JP2016199685A - 三次元造形用組成物、三次元造形物の製造方法および三次元造形物 - Google Patents

三次元造形用組成物、三次元造形物の製造方法および三次元造形物 Download PDF

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Abstract

【課題】高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる三次元造形用組成物および三次元造形物の製造方法を提供すること、および、高い寸法精度で製造された三次元造形物を提供すること。
【解決手段】本発明の三次元造形物の製造方法は、層を積層することにより、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、粒子と、結着樹脂と、水系溶媒と、を含む三次元造形用組成物を用いて前記層を形成する層形成工程と、前記層を加熱することにより前記層から前記水系溶媒を除去する乾燥工程と、前記層に、結合剤を含む結合液を付与する結合液付与工程と、を有し、前記結着樹脂が、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、三次元造形用組成物、三次元造形物の製造方法および三次元造形物に関する。
粉体を結合液で固めながら、三次元物体を造形する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、次のような操作を繰り返すことによって三次元物体を造形する。まず、粒体と水系溶媒と水溶性ポリマーとを含む造形用スラリーを均一な厚さで薄く敷き詰めて層を形成し、この層の所望部分に結合液を吐出することによって粒体同士を結合させる。この結果、層の中で、結合液が吐出された部分だけが結合して、薄い板状の部材(以下、「断面部材」という)が形成される。その後、その層の上にさらに層を薄く形成し、所望部分に結合液を吐出する。その結果、新たに形成された層の結合液が吐出された部分にも、新たな断面部材が形成される。このとき、粉体層上に吐出した結合液が染み込んで、先に形成された断面部材に到達するので、新たに形成された断面部材は先に形成された断面部材にも結合される。このような操作を繰り返して、薄い板状の断面部材を一層ずつ積層することによって、三次元物体を造形することができる。
このような三次元造形技術は、造形しようとする物体の三次元形状データさえあれば、粉体を結合させて直ちに造形可能であり、造形に先立って金型を作成するなどの必要がないので、迅速にしかも安価に三次元物体を造形することが可能である。また、薄い板状の断面部材を一層ずつ積層して造形するので、例えば内部構造を有する複雑な物体であっても、複数の部品に分けることなく一体の造形物として形成することが可能である。
しかしながら、従来においては、形成した層(下層)の上にさらに造形用スラリーを供給して層(上層)を積層する際に、造形用スラリー中に含まれる水系溶媒によって下層の粒体を結合していた水溶性ポリマーが溶けてしまい、下層の形状が変形してしまう問題があった。このため、十分な寸法精度で三次元造形物を製造することができなかった。
特開2011−245712号公報
本発明の目的は、高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる三次元造形用組成物および三次元造形物の製造方法を提供すること、および、高い寸法精度で製造された三次元造形物を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の三次元造形用組成物は、粒子と、
結着樹脂と、
水系溶媒と、を含み、
前記結着樹脂が、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有することを特徴とする。
これにより、高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる三次元造形用組成物を提供することができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂が、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物、ポリアクリル酸アンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、ポリスチレンカルボン酸アンモニウム塩、アクリルアミド・アクリル酸共重合物のアンモニウム塩、および、アルギン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂の重量平均分子量が50000以上200000以下であることが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度のさらなる向上を図ることができるとともに、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂は、加熱により、酸無水物の構造を形成するものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の耐水性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂は、加熱により、環状の化学構造を形成するものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の耐水性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂は、加熱により、五員環または六員環の環状構造を形成するものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の耐水性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂は、分子内に、前記カルボン酸アンモニウム塩とともに、アミド基(−CONH)を有するものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の耐水性、耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記結着樹脂に加え、アミド基(−CONH)を有する化合物を含むものであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の安定的な製造や三次元造形物の生産コストの低減に寄与することができる。また、三次元造形物の特性、三次元造形物の生産性のさらなる向上を図ることができる。
本発明の三次元造形用組成物では、前記アミド基を有する化合物は、ポリアクリルアミドであることが好ましい。
これにより、三次元造形物の安定的な製造や三次元造形物の生産コストの低減に寄与することができる。また、三次元造形物の特性、三次元造形物の生産性のさらなる向上を図ることができる。
本発明の三次元造形物の製造方法は、層を積層することにより、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
粒子と、結着樹脂と、水系溶媒と、を含む三次元造形用組成物を用いて前記層を形成する層形成工程と、
前記層を加熱することにより前記層から前記水系溶媒を除去する乾燥工程と、
前記層に、結合剤を含む結合液を付与する結合液付与工程と、を有し、
前記結着樹脂が、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有することを特徴とする。
これにより、高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる三次元造形物の製造方法を提供することができる。
本発明の三次元造形物の製造方法では、前記乾燥工程において、前記層が前記結着樹脂のガラス転移温度以上となるように加熱することが好ましい。
これにより、水系溶媒およびアンモニアをより確実に除去するとともに、粒子同士をより強固に結合することができる。
本発明の三次元造形物の製造方法では、前記乾燥工程における加熱温度が30℃以上140℃以下であることが好ましい。
これにより、水系溶媒とアンモニアをより確実に除去することができる。特に、アンモニアを脱離する化学反応をより効率よく進行させることができ、乾燥工程終了後の結着樹脂に含まれるカルボン酸アンモニウム塩の割合をより低いものとすることができるため、三次元造形物の生産性を特に優れたものとしつつ、より高い寸法精度で三次元造形物を製造することができる。
本発明の三次元造形物の製造方法では、前記層形成工程、前記乾燥工程および前記結合液付与工程を繰り返し行った後、前記結合剤で結合していない前記粒子を除去する未結合粒子除去工程を有し、
前記未結合粒子除去工程において用いる除去液のpHが9以上であることが好ましい。
これにより、結合剤で結合していない粒子をより容易に除去することができる。
本発明の三次元造形物の製造方法では、前記層形成工程、前記乾燥工程および前記結合液付与工程を繰り返し行った後、前記結合剤で結合していない前記粒子を除去する未結合粒子除去工程を有し、
前記未結合粒子除去工程においてアンモニアを用いることが好ましい。
これにより、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、三次元造形物の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
本発明の三次元造形物は、本発明の三次元造形物の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、高い寸法精度で製造された三次元造形物を提供することができる。
本発明の三次元造形物の製造方法の好適な実施形態について、各工程を示す模式図である。 本発明の三次元造形物の製造方法の好適な実施形態について、各工程を示す模式図である。 本発明の三次元造形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。 各実施例および比較例で製造する三次元造形物(三次元造形物A)の形状を示す斜視図である。 各実施例および比較例で製造する三次元造形物(三次元造形物B)の形状を示す斜視図である。
以下、添付する図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細な説明をする。
1.三次元造形物の製造方法
まず、本発明の三次元造形物の製造方法について説明する。
図1、図2は、本発明の三次元造形物の製造方法の好適な実施形態について、各工程を示す模式図、図3は、本発明の三次元造形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1、図2に示すように、本実施形態の製造方法は、粒子と結着樹脂と水系溶媒とを含む三次元造形用組成物を用いて、層1を形成する層形成工程(1a、1d)と、層1を加熱乾燥する乾燥工程(1a、1d)と、インクジェット法により、層1に対し、結合剤を含む結合液2を付与する結合液付与工程(1b、1e)と、層1に付与された結合液2中に含まれる結合剤を硬化させる硬化工程(1c、1f)とを有し、これらの工程を順次繰り返し行い(1g)、さらに、その後に、各層1を構成する粒子のうち、結合剤により結合していないものを除去する未結合粒子除去工程(1h)を有している。
<層形成工程>
まず、支持体(ステージ)9上に、粒子と結着樹脂と水系溶媒とを含む三次元造形用組成物を用いて、層1を形成する(1a)。
支持体9は、表面(三次元造形用組成物が付与される部位)が平坦なものである。これにより、厚さの均一性の高い層1を容易かつ確実に形成することができる。
支持体9は、高強度の材料で構成されたものであるのが好ましい。支持体9の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
また、支持体9の表面(三次元造形用組成物が付与される部位)には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、三次元造形用組成物の構成材料や結合液2の構成材料が支持体9に付着してしまうことをより効果的に防止したり、支持体9の耐久性を特に優れたものとし、三次元造形物100のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。支持体9の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
三次元造形用組成物は、粒子と結着樹脂と水系溶媒とを含むものである。
結着樹脂を含むことにより、粒子同士を結合(仮固定)し、粒子の不本意な飛散等を効果的に防止することができる。これにより、作業者の安全や、製造される三次元造形物100の寸法精度の向上を図ることができる。
特に、本発明では、結着樹脂が官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有する点に特徴を有している。
層1の形成に用いる三次元造形用組成物中において、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有する結着樹脂(R−(COONH)は、R−(COO+mNH のように解離して水系溶媒中に溶解している。これに対して、後に詳述する乾燥工程において加熱乾燥すると、水系溶媒が揮発するとともに、アンモニアが結着樹脂から脱離し揮発する。これにより、結着樹脂は、例えば、R−(COOH)のような化学構造を有するものとなり、水系溶媒(中性の液体)に対して難溶となる。
このため、三次元造形用組成物を用いて2層目以降の層1を形成する場合において、新たな層1を形成するのに用いる三次元造形用組成物を付与した際に、三次元造形用組成物中に含まれる水系溶媒によって、それよりも下側の層1の粒子間を結合していた結着樹脂が溶け出してしまうのを防止することができる。これにより、三次元造形物100の製造時における層1の不本意な変形を効果的に防止することができ、結果として、高い寸法精度で三次元造形物100を製造することができる。
なお、本発明において、水系溶媒とは、水または水との親和性の高い液体のことをいい、具体的には、25℃における水100gに対する溶解度が、50g以上のもののことをいう。
本工程は、例えば、スキージー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スピンコート法等の方法を用いることにより行うことができる。
本工程で形成される層1の厚さは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、三次元造形物100の生産性を十分に優れたものとしつつ、製造される三次元造形物100における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
<乾燥工程>
本工程では、三次元造形用組成物を用いて形成した層1を加熱乾燥し、層1から水系溶媒を除去する。本工程においては、層1から水系溶媒が除去されるとともに、層1を構成する結着樹脂からアンモニアが脱離し、層1から除去される。これにより、層1は、親水性が高い状態から疎水性の高い状態(すなわち、親水性の低い状態)となり、水系溶媒に対する親和性が低いものとなる。その結果、例えば、三次元造形用組成物を用いて2層目以降の層1を形成する際に、新たな層1を形成するのに用いる三次元造形用組成物中に含まれる水系溶媒によって、それよりも下側の層1、すなわち、乾燥処理が施された層1が変形してしまうことを効果的に防止することができる。
乾燥工程における加熱温度は、結着樹脂のガラス転移温度以上であるのが好ましい。これにより、乾燥工程において、水系溶媒とアンモニアをより確実に除去することができるとともに、粒子同士をより確実に仮固定することができる。
乾燥工程における加熱温度は、具体的には、30℃以上140℃以下であるのが好ましく、40℃以上120℃以下であるのがより好ましい。これにより、水系溶媒とアンモニアをより確実に除去することができる。特に、カルボン酸アンモニウム塩を、塩ではないカルボキシル基に変換する化学反応や、カルボン酸アンモニウム塩およびアミド基から酸無水物の構造を形成する化学反応をより効率よく進行させ、アンモニアをより効率よく脱離させることができ、本工程終了後の結着樹脂に含まれるカルボン酸アンモニウム塩の割合をより低いものとすることができる。その結果、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとしつつ、三次元造形物100の製造時における層1の不本意な変形をより効果的に防止することができ、より高い寸法精度で三次元造形物100を製造することができる。
<結合液付与工程>
その後、インクジェット法により、層1に対し、結合剤を含む結合液2を付与する(1b)。
本工程では、層1のうち三次元造形物100の実部(実体のある部位)に対応する部位にのみ、選択的に結合液2を付与する。
本工程では、インクジェット法により結合液2を付与するため、結合液2の付与パターンが微細な形状のものであっても再現性よく結合液2を付与することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度を特に高いものとすることができる。
また、前述したように、層1を構成する結着樹脂は、乾燥工程において、疎水性の高いものとなっているため、本工程で付与する結合液2が後述するような疎水性の高いものである場合、層1と結合液2との親和性を優れたものとすることができる。その結果、層1上での結合液2のはじき等が効果的に防止され、層1中に結合液2をより好適に浸透させることができる。したがって、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度、機械的強度をより確実に特に優れたものとすることができる。
なお、結合液2については、後に詳述する。
<硬化工程>
次に、層1に付与された結合剤を硬化させ、硬化部3を形成する(1c)。これにより、粒子同士の結合強度を特に優れたものとすることができ、その結果、最終的に得られる三次元造形物100の機械的強度や耐水性を特に優れたものとすることができる。
本工程は、硬化成分(結合剤)の種類により異なるが、例えば、硬化成分(結合剤)が熱硬化性の場合、加熱により行うことができ、硬化成分(結合剤)が光硬化性の場合、対応する光の照射により行うことができる(例えば、硬化成分が紫外線硬化性の場合は紫外線の照射により行うことができる)。
なお、結合液付与工程と硬化工程とは、同時進行的に行ってもよい。すなわち、1つの層1全体のパターン全体が形成される前に、結合液2が付与された部位から順次硬化反応を進行させるものであってもよい。
その後、前記の一連の工程を繰り返し行う(1d、1e、1f参照)。これにより、前記各層1のうち、結合液2が付与された部位の粒子が結合した状態となり、このような状態の層1が複数積層された積層体としての三次元造形物100が得られる(1g参照)。
また、2回目以降の結合液付与工程(1d参照)で層1に付与された結合液2は、当該層1を構成する粒子同士の結合に利用されるとともに、付与された結合液2の一部は、それよりも下の層1に接触し密着する。このため、結合液2は、各層1内での粒子同士を結合だけでなく、隣接する層間での粒子同士の結合にも利用される。その結果、最終的に得られる三次元造形物100は、全体としての機械的強度に優れたものとなる。
<未結合粒子除去工程>
そして、前記のような一連の工程を繰り返し行った後に、後処理工程として、各層1を構成する粒子のうち、結合剤により結合していないもの(未結合粒子)を除去する未結合粒子除去工程(1h)を行う。これにより、三次元造形物100が取り出される。
本工程の具体的な方法としては、例えば、刷毛等で未結合粒子を払い除ける方法、未結合粒子を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られた積層体を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。
特に、未結合粒子の除去は、pHが9以上の除去液を用いて行うのが好ましい。未結合粒子の間に介在する結着樹脂は、上述したように、三次元造形用組成物に含まれていた結着樹脂からアンモニアが脱離した構造(例えば、R(−COOH)等の構造)を有するものになっているため、水等の中性の液体には溶解し難いものとなっている。そこで、pHが9以上の除去液を用いることで、結着樹脂をより容易に溶解させることができ、未結合粒子をより容易に除去することができる。
pHが9以上の除去液としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機アルカリ性物質;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン等の有機アルカリ性物質等の各種アルカリ性物質を含む液体を用いることができる。また、アルカリ性物質としては、酢酸ナトリウム等の弱酸と強塩基との塩を用いることもできる。
また、本工程においては、アンモニアを用いるのが好ましい。
これにより、前述した乾燥工程で、アンモニアが除去された結着樹脂に、再びアンモニアを付加する化学反応を進行させることができ、未結合粒子を含む領域である不要部中に含まれる結着樹脂の水系溶媒(特に、水)に対する溶解性を向上させることができ、水系溶媒を含む液体を用いた未結合粒子(不要部)の除去効率を特に優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、不要部が不本意に残存することをより確実に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。特に、目的とする三次元造形物が、例えば、幅の狭い凹部や、深さの深い凹部、湾曲または屈曲した凹部を有するもの等のように、機械的な方法では未結合粒子(不要部)を十分に除去することが困難な形状を有するものである場合であっても、アンモニアを用いることにより、未結合粒子(不要部)を効率よくかつ十分に除去することができる。
なお、アンモニアは、水溶液等の溶液として用いてもよいし、気体(アンモニアガス)として用いてもよい。アンモニアガスを用いる場合には、その後、水系溶媒を含む液体を付与するのが好ましい。これにより、より効率よく未結合粒子を除去することができる。
また、除去液を用いる場合、本工程は、積層体を加熱しつつ行うものであるのが好ましい。
これにより、未結合粒子(不要部)の除去効率を特に優れたものとすることができる。特に、目的とする三次元造形物が、例えば、前述したような凹部を有するものであっても、加熱により除去液の粘度が低下し、当該凹部内に除去液が侵入しやすくなる。その結果、目的とする三次元造形物が未結合粒子(不要部)を十分に除去することが困難な形状を有するものである場合であっても、未結合粒子(不要部)を効率よくかつ十分に除去することができる。
本工程での処理温度は、特に限定されないが、20℃以上100℃以下であるのが好ましく、25℃以上80℃以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物100の構成材料の不本意な変性、劣化等を効果的に防止しつつ、未結合粒子(不要部)の除去効率を特に優れたものとすることができる。
また、未結合除去粒子工程でアンモニアを用いる場合、アンモニアを用いた未結合粒子の除去を行う処理を行った後に、加熱処理を行うのが好ましい。
前述した未結合粒子除去工程でのアンモニアを用いた処理により、三次元造形物100の実部に含まれる結着樹脂、特に、三次元造形物100の表面付近に含まれる結着樹脂は、アンモニアが付加した化学構造を有するものとなっている可能性があるが、アンモニアを用いた未結合粒子除去の処理の後に、加熱処理を行うことにより、このような結着樹脂から、アンモニアを再び脱離することができ、結着樹脂の疎水性を高いものとすることができる。その結果、三次元造形物100の耐水性、耐久性を特に優れたものとすることができる。
このような加熱処理は、アンモニアを含まない環境下で行うもの、または、アンモニアと接触した三次元造形物100を洗浄した後に行うものであるのが好ましい。
これにより、三次元造形物100からより効率よくアンモニアを除去することができる。
未結合除去粒子工程でのアンモニアを用いた処理の後に加熱処理を行う場合、当該加熱処理時の加熱温度は、特に限定されないが、30℃以上140℃以下であるのが好ましく、40℃以上120℃以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物100の構成材料の不本意な変性、劣化等を効果的に防止しつつ、三次元造形物100からさらに効率よくアンモニアを除去することができる。
前述したような三次元造形物の製造方法をフローチャートにまとめると、図3のようになる。
前述したような本発明の三次元造形物の製造方法によれば、優れた寸法精度の三次元造形物を得ることができる。
2.三次元造形用組成物
次に、三次元造形用組成物について詳細に説明する。
三次元造形用組成物は、複数の粒子と、結着樹脂と、水系溶媒とを含むものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
≪粒子≫
三次元造形用組成物は、粒子を含んでいる。
粒子の構成材料としては、例えば、無機材料や有機材料、これらの複合体等が挙げられる。
粒子を構成する無機材料としては、例えば、各種金属や金属化合物等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム等の各種金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物;硫化亜鉛等の各種金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化物、石膏(硫酸カルシウムの各水和物、硫酸カルシウムの無水物)等が挙げられる。
また、粒子を構成する有機材料としては、例えば、合成樹脂、天然高分子等が挙げられ、より具体的には、ポリエチレン樹脂;ポリプロピレン;ポリエチレンオキサイド;ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリウレア;ポリエステル;シリコーン樹脂;アクリルシリコーン樹脂;ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとする重合体;メタクリル酸メチルクロスポリマー等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとするクロスポリマー(エチレンアクリル酸共重合樹脂等);ナイロン12、ナイロン6、共重合ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド;カルボキシメチルセルロース;ゼラチン;デンプン;キチン;キトサン、ポリカーボネート等が挙げられる。
上述した中でも、粒子は、無機材料で構成されたものであるのが好ましく、金属酸化物で構成されたものであるのがより好ましく、シリカで構成されたものであるのがさらに好ましい。これにより、三次元造形物100の機械的強度、耐光性等の特性を特に優れたものとすることができる。また、シリカは、流動性にも優れているため、厚さの均一性がより高い層1の形成に有利であるとともに、三次元造形物100の生産性、寸法精度を特に優れたものとすることができる。
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上25μm以下であるのが好ましく、1μm以上10μm以下であるのがより好ましい。これにより、三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造される三次元造形物100における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、粒子の流動性、三次元造形用組成物の流動性を特に優れたものとし、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(例えば、COULTER ELECTRONICS INC製TA−II型等)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
粒子のDmaxは、3μm以上40μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造される三次元造形物100における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形用組成物の流動性を特に優れたものとし、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、製造される三次元造形物100の表面における、粒子による光の散乱をより効果的に防止することができる。
粒子は、いかなる形状を有するものであってもよいが、球形状をなすものであるのが好ましい。これにより、三次元造形用組成物の流動性を特に優れたものとし、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、製造される三次元造形物100における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、製造される三次元造形物100の表面における、粒子による光の散乱をより効果的に防止することができる。
三次元造形用組成物中における粒子の含有率は、5質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、三次元造形用組成物の流動性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られる三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
≪結着樹脂≫
三次元造形用組成物は、複数個の粒子とともに、結着樹脂を含むものである。結着樹脂を含むことにより、粒子同士を結合(仮固定)し、粒子の不本意な飛散等を効果的に防止することができる。これにより、作業者の安全や、製造される三次元造形物100の寸法精度の向上を図ることができる。
三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂は、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有するものである。
このような結着樹脂は、加熱によりアンモニアが脱離し親水性が高い状態から疎水性の高い状態に容易かつ確実に変化させることができるものである。結着樹脂の親水性が高い状態であることによる効果と、結着樹脂の疎水性が高い状態であることによる効果とを両立させることができる。
具体的には、三次元造形用組成物中において、結着樹脂が、親水性の高い状態、すなわち、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有するものであることにより、結着樹脂を水系溶媒に好適に溶解させることができ、層1の形成時には、三次元造形用組成物の流動性を優れたものとすることができるとともに、乾燥後の層1においては、粒子の周りに高い均一性で結着樹脂を付着させることができ、層1の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、粒子の飛散の問題をより好適に防止することができる。
その一方で、層1の形成後に、結着樹脂を疎水性の高い状態、すなわち、カルボン酸アンモニウム塩からアンモニウムが脱離した構造を有するものとすることにより、三次元造形用組成物を用いて2層目以降の層1を形成する際に、新たな層1を形成するのに用いる三次元造形用組成物中に含まれる水系溶媒によって、それよりも下側の層1、すなわち、乾燥処理が施された層1が変形してしまうことを効果的に防止することができる。その結果、高い寸法精度で三次元造形物100を製造することができる。また、最終的に得られる三次元造形物100の耐水性を優れたものとすることができる。
また、このような結着樹脂は、アンモニアが脱離し親水性が高い状態から疎水性の高い状態に容易かつ確実に変化させることができるものであるとともに、アンモニアが脱離した状態で、アンモニアと反応させることにより、容易かつ確実に、再びカルボン酸アンモニウム塩の化学構造が導入されるものである。このため、前述したような未結合粒子除去工程において、未結合粒子(不要部)を効率よく除去することができ、三次元造形物100の生産性を優れたものとすることができる。
三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂は、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有するものであればよいが、加熱により、酸無水物の構造を形成するものであるのが好ましい。
これにより、アンモニウムの脱離反応の前後での結着樹脂の親水性の低下の割合を特に大きいものとすることができ、アンモニウムの脱離反応後の結着樹脂の疎水性を特に高いものとすることができるため、2層目以降の層1を形成する際に、それよりも下側の層1が変形してしまうことをより効果的に防止することができ、三次元造形物100の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、最終的な三次元造形物100に含まれる結着樹脂をアンモニウムが脱離されたものとした場合に、三次元造形物100の耐水性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、加熱により酸無水物の構造を有するものとなった結着樹脂は、より容易に、アンモニアと化学反応し、当該化学反応により、カルボン酸アンモニウム塩の構造と、アミド基とを導入することができる。このような化学構造が導入されることより、未結合粒子(不要部)を効率よく除去することができるため、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂は、加熱により、環状の化学構造を形成するものであるのが好ましい。
これにより、アンモニアが脱離し、環状の化学構造が形成された状態での結着樹脂の疎水性を特に高いものとすることができ、結着樹脂の疎水性が高いものとなることにより得られる前述したような効果がより顕著に発揮される。また、アンモニアが脱離して環状の化学構造が形成されると、アンモニアとの化学反応によりカルボン酸アンモニウム塩の化学構造を再び結着樹脂に導入する化学反応を進行させる際の立体障害が小さいものとなり、当該化学反応がより効率よく進行する。また、アンモニアとの化学反応による結着樹脂の膨張率が大きいものとなり、未結合粒子除去工程での未結合粒子(不要部)の除去効率を特に優れたものとすることができる。このようなことから、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。
環状の化学構造としては、例えば、酸無水物の構造、ラクトン構造、ラクタム構造、イミド構造等が挙げられるが、酸無水物以外の構造等が挙げられる。
アンモニアの脱離により環状の化学構造が形成される場合、この化学反応は、分子間で進行するものであってもよいし、分子内で進行するものであってもよいが、少なくとも一部の化学反応は、分子内で進行するものであるのが好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂が、加熱により、環状の化学構造を形成するものである場合、当該環状構造は、五員環または六員環のものであるのが好ましい。
これにより、アンモニアが脱離し、環状の化学構造が形成された状態での結着樹脂の疎水性をさらに高いものとすることができ、結着樹脂の疎水性が高いものとなることにより得られる前述したような効果がさらに顕著に発揮される。また、アンモニアとの化学反応によりカルボン酸アンモニウム塩の化学構造を再び結着樹脂に導入する化学反応を進行させる際の立体障害が特に小さいものとなり、当該化学反応がさらに効率よく進行し、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。
結着樹脂は、分子内に、カルボン酸アンモニウム塩とともに、アミド基(−CONH)を有するものであるのが好ましい。
これにより、加熱により、カルボン酸アンモニウム塩とアミド基(−CONH)との化学反応を進行させることができ、結着樹脂に酸無水物の構造(−COOCO−)を導入することができ、前述したような効果を得ることができる。特に、結着樹脂の分子内に、カルボン酸アンモニウム塩と、アミド基(−CONH)とを有することにより、当該化学反応をより効率よく進行させることができ、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。また、前述したような環状構造を結着樹脂の分子に好適に導入することができ、前述したような効果を得ることができる。
カルボン酸アンモニウム塩とともにアミド基(−CONH)を有する結着樹脂としてのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物が、分子内での反応によりアンモニアを脱離し、酸無水物の構造(−COOCO−)を形成する例を、以下に示す。
Figure 2016199685
なお、上記化学式では、三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂において、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物の構成モノマーとしての無水マレイン酸が、全て、アンモニアと反応しているものとして示しているが、三次元造形用組成物中に含まれるオレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物は、構成モノマーとしての無水マレイン酸の一部がアンモニアと反応して得られる生成物であればよく、構成モノマーとしての無水マレイン酸は、アンモニアと反応しておらず、酸無水物の構造を保持しているものであってもよい。
三次元造形用組成物は、結着樹脂として、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有するものを含むものであればよいが、当該結着樹脂は、例えば、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物、ポリアクリル酸アンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、ポリスチレンカルボン酸アンモニウム塩、アクリルアミド・アクリル酸共重合物のアンモニウム塩、および、アルギン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種または2種以上であるのが好ましい。
これにより、三次元造形用組成物の流動性や、層1における粒子の仮固定の固定力を特に優れたものとすることができるとともに、結着樹脂からのアンモニアの脱離反応や、アンモニアが脱離した結着樹脂へのアンモニアの付加反応を好適に進行させることができ、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。
特に、三次元造形用組成物を構成する結着樹脂が、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物やアクリルアミド・アクリル酸共重合物のアンモニウム塩を含むものである場合、特に優れた反応性で、前述した酸無水物の構造を好適に形成することができる。特に、分子内で反応することにより、五員環または六員環の環状構造としての酸無水物の構造を、特に優れた反応性で形成することができる。
オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物を構成するモノマー成分としてのオレフィンとしては、例えば、イソブチレン、スチレン、エチレン等が挙げられる。
また、酢酸ビニル・無水マレイン酸共重合物やメチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物であっても良い。
三次元造形用組成物中に含まれる結着樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、50000以上200000以下であるのが好ましく、70000以上180000以下であるのがより好ましい。
これにより、粒子同士を結合(仮固定)する固定力を特に優れたものとし、粒子の不本意な飛散等をより効果的に防止することができ、また、未結合粒子除去工程での不要部の除去をより効率よく行うことができる。その結果、三次元造形物100の寸法精度のさらなる向上を図ることができるとともに、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。
三次元造形用組成物中におけるカルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有する結着樹脂の含有率は、粒子の体積に対して、20体積%以下であるのが好ましく、1体積%以上5体積%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような結着樹脂の機能を十分に発揮させることができ、三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
≪水系溶媒≫
三次元造形用組成物は、前述したような結着樹脂、粒子に加えて、水系溶媒を含むものである。これにより、三次元造形用組成物の流動性を優れたものとし、三次元造形物100の生産性を優れたものとすることができる。また、層1の厚みの不本意なばらつきを効果的に防止することができ、三次元造形物100の寸法精度を優れたものとすることができる。
三次元造形用組成物を構成する水系溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル2−アセタート等のグリコールエーテルアセテート系溶媒;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、三次元造形用組成物は、水を含むものであるのが好ましい。これにより、結着樹脂をより確実に溶解することができ、三次元造形用組成物の流動性、三次元造形用組成物を用いて形成される層1の組成の均一性を特に優れたものとすることができる。また、水は層1形成後の除去が容易であるとともに、三次元造形物100中に残存した場合においても悪影響を与えにくい。また、人体に対する安全性、環境問題の観点等からも有利である。
三次元造形用組成物中における水系溶媒の含有率は、5質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上80質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような水系溶媒を含むことによる効果がより顕著に発揮されるとともに、三次元造形物100の製造過程において水系溶媒を短時間で容易に除去することができるため、三次元造形物100の生産性向上の観点から有利である。
特に、三次元造形用組成物が水系溶媒として水を含むものである場合、三次元造形用組成物中における水の含有率は、20質量%以上85質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上80質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
≪その他の成分≫
また、三次元造形用組成物は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;重合促進剤;分散剤;官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有していない結着樹脂;水系溶媒以外の溶媒;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
カルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリカプロラクトンジオール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、変性ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合ポリマー等の合成ポリマー、コーンスターチ、マンナン、ペクチン、寒天、アルギン酸、デキストラン、にかわ、ゼラチン等の天然ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酸化でんぷん、変性でんぷん等の半合成ポリマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、ポリビニルアルコールを含むことより、三次元造形物100の機械的強度をより優れたものとすることができる。また、ケン化度や重合度の調整により、結着樹脂の特性(例えば、水溶性等)や三次元造形用組成物の特性(例えば、粘度、粒子の固定力、濡れ性等)をより好適に制御することができ、三次元造形用組成物の取扱いのし易さ、三次元造形物100の生産性を特に優れたものとすることができる。このため、多様な三次元造形物100の製造により好適に対応することができる。また、ポリビニルアルコールは、結着樹脂として用いることのできる各種樹脂の中でも、安価で、かつ、供給が安定したものである。このため、生産コストを抑制しつつ、安定的な三次元造形物100の製造を行うことができる。
また、ポリビニルアルコールを結着樹脂として用いた場合、上記のような優れた効果が得られる一方で、従来では、最終的に得られる三次元造形物の耐水性が低下するという問題を生じ易かった。これに対し、本発明のように、三次元造形用組成物が、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂を含むものであると、さらに、ポリビニルアルコールを含むものであっても、三次元造形物の耐水性を十分に優れたものとすることができる。言い換えると、本発明において、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂に加え、ポリビニルアルコールを含む三次元造形用組成物を用いることにより、ポリビニルアルコールを用いることによる効果を得つつ、最終的な三次元造形物の耐水性を優れたものとすることができる。このような効果は、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂の中でも、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物を用いた場合に、より顕著に発揮される。
三次元造形用組成物がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールのケン化度は、70以上90以下であるのが好ましい。これにより、水系溶媒(特に、水)に対するポリビニルアルコールの溶解度の低下を抑制することができる。そのため、隣接する層1間の接着性の低下をより効果的に抑制することができる。
三次元造形用組成物がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールの重合度は、300以上2000以下であるのが好ましい。
これにより、未結合粒子(不要部)の除去をより容易に行うことができるとともに、最終的に得られる三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
また、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂として、アミド基(−CONH)を有する結着樹脂(例えば、ポリアクリルアミド)を含む場合、加熱により、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂と、アミド基(−CONH)を有する結着樹脂との間で、酸無水物の構造を好適に形成することができる。これにより、前述したような効果が得られる。
このように、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂は、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂以外の成分と化学反応することにより、アンモニアが脱離するものであってもよい。
このような構成とすることにより、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂や、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない成分として、より入手が容易なものを用いることができ、三次元造形物100の安定的な製造や三次元造形物100の生産コストの低減に寄与することができる。また、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂や、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない成分の分子量や化学構造の設計の自由度が増し、製造される三次元造形物100の特性、三次元造形物100の生産性のさらなる向上を図ることができる。
このような効果は、アミド基(−CONH)を有する結着樹脂として、ポリアクリルアミドを用いた場合に、より顕著に発揮される。
なお、三次元造形用組成物が、アミド基(−CONH)を有する結着樹脂の代わりに、アミド基(−CONH)を有する結着樹脂以外の化合物(例えば、分散剤として機能する化合物等)を含むものである場合にも、上述したのと同様の効果が得られる。
三次元造形用組成物が、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂を含む場合、三次元造形用組成物中におけるカルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂の含有率は、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂の含有率よりも低いものであるのが好ましい。
これにより、カルボン酸アンモニウム塩の構造を有する結着樹脂を含むことによる効果がより顕著に発揮される。
より具体的には、三次元造形用組成物中におけるカルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂の含有率は、15質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
特に、三次元造形用組成物がポリビニルアルコールを含むものである場合、三次元造形用組成物中におけるポリビニルアルコールの含有率は、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上8質量%以下であるのがより好ましい。
また、三次元造形用組成物がポリアクリルアミドのようなアミド基(−CONH)を有する結着樹脂をカルボン酸アンモニウム塩の構造を有さない結着樹脂として含む場合、三次元造形用組成物中における当該結着樹脂の含有率は、0.5質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
3.結合液
次に、本発明の三次元造形物の製造に用いる結合液について詳細に説明する。
結合液2は、少なくとも、結合剤を含むものである。
≪結合剤≫
結合剤は、硬化することによって、粒子を結合する機能を備えた成分である。
このような結合剤としては、特に限定されないが、疎水性(親油性)を有するものを用いるのが好ましい。
これにより、例えば、乾燥工程でアンモニアが脱離した化学構造の疎水性の高い結着樹脂を含む層1に対する結合液2の親和性を特に優れたものとすることができ、結合液2が層1に付与された際の層1上での結合液2のはじき等がより効果的に防止され、層1中に結合液2をより好適に浸透させることができる。したがって、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度、機械的強度をより確実に特に優れたものとすることができる。また、粒子として疎水化処理を施されたものを用いた場合、結合液2と粒子との親和性をより高いものとすることができ、層1に結合液2が付与されることにより、結合液2は、粒子の空孔内に好適に侵入することができる。その結果、結合剤によるアンカー効果が好適に発揮され、最終的に得られる三次元造形物100の機械的強度や耐水性を優れたものとすることができる。なお、本発明において、疎水性の硬化性樹脂は、水に対する親和性が十分に低いものであればよいが、例えば、25℃における水に対する溶解度が1[g/100g水]以下であるのが好ましい。
結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂;熱硬化性樹脂;可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂;X線硬化性樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、得られる三次元造形物100の機械的強度や三次元造形物100の生産性等の観点から、結合剤は、硬化性樹脂が好ましい。また、各種硬化性樹脂の中でも、得られる三次元造形物100の機械的強度や三次元造形物100の生産性、結合液2の保存安定性等の観点から、特に、紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)が好ましい。また、紫外線硬化性樹脂は、一般に、疎水性の高い材料であるため、乾燥工程でアンモニアが脱離した化学構造の疎水性の高い結着樹脂を含む層1に対する親和性が特に優れている。したがって、結合液2が層1に付与された際の層1上での結合液2のはじき等がより効果的に防止され、層1中に結合液2をさらに好適に浸透させることができる。したがって、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度、機械的強度をさらに確実に特に優れたものとすることができる。
紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)としては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
付加重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。付加重合性化合物として、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。
エチレン性不飽和重合性化合物は、単官能の重合性化合物および多官能の重合性化合物、またはそれらの混合物の化学的形態をもつ。単官能の重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類等が挙げられる。多官能の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類とイソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、カルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も使用できる。
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、単官能のもの、多官能のもののいずれも用いることができる。
単官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート以外の重合性化合物としては、例えば、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等が挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適である。
本発明において、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)として好適に用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、例えば、開環重合性基を含む硬化性化合物等が挙げられ、中でも、ヘテロ環状基含有硬化性化合物が特に好ましい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば、単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、例えば、ジグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、3官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、4官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等)、脂環式エポキシ類、オキセタン類等が挙げられる。
重合性化合物としては、脂環式エポキシ誘導体を好ましく用いることができる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基またはシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を、単独で使用したり、前記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
このような通常のグリシジル化合物としては、例えば、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物等を挙げることができるが、グリシジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、例えば、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。グリシジルエステルとしては、例えば、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステル等を挙げることができる。
重合性化合物としては、4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。
結合液2は、上記の重合性化合物の中でも、特に、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチルアクリレートおよびジプロピレングリコールジアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。
これらの重合性化合物は、乾燥工程でアンモニアが脱離した化学構造の疎水性の高い結着樹脂を含む層1に対する親和性が特に優れている。したがって、結合液2が層1に付与された際の層1上での結合液2のはじき等がさらに効果的に防止され、層1中に結合液2をさらに好適に浸透させることができる。したがって、最終的に得られる三次元造形物100の寸法精度、機械的強度をさらに優れたものとすることができる。
結合液2中における結合剤の含有率は、80質量%以上であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる三次元造形物100の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
≪その他の成分≫
また、結合液2は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;分散剤;界面活性剤;重合開始剤;重合促進剤;溶媒;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
特に、結合液2が着色剤を含むことにより、着色剤の色に対応する色に着色された三次元造形物100を得ることができる。
特に、着色剤として、顔料を含むことにより、結合液2、三次元造形物100の耐光性を良好なものとすることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記無機顔料の中でも、好ましい白色を呈するためには、酸化チタンが好ましい。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
結合液2が着色剤を含むものである場合、当該結合液2中における着色剤の含有率は、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性および色再現性が得られる。
特に、結合液2が着色剤として酸化チタンを含むものである場合、当該結合液2中における酸化チタンの含有率は、12質量%以上24質量%以下であるのが好ましく、14質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性と沈降回復性が得られる。
結合液2が顔料を含む場合に、分散剤をさらに含むものであると、顔料の分散性をより良好なものとすることができる。その結果、顔料の偏りによる部分的な機械的強度の低下をより効果的に抑制することができる。
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤等の顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。高分子分散剤の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とするもの等が挙げられる。
結合液2が界面活性剤を含むものであると、層1への浸透性や三次元造形物100の耐擦性をより良好なものとすることができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤としての、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等を用いることができ、中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いるのが好ましい。
また、結合液2は、溶媒を含むものであってもよい。これにより、結合液2の粘度調整を好適に行うことでき、結合液2が高粘度の成分を含むものであっても、結合液2のインクジェット方式による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、結合液2の粘度は、10mPa・s以上25mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上20mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による結合液2の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書中において、粘度とは、特に条件の指定がない限り、E型粘度計(例えば、東京計器社製 VISCONIC ELD等)を用いて25℃において測定される値をいう。
また、三次元造形物100の製造には、複数種の結合液2を用いてもよい。
例えば、着色剤を含む結合液2(カラーインク)と、着色剤を含まない結合液2(クリアインク)とを用いてもよい。これにより、例えば、三次元造形物100の外観上、色調に影響を与える領域に付与する結合液2として着色剤を含む結合液2を用い、三次元造形物100の外観上、色調に影響を与えない領域に付与する結合液2として着色剤を含まない結合液2を用いてもよい。また、最終的に得られる三次元造形物100において、着色剤を含む結合液2を用いて形成された領域の外表面に、着色剤を含まない結合液2を用いて領域(コート層)を設けるように、複数種の結合液2を併用してもよい。
また、例えば、異なる組成の着色剤を含む複数種の結合液2を用いてもよい。これにより、これらの結合液2の組み合わせにより、表現できる色再現領域を広いものとすることができる。
複数種の結合液2を用いる場合、少なくとも、藍紫色(シアン)の結合液2、紅紫色(マゼンタ)の結合液2および黄色(イエロー)の結合液2を用いるのが好ましい。これにより、これらの結合液2の組み合わせにより、表現できる色再現領域をより広いものとすることができる。
また、白色(ホワイト)の結合液2を、他の有色の結合液2とを併用することにより、例えば、以下のような効果が得られる。すなわち、最終的に得られる三次元造形物100を、白色(ホワイト)の結合液2が付与された第1の領域と、第1の領域と重なり合い、かつ、第1の領域よりも外表面側に設けられた白色以外の有色の結合液2が付与された領域とを有するものとすることができる。これにより、白色(ホワイト)の結合液2が付与された第1の領域が隠蔽性を発揮することができ、三次元造形物100の彩度をより高めることができる。
4.三次元造形物
本発明の三次元造形物は、前述したような三次元造形物の製造方法を用いて製造されたものである。これにより、寸法精度に優れた三次元造形物を提供することができる。
本発明の三次元造形物の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;インプラント等の医療機器等が挙げられる。
また、本発明の三次元造形物は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されるものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
より具体的には、例えば、前述した実施形態では、層形成工程、乾燥工程および結合液付与工程に加え、硬化工程も、層形成工程、乾燥工程および結合液付与工程と合わせて繰り返し行うものとして説明したが、硬化工程は、繰り返し行うものでなくてもよい。例えば、硬化されていない複数の層を備えた積層体を形成した後に一括して行うものであってもよい。
また、本発明の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、後処理工程を行ってもよい。
前処理工程としては、例えば、支持体(ステージ)の清掃工程等が挙げられる。
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、着色工程、被覆層形成工程、未硬化の紫外線硬化性樹脂を確実に硬化させるための光照射処理や加熱処理を行う紫外線硬化性樹脂硬化完了工程等が挙げられる。
また、前述した実施形態では、全ての層に対して、結合液を付与するものとして説明したが、結合液が付与されない層を有していてもよい。例えば、支持体(ステージ)の直上に形成された層に対して、結合液を付与しないものとし、犠牲層として機能させてもよい。
また、前述した実施形態では、結合液付与工程をインクジェット法により行う場合について中心的に説明したが、結合液付与工程は他の方法(例えば、他の印刷方法)を用いて行うものであってもよい。
また、前述した実施形態では、結合液が硬化性樹脂(重合性化合物)を含むものである場合について中心的に説明したが、結合液は、例えば、硬化性樹脂(重合性化合物)の代わりに熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。このような場合であっても、熱可塑性樹脂を溶融状態から固化状態とすることや、結合液中に含まれる溶媒(熱可塑性樹脂を溶解する溶媒)を除去して熱可塑性樹脂を固化状態とすること等により、結合部を形成することができ、前述したのと同様の効果を得ることができる。
また、前述した実施形態では、最終的に得られる三次元造形物が、結合液を用いて形成された結合部を有するものである場合について代表的に説明したが、本発明では、最終的に得られる三次元造形物は、結合液による結合剤が含まれていないものであってもよく、例えば、複数の層を積層した後に脱脂処理、焼結処理を施すことにより、前記粒子同士が結合したものとして得られる焼結体等であってもよい。
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(25℃)において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(25℃)における数値である。
[1]三次元造形用組成物の製造
(実施例1)
まず、平均粒径:2.6μm、Dmax:10μm、空孔率:80%、平均空孔径:60nmの多孔質シリカ粒子:35質量部と、カルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有する結着樹脂としてのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物(重量平均分子量:50000):2質量部と、カルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有さない結着樹脂としてのポリビニルアルコール(ケン化度:87、重合度:500):1質量部と、水系溶媒としての水:62質量部とを混合し、三次元造形用組成物を得た。
[2]三次元造形物の製造
前記のようにして得られた三次元造形用組成物を用いて、図4に示すような形状、すなわち、JIS K 7139:1996(ISO 3167:1993)に準拠したダンベル状の三次元造形物A(全長:200mm)、および、図5に示すような形状、すなわち、厚さ:4mm×幅:10mm×長さ:80mmの直方体形状である三次元造形物Bを、以下のようにして製造した。
まず、支持体(ステージ)の表面に、三次元造形用組成物を用いて、スキージー法により、厚さ:20μmの層を形成した(層形成工程)。
次に、形成された層を加熱乾燥する乾燥工程を行った。
乾燥工程では、層の各部位について、それぞれ、加熱温度:60℃×加熱時間:120秒という条件の加熱処理を行った。加熱処理は、熱風の吹き付けにより行った。加熱処理での熱風の風速は7.5m/秒であった。
次に、インクジェット法により、所定のパターンで結合液を付与した(結合液付与工程)。結合液としては、以下の組成で25℃における粘度が18mPa・sのものを用いた。
<重合性化合物>
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル:32質量%
・フェノキシエチルアクリレート:10質量%
・2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート:13.75質量%
・ジプロピレングリコールジアクリレート:15質量%
・4−ヒドロキシブチルアクリレート:20質量%
<重合開始剤>
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:5質量%
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:4質量%
<蛍光増白剤(増感剤)>
・1,4−ビス−(ベンズオキサゾイル−2−イル)ナフタレン:0.25質量%
次に、前記層に紫外線を照射し、層中に含まれる結合剤を硬化させた(硬化工程)。
その後、製造すべき三次元造形物の形状に応じて、結合液の付与パターンを変更しつつ、複数の層が積層するように、前記層形成工程ないし硬化工程の一連の工程を繰り返し行った。
その後、前記のようにして得られた積層体を、液温:40℃に調整されたpH9のアンモニア水中に5分浸漬し、超音波振動を付与することにより、各層のうち結合剤により結合していない粒子を含む不要部を除去し、その後、水洗し、加熱温度:60℃×加熱時間:20分間という条件の加熱処理を行った。加熱処理は、熱風の吹き付けにより行った。加熱処理での熱風の風速は7.5m/秒であった。
これにより、三次元造形物Aおよび三次元造形物Bをそれぞれ2個ずつ得た。
(実施例2〜8)
三次元造形用組成物の調製に用いる原料の種類、各成分の配合比を変更することにより、三次元造形用組成物の構成を表1に示すようにし、乾燥工程での処理条件、不要部除去時の加熱処理の処理条件を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形用組成物、三次元造形物を製造した。
(比較例1)
三次元造形用組成物の調製において、カルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有する結着樹脂を用いず、各成分の配合比率を表1に示すようにした以外は、前記実施例と同様にして三次元造形用組成物、三次元造形物を製造した。
(比較例2)
層形成工程ないし硬化工程の一連の工程を繰り返し行うことにより得られた積層体からの不要部の除去において、アンモニア水の代わりに水を用いた以外は、前記比較例1と同様にして三次元造形用組成物、三次元造形物を製造した。
前記各実施例および比較例の三次元造形用組成物の構成、乾燥工程での処理条件、未結合粒子除去工程の処理条件を表1にまとめて示す。なお、表1中、シリカを「SiO」、アルミナを「Al」、炭酸カルシウムを「CaCO」、二酸化チタンを「TiO」、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物を「IBMA」、スチレン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物を「SMA」、ポリアクリル酸アンモニウム塩を「PAAm」、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩を「CMCAm」、ポリスチレンカルボン酸アンモニウム塩を「PSAc」、アクリルアミド・アクリル酸共重合物のアンモニウム塩を「AAAAc」、アルギン酸アンモニウム塩を「AlgAm」、ポリビニルアルコール(ケン化度:87、重合度:500)を「PVA」、ポリアクリルアミド(重量平均分子量:180000)を「PAA」、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量:50000)を「PVP」で示した。
また、表中、カルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有する結着樹脂を「所定の結着樹脂」、カルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有さない結着樹脂を「その他の結着樹脂」として示した。
また、三次元造形用組成物中におけるカルボン酸アンモニウム塩の化学構造を有する結着樹脂の含有率は、前記各実施例でいずれも、粒子の体積に対して、1体積%以上5体積%以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例の三次元造形用組成物に含まれる結着樹脂は、いずれも、25℃における水に対する溶解度が20[g/100g水]以上のものであった。
Figure 2016199685
[3]評価
[3.1]寸法精度
前記各実施例および各比較例の三次元造形物Bについて、厚さ、幅、長さを測定し、設計値からのずれ量を求め、以下の基準に従い評価した。
A:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%未満である。
B:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%以上2.0%未満である。
C:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が2.0%以上4.0%未満である。
D:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が4.0%以上7.0%未満である。
E:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が7.0%以上である。
[3.2]引張強度および引張弾性率
前記各実施例および各比較例の三次元造形物Aについて、JIS K 7161:1994(ISO 527:1993)に準拠し、引張降伏応力:50mm/分、引張弾性率:1mm/分という条件で測定を行い、引張強度および引張弾性率について、以下の基準に従い評価した。
(引張強度)
A:引張強度が38MPa以上。
B:引張強度が33MPa以上38MPa未満。
C:引張強度が23MPa以上33MPa未満。
D:引張強度が13MPa以上23MPa未満。
E:引張強度が13MPa未満。
(引張弾性率)
A:引張弾性率が1.6GPa以上。
B:引張弾性率が1.4GPa以上1.6GPa未満。
C:引張弾性率が1.2GPa以上1.4GPa未満。
D:引張弾性率が1.0GPa以上1.2GPa未満。
E:引張弾性率が1.0GPa未満。
[3.3]曲げ強度および曲げ弾性率
前記各実施例および各比較例の三次元造形物Bについて、JIS K 7171:1994(ISO 178:1993)に準拠し、支点間距離64mm、試験速度:2mm/分という条件で測定を行い、曲げ強度および曲げ弾性率について、以下の基準に従い評価した。
(曲げ強度)
A:曲げ強度が68MPa以上。
B:曲げ強度が63MPa以上68MPa未満。
C:曲げ強度が48MPa以上63MPa未満。
D:曲げ強度が33MPa以上48MPa未満。
E:曲げ強度が33MPa未満。
(曲げ弾性率)
A:曲げ弾性率が2.5GPa以上。
B:曲げ弾性率が2.4GPa以上2.5GPa未満。
C:曲げ弾性率が2.3GPa以上2.4GPa未満。
D:曲げ弾性率が2.2GPa以上2.3GPa未満。
E:曲げ弾性率が2.2GPa未満。
[3.4]耐水性
前記各実施例および各比較例の三次元造形物Bについて、製造直後の質量W[g]を測定した後、水中に浸漬し24時間静置した。その後、三次元造形物を水中から取出し、付着した水を十分に拭き取った後に質量W[g]を測定した。
、Wの値から、質量の増加率([(W−W)/W]×100)を求め、以下の基準に従い耐水性を評価した。質量の増加率が小さいほど、耐水性に優れているといえる。
A:質量の増加率が5%未満。
B:質量の増加率が5%以上10%未満。
C:質量の増加率が10%以上20%未満。
D:質量の増加率が20%以上30%未満。
E:質量の増加率が30%以上。
これらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 2016199685
表2から明らかなように、本発明では、寸法精度に優れ、機械的強度に優れた三次元造形物を得ることができた。また、本発明では、三次元造形物の耐水性にも優れていた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
1・・・層
2・・・結合液
3・・・硬化部
100・・・三次元造形物
9・・・支持体(ステージ)

Claims (15)

  1. 粒子と、
    結着樹脂と、
    水系溶媒と、を含み、
    前記結着樹脂が、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有することを特徴とする三次元造形用組成物。
  2. 前記結着樹脂が、オレフィン・無水マレイン酸共重合物とアンモニアとの反応生成物、ポリアクリル酸アンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、ポリスチレンカルボン酸アンモニウム塩、アクリルアミド・アクリル酸共重合物のアンモニウム塩、および、アルギン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1に記載の三次元造形用組成物。
  3. 前記結着樹脂の重量平均分子量が50000以上200000以下である請求項1または2に記載の三次元造形用組成物。
  4. 前記結着樹脂は、加熱により、酸無水物の構造を形成するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の三次元造形用組成物。
  5. 前記結着樹脂は、加熱により、環状の化学構造を形成するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の三次元造形用組成物。
  6. 前記結着樹脂は、加熱により、五員環または六員環の環状構造を形成するものである請求項5に記載の三次元造形用組成物。
  7. 前記結着樹脂は、分子内に、前記カルボン酸アンモニウム塩とともに、アミド基(−CONH)を有するものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の三次元造形用組成物。
  8. 前記結着樹脂に加え、アミド基(−CONH)を有する化合物を含むものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の三次元造形用組成物。
  9. 前記アミド基を有する化合物は、ポリアクリルアミドである請求項8に記載の三次元造形用組成物。
  10. 層を積層することにより、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
    粒子と、結着樹脂と、水系溶媒と、を含む三次元造形用組成物を用いて前記層を形成する層形成工程と、
    前記層を加熱することにより前記層から前記水系溶媒を除去する乾燥工程と、
    前記層に、結合剤を含む結合液を付与する結合液付与工程と、を有し、
    前記結着樹脂が、官能基としてカルボン酸アンモニウム塩を有することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
  11. 前記乾燥工程において、前記層が前記結着樹脂のガラス転移温度以上となるように加熱する請求項10に記載の三次元造形物の製造方法。
  12. 前記乾燥工程における加熱温度が30℃以上140℃以下である請求項10または11に記載の三次元造形物の製造方法。
  13. 前記層形成工程、前記乾燥工程および前記結合液付与工程を繰り返し行った後、前記結合剤で結合していない前記粒子を除去する未結合粒子除去工程を有し、
    前記未結合粒子除去工程において用いる除去液のpHが9以上である請求項10ないし12のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
  14. 前記層形成工程、前記乾燥工程および前記結合液付与工程を繰り返し行った後、前記結合剤で結合していない前記粒子を除去する未結合粒子除去工程を有し、
    前記未結合粒子除去工程においてアンモニアを用いる請求項10ないし13のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
  15. 請求項10ないし14のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法により製造されたことを特徴とする三次元造形物。
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