JP2016203839A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動軸トルクを運転者の要求するトルクに近づけ、遊星歯車機構の差動回転速度が0をまたいだ場合でも駆動軸トルクに段差が生じないように制御し、違和感の無いドライブフィーリングとする。【解決手段】車両の動力源として設けたエンジンと第1モータジェネレータ3とが遊星歯車機構5を介して駆動軸15に動力伝達可能に連結されたハイブリッド車両1の制御装置26であって、エンジン2と第1モータジェネレータ3との合成トルクに基づいて、駆動軸15に直結した第2モータジェネレータ4の出力トルクを制御するトルク制御手段を備えたハイブリッド車両1の制御装置26において、遊星歯車機構5の損失トルク割合を算出する算出手段を備え、トルク制御手段は、算出手段により算出された遊星歯車機構5の損失トルク割合に応じて第2モータジェネレータ4の出力トルクを補正することを特徴とする。【選択図】図1

Description

この発明は複数の動力源の動力を遊星歯車機構により合成して駆動軸に入出力するハイブリッド車両の制御装置に係り、特に、駆動軸トルクを精度良く制御することが可能なハイブリッド車両の制御装置に関する。
車両の動力源としてエンジンと2つの第1及び第2モータジェネレータを設け、第1モータジェネレータを主に発電用とし、第2モータジェネレータを主に駆動用として使い、エンジンと第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータとの駆動力を遊星歯車機構を介して駆動軸に伝達するハイブリッド車両の制御装置としては、特許文献1に開示されるものがある。
特許文献1は、遊星歯車機構と第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータとを用いた動力出力装置において、エンジンのトルクが変動しても運転者の要求する駆動軸トルクを出力できるようにするために、第1モータジェネレータのトルクに基づいて、第1モータジェネレータのトルクにより駆動軸に現れる反力トルクを算出し、運転者が要求する駆動軸トルクに対する過不足分のトルクを第2モータジェネレータにより出力するようにしている。
特許第3050125号公報
ところが、上記特許文献1では、エンジンと第1モータジェネレータによる反力トルクが遊星歯車機構を介して駆動軸に伝達されるため、遊星歯車機構による損失トルクの影響を受け、第1モータジェネレータのトルクと遊星歯車機構のギア比から算出した反力トルクは実際に現れる反力トルクとは異なるものとなる。さらに、この遊星歯車機構による損失トルクは、遊星歯車機構の差動回転方向に応じてトルクの向きが変化する。
そのため、差動回転速度が0となる状態を境にして実際に発生する反力トルクに段差が生じ、駆動軸トルクに段差が発生するという問題がある。
この現象を具体的に説明すると、次のようになる。具体例においては、特許文献1のように、遊星歯車機構のサンギアに第1モータジェネレータを接続し、遊星歯車機構のキャリアにエンジンの出力軸を接続し、遊星歯車機構のリングギアに駆動軸と第2モータジェネレータとを接続した構成とした場合を例に説明する。
第1モータジェネレータの回転速度が駆動軸の回転速度よりも高い場合、遊星歯車機構の損失トルクは差動回転を0にする向きに作用するため、エンジンのトルクとバランスするために必要な第1モータジェネレータの発電トルクは小さくなり、駆動軸に現れるトルクは大きくなる。一方、第1モータジェネレータのトルクが小さくなることによって、計算により算出する見かけ上の反力トルクは小さくなるため、運転者の要求する駆動軸トルクを出力するために必要な第2モータジェネレータのトルク指令値は大きくなるように計算される。
これらの要因により、第1モータジェネレータの回転速度が駆動軸の回転速度よりも高い場合、駆動軸に出力されるトルクは、運転者の要求より大きくなる。
逆に、第1モータジェネレータの回転速度が駆動軸の回転速度よりも低い場合、遊星歯車機構の損失トルクは差動回転を0にする向きに作用するため、エンジンのトルクとバランスするために必要な第1モータジェネレータの発電トルクは大きくなり、駆動軸に現れるトルクは小さくなる。一方、第1モータジェネレータのトルクが大きくなることによって、計算により算出する見かけ上の反力トルクは大きくなるため、運転者の要求する駆動軸トルクを出力するために必要な第2モータジェネレータのトルク指令値は小さくなるように計算される。
これらの要因により、第1モータジェネレータの回転速度が駆動軸の回転速度よりも低い場合、駆動軸に出力されるトルクは、運転者の要求より小さくなる。
したがって、第1モータジェネレータと駆動軸とが差動回転している場合、遊星歯車機構の損失トルクにより駆動軸トルクが運転者の要求するトルクに対して誤差を生じる。特に、遊星歯車機構の差動回転が0となる状態を境として駆動軸トルクに段差が生じることで、ドライブフィーリングに悪影響を及ぼす問題がある。
この発明は、駆動軸トルクを運転者の要求するトルクに近づけ、遊星歯車機構の差動回転速度が0をまたいだ場合でも駆動軸トルクに段差が生じないように制御し、違和感の無いドライブフィーリングとすることを目的とする。
この発明は、車両の動力源として設けたエンジンと第1モータジェネレータとが遊星歯車機構を介して駆動軸に動力伝達可能に連結されたハイブリッド車両の制御装置であって、エンジンと第1モータジェネレータとの合成トルクに基づいて、駆動軸に直結した第2モータジェネレータの出力トルクを制御するトルク制御手段を備えたハイブリッド車両の制御装置において、遊星歯車機構の損失トルク割合を算出する算出手段を備え、トルク制御手段は、算出手段により算出された遊星歯車機構の損失トルク割合に応じて第2モータジェネレータの出力トルクを補正することを特徴とする。
この発明は、遊星歯車機構の損失トルクを考慮して、第2モータジェネレータによる出力トルク(アシストトルク)を制御することにより、駆動軸トルクを運転者の要求するトルクに近づけることができる。このため、この発明は、違和感の無いドライブフィーリングとすることができる。
図1はハイブリッド車両の制御装置のシステム構成図である。(実施例1) 図2は第2モータジェネレータのトルク指令値演算の制御ブロック図である。(実施例1) 図3は第2モータジェネレータのトルク指令値演算の制御フローチャートである。(実施例1) 図4は遊星歯車機構の損失トルク割合検索テーブルである。(実施例1) 図5(A)は制御装置により制御を行った場合の回転速度のタイムチャート、図5(B)は制御装置により制御を行った場合のトルクのタイムチャートである。(実施例1) 図6は制御装置により制御を行った場合の共線図である。(実施例1) 図7はハイブリッド車両の制御装置のシステム構成図である。(実施例2) 図8は第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータのトルク指令値演算の制御ブロック図である。(実施例2) 図9は第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータのトルク指令値演算の制御フローチャートである。(実施例2) 図10は第1遊星歯車機構の損失トルク割合検索テーブルである。(実施例2) 図11は第2遊星歯車機構の損失トルク割合検索テーブルである。(実施例2) 図12(A)は制御装置により制御を行った場合の回転速度のタイムチャート、図12(B)は制御装置により制御を行った場合のトルクのタイムチャートである。(実施例2) 図13は制御装置により制御を行った場合の共線図である。(実施例2)
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
図1〜図6は、この発明の実施例1を示すものである。図1において、ハイブリッド車両1は、駆動源として、燃料の燃焼により駆動力を発生させるエンジン2と、電気により駆動力を発生するとともに駆動により電気エネルギを発生する第1モータジェネレータ3及び第2モータジェネレータ4とを設けている。エンジン2と、第1モータジェネレータ3及び第2モータジェネレータ4とは、遊星歯車機構5を介して駆動軸6に動力伝達可能に連結される。
エンジン2は、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に対応して吸入する空気量を調整するスロットルバルブ等の空気量調整手段7と、吸入する空気量に対応する燃料を供給する燃料噴射弁等の燃料供給手段8と、燃料に着火する点火装置等の着火手段9とを備えている。空気量調整手段7と燃料供給手段8と着火手段9とは、エンジン制御部10に接続される。エンジン制御部10は、空気量調整手段7と燃料供給手段8と着火手段9とにより燃料の燃焼状態を制御し、燃料の燃焼によりエンジン2に駆動力を発生させて出力軸11に出力する。
第1モータジェネレータ3は、第1モータロータ軸12と第1モータロータ13と第1モータステータ14とを備える。第2モータジェネレータ4は、第2モータロータ軸15と第2モータロータ16と第2モータステータ17とを備える。第1モータジェネレータ3の第1モータステータ14は、第1インバータ18に接続される。第2モータジェネレータ4の第2モータステータ17は、第2インバータ19に接続される。
第1インバータ18と第2インバータ19との電源端子は、バッテリ20に接続される。バッテリ20は、第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4との間で電力のやり取りが可能な蓄電手段である。バッテリ20は、バッテリ電圧やバッテリ電流などのバッテリ状態を検出するバッテリ検出部21に接続される。第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とは、それぞれ第1インバータ18と第2インバータ19とによりバッテリ20から供給される電気量を制御され、供給される電気により駆動力を発生するとともに、回生時の駆動輪による駆動で電気エネルギを発生し、発生した電気エネルギをバッテリ20に充電する。
遊星歯車機構5は、サンギア22と、このサンギア22に噛み合うプラネタリギア23を支持するプラネタリキャリア24と、プラネタリギア23に噛み合うリングギア25とを備えている。遊星歯車機構5は、サンギア22とプラネタリキャリア24とリングギア25との3つの回転要素の回転中心線を同一軸上に配置している。エンジン2と遊星歯車機構5との間には、第1モータジェネレータ3を配置している。遊星歯車機構5のエンジン2から離れる側には、第2モータジェネレータ4を配置している。
遊星歯車機構5のサンギア22には、第1モータジェネレータ3の第1モータロータ軸12を接続している。遊星歯車機構5のプラネタリキャリア24は、エンジン2の出力軸11に接続している。遊星歯車機構5のリングギア25は、駆動軸6に接続するとともに、第2モータジェネレータ4の第2モータロータ軸15を接続している。
遊星歯車機構5は、図6に示すように、3つの回転要素を設定している。なお、図6の記載において、「MG1」は第1モータジェネレータ3、「MG2」は第2モータジェネレータ4、「PG」は遊星歯車機構5、「Zs」はサンギア22の歯数、「Zr」はリングギア25の歯数、をそれぞれ示している。
遊星歯車機構5は、3つの回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図上において、3つの回転要素を一端(図6の左側)から他端(図6の右側)に向かって順番に、第1の回転要素(第1モータロータ軸12に接続されたサンギア22)、第2の回転要素(エンジン2の出力軸11に接続されたプラネタリキャリア24)、第3の回転要素(駆動軸6及び第2モータロータ軸15に接続されたリングギア25)、として設定している。
これにより、遊星歯車機構5は、エンジン2の出力軸11、第1モータジェネレータ3、第2モータジェネレータ4、及び駆動軸6にそれぞれ連結された3つの回転要素(サンギア22、プラネタリキャリア24、リングギア25)を有し、エンジン2の出力軸11、第1モータジェネレータ3、第2モータジェネレータ4、及び駆動軸6との間で動力の授受を行う。
ハイブリッド車両1は、制御装置26によりエンジン2と第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とを制御する。制御装置26は、トルク制御手段27を備えている。トルク制御手段27には、エンジン制御部10と第1インバータ18と第2インバータ19とバッテリ検出部21とを接続する。トルク制御手段27は、エンジン制御部10とバッテリ検出部21とから情報を取得し、エンジン2と第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とのトルク指令値を演算し、エンジン制御部10と第1インバータ18と第2インバータ19とに送信する。
エンジン制御部10と第1インバータ18と第2インバータ19とは、受信したトルク指令値に従って、エンジン2と第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とを制御する。このとき、トルク制御手段27は、エンジン2と第1モータジェネレータ3との合成トルクに基づいて、駆動軸6に直結した第2モータジェネレータ4の出力トルクを制御する。
これにより、ハイブリッド車両1の制御装置26は、エンジン2と第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とが発生する動力を、遊星歯車機構5を介して駆動軸6に出力し、駆動輪を駆動する。また、ハイブリッド車両1の制御装置26は、駆動輪からの駆動力を、遊星歯車機構5を介して第1モータジェネレータ3と第2モータジェネレータ4とに伝達し、電気エネルギを発生してバッテリ20を充電する。
ハイブリッド車両1の制御装置26は、遊星歯車機構5の損失トルク割合を算出する算出手段28をトルク制御手段27に備える。トルク制御手段27は、算出手段28により算出された遊星歯車機構5の損失トルク割合に応じて第2モータジェネレータ4の出力トルクを補正する。
次に、図2〜図6に従い作用を説明する。
なお、図2〜図6の記載において、「MG1」は第1モータジェネレータ3、「MG2」は第2モータジェネレータ4、「PG」は遊星歯車機構5、「Zs」はサンギア22の歯数、「Zr」はリングギア25の歯数、をそれぞれ示している。
図2に示すように、ハイブリッド車両1の制御装置26は、算出手段28によって、第1モータジェネレータ3の回転速度と第2モータジェネレータ4の回転速度との差動回転速度を算出し(P100)、(P100)で算出した差動回転速度に基づき遊星歯車機構5の損失トルク割合を算出する(P101)。
制御装置26は、トルク制御手段27によって、(P101)で算出した損失トルク割合と第1モータジェネレータ2の出力トルクとに基づき駆動軸6の反力トルクを算出し(P102)、アクセル開度から求めた運転者要求駆動力トルクから(P102)で算出した反力トルクを減算して第2モータジェネレータ4のトルク指令値を算出し(P103)、算出したトルク指令値を第2インバータ19に送信し、第2モータジェネレータ4の出力トルクを制御する。
これにより、制御装置26は、遊星歯車機構5の損失トルク割合に応じて第2モータジェネレータ4の出力トルクを補正する。
図3に示すように、ハイブリッド車両1の制御装置26は、制御がスタートすると(S100)、第1モータジェネレータ3の回転速度、第2モータジェネレータ4の回転速度などの制御に用いる各種信号の取り込みを行う(S101)、制御手段26は、取り込んだ各種信号から、第1モータジェネレータ3の回転速度と第2モータジェネレータ4の回転速度との差として、差動回転速度を算出し(S102)、算出した差動回転速度に基づき遊星歯車機構5の損失トルク割合を図4に示す検索テーブルから検索により算出する(S103)。
検索テーブルによる検索において、第1モータジェネレータ3の回転速度が第2モータジェネレータ3の回転速度よりも高い場合には、遊星歯車機構5の損失トルクにより駆動軸6に現れる反力トルクが大きくなるので、検索テーブルの値は正の値とする。反対に、検索において、第2モータジェネレータ4の回転速度が第1モータジェネレータ3の回転速度よりも高い場合には、駆動軸6の反力トルクが小さくなるので、検索テーブルの値は負の値と定義する。
制御装置26は、第1モータジェネレータ3のトルクと遊星歯車機構5のギア比(リングギア25の歯数/サンギア22の歯数)とを乗算して得たトルク(損失トルクが無い場合の反力トルク)に、(S103)で算出した遊星歯車機構5の損失トルク割合に第1モータジェネレータ3のトルクの絶対値と遊星歯車機構5のギア比(リングギア25の歯数/サンギア22の歯数)から駆動軸6に現れる損失トルクとを乗算して得たトルクを加算し、反力トルクを算出する(S104)。
制御装置26は、運転者要求駆動軸トルクから(S104)で算出した反力トルクを減算して第2モータジェネレータ4のトルク指令値を算出し(S105)、各種信号の取り込み(S101)にリターンする(S106)。制御装置26は、算出したトルク指令値を第2インバータ19に送信し、第2モータジェネレータ4の出力トルクを制御する。これにより、制御装置26は、遊星歯車機構5の損失トルク割合に応じて第2モータジェネレータ4の出力トルクを補正する。
図5は、ハイブリッド車両1の制御装置26により制御を行った場合のタイムチャートである。図5のタイムチャートは、エンジン回転速度及びエンジントルクが一定の状態で、駆動軸トルクが一定となるようにして、車速が増加した場合の挙動を示したものである。また、図6は、制御装置26による制御と従来の制御とを比較して示す共線図である。図6の共線図は、エンジン回転速度及びエンジントルクを一定として、車速が低い場合と高い場合とを示したものである。
これら図5・図6を用いて、遊星歯車機構5の損失トルクにより駆動軸6のトルクが変動する理由を説明する。
図6の(1)に示すように、第1モータジェネレータ3の回転速度が第2モータジェネレータ4の回転速度よりも高い場合(MG1>MG2)、遊星歯車機構5の損失トルクにより第1モータジェネレータ3は損失トルクが無い場合よりも小さな発電トルクでエンジントルクと釣り合う。従って、第1モータジェネレータ3のトルクから計算した反力トルク(図6の(1a))は、遊星歯車機構5の損失トルクが無い場合の反力トルク(図6の(1b))よりも小さな値として計算される。その結果、従来では、図5の線Xよりも左側のMG1>MG2の領域において、第2モータジェネレータ4のトルク指令値が大きく計算される(図5の(1c))。
一方、実際の反力トルクは、遊星歯車機構5の損失トルクにより損失トルクが無い場合よりも大きな値となる。その結果、従来では、駆動軸トルクが大きくなってしまう(図5の(1d))。本案では、この場合、遊星歯車機構5の損失トルク割合により反力トルクが大きくなるように補正されるので(図6の(1e))、第2モータジェネレータ4のトルク指令値は小さくなる(図5の(1f))。その結果、駆動軸トルクは、遊星歯車機構6の損失トルクが無い場合のトルク、すなわち運転者の要求する駆動軸トルクに近づけることができる(図5の(1g))。
また、図6の(2)に示すように、第1モータジェネレータ3の回転速度が第2モータジェネレータ4の回転速度よりも低い場合(MG1<MG2)、遊星歯車機構5の損失トルクにより第1モータジェネレータ3は損失トルクが無い場合よりも大きな発電トルクでエンジン2のトルクと釣り合う。従って、第1モータジェネレータ3のトルクから計算した反力トルク(図6の(2a))は、遊星歯車機構5の損失トルクが無い場合の反力トルク(図6の(2b))よりも大きな値として計算される。その結果、従来では、図5の線Xよりも右側のMG1<MG2の領域において、第2モータジェネレータ4のトルク指令値が小さく計算される(図5の(2c))。
一方、実際の反力トルクは、遊星歯車機構5の損失トルクにより損失トルクが無い場合よりも小さな値となる。その結果、従来では、駆動軸トルクが小さくなってしまう(図5の(2d))。本案では、この場合、遊星歯車機構5の損失トルク割合により反力トルクが小さくなるように補正されるので(図6の(2e))、第2モータジェネレータ4のトルク指令値は大きくなる(図5の(2f))。その結果、駆動軸トルクは、遊星歯車機構5の損失トルクが無い場合のトルク、すなわち運転者の要求する駆動軸トルクに近づけることができる(図5の(2g))。
以上のように、ハイブリッド車両1の制御装置26は、遊星歯車機構5の損失トルクを考慮して、第2モータジェネレータ4による出力トルク(アシストトルク)を制御することにより、駆動軸トルクを運転者の要求するトルクに近づけることができる。このため、ハイブリッド車両1の制御装置26は、違和感の無いドライブフィーリングとすることができる。
図7〜図13は、この発明の実施例2を示すものである。図7において、ハイブリッド車両101は、駆動源として、燃料の燃焼により駆動力を発生させるエンジン102と、電気により駆動力を発生するとともに駆動により電気エネルギを発生する第1モータジェネレータ103及び第2モータジェネレータ104とを設けている。エンジン102と、第1モータジェネレータ103及び第2モータジェネレータ104とは、少なくとも1つの遊星歯車機構、この実施例では第1遊星歯車機構105及第2遊星歯車機構106を介して駆動軸107に動力伝達可能に連結される。
エンジン102は、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に対応して吸入する空気量を調整するスロットルバルブ等の空気量調整手段108と、吸入する空気量に対応する燃料を供給する燃料噴射弁等の燃料供給手段109と、燃料に着火する点火装置等の着火手段110とを備えている。空気量調整手段108と燃料供給手段109と着火手段110とは、エンジン制御部111に接続される。エンジン制御部111は、空気量調整手段108と燃料供給手段109と着火手段110とにより燃料の燃焼状態を制御し、燃料の燃焼によりエンジン102に駆動力を発生させて出力軸112に出力する。
第1モータジェネレータ103は、第1モータロータ軸113と第1モータロータ114と第1モータステータ115とを備える。第2モータジェネレータ104は、第2モータロータ軸116と第2モータロータ117と第2モータステータ118とを備える。第1モータジェネレータ104の第1モータステータ115は、第1インバータ119に接続される。第2モータジェネレータ104の第2モータステータ118は、第2インバータ120に接続される。
第1インバータ119と第2インバータ120との電源端子は、バッテリ121に接続される。バッテリ121は、第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104との間で電力のやり取りが可能な蓄電手段である。バッテリ121は、バッテリ電圧やバッテリ電流などのバッテリ状態を検出するバッテリ検出部122に接続される。第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とは、それぞれ第1インバータ119と第2インバータ120とによりバッテリ121から供給される電気量を制御され、供給される電気により駆動力を発生するとともに、回生時の駆動輪による駆動で電気エネルギを発生し、発生した電気エネルギをバッテリ121に充電する。
第1遊星歯車機構105は、第1サンギア123と、この第1サンギア123に噛み合う第1プラネタリギア124を支持する第1プラネタリキャリア125と、第1プラネタリギア124に噛み合う第1リングギア126とを備えている。第2遊星歯車機構106は、第2サンギア127と、この第2サンギア127に噛み合う第2プラネタリギア128を支持する第2プラネタリキャリア129と、第2プラネタリギア128に噛み合う第2リングギア130とを備えている。
第1遊星歯車機構105は、エンジン102に近い側に配置される。第2遊星歯車機構106は、第1遊星歯車機構105のエンジン102から離れる側に配置される。第1遊星歯車機構105と第2遊星歯車機構106とは、各回転要素の回転中心線を同一軸上に配置している。エンジン102と第1遊星歯車機構105との間には、第1モータジェネレータ103を配置している。第2遊星歯車機構106のエンジン102から離れる側には、第2モータジェネレータ104を配置している。
第1遊星歯車機構105の第1サンギア123には、第1モータジェネレータ103の第1モータロータ軸113を接続している。第1遊星歯車機構105の第1プラネタリキャリア125と第2遊星歯車機構106の第2サンギア127とは、結合してエンジン2の出力軸112に接続している。第1遊星歯車機構105の第1リングギア126と第2遊星歯車機構106の第2プラネタリキャリア129とは、結合して駆動軸107に接続している。第2遊星歯車機構106の第2リングギア130には、第2モータジェネレータ104の第2モータロータ軸116を接続している。
第1遊星歯車機構105と第2遊星歯車機構106とは、図13に示すように、4つの回転要素を設定している。なお、図13の記載において、「MG1」は第1モータジェネレータ103、「MG2」は第2モータジェネレータ104、「PG」は第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106を合わせたもの、をそれぞれ示している。
第1遊星歯車機構105と第2遊星歯車機構106とは、4つの回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図上において、4つの回転要素を一端(図13の左側)から他端(図13の右側)に向かって順番に、第1の回転要素(第1モータロータ軸113に接続された第1サンギア123)、第2の回転要素(エンジン2の出力軸112に接続された第1プラネタリキャリア125及び第2サンギア127)、第3の回転要素(駆動軸107に接続された第1リングギア126及び第2プラネタリキャリア129)、第4の回転要素(第2モータロータ軸116に接続された第2リングギア130)、として設定している。
これにより、第1遊星歯車機構105と第2遊星歯車機構106とは、エンジン102の出力軸112、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104、及び駆動軸107にそれぞれ連結された4つの回転要素を有し、エンジン102の出力軸112、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104、及び駆動軸107との間で動力の授受を行う。
ハイブリッド車両1は、制御装置131によりエンジン102と第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とを制御する。制御装置131は、トルク制御手段132を備えている。トルク制御手段132には、エンジン制御部111と第1インバータ119と第2インバータ120とバッテリ検出部122とを接続する。トルク制御手段132は、エンジン制御部111とバッテリ検出部122とから情報を取得し、エンジン102と第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とのトルク指令値を演算し、エンジン制御部111と第1インバータ119と第2インバータ120とに送信する。
エンジン制御部111と第1インバータ119と第2インバータ120とは、受信したトルク指令値に従って、エンジン102と第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とを制御する。このとき、トルク制御手段132は、エンジン102のトルクに基づいて第1モータジェネレータ103及び第2モータジェネレータ104の出力トルクを制御する。
これにより、ハイブリッド車両101の制御装置131は、エンジン102と第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とが発生する動力を、第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106を介して駆動軸107に出力し、駆動輪を駆動する。また、ハイブリッド車両101の制御装置131は、駆動輪からの駆動力を、第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106を介して第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とに伝達し、電気エネルギを発生してバッテリ121を充電する。
ハイブリッド車両101の制御装置131は、第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106の損失トルクを算出する算出手段133をトルク制御手段132に備える。トルク制御手段132は、算出手段133により算出された第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106の損失トルクに応じて第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104との出力トルクを補正する。
次に、図8〜図13に従い作用を説明する。
なお、図8〜図13の記載において、「MG1」は第1モータジェネレータ103、「MG2」は第2モータジェネレータ104、「PG1」は第1遊星歯車機構105、「PG2」は第2遊星歯車機構106、「PG」は第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106を合わせたもの、「Zs1」は第1サンギア123の歯数、「Zr1」は第1リングギア126の歯数、「Zs2」は第2サンギア127の歯数、「Zr2」は第2リングギア130の歯数、「FB」はフィードバック、をそれぞれ示している。
図8に示すように、ハイブリッド車両101の制御装置131は、トルク制御手段132によって、エンジン102の目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度とから回転速度偏差を算出し(P200)、算出した回転速度偏差から第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正トルクを算出し(P201)、算出した回転速度偏差から第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正トルクを算出する(P202)。
制御装置131は、トルク制御手段132によって、第1モータジェネレータ103の基本トルクに(P201)で算出した第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正トルクを加算して第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクを算出し(P203)、第2モータジェネレータ104の基本トルクに(P202)で算出した第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正トルクを加算して第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクを算出する(P204)。
また、制御装置131は、算出手段133によって、第1モータジェネレータ103の回転速度と第2モータジェネレータ104の回転速度との差動回転速度を算出し(P205)、算出した差動回転速度に基づき第1遊星歯車機構105の損失トルク割合を算出し(P206)、算出した差動回転速度に基づき第2遊星歯車機構106の損失トルク割合を算出する(P207)。
制御装置131は、算出手段133によって、(P206)で算出した第1遊星歯車機構105の損失トルク割合と(P203)で算出した第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクとに基づいて第1遊星歯車機構105の損失トルクを算出し(P208)、(P207)で算出した第2遊星歯車機構106の損失トルク割合と(P204)で算出した第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクとに基づいて第2遊星歯車機構106の損失トルクを算出し(P209)、(P208)で算出した第1遊星歯車機構105の損失トルクと(P209)で算出した第2遊星歯車機構106の損失トルクとを合算して遊星歯車機構損失トルクを算出する(P210)。
また、制御装置131は、トルク制御手段132によって、(P210)で算出した遊星歯車機構損失トルクに基づいて第1モータジェネレータ103の遊星歯車機構損失補正トルクを算出し(P211)、(P210)で算出した遊星歯車機構損失トルクに基づいて第2モータジェネレータ104の遊星歯車機構損失補正トルクを算出する(P212)。
制御装置131は、トルク制御手段132によって、(P203)で算出した第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクに(P211)で算出した第1モータジェネレータ103の遊星歯車機構損失補正トルクを加算して第1モータジェネレータ103のトルク指令値を算出し(P213)、算出したトルク指令値を第1インバータ119に送信し、第1モータジェネレータ103の出力トルクを制御する。
制御装置131は、トルク制御手段132によって、(P204)で算出した第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクに(P212)で算出した第2モータジェネレータ104の遊星歯車機構損失補正トルクを加算して第2モータジェネレータ104のトルク指令値を算出し(P214)、算出したトルク指令値を第2インバータ120に送信し、第2モータジェネレータ104の出力トルクを制御する。
これにより、制御装置131は、算出手段133により算出された第1遊星歯車機構105及び第2遊星歯車機構106の損失トルクに応じて第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104との出力トルクを補正する。
図9に示すように、ハイブリッド車両101の制御装置131は、制御がスタートすると(S200)、第1モータジェネレータ103の回転速度、第2モータジェネレータ104の回転速度などの制御に用いる各種信号の取り込みを行う(S201)。
制御装置131は、取り込んだ各種信号から、エンジントルク指令値、運転者要求駆動軸トルク等に基づき第1モータジェネレータ103の基本トルク、第2モータジェネレータ104の基本トルクを算出する(S202)。ここで、基本トルクとは、エンジントルク指令値どおりにエンジン102がトルクを出力した場合に第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とが釣り合うことができるトルクである。
実際には、実エンジントルクがエンジントルク指令値と一致することはほとんど無く、その場合にはトルクが釣り合わないのでエンジン回転速度が変化し続けてしまう。また、実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に追従させる必要があるので、回転速度フィードバツクによる補正が必要になる。また、実エンジントルクがエンジントルク指令値と異なる場合には、駆動軸トルクが運転者の要求する駆動軸トルクからずれてしまう。
そのため、制御装置131は、(S203)、(S204)において、実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に近づけるとともに、駆動軸107のトルクを運転者要求駆動軸トルクに近づけるように、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104の各回転速度フィードバック補正トルクを算出し、算出した各回転速度フィードバック補正トルクにより第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104の各基本トルクを補正する。
具体的には、エンジン102の出力軸112に作用させたい第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104の各回転速度フィードバック補正トルクを、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の各ギア比に応じた以下の式1で示す割合で第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104に分担させて算出する。
*MG1回転速度FB補正トルク:MG2回転速度FB補正トルク=1+Zs2/Zr2:Zr1/Zs1・・・・・・式1
これより、制御装置131は、実エンジン回転速度と目標エンジン回転速度との差から、第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正トルクを算出し、第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正トルクとを算出し(S203)、第1モータジェネレータ103の基本トルクに第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正トルクを加算して第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクを算出し、第2モータジェネレータ104の基本トルクに第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正トルクを加算して第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクを算出する(S204)。
次に、制御装置131は、(S201)で取り込んだ各種信号から、第1モータジェネレータ103の回転速度と第2モータジェネレータ104の回転速度との差として、差動回転速度を算出し(S205)、算出した差動回転速度に基づき第1遊星歯車機構105の損失トルク割合を図10に示す検索テーブルから検索により算出し、算出した差動回転速度に基づき第2遊星歯車機構106の損失トルク割合を図11に示す検索テーブルから検索により算出する(S206)。
図10に示す検索テーブルの値は、第1モータジェネレータ103が接続された第1遊星歯車機構105の回転要素(第1サンギア23)に現れる損失トルクの割合として定義された値であり、差動回転速度の正負によりその符号が反転する。本案では、第1モータジェネレータ103の回転速度から第2モータジェネレータ104の回転速度を減算した値を差動回転速度と定義している。
第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104の回転速度よりも高い場合には、第1モータジェネレータ103の回転速度を引き下げる向きに損失トルクが発生し、駆動軸107には回転速度を引き上げる向きに損失トルクが発生する。従って、この場合は、駆動軸107のトルクを増加させる損失トルクなので、トルク損失割合は正の値とする。反対に、第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104の回転速度よりも低い場合には、駆動軸107のトルクを減少させる損失トルクなので、損失トルク割合は負の値とする。
また、第2モータジェネレータ104の損失トルク割合を示す図11においても、図10と同様に差動回転速度を定義している。第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104の回転速度よりも高い場合には、第2モータジェネレータ104の回転速度を引き上げる向きにトルク損失が発生し、駆動軸107には回転速度を引き上げる向きに損失トルクが発生する。従って、この場合は、駆動軸107のトルクを増加させる損失トルクなので、損失トルク割合は第1モータジェネレータ103と同様に正の値とする。反対に、第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104よりも低い場合には、駆動軸107のトルクを減少させる損失トルクなので、損失トルク割合は第1モータジェネレータ103と同様に負の植とする。
制御装置131は、(S207)において、第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクの絶対値に(S206)で算出した第1モータジェネレータ103の損失トルク割合と第1遊星歯車機構105のギア比(第1リングギア125の歯数/第1サンギア122の歯数)とを乗算して第1モータジェネレータ103のトルクにより駆動軸107に現れる損失トルクを算出し、また、第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクの絶対値に(S206)で算出した第2モータジェネレータ104の損失トルク割合と第2遊星歯車機構106のギア比(第2リングギア130の歯数/第2サンギア127の歯数)とを乗算して第2モータジェネレータ104のトルクにより駆動軸107に現れる損失トルクを算出し、算出した両損失トルクを加算して、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより駆動軸107に現れるトルクである遊星歯車機構損失トルクを算出する。
制御装置131は、(S208)において、(S207)で算出した遊星歯車機構損失トルクをエンジン102の出力軸112にトルクが影響しないように第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104とに分担させて補正できるように、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の各ギア比で定まる比を用いて計算を行い、第1モータジェネレータ103の遊星歯車機構損失補正トルクと第2モータジェネレータ104の遊星歯車機構損失補正とを算出する。
そして、制御装置131は、(S209)において、第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバック補正後トルクに遊星歯車機構損失補正トルクを加算して、最終的な第1モータジェネレータ103のトルク指令値を算出し、また、第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバック補正後トルクに遊星歯車機構損失補正トルクを加算して、最終的な第2モータジェネレータ104のトルク指令値を算出する。制御装置131は、第1モータジェネレータ103、第モータジェネレータ104の各トルク指令値を算出(S209)した後、各種信号の取り込み(S201)にリターンする(S210)。
制御装置131は、算出したトルク指令値を第1インバータ119、第2インバータ120に送信し、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104の出力トルクを制御する。これにより、制御装置131は、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクに応じて第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ4の出力トルクを補正する。
図12は、ハイブリッド車両101の制御装置131により制御を行った場合のタイムチャートである。図12のタイムチャートは、エンジン回転速度及びエンジントルクが一定の状態で、駆動軸トルクが一定となるようにして、車速が増加した場合の挙動を示したものである。また、図13は、制御装置131による制御と従来の制御とを比較して示す共線図である。図13の共線図は、エンジン回転速度及びエンジントルクを一定として、車速が低い場合と高い場合を示したものである。
これら図12、図13を用いて、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより駆動軸107のトルクが変動する理由を説明する。
図13の(1)に示すように、第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104の回転速度よりも高い場合(MG1>MG2)、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより第1モータジェネレータ103は損失トルクが無い場合よりも小さな発電トルクでエンジントルクと釣り合う。言い換えれば、第1モータロータ軸113に現れる損失トルクを相殺する回転速度フィードバックトルクの補正が行われる。この場合、第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバックトルクの補正は正の値となり、第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバックトルクも正の値となる。
一方、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104により駆動軸107に現れるトルクは、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより損失トルクが無い場合より大きな値となる。図13の共線図では、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の回転要素を正転方向又は前進方向に回転速度を上昇させるトルクを上向きの矢印で現しているため、前進駆動方向の駆動軸トルクは下向きの矢印となる。その結果、従来では、駆動軸トルクが大きくなってしまう(図12の線Xよりも左側のMG1>MG2の領域の(1a)、図13の(1a))。
本案では、この場合、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより駆動軸107に現れるトルクを正の値(車両を加速する側)として算出し、このトルクを相殺するように第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104のトルクを負方向に補正するので、第1モータジェネレータ103のトルク指令値(図12の(1b))及び第2モータジェネレータ104のトルク指令値(図12の(1c))は小さくなる。その結果、駆動軸トルクは、遊星歯車機構損失トルクが無い場合のトルク、すなわち運転者の要求する駆動軸トルクに近づけることができる(図12の(1d))。
また、図13の(2)に示すように、第1モータジェネレータ103の回転速度が第2モータジェネレータ104の回転速度よりも低い場合(MG1<MG2)、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより第1モータジェネレータ103は損失トルクが無い場合より大きな発電トルクでエンジントルクと釣り合う。言い換えれば、第1モータロータ軸113に現れる損失トルクを相殺する回転速度フィードバックトルクの補正が行われる。この場合、第1モータジェネレータ103の回転速度フィードバックトルクの補正は負の値となり、第2モータジェネレータ104の回転速度フィードバックトルクも負の値となる。
一方、第1モータジェネレータ103、第2モータジェネレータ104により駆動軸107に現れるトルクは、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより損失トルクが無い場合より小さな値となる。図13の共線図では、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の回転要素を正転方向又は前進方向に回転速度を上昇させるトルクを上向きの矢印で現しているため、前進駆動方向の駆動軸トルクは下向きの矢印となる。その結果、従来では、駆動軸トルクが小さくなってしまう(図12の線Xよりも右側のMG1<MG2の領域の(2a)、図13の(2a))。
本案では、この場合、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクにより駆動軸107に現れるトルクを負の値(車両を減速する側)として算出し、このトルクを相殺するように第1モータジェネレータ103と第2モータジェネレータ104のトルクを正方向に補正するので、第1モータジェネレータ103のトルク指令値(図12の(2b))及び第2モータジェネレータ104のトルク指令値(図12の(2c))は大きくなる。その結果、駆動軸トルクは、遊星歯車機構損失トルクが無い場合のトルク、すなわち運転者の要求する駆動軸トルクに近づけることができる(図12の(2d))。
このように、ハイブリッド車両101の制御装置131は、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクを考慮して、第1モータジェネレータ103及び第2モータジェネレータ104の出力トルクを制御することにより、第1遊星歯車機構105、第2遊星歯車機構106の損失トルクに伴う駆動軸トルクの変動を抑制することができる。このため、ハイブリッド車両101の制御装置131は、違和感の無いドライブフィーリングとすることができる。
この発明は、駆動軸トルクを運転者の要求するトルクに近づけ、遊星歯車機構の差動回転速度が0をまたいだ場合でも駆動軸トルクに段差が生じないように制御し、違和感の無いドライブフィーリングとすることができるものであり、ハイブリッド車両の動力伝達系の制御に適用することができる。
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
3 第1モータジェネレータ
4 第2モータジェネレータ
5 遊星歯車機構
6 駆動軸
7 空気量調整手段
8 燃料供給手段
9 着火手段
10 エンジン制御部
11 出力軸
18 第1インバータ
19 第2インバータ
20 バッテリ
21 バッテリ検出部
26 制御装置
27 トルク制御手段
28 算出手段

Claims (2)

  1. 車両の動力源として設けたエンジンと第1モータジェネレータとが遊星歯車機構を介して駆動軸に動力伝達可能に連結されたハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンと前記第1モータジェネレータとの合成トルクに基づいて、前記駆動軸に直結した第2モータジェネレータの出力トルクを制御するトルク制御手段を備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記遊星歯車機構の損失トルク割合を算出する算出手段を備え、前記トルク制御手段は、前記算出手段により算出された前記遊星歯車機構の損失トルク割合に応じて前記第2モータジェネレータの出力トルクを補正することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 車両の動力源として設けたエンジンと第1及び第2モータジェネレータとが少なくとも1つの遊星歯車機構を介して駆動軸に動力伝達可能に連結されたハイブリッド車両の制御装置であって、エンジントルクに基づいて前記第1及び第2モータジェネレータの出力トルクを制御するトルク制御手段を備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記遊星歯車機構の損失トルクを算出する算出手段を備え、前記トルク制御手段は、前記算出手段により算出された前記遊星歯車機構の損失トルクに応じて前記第1及び第2モータジェネレータの出力トルクを補正することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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