ基を有し、かつ、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で昇温した際の5%質量減少温度が200℃以上である添加剤(α)が、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に分散した組成物からなる。添加剤(α)の含有量は、非フッ素熱可塑性重合体(ii)の100質量部に対して0.01〜10質量部である。
【選択図】なし
Description
ところが、フッ素樹脂は表面エネルギーが小さく、他材料との親和性が低いため、他の材料との層間における接着性は不充分である。そのため、フッ素樹脂と他の材料との積層体から得られるシート、チューブ等を屈曲させると、これらの層間が容易に剥離するという問題があった。
また、特許文献2では、フッ素樹脂の層とポリウレタン系エラストマーの層との間に、接着層としてポリアミド系樹脂を用いた積層体が提案されている。
また、特許文献2の積層体は、ポリアミド系樹脂の層とポリウレタン系エラストマーの層との接着性が不充分である。
[1]カルボニル基含有基を有し、融点が230℃未満である含フッ素重合体(i)の層(I)と、前記層(I)に接して設けられる層(II)とを有し、
前記層(II)は、アミノ基を有し、かつ、下記で定義される5%質量減少温度が200℃以上である添加剤(α)が、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に分散した組成物からなり、前記組成物における前記添加剤(α)の含有量は、前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)の100質量部に対して0.01〜10質量部であることを特徴とするフッ素樹脂積層体。
〔5%質量減少温度〕
示差熱熱重量同時測定装置を用いて、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で昇温した際に、質量減少率が5質量%となる時の温度。
[2]前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである、[1]のフッ素樹脂積層体。
[3]前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、アミド基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレタン基、カルボニル基、酸無水物残基からなる群より選ばれる官能基の少なくとも1種を有する、[1]または[2]のフッ素樹脂積層体。
[4]前記添加剤(α)は、メラミンを含有する、[1]〜[3]のフッ素樹脂積層体。
[5]前記添加剤(α)は、さらに、イソシアヌル酸、シアヌル酸およびポリリン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する、[4]のフッ素樹脂積層体。
[6]前記含フッ素重合体(i)は、フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンに基づく単位とを有し、かつ、カルボニル基含有基を有する共重合体である、[1]〜[5]のフッ素樹脂積層体。
[7]前記含フッ素重合体(i)は、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位およびカルボニル基含有基を有する主鎖末端基の少なくとも一方を有する、[1]〜[6]のフッ素樹脂積層体。
[8]前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレンに基づく単位(A)と、エチレンに基づく単位(B)と、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーに基づく単位(C1)、および2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマーに基づく単位(C2)の少なくとも一方からなる単位(C)とを含有し、前記単位(A)と前記単位(B)と前記単位(C)との合計モル量に対して、前記単位(A)が25〜79.99モル%、前記単位(B)が20〜74.99モル%、前記単位(C)が0.01〜5モル%であり、
融点が100〜220℃である、[7]のフッ素樹脂積層体。
[9]前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレン、エチレン、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーおよび2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマー以外の、その他のモノマーに基づく単位(D)をさらに含有し、前記単位(D)に対する前記単位(A)のモル比が、70/30〜99.9/0.1である、[8]のフッ素樹脂積層体。
[10]前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレン、エチレン、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーおよび2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマー以外の、その他のモノマーに基づく単位(D)をさらに含有し、
前記単位(A)と前記単位(B)との合計に対する前記単位(D)のモル比が、1/99〜20/80である、[8]または[9]のフッ素樹脂積層体。
[11]前記単位(D)は、前記その他のモノマーであるヘキサフルオロプロピレンに基づく単位(D1)を含む、[9]または[10]のフッ素樹脂積層体。
[12]前記単位(D)は、前記その他のモノマーであるCH2=CH(CF2)Q1F(ただし、Q1は2〜10の整数。)に基づく単位(D2)をさらに含む、[11]のフッ素樹脂積層体。
[13][1]〜[12]のフッ素樹脂積層体から得られる多層チューブまたは多層シート。
[14][1]〜[12]のフッ素樹脂積層体の製造方法であって、
前記含フッ素重合体(i)の融点以上400℃未満の温度範囲で、少なくとも前記層(I)と前記層(II)とを1秒間以上60分間未満の範囲で熱融着させる熱積層工程を有する、フッ素樹脂積層体の製造方法。
本発明のフッ素樹脂積層体の製造方法によれば、フッ素樹脂の層と他の材料からなる層が直接、強固に接着したフッ素樹脂積層体を製造できる。
「モノマー」とは、重合性不飽和結合、すなわち重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「主鎖」とは、モノマーが重合することによって形成される炭素鎖の中で、炭素数が最大となる部分を指す。
層(I)を構成する含フッ素重合体(i)は、カルボニル基含有基を有し、融点が230℃未満の重合体である。
含フッ素重合体(i)の融点が上記上限値未満であれば、フッ素樹脂積層体を製造する際の、層(I)と層(II)とを熱融着させる熱積層工程において、たとえば押し出し機のダイス温度、加熱プレスにおけるプレス板の温度等を低温に設定できる。そのため、層(I)を構成する含フッ素重合体(i)、層(II)を構成する非フッ素熱可塑性重合体(ii)および添加剤(α)が熱積層工程で熱分解されにくく、含フッ素重合体(i)および非フッ素熱可塑性重合体(ii)の発泡等を抑制できる。含フッ素重合体(i)の融点は、100〜220℃が好ましく、120〜205℃がより好ましく、150〜200℃がさらに好ましい。融点が上記範囲の上限値以下であれば、上述の熱積層工程において含フッ素重合体(i)、非フッ素熱可塑性重合体(ii)および添加剤(α)がより熱分解されにくく、発泡等をより抑制できる。融点が上記範囲の下限値以上であれば、層(I)と層(II)とが強固に接着したフッ素樹脂積層体が得られやすい。
含フッ素重合体(i)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
(a)カルボニル基含有基と、フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンに基づく単位とを有する共重合体、
(b)カルボニル基含有基を有するポリビニリデンフルオライド、
(c)カルボニル基含有基を有するポリクロロトリフルオロエチレン、
(d)カルボニル基含有基と、フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンに基づく単位と、ヘキサフルオロプロピレンに基づく単位と、フッ化ビニリデンに基づく単位とを有する共重合体。
上記(a)〜(d)の重合体のなかでも、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦性、低誘電特性、機械強度等の特性に優れている点から上記(a)の共重合体が好ましい。上記(a)の共重合体は、後述するように、その他のモノマーに基づく単位(D)を含有していてもよい。
ペルハロフルオロエチレンとは、エチレンの水素原子の全てがハロゲン原子で置換されており、かつ、ハロゲン原子の少なくとも1つがフッ素原子である化合物を意味する。フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンとしては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられ、なかでもTFEが好ましい。フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
カルボニル基含有基としては、たとえば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有してなる基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基等が挙げられる。
上記炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有してなる基における炭化水素基としては、たとえば炭素数2〜8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を含まない状態での炭素数である。該アルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、他基材との反応性の点から、フッ素原子が好ましい。すなわちハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、他基材との反応性の点から、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
(1)重合反応で含フッ素重合体(i)を製造する際に、カルボニル基含有基を有するモノマーを使用する方法。該方法によれば、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を有する含フッ素重合体(i)が得られる。
(2)重合反応で含フッ素重合体(i)を製造する際に、カルボニル基含有基を有するラジカル重合開始剤、およびカルボニル基含有基を有する連鎖移動剤の少なくとも一方を使用する方法。該方法によれば、カルボニル基含有基を有する主鎖末端基を備えた含フッ素重合体(i)が得られる。
(3)熱分解によりカルボニル基含有基を生成する熱分解部位を有する含フッ素重合体を加熱し、該含フッ素重合体を部分的に熱分解することで、カルボニル基含有基を生成させる方法。
(4)カルボニル基含有基を有しない含フッ素重合体に、カルボニル基含有基を有するモノマーをグラフト重合して、該含フッ素重合体にカルボニル基含有基を導入する方法。
上記単位(C2)を構成する2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマーとしては、イタコン酸(以下、「IAC」ともいう。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(以下、「NAC」ともいう。)、およびシトラコン酸(以下、「CAC」ともいう。)等が挙げられる。2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマーは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なかでも重合性に優れる点から、IAHに基づく単位が好ましい。
各単位(A)〜(C)の含有量が上記範囲内であれば、含フッ素重合体(i)が耐薬品性、耐熱性に優れる。特に、単位(C)の含有量が上記範囲内であれば、耐薬品性、耐熱性に加え、層(I)と後述の層(II)との接着性がより高くなる。
また、各単位(A)〜(C)の含有量が上記範囲内であれば、含フッ素重合体(i)の融点を100〜220℃に制御しやすい。
その他のモノマーは、TFE、エチレン、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーおよび2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマー以外のモノマーであって、含フッ素モノマーと非フッ素モノマーとに分けられる。
R2およびR3は、炭素数1〜6のフルオロアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜4のフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
フルオロアルキル基としては、CF3基、C2F5基、C3F7基等のペルフルオロアルキル基が特に好ましく、フルオロアルキレン基としては、CF2基、C2F4基、C3F6基等のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
CF2=CFOR1の具体例としては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられ、CF2=CFOCF2CF2CF3が好ましい。
CH2=CF(CF2)Q2Hの具体例としては、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられる。
非フッ素モノマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体(i)は、単位(D)として少なくともHFPに基づく単位(D1)を有することが好ましい。含フッ素重合体(i)が単位(D1)を含むと、該含フッ素重合体(i)の耐熱性を低下させることなく、含フッ素重合体(i)の融点を上記範囲に制御しやすくなる。
含フッ素重合体(i)は、単位(D)として単位(D1)の他に、上述したVDF、CF2=CFOR1、CH2=CH(CF2)Q1FおよびCH2=CF(CF2)Q2Hからなる群より選ばれる1種のモノマーに基づく単位をさらに含有することが好ましく、なかでもCH2=CH(CF2)Q1Fに基づく単位(D2)を有することがより好ましい。含フッ素重合体(i)が、単位(D)として、単位(D1)とともに単位(D2)を含有すると、含フッ素重合体(i)の融点を上記範囲に制御しやすくなるとともに、含フッ素重合体(i)の耐ストレスクラック性、成形性および生産性に優れる。
また、単位(A)と単位(B)との合計に対する単位(D)のモル比((D)/((A)+(B)))は、1/99〜20/80であることが好ましく、2/98〜15/85がより好ましく、4/96〜12/88が最も好ましい。上限値以下であれば、含フッ素重合体(i)の耐薬品性、耐熱性がより優れる。下限値以上であれば、含フッ素重合体(i)の融点が低下し、該融点を上記範囲に制御しやすくなる。
含フッ素重合体(i)を構成するすべての単位に対する単位(D1)の含有割合は、6〜15モル%が好ましく、7〜12モル%がより好ましい。上限値以下であれば、含フッ素重合体(i)の融点が高くなりすぎず、成形性に優れる。下限値以上であれば、含フッ素重合体(i)製造時の重合反応が問題なく進行し、生産性に優れるとともに、含フッ素重合体(i)の耐熱性、成形性がより優れる。上記範囲内であれば、含フッ素重合体(i)の生産性、耐熱性および成形性が優れる。
(1)単位(A)/単位(B)/単位(C);
(2)単位(A)/単位(B)/単位(C)/単位(D1);
(3)単位(A)/単位(B)/単位(C)/プロピレンに基づく単位;
(4)単位(A)/単位(B)/単位(C)/単位(D2)/プロピレンに基づく単位;
(5)単位(A)/単位(B)/単位(C)/単位(D1)/単位(D2)。
ラジカル重合開始剤としては、その半減期が10時間である温度が、0〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2)rCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
連鎖移動剤として、カルボニル基含有基を有する連鎖移動剤を用いると、カルボニル基含有基を含フッ素重合体(i)の主鎖末端基として導入できる。そのような連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル等が挙げられる。
連鎖移動剤を使用すると、含フッ素重合体(i)のメルトフローレート(MFR)および後述の容量流速を制御できる。
重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
重合中、上記非フッ素モノマーが重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的または断続的に重合槽内に供給し、該非フッ素モノマーの濃度を上記範囲内に維持することが好ましい。
層(II)は、添加剤(α)が非フッ素熱可塑性重合体(ii)に分散した組成物からなり、上述の層(I)に接して設けられる。
添加剤(α)は、アミノ基を有し、かつ、下記の5%質量減少温度が200℃以上である添加剤である。添加剤(α)は組成物中に分散している。
〔5%質量減少温度〕
示差熱熱重量同時測定装置を用い、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で試料を昇温した際に、試料の質量減少率が5質量%となる時の温度。
示差熱熱重量同時測定装置としては、たとえば「TG/DTA7200」(セイコーインスツル社製)を使用できる。試料の質量は、10±0.2mg程度とする。
なお、試料を70℃のオーブン中で10時間乾燥してから、5%質量減少温度の測定を行った。
アミノ基は、1〜3級のいずれでもよいが、反応性の点から、1級または2級が好ましい。
該添加剤(α1)としては、メラミンのみからなる添加剤(α11)、メラミンと、イソシアヌル酸、シアヌル酸およびポリリン酸から選ばれる少なくとも1種とを含有する添加剤(α12)が好ましい。添加剤(α1)において、メラミンの一部は、メラミンの脱アンモニア縮合物であるメラムおよびメレムの少なくとも一方に変換されていてもよい。また、メラミン、メラムおよびメラムと、イソシアヌル酸、シアヌル酸およびポリリン酸から選ばれる少なくとも1種とは、水素結合していてもよい。
添加剤(α12)としては、層(I)と層(II)とがより強固に接着する点から、メラミン、メラムおよびメレムと、ポリリン酸とが水素結合している混合物からなる添加剤、およびメラミンとシアヌル酸とが水素結合しているメラミンシアヌレートからなる添加剤の少なくとも1種が好ましい。添加剤(α)は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
添加剤(α)の平均粒子径は、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下が最も好ましい。平均粒子径が上記上限値以下であると、添加剤(α)は凝集しにくく、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に対する分散性が優れる。分散性が不充分な場合、層(I)と層(II)の接着性が低下し、層間剥離やクラックの原因になる。
本明細書において、平均粒子径は、島津製作所社製「SALD−3000 レーザー回折式粒度分布測定装置」で測定した場合の粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50体積%となる粒子径である。
非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、フッ素原子を有しない熱可塑性重合体である。非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、フッ素樹脂積層体の用途等に応じて、1種以上を適宜選択できる。
熱可塑性エラストマーのなかでは、強度および柔軟性に優れる点から、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましく、なかでも、ポリエーテル系ポリウレタン熱可塑性エラストマー、ポリエステル系ポリウレタン熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート系ポリウレタン熱可塑性エラストマーがより好ましく、ポリエーテル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
非フッ素熱可塑性重合体(ii)が該官能基を有していなくても、溶融混練により非フッ素熱可塑性重合体(ii)中に添加剤(α)が分散していれば、添加剤(α)を含む層(II)と、添加剤(α)のアミノ基と反応するカルボニル基含有基を含む層(I)とは、良好に接着するが、非フッ素熱可塑性重合体(ii)が官能基を有すると、該官能基と添加剤(α)のアミノ基とが反応するため、より強固に、層(I)と層(II)とが接着する。特に非フッ素熱可塑性重合体(ii)が、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーであると、該ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが官能基を有することによる、層(I)と層(II)との接着力向上効果が大きい。
組成物における添加剤(α)の含有量は、非フッ素熱可塑性重合体(ii)の100質量部に対して0.01〜10質量部であり、0.05〜3質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。添加剤(α)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、添加剤(α)による層(I)と層(II)とを良好に接着する効果が充分に得られる。上記範囲の上限値以下であれば、添加剤(α)を含む層(II)に発泡が生じたり、層(II)自体が脆くなったりすることがなく、層(I)と層(II)とが良好に接着する。
混練温度は150℃〜400℃が好ましく、滞留時間は10秒〜20分間が好ましく、スクリュー回転数は30〜1500rpmであることが好ましい。混練温度は170℃〜260℃がより好ましく、滞留時間は15秒〜5分間がより好ましく、スクリュー回転数は75rpm〜1000rpmがより好ましい。各上限が上記範囲内であれば、添加剤(α)が、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に良好に分散し、その結果、層(I)と層(II)とが良好に接着する。
フッ素樹脂積層体における各層の厚みには特に制限はないが、たとえば、層(I)は3〜2000μmで、層(II)は50〜100000μmであることが好ましい。また、層(II)における層(I)が設けられていない側には、さらに1層以上の他の層が設けられていてもよい。このように設けられる1層以上の他の層の総厚みは、75〜100000μmが好ましい。
フッ素樹脂積層体の総厚みには特に制限はなく、各層の厚みが上記範囲内であればよいが、たとえば100〜100000μmが好ましい。
多層チューブは、その用途に応じて、層(I)が内周側に位置していても外周側に位置していてもよいが、多層チューブがたとえば薬液チューブ、食料品搬送チューブ等である場合には、内周側に層(I)が位置していることが好ましい。
多層チューブが薬液チューブの場合、内周側に層(I)が位置していると、層(I)に含まれる含フッ素重合体(i)に基づき、強アルカリ性または酸性の薬液に対する耐薬品性に優れる。
多層チューブが食料品搬送チューブの場合、内周側に層(I)が位置していると、層(I)に含まれる含フッ素重合体(i)に基づき、食料品として果汁、ペースト状食品等を搬送する場合の耐菌性に優れる。また、食料品搬送チューブを洗浄する洗浄剤に対する耐性にも優れる。
フッ素樹脂積層体における層(I)と層(II)との剥離強度(JIS K 6854−2:1999)は、5N/cm以上であることが好ましく、7N/cm以上であることが好ましく、10N/cm以上であることがより好ましい。
本発明のフッ素樹脂積層体は、成形の簡便性、生産性から、多層押し出し成形(共押し出し成形)、押し出しラミネート成形、加熱ロール、加熱プレスを用いた多層ラミネート成形、多層射出成形、多層ブロー成形等を用いた熱積層工程を有する方法により、好適に製造できる。該熱積層工程により、層(I)と層(II)とが少なくとも積層され、その他に、さらに他の層が積層されてよい。
たとえば、複数の押し出し機を用いる多層押し出し成形により熱積層工程を行って、フッ素樹脂積層体を製造する場合、該押し出し機のダイス温度は、含フッ素重合体(i)の融点以上400℃未満が好ましい。該温度は、170〜320℃がより好ましく、200〜280℃がさらに好ましく、200〜240℃が最も好ましい。ダイス温度が上記下限値以上であれば、含フッ素重合体(i)が充分に軟化して加工性、接着性に優れ、上記上限値以下であれば、熱積層工程で層(I)を構成する含フッ素重合体(i)、層(II)に含まれる非フッ素熱可塑性重合体(ii)および添加剤(α)の分解、発泡等を抑制でき、接着性に優れる。
プレス板の温度(熱積層工程の温度)は、上述のとおり含フッ素重合体(i)の融点以上400℃未満が好ましく、170〜320℃がより好ましく、170〜280℃がさらに好ましく、200〜280℃が特に好ましく、200〜240℃が最も好ましい。プレス板の温度が上記下限値以上であれば、フッ素樹脂積層体の表面の平滑性、フッ素樹脂成形体の薄肉成形性に優れ、上記上限値以下であれば、熱積層工程で層(I)を構成する含フッ素重合体(i)、層(II)に含まれる非フッ素熱可塑性重合体(ii)および添加剤(α)の分解、発泡等を抑制でき、接着性に優れる。
加圧工程のプレス時間は0.1秒間〜30分間以下が好ましい。0.1秒間以上であれば各層間の接着力がより安定し、30分間以下であれば生産性に優れる。
加圧工程のプレス圧力は0.1MPa〜50MPaが好ましい。0.1MPa以上であれば各層間の接着力がより安定し、50MPa以下であれば生産性に優れる。
<製造例1>
以下のようにして、層(I)に用いた含フッ素重合体(i−1)を製造した。
まず、内容積が430Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの237.2kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下「AK225cb」という。)の49.5kg、HFPの122kg、CH2=CH(CF2)4Fの1.31kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFEとエチレンの混合ガス(TFE/エチレン=89/11(モル比))で、1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの2質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の2.5Lを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるようにTFEとエチレンのモノマー混合ガス(TFE/エチレン=54/46(モル比))を連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとエチレンの合計モル数に対して1モル%に相当する量のCH2=CH(CF2)4Fと0.4モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。
重合開始9.3時間後、モノマー混合ガスの29kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに、常圧までパージした。
非フッ素熱可塑性重合体(ii)としては、ポリエーテル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーである、BASFジャパン社製「エラストラン(登録商標) 1180AD」を使用した。
「エラストラン(登録商標) 1180AD」:末端にヒドロキシ基を有するポリオールと、2官能以上のイソシアネートとの反応物であり、分子鎖中にアミド基、ウレア基、ウレタン基、ヒドロキシ基等の官能基を有する。上記官能基はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴装置(NMR)などの分析により確認できる。
添加剤(α)としては以下の市販品を使用した。
(α−1):ポリリン酸メラミン・メラム・メレム「ホスメル(登録商標) 200」(日産化学社製)、比重=1.81、下記の5%質量減少温度:376℃。メラミン、メラムおよびメラムと、ポリリン酸とは、水素結合している。平均粒子径は2.0μm未満である。
(α−2):メラミンシアヌレート「MC6000」(日産化学社製)、比重=1.52、分子量=255、下記の5%質量減少温度:338℃。メラミンと、シアヌル酸とは、水素結合している。平均粒子径は2.0μm未満である。
示差熱熱重量同時測定装置を用い、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で試料を昇温した際に、試料の質量減少率が5質量%となる時の温度(試料の質量:10±0.2mg)。示差熱熱重量同時測定装置として、「TG/DTA7200」(セイコーインスツル社製)を使用。
なお、試料は、測定前に70℃のオーブン中で10時間乾燥した。
φ15mm、L/D=45の二軸押し出し機を用いて、以下の溶融混練条件にて、表1に示す配合にて、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に、添加剤(α−1)または(α−2)を分散させ、組成物を得た。
混練温度:210℃、
滞留時間:90分間、
スクリュー回転数:200rpm。
テスター産業社製プレス成形機を用いて、下記条件にて各プレスシートを作成した。
「含フッ素重合体(i−1)のプレスシートの作製」
予備溶融時間:10min、プレス時間:3min、プレス圧力:10MPa、成形温度:240℃の条件にて13×13×0.02t(cm)のプレスシートを作製した。
「上記組成物のプレスシートの作製」
予備溶融時間:10min、プレス時間:3min、プレス圧力:10MPa、成形温度:220℃の条件にて13×13×0.03t(cm)のプレスシートを作製した。
層(I)および層(II)として、表1に示すように、上記の方法で製造したプレスシートをそれぞれ用いフッ素樹脂積層体を製造した。熱積層工程は、テスター産業社製プレス成形機を用いて、表1に示す温度で各シートを熱積層する熱積層工程(予備溶融工程および加圧工程)を行った。
温度以外の条件は、予備溶融工程の加熱保持時間:2min、加圧工程の保持時間(プレス時間):2min、加圧工程のプレス圧力:5MPaとした。
各層の厚みは、層(I)は0.02cm、層(II)は0.03cmであった。
得られたフッ素樹脂積層体について、以下の剥離試験により剥離強度を測定した。
結果を表1に示す。
(剥離試験)
フッ素樹脂積層体について、JIS K 6854−2:1999に準じて剥離接着強さ試験方法を行い、各層間の剥離強度を測定した。
具体的には、フッ素樹脂積層体を10×1×0.05t(cm)の長方形状のサンプルとし、引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度30mm/分の条件下で剥離したときの荷重を試験片幅(1cm)で除して、剥離強度(N/cm)を算出した。
一方、層(II)を構成する組成物中の添加剤(α)の量が過剰である比較例1の場合には、添加剤(α)を含む層(II)に発泡が生じて層(II)自体が脆くなり、層(I)と層(II)とは接着せず、フッ素樹脂積層体を製造できなかった。
また、層(II)が添加剤(α)を含まない比較例2の場合にも、層(I)と層(II)とは接着せず、フッ素樹脂積層体を製造できなかった。
Claims (14)
- カルボニル基含有基を有し、融点が230℃未満である含フッ素重合体(i)の層(I)と、前記層(I)に接して設けられる層(II)とを有し、
前記層(II)は、アミノ基を有し、かつ、下記で定義される5%質量減少温度が200℃以上である添加剤(α)が、非フッ素熱可塑性重合体(ii)に分散した組成物からなり、
前記組成物における前記添加剤(α)の含有量は、前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)の100質量部に対して0.01〜10質量部であることを特徴とするフッ素樹脂積層体。
〔5%質量減少温度〕
示差熱熱重量同時測定装置を用いて、空気雰囲気中、昇温速度10℃/分で昇温した際に、質量減少率が5質量%となる時の温度。 - 前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記非フッ素熱可塑性重合体(ii)は、アミド基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ウレタン基、カルボニル基および酸無水物残基からなる群より選ばれる官能基の少なくとも1種を有する、請求項1または2に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記添加剤(α)は、メラミンを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記添加剤(α)は、さらに、イソシアヌル酸、シアヌル酸およびポリリン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記含フッ素重合体(i)は、フッ素原子数が3または4のペルハロフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンに基づく単位とを有し、かつ、カルボニル基含有基を有する共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記含フッ素重合体(i)は、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位およびカルボニル基含有基を有する主鎖末端基の少なくとも一方を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレンに基づく単位(A)と、エチレンに基づく単位(B)と、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーに基づく単位(C1)、および2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマーに基づく単位(C2)の少なくとも一方からなる単位(C)とを含有し、前記単位(A)と前記単位(B)と前記単位(C)との合計モル量に対して、前記単位(A)が25〜79.99モル%、前記単位(B)が20〜74.99モル%、前記単位(C)が0.01〜5モル%であり、
融点が100〜220℃である、請求項7に記載のフッ素樹脂積層体。 - 前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレン、エチレン、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーおよび2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマー以外の、その他のモノマーに基づく単位(D)をさらに含有し、
前記単位(D)に対する前記単位(A)のモル比が、70/30〜99.9/0.1である、請求項8に記載のフッ素樹脂積層体。 - 前記含フッ素重合体(i)は、テトラフルオロエチレン、エチレン、酸無水物残基を有する非フッ素モノマーおよび2つ以上のカルボキシ基を有する非フッ素モノマー以外の、その他のモノマーに基づく単位(D)をさらに含有し、
前記単位(A)と前記単位(B)との合計に対する前記単位(D)のモル比が、1/99〜20/80である、請求項8または9に記載のフッ素樹脂積層体。 - 前記単位(D)は、前記その他のモノマーであるヘキサフルオロプロピレンに基づく単位(D1)を含む、請求項9または10に記載のフッ素樹脂積層体。
- 前記単位(D)は、前記その他のモノマーであるCH2=CH(CF2)Q1F(ただし、Q1は2〜10の整数。)に基づく単位(D2)をさらに含む、請求項11に記載のフッ素樹脂積層体。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載のフッ素樹脂積層体から得られる多層チューブまたは多層シート。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載のフッ素樹脂積層体の製造方法であって、
前記含フッ素重合体(i)の融点以上400℃未満の温度範囲で、少なくとも前記層(I)と前記層(II)とを1秒間以上60分間未満の範囲で熱融着させる熱積層工程を有する、フッ素樹脂積層体の製造方法。
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