JP2016215491A - アルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材 - Google Patents
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前記粗面化表面には複数の凹部が形成されており、当該複数の凹部のうち、最大孔径が10μm以上で、当該最大孔径長さに沿った断面における最大深さが5μm以上の凹部を特定凹部とし、
当該粗面化表面における任意の1mm四方に存在する特定凹部の周囲長の合計L(mm)が0.10mm≦L≦0.35mmであり、前記熱可塑性樹脂の引張破断強度をS(MPa)、引張破断伸びをε(%)としたときの見かけの弾性率E=S/ε(MPa/%)が0.0050≦E≦0.0380であることを特徴とするアルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材とした。
本発明は、大きく分けて二つの要素により構成されている。すなわち、「アルミニウム材の表面に適切な周囲長を有する凹部を形成するような粗面化処理を施すこと」、ならびに、「粗面化表面に適切な見かけの弾性率を有する熱可塑性樹脂を被覆すること」である。以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るアルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材の基材である、純アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム材の材質、製造方法及び形状は、上記適切な周囲長を有する凹部が形成されるものであれば、特に限定されるものではない。材質としては、純アルミニウム、又は、アルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金としては、特に限定されるものではないが、1000系、3000系、5000系、7000系など、工業的に用いられるアルミニウム合金のいずれも用いことができる。また、製造方法も特に限定されるものではなく、圧延材、押出材、鋳造材、鍛造材のいずれも適用可能である。更に、アルミニウム材の形状も特に限定されるものではなく、板材や棒材の他に複雑な成形形状のものも適用可能であり、例えば、板材の場合の厚さ、棒材の場合の直径、成形形状についても、特に限定されるものではない。
アルミニウム材の粗面化表面に形成された特定凹部の周囲長の合計Lは、1mm四方当たり0.10mm≦L≦0.35mmとする必要がある。図1に示すように、アルミニウム材に物理的又は化学的な表面処理を施すことにより、アルミニウム材表面に粗面化表面が形成される。図1において、1は粗面化表面に形成された凹部、2は凹部が形成されていない粗面化表面を指す。図1に示すように、凹部1を上から見た際の形状(以下、「平面形状」と記す)は様々であり、複数の突出部やへこみ部を有する。このような凹部のうち、本発明において周囲長の合計L(mm)を規定する特定凹部は、最大孔径が10μm以上で、最大孔径長さに沿った断面における最大深さが5μm以上のものである。
本発明において、アルミニウム材表面に特定凹部を形成するための粗面化処理法としては、水酸化ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩酸水溶液、リン酸水溶液、塩化鉄水溶液などや、これらの混合水溶液の中にアルミニウム材を浸漬したり、アルミニウム材表面にこれら溶液を噴霧することにより、エッチング作用を利用した化学処理法が採用される。処理の容易性から、浸漬処理が好ましい。浸漬処理の場合、処理水溶液の濃度、温度及び浸漬時間の増加と共に、特定凹部の周囲長の合計Lもほぼ比例して増加する。これらは、特に限定されるものではなく、上述の特定凹部の形状が得られる範囲で適宜選択すればよいが、処理水溶液の好ましい濃度及び温度は継の通りである。水酸化ナトリウム水溶液では濃度5〜25%質量・温度50〜70℃、硫酸アンモニウム水溶液では濃度1〜10質量%・温度10〜20℃、フッ化アンモニウム水溶液では濃度5〜20質量%・温度10〜60℃、塩化アンモニウム水溶液では濃度30〜40質量%・温度20〜50℃、塩酸水溶液では濃度5〜20質量%・温度20〜60℃、リン酸水溶液では50〜70質量%・温度80〜100℃、塩化鉄水溶液では30〜50質量%・温度80〜100℃である。なお、浸漬処理時間については、いずれの水溶液を用いた場合でも0.5〜10分とするのが好ましい。
本発明において、上記化学処理法や電解処理法による粗面化処理法を実施する前に、必要に応じて前処理を行ってもよい。前処理としては、アルミニウム合金材の表面を、脱脂、表面調整、表面付着物や汚染物等の除去を目的として、後述する酸水溶液やアルカリ水溶液による酸処理、及び/又は、アルカリ処理からなる処理が挙げられる。前処理は、これらの水溶液の中にアルミニウム材を浸漬したり、アルミニウム材表面にこれら水溶液を噴霧することによって行われるが、処理の容易性から浸漬処理が好ましい。なお、酸水溶液やアルカリ水溶液の濃度や温度、浸漬時間等は、前処理の目的に応じて適宜選択すればよい。
上述のように、粗面化処理法によってアルミニウム合金材の表面に、特定構造の凹部を有する粗面化表面を形成した後に、必要に応じて、後処理を行ってもよい。後処理としては、粗面化表面において溶け残ったスマット及び酸化皮膜の除去を目的として、硝酸及び/又は硫酸、クロム酸等によるデスマット処理が行われる。後処理についても、浸漬法又は噴霧法が採用可能である。なお、デスマット処理溶液の濃度や温度、浸漬時間等は、後処理の目的に応じて適宜選択すればよい。
本発明において、アルミニウム材の粗面化表面に接合される熱可塑性樹脂は、その引張破断強度をS(MPa)、引張破断伸びをε(%)としたときの見かけの弾性率E=S/ε(MPa/%)が0.0050≦E≦0.0380であることを必要とする。Eは、好ましくは0.0200≦E≦0.0300である。Eは、JIS K 7311に準拠して測定される。
アルミニウム材の粗面化表面に熱可塑性樹脂を接合する方法としては、アルミニウム材/熱可塑性樹脂の二層構造では、(1)フィルム状の熱可塑性樹脂にアルミニウム材を加熱圧着する方法、(2)熱可塑性樹脂を溶融押出加工しながら、これにアルミニウム材を加熱圧着する方法などが挙げられる。また、アルミニウム材/熱可塑性樹脂/アルミニウム材の三層構造では、(3)フィルム状の熱可塑性樹脂を介してアルミニウム材同士を加熱圧着する方法、(4)熱可塑性樹脂を溶融押出加工しながら、これを介してアルミニウム材同士を加熱圧着する方法などが挙げられる。更に、アルミニウム材と熱可塑性樹脂が交互に積層されて両端がアルミニウム材となる、五層以上の奇数層構造においては、三層構造の熱可塑性樹脂/アルミニウム材の間に、一組以上の二層構造が挿入されたものとなる。
アルミニウム材として、板厚0.5mmのA5052−H24合金板を使用した。この板材の表面形状の測定結果を、表1に示す。これらの板材に対して、前処理として従来技術に基づく脱脂処理を実施した。すなわち、50℃の市販のアルカリ脱脂剤水溶液中に板材を1分間浸漬することにより、板材表面を脱脂したのち水洗を行った。次いで、前処理した板材を陽極とし、対向する陰極には炭素電極を用い、液温20℃、濃度5質量%の塩酸水溶液を電解溶液に用いて、電流密度3kA/m2で、1〜60秒間の陽極電解処理を行うことにより、陰極に対向する陽極(アルミニウム材)表面に粗面化表面を形成した。更に、後処理として硝酸によるデスマット処理を行なってアルミニウム材試料を作製した。
上記アルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材の試料を巾25mm、長さ200mmに切断し、JIS
K 6854に準じるT型剥離試験により剥離速度100mm/分における剥離強度を測定した。測定結果は下記の基準で評価した。
◎:剥離強度6.0N/mm以上
○:剥離強度5.0N/mm以上6.0N/mm未満
×:剥離強度4.0N/mm以上5.0N/mm未満
××:剥離強度4.0N/mm未満
◎と○を合格とし、×と××を不合格とした。
11・・・アルミニウム材の粗面化表面に形成された特定凹部
2・・・アルミニウム材の粗面化表面において、凹部が形成されていない部分
MDE・・・特定凹部の最大深さ
MDI・・・特定凹部の最大孔径
Claims (1)
- 粗面化表面を有する純アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム材と、前記粗面化表面に接合された熱可塑性樹脂とを含むアルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材において、
前記粗面化表面には複数の凹部が形成されており、当該複数の凹部のうち、最大孔径が10μm以上で、当該最大孔径長さに沿った断面における最大深さが5μm以上の凹部を特定凹部とし、
当該粗面化表面における任意の1mm四方に存在する特定凹部の周囲長の合計L(mm)が0.10mm≦L≦0.35mmであり、前記熱可塑性樹脂の引張破断強度をS(MPa)、引張破断伸びをε(%)としたときの見かけの弾性率E=S/ε(MPa/%)が0.0050≦E≦0.0380であることを特徴とするアルミニウム材/熱可塑性樹脂の複合材。
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