空気入りタイヤのトレッドゴムの溝の内面をコーティングすることができれば、空気入りタイヤの性能を向上できる可能性がある。空気入りタイヤのトレッドゴムには、主溝、ラグ溝、及びサイプのような、延在方向及び幅が異なる様々な溝が設けられている。これらの溝の内面を円滑にコーティングする技術は確立されてない。
本発明の態様は、トレッドゴムの溝の内面を円滑にコーティングできる空気入りタイヤの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、空気入りタイヤのトレッドゴムに溝を形成するための突起部を有する加硫用金型と、前記突起部にコーティング材を供給する供給装置と、を備え、前記コーティング材が供給された前記突起部をグリーンタイヤに接触させた状態で前記グリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの製造装置が提供される。
本発明の第1の態様によれば、加硫用金型の突起部にコーティング材が供給され、その突起部がグリーンタイヤに接触することにより、トレッドゴムの溝の内面がコーティング材でコーティングされる。突起部は、主溝を形成するための主溝用突起部、ラグ溝を形成するためのラグ溝用突起部、及びサイプを形成するためのサイプ用突起部の少なくとも一つを含む。そのため、延在方向及び幅が異なる様々な溝の内面が円滑にコーティングされる。また、本発明の第1の態様によれば、グリーンタイヤの加硫中にコーティング材がグリーンタイヤに転写される。そのため、コーティング材のコーティング膜とトレッドゴムとは高い接着力で接着する。
本発明の第1の態様において、前記供給装置は、前記コーティング材が付与された表面を有する塗布部材を有し、前記塗布部材を前記突起部と接触させて、前記突起部に前記コーティング材を供給してもよい。
加硫用金型とは別部材である塗布部材が使用されることにより、加硫用金型のうち突起部のみにコーティング材が塗布され、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることが抑制される。また、加硫用金型と塗布部材とは別部材なので、塗布部材は、加硫前に突起部にコーティング材を塗布した後、加硫用金型から退避することができる。塗布部材が加硫用金型から退避した後に加硫が行われるので、突起部に塗布されたコーティング材のみがグリーンタイヤに転写され、不要なコーティング材がグリーンタイヤに転写されることが抑制される。
本発明の第1の態様において、前記塗布部材の表面は、前記突起部側に突出する曲面を含んでもよい。
塗布部材の表面が突起部側に突出する曲面を含むことにより、加硫用金型のうち突起部のみにコーティング材が塗布され、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることが抑制される。
本発明の第1の態様において、前記加硫用金型は、前記トレッドゴムの接地面を形成するための内面を有し、前記突起部は、前記内面から突出し、前記塗布部材の表面の曲率は、前記加硫用金型の内面の曲率よりも大きくてもよい。
塗布部材の表面の曲率が加硫用金型の内面の曲率よりも大きいことにより、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることがより一層抑制される。
本発明の第1の態様において、前記コーティング材が供給される前記突起部の表面は、粗面加工された粗面領域を含んでもよい。
突起部の表面が粗面加工されることにより、突起部によるコーティング材の保持力が向上し、突起部は十分な量のコーティング材を保持することができる。また、保持力が向上することにより、突起部にコーティング材が供給された後、突起部からコーティング材が垂れることが抑制される。
本発明の第1の態様において、前記粗面領域は、第1粗面領域と、非粗面領域を介して前記第1粗面領域の隣に配置される第2粗面領域と、を含んでもよい。
粗面領域は、コーティング材に対する親和性が高い親和領域として機能し、非粗面領域は、コーティング材に対する親和性が低い非親和領域として機能する。粗面領域がコーティング材を十分に保持し、非粗面領域がコーティング材を保持しないように、粗面領域及び非粗面領域それぞれの表面粗さが調整されることにより、コーティング材を粗面領域からグリーンタイヤに転写し、非粗面領域からグリーンタイヤに転写しないようにすることができる。そのため、粗面領域及び非粗面領域のパターンに対応するコーティング膜のパターンが溝の内面に形成される。また、第1粗面領域と第2粗面領域との間に非粗面領域が配置されることにより、溝の内面には、第1粗面領域から転写されたコーティング材の膜である第1コーティング膜と、第2粗面領域から転写されたコーティング材の膜である第2コーティング膜とが設けられる。非粗面領域からグリーンタイヤにはコーティング材が転写されないので、第1コーティング膜と第2コーティング膜との間には、コーティング膜が無い間欠部が設けられることとなる。第1コーティング膜と第2コーティング膜との間に間欠部が設けられることにより、コーティング膜の剥離の伝播が抑制される。すなわち、第1コーティング膜及び第2コーティング膜の一方がトレッドゴムから剥離しても、間欠部により、第1コーティング膜及び第2コーティング膜の他方がトレッドゴムから剥離することが抑制される。
本発明の第1の態様において、前記溝は、前記空気入りタイヤの周方向に配置される主溝を含み、前記突起部は、前記主溝を形成するための主溝用突起部を含み、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域とは、前記主溝用突起部の表面において前記周方向に配置され、前記周方向に関して、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域との間の前記非粗面領域の寸法は、前記第1粗面領域の寸法及び前記第2粗面領域の寸法よりも小さくてもよい。
非粗面領域の周方向の寸法が小さいことにより、周方向の間欠部の寸法が小さく、第1コーティング膜の寸法及び第2コーティング膜の寸法が大きくなる。そのため、コーティング膜の剥離の伝播が抑制されつつ、コーティング膜の機能が十分に発揮される。
本発明の第1の態様において、前記溝は、前記主溝と結ばれるラグ溝を含み、前記突起部は、前記ラグ溝を形成するためのラグ溝用突起部を含み、前記非粗面領域は、前記主溝用突起部と前記ラグ溝用突起部との交差部に配置されてもよい。
空気入りタイヤの走行において、主溝とラグ溝との交差部は変形しやすい。主溝用突起部とラグ溝用突起部との交差部に非粗面領域が設けられることにより、変形しやすい主溝とラグ溝との交差部に、コーティング膜が無い間欠部が設けられる。そのため、第1コーティング膜及び第2コーティング膜の剥離が抑制される。
本発明の第1の態様において、前記溝は、前記空気入りタイヤの周方向に配置される主溝を含み、前記突起部は、前記主溝を形成するための主溝用突起部を含み、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域とは、前記主溝用突起部の表面において前記空気入りタイヤの幅方向に配置され、前記幅方向に関して、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域との間の前記非粗面領域の寸法は、前記第1粗面領域の寸法及び前記第2粗面領域の寸法よりも小さくてもよい。
非粗面領域の幅方向の寸法が小さいことにより、幅方向の間欠部の寸法が小さく、第1コーティング膜の寸法及び第2コーティング膜の寸法が大きくなる。そのため、コーティング膜の剥離の伝播が抑制されつつ、コーティング膜の機能が十分に発揮される。
本発明の第1の態様において、前記粗面領域の算術平均粗さは、0.5[μm]以上150[μm]以下でもよい。
粗面領域の算術平均粗さが0.5[μm]よりも小さいと、突起部によるコーティング材の保持力が十分に得られない可能性がある。粗面領域の算術平均粗さが150[μm]よりも大きいと、突起部によるコーティング材の保持力が高くなり過ぎてしまい、突起部からグリーンタイヤにコーティング材が転写し難くなる可能性がある。粗面領域の算術平均粗さが0.5[μm]以上150[μm]以下であることにより、突起部はコーティング材を保持することができ、グリーンタイヤに転写することができる。
本発明の第2の態様は、グリーンタイヤを加硫して空気入りタイヤを製造する加硫用金型に設けられ前記空気入りタイヤのトレッドゴムに溝を形成するための突起部にコーティング材を供給するステップと、前記コーティング材が供給された前記突起部を前記グリーンタイヤに接触させた状態で前記グリーンタイヤを加硫するステップと、前記加硫中に前記コーティング材を前記グリーンタイヤに転写して、前記空気入りタイヤの前記溝の内面をコーティング膜で覆うステップと、を含む空気入りタイヤの製造方法を提供する。
本発明の第2の態様によれば、トレッドゴムの溝の内面がコーティング材で円滑にコーティングされる。また、コーティング材のコーティング膜とトレッドゴムとは高い接着力で接着する。
本発明の第2の態様において、前記コーティング材が付与された表面を有する塗布部材を前記突起部と接触させて、前記突起部に前記コーティング材を供給してもよい。
これにより、加硫用金型のうち突起部のみにコーティング材が塗布され、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることが抑制される。また、突起部に塗布されたコーティング材のみがグリーンタイヤに転写され、不要なコーティング材の転写が抑制される。
本発明の第2の態様において、前記塗布部材の表面は、前記突起部側に突出する曲面を含んでもよい。
これにより、加硫用金型のうち突起部のみにコーティング材が塗布され、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることが抑制される。
本発明の第2の態様において、前記加硫用金型は、前記トレッドゴムの接地面を形成するための内面を有し、前記突起部は、前記内面から突出し、前記塗布部材の表面の曲率は、前記加硫用金型の内面の曲率よりも大きくてもよい。
これにより、加硫用金型の意図しない部分にコーティング材が塗布されることがより一層抑制される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング材が供給される前記突起部の表面は、粗面加工された粗面領域を含んでもよい。
これにより、突起部によるコーティング材の保持力が向上する。
本発明の第2の態様において、前記粗面領域は、第1粗面領域と、非粗面領域を介して前記第1粗面領域の隣に配置される第2粗面領域と、を含んでもよい。
これにより、グリーンタイヤに転写されたコーティング材によって形成される第1コーティング膜と第2コーティング膜との剥離の伝播が抑制される。
本発明の第2の態様において、前記溝は、前記空気入りタイヤの周方向に配置される主溝を含み、前記突起部は、前記主溝を形成するための主溝用突起部を含み、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域とは、前記主溝用突起部の表面において前記周方向に配置され、前記周方向に関して、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域との間の前記非粗面領域の寸法は、前記第1粗面領域の寸法及び前記第2粗面領域の寸法よりも小さくてもよい。
これにより、コーティング膜の剥離の伝播が抑制されつつ、コーティング膜の機能が十分に発揮される。
本発明の第2の態様において、前記溝は、前記主溝と結ばれるラグ溝を含み、前記突起部は、前記ラグ溝を形成するためのラグ溝用突起部を含み、前記非粗面領域は、前記主溝用突起部と前記ラグ溝用突起部との交差部に配置されてもよい。
これにより、第1コーティング膜及び第2コーティング膜の剥離が抑制される。
本発明の第2の態様において、前記溝は、前記空気入りタイヤの周方向に配置される主溝を含み、前記突起部は、前記主溝を形成するための主溝用突起部を含み、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域とは、前記主溝用突起部の表面において前記空気入りタイヤの幅方向に配置され、前記幅方向に関して、前記第1粗面領域と前記第2粗面領域との間の前記非粗面領域の寸法は、前記第1粗面領域の寸法及び前記第2粗面領域の寸法よりも小さくてもよい。
これにより、コーティング膜の剥離の伝播が抑制されつつ、コーティング膜の機能が十分に発揮される。
本発明の第2の態様において、前記粗面領域の算術平均粗さは、0.5[μm]以上150[μm]以下でもよい。
これにより、突起部はコーティング材を保持することができ、グリーンタイヤに転写することができる。
本発明の第2の態様において、前記コーティング材の粘度は、0.5[Pa・s]以上10.0[Pa・s]以下でもよい。
これにより、コーティング材は、高い保持力で突起部に保持される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング膜は、前記溝の内面に照射される紫外光を低減してもよい。
これにより、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が抑制される。グルーブクラックとは、トレッドゴムの溝の内面に発生する亀裂をいう。
本発明の第2の態様において、290[nm]以上380[nm]以下の波長の前記紫外光に対する前記コーティング膜の透過率は、0.5以下でもよい。
これにより、トレッドゴムの溝の内面に対する紫外光の照射量が十分に抑制される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング膜の厚さは、5[μm]以上120[μm]以下でもよい。
これにより、コーティング膜は、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、トレッドゴムの変形に十分に追従することができる。トレッドゴムの変形に十分に追従することにより、コーティング膜の剥離が抑制される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング膜は、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、カーボンブラック又は顔料と、を含んでもよい。
これにより、コーティング膜に照射された紫外光は、コーティング膜によって十分に吸収される。そのため、トレッドゴムの溝の内面に対する紫外光の照射量が十分に抑制される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング膜は、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、ベンゾトリアゾール系の紫外光吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外光吸収剤、サリシレート系の紫外光吸収剤、シアノアクリルレート系の紫外光吸収剤、ニッケル系の紫外光吸収剤、トリアジン系の紫外光吸収剤、及びヒンダードアミン系の光安定剤の少なくとも一つと、を含んでもよい。
これにより、コーティング膜に照射された紫外光は、コーティング膜によって十分に吸収される。そのため、トレッドゴムの溝の内面に対する紫外光の照射量が十分に抑制される。
本発明の第2の態様において、前記コーティング膜は、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、酸化チタン又は酸化亜鉛と、を含んでもよい。
これにより、コーティング膜に照射された紫外光は、コーティング膜によって十分に反射される。そのため、トレッドゴムの内面に対する紫外光の照射量が十分に抑制される。
本発明の第2の態様において、前記樹脂組成物は、ポリカーボネート系ウレタンを主成分としてもよい。
これにより、コーティング膜は、トレッドゴムの変形に十分に追従することができる。そのため、コーティング膜の剥離が抑制される。
本発明の第2の態様において、前記溝の深さをH、前記溝の幅をW、前記トレッドゴムの厚さをD、としたとき、H ≧ 0.3D、且つ、H/W ≦ 5、の条件を満足してもよい。
これにより、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が効果的に抑制される。
本発明の第2の態様において、前記溝の内面は、底面と、前記底面と前記接地面とを結ぶ側面と、を含み、新品時における前記溝の深さをH、としたとき、前記コーティング膜は、前記溝の深さ方向に関して、前記接地面から0.5Hの部位よりも前記底面側の前記内面を覆うように配置されてもよい。
これにより、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、空気入りタイヤの新品時、摩耗初期、及び摩耗中期において、コーティング膜が地面と接触することが抑制される。したがって、コーティング膜の劣化、及びトレッドゴムからのコーティング膜の剥離などが抑制される。
本発明の第2の態様において、前記溝にスリップサインが設けられ、前記コーティング膜は、前記溝の深さ方向に関して、前記スリップサインの上面よりも前記底面側の前記内面を覆うように配置されてもよい。
これにより、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、空気入りタイヤの新品時、摩耗初期、及び摩耗中期において、コーティング膜が地面を接触することが抑制される。したがって、コーティング膜の劣化、及びトレッドゴムからのコーティング膜の剥離などが抑制される。
本発明の態様によれば、溝の内面を円滑にコーティングできる空気入りタイヤの製造装置及び製造方法が提供される。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、空気入りタイヤの製造装置1000の一部を模式的に示す断面図である。図2は、製造装置1000の一部を模式的に示す斜視図である。以下の説明においては、空気入りタイヤを適宜、タイヤと称する。
以下の説明においては、タイヤ周方向、タイヤ径方向、及びタイヤ幅方向という用語を用いて、各部の位置関係について説明する。タイヤは、中心軸を中心に回転し、中心軸の周囲に配置される。タイヤ周方向とは、タイヤの中心軸を中心とする回転方向であり、タイヤ径方向とは、タイヤの中心軸に対する放射方向であり、タイヤ幅方向とは、タイヤの中心軸と平行な方向である。タイヤ径方向の内側とは、中心軸に近い側であり、タイヤ径方向の外側とは、中心軸から遠い側である。
製造装置1000は、加硫機を含み、加硫用金型500を備える。グリーンタイヤ(生タイヤ)が加硫用金型500の内側に配置される。グリーンタイヤは、加硫用金型500に支持された状態で加硫される。加硫用金型500を使ってグリーンタイヤが加硫されることにより、タイヤが製造される。
製造装置1000は、加硫用金型500にコーティング材50Mを供給する供給装置600を備える。製造装置1000は、コーティング材50Mが供給された加硫用金型500をグリーンタイヤに接触させた状態でグリーンタイヤを加硫して、タイヤを製造する。
加硫用金型500は、タイヤのトレッド部を成形するためのセクターモールド501と、タイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドモールド502とを備える。
セクターモールド501は、タイヤ周方向に複数設けられる。セクターモールド501は、円環状モールドをタイヤ周方向に分割した部材である。円環状モールドは、例えば8分割又は9分割される。8つ又は9つのセクターモールド501によって、タイヤのトレッド部が成形される。
セクターモールド501は、タイヤ径方向に移動可能である。セクターモールド501は、タイヤ径方向の内側に移動することによって、グリーンタイヤの外周面と接触する。セクターモールド501は、タイヤ径方向の外側に移動することによって、グリーンタイヤから離れる。複数のセクターモールド501は、タイヤ径方向の内側に移動することによって一体化され、円環状モールドを形成する。複数のセクターモールド501は、タイヤ径方向の外側に移動することによって分割される。
セクターモールド501は、グリーンタイヤの外周面と対向する内面507と、内面507からタイヤ径方向の内側に突出する突起部520とを有する。内面507は、タイヤのトレッド部の接地面を形成する。突起部520は、タイヤのトレッドゴムに溝を形成する。セクターモールド501の内面507に設けられた突起部520により、タイヤにトレッドパターンが形成される。
サイドモールド502は、グリーンタイヤの一方の側面と対向する内面509Aを有する上側サイドモールド502Aと、グリーンタイヤの他方の側面と対向する内面509Bを有する下側サイドモールド502Bとを含む。内面509A及び内面509Bは、タイヤのサイドウォール部の表面を形成する。グリーンタイヤは、上側サイドモールド502Aと下側サイドモールド502Bとの間に配置される。
上側サイドモールド502Aは、上方向に移動することによって、グリーンタイヤから離れる。上側サイドモールド502Aは、下方向に移動することによって、グリーンタイヤの側面と接触する。下側サイドモールド502Bは、下方向に移動することによって、グリーンタイヤから離れる。下側サイドモールド502Bは、上方向に移動することによって、グリーンタイヤの側面と接触する。
供給装置600は、セクターモールド501の突起部520にコーティング材50Mを供給する。供給装置600は、コーティング材50Mが付与された表面601を有する塗布部材602を有する。
図2に示すように、供給装置600は、塗布部材602と、回転軸Jを中心に塗布部材602を回転可能に支持する支持部材603と、支持部材603を支持するアーム部材604と、回転軸Jを中心に塗布部材602を回転させるための動力を発生するアクチュエータ605と、アーム部材604を移動させるための動力を発生するアクチュエータ606とを有する。塗布部材602は、回転軸Jを中心に回転する円筒状のローラである。
コーティング材50Mは、液体状である。コーティング材50Mの粘度は、0.5[Pa・s]以上10.0[Pa・s]以下である。粘度の測定方法は、JIS Z 8803 2011の規定による。塗布部材602は、コーティング材50Mを含むことができる軟質の多孔部材である。
供給装置600は、塗布部材602を突起部520と接触させて、突起部520にコーティング材50Mを供給する。塗布部材602により、突起部520の表面にコーティング材50Mが塗布される。
図1及び図2に示すように、突起部520に対するコーティング材50Mの供給は、円環状モールドが複数のセクターモールド501に分割された状態で行われる。また、突起部520に対するコーティング材50Mの供給は、セクターモールド501からサイドモールド502が離れた状態で行われる。アクチュエータ606は、円環モールドの内側に塗布部材602が配置されるように、アーム部材604を移動する。アクチュエータ605は、塗布部材602を回転させる。アクチュエータ606は、回転する塗布部材602と、セクターモールド501の複数の突起部520の表面とが接触するように、アーム部材604を移動する。これにより、突起部520の表面にコーティング材50Mが塗布される。
コーティング材50Mは、セクターモールド501の突起部520の表面に塗布される。コーティング材50Mは、セクターモールド501の内面507には塗布されない。図1に示すように、塗布部材602の表面601は、突起部520側に突出する曲面を含む。塗布部材602の表面601の曲率Raは、加硫用金型500のセクターモールド501の内面507の曲率Rbよりも大きい。
次に、タイヤの製造方法について説明する。図3は、タイヤの製造方法を示すフローチャートである。図4及び図5は、製造装置1000の動作を模式的に示す断面図である。
図1及び図2を参照して説明したように、複数のセクターモールド501が分割され、セクターモールド501からサイドモールド502が離れた状態で、供給装置600は、タイヤのトレッドゴムに溝を形成するための突起部520にコーティング材50Mを供給する(ステップS10)。供給装置600は、コーティング材50Mが付与された表面601を有する塗布部材602を突起部520と接触させて、突起部520にコーティング材50Mを塗布する。これにより、突起部520の表面にコーティング材50Mが保持される。コーティング材50Mは内面507に供給されない。
図4に示すように、上側サイドモールド502Aと下側サイドモールド502Bとの間にグリーンタイヤ1Gが配置される。グリーンタイヤ1Gは、上側サイドモールド502A及び下側サイドモールド502Bに支持される。
図5に示すように、セクターモールド501がタイヤ径方向の内側に移動する。これにより、複数のセクターモールド501が連結され、円環モールドが形成される。セクターモールド501がタイヤ径方向の内側に移動することにより、コーティング材50Mが供給されていないセクターモールド501の内面507とグリーンタイヤ1Gとが接触する。また、セクターモールド501がタイヤ径方向の内側に移動することにより、コーティング材50Mが供給されたセクターモールド501の突起部520とグリーンタイヤ1Gとが接触する(ステップS20)。
製造装置1000は、コーティング材50Mが供給されていない内面507及びコーティング材50Mが供給された突起部520をグリーンタイヤ1Gに接触させた状態で、グリーンタイヤ1Gを加硫する(ステップS30)。製造装置1000は、加硫用金型500でグリーンタイヤ1Gを支持した状態で、加硫用金型500を介して、グリーンタイヤ1Gを加圧及び加熱する。
加硫中の加硫用金型500の温度は、130[℃]以上180[℃]以下に設定される。加硫用金型500の温度が130[℃]よりも低いと、グリーンタイヤ1Gにおいて、ゴムの分子と硫黄の分子との結合が進行し難くなる。加硫用金型500の温度が180[℃]よりも高いと、コーティング材50Mが熱分解し、コーティング材50Mの物性が変化する可能性がある。加硫中の加硫用金型500の温度が130[℃]以上180[℃]以下に設定されることにより、コーティング材50Mの物性の変化が抑制されつつ、加硫が促進される。なお、コーティング材50Mの物性の変化の抑制の観点から、加硫中の加硫用金型500の温度は、130[℃]以上170[℃]以下がより好ましい。
コーティング材50Mが供給された突起部520をグリーンタイヤ1Gに接触させた状態で、グリーンタイヤ1Gが加硫されることにより、加硫中において、コーティング材50Mがグリーンタイヤ1Gに転写される(ステップS40)。これにより、タイヤのトレッドゴムの溝の内面にコーティング材50Mの膜であるコーティング膜が形成される(ステップS50)。トレッドゴムの溝の内面は、コーティング膜で覆われる。
図6は、製造装置1000により製造されたタイヤ1の一部を示す断面図である。タイヤ1は、中心軸AXを中心に回転可能である。図6は、タイヤ1の中心軸AXを通る子午断面を示す。タイヤ1の中心軸AXは、タイヤ1の赤道面と直交する。赤道面とは、タイヤ幅方向のタイヤ1の中心を通る面である。
タイヤ1は、カーカス部2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッド部10と、サイドウォール部9とを備える。トレッド部10は、トレッドゴム6に設けられる。サイドウォール部9は、サイドウォールゴム8に設けられる。
カーカス部2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材であり、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス部2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、タイヤ幅方向に関してカーカス部2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス部2は、ビード部5において折り返される。カーカス部2は、有機繊維又は合成樹脂繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材であり、カーカス部2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、金属繊維又は有機繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのベルトコードと第2ベルトプライ3Bのベルトコードとが交差するように積層される。
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し補強する強度部材であり、タイヤ1の中心軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、金属繊維又は有機繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。
ビード部5は、カーカス部2の両端部を固定する強度部材であり、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、スチールワイヤ又は炭素鋼ワイヤの束である。
トレッドゴム6は、カーカス部2を保護する。トレッド部10は、トレッドゴム6に配置される。トレッドゴム6は、路面と接触する接地面7と、複数の溝20とを有する。溝20は、内面40を有する。接地面7は、溝20の間の陸部に配置される。
タイヤ1は、溝20の内面40の少なくとも一部を覆うコーティング膜50を備える。上述のように、コーティング膜50は、加硫用金型500の突起部520を使って形成される。
本実施形態において、コーティング膜50は、溝20の内面40に照射される紫外光を低減する。溝20の内面40は、底面41と、底面41と接地面7とを結ぶように配置される側面42とを含む。コーティング膜50は、少なくとも底面41を覆う。
サイドウォールゴム8は、カーカス部2を保護し、タイヤ幅方向に関してトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドウォール部9は、サイドウォールゴム8に配置される。サイドウォール部9は、タイヤ幅方向に関してトレッド部10の一側及び他側のそれぞれに配置される。
図7は、タイヤ1のトレッド部10の一例を示す図である。図7に示すように、タイヤ1は、トレッド部10に設けられた溝20を有する。溝20は、タイヤ周方向に延びる主溝(周方向溝)21と、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延びるラグ溝(横溝)22と、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延びるサイプ23とを含む。溝20の周囲に、陸部が設けられる。陸部は、溝20と、その溝20に隣り合う溝20との間に設けられる。トレッド部10は、複数の陸部を含む。
主溝21は、タイヤ周方向に延在する。主溝21の少なくとも一部は、トレッド部10のセンター部11に設けられる。主溝21は、内部にスリップサイン(トレッドウェアインジケータ)を有する。スリップサインは、摩耗末期を示す。主溝21は、4.0[mm]以上の幅及び5.0[mm]以上の深さを有する。図7に示す例において、タイヤ1は、4つの主溝21を有する。
ラグ溝22の少なくとも一部は、タイヤ幅方向に延在する。ラグ溝22の少なくとも一部は、トレッド部10のショルダー部12に設けられる。ショルダー部12は、タイヤ幅方向に関してセンター部11の一側及び他側のそれぞれに配置される。ラグ溝22は、1.5[mm]以上の幅及び4.0[mm]以上の深さを有する。なお、ラグ溝22は、部分的に4.0[mm]未満の深さを有していてもよい。
サイプ23の少なくとも一部は、タイヤ幅方向に延在する。サイプ23は、タイヤ1の陸部に形成される。本実施形態において、サイプ23の少なくとも一部は、トレッド部10のショルダー部12に設けられる。サイプ23は、1.5[mm]未満の幅を有する。
図8は、トレッドゴム6に設けられた溝20の一例を示す断面図である。以下の説明においては、溝20が主溝21である例について説明する。なお、溝20は、ラグ溝22でもよいし、サイプ23でもよい。溝20は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向の両方に対して傾斜する方向に延びる傾斜溝でもよい。
図8に示すように、トレッドゴム6は、接地面7を有する。トレッドゴム6に主溝21が設けられる。主溝21は、内面40を有する。内面40は、底面41及び側面42を含む。側面42は、底面41の端部と、接地面7の端部とを結ぶように配置される。
以下の説明において、底面41と結ばれる側面42の端部42Bを適宜、内端部42Bと称し、接地面7と結ばれる側面42の端部42Uを適宜、外端部42Uと称する。
コーティング膜50は、内面40のうち少なくとも底面41を覆う。本実施形態において、コーティング膜50は、底面41と、側面42の一部とを覆う。本実施形態において、コーティング膜50は、内端部42Bを含む側面42の内側領域421を覆う。タイヤ径方向に関して内側領域421の外側に配置される側面42の外側領域422には、コーティング膜50は配置されない。側面42の外側領域422において、トレッドゴム6の表面は露出する。
コーティング膜50は、トレッドゴム6の表面である内面40に照射される単位時間当たりの紫外光の照射量又は紫外光の強度を低減する。
コーティング膜50は、例えば、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、その樹脂組成物に含有されるカーボンブラックとを含む。カーボンブラックは、紫外光を吸収可能である。カーボンブラックを含む樹脂組成物によってコーティング膜50が形成されることにより、コーティング膜50は、高い紫外光遮蔽機能(紫外光吸収機能)を発揮する。これにより、内面40に照射される紫外光が低減される。
なお、コーティング膜50は、例えば、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、その樹脂組成物に含有される顔料とを含んでもよい。顔料を含む樹脂組成物によってコーティング膜50が形成されることによっても、高い紫外光遮蔽機能(紫外光吸収機能)を発揮する。
コーティング膜50は、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、ベンゾトリアゾール系の紫外光吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外光吸収剤、サリシレート系の紫外光吸収剤、シアノアクリルレート系の紫外光吸収剤、ニッケル系の紫外光吸収剤、トリアジン系の紫外光吸収剤、及びヒンダードアミン系の光安定剤の少なくとも一つとを含んでもよい。
なお、上述の紫外光吸収剤のうち、特にベンゾトリアゾール系の紫外光吸収剤が好ましく、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体が好ましい。
ベンゾトリアゾール系の紫外光吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外光吸収剤、サリシレート系の紫外光吸収剤、シアノアクリルレート系の紫外光吸収剤、ニッケル系の紫外光吸収剤、トリアジン系の紫外光吸収剤、及びヒンダードアミン系の光安定剤の少なくとも一つが含有された樹脂組成物によってコーティング膜50が形成されることによっても、高い紫外光遮蔽機能(紫外光吸収機能)を発揮する。また、トレッドゴム6が変形しても、コーティング膜50は、トレッドゴム6の変形に十分に追従することができる。
樹脂組成物に含有される紫外光吸収剤(添加剤)として、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン−○(※○の中は数字)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、t−ブチルメトキシジベンソイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシジベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビズベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びオクチルトリアゾンの少なくとも一つが添加されてもよい。
また、コーティング膜50は、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、その樹脂組成物に含有される酸化チタンとを含んでもよい。酸化チタンは、紫外光を反射可能(散乱可能)である。酸化チタンを含む樹脂組成物によってコーティング膜50が形成されることにより、コーティング膜50は、高い紫外光遮蔽機能(紫外光反射機能)を発揮する。これにより、内面40に照射される紫外光が低減される。
なお、コーティング膜50は、例えば、ウレタンを主成分とする樹脂組成物と、その樹脂組成物に含有される酸化亜鉛とを含んでもよい。酸化亜鉛を含む樹脂組成物によってコーティング膜50が形成されることによっても、高い紫外光遮蔽機能(紫外光反射機能)を発揮する。
樹脂組成物は、エステル系ウレタンを主成分としてもよいし、エーテル系ウレタンを主成分としてもよいし、ポリカーボネート系ウレタンを主成分としてもよい。本実施形態において、樹脂組成物は、ポリカーボネート系ウレタンを主成分とする。ポリカーボネート系ウレタンを主成分とする樹脂組成物のコーティング膜50は、トレッドゴム6が変形しても、そのトレッドゴム6の変形に十分に追従することができる。
本実施形態においては、290[nm]以上380[nm]以下の波長の紫外光に対するコーティング膜50の透過率が、0.5以下になるように、コーティング膜50の材料及び厚さが定められている。なお、コーティング膜50の透過率は、JIS K 7105に基づく。
290[nm]以上380[nm]以下の波長の紫外光に対するコーティング膜50の透過率(JIS K 7105)が、0.5以下であるので、タイヤ1を長期間使用して、トレッドゴム6に紫外光が照射されても、グルーブクラックの発生が十分に抑制される。
本実施形態において、コーティング膜50の厚さは、5[μm]以上120[μm]以下である。これにより、コーティング膜50は、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、トレッドゴム6の変形に十分に追従することができる。コーティング膜50の厚さが5[μm]より薄いと、十分な紫外光遮蔽機能が得られなくなる可能性が高くなる。コーティング膜50の厚さが120[μm]より厚いと、トレッドゴム6の変形に十分に追従することができず、コーティング膜50がトレッドゴム6の内面40から剥離する可能性が高くなる。コーティング膜50の厚さが5[μm]以上120[μm]以下に定められることにより、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、トレッドゴム6からの剥離が抑制される。
なお、コーティング膜50の厚さは、8[μm]以上100[μm]以下であることが好ましい。コーティング膜50の厚さが8[μm]以上100[μm]以下に定められることにより、高い紫外光遮蔽機能を発揮しつつ、トレッドゴム6からの剥離が十分に抑制される。
本実施形態において、内面40の中心線表面粗さ(Ra75)は、1[μm]以上100[μm]以下である。中心線表面粗さ(Ra75)は、JIS B0601:2001に基づく。中心線表面粗さは、レーザ式非接触型表面粗さ測定装置で測定可能である。内面40が所定の表面粗さを有することにより、コーティング膜50と内面40との接着性が向上する。
本実施形態においては、溝20の内面40が上述の表面粗さを有するように、タイヤ1の加硫において使用される加硫用金型500の突起部520の表面が加工されている。加硫用金型500の突起部520の表面の形状が溝20の内面40に転写されることによって、内面40は所定の表面粗さを有することができる。
次に、本実施形態に係る溝20の寸法と、コーティング膜50との関係について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る主溝21の一例を示す断面図である。
図9に示すように、主溝21の深さをH、主溝21の幅をW、トレッドゴム6の厚さをD、としたとき、主溝21は、
H ≧ 0.3D …(1)
H/W ≦ 5 …(2)
の条件を満足するように形成される。主溝21は、(1)式の条件及び(2)式の条件の両方を満足する。
主溝21の深さHは、タイヤ1が新品時(未摩耗時)における深さHである。主溝21の幅Wは、タイヤ1が新品時における幅Wである。トレッドゴム6の厚さDは、タイヤ1が新品時における厚さDである。
図9に示すように、主溝21の深さHは、タイヤ径方向に関する接地面7と底面41との距離である。深さHは、タイヤ1が新品時における内端部42Bと外端部42Uとの距離と実質的に等しい。
図9に示すように、主溝21の幅Wは、タイヤ周方向に関する一方の側面42の外端部42Uと他方の側面42の外端部42Uとの距離(幅方向の距離)である。
図9に示すように、トレッドゴム6の厚さDは、タイヤ径方向に関する接地面7とトレッドゴム6の内面13との距離である。本実施形態において、トレッドゴム6の内面13は、ベルトカバー4との境界面を含む。
(1)式の条件及び(2)式の条件を満足する溝20においては、内面40(特に底面41)に紫外光(直射日光)が照射され、グルーブクラックが発生する可能性が高い。(1)式は、深さHに比べて幅Wが大きく、直射日光が底面41に照射されやすいことを示す。(2)式は、トレッドゴム6の厚さDに対して深い溝20が形成されていることを示し、底面41と内面13との距離が短いことを示す。そのため、(1)式の条件及び(2)式の条件を満足する溝20の底面41には紫外光が照射され易く、且つ、その底面41にグルーブクラックが発生する可能性が高い。
特に、溝20が主溝21である場合、内面40に紫外光が照射される可能性が高い。主溝21は、4.0[mm]以上の幅Wを有する周方向溝である。ラグ溝22は、1.5[mm]以上の幅を有する横溝である。サイプ23は、1.5[mm]未満の幅を有する横溝である。なお、ラグ溝22の幅は、ラグ溝22の側面の外端部間の距離(例えばタイヤ周方向の距離)である。サイプ23の幅は、サイプ23の側面の外端部間の距離(例えばタイヤ周方向の距離)である。
すなわち、主溝21の幅は、ラグ溝22の幅及びサイプ23の幅よりも大きい場合が多い。そのため、ラグ溝22の内面40に照射される紫外光の照射量よりも、主溝21の内面40に照射される紫外光の照射量のほうが高い場合が多い。
本実施形態においては、タイヤ1に設けられる複数の溝20のうち、少なくとも、(1)式の条件及び(2)式の条件を満足する溝20(主溝21、横溝22、及びサイプ23を含む)の内面40にコーティング膜50が設けられる。したがって、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が抑制される。
また、本実施形態においては、主溝21、ラグ溝22、及びサイプ23を含む複数の溝20のうち、少なくとも主溝21の内面40にコーティング膜50が設けられる。本実施形態においては、タイヤ1に設けられる複数の溝20のうち、少なくとも、(1)式の条件及び(2)式の条件を満足する主溝21の内面40に、コーティング膜50が設けられる。したがって、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が抑制される。
本実施形態において、タイヤ1が新品時における溝20の深さをH、としたとき、コーティング膜50は、溝20の深さ方向に関して、接地面7から0.5Hの部位100よりも底面41側の内面40を覆うように配置される。部位100は、側面42における部位である。
すなわち、本実施形態において、タイヤ径方向に関して最も外側のコーティング膜50の部位200は、側面42の部位100よりも、タイヤ径方向に関して内側に配置される。
コーティング膜50は、内端部42Bを含む側面42の内側領域421を覆うように配置される。内側領域421は、タイヤ径方向に関して、部位100よりも内側の領域である。タイヤ径方向に関して内側領域421の外側に配置される側面42の外側領域422には、コーティング膜50は配置されない。外側領域422は、タイヤ径方向に関して、部位100よりも外側の領域を含む。
コーティング膜50が、タイヤ径方向に関して部位100よりも外側に配置されている場合、タイヤ1の走行において、コーティング膜50が地面と接触する可能性が高くなる。また、走行により、タイヤ1は摩耗する。そのため、接地面7とコーティング膜50の部位200との距離が短いと、タイヤ1の摩耗初期においても、コーティング膜50が地面と接触する可能性がある。
コーティング膜50が地面と接触すると、コーティング膜50が劣化したり、コーティング膜50がトレッドゴム6から剥離したりする可能性が高くなる。
本実施形態においては、タイヤ1が新品時において、接地面7の近くにはコーティング膜50を設けないようにしたので、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、タイヤ1の新品時、摩耗初期、及び摩耗中期において、コーティング膜50が地面と接触することが抑制される。したがって、コーティング膜50の劣化、及びトレッドゴム6からのコーティング膜50の剥離などが抑制される。
なお、本実施形態においては、コーティング膜50は、少なくとも底面41に配置され、側面42には配置されてなくてもよい。なお、側面42のうち、少なくとも、内端部42B(底面41)と、径方向に関して内端部42Bから0.3Hの部位との間に、コーティング膜50が設けられてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、製造装置1000は、加硫用金型500の突起部520を使って、トレッドゴム6の溝20の内面40をコーティング材50Mで円滑にコーティングすることができる。突起部520は、主溝21を形成するための主溝用突起部、ラグ溝22を形成するためのラグ溝用突起部、及びサイプ23を形成するためのサイプ用突起部の少なくとも一つを含む。そのため、製造装置1000は、延在方向及び幅が異なる様々な溝20の内面40を円滑にコーティングすることができる。また、本実施形態によれば、グリーンタイヤ1Gの加硫中にコーティング材50Mがグリーンタイヤ1Gに転写される。そのため、コーティング材50Mのコーティング膜50とトレッドゴム6とは高い接着力で接着する。
また、本実施形態によれば、供給装置600は、塗布部材602を突起部520と接触させて、突起部520にコーティング材50Mを供給する。加硫用金型500とは別部材である塗布部材602が使用されることにより、加硫用金型500のうち突起部520のみにコーティング材50Mが塗布され、内面507等、加硫用金型500の意図しない部分にコーティング材50Mが塗布されることが抑制される。また、加硫用金型500と塗布部材602とは別部材なので、塗布部材602は、加硫前に突起部520にコーティング材50Mを供給した後、加硫用金型500から退避することができる。塗布部材602が加硫用金型500から退避した後、加硫が行われることにより、突起部520に塗布されたコーティング材50Mのみがグリーンタイヤ1Gに転写され、不要なコーティング材50Mの転写が抑制される。
また、本実施形態によれば、塗布部材602の表面601は、突起部520側に突出する曲面を含む。塗布部材602の表面601が凸状の曲面なので、突起部520のみにコーティング材50Mが塗布され、内面507等、加硫用金型500の意図しない部分にコーティング材50Mが塗布されることが抑制される。
また、本実施形態によれば、加硫用金型500は、トレッドゴム6の接地面7を形成するための内面507を有し、突起部520は、内面507から突出し、塗布部材602の表面601の曲率Raは、加硫用金型500の内面507の曲率Rbよりも大きい。これにより、加硫用金型500の意図しない部分にコーティング材50Mが塗布されることがより一層抑制される。
また、本実施形態によれば、コーティング材50Mの粘度は、0.5[Pa・s]以上10.0[Pa・s]以下である。これにより、コーティング材50Mは、高い保持力で突起部520に保持される。
また、本実施形態によれば、コーティング膜50によって、トレッドゴム6の溝20の内面40に対する紫外光の照射量が低減されるので、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が抑制される。
また、本実施形態においては、タイヤ1に設けられる複数の溝20のうち、少なくとも、(1)式の条件及び(2)式の条件を満足する溝20の内面40にコーティング膜50が設けられる。これにより、紫外光の照射に起因するグルーブクラックの発生が効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、図9を参照して説明したように、タイヤ1が新品時における溝20の深さをH、としたとき、コーティング膜50は、溝20の深さ方向に関して、接地面7から0.5Hの部位100よりも底面41側の内面40を覆うように配置される。すなわち、タイヤ1が新品時において、コーティング膜50は、接地面7の近くに配置されず、接地面7から離れて配置される。これにより、紫外光遮蔽機能を維持しつつ、タイヤ1の新品時、摩耗初期、及び摩耗中期において、コーティング膜50が地面と接触することが抑制される。したがって、コーティング膜50の劣化、及びトレッドゴム6からのコーティング膜50の剥離などが抑制される。
(第1実施形態の変形例1)
図10は、本実施形態に係る主溝21の一部を示す断面図である。上述したように、主溝21は、内部にスリップサイン(トレッドウェアインジケータ)を有する。図10に示すように、主溝21にスリップサイン300が設けられる。スリップサイン300は、摩耗末期を示す。
コーティング膜50は、主溝21の深さ方向に関して、スリップサイン300の上面よりも底面41側の内面40を覆うように配置されてもよい。
図10に示す例においても、タイヤ1が新品時において、コーティング膜50は、接地面7の近くに配置されず、接地面7から離れて配置される。これにより、タイヤ1の新品時、摩耗初期、及び摩耗中期において、コーティング膜50が地面と接触することが抑制される。したがって、コーティング膜50の劣化、及びトレッドゴム6からのコーティング膜50の剥離などが抑制される。
なお、スリップサイン300の上面にコーティング膜50が配置されてもよい。
(第1実施形態の変形例2)
図11は、本実施形態に係る製造装置1000の一部を示す断面図である。図11に示すように、塗布部材602が、第1塗布部材6021と、第2塗布部材6022とを含んでもよい。第1塗布部材6021と第2塗布部材6022とは、タイヤ幅方向に配置され、同一の回転軸Jを中心に回転する。第1塗布部材6021と第2塗布部材6022とは、コーティング材50Mを突起部520に同時に塗布してもよい。
(第1実施形態の変形例3)
図12は、本実施形態に係る製造装置1000の一部を示す断面図である。図12に示すように、セクターモールド501が、タイヤ幅方向に関して2つのセクターモールド5011とセクターモールド5012とに分割されてもよい。
なお、本実施形態においては、複数のセクターモールド501が分割され、セクターモールド501からサイドモールド502が離れた状態で、供給装置600から突起部520にコーティング材50Mが供給されることとした。複数のセクターモールド501が連結され、円環状モールドが形成された状態で、突起部520に対するコーティング材50Mの供給が行われてもよい。
なお、コーティング材50Mは、底面41及び側面42の全部に塗布されてもよい。コーティング材50Mは、接地面7の一部に塗布されてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図13は、本実施形態に係る加硫用金型500のセクターモールド501の一部を拡大した図である。図13に示すように、セクターモールド501は、タイヤ1のトレッドゴム6に溝20を形成するための突起部520を有する。突起部520は、主溝21を形成するための主溝用突起部521と、ラグ溝22を形成するためのラグ溝用突起部522とを含む。
コーティング材50Mが供給される突起部520の表面は、粗面加工された粗面領域550を含む。
粗面領域550は、第1粗面領域550Aと、非粗面領域570を介して第1粗面領域550Aの隣に配置される第2粗面領域550Bとを含む。
第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとは、主溝用突起部521の表面においてタイヤ周方向に配置される。
タイヤ周方向に関して、第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとの間の非粗面領域570の寸法は、第1粗面領域550Aの寸法及び第2粗面領域550Bの寸法よりも小さい。
粗面領域550(550A、550B)の算術平均粗さは、0.5[μm]以上150[μm]以下である(JIS B0601−1994)。非粗面領域570の算術表面粗さは、0.1[μm]以下である。
粗面領域550を形成するための粗面加工は、サンドブラスト加工を含む。なお、ローレット加工によって、粗面領域550が形成されてもよい。また、粗面領域550が、複数のスリットによる凹凸部を含んでもよい。
上述の実施形態と同様、塗布部材602により、突起部520にコーティング材50Mが塗布される。粗面領域550は、コーティング材50Mを保持する親和領域として機能する。コーティング材50Mは、粗面領域550に十分に塗布される。一方、非粗面領域570は、コーティング材50Mを保持しない非親和領域として機能する。コーティング材50Mは、非粗面領域570に塗布されない。
図14は、図13を参照して説明したセクターモールド501により形成されたタイヤ1の一部を模式的に示す斜視図である。図14に示すように、タイヤ1のトレッドゴム6は、周方向に配置される主溝21と、主溝21と結ばれるラグ溝22とを有する。コーティング膜50は、主溝21の内面40に配置される。
コーティング膜50は、第1コーティング膜50Aと、間隙を介して第1コーティング膜50Aの隣に配置される第2コーティング膜50Bと、を含む。第1コーティング膜50Aと第21コーティング膜50Bとは、主溝21においてタイヤ周方向に配置される。
第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間には、コーティング膜50が存在しない部分である間欠部70が設けられる。間欠部70においては、トレッドゴム6の内面40が露出する。
第1コーティング膜50Aは、第1粗面領域550Aから転写されたコーティング材50Mの膜である。第2コーティング膜50Bは、第2粗面領域550Bから転写されたコーティング材50Mの膜である。
非粗面領域570はコーティング材50Mを保持しないので、非粗面領域570からグリーンタイヤ1Gにコーティング材50Mは転写されない。そのため、タイヤ1の溝20の内面40には、第1コーティング膜50Aと、第2コーティング膜50Bと、第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間のコーティング膜50が無い間欠部70とが設けられることとなる。
タイヤ周方向に関して、間欠部70の寸法は、第1コーティング膜50Aの寸法及び第2コーティング膜50Bの寸法よりも小さい。
なお、図14は、主溝21の一部を示す。本実施形態においては、主溝21の例えば4箇所に間欠部70が設けられる。主溝21には、第1のコーティング膜と、間隙を介して第1のコーティング膜の隣に配置される第2のコーティング膜と、間隙を介して第2のコーティング膜の隣に配置される第3のコーティング膜と、間隙を介して第3のコーティング膜の隣に配置される第4のコーティング膜とが配置される。なお、間欠部70の数(タイヤ周方向に配置されるコーティング膜の数)は、4つに限定されない。間欠部70の数(タイヤ周方向に配置されるコーティング膜の数)は、2つでもよいし、3つでもよいし、5つ以上の複数でもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、突起部520の表面が粗面加工されることにより、突起部520によるコーティング材50Mの保持力が向上し、突起部520は十分な量のコーティング材50Mを保持することができる。また、保持力が向上することにより、突起部520にコーティング材50Mが供給された後、突起部520からコーティング材50Mが垂れることが抑制される。
また、本実施形態においては、突起部520の表面は、コーティング材50Mに対する親和性が高い親和領域である粗面領域550と、コーティング材50Mに対する親和性が低い非親和領域である非粗面領域570とを含む。粗面領域550がコーティング材50Mを十分に保持し、非粗面領域570がコーティング材50Mを保持しないように、粗面領域550及び非粗面領域570それぞれの表面粗さが調整されることにより、コーティング材50Mを粗面領域550からグリーンタイヤ1Gに転写し、非粗面領域570からグリーンタイヤ1Gに転写しないようにすることができる。そのため、粗面領域550及び非粗面領域570のパターンに対応するコーティング膜50のパターンが溝20の内面40に形成される。すなわち、本実施形態によれば、製造装置1000は、粗面領域550及び非粗面領域570を含む表面を有する突起部520を使って、コーティング膜50をパターニングすることができる。
また、第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとの間に非粗面領域570が配置されることにより、溝20の内面40には、第1粗面領域550Aから転写されたコーティング材50Mの膜である第1コーティング膜50Aと、第2粗面領域550Bから転写されたコーティング材50Mの膜である第2コーティング膜50Bとが設けられる。非粗面領域570からグリーンタイヤ1Gにコーティング材50Mは転写されないので、第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間には、コーティング膜50が無い間欠部70が設けられることとなる。第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間に間欠部70が設けられ、コーティング膜50が分割して配置されることにより、コーティング膜50の剥離の伝播が抑制される。例えば、複数のコーティング膜50のうち、第1コーティング膜50Aが損傷し、トレッドゴム6から剥離しても、第1コーティング膜50Aの隣の第2コーティング膜50Bがトレッドゴム6から剥離することが抑制される。
コーティング膜50がタイヤ周方向に連続的に設けられていると、コーティング膜50の一部分が損傷し、トレッドゴム6から剥離した場合、その剥離がコーティング膜50の他の部分に伝播する可能性がある。その結果、コーティング膜50全体が劣化してしまう可能性がある。
本実施形態においては、第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間にコーティング膜50の間欠部70が設けられることにより、コーティング膜50の剥離の伝播が抑制される。第1コーティング膜50Aが剥離しても、間欠部70によって、剥離の伝播が停止され、第2コーティング膜50Bが剥離することが抑制される。したがって、コーティング膜50の紫外光遮蔽機能が低下することが抑制される。
また、本実施形態においては、第1粗面領域550A及び第2粗面領域550Bは、主溝用突起部521の表面においてタイヤ周方向に配置され、タイヤ周方向に関して、第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとの間の非粗面領域570の寸法は、第1粗面領域550Aの寸法及び第2粗面領域550Bの寸法よりも小さい。そのため、タイヤ周方向に関して、間欠部70の寸法を、コーティング膜50(50A、50B)の寸法よりも小さくすることができる。タイヤ周方向の間欠部70の寸法は小さく、第1コーティング膜50Aの寸法及び第2コーティング膜50Bの寸法は大きいので、コーティング膜50の機能である紫外光遮蔽機能を十分に発揮させつつ、コーティング膜50の剥離の伝播を抑制することができる。
また、本実施形態においては、粗面領域550の算術平均粗さが0.5[μm]以上150[μm]以下である。粗面領域550の算術平均粗さが0.5[μm]よりも小さいと、突起部520によるコーティング材50Mの保持力が十分に得られない可能性がある。粗面領域550の算術平均粗さが150[μm]よりも大きいと、突起部520によるコーティング材50Mの保持力が高くなり過ぎてしまい、突起部520からグリーンタイヤ1Gにコーティング材50Mが転写し難くなる可能性がある。粗面領域550の算術平均粗さが0.5[μm]以上150[μm]以下であるので、突起部520は、コーティング材50Mを保持し、グリーンタイヤ1Gに転写することができる。
なお、非粗面領域570がフッ素加工され、コーティング材50Mに対する撥液性が付与されてもよい。
(第2実施形態の変形例1)
図15は、本実施形態に係る加硫用金型500のセクターモールド501の一部を拡大した図である。図15に示すように、セクターモールド501は、タイヤ1のトレッドゴム6に溝20を形成するための突起部520を有する。突起部520は、主溝21を形成するための主溝用突起部521と、ラグ溝22を形成するためのラグ溝用突起部522とを含む。主溝用突起部521とラグ溝用突起部522とは結ばれている。ラグ溝用突起部522は、主溝用突起部521から分岐するように設けられている。
コーティング材50Mが供給される突起部520の表面は、粗面加工された粗面領域550と、粗面領域550よりも算術表面粗さが小さい非粗面領域570とを含む。
非粗面領域570は、主溝用突起部521とラグ溝用突起部522との交差部580に配置される。
図16は、図15を参照して説明したセクターモールド501により形成されたタイヤ1の溝20の一部を模式的に示す斜視図である。図16に示すように、タイヤ1のトレッドゴム6は、タイヤ周方向に配置される主溝21と、主溝21と結ばれるラグ溝22とを有する。コーティング膜50は、主溝21の内面40に配置される。コーティング膜50は、間欠部70を介して、タイヤ周方向に複数配置される。
図16に示す例において、間欠部70は、主溝21とラグ溝22との交差部80に配置される。
以上説明したように、図16に示す例においても、コーティング膜50の剥離が抑制される。タイヤ1の走行において、主溝21とラグ溝22との交差部80は変形しやすい。主溝用突起部521とラグ溝用突起部522との交差部580に非粗面領域570が設けられることにより、変形しやすい主溝21とラグ溝22との交差部80に、コーティング膜50が無い間欠部70が設けられる。変形しやすい交差部80にコーティング膜50が設けられないので、コーティング膜50の剥離が抑制される。
(第2実施形態の変形例2)
図17は、本実施形態に係る加硫用金型500のセクターモールド501の一部を拡大した図である。図17に示すように、セクターモールド501は、タイヤ1のトレッドゴム6に溝20を形成するための突起部520を有する。突起部520は、主溝21を形成するための主溝用突起部521と、ラグ溝22を形成するためのラグ溝用突起部522とを含む。
コーティング材50Mが供給される突起部520の表面は、粗面加工された粗面領域550を含む。
粗面領域550は、第1粗面領域550Aと、非粗面領域570を介して第1粗面領域550Aの隣に配置される第2粗面領域550Bとを含む。
第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとは、主溝用突起部521の表面においてタイヤ幅方向に配置される。
タイヤ幅方向に関して、第1粗面領域550Aと第2粗面領域550Bとの間の非粗面領域570の寸法は、第1粗面領域550Aの寸法及び第2粗面領域550Bの寸法よりも小さい。
図18は、図17を参照して説明したセクターモールド501により形成されたタイヤ1の一部を模式的に示す斜視図である。図18に示すように、タイヤ1のトレッドゴム6は、タイヤ周方向に配置される主溝21と、主溝21と結ばれるラグ溝22とを有する。コーティング膜50は、主溝21の内面40に配置される。
コーティング膜50は、第1コーティング膜50Aと、間隙を介して第1コーティング膜50Aの隣に配置される第2コーティング膜50Bとを含む。第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとは、主溝21においてタイヤ幅方向に配置される。
第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間には、コーティング膜50が存在しない部分である間欠部70が設けられる。間欠部70においては、トレッドゴム6の内面40が露出する。
第1コーティング膜50Aは、第1粗面領域550Aから転写されたコーティング材50Mの膜である。第2コーティング膜50Bは、第2粗面領域550Bから転写されたコーティング材50Mの膜である。
非粗面領域570はコーティング材50Mを保持しないので、非粗面領域570からグリーンタイヤ1Gにコーティング材50Mは転写されない。そのため、タイヤ1の溝20の内面40には、第1コーティング膜50Aと、第2コーティング膜50Bと、第1コーティング膜50Aと第2コーティング膜50Bとの間のコーティング膜50が無い間欠部70とが設けられることとなる。
タイヤ幅方向に関して、間欠部70の寸法は、第1コーティング膜50Aの寸法及び第2コーティング膜50Bの寸法よりも小さい。
なお、間欠部70の数(タイヤ周方向に配置されるコーティング膜の数)は、3つ以上の複数でもよい。
以上説明したように、本実施形態においても、コーティング膜50が分割して配置されることにより、第1コーティング膜50Aが損傷し、トレッドゴム6から剥離しても、第1コーティング膜50Aの隣の第2コーティング膜50Bがトレッドゴム6から剥離することが抑制される。
また、非粗面領域570のタイヤ幅方向の寸法を小さくすることにより、タイヤ幅方向の間欠部70の寸法を小さくし、第1コーティング膜50Aの寸法及び第2コーティング膜50Bの寸法を大きくすることができる。そのため、コーティング膜50の機能を十分に発揮させつつ、コーティング膜50の剥離の伝播を抑制することができる。