JP2016210633A - ガラス原料造粒体の製造方法、溶融ガラスの製造方法、およびガラス物品の製造方法 - Google Patents
ガラス原料造粒体の製造方法、溶融ガラスの製造方法、およびガラス物品の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
特許文献2に記載の方法は、強度の高い造粒体を製造できるものの、多量の苛性ソーダを使用するため造粒体の製造中に凝集が生じやすく、粒径制御性が低く均一な造粒体を得ることが困難であり、ケイ砂と苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を反応させた後に砂粒を機械的に処理する必要があるため、工程が複雑であり煩雑さを伴う。また、反応性の高い苛性ソーダを多量に使用するので装置や器具が腐食し易い問題がある。
[1]少なくともシリカと、アルミニウム源と、アルカリ金属源と、ホウ酸と、を含有するガラス原料組成物からガラス原料造粒体を製造する方法であって、固形分換算で、シリカを40〜75質量%、水酸化アルミニウムを3〜30質量%、ホウ酸を3〜30質量%、およびアルカリ金属水酸化物を0.4〜4.6質量%含有するガラス原料組成物(A)を水の存在下で造粒する工程を有する、ガラス原料造粒体の製造方法。
[3]前記シリカの平均粒子径を表すD50が200〜350μmであり、前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.4〜2.1質量%である、[1]記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[4]前記シリカの平均粒子径を表すD50が5〜50μmであり、前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.8〜4.2質量%である、[1]記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[6]前記水酸化アルミニウムの平均粒子径を表すD50が1μm〜120μmである[1]〜[5]のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[7]前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[8]ガラス原料造粒体の平均粒子径を表すD50が412μm〜2mmである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[9]前記ガラス原料造粒体は、転動造粒法によって造粒される、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
[11]前記ガラス溶融工程が、溶融炉中の溶融ガラス液面上に前記ガラス原料造粒体を投入する工程を有する[10]記載の溶融ガラスの製造方法。
[12]前記ガラス溶融工程が、前記ガラス原料造粒体を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とする工程と、前記溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとする工程とを含む、[10]記載の溶融ガラスの製造方法。
[13][10]〜[12]のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法を用いてガラス物品を製造する方法であって、前記ガラス溶融工程と、得られた溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程とを有する、ガラス物品の製造方法。
本発明の溶融ガラスの製造方法によれば、ガラス原料造粒体の製造工程を複雑化させずに良好な造粒体を製造でき、該造粒体を用いて溶融ガラスを製造できる。
本発明のガラス物品の製造方法によれば、ガラス原料造粒体の製造工程を複雑化させずに良好な造粒体を製造でき、該造粒体を用いてガラス物品を製造できる。
本明細書において「ガラス原料」はガラスの構成成分となる原料であり、「ガラス原料組成物」は、ガラス原料を複数含む組成物である。ガラス原料としては、酸化物や複合酸化物、熱分解により酸化物となりうる化合物が挙げられる。熱分解により酸化物となりうる化合物としては、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。本明細書において「造粒体」は、ガラス原料組成物を造粒したものである。
本明細書においてガラス原料組成物の組成は、固形分換算の質量%で表示する。すなわち、ガラス原料組成物の固形分質量を100質量%として質量百分率で表示し、ガラス原料組成物が水溶液を含む場合には、当該水溶液中の固形分を含めた組成である。なお、固形分は結晶水を含む。
本明細書において、「D50」は、積算分率における50%径で表される平均粒子径である。ガラス原料のD50は、レーザー回折法を用いて測定された体積基準の積算分率における50%径である。レーザー回折法による粒子径測定方法としては、JIS Z8825−1(2001)に記載の方法を用いる。
造粒体のD50は、篩などを利用して測定された質量累計50%のメディアン径である。
ガラス原料組成物(A)は少なくともシリカと、アルミニウム源と、ホウ酸と、アルカリ金属源と、を含有する。
[シリカ]
シリカは、ガラスの製造工程中でガラスのネットワークフォーマーであるSiO2成分となる化合物であり、必須である。
シリカとしては、ケイ砂、石英、クリストバライト、非晶質シリカが挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。良質の原料を入手しやすい点でケイ砂が好ましい。これらは粉末状で用いられる。
ガラス原料組成物(A)に対するシリカの含有量は40〜75質量%であり、45〜72質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。シリカの含有量が40質量%以上であると造粒体が造粒機の壁面等に付着しにくいので取扱いやすい。造粒体が付着しにくい点で、ケイ砂の含有量は45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。シリカの含有量が75質量%以下であると造粒体の強度が高くなりやすい。造粒体が崩れにくい点で、シリカの含有量は72質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
シリカのD50は5〜350μmが好ましい。シリカのD50が5μm以上であると造粒工程において粉体が扱いやすく、造粒しやすい。350μm以下であると均質な造粒体が得られやすい。また、シリカのD50が200〜350μmであれば、鉄などの不純物の少ない粉体原料を利用しやすくなり造粒体の組成が制御しやすい。シリカのD50が5〜50μmであれば、造粒体に比べてシリカが十分小さいために造粒体中にシリカが均等に分散し易いため、より均質な造粒体を安定して得られるため好ましい。
アルミニウム源は、溶融ガラスの製造工程中でAl2O3成分となる化合物である。Al2O3はガラスを安定化する等の効果を有する成分であり、アルミノシリケートガラスにおいては、必須の成分である。
アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミウム、長石等が挙げられる。本発明では、造粒体の強度を高くするために少なくとも水酸化アルミウムを用いるが、1種または2種以上の他のアルミニウム源を併用してもよい。これらは粉末状が好ましい。
水酸化アルミニウムは、アルカリ金属水酸化物と組みわせて使用することで、原料粉末を結び付けるバインダー効果を発揮する。このとき、水酸化アルミニウムのD50は、1〜120μmが好ましく、2〜60μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。水酸化アルミウムのD50が上記範囲の下限値以上であると扱いやすく、上記範囲の上限値以下であると均一な造粒体が得られやすい。水酸化アルミニウムのD50は5〜20μmが造粒体の強度を高くできるので特に好ましい。
ガラス原料組成物(A)に対する水酸化アルミウムの含有量の上限値は、得ようとするガラス組成に応じて決められる。例えばガラス原料組成物(A)に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
アルミニウム源の合計に対して、水酸化アルミウムの割合は13〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましい。
[ホウ酸]
本発明におけるガラス原料組成物(A)の固形分に対してホウ酸の含有量は、所望のガラス組成により適宜設定可能であるが、3〜30質量%が好ましい。3質量%以上であれば、溶解し易くなる。ホウ酸の含有量が30質量%以下であればガラス強度を上げやすくので好ましい。このとき、ホウ酸の含有量は、高温のガラス製造工程において揮発、減少する分を考慮して定められてもよい。
ホウ酸とはオルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)、四ホウ酸(H2B4O7)等が挙げられる。これらの中でも安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が好ましい。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
また、ホウ酸と、ホウ酸以外のホウ素源を併用してもよい。ホウ酸以外のホウ素源としては、酸化ホウ酸(B2O3)、コレマナイト等が挙げられる。
ガラス原料中のホウ素源の合計量は、得ようとするガラス組成によって決まる。ホウ素源の合計を100質量%とするとき、ホウ酸が占める割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
本発明におけるアルカリ金属とは、Na、K、Liを指す。アルカリ金属源は、溶融ガラスの製造工程中でNa2O、K2O、Li2O成分となる化合物である。アルカリ金属源としては、アルカリ金属の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、フッ化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。アルカリ金属の硫酸塩、塩化物、フッ化物は清澄剤として作用することがある。
シリカのD50が5〜350μmであるガラス原料組成物(A)に対してアルカリ金属水酸化物の含有量は0.4〜4.6質量%であり、1.0〜3.5質量%がより好ましい。シリカのD50が200〜350μmであるガラス原料組成物(A)に対してアルカリ金属水酸化物の含有量は0.4〜2.1質量%であり、0.8〜1.6質量%がより好ましい。シリカのD50が5〜50μmであるガラス原料組成物(A)に対してアルカリ金属水酸化物の含有量は0.8〜4.2質量%であり、2.2〜3.6質量%がより好ましい。
上記の範囲であると良好な造粒体が得られる。アルカリ金属水酸化物は、水酸化アルミニウムと組み合わせて使用することで、水酸化アルミニウムの原料粉末を結び付けるバインダー効果を発揮せしむる。アルカリ金属水酸化物の含有量が少なすぎると造粒工程において粒の成長が不充分となりやすい。アルカリ金属水酸化物の含有量が多すぎると、造粒体が凝集しやすく、装置や器具に付着しやすくなり、装置や器具が腐食されやすくなる。また、アルカリ金属水酸化物の含有量は混合するシリカの表面積によってその最適値が定まり、シリカの平均粒子径(D50)が50μmより小さい場合は原料中のシリカの表面積が大きくなるため前述の範囲が好ましく、シリカの平均粒子径が200μmより大きい場合は原料中のシリカの表面積が小さくなるため前述の範囲が好ましい。
アルカリ金属源の合計に対して、苛性ソーダなどのアルカリ金属水酸化物の割合は4〜29質量%が好ましく、8〜26質量%がより好ましい。アルカリ金属水酸化物の割合が少なすぎると造粒工程において粒の成長が不充分となりやすい。アルカリ金属水酸化物の割合が多すぎると、造粒体がベタついて凝集しやすく、装置や器具に付着しやすくなり、装置や器具が腐食されやすくなる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムが入手しやすさの点で好ましい。ガラス原料組成物(A)に含有させるアルカリ金属水酸化物の合計に対して、水酸化ナトリウムは50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
ガラス原料組成物(A)中のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、固形分換算で30質量%以下が造粒体の強度を高くできるので好ましい。
アルカリ金属炭酸塩のD50は特に限定されないが、50〜400μmが好ましく、55〜120μmがより好ましい。アルカリ金属炭酸塩のD50が上記範囲であると造粒しやすく、均質な造粒体が得られやすい。
アルカリ金属炭酸塩を用いる場合、ガラス原料組成物(A)中のアルカリ金属炭酸塩の合計の含有量は、5〜30質量%が好ましく、10〜26質量%がより好ましい。
ガラス原料組成物(A)は、上記の成分以外にアルカリ土類金属源を含有できる。
本明細書におけるアルカリ土類金属とは、Mg、Ca、Ba、Srを指す。アルカリ土類金属源は、溶融ガラスの製造工程中でMgO、CaO、BaO、SrOを形成する化合物である。アルカリ土類金属源としては、アルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、フッ化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。アルカリ土類金属源は粉末が好ましい。アルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、フッ化物は清澄剤として作用することがある。
また、ドロマイト等の複合炭酸塩や焼成ドロマイト等の複合酸化物も使用できる。
アルカリ土類金属源を用いる場合、ガラス原料組成物(A)に対してアルカリ土類金属源の含有量は2〜13質量%が好ましく、5〜9質量%がより好ましい。上記範囲であると高強度の造粒体が得られやすい。
ガラス原料組成物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ガラス原料として公知のその他の化合物を含有することができる。その他の化合物としては、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ジルコン、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、酸化ニッケル等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。強度が高く、均質な造粒体を得るためには、その他の化合物の含有量は、合計で20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、酸化ニッケル等は着色剤として用いられる。酸化アンチモン、酸化錫等は清澄剤として用いられることがある。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
ガラス原料組成物(A)の組成は、ガラス溶融工程で揮散しやすい成分を除き、酸化物換算でほぼ目的とするガラス物品の組成と同じになるように調整される。ホウ酸はガラス溶融工程で揮散しやすいので多めに加えることが好ましい。
後述の造粒体の製造例に示されるように、ガラス原料組成物(A)に、シリカ、水酸化アルミニウム、ホウ酸、およびアルカリ金属水酸化物を所定の割合で含有させることにより、該ガラス原料組成物(A)を水の存在下で造粒する方法で、良好な強度を有する造粒体を製造できる。
また、シリカのD50の値をx(単位:μm、5≦x≦350)、アルカリ金属水酸化物の含有量をy(単位:質量%、0.4≦y≦4.6)とするとき、y≦4.6−0.0071xを満たす範囲であると、造粒体どうしの凝集が良好に抑えられる。
特に、シリカのD50が200〜350μmであり、かつアルカリ金属水酸化物の含有量が0.4〜2.1質量%の範囲、またはシリカのD50が5〜50μmであり、かつアルカリ金属水酸化物の含有量が0.8〜4.2質量%の範囲が好ましい。その範囲であれば、y≦4.6−0.0071xを満たすので造粒体どうしの凝集が抑制され、かつ均質な造粒体が得られやすい。
本発明の製造方法により良好な強度を有する造粒体が得られる理由は明らかではないが、造粒工程において、水の存在下でアルカリ金属水酸化物と水酸化アルミニウムとが反応することによりアルミン酸イオンが生成し、これがシリカ表面のSi−OHと反応して水硬化性が発現されると考えられる。
ガラス原料組成物(A)中のリン酸化物の含有量が少ないと均質な造粒体が得られやすい点で好ましい。リン酸化物の含有量が多いとガラス原料が急激に凝集してしまう場合がある。ガラス原料組成物(A)から得られるガラスの組成において、P2O5の含有量は3質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、不可避的不純物以外にはP2O5を含まないことが特に好ましい。
SiO2の含有量が50〜75質量%、
Al2O3の含有量が3〜30質量%、
B2O3の含有量が1〜20質量%、
Li2O、Na2O、K2Oの合計の含有量が10〜20質量%、
MgO、CaO、SrO、BaOの合計の含有量が0〜25質量%である。
SiO2の含有量は60〜70質量%がより好ましい。
Al2O3の含有量は、9〜20質量%がより好ましい。
B2O3の含有量が1〜15質量%がより好ましい。
Li2O、Na2O、K2Oの合計の含有量は、11〜19質量%がより好ましい。
MgO、CaO、SrO、BaOの合計の含有量は、0〜15質量%がより好ましい。
ZrO2、TiO2の合計の含有量は、0〜4質量%がより好ましい。
Fe2O3の含有量は、0〜9質量%がより好ましい。
Co3O4の含有量は、0〜2質量%がより好ましい。
造粒体の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、原料の飛散を防止する点では412μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。また速やかに溶融しやすい点では2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。
造粒体の大きさは、該造粒体を用いて溶融ガラスを製造する方法によって、上記の範囲内で好適な大きさを選択することが好ましい。
造粒体を、後述する気中溶融法によらない溶融法で溶融させる方法に用いる場合、造粒体の平均粒子径(D50)が1mm以上であると、溶融ガラス中における気泡の発生が抑えられやすい。
造粒体を気中溶融法で溶融させる場合、造粒体の平均粒子径(D50)は、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましい。該造粒体の平均粒子径が1000μm以下であると、気中加熱装置内で溶融させる際に、造粒体内部まで充分にガラス化が進行するために好ましい。
本発明の造粒体の製造方法は、ガラス原料組成物(A)を、水の存在下で造粒する造粒工程を有する。必要に応じて、さらに加熱して乾燥させる加熱乾燥工程を有することが好ましい。
ガラス原料組成物(A)に水を供給する方法として、ガラス原料組成物(A)の一部を水溶液で添加する方法を用いてもよい。
造粒工程は、公知の造粒法を適宜用いて行うことができる。例えば転動造粒法、撹拌造粒法、圧縮造粒法、スプレードライ造粒法、または圧縮成形して得られた成形体を解砕する方法が好適に用いられる。粒径が比較的小さい均質な造粒体を製造しやすい点で転動造粒法が好ましい。
転動造粒法は、粉体に水や結合剤を加えた原料が入った容器を回転させることにより、粒子が壁面等を転動し、核となる粒子の周囲に他の粒子が付着して粒成長させる造粒法である。転動造粒の容器には、撹拌翼やチョッパーを設けることができる。撹拌翼やチョッパーにより成長し過ぎた造粒体が解砕されて、適切な大きさの造粒体が得られる。
転動造粒法としては、例えば、ガラス原料組成物(A)のうちの粉体を転動造粒装置の容器内に入れ、容器を振動および/または回転させることにより原料粉末を混合撹拌させながら、該原料粉末に所定量の水を噴霧して造粒する方法が好ましい。
転動造粒装置の容器としては、皿状、円筒状、円錐状の回転容器や、振動型容器などを使用でき、特に限定されない。
転動造粒装置は、特に限定されないが、例えば、垂直方向に対して傾いた方向を回転軸として回転する容器と、容器内で回転軸を中心として容器と反対方向に回転する回転翼とを備えるものなどを用いることができる。このような転動造粒装置として、具体的には、アイリッヒ・インテンシブミキサ(商品名:日本アイリッヒ社製)などが挙げられる。
装置へのガラス原料の投入順序は特に限定されないが、シリカと水酸化アルミニウムを含む粉体を予備混合した後に、水酸化ナトリウム水溶液を添加する、または顆粒状の水酸化ナトリウムおよび水を添加する方法が、局所的な凝集を防止できる点で好ましい。
例えば、ガラス原料組成物(A)の固形分の合計100質量部に対して、造粒時に存在する水の量は5〜25質量部が好ましく、6〜20質量部がより好ましい。
ガラス原料組成物(A)の固形分に対する水の量は、不足すると強固な造粒体が得られ難く、過剰であると混合時に例えばミキサなどの装置の表面に付着しやすくなる。
造粒体の粒径は、撹拌の強度および撹拌時間によって制御できる。
転動造粒装置で造粒した後、得られた粒子を加熱乾燥させることが好ましい。公知の加熱乾燥方法で行うことができる。例えば、熱風乾燥機を用い、100℃〜200℃の温度で1時間〜12時間加熱する方法を使用できる。
スプレードライ造粒法は公知の方法で行うことができる。例えば、ボールミル等の撹拌装置を用い、ガラス原料組成物(A)および水を供給してスラリーを調製し、該スラリーをスプレードライヤー等の噴霧手段を用いて、例えば200〜500℃程度の高温雰囲気中に噴霧して乾燥固化させることにより造粒体が得られる。
スラリー中の水の量は、固形分100質量部に対して60〜400質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましい。
本発明の溶融ガラスの製造方法は、本発明で得られる造粒体を加熱して溶融ガラスとするガラス溶融工程(以下、溶融工程ともいう。)を有する。溶融工程は、るつぼ窯またはシーメンス型のガラス溶融炉等を用いて行ってもよく、電気溶融によって行ってもよい。いずれも公知の方法で実施できる。
[溶融工程]
溶融工程は、ガラス溶融炉内で既に溶融している溶融ガラスが存在する場合は、その液面上に造粒体を投入し、該造粒体が塊(バッチ山、batch pileともいう。)となったものをバーナー等によって加熱して、該塊の表面から融解を進行させ、徐々に溶融ガラスとする工程である。
または、溶融ガラス液面上に形成された原料層に造粒体を投入し、電気溶融等によって加熱された溶融ガラスと接する部分から融解を進行させ、徐々に溶融ガラスとする。
大型の装置を用いて大量のガラスを製造する場合などには、原料バッチとガラス板などを破砕して得られるカレットを混合して投入することが行われる。本発明の造粒体は強度が高いため、本発明の造粒体からなる原料バッチとカレットを混合して投入する場合でも壊れにくいので好ましい。
本発明の溶融ガラスの製造方法は、本発明の造粒体を気中溶融法によって溶融ガラス粒子とする工程と溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとする工程を有することができる。
具体的には、まず造粒体を気中加熱装置の高温の気相雰囲気中に導入する。気中加熱装置は公知のものを使用できる。本発明の造粒体は強度に優れるため、搬送時または導入時に、粒子同士や粒子と搬送路内壁等との衝突が生じても微粉発生が抑えられる。
次いで、気中加熱装置内で溶融した溶融ガラス粒子を集積してガラス融液を得て、ここから取り出した溶融ガラスを、次の成形工程に供する。溶融ガラス粒子を集積する方法としては、例えば、気相雰囲気中を自重で落下する溶融ガラス粒子を、気相雰囲気下部に設けた耐熱容器に受けて集積する方法が挙げられる。
本発明のガラス物品の製造方法は、本発明の溶融ガラスの製造方法を用いてガラス物品を製造する方法である。
まず、溶融工程で得た溶融ガラスを、成形工程で目的の形状に成形した後、必要に応じて徐冷工程にて徐冷する。その後、必要に応じて後加工工程において切断や研磨など、公知の方法で後加工を施すことによりガラス物品が得られる。
ガラス物品が板状である場合には、成形工程はフロート法、ダウンドロー法、フュージョン法等の公知の方法で目的の形状に成形した後、必要に応じて徐冷することによりガラス物品が得られる。
[ガラス原料の配合]
酸化物換算の計算値(単位:質量%)でSiO2が60.0%、Al2O3が19.8%、Na2Oが12.9%、B2O3が5.5%、ZrO2が1.8%のガラスが得られるように、表1に示す例1〜4の4通りの配合を行った。表に示す配合は、ガラス原料組成物(A)の固形分換算の組成(質量%)である。以下の配合例では、水酸化ナトリウムとして苛性ソーダ液を用いた他は、すべて粉末原料を用いたので、表に示す組成(質量%)は、苛性ソーダ液に含まれる水酸化ナトリウムの量を固形分として計算した固形分換算の計算値(単位:質量%)である。
また表1には、シリカ(ケイ砂)のD50の値をx(μm)とするとき、4.6−0.0071xで表される値を示す。
ケイ砂はD50が13.1μm、36.8μmおよび292.7μmの3種類を用いた。
ホウ酸(粒状)のD50:324μm
水酸化アルミニウムのD50:7μm、
酸化アルミニウムのD50:7μm、
炭酸ナトリウムのD50:83μm、
ジルコン(ZrSiO4)のD50:12μm。
表1のガラス原料組成物欄に示す配合のガラス原料組成物(A)を用い、表に示す製造条件で造粒体を製造した。
造粒機としては、アイリッヒ・インテンシブミキサ(製品名、日本アイリッヒ社製、型式:R02型、容量5L、ロータ:スター型)を用いた。
表1において水酸化ナトリウムは、濃度が48質量%の苛性ソーダ液(以下、48%水酸化ナトリウム水溶液という。)を用いた。
表1における配合は、ガラス原料組成物(A)の固形分(水酸化ナトリウム水溶液中の固形分を含む)の合計100質量部に対する質量部で示す。水は、48%水酸化ナトリウム水溶液に含まれる希釈水を含む。
予め水304gと48%水酸化ナトリウム水溶液195.2gを混ぜた混合物(以下、水酸化ナトリウム含有希釈液という。)499.2gを調製した。
表1に示す配合のうち、水酸化ナトリウムを除く粉末原料2925.4gを造粒機に投入し、パン回転数42rpm、ロータ回転数900rpmにて60秒間を予備混合した。予備混合後、パン回転数42rpmを保持した状態で、水酸化ナトリウム含有希釈液235gを投入した。その後ロータ回転数を3000rpmにして12分間造粒した後、造粒機から取り出し、棚段式乾燥機にて加熱室の温度120℃の条件で15時間乾燥させ、造粒体を得た。
また得られた造粒体の15gを、シェイカー(アズワン社製、製品名:AS−1N)で60分シェイクし(模擬破壊テスト)、その後自動篩分け測定器にて106μm未満の微粉の含有率(単位:質量%)を測定した。結果を表に示す。微粉率が低いほど造粒体の強度が高いことを意味する。
表において、造粒及びシェイク後の微粉率(模擬破壊テスト)の結果から、造粒できたものを造粒性が「○」とし、微粉率が2.0質量%以下のものを造粒体の強度が「○」、2.0質量%より大きいものを造粒強度が「×」とした。また、造粒体のD50が300μm以上1300μm以下のものを粒径制御性が「○」とし、300μmより小さいものまたは1300μmより大きいものを粒径制御性が「×」とした。
表1に示すとおりに製造条件を変更し、それ以外は例1と同様にして造粒体を製造した。得られた造粒体について、例1と同様に測定および評価を行った。結果を表に示す。
Claims (13)
- 少なくともシリカと、アルミニウム源と、アルカリ金属源と、ホウ酸と、を含有するガラス原料組成物からガラス原料造粒体を製造する方法であって、
固形分換算で、シリカを40〜75質量%、水酸化アルミニウムを3〜30質量%、ホウ酸を3〜30質量%、およびアルカリ金属水酸化物を0.4〜4.6質量%含有するガラス原料組成物(A)を水の存在下で造粒する工程を有する、ガラス原料造粒体の製造方法。 - 前記シリカの平均粒子径を表すD50が5〜350μmである、請求項1記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 前記シリカの平均粒子径を表すD50が200〜350μmであり、前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.4〜2.1質量%である、請求項1記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 前記シリカの平均粒子径を表すD50が5〜50μmであり、前記アルカリ金属水酸化物の含有量が0.8〜4.2質量%である、請求項1記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 造粒体から得られるガラスの組成が酸化物基準の質量%表示で、
SiO2の含有量が50〜75質量%、
Al2O3の含有量が3〜30質量%、
B2O3の含有量が1〜20質量%、
Li2O、Na2O、K2Oの合計の含有量が10〜20質量%、
MgO、CaO、SrO、BaOの合計の含有量が0〜25質量%
である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。 - 前記水酸化アルミニウムの平均粒子径を表すD50が1μm〜120μmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- ガラス原料造粒体の平均粒子径を表すD50が412μm〜2mmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料造粒体は、転動造粒法によって造粒される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガラス原料造粒体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法でガラス原料造粒体を製造する工程と、得られたガラス原料造粒体を加熱して溶融ガラスとするガラス溶融工程を有する、溶融ガラスの製造方法。
- 前記ガラス溶融工程が、溶融炉中の溶融ガラス液面上に前記ガラス原料造粒体を投入する工程を有する、請求項10記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記ガラス溶融工程が、前記ガラス原料造粒体を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とする工程と、前記溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとする工程とを含む、請求項10記載の溶融ガラスの製造方法。
- 請求項10〜12のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法を用いてガラス物品を製造する方法であって、
前記ガラス溶融工程と、得られた溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程とを有する、ガラス物品の製造方法。
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